(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6598438
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20191021BHJP
B24B 27/06 20060101ALI20191021BHJP
B24D 3/00 20060101ALI20191021BHJP
B24D 11/00 20060101ALI20191021BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20191021BHJP
【FI】
H01L21/304 611W
B24B27/06 D
B24B27/06 H
B24B27/06 M
B24D3/00 320B
B24D11/00 G
H01L21/78 Q
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-167763(P2014-167763)
(22)【出願日】2014年8月20日
(65)【公開番号】特開2016-46321(P2016-46321A)
(43)【公開日】2016年4月4日
【審査請求日】2017年7月13日
【審判番号】不服2018-14000(P2018-14000/J1)
【審判請求日】2018年10月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161562
【弁理士】
【氏名又は名称】阪本 朗
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 経宏
【合議体】
【審判長】
飯田 清司
【審判官】
鈴木 和樹
【審判官】
小田 浩
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−236016(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0053376(US,A1)
【文献】
特開2010−46792(JP,A)
【文献】
特表2001−510742(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/304
B24B27/06
B24D3/00
B24D11/00
H01L21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デバイスウェハのおもて面に表面構造を形成する工程と、
前記デバイスウェハのおもて面に接着剤を介してガラス支持板を貼り付けたWSS(Wafer Support System)ウェハを形成する工程と、
前記WSSウェハの両面を固定する工程と、
前記デバイスウェハの側面であって、前記デバイスウエハの裏面から所定距離はなしてかつ前記表面構造に達しない位置をワイヤソーで輪切り状に切断して前記デバイスウェハを薄化する工程と、
前記デバイスウェハの切断した裏面に裏面拡散層を形成し、前記裏面拡散層に裏面電極を形成する工程と、
前記裏面電極にダイシングテープを貼り付け、前記WSSウェハの前記ガラス支持板と前記接着剤を除去する工程と、
前記デバイスウェハのおもて面からダイシングして前記デバイスウェハをチップ化する工程と、
を含み、前記デバイスウェハを薄化する工程では、前記ワイヤソーの移動方向と前記WSSウェハの回転方向とが同一であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記デバイスウェハとして、SiCウェハもしくはGaNウェハを用いることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記表面構造が、MOSゲート構造であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記ワイヤソーの移動速度が前記WSSウェハの回転速度より早く、その速度差で前記デバイスウェハを輪切り状に切断することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、主に炭化珪素(元素記号SiC)の半導体装置の製造方
法に関し、特に、ウェハの薄化に関する。
【背景技術】
【0002】
