(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記付勢部材は、前記押出部材が紙葉類を押し出しているときに、該紙葉類を、前記押出部材による押し出し方向と交差する方向に付勢することを特徴とする請求項1に記載の紙葉類処理装置。
前記制御部は、前記集積部に紙葉類を集積する際と、前記押出部材によって押し出される紙葉類を付勢する際とで、前記回転部材の回転数を変更することを特徴とする請求項6に記載の紙葉類処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、添付図面を参照して、本発明に係る紙葉類処理装置について詳細に説明する。本発明に係る紙葉類処理装置については、開口を有する集積部を備える装置であれば、処理対象とする紙葉類の種類は特に限定されないが、以下では、紙幣を処理対象とする紙幣処理装置を例に挙げて説明する。
【0027】
まず、本実施形態に係る紙幣処理装置(紙葉類処理装置)について概要を説明する。
図1は、紙幣処理装置1の外観を示す斜視図である。紙幣処理装置1は、側面にホッパ20及びリジェクト部50を有し、前面に2つの紙幣集積部30、40及び操作表示部70を有している。紙幣集積部30、40は、紙幣を抜き取るための開口を装置前面側に有し、内部で、傾斜した立位状態で紙幣を集積するようになっている。また、操作表示部70の左側には、装置背面側に向けて押し込むことにより前面側へ飛び出してくるプッシュオープン式のゴミトレイ71が配置されている。搬送部によって装置内の搬送路で紙幣を搬送する際に発生する紙粉等のゴミを、ゴミトレイ71に集めて装置外へ取り出せるようになっている。
【0028】
なお、本実施形態では、装置の四側面のうち操作表示部70が設けられた装置手前側を前面として、紙幣処理装置1の前面側から操作表示部70を操作する操作者から見て右手側の側面を右側面、左手側の側面を左側面、裏面側を背面と呼ぶ。また、本実施形態では、
図1に示すように、装置左側面から右側面へ至る方向をX軸方向、装置前面から背面へ至る方向をY軸方向、装置底面から上面へ至る方向をZ軸方向として示す。
【0029】
紙幣処理装置1は、上部ユニット11及び下部ユニット12を含み、ホッパ20、リジェクト部50及び操作表示部70は上部ユニット11に設けられ、紙幣集積部30、40は下部ユニット12に設けられている。上部ユニット11の前面右下には筐体前面から背面側に向かって窪んだ凹部51が形成されている。リジェクト部50の集積空間と凹部51内の空間とが接続され、リジェクト部50内のリジェクト紙幣の有無確認やリジェクト部50からのリジェクト紙幣の取り出しを容易に行えるようになっている。
【0030】
ホッパ20は、装置内部へ紙幣を取り込む取込部として機能する。具体的には、ホッパ20には、積層状態で載置された紙幣を短手側(Y軸方向)から支持するガイド部材21が設けられており、積層された紙幣は一番下の紙幣から順に1枚ずつ装置内に繰り出されるようになっている。
【0031】
また、リジェクト部50には、装置内の搬送路からリジェクト部50の集積空間内に排出されるリジェクト紙幣が外部へ飛び出さないように停止させる2つのストッパ部材52と、集積空間内に停止したリジェクト紙幣を上から抑える抑え部材53とが設けられている。
【0032】
前面側に開口を有する2つの紙幣集積部30、40は、下部ユニット12の左右両外側に設けられている。ホッパ20から装置内に繰り出された紙幣は、装置内で識別部によって識別計数される。そして、紙幣集積部30、40への集積対象であると識別された紙幣は、識別結果に応じて第1紙幣集積部30又は第2紙幣集積部40に集積され、集積対象外の紙幣や識別部によって識別できなかった紙幣等は、リジェクト紙幣としてリジェクト部50に集積される。
【0033】
紙幣集積部30、40の内部には、羽根車33、43が2つずつ設けられており、この羽根車33、43が回転しながら、搬送部によって装置内を搬送されて紙幣集積部30、40内に排出された紙幣を受けて整列状態で集積するようになっている。
【0034】
図2は、第1紙幣集積部30の構造を示す図である。なお、第1紙幣集積部30内には、2つの羽根車33がY軸方向に離れた位置に設けられている(
