(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6598431
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】液体噴射ヘッド及び液体噴射装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/015 20060101AFI20191021BHJP
B41J 2/14 20060101ALI20191021BHJP
【FI】
B41J2/015 101
B41J2/14 303
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-117958(P2014-117958)
(22)【出願日】2014年6月6日
(65)【公開番号】特開2015-229332(P2015-229332A)
(43)【公開日】2015年12月21日
【審査請求日】2017年4月12日
【審判番号】不服2018-12454(P2018-12454/J1)
【審判請求日】2018年9月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】501167725
【氏名又は名称】エスアイアイ・プリンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】特許業務法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 貴之
【合議体】
【審判長】
吉村 尚
【審判官】
清水 康司
【審判官】
尾崎 淳史
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−52561(JP,A)
【文献】
特開2008−272952(JP,A)
【文献】
特開2012−148479(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力室を構成する駆動壁を変形させて、所定の駆動周波数で、前記圧力室に連通するノズルから被記録媒体上の所定の着弾位置に液滴を吐出する際に、前記駆動壁に与える駆動波形を生成する駆動部と、
前記駆動波形により駆動されるヘッド部と、
を備え、
前記駆動周波数で前記着弾位置に複数の前記液滴を吐出して階調表現を記録する際の前記駆動波形は、
パルス幅がTzであり、前記駆動周波数の逆数である一周期の最後に位置するパルスとしての駆動パルスである、第1の駆動パルスPzと、
前記一周期に含まれ、前記第1の駆動パルスPzの前に位置する駆動パルスである、1または複数の第2の駆動パルスPyと、
前記一周期に含まれる前記第2の駆動パルスPyのうち前記第1の駆動パルスPzの最も近くに位置する最後の第2の駆動パルスPyと、前記第1の駆動パルスPzと、の間に位置する補助パルスPhと、
を備え、
前記補助パルスPhのパルス幅が、0.2Tz〜0.4Tzであり、
前記補助パルスPhの終端と前記第1の駆動パルスPzの始端との間隔が、0.4Tz〜0.6Tzであり、
前記最後の第2の駆動パルスPyの終端と、前記補助パルスPhの始端との間隔が、(4.2/7.6)Tz〜(6.4/7.6)Tzである
液体噴射ヘッド。
【請求項2】
前記Tzは、
前記圧力室に駆動波形として与える単一の駆動パルスのパルス幅を漸次増加させたときに、
前記液滴の吐出速度が最初に極大となるパルス幅である
請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項3】
前記最後の第2の駆動パルスPyの始端と、前記第1の駆動パルスPzの始端との間隔は、
前記圧力室に駆動波形として与える単一の駆動パルスのパルス幅を漸次増加させたときに、
前記液滴の吐出速度が最初に極大となるパルス幅の2倍である
請求項1又は2に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項4】
前記第2の駆動パルスPyは、複数の第2の駆動パルスPy1、・・・、Pyn−1、Pyn(nは2以上の整数)を含む
請求項1〜3のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項5】
前記第2の駆動パルスPym−1(mは1<m≦nの整数)の前に、前記第2の駆動パルスPymが位置する場合に、
前記第2の駆動パルスPymと前記第2の駆動パルスPym−1との間に位置する、補助パルスPhm−1を更に備え、
前記補助パルスPhm−1のパルス幅が、0.2Tz〜0.4Tzであり、
前記補助パルスPhm−1の終端と前記第2の駆動パルスPym−1の始端との間隔が、0.4Tz〜0.6Tzである
請求項4に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項6】
前記第2の駆動パルスPym(mは1<m≦nの整数)の始端と前記第2の駆動パルスPym−1の始端との間隔は、