ソーラーや風力等で発電した電力を系統電力へ変換する機能を備えるPCS(パワーコンデショナー)やUPS(無停電電源装置)、および産業用途では、1200V、1700Vの中耐圧クラスのデバイスが求められる。そのデバイスをSiCで形成することによりSiデバイスよりも高効率が期待されるが、その場合のSiCウェハの厚さは20μm程度あれば十分である。しかし、現状では、SiCウェハの反りや割れなどによるハンドリングの制約から、工程に流すSiCウェハの厚さは350〜500μm程度が必要であり、主要工程終了後に100μm程度に薄化加工している。
【0003】
SiCウェハは、昇華法で長時間(例えば数十時間)掛けて製作され、更に所望のデバイス特性を得るために、そのSiCウェハ上にSiCをエピタキシャル成長させる。現状では、このエピタキシャル成長させたSiCウェハの価格は数十万円のオーダーであり極めて高価である。
【0004】
そのエピタキシャル成長面に酸化、拡散、イオン注入、アニール処理および電極形成等を行いデバイスの表面構造を作製する。その後、デバイスの特性向上のために裏面に薄化加工を施す。
【0005】
つぎに、従来のSiCデバイスにおける薄化工程についてを説明する。薄化工程とは薄ウェハ加工プロセスのことである。
【0006】
図9〜
図10は、従来のSiCデバイスの薄化工程であり、工程順に示した工程図である。ここではSiCデバイスとして縦型MOSFETの例を挙げた。尚、
図9〜
図10において、
図9(c)に続く工程は
図10(a)である。
(1)10〜30μm厚のSiC膜をエピタキシャル成長させたSiCウェハ51を準備する(
図9(a))。SiCウェハ51の厚みは350μm程度〜500μm程度である。この350μm程度〜500μm程度の厚さは、製造工程上ハンドリングし易い厚さである。尚、図中の符号で、51aはSiCウェハ51のおもて面、51bはSiCウェハ51の裏面であり、おもて面51a側にSiCエピタキシャル膜(不図示)が形成されている。
(2)SiCウェハ51のおもて面51aに表面構造52を形成し、デバイスウェハ53とする(
図9(b))。この表面構造52は、ウェル層、ソース層、ゲート絶縁膜、ゲート電極およびソース電極などで構成され、
図5の表面構造2に相当する。また、図中の符号で53aはデバイスウェハ53のおもて面であり、53bはデバイスウェハ53の裏面である。
(3)デバイスウェハ53のおもて面53aをレジストなどの保護膜54で被覆し、裏面53bから研削・研磨によりデバイスウェハ53を100μm程度の厚さまで薄化して、薄化されたデバイスウェハ55とする(
図9(c))。研削は例えばグラインダーを用いて行い、その後の面仕上げ(研磨)は、CMP(Chemical Mechanical Polishing)やドライポリッシュ(乾式研磨)等の研磨方法を用いる。尚、図中の符号で55bは、デバイスウェハ55の裏面である。
(4)デバイスウェハ55の裏面55bに例えばニッケル膜を成膜し、レーザアニールアニールを施し、ドレイン層56に相当するシリサイド層を形成する(
図10(a))。
(5)デバイスウェハ55の裏面55bに裏面電極となるドレイン電極57を形成する(
図10(b))。
(6)デバイスウェハ55のドレイン電極57にダイシングテープ58を貼る。続いて、デバイスウェハ55のおもて面55aからダイシングしてチップ化する。続いて、ダイシングテープ58を外して半導体チップ59とする (図(10(c))。続いて、半導体チップ59をパッケージしてSiCデバイスが完成する。尚、図中の符号で60はデバイスウェハ55をチップ化するために切断した切断線である。
【0007】
特許文献1では、SiCウェハを薄化する方法として、おもて面側に水素イオンを注入して泥弱層を形成し、ベース基板に接合材を介して接着した後、熱処理により泥弱層からSiCウェハを剥離し、SiCウェハに金属の支持体に取り付ける。その後にデバイスとなる拡散層を形成することが開示されている。
【0008】
前記の泥弱層とは、特許文献2の記載にあるように、水素イオン(水素ガスイオン)が注入された層であり、この泥弱層では温度を上げると層内で気泡が発生し、その気泡の圧力で層内の結晶格子が切断されて剥離するようになる。
【0009】
また、特許文献3では、ワイヤソーを用いてSiCインゴットを輪切り状に切断してウェハにする際に、SiCインゴットの側面を接着剤などで固定し、ワイヤソーで切断してウェハにする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−280531号公報