図5の羽根車33a、33b参照)。2つの羽根車33は、Y軸方向から見た際に各羽根の位置が重なる位置関係で同一回転軸上に固定されている。
【0035】
第1紙幣集積部30では、搬送部によって装置内を搬送された紙幣が、右側壁30cの上部から集積部内へ排出される。排出された紙幣は、Y軸周りに反時計回りに回転する羽根車33によって、左側壁30bへ向けて送られる。左側壁30bは、その上部を左側、下部を右側とする形で傾斜している。羽根車33によって左側壁30bへ送られた紙幣は、傾斜した左側壁30bの壁面と紙幣面とが平行となるように積層され、傾斜した立位状態で集積される。すなわち、紙幣は、短手を前方に向けて長手を底面30aに接した状態で、短手の下側よりも短手の上側を装置の外側方向とする傾斜した立位状態で集積される。
【0036】
第2紙幣集積部40は第1紙幣集積部30と同様の構造を有し、
図2に示す第1紙幣集積部30を左右反転すれば第2紙幣集積部40を示す構造となる。第2紙幣集積部40では、左上部から排出された紙幣が、Y軸周りに時計回りに回転する羽根車43によって紙幣集積部内の右側壁へ送られて、紙幣面が、上部を右側、下部を左側とする形で傾斜した右側壁の壁面と平行となるように、傾斜した立位状態で集積される。なお、
図2には示していないが、第1紙幣集積部30及び第2紙幣集積部40には、内部に集積された紙幣を検知するための紙幣検知センサが設けられている。
【0037】
次に、押出部材34について説明する。第1紙幣集積部30の集積空間内には、背面側に、押出部材34が設けられている。同様に、第2紙幣集積部40の集積空間内でも背面側に押出部材44が設けられている(
図4参照)。第1紙幣集積部30及び第2紙幣集積部40では、押出部材34、44が前方へ移動することにより、紙幣集積部内に集積されている全ての紙幣が、開口へ向けて押し出されるようになっている。押出部材34、44の構造及び押出部材34、44を移動させるための駆動機構は、第1紙幣集積部30と第2紙幣集積部40とで同じであるため、以下では、第1紙幣集積部30について説明する。
【0038】
図3は、第1紙幣集積部30の内部に設けられた押出部材34の構造及び押出部材34を移動させる駆動機構を示す斜視図である。
図3では、第1紙幣集積部30の集積空間内で羽根車33によって送られた紙幣が紙幣面を接触するようにして集積される装置外側(X軸負方向側)の左側壁30bと、装置に固定された左側壁30bに沿って前後方向(Y軸方向)にスライド移動可能に設けられた押出部材34と、押出部材34を駆動する駆動機構とを示している。
図3(A)は紙幣集積時の押出部材34の位置である退避位置を示し、同図(B)は内部に集積された紙幣を前方へ押し出した際の押出部材34の位置である押出位置を示している。
【0039】
押出部材34は、背面板34a、底面板34b及び側面板34cを一体化した構造を有している。背面板34a、底面板34b、側面板34cは薄板形状を有している。背面板34aの外周縁部には、鋸歯状の突起が複数設けられており、この突起と噛み合うように、集積空間を形成する壁面の対応する位置に、前後方向に溝が設けられている。押出部材34が移動する際に、背面板34aの突起が壁面の溝内を移動することにより、押出部材34と壁面との間の隙間に紙幣が入りこまないようになっている。また、側面板34cの面形状を背面板34aの突起に合わせて段差を有する形状として、左側壁30bをこの面形状に合わせた形状とすることで、押出部材34が移動する際に、側面板34cと左側壁30bとの間の隙間に紙幣が入り込まないようになっている。
【0040】
押出部材34を前後にスライド移動させる駆動機構は、押出部材駆動部として機能するモータ120と、モータ120によって回転するカムプレート121と、カムプレート121によって駆動されるリンクプレート122とによって構成されている。カムプレート121の回転が、リンクプレート122によって押出部材34の前後運動に変換される。
【0041】
