特許第6598455号(P6598455)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 芦森工業株式会社の特許一覧 ▶ 芦森エンジニアリング株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6598455-管路及びその内張り方法 図000002
  • 特許6598455-管路及びその内張り方法 図000003
  • 特許6598455-管路及びその内張り方法 図000004
  • 特許6598455-管路及びその内張り方法 図000005
  • 特許6598455-管路及びその内張り方法 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6598455
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】管路及びその内張り方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 1/00 20060101AFI20191021BHJP
   B29C 63/34 20060101ALI20191021BHJP
【FI】
   F16L1/00 P
   B29C63/34
【請求項の数】9
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-237297(P2014-237297)
(22)【出願日】2014年11月25日
(65)【公開番号】特開2016-98924(P2016-98924A)
(43)【公開日】2016年5月30日
【審査請求日】2017年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000117135
【氏名又は名称】芦森工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】392008884
【氏名又は名称】芦森エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082027
【弁理士】
【氏名又は名称】竹安 英雄
(72)【発明者】
【氏名】八木 伊三郎
(72)【発明者】
【氏名】▲柄▼崎 和孝
(72)【発明者】
【氏名】塩唐松 善行
(72)【発明者】
【氏名】平子 健志朗
【審査官】 藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−184811(JP,A)
【文献】 特開2004−291564(JP,A)
【文献】 特開2004−278203(JP,A)
【文献】 特開平6−241348(JP,A)
【文献】 特開2003−082641(JP,A)
【文献】 特開2014−097611(JP,A)
【文献】 特開平10−054495(JP,A)
【文献】 特開2012−250452(JP,A)
【文献】 特開2012−127381(JP,A)
【文献】 特開2001−311387(JP,A)
【文献】 特開2012−254530(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 1/00
F16L 55/00
B29C 63/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設管(5)の内部に、硬質熱可塑性プラスチックよりなる管体(3)の外側に、繊維を筒状に織成してなる筒状織物(4)を一体に形成してなる筒状体(2)を挿通し、前記既設管(5)と筒状体(2)との間の間隔(7)にモルタル(8)を充填してなることを特徴とする、管路
【請求項2】
前記既設管(5)と筒状体(2)との間に、スペーサーを介在せしめたことを特徴とする、請求項1に記載の管路
【請求項3】
前記スペーサーが、前記筒状体(2)の表面に接着されたチップ(6)であることを特徴とする、請求項2に記載の管路
【請求項4】
前記スペーサーが、前記既設管(5)と筒状体(2)との間に介挿された、筒状金網(13)であることを特徴とする、請求項2に記載の管路
【請求項5】
前記筒状織物(4)を構成する糸条が、10000dtex以上であることを特徴とする、請求項1に記載の管路
【請求項6】