【特許文献2】特開平5−211128号公報
【特許文献3】特開2009−61528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
図9〜
図10に示す研削・研磨による薄化方法では、高価な素材であるSiCウェハ51が研削および研磨加工により大幅に破棄することになる。例えば、350μm程度の厚さを100μm程度の厚さにした場合などは、その破棄量は70%以上にもなり、無駄になる量が多い。また、500μm程度の厚さの場合はさらに破棄量は増える。
【0012】
また、特許文献1では、水素イオンを打ち込む工程と、泥弱層でウェハを分離する工程でウェハの薄化を図るため、工程が複雑で製造コストが増大する。
【0013】
さらに、表面構造形成後に泥弱層を形成する工程では、水素イオンの打ち込みによりウエハの表面構造部分にダメージが残る。また、ウェハを泥弱層で剥離するときに、ウェハに形成されたデバイスの表面構造にクラックなどの欠陥が導入される恐れがある。
【0014】
また、ウエハを薄化後に表面構造を形成する工程では、金属やシリコンなどの堆積膜からなる支持体を用いるので、表面構造を形成する工程において処理温度を高くすることができず、イオン注入された不純物の拡散深さは浅くなる。従って、この方法では数100Vから1000Vを超える高耐圧デバイスの製作は困難になる。また、イオン注入された不純物の活性化率が低く良好なデバイス特性が得難い。
【0015】
また、前記したインゴットの切断方法を用いて、ウェハを輪切り状に切断する場合には、数100μmの薄いウェハの側面を接着剤で固定して、ワイヤソーで輪切り状に切断することになる。薄いウェハの側面をワイヤソーによる切断時の応力に耐えるよう強固に固定することは困難である。さらに、ワイヤソーの進行方向にウェハ面を平行になるように固定することも困難である。そのため、従来のインゴットのワイヤソーによる切断装置では、ウェハを輪切り状に切断して薄化する工程に適用することは困難である。
【0016】
この発明の目的は、前記の課題を解決して、表面構造に影響を及ぼさず、単純な工程でウェハを薄化でき、除去された側の残りのウェハを再利用できるような、低コストで高耐圧デバイスを製作できる半導体装置の製造方
法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記の目的を達成するために、特許請求の範囲の請求項1に記載の発明によれば、デバイスウェハのおもて面に表面構造を形成する工程と、前記デバイスウェハのおもて面に接着剤を介してガラス支持板を貼り付けたWSS(Wafer Support System)ウェハを形成する工程と、前記WSSウェハの両面を固定する工程と、前記
デバイスウェハの側面であって、前記デバイスウエハの裏面から所定距離はなしてかつ前記表面構造に達しない位置をワイヤソーで輪切り状に切断して前記デバイスウェハを薄化する工程と、前記デバイスウェハの
切断した裏面に裏面拡散層を形成し、前記裏面拡散層に裏面電極を形成する工程と、前記裏面電極にダイシングテープを貼り付け、前記WSSウェハの前記ガラス支持板と前記接着剤を除去する工程と、前記デバイスウェハのおもて面からダイシングして前記デバイスウェハをチップ化する工程と、を含み、前記デバイスウェハを薄化する工程では、前記ワイヤソーの移動方向と前記WSSウェハの回転方向とが同一である半導体装置の製造方法とする。
【0018】
また、特許請求の範囲の請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明において、前記デバイスウェハが、SiCウェハもしくはGaNウェハであるとよい。
【0019】
また、特許請求の範囲の請求項3に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明において、前記表面構造が、MOSゲート構造であるとよい。
【0020】
また、特許請求の範囲の請求項4に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明において
、前記ワイヤソーの移動速度が前記
WSSウェハの回転速度より早く、その速度差で前記デバイスウェハを輪切り状に切断するとよい。
【発明の効果】
【0025】
この発明によれば、表面構造に影響を及ぼさず、単純な工程でウェハを薄化でき、除去された側のウェハを再利用できるため、低い製造コストで高耐圧デバイスを製作できる半導体装置の製造方