前記圧力室に駆動波形として与える単一の駆動パルスのパルス幅を漸次増加させたときに、
前記液滴の吐出速度が最初に極大となるパルス幅の2倍である
請求項4又は5に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射ヘッドと被記録媒体とを相対的に移動させる移動機構と、
前記液体噴射ヘッドに液体を供給する液体供給管と、
前記液体供給管に前記液体を供給する液体タンクと、
を備える液体噴射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被記録媒体に液滴を噴射して記録する液体噴射ヘッ
ド及び液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、記録紙等にインク滴を吐出して文字や図形を記録する、或いは素子基板の表面に液体材料を吐出して機能性薄膜を形成するインクジェット方式の液体噴射ヘッドが利用されている。この方式は、インクや液体材料などの液体を液体タンクから供給管を介して圧力室に導き、圧力室に充填される液体に圧力を印加して圧力室に連通するノズルから液体を吐出する。液体の吐出の際には、液体噴射ヘッドや被記録媒体を移動させて文字や図形を記録する、或いは所定形状の機能性薄膜や立体構造を形成する。
【0003】
特許文献1には、被記録媒体に階調表現を記録する液体噴射装置が記載される。
図9(特許文献1の
図6)は液体噴射装置に使用される駆動波形を表し、
図9(a)が1滴の液体を吐出する駆動波形であり、
図9(b)が2滴の液体を吐出する駆動波形であり、
図9(c)が3滴の液体を吐出する駆動波形であり、
図9(d)が3滴の液体を吐出する他の駆動波形である。図の横軸が時間を表し縦軸が駆動電圧を表す。液体が充填される圧力室は溝からなり、溝の側壁は圧電体からなる。この圧電体に駆動波形を印加することにより側壁が変形し圧力室の容積が増減する。パルス幅T1は、液滴の吐出速度を最大にする時間幅を表し、圧力室に充填される液体の共振周期により定まる。圧力室の側壁に電圧を印加して圧力室の容積を急激に増加させると、圧力室内の液体は負圧となって外部から圧力室に液体が取り込まれる。液体の圧力は共振周期により所定期間の経過後に反転し最大に達する。この圧力が最大になると同時に印加電圧を0ボルトに変化させて圧力室を収縮させる。この駆動方法により液滴を最大速度で吐出させることができる。従って、パルス幅T1は圧力室に充填される液体の共振周期の1/2に一致させている。
【0004】
図9に示されるすべての駆動波形において、最終駆動パルスをパルス幅T1と共通にし、最終駆動パルスとその前の初期駆動パルスの開始の時間間隔を2T1とし、同様に、前の初期駆動パルスと更に前の初期駆動パルスの開始の時間間隔を等しく2T1とする。特許文献1においては、最終駆動パルスの前の初期駆動パルスのパルス幅T2、或いはその前の初期駆動パルスのパルス幅T3を最終駆動パルスと同じパルス幅T1とすると、1滴吐出する場合よりも2滴吐出するほうが吐出速度が大きく、2滴吐出するよりも3滴吐出するほうがさらに吐出速度が大きくなる。液体噴射ヘッドから液滴を吐出している間に被記録媒体は相対的に移動するので、液滴の吐出速度の相違は液滴が被記録媒体に着弾する位置が変動することを意味する。従って、液滴の数、即ち階調が変化しても液滴の吐出速度は一定にする必要がある。
【0005】
そこで、最終駆動パルスの前の初期駆動パルス或いは更にその前の初期駆動パルスのパルス幅T2、T3を最終駆動パルスのパルス幅T1よりも狭くして、1滴の吐出速度と2滴或いは3滴の吐出速度が等しくなるようにする。なお、
図9(d)においては、最終駆動パルスの前の初期駆動パルス及び更にその前の初期駆動パルスのパルス幅T2a、T3aをT1よりも長くすると、吐出速度が等しくなる効果が得られることが記載されている。
【0006】
特許文献2には、高周波で多階調表現の記録を行う液体噴射装置の駆動波形が記載されている。液滴吐出後のサテライト滴を低減させ、安定して吐出させることを目的としている。駆動波形は、圧力発生室の容積を膨張させる第1の膨張パルスと、第1の膨張パルスに続いて圧力発生室を収縮させる収縮パルスと、収縮パルスの後に圧力発生室を膨張させる第2の膨張パルスとを有する。ここで、第1の膨張パルスは、第1の電位レベルを有し、パルス幅が0.7AL〜1.3AL(ALは圧力発生室の音響的共振周期の1/2)である。収縮パルスは、第2の電位レベルを有し、第1の膨張パルスの終端が始端となり、パルス幅が0.3AL〜1.5ALである。第2の膨張パルスは第1の電位レベルを有し、第1の膨張パルスの終端から第2の膨張パルスの中心までの間隔が2.0AL〜4.0ALである。
【0007】