前記筒状織物(4)が、毛羽立ちを有する糸条よりなることを特徴とする、請求項1又は請求項5に記載の管路
【請求項7】
既設管(5)内に、硬質熱可塑性プラスチックよりなる管体(3)の外側に、繊維を筒状に織成してなる筒状織物(4)を一体に形成してなる筒状体(2)を挿通し、当該筒状体(2)内に加熱加圧流体を送入して前記硬質熱可塑性プラスチックを軟化させて断面円形に膨らませ、当該筒状体(2)を冷却して前記硬質熱可塑性プラスチックを剛直化せしめ、前記既設管(5)と筒状体(2)との両端間に妻型枠(11)を形成し、当該既設管(5)と筒状体(2)との間の間隔(7)にモルタル(8)を充填して硬化することを特徴とする、管路の内張り方法
【請求項8】
前記筒状体(2)の外面にチップ(6)を接着し、当該筒状体(2)を前記既設管(5)内に挿通して加熱加圧流体で断面円形に膨らませると共に、前記チップ(6)を既設管(5)の内面に当接せしめ、前記既設管(5)と筒状体(2)との間に前記間隔(7)を形成することを特徴とする、請求項7に記載の管路の内張り方法
【請求項9】
前記既設管(5)内に筒状金網(13)を挿通し、さらに当該筒状金網(13)内に前記筒状体(2)を挿通して、当該筒状体(2)内に加熱加圧流体を送入して断面円形に膨らませ、当該筒状体(2)の外面を前記筒状金網(13)の内面に当接せしめ、その硬質熱可塑性プラスチックを剛直化せしめ、前記既設管(5)と筒状体(2)との間に前記筒状金網(13)により前記間隔(7)を形成することを特徴とする、請求項7に記載の管路の内張り方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は管路及びその内張り方法に関するものであって、特に既設管に損傷部が生じたときにその損傷部を補修した管路の構造及び、その補修方法としての管路の内張り方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特開2012−127381号公報(特許文献1)には、硬化性樹脂液を含浸させた筒状の補修材を、その内外面を反転させながら既設管内に挿通し、前記硬化性樹脂液を硬化させたのち、既設管と補修材との間にモルタルを充填し、このモルタルを硬化させる方法が示されている。
【0003】
しかしながら、この方法では硬化性樹脂液を硬化させたのちにモルタルを充填して硬化させるので、モルタルを充填するときには硬化性樹脂液はすでに硬化しており、硬化性樹脂液の表面が滑らかになっているため、当該硬化した硬化性樹脂液とモルタルとの接着性が無く、両者が剥がれ易い。
【0004】
また実願昭61−162249号の出願公開(実開昭63−68588号)のマイクロフィルム(特許文献2)には、コンクリート管の内面全周に予め合成樹脂シートと嵩高繊維ファブリックとを貼り合わせたコンクリート管が記載されているが、この管はヒューム管などの短管に対して工場でライニングを施すものであって、既に設置された既設管に対してその現場において内張りすることができるものではなく、また複数のヒューム管などで構成した長尺の管路に対して、それらの複数の管の全体に亙って内張りすることができるものでもない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−127381号
【特許文献2】実願昭61−162249号の出願公開(実開昭63−68588号)のマイクロフィルム
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みなされたものであって、その内面に硬質熱可塑性プラスチックに繊維層を一体化した筒状体を有し、その筒状体を既設管内に挿通し、当該筒状体と既設管との間にモルタルを充填した管路であって、筒状体とモルタルとの接着性が良好であって両者が剥がれることがないことを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
而して本発明の管路は、既設管の内部に、硬質熱可塑性プラスチックよりなる管体の外側に、繊維を筒状に織成してなる筒状織物を一体に形成してなる筒状体を挿通し、前記既設管と筒状体との間の間隔にモルタルを充填してなることを特徴とするものである。
本発明においては、前記既設管と筒状体との間に、スペーサーを介在せしめることが好ましい。当該スペーサーとしては、前記筒状体の表面に接着されたチップであることができる。また他のスペーサーとして、前記既設管と筒状体との間に介挿された、筒状金網を使用することも可能である。