法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】この発明に係る第1実施例の半導体装置の要部製造工程断面図である。
【
図2】
図1に続く、この発明に係る第1実施例の半導体装置の要部製造工程断面図である。
【
図3】
図2に続く、この発明に係る第1実施例の半導体装置の要部製造工程断面図である。
【
図4】
図3に続く、この発明に係る第1実施例の半導体装置の要部製造工程断面図である。
【
図5】
図1(a)のA部拡大図であり縦型のMOSFETの表面構造を示す要部断面図である。
【
図6】この発明に係る第2実施例の半導体装置の製造装置の概略構成図である。
【
図9】従来のSiCデバイスの薄化工程における工程図である。
【
図10】
図9に続く、従来のSiCデバイスの薄化工程の工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
実施の形態を以下の実施例で説明する。
【実施例1】
【0028】
図1〜
図4は、この発明に係る第1実施例の半導体装置の製造方法であり、工程順に示した要部製造工程断面図である。ここでは、半導体装置としてSiCで形成される縦型のMOSFETを例として挙げた。尚、
図1〜
図3において、
図1(b)、
図2(b)、
図3(b)に続く工程は、それぞれ
図2(a)、
図3(a)、
図4(a)である。
【0029】
(1)はじめに、おもて面1aにエピタキシャルSiC膜1dを成長させたデバイスウェハ1のおもて面1a側に表面構造2を形成する。
図5は、
図1(a)のA部拡大図であり縦型のMOSFETの表面構造2を示す要部断面図である。表面構造2は、縦型MOSFETのウェル層25、ソース層26、ゲート絶縁膜27、ゲート電極28、層間絶縁膜29およびソース電極30などで構成されるMOSゲート構造である。MOSFETがIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)に替わる場合は、ソース層26はエミッタ層になり、ソース電極30はエミッタ電極になる。尚、図中のエピタキシャルSiC膜1dはドリフト層となる。この縦型MOSFETはプレーナ型ゲート構造を有しているが、トレンチ型ゲート構造を有する場合もある。表面構造2を形成したデバイスウェハ1のおもて面1aに接着剤3を塗布し加熱硬化させる(
図1(a))。ここで、加熱硬化の条件は、例えば大気雰囲気にて、加熱温度250℃、加熱時間30分である。
【0030】
(2)次に、接着剤3を介してデバイスウェハ1のおもて面1aとガラス支持板4(サポートガラス)を真空中で加熱圧着してWSSウェハ5にする(
図1(b))。ここで、WSSはWafer Support Systemの略であり、WSSウェハ5とはデバイスウェハ1のおもて面1aを接着剤3を介してガラス支持板4に接着させた構造物のことである。また、加熱圧着の条件は、例えば減圧下において、加熱温度250℃、圧力500N、1分である。
【0031】
(3)次に、ウェハ薄化装置を用いてWSSウエハ5を薄化する。まず、WSSウェハ5をウェハ薄化装置に備えられている上下の吸着チャック6で挟んで固定し、デバイスウェハ1の側面1cにワイヤソー8を接触させる(
図2(a))。ここで、吸着チャック6には微小な貫通孔が多数開いたポーラスチャック31が用いられおり、ポーラスチャック31のウエハを吸着しない部分はカバー32で覆われている。これらは図示しないモータで回転する回転支持棒33に固定されており、図示しない真空ポンプによりポーラスチャック31内が真空に引かれることで、WSSウェハ5が固定される。
【0032】
(4)ウェハ薄化装置の冷却ノズル9から切断部10に冷却媒体である冷却水11を当てながらワイヤソー8でWSSウェハ5のデバイスウェハ1を輪切り状に切断する。ここで、ワイヤソー8は50μm程度の直径の鋼鉄製のワイヤにダイヤモンド粉末を付着させた切断治具である。まず初めに、吸着チャック6を回転方向42に回転させる。続いて、ワイヤソー8をデバイスウェハ1の側面1cに当てて、側面1cから中央方向にワイヤソー8を移動させて、デバイスウェハ1を輪切り状に切断する(スライスカットする)。デバイスウェハ1の回転方向とワイヤソー8の移動方向は同一にし、デバイスウェハ1の回転速度(例えば数百回転/分)より、ワイヤソー8の移動速度(例えば1万回転/分に相当する速度)を数倍早くし、速度差でデバイスウェハ1を輪切り状に切断して薄化されたデバイスウェハ12にする。また、輪切り状の切断においては、ワイヤソー8の進行はデバイスウェハ1の面(おもて面1aもしくは裏面1b)に平行に行われる。この際の切断条件は、例えばデバイスウェハ回転速度は300rpm、ワイヤソー速度は10,000rpmである。