特許文献2に記載される駆動波形では、第1の膨張パルスにより圧力発生室を膨張させて圧力発生室に液体を引き込む。次に、圧力発生室が負圧から正圧に反転するタイミングで収縮パルスを印加し、圧力発生室に大きな圧力を発生させてノズルから液滴を吐出する。収縮パルスは、圧力発生室が最大負圧になった時に終了し、圧力発生室を膨張させる。これにより、ノズルに形成されるメニスカスが引き戻され、吐出した液滴の尻尾である液柱が細くなり、サテライトが低減する。その後、圧力発生室が正圧となるときに第2の膨張パルスを印加して圧力発生室を膨張させ、室内の圧力をキャンセルする。多階調表現の記録を行う場合は、第1の膨張パルス、収縮パルス、第2の膨張パルスを単位とし、一周期内に上記単位の波形を短い休止期間を挟んで繰り返して印加する。この繰り返し数に応じて一周期内において吐出する液滴数が決定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−272952号公報
【特許文献2】特開2006−205504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
液体噴射ヘッドは駆動周波数により吐出液滴の速度が変化する。しかしながら搭載する液体噴射装置に応じて駆動周波数が異なる。しかし、液体噴射ヘッドは駆動周波数が異なっても液滴の吐出速度を一定とするのが望ましい。特に、階調表現を記録する液体噴射ヘッドでは、全階調表現の記録において吐出速度の周波数依存性を少なくしたい。加えて、駆動波形の電位レベルの数を少なくして駆動部の構成を簡素化したい。例えば、特許文献1に記載される駆動波形は、駆動電圧の電位レベルが2つであり、駆動部の構成は簡素化することができる。しかし、駆動周波数が変化すると液滴の吐出速度が大きく変化する。この吐出速度の駆動周波数依存性は初期駆動パルスのパルス幅を変化させても改善されない。また、特許文献2の駆動波形では、第1の膨張パルスの第1の電位レベルと、これと極性が反転する収縮パルスの第2の電位レベルと、0ボルトの3つの電位レベルを必要とする。そのため、駆動波形を生成する駆動部の構成が複雑となる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の液体噴射ヘッドは、圧力室を構成する駆動壁を変形させて、
所定の駆動周波数で、前記圧力室に連通するノズルから被記録媒体上の所定の着弾位置
に液滴を吐
出する際に、前記駆動壁に与える駆動波形を生成する駆動部と、前記駆動波形により駆動されるヘッド部と、を備えたものである。
前記駆動周波数で前記着弾位置に複数の前記液滴を吐出して階調表現を記録する際の前記駆動波形は、パルス幅がTzであり、前記駆動周波数の逆数である一周期の最後に位置するパルスとしての駆動パルスである、
第1の駆動パルスPzと、前記一周期に含まれ、前記
第1の駆動パルスPzの前に位置する駆動パルスである、1または複数の
第2の駆動パルスPyと、前記一周期に含まれる
前記第2の駆動パルスPyのうち前記第1の駆動パルスPzの最も近くに位置する最後の第2の駆動パルスPyと、前記第1の駆動パルスPzと、の間に位置す
る補助パルスPhと、を備えている。前記補助パルスPhのパルス幅が、0.2Tz〜0.4Tzであり、前記補助パルスPhの終端と前記
第1の駆動パルスPzの始端との間隔が、0.4Tz〜0.6Tzであ
り、前記最後の第2の駆動パルスPyの終端と、前記補助パルスPhの始端との間隔が、(4.2/7.6)Tz〜(6.4/7.6)Tzである。
【0011】
また、前記Tzは、前記圧力室に駆動波形として与える単一の駆動パルスのパルス幅を漸次増加させたときに、前記液滴の吐出速度が最初に極大となるパルス幅であることとした。
【0012】
また、
前記最後の第2の駆動パルスPyの始端と
、前記
第1の駆動パルスPzの始端との間隔は、前記圧力室に駆動波形として与える単一の駆動パルスのパルス幅を漸次増加させたときに、前記液滴の吐出速度が最初に極大となるパルス幅の2倍であることとした。
【0013】
また、前記
第2の駆動パルスPyは
、複数の
第2の駆動パルスPy1、・・・、Pyn−1、Pyn(nは2以上の整数)を含むこととした。
【0014】
また、前記
第2の駆動パルスPym−1(mは1<m≦nの整数)の前に、前記
第2の駆動パルスPymが位置する場合に、前記
第2の駆動パルスPymと前記
第2の駆動パルスPym−1との間に
位置する、補助パルスPhm−1
を更に備え、前記補助パルスPhm−1のパルス幅が、0.2Tz〜0.4Tzであり、前記補助パルスPhm−1の終端と前記
第2の駆動パルスPym−1の始端との間隔が、0.4Tz〜0.6Tzであることとした。
【0015】
また、前記
第2の駆動パルスPym(mは1<m≦nの整数)の始端と前記
第2の駆動パルスPym−1の始端との間隔は、前記圧力室に駆動波形として与える単一の駆動パルスのパルス幅を漸次増加させたときに、前記液滴の吐出速度が最初に極大となるパルス幅の2倍であることとした。
【0017】
本発明の液体噴射装置は、上記の液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドと被記録媒体とを相対的に移動させる移動機構と、前記液体噴射ヘッドに液体を供給する液体供給管と、前記液体供給管に前記液体を供給する液体タンクと、を備えることとした。