【0008】
本発明の複合管においては、前記筒状織物を構成する糸条として、10000dtex以上のものを使用することが好ましい。また前記筒状織物が、毛羽立ちを有する糸条よりなることも好ましいことである。
【0009】
次に本発明の管路の内張り方法は、既設管内に、硬質熱可塑性プラスチックよりなる管体の外側に、繊維を筒状に織成してなる筒状織物を一体に形成してなる筒状体を挿通し、当該筒状体内に加熱加圧流体を送入して前記硬質熱可塑性プラスチックを軟化させて断面円形に膨らませ、当該筒状体を冷却して前記硬質熱可塑性プラスチックを剛直化せしめ、前記既設管と筒状体との両端間に妻型枠を形成し、当該既設管と筒状体との間の間隔にモルタルを充填して硬化することを特徴とするものである。
【0010】
本発明においては、前記筒状体の外面にチップを接着し、当該筒状体を前記既設管内に挿通して加熱加圧流体で断面円形に膨らませると共に、前記チップを既設管の内面に当接せしめ、前記既設管と筒状体との間に前記間隔を形成することが好ましい。
【0011】
また本発明においては、前記既設管内に筒状金網を挿通し、さらに当該筒状金網内に前記筒状体を挿通して、当該筒状体内に加熱加圧流体を送入して断面円形に膨らませ、当該筒状体の外面を前記筒状金網の内面に当接せしめ、その硬質熱可塑性プラスチックを剛直化せしめ、前記既設管と筒状体との間に前記筒状金網により前記間隔を形成することも可能である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の管路によれば、筒状体の外面に繊維の筒状織物が露出しており、当該筒状織物に触れた状態でモルタルが充填され硬化しているので、当該筒状繊維の凹凸にモルタルが食い込むために接着力が極めて高く、容易に剥がれるようなことがない。また既設管の内面は鋼鉄又はコンクリートなどのモルタルと馴染みの良好な材料よりなるので、これも接着力が高くなる。
【0013】
特に前記筒状織物を構成する糸条として、10000dtex以上の糸条を使用することにより、当該糸条により大きな凹凸が生じ、そこにモルタルが食い込むために接着力が高くなる。また前記筒状織物として毛羽立ちを有する繊維を使用することにより、当該毛羽がモルタルに食い込むために接着量が向上する。
【0014】
また本発明の管路の内張り方法によれば、前記筒状体が、硬質熱可塑性プラスチックの外面に筒状織物を一体に形成してなるものであるので、これを加熱することにより硬質熱可塑性プラスチックが軟化し、長尺の既設管内において自由な経路に沿って敷設することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の管路の横断面図
図2】本発明の管路の中央縦断面図
図3】本発明の管路においてスペーサーとして筒状金網を使用した状態の中央縦断面図
図4】本発明の管路の内張り方法を示す中央縦断面図
図5】スペーサーとして筒状金網を使用した、本発明の管路の内張り方法を示す中央縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下本発明を図面に基づいて説明する。図1及び図2は、本発明の管路1を示す横断面図及び中央縦断面図であって、図4は本発明の内張りにより管路1を形成する方法の工程を示すものである。
【0017】
図1及び図2において、2は筒状体であって、硬質熱可塑性プラスチックよりなる管体3の外側に、繊維を筒状に織成してなる筒状織物4を一体に形成してなるものであって、既設管5内に挿通されている。
【0018】
当該筒状体2における筒状織物4は、ナイロン又はポリエステルなどの強度の大きい繊維が好ましく、特にたて糸及びよこ糸として、10000dtex以上の糸条を使用するのが好ましい。さらに当該糸条としては、スパン糸や巻縮加工糸などの毛羽を有する糸条を使用するのが好ましい。また管体3は、硬質熱可塑性プラスチックよりなるものであって、例えば硬質塩化ビニル樹脂などが使用される。
【0019】
そして当該筒状体2は例えば、筒状織物4の外側に管体3を押し出し成型により被覆し、当該管体3を加熱加圧流体で加熱して軟化させつつ、内側が外側となるように反転することにより形成する。
【0020】