押出部材34は横方向(X軸方向)及び上下方向(Z軸方向)の動きが規制され、前後方向にのみスライド移動可能に支持されている。押出部材34の底面板34bの裏側に突出して設けられた軸に、リンクプレート122の一端が回転可能に取り付けられている。また、リンクプレート122の他端は装置に固定された回転軸122bに回転可能に取り付けられている。リンクプレート122には、細長い貫通孔122aが設けられており、この貫通孔122aには、一端がモータ120の回転軸に接続されたカムプレート121の他端側の軸が挿入されている。モータ120によってカムプレート121を回転させると、リンクプレート122の貫通孔122a内で、カムプレート121の軸が往復移動する。この往復移動によって、回転軸122bで支持されたリンクプレート122の他端が前後に移動し、この他端に接続された押出部材34が前後に移動するようになっている。
【0042】
背面板34aの裏側には図示しないセンサが設けられており、このセンサが、押出部材34が退避位置に戻ったことを検知する。押出部材34が退避位置に戻ったことが検知されると、モータ120の回転が停止するようになっている。また、リンクプレート122の軸122cには、
図3に矢印で示した方向に引張力を作用させる図示しないバネ部材が取り付けられており、モータ120の停止時には、バネ部材の引張力によってリンクプレート122が動いて、押出部材34が退避位置に戻るようになっている。
【0043】
図4は、紙幣集積部40内での押出部材44の退避位置及び押出位置を示す図である。
図4は紙幣処理装置1を右側から見た図を示しており、上部ユニット11を外観で示し、下部ユニット12を断面模式図で示している。
図4(A)は第2紙幣集積部40の押出部材44が退避位置にある状態を示し、同図(B)は押出部材44が押出位置にある状態を示している。なお、
図4では、第2紙幣集積部40の押出部材44を例に説明するが、第1紙幣集積部30の押出部材34も同様に動作する。
【0044】
図4(A)に示すように、第2紙幣集積部40内には2つの羽根車43a、43bが設けられている。ホッパ20から装置内に繰り出されて装置内を搬送され、紙幣集積部内に排出された紙幣15は、羽根車43a、43bによって装置右外側へ向けて送られて、傾斜した立位状態で、図中に破線で示したように集積される。
【0045】
押出部材44は、
図4(B)に示すように、背面側にある羽根車43aより背面側で押出位置まで移動する。これにより、集積された紙幣15の前方側短手が、第2紙幣集積部40の開口側へ押し出された状態となり、傾斜した立位状態にある紙幣15の前端を掴んで容易に抜き取ることができる。なお、押出部材44は、押出位置に達した後、
図4(A)に示す退避位置まで戻って停止するようになっている。
【0046】
紙幣処理装置1では、押出部材34、44によって、紙幣集積部30、40に集積されている紙幣を押し出す際に、押し出される紙幣が装置内の凹凸や他の構成部材に引っかからないように、この紙幣を付勢部材によって付勢する点に1つの特徴を有している。
【0047】
図5は、第1紙幣集積部30内の構造を示す図である。
図5は、第1紙幣集積部30を上方から見た様子を模式的に示しており、装置前方側の開口が図面下側となっている。なお、第2紙幣集積部40は、
図5に示す配置を左右反転したものと同一となるため、第2紙幣集積部40に関する説明は省略して、第1紙幣集積部30について説明する。
【0048】
第1紙幣集積部30で集積空間を形成する右側壁30cには、開口133a、133bが設けられている。
図2に示すように、2つの羽根車33a、33bの一部が、この開口133a、133bから集積空間内へ露出している。
【0049】
搬送路を搬送された紙幣は、
図5に矢印100で示したように、右側から紙幣集積部内に排出される。排出された紙幣は、2つの羽根車33a、33bの羽根の間に受け止められ、左側壁30b側へ送られて集積される。このとき、
図5に破線で示したように、折れ曲がった状態で集積される紙幣15aや、開口133bに引っかかった状態で集積される紙幣15bが含まれる場合がある。この状態で押出部材34による押し出しを行うと、開口133bや羽根車33bに引っかかった紙幣15a、15bを押し出せない場合がある。これを回避するため、紙幣処理装置1では、押出部材34による押し出しを行う際に、羽根車33a、33bを付勢部材として利用する。
【0050】
具体的には、羽根車33a、33bを、紙幣集積時と同様に、Y軸周りに反時計回り(