【発明の効果】
【0018】
本発明の液体噴射ヘッドは、圧力室を構成する駆動壁を変形させて、
所定の駆動周波数で、圧力室に連通するノズルから被記録媒体上の所定の着弾位置
に液滴を吐
出する際に
おいて、上記駆動周波数で上記着弾位置に複数の液滴を吐出して階調表現を記録する際の駆動壁に与える駆動波形が、
上記第1の駆動パルスPzと、上記1または複数の第2の駆動パルスPyと、上記補助パルスPhとを備え、
上記補助パルスPhのパルス幅が、0.2Tz〜0.4Tzであり、
上記補助パルスPhの終端と
上記第1の駆動パルスPzの始端との間隔が、0.4Tz〜0.6Tzであ
り、上記最後の第2の駆動パルスPyの終端と、上記補助パルスPhの始端との間隔が、(4.2/7.6)Tz〜(6.4/7.6)Tzである。これにより、吐出速度の周波数依存性が低下する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図2】液体噴射ヘッドの駆動を説明するための模式図である。
【
図3】第一実施形態に係る駆動波形の説明図である。
【
図4】本発明の第二実施形態に係る駆動波形の一周期を表す。
【
図5】本発明の第二実施形態に係る駆動波形の特徴を説明するための図である。
【
図6】本発明の第三実施形態に係る駆動波形の説明図である。
【
図7】本発明の第四実施形態に係る液体噴射ヘッドを構成するヘッド部の分解模式図である。
【
図8】本発明の第五実施形態に係る液体噴射装置の模式的な斜視図である。
【
図9】従来公知の液体噴射装置に使用される駆動波形を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第一実施形態)
図1は液体噴射ヘッド1の構成を表す模式図である。
図2は液体噴射ヘッド1の駆動を説明するための模式図である。
図3は、第一実施形態に係る駆動波形の説明図である。
【0021】
本発明の駆動波形を説明する前に、
図1を用いて液体噴射ヘッド1の構成を説明し、
図2を用いて液体噴射ヘッド1の駆動を説明する。
図1に示すように、液体噴射ヘッド1は、液体を吐出するヘッド部2と、ヘッド部2の駆動壁5に駆動波形を供給する駆動部7とを備える。ヘッド部2は、駆動壁5を含む壁4により囲まれ液体が充填される圧力室3と、圧力室3に連通するノズル6と、駆動壁5に電界を印加する駆動電極8とを備える。
【0022】
例えば、駆動壁5をPZTセラミックスからなる圧電体材料により形成し、電界方向に直交する方向に分極処理を施しておく。駆動壁5にはその上半分に駆動壁5を挟むように駆動電極8が形成される。
図2に示すように、圧力室3を挟む2つの駆動壁5の駆動電極8にスイッチSをon側に倒して電圧を印加する。駆動壁5は圧力室3の容積を増加させる方向に厚みすべり変形し、圧力室3に液体が引き込まれる。次に、スイッチSをoff側に倒して駆動壁5を挟む駆動電極8を短絡する。すると、駆動壁5は元の形状に戻り、圧力室3の液体が圧縮され、ノズル6から液滴が吐出される。
【0023】
図3(a)は、駆動信号として単一の駆動パルスを与えたときのパルス幅と液滴の吐出速度との関係を表す。横軸がパルス幅を表し、縦軸がノズル6から吐出される液滴の吐出速度を表す。
図3(a)に示すように、単一の駆動パルスのパルス幅を漸次増加させると液滴の吐出速度が次第に大きくなり、吐出速度が最初に極大となるパルス幅をTaとする(ノズル位置における一次の固有振動)。更にパルス幅を増加させるとパルス幅Tbで液滴の吐出速度が極小となり、更にパルス幅を増加させるとパルス幅Tcで吐出速度が再び極大となる(ノズル位置における二次の固有振動)。パルス幅Taは圧力室3に充填される液体の固有振動に基づく共振周期の1/2の期間と考えられ、パルス幅Tbは共振周期であると考えられる。従って、一般的にはTb=2Taの関係を有する。固有周期は圧力室3の形状、液体の粘性、温度等により変化する。
【0024】
図3(b)は、第一実施形態に係る駆動波形の一周期を表す。横軸が時間を表し縦軸が電圧を表す。本実施形態においては、一周期に液滴を1滴吐出する例である。駆動波形は、パルス幅Tzであり一周期の最後に位置する駆動パルスPzと、この一周期に含まれ駆動パルスPzの前に位置する補助パルスPhを備える。ここで、駆動パルスPzで液滴が吐出され、補助パルスPhでは液滴が吐出されない。そして、補助パルスPhはパルス幅Thが0.2Tz〜0.4Tzであり、補助パルスPhの終端と駆動パルスPzの始端の間隔が0.4Tz〜0.6Tzである。補助パルスPhを備えることにより、液体噴射ヘッド1は吐出速度の周波数依存性が低下する。また、駆動パルスPzと補助パルスPhの電位レベルは等しいので、駆動波形を生成する駆動部7の構成を簡素化することができる。なお、本実施形態において、補助パルスPhの終端と駆動パルスPzの始端の間は電圧が0ボルトのオフ期間Toである。