そして当該筒状体2の外面には、周方向及び長さ方向に所定間隔ごとにスペーサーとしてのチップ6を接着し、前記既設管5と筒状体2との間隔を全周全長に亙って均一に保持している。当該チップ6の素材は特に限定されるものではなく、例えばポリスチレン発泡体などを使用することができる。
【0021】
そして前記既設管5と筒状体2との間の間隔7にはモルタル8が充填され、硬化せしめられており、前記既設管5の内面に筒状体2で補強されたモルタル8よりなる内張りを形成した管路が形成されている。
【0022】
而して前述のように筒状織物4のたて糸及びよこ糸として10000dtex以上の太い糸条を使用することにより、当該糸条が前記管体3のプラスチックやモルタル8に食い込むため、極めて高い接着力が得られる。
【0023】
次に図4に基づいて、本発明の管路1の製造方法を説明する。図4(a)は既設管5内に筒状体2を挿通した状態を示すものであって、当該筒状体2は前述の通り、前記硬質熱可塑性プラスチックよりなる管体3の外面に、前記筒状織物4を一体に形成したものであって、その筒状織物4の外面に周方向及び長さ方向に所定間隔ごとにスペーサーとしてのチップ6を接着している。
【0024】
次いで図4(b)に示すように、当該筒状体2の両端を蓋体9で封止し、当該蓋体9の一方に流体送入管10を取り付け、他方の蓋体9には流体排出管10´を取り付ける。そして前記流体送入管10から筒状体2内に加熱加圧流体を送入すると共に流体排出管10´から排出し、筒状体2内を加圧して断面円形に膨らませると共に、前記チップ6を介して既設管5の内面に圧接せしめる。これにより、既設管5と筒状体2との間には、チップ6により全長全周に亙って均一な間隔7が形成される。
【0025】
次いで流体送入管10からの加熱加圧流体を冷風などの冷却加圧流体に切り替えて、筒状体2を冷却し、前記管体3を構成する硬質熱可塑性プラスチックを冷却することにより剛直化せしめる。
【0026】
次いで筒状体2の両端から蓋体9を取り外し、図4(c)に示すように、前記既設管5と筒状体2との両端間に妻型枠11を形成し、一方の妻型枠11にモルタル充填管12を取り付け、当該モルタル充填管12から既設管5と筒状体2との間の間隔7にモルタル8を充填して硬化せしめる。
【0027】
次に図3及び図5に基づいて、本発明の他の形態を説明する。図3において既設管5内に筒状体2が挿通されており、筒状体2は管体3及び筒状織物4よりなっており、先の例と全く同様である。
【0028】
そして前記既設管5と筒状体2との間には、スペーサーとしての筒状金網13が介挿されており、既設管5と筒状体2との間隔7を全周全長に亙って一定に保持しており、当該間隔7内にモルタル8が充填されている。
【0029】
図5は既設管5に内張りを施して図3の管路1を形成する方法を示すものである。図5(a)は既設管5内に筒状金網13を挿通した状態を示すものである。筒状金網13は目が粗く、厚み方向の凹凸がある程度激しいものが好ましい。
【0030】
次いで図5(b)に示すように、当該筒状金網13内に筒状体2を挿通する。当該筒状体2は先の例と同様に、硬質熱可塑性プラスチックよりなる管体3の外面に筒状織物4を形成したものである。
【0031】
当該筒状体2の両端を蓋体9で封止し、流体送入管10から加熱加圧流体を送入して断面円形に膨らませ、その外面を前記筒状金網13の内面に当接せしめ、次いで冷却流体に切り替えて筒状体2を冷却する。これにより既設管5と筒状体2との間隔7は、筒状金網13により全周全長に亙って一定の大きさに保持される。
【0032】
次いで図5(c)に示すように、既設管5と筒状体2との両端間に妻型枠11を形成し、前記既設管5と筒状体2との間の間隔7にモルタル充填管12からモルタル8を充填して硬化せしめる。
【0033】
本発明の管路においては、筒状体2の外面に繊維の筒状織物4が露出しており、当該筒状織物に触れた状態でモルタル8が充填され硬化しているので、当該筒状繊維4の凹凸にモルタル8が食い込むために接着力が極めて高く、容易に剥がれるようなことがない。また既設管5の内面は鋼鉄又はコンクリートなどのモルタル8と馴染みの良好な材料よりなるので、これも接着力が高くなる。
【符号の説明】
【0034】
1 管路
2 筒状体
3 管体
4 筒状織物
5 既設管
6 チップ
7 間隔
8 モルタル
11 妻型枠
13 筒状金網
図1
図2
図3
図4
図5