【0033】
これにより、WSSウェハ5は薄化されたデバイスウェハ12を有する薄化されたWSSウェハ13になる(
図2(b))。ここで、点線41は切断が終わった状態のデバイスウェハ1を示し、上側の薄化されたデバイスウェハ12はガラス支持板4を介して上側の吸着チャック6に吸着固定され、下側の残った残りのウェハ14は下側の吸着チャック6に吸着固定される。吸着チャック6に固定されている残りのウェハ14は、製造コストの低減を図るため、ダミーウェハやデバイス製作などに再利用される。
【0034】
(5)薄化されたWSSウェハ13を吸着チャック6から外し、薄化されたデバイスウェハ12の裏面12bをCMP(Chemical Mechanical Polishing)で研磨する(
図3(a))。これにより、初期の厚さが350μm〜500μm程度であるデバイスウェハ1は、例えば100μm程度の厚さとなる。この厚さはデバイス性能を向上させるためには、可能な限り薄くした方がよい。前述したように、切り代分を差し引いた残った180μm程度〜330μm程度の厚さの残りのウェハ14は再度表面を研磨などの処理して加工歪を除去し150μm程度〜300μm程度の厚さにしてデバイス製作に再利用する。
【0035】
(6)薄化されたWSSウェハ13の裏面である薄化されたデバイスウェハ12の裏面12bに例えばニッケル膜を成膜し、レーザーアニールを施してドレイン層16に相当するシリサイドを形成する(
図3(b))。このとき、レーザーアニール照射条件を調節して、デバイスウエハ12の裏面12bの表面層のみ加熱され、接着剤3やガラス支持板4は加熱されない条件としている。尚、IGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)の場合はドレイン層16はコレクタ層になる。
【0036】
(7)薄化されたデバイスウェハ12の裏面12bに裏面電極であるドレイン電極17を成膜する(
図4(a))。尚、IGBTの場合はドレイン電極17はコレクタ電極になる。
【0037】
(8)ドレイン電極17にダイシングテープ18を貼り、薄化されたデバイスウェハ12のおもて面12aに貼られたガラス支持板4と接着剤3を除去する。ガラス支持板4と接着剤3の除去は、ガラス支持板4を透過させてレーザーを接着剤3に照射し接着剤3を焼き切るとともに、接着剤3を薬品を用いて溶かすことで両者を除去する。薄化されたデバイスウェハ12のおもて面12aからダイシングブレード19を入れ、薄化されたデバイスウェハ12を切断して半導体チップ20を形成しチップ化する(
図4(b))。続いて、ダイシングテープ18から半導体チップ20を外し、半導体チップ20をパッケージして図示しない半導体装置が完成する。尚、図中の符号の21はダイシングブレード19の移動方向であり、22は薄化されたデバイスウェハ12をチップ化のために切断した切断線である。
【0038】
この製造方法により、デバイスウェハ1の薄化は室温で切断にて行われるため、表面構造2に影響を及ぼさない。また、ワイヤソー8で輪切り状に切断して薄化するため、特許文献1の泥弱層による方法に比べて工程が単純であるとともに、水素イオン注入によるダメージがない。さらに、薄化された残りのウェハは再利用することができる。今後、薄化が進むと、残りのウェハ14の再利用化の効果がさらに増大する。また、初期のウェハの厚さが厚い程効果は大きくなる。
【0039】
また、特許文献1の方法では金属の支持版を貼り付けた後、表面構造を形成するため、高温で表面構造を形成することはできない。それと違って、本発明の方法ではWSSウェハを形成する前に、高温で表面構造2を形成できるため、
図5に示すウェル層25などを深い拡散層で形成できて、高耐圧デバイスを容易に製作することができる。
【0040】
また、この発明はSiCデバイスの他にGaN(窒化ガリウム)デバイスなどにも適用できる。勿論、Si(シリコン)デバイスにも適用できるが、SiCウェハ比べて安価であるので、残りのウェハを利用する効果は小さい。
【実施例2】
【0041】