図5右から左方向)に回転させることにより、紙幣15a、15bに、左側壁30b側へ付勢する力を作用させて、この状態で、押出部材34による押し出しを行う。羽根車33a、33bを回転させることにより、付勢された紙幣15a、15bは、羽根車33a、33b及び開口133a、133bから離れる方向へ押しやられることになる。羽根車33a、33bを回転させたままの状態で、押出部材34による押し出しを行うことにより、全ての紙幣を開口側へ確実に押し出すことができる。
【0051】
紙幣処理装置1では、羽根車33、43の回転速度及び回転方向を制御できるようになっている。具体的には、押出部材34、44によって紙幣を押し出す際の羽根車33、43の回転速度と、搬送部によって装置内を搬送されてきた紙幣を集積する際の羽根車33、43の回転速度とを、同じ回転速度とすることもできるし、異なる回転速度とすることもできる。また、押出部材34、44によって紙幣を押し出す際の羽根車33、43の回転方向と、搬送部によって装置内を搬送されてきた紙幣を集積する際の羽根車33、43の回転方向とを、同じ回転方向とすることもできるし、異なる回転方向とすることもできる。
【0052】
例えば、紙幣処理を高速に行うために紙幣を集積する際には羽根車33、43を高速回転させて、羽根車33、43を、押出部材34、44によって押し出される紙幣を付勢する付勢部材として利用する際には、回転速度を落として低速で回転させる。
【0053】
また、羽根車33a、43aを付勢部材として利用する際には、羽根車33、43を一定の回転速度で回転させることもできるし、回転速度を変更しながら回転させることもできる。また、押出部材34による押し出しを行う間、羽根車33、43を連続して回転させることもできるし、回転と停止を繰り返すように間欠的に回転させることもできる。また、回転方向についても、反時計回り又は時計回りに常に同じ回転方向に回転させる他、回転方向を変更することもできる。
【0054】
例えば、第1紙幣集積部30で、最初の所定時間だけ又は所定の数回転の間だけ羽根車33を時計回りに回転させて、開口133bに引っかかった紙幣15bを開口133bから離れるように押しやった後、羽根車33の回転方向を変更して、紙幣15bを左側壁30bの方へ押しやるように反時計回りに回転させる。また、例えば、回転方向を時計回り及び反時計回りに連続して変更することにより、羽根車33、43を揺動するように回転させる。
【0055】
紙幣を押し出す際に、羽根車33、43をどのように回転させるかについては、予め設定できるようになっている。押出部材34、44によって紙幣を確実に押し出すため、羽根車33、43をどのように回転させて紙幣を付勢するのが有効であるかについては、紙幣集積部30、40及び羽根車33、43の構造や位置関係、紙幣集積部30、40に集積される紙幣サイズや紙質等によって異なるため、これらを考慮して、回転速度及び回転方向を含む羽根車33、43の回転方法を設定する。
【0056】
図6は、付勢部材として機能する羽根車33、43の動作と押出部材34、44の動作とを制御する機能部を示すブロック図である。紙幣処理装置1は、各種の紙幣処理を行う機能を有するが、
図6には、本実施形態の説明に必要な機能部のみを示している。
【0057】
紙幣処理装置1は、操作表示部70と、制御部110と、押出部材駆動部120と、羽根車駆動部(付勢部材駆動部)130と、紙幣検知センサ140とを有している。操作表示部70はタッチパネル式の液晶表示装置で、紙幣処理に関する情報入力や指示命令等の操作を行うことができる。また、紙幣の識別計数結果等、紙幣処理に関する各種情報を操作表示部70に表示することができる。押出部材駆動部120は、紙幣集積部30、40内の紙幣を押し出すために押出部材34、44を駆動する機能を有する。
図3に示すモータ120が、退避位置と押出位置との間で押出部材34、44をスライド移動させる押出部材駆動部120として機能する。紙幣検知センサ140は、紙幣集積部30、40内に集積された紙幣の有無を検知するセンサである。
【0058】
羽根車駆動部130は、押出部材34、44によって紙幣を押し出す際に、羽根車33、43を駆動する機能を有する。羽根車駆動部130は、紙幣を付勢する付勢部材として機能する羽根車33、43を駆動する付勢部材駆動部である。
【0059】
制御部110は、紙幣処理制御部111、押出部材制御部112及び付勢部材制御部113を有している。紙幣処理制御部111は、ホッパ20に載置された紙幣を1枚ずつ装置内に繰り出して、搬送部によって搬送路を搬送して識別部によって識別計数すると共に、識別結果に基づいて紙幣集積部30、40又はリジェクト部50へ集積する紙幣処理を実行する機能を有する。
【0060】
紙幣処理装置1では、ホッパ20に載置された全ての紙幣を、紙幣集積部30、40及びリジェクト部50のいずれかに集積するまで処理を続ける動作モードの他、紙幣集積部30、40に集積された紙幣の集積枚数が所定枚数に達する度に、集積された所定枚数の紙幣を抜き取るバッチ処理を行うことも可能となっている。バッチ処理では、紙幣集積部30、40に集積された紙幣の集積枚数が所定枚数になると、この紙幣集積部30、40への紙幣の集積を停止して、集積された所定枚数の紙幣が前面開口から抜き取られたことを紙幣検知センサ140によって検知すると再び紙幣の集積を開始する動作が、ホッパ20に載置された紙幣がなくなるまで繰り返される。
【0061】
押出部材制御部112は、押出部材駆動部120を制御することにより、押出部材34、44による紙幣の押出動作を制御する機能を有する。また、付勢部材制御部113は、付勢部材駆動部として機能する羽根車駆動部130を制御することにより、付勢部材として機能する羽根車33、43による付勢動作を制御する機能を有する。紙幣を付勢する際の羽根車33、43の回転方法は、予め設定されているので、付勢部材制御部113は、この設定内容に基づいて羽根車駆動部130を制御する。
【0062】
図7は、羽根車33、43の回転を制御しながら、押出部材34、44によって紙幣集積部30、40内の紙幣を押し出す処理の流れを示すフローチャートである。紙幣処理制御部111によって紙幣処理が開始された後、紙幣集積部30、40に集積された紙幣の押し出しが必要となる迄の間は(ステップS1;No)、押出部材34、44は、集積部内背面側の退避位置に停止した状態にある。
【0063】
例えば、ホッパ20に載置された全ての紙幣が紙幣集積部30、40及びリジェクト部50のいずれかへ集積された後、紙幣処理装置1の利用者は、操作表示部70に表示された紙幣処理の処理結果を確認して、この処理を確定する操作を行う。
【0064】
また、例えば、ホッパ20に載置された全ての紙幣が装置内に繰り出されて、紙幣集積部30、40及びリジェクト部50のいずれかへ集積された後、予め設定された所定時間を経過しても利用者による確定操作がなされなかった場合には、自動的に処理が確定される。
【0065】
また、例えば、ホッパ20に載置された紙幣の中に、セパレータカードと呼ばれる所定の紙葉類が含まれている場合には、識別部がセパレータカードを検出した際に、自動的に処理が確定される。セパレータカードとは、異なる取引の紙幣をひとまとめにしてホッパ20に載置して処理する際に、各取引の紙幣を区別できるように、異なる取引の紙幣の間に挿入する紙葉類で、例えば、バーコード等の所定の記号や、所定の文字等が表面に印刷されている。ホッパ20に載置された紙幣は1枚ずつ順に装置内に取り込まれて識別部によって識別計数されるが、識別部が所定の記号や文字等に基づいてセパレータカードを検出すると、紙幣処理制御部111が、このセパレータカードを検出する前に処理された紙幣とセパレータカードを検出した後に処理される紙幣とが異なる取引の紙幣であることを認識して、紙幣処理を停止する。そして、紙幣処理制御部111は、検出されたセパレータカードよりも前の取引を確定する。
【0066】
なお、ホッパ20に載置された複数取引の紙幣を取引別に区別する方法については、セパレータカードを利用する他、紙幣を利用する態様であっても構わない。例えば、紙幣処理装置1が取引の境となる紙幣の記番号を事前に取得しておいて、この記番号に基づいて各取引の紙幣を区別する。境となる紙幣は、先の取引の最後の紙幣であってもよいし、後の取引の最初の紙幣であってもよい。具体的には、紙幣から読み取った記番号に基づいて、先の取引の最後の紙幣を検出したら、この紙幣を紙幣集積部30、40に集積した所でこの取引を確定する態様であってもよいし、後の取引の最初の紙幣を検出したら、この紙幣の直前の紙幣を集積した所で先の取引を確定する態様であっても構わない。
【0067】
こうして紙幣処理が確定されると、紙幣処理制御部111は、押出部材制御部112及び付勢部材制御部113へ、紙幣処理が確定したことを通知する。これを受けた押出部材制御部112及び付勢部材制御部113は、紙幣集積部30、40に集積された紙幣の押し出しが必要であると判定する(ステップS1;Yes)。
【0068】
紙幣処理を確定して、羽根車33、43の回転が既に停止している場合は(ステップS2;No)、付勢部材制御部113が、羽根車駆動部130を制御して、羽根車33、43の回転を開始する(ステップS3)。羽根車33、43が回転を開始した後、押出部材制御部112が、押出部材駆動部120を制御して、押出部材34、44による紙幣の押し出しを開始する(ステップS4)。押出部材34、44が、紙幣集積部30、40の内部で、集積された紙幣を押し出しながら退避位置から開口側へ移動して、押出位置に到達すると、これを認識した付勢部材制御部113は、羽根車駆動部130を制御して、羽根車33、43の回転を停止させる(ステップS5)。押出部材34、44は、押出位置へ到達した後も引き続き押出部材駆動部120によって駆動され、退避位置へ移動して停止する。なお、押出部材34、44が押出位置へ到達したことの検知は、これを検知するセンサを設けて行う態様であってもよいし、押出部材駆動部として機能するモータ120の回転等に基づいて行う態様であってもよい。
【0069】
紙幣処理装置1の利用者は、羽根車33、43が停止した状態で、開口側へ押し出された紙幣を紙幣集積部30、40から抜き取ることができる。紙幣を開口側へ押し出した後、既にホッパ20に残る紙幣はなく紙幣処理が完了している場合は(ステップS7;Yes)、そのまま処理を終了する。一方、セパレータカードを検出したことによる確定であり、処理対象とする紙幣がホッパ20に残っている場合には(ステップS7;No)、紙幣処理制御部111が、確定した取引の紙幣が紙幣集積部30、40の開口から抜き取られたことを紙幣検知センサ140によって検知して、次の取引の紙幣処理を開始する(ステップS1)。
【0070】
羽根車33、43は、押出部材34、44による押し出しを開始する前に回転を開始して、押し出しを完了した後に回転を停止する。すなわち、押出部材34、44が退避位置から押出位置へ移動する間は、羽根車33、43が回転するようになっている。ただし、羽根車33、43の回転開始及び回転停止のタイミングについても、設定により変更することができる。例えば、押出部材34、44が移動を開始してから羽根車33、43の回転を開始するように設定することもできる。また、例えば、押出部材34、44が押出位置へ至るより前に羽根車33、43の回転を停止するように設定することもできるし、押出部材34、44が押出位置まで移動した後、退避位置に戻る間も羽根車33、43の回転を継続するように設定することもできる。羽根車33、43の回転の開始及び停止のタイミングは、紙幣集積部30、40及び羽根車33、43の構造や位置関係、紙幣集積部30、40に集積される紙幣サイズや紙質等によって、紙幣の押し出しを確実に行えるように予め設定される。
【0071】
紙幣処理装置1で行われている紙幣処理がバッチ処理である場合には、予め設定された所定枚数の紙幣が紙幣集積部30、40に集積されて紙幣の集積が停止すると、紙幣処理制御部111が、押出部材制御部112及び付勢部材制御部113にこれを通知する。通知を受けた押出部材制御部112及び付勢部材制御部113は、紙幣集積部30、40に集積された紙幣の押し出しが必要であると判定する(ステップS1;Yes)。
【0072】
処理対象とする紙幣が、まだホッパ20に残っており、羽根車33、43が回転している場合には(ステップS2;Yes)、押出部材制御部112が、押出部材駆動部120を制御して、押出部材34、44による押し出しを実行する(ステップS6)。羽根車33、43が回転を継続している状態で、押出部材34、44は、退避位置から押出位置へ移動して、集積部内に集積された紙幣を開口側へ押し出した後、再び退避位置へ戻って停止する。ホッパ20にはまだ紙幣が残っているので(ステップS7;No)、押し出された紙幣が紙幣集積部30、40の開口から抜き取られると、紙幣検知センサ140によってこれを検知した紙幣処理制御部111が、紙幣が抜き取られた紙幣集積部30、40への紙幣の集積を再開する(ステップS1)。
【0073】
一方、バッチ処理を行っている場合でも、ホッパ20に載置された全ての紙幣の処理を終了して、全ての紙幣が紙幣集積部30、40及びリジェクト部50のいずれかへ集積された状態で紙幣の押し出しを行う場合には(ステップS1;Yes)、羽根車33、43の回転は停止しているので(ステップS2;No)、上述したようにステップS3〜S5が実行される。この場合は、紙幣の押し出しを終了して、押出部材34、44が退避位置へ戻った後、バッチ処理は既に完了しているので(ステップS7;Yes)、そのまま処理を完了することになる。
【0074】
バッチ処理のように、紙幣処理の途中で押出部材34、44による押し出しを行う場合には、紙幣処理を行うために回転している羽根車33、43の回転動作を維持したままで、押出部材34、44による押し出しを実行する。ただし、羽根車33、43の回転速度及び回転方向を、紙幣処理中とは異なる回転速度及び回転方向に変更するよう設定することも可能となっている。
【0075】
なお、バッチ処理の途中で紙幣の押し出しを行う場合には、紙幣の集積が停止されて、所定枚数の紙幣の押し出しが必要となった紙幣集積部30、40のみで紙幣の押し出しが行われ、紙幣を集積中の紙幣集積部30、40ではそのまま紙幣処理が継続される。
【0076】
第1紙幣集積部30及び第2紙幣集積部40のそれぞれに、独立して、押出部材34、44と、押出部材駆動部120と、付勢部材として機能する羽根車33、43と、羽根車駆動部130とが設けられている。また、紙幣処理時に装置内の搬送路で紙幣を搬送する搬送部と、押出部材駆動部120と、羽根車駆動部130とは、それぞれが独立して設けられている。すなわち、搬送部を含む駆動機構(第1駆動機構)による紙幣の搬送と、押出部材駆動部120を含む駆動機構(第2駆動機構)による押出部材34、44の移動と、羽根車駆動部130を含む駆動機構(第3駆動機構)による羽根車33、43の回転とを、独立して行うことができる。
【0077】
具体的には、例えば、第1紙幣集積部30で羽根車33を回転しながら紙幣を集積する紙幣処理を実行している状態で、第2紙幣集積部40で紙幣の集積を停止することができる。このとき、さらに第2紙幣集積部40では、押出部材34及び羽根車43を停止させることもできるし、押出部材34のみを移動させたり、羽根車43のみを回転させたり、羽根車43を回転させながら押出部材34を移動させたりすることができる。
【0078】
紙幣処理時に紙幣を集積するために利用する羽根車33、43が、押出部材34、44によって紙幣を押し出す際には、押出部材34、44によって押し出される紙幣を付勢する付勢部材として機能する。このとき、羽根車33、43が、紙幣と接触する部分に叩き部を有する態様としてもよい。
【0079】
図8は、叩き部160が設けられた羽根車33の例を示す図である。
図8は、第1紙幣集積部30を前面側から見た図を示している。なお、
図8には、第1紙幣集積部30内の羽根車33を示しているが、第2紙幣集積部40内の羽根車43も同様の構造を有している。
【0080】
図8に示すように、羽根車33を形成する羽根の径方向外方先端に、紙幣を叩く叩き部160を設ける。
図8の例では、羽根車33を形成する16枚の羽根に、1枚おきに合計8個の叩き部160を設けた例を示しているが、叩き部160の個数は特に限定されない。また、叩き部160は、例えば、樹脂製の羽根車33の羽根と一体成形される態様であってもよいし、樹脂製又はゴム製の叩き部160を羽根車33の羽根に取り付ける態様であっても構わない。
【0081】
また、紙幣集積部30、40内に、羽根車33、43とは別に、付勢部材を設ける態様であってもよい。
図9〜
図12は、羽根車33、43と独立して設けられた付勢部材の例を示す図である。
図9は第1紙幣集積部30を前面側から見た図を示し、
図10〜
図12は第1紙幣集積部30を上方から見た図を示している。なお、
図9〜
図12には、第1紙幣集積部30を示しているが、第2紙幣集積部40にも同様の付勢部材が設けられる。
【0082】
図9は、集積部天面に、回動可能に設けられた付勢部材の例を示す図である。
図9に示す例では、紙幣が集積される集積空間の天面で、Y軸方向に離れた位置に設けられた2つの羽根車