【0025】
ここで、一周期の最後に位置する駆動パルスPzのパルス幅Tzは、圧力室3に駆動波形として与える単一の駆動パルスのパルス幅を漸次増加させたときに、液滴の吐出速度が最初に極大となるパルス幅Taとするのが好ましい。補助パルスPhのパルス幅Thは、0.2Tzを下回ると液滴の吐出速度の周波数依存性が増加し、また、0.4Tzを超えても液滴の吐出速度の周波数依存性が増加する。補助パルスPhのパルス幅Thは、好ましくは、0.25Tz〜0.35Tz、とするのがよい。一周期の最後に与える駆動パルスPzの直前に補助パルスPhを与えることにより、前周期の駆動により圧力室3に残留する圧力波が打ち消され、液滴の吐出速度の周波数依存性が改善されるものと考えられる。
【0026】
なお、本実施形態では一周期に1滴吐出する駆動波形について説明したが、補助パルスPhの前に液滴を吐出する他の駆動パルスが存在し、一周期に複数の液滴を吐出する駆動波形であってもよい。また、液体噴射ヘッド1は、圧電体材料の分極方向に電界を印加する方式や、分極方向に直交する方向に電界を印加する方式であってもよい。また、液体噴射ヘッド1は、駆動壁5の上半分に駆動電極8を設置する方式に変え、駆動壁5の上端から下端まで形成してもよい。この場合、駆動壁5は上半分と下半分の分極方向が反対方向を向く。また、液体噴射ヘッド1として、圧力室3と非圧力室が交互に配列し、一吐出サイクルですべての圧力室3を駆動する一サイクル駆動方式の他に、圧力室3のみが配列し三吐出サイクルですべての圧力室3を駆動する三サイクル駆動方式を採用することができる。
【0027】
(第二実施形態)
図4(a)は、本発明の第二実施形態に係る駆動波形の一周期を表す。横軸が時間を表し縦軸が電圧を表す。本実施形態は、一周期に少なくとも2滴を吐出する。第一実施形態の駆動波形と組み合わせ、一周期に1滴を吐出する場合と2滴を吐出する場合を、或いは更に多数の液滴を吐出する場合を選択して階調表現を記録することができる。同一の部分又は同一の機能を有する部分には同一の符号を付している。
【0028】
駆動波形は、パルス幅がTzであり一周期の最後に位置する駆動パルスPzと、この一周期に含まれ駆動パルスPzの前に位置する駆動パルスPyと、駆動パルスPyと駆動パルスPzの間に位置する補助パルスPhと、を備える。駆動パルスPyで一滴目の液滴が吐出され、駆動パルスPzで二滴目の液滴が吐出され、補助パルスPhでは液滴が吐出されない。そして、補助パルスPhはパルス幅Thが0.2Tz〜0.4Tzであり、補助パルスPhの終端と駆動パルスPzの始端の間のオフ期間Toが0.4Tz〜0.6Tzである。これにより、液体噴射ヘッドの吐出速度の周波数依存性が低下する。
【0029】
ここで、一周期の最後に位置する駆動パルスPzのパルス幅Tzは、圧力室3に駆動波形として与える単一の駆動パルスのパルス幅を漸次増加させたときに、液滴の吐出速度が最初に極大となるパルス幅Taとするのが好ましい。また、駆動パルスPyの始端と駆動パルスPzの始端の間隔を2Tz、つまり圧力室3に充填される液体の固有振動に基づく共振周期であるTb(=2Ta)とするのが好ましい。補助パルスPhのパルス幅Thが0.2Tzを下回ると液滴の吐出速度の周波数依存性が増加する。同様に、補助パルスPhのパルス幅Thが0.4Tzを超えても液滴の吐出速度の周波数依存性が増加する。
【0030】
駆動波形をこのように設定することにより、吐出速度の周波数依存性が低下する。また、駆動パルスPz、駆動パルスPy及び補助パルスPhの各電位レベルを等しくすることができるので、駆動波形を生成する駆動部7の構成が簡素化され、駆動部7の負担が軽減する。
【0031】
図5は本発明の第二実施形態に係る駆動波形の特徴を説明するための図である。
図5(a)は、駆動波形[1]〜[11]、[参考1]、[参考2]の波形の形状を表し、
図5(b)は、駆動波形[9]、[10]、[参考1]、[参考2]を用いたときの駆動周波数と液滴の吐出速度の関係を表す。いずれも実測値である。駆動波形[1]〜[4]、[8]〜[11]が本発明の要件を満たす駆動波形である。[参考1]は特許文献1に記載の駆動波形の例であり、補助パルスPhが存在しない。[参考2]は、[参考1]を改良して周波数特性を改善させた駆動波形の例であり、[参考1]と同じく補助パルスPhが存在せず、駆動パルスPzのパルス幅Tzと駆動パルスPyのパルス幅Tyとを[参考1]の駆動パルスPzのパルス幅Tzの1.5倍と長くした場合である。
【0032】
まず、
図5(a)に示す波形を説明する。
図4(a)に示すように、Tzは一周期の最後に位置する駆動パルスPzのパルス幅、Thは補助パルスPhのパルス幅、Tyは駆動パルスPzの前に位置する駆動パルスPyのパルス幅、Toは補助パルスPhの終端と駆動パルスPzの始端との間隔で0ボルトの電圧が与えられるオフ期間である。To’は駆動パルスPyの終端と補助パルスPhの始端との間隔で0ボルトの電圧が与えられる他のオフ期間である。相対偏差は、駆動周波数を変化させたときの液滴の吐出速度のばらつきを表し、駆動波形[参考2]の吐出速度のばらつきの標準偏差値を基準とする相対値である。相対電圧は、前周期の駆動パルスの影響を受けない状態で、基準速度5.0m/sを得るための電圧であり、駆動波形[参考1]の液滴の吐出速度を基準とする相対値である。パルス幅及びオフ期間の数値の単位はすべてμsである。ここで、ヘッド部2の共振周期Tbは15.2μsであり、駆動パルスPzのパルス幅Tzはこの共振周期Tbの1/2である7.6μsに固定され、駆動パルスPyのパルス幅Tyは駆動パルスPzのパルス幅Tzの1/2である3.8μsに固定され、駆動パルスPyの始端と駆動パルスPzの始端との間隔は15.2μs、つまりヘッド部2の共振周期Tbに固定されている。
【0033】
駆動波形[5]はオフ期間Toが3.0μsであり、To(=0.39Tz)<0.4Tz)で本発明の駆動波形の範囲外である。この場合に、相対偏差が1.43と大きく、評価は×となる。また、駆動波形[6]は補助パルスPhのパルス幅Thが0.8μs(=0.11Tz)<0.2Tzであり、駆動波形[7]は補助パルスPhのパルス幅Thが1.2μs(=0.16Tz)<0.2Tzであり、いずれも本発明の駆動波形の範囲外である。これらの場合、駆動電圧は低いが相対偏差がそれぞれ1.61及び1.39といずれも大きく、評価は×となる。なお、駆動波形[参考1]では相対偏差が2.39であり、駆動波形[参考2]では相対電圧が1.1となり、いずれも高く、評価は×となる。
【0034】
これに対して、本発明の要件を満たす駆動波形[1]〜[4]、[8]〜[11]では相対偏差が1.35以下であり、駆動波形[参考1]よりも大幅に改善される。また、本発明の要件を満たす駆動波形[1]〜[4]、[8]〜[11]では相対電圧が1.05以下であり、駆動波形[参考2]よりも改善される。特に、補助パルスPhのパルス幅Thが2.0μs(=0.26Tz)の駆動波形[9]、及び、補助パルスPhのパルス幅Thが2.4μs(=0.32Tz)の駆動波形[10]では、いずれも相対偏差が0.96で駆動波形[参考2]の標準偏差よりも改善され、かつ、相対電圧1.03で駆動波形[参考1]の駆動電圧と同程度となる。従って、補助パルスPhのパルス幅Thは、好ましくは、0.25Tz〜0.35Tz、とするのがよい。
【0035】
図5(b)において、横軸が駆動周波数(kHz)を表し、縦軸が液滴の吐出速度(m/s)を表す。図に示すように、駆動波形[参考1]では、駆動周波数が8kHz〜17kHzでは吐出速度が4.5m/sを大きく下回っている。また、駆動波形[参考2]では、駆動周波数16kHz〜18kHzに吐出速度が5.5m/sを大きく超える特異点が現れる。これに対して、本発明の駆動波形[9]及び[10]では、周波数4kHz〜20kHzにおいて、吐出速度が4.5m/s〜5.5m/sの範囲内となり、吐出速度の周波数依存性が極めて少ない。また、
図5(a)に示すように、本発明の要件を満たす駆動波形[1]〜[4]、[8]〜[11]は、駆動波形[参考1]と同程度の駆動電圧であり、高効率で液滴を吐出することができる。
【0036】
なお、本実施形態では一周期に2滴を吐出する駆動波形について説明したが、駆動パルスPyの前に液滴を吐出する他の駆動パルスが存在し、その駆動パルスにより液滴を吐出し、一周期に3滴以上の液滴を吐出する駆動波形であってもよい。
【0037】
図4(b)に、一周期に3滴の液滴を吐出する本発明の第二実施形態に係る他の駆動波形を表す。本実施形態では、駆動パルスPyが駆動パルスPy1とPy2を含み、各駆動パルスPy1、Py2において液滴を吐出する。
図4(b)に示すように、駆動パルスPy1の前にオフ期間To1”を設けて新たな駆動パルスPy2を追加し、駆動パルスPy2と駆動パルスPy1の間に補助パルスPhを挿入しない。駆動パルスPy2のパルス幅Ty2と駆動パルスPy1のパルス幅Ty1を、それぞれ、駆動パルスPzのパルス幅Tzの1/2に固定する。更に、駆動パルスPy2の始端と駆動パルスPy1の始端との間隔を、パルス幅Tzの2倍、つまりヘッド部2の共振周期Tbに固定する。駆動パルスPy2の終端と駆動パルスPy1の始端の間はオフ期間To1”であり、0ボルトに固定する。例えば共振周期Tbを15.2μsとすれば、パルス幅Ty2は3.8μsであり、オフ期間To1”は11.4μsである。本実施形態においては、補助パルスPhを、駆動パルスPy1と駆動パルスPzの間にのみ挿入し、駆動パルスPy2と駆動パルスPy1の間には挿入しない構成を採用する。その結果、一周期に1個の補助パルスPhが増えるだけなので消費電力が大幅に増加することがなく、また、圧電体の変形動作回数も大幅な増加がないので圧電体の耐久性に与える影響も少ない。
【0038】
なお、一周期に3滴の液滴を吐出する上記駆動波形の場合に駆動パルスPy1の前にオフ期間To1”を設けて駆動パルスPy2を追加したと同様に、一周期に4滴の液滴を吐出する場合は、駆動パルスPy2の前にオフ期間To2”を設けて新たな駆動パルスPy3を追加すればよい。この場合においても、3滴の液滴を吐出する場合と同様に、新たな駆動パルスPy3と駆動パルスPy2との間のオフ期間To2”に補助パルスPhを挿入しない。言い換えれば、補助パルスPhは駆動パルスPy1と駆動パルスPzの間にのみ挿入する。これを一般化して表現すると、駆動パルスPyはn(nは2以上の整数)個の駆動パルスPy1、Py2、・・・、Pyn−1、Pynを含み、駆動パルスPym−1(mは1<m≦nの整数)の前に駆動パルスPymを与え、駆動パルスPym−1と駆動パルスPymの間のオフ期間Tom−1”に補助パルスPhを挿入しない。なお、駆動パルスPymの始端と駆動パルスPym−1の始端との間隔をパルス幅Tzの2倍とする。その他、液体噴射ヘッド1やヘッド部2の構成、駆動方式は第一実施形態と同様である。
【0039】
(第三実施形態)
図6は、本発明の第三実施形態に係る駆動波形の説明図である。横軸が時間を表し、縦軸が電圧を表す。本実施形態においては、一周期に(n+1)滴(nは2以上の整数)吐出する場合を表す。すでに第一及び第二実施形態において説明したように、駆動パルスのパルス数を選択することにより、液体の吐出量を変化させ、階調表現を記録することができる。従って、一周期の期間に3以上の駆動パルスを与えることにより多階調表現を記録することができる。同一の部分または同一の機能を有する部分には同一の符号を付している。
【0040】
図6に示すように、駆動パルスPyは、複数の駆動パルスPyn、Pyn−1、・・・、Py1を含み、駆動パルスPym(mは1<m≦nの整数)と駆動パルスPym−1の間に補助パルスPhm−1が位置し、補助パルスPhm−1はパルス幅Thm−1が0.2Tz〜0.4Tzであり、補助パルスPhm−1の終端と駆動パルスPym−1の始端の間隔が0.4Tz〜0.6Tzである。
【0041】
ここで、一周期の最後に位置する駆動パルスPzのパルス幅Tzは、圧力室3に駆動波形として与える単一の駆動パルスのパルス幅を漸次増加させたときに、液滴の吐出速度が最初に極大となるパルス幅Taとするのが好ましい。また、駆動パルスPy1の始端と駆動パルスPzの始端の間隔、及び、駆動パルスPymの始端と駆動パルスPym−1の始端との間隔をパルス幅Taの2倍、つまり圧力室3に充填される液体の固有振動に基づく共振周期であるTb(=2Ta)とするのが好ましい。補助パルスPhm−1のパルス幅Thm−1が0.2Tzを下回ると液滴の吐出速度の周波数依存性が増加する。同様に、補助パルスPhm−1のパルス幅Thm−1が0.4Tzを超えても液滴の吐出速度の周波数依存性が増加する。補助パルスPhm−1のパルス幅Thm−1は、好ましくは、0.25Tz〜0.35Tz、とするのがよい。なお、各補助パルスPh、Ph1〜Phn−1それぞれのパルス幅Th、Th1〜Thn−1は本発明の範囲内であればよく、各パルス幅Th、Th1〜Thn−1がすべて同一である必要はない。同様に、各補助パルスPh、Ph1〜Phn−1の終端と各駆動パルスPz、Py1〜Pyn−1の始端とのそれぞれの間のオフ期間To、To1〜Ton−1がすべて同一である必要はなく、上記の範囲内であればよい。
【0042】
駆動波形をこのように設定することにより、吐出速度の周波数依存性が低下する。また、駆動パルスPz、駆動パルスPy1〜Pyn及び補助パルスPh、Ph1〜Phn−1の各電位レベルを等しくすることができるので、駆動波形を生成する駆動部7の構成が簡素化され、駆動部7の負担が軽減する。その他、液体噴射ヘッド1やヘッド部2の構成、駆動方式については第一実施形態と同様である。
【0043】
(第四実施形態)
図7は、本発明の第四実施形態に係る液体噴射ヘッド1を構成するヘッド部2の分解模式図である。同一の部分又は同一の機能を有する部分には同一の符号を付している。
図7に示すように、ヘッド部2は、圧電プレート9と、圧電プレート9の上面USに接合されるカバープレート10と、圧電プレート9の側面SSに接合されるノズルプレート11と、圧電プレート9のノズルプレート11とは反対側の後方側の上面USに接着されるフレキシブル基板12とを備える。圧電プレート9は、その上面USに交互に配列する吐出溝9aとダミー溝9bを備える。吐出溝9aとダミー溝9bは、一方側が側面SSに開口し他方側は上面USにおいて終端する。吐出溝9aとダミー溝9bは側壁9e(
図1及び
図2において駆動壁5に相当する。)により分離される。側壁9eの両側面には上面USから溝の深さの略1/2まで駆動電極8が設置される。吐出溝9a側の側面に形成される駆動電極8は、圧電プレート9の後方側の上面USに形成されるコモン端子9cに電気的に接続する。ダミー溝9b側の側面に形成される駆動電極8は、圧電プレート9の後方側の上面USに形成されるアクティブ端子9dに電気的に接続される。カバープレート10は、スリット10bを介して吐出溝9aに液体を供給する液体供給室10aを備える。カバープレート10は圧電プレート9の上面USに接合されて吐出溝9a及びダミー溝9bの上部開口を覆う。ノズルプレート11は、複数のノズル6を備え、各ノズル6が各吐出溝9aに連通して圧電プレート9の側面SSに接合される。吐出溝9aは、上部開口がカバープレート10により覆われ、側面SSの開口がノズルプレート11により塞がれ、側壁9eと底部の圧電プレート9により囲まれて圧力室(
図1及び
図2に示す圧力室3に相当する。)を構成する。
【0044】
圧電プレート9は圧電体セラミックス、例えばPZTセラミックスが使用される。圧電プレート9は、上面USの垂直方向に予め分極処理が施される。液体は液体供給室10aに供給され、スリット10bを介して各吐出溝9aに供給される。図示しない駆動部7から第一〜第三実施形態において説明した駆動波形がフレキシブル基板12を介してコモン端子9cとアクティブ端子9dに与えられる。すると、吐出溝9aの両側壁9eが厚みすべり変形して内部に充填される液体に圧力波を誘起し、ノズル6から液滴が吐出される。なお、本発明において、ヘッド部2は
図7に示す構造に限定されない。
【0045】
(第五実施形態)
図8は本発明の第五実施形態に係る液体噴射装置30の模式的な斜視図である。液体噴射装置30は、液体噴射ヘッド1、1’を往復移動させる移動機構40と、液体噴射ヘッド1、1’に液体を供給し、液体噴射ヘッド1、1’から液体を排出する流路部35、35’と、流路部35、35’に連通する液体ポンプ33、33’及び液体タンク34、34’とを備えている。各液体噴射ヘッド1、1’は駆動部7とヘッド部2により構成され、ヘッド部2は、圧電プレート9と、ノズルプレート11と、カバープレート10等とを備える。液体ポンプ33、33’として、流路部35、35’に液体を供給する供給ポンプとそれ以外に液体を排出する排出ポンプのいずれかもしくは両方を設置し、液体を循環させる。また、図示しない圧力センサーや流量センサーを設置し、液体の流量を制御することもある。液体噴射ヘッド1、1’は、第一〜第三実施形態において説明した駆動波形により駆動され、例えば第四実施形態において説明したヘッド部2を備える液体噴射ヘッド1を使用することができる。
【0046】
液体噴射装置30は、紙等の被記録媒体44を主走査方向に搬送する一対の搬送手段41、42と、被記録媒体44に液体を吐出する液体噴射ヘッド1、1’と、液体噴射ヘッド1、1’を載置するキャリッジユニット43と、液体タンク34、34’に貯留した液体を流路部35、35’に押圧して供給する液体ポンプ33、33’と、液体噴射ヘッド1、1’を主走査方向と直交する副走査方向に走査する移動機構40とを備えている。図示しない制御部は液体噴射ヘッド1、1’、移動機構40、搬送手段41、42を制御して駆動する。
【0047】
一対の搬送手段41、42は副走査方向に延び、ローラ面を接触しながら回転するグリッドローラとピンチローラを備えている。図示しないモータによりグリッドローラとピンチローラを軸周りに移転させてローラ間に挟み込んだ被記録媒体44を主走査方向に搬送する。移動機構40は、副走査方向に延びた一対のガイドレール36、37と、一対のガイドレール36、37に沿って摺動可能なキャリッジユニット43と、キャリッジユニット43を連結し副走査方向に移動させる無端ベルト38と、この無端ベルト38を図示しないプーリを介して周回させるモータ39とを備えている。
【0048】
キャリッジユニット43は、複数の液体噴射ヘッド1、1’を載置し、例えばイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4種類の液滴を吐出する。液体タンク34、34’は対応する色の液体を貯留し、液体ポンプ33、33’、流路部35、35’を介して液体噴射ヘッド1、1’に供給する。各液体噴射ヘッド1、1’は駆動信号に応じて各色の液滴を吐出する。液体噴射ヘッド1、1’から液体を吐出させるタイミング、キャリッジユニット43を駆動するモータ39の回転及び被記録媒体44の搬送速度を制御することにより、被記録媒体44上に任意のパターンを記録することできる。
【0049】
なお、本実施形態は、移動機構40がキャリッジユニット43と被記録媒体44を移動させて記録する液体噴射装置30であるが、これに代えて、キャリッジユニットを固定し、移動機構が被記録媒体を2次元的に移動させて記録する液体噴射装置であってもよい。つまり、移動機構は液体噴射ヘッドと被記録媒体とを相対的に移動させるものであればよい。
【符号の説明】
【0050】
1 液体噴射ヘッド
2 ヘッド部
3 圧力室
4 壁
5 駆動壁
6 ノズル
7 駆動部
8 駆動電極
9 圧電プレート
10 カバープレート
11 ノズルプレート
12 フレキシブル回路基板
Pz、Py、Py1〜Pyn 駆動パルス
Ph、Ph1〜Phn−1 補助パルス
Tz、Ty、Th、Th1〜Thn−1、 パルス幅
Ta 吐出速度が最初に極大となるパルス幅
Tb 吐出速度が最初に極小となるパルス幅
To、To’、To1〜Ton−1、To1” オフ期間