図6および
図7は、この発明に係る第2実施例の半導体装置の製造装置の概略構成図である。
図6は全体の構成図である。
図7(a)および
図7(b)は
図6の矢印C方向から見た構成図であり、
図7(a)はワイヤソー8と回転部材36の断面図、
図7(b)は吸着チャック6とワイヤソー8の断面図である。この製造装置はデバイスウェハ1を輪切り状に切断するウェハ薄化装置である。
図6では、ワイヤソー8、吸着チャック6、回転部材36および伝動部35aなどの各部材が水平に配置されている例を示したが、垂直に配置される場合もある。また、各部材は図示しない筐体に固定されている。また、細線40は関連を示す線である。
【0042】
この製造装置は、デバイスウェハ1を挟んで支持する吸着チャック6と、吸着チャック6が固定する回転支持棒33と、吸着チャック6を回転させる第1駆動装置34と、デバイスウェハ1を切断するワイヤソー8と、ワイヤソー8を移動させる第2駆動装置35を備える。また、ワイヤソー8を張るための回転部材36(車輪)と吸着チャック6を真空にする真空ポンプ37および切断部10を冷却水11を放出する冷却ノズル9を備える。この冷却ノズル9は冷却器の一種である。
【0043】
吸着チャック6は、デバイスウェハ1を吸着するポーラスチャック31と、ポーラスチャック31を被覆するカバー32を備える。この吸着チャック6は回転支持棒33に固定され、回転支持棒33は第1駆動装置34である第1モータの回転軸とベルトを介して接続する。回転支持棒33の中心軸には貫通孔33aが配置され、この貫通孔33aから真空ポンプ37でポーラスチャック31の空気を吸引して真空状態にする。ポーラスチャック31とは内部が多孔質状になっているチャックのことである。
【0044】
ワイヤソー8は、ダイヤモンド粉末が焼き付けられた直径が50μm程度の鋼線(ワイヤ)である。このワイヤソーは、前記の回転部材36と第2駆動装置35である第2モータの伝動部35aに張られる。回転部材36はポーラスチャック31を挟んで離れて配置され、互いが離れる方向にバネ機構38で引っ張られ、ワイヤソー8が弛むのを防止している。バネ機構38は荷重制御ができ、切断に適した荷重で切断できる機能を有している。切断時には、ポーラスチャック31に取り付けられたWSSウェハ5の側面(デバイスウェハ1の側面1c)をワイヤソー8に接触させ、吸着チャック6の回転とワイヤソー8の移動によりデバイスウェハ1は輪切り状に切断される。尚、図中の符号で39は吸着チャック6の移動方向である。
【0045】
図8は、WSSウェハ5の切断時の説明図である。
図8(a)はWSSウェハ5を輪切り状に切断する製造装置の上面図である。
図8(b)は
図8(a)のB方向から見た要部断面図である。デバイスウェハ1の側面1c、4つの回転部材36、第2モータの伝動部35aの6か所を支点にワイヤソー8は引っ張られている。切断しないときは、4つの回転部材36と第2モータの伝動部35aの5か所の支点でワイヤソー8は張られている。また、切断時には冷却ノズル9から切断部10に常時冷却水が当てられ、切断時に発生する摩擦熱を除去している。また、切断したときに出る切り粉を除去するためにも冷却水は必要となる。
【0046】
尚、図中の符号で41はワイヤソー8の移動方向、42は吸着チャック6の回転方向、43は伝動部35aの回転方向、44は回転部材36の回転方向である。
【符号の説明】
【0047】
1 デバイスウェハ
1a おもて面
1b 裏面
1c 側面
1d エピタキシャルSiC膜
2 表面構造
3 接着剤
4 ガラス支持板
5 WSSウェハ
6 吸着チャック
8 ワイヤソー
9 冷却ノズル
10 切断部
11 冷却水
12 薄化されたデバイスウェハ
12b 裏面
13 薄化されたWSSウェハ
14 残りのウェハ
15 イオン注入
16 ドレイン層
17 ドレイン電極
18 ダイシングテープ
19 ダイシングブレード
20 半導体チップ
21 ダイシング方向
22 切断線
25 ウェル層
26 ソース層
27 ゲート絶縁膜
28 ゲート電極
29 層間絶縁膜
30 ソース電極
31 ポーラスチャック
32 カバー
33 回転支持棒
33a 貫通孔
34 第1駆動装置
35 第2駆動装置
36 回転部材
37 真空ポンプ
38 バネ機構
39 吸着チャックの移動方向
40 細線
41 ワイヤソー8の移動方向
42 吸着チャック6の回転方向
43 伝動部35aの回転方向
44 回転部材36の回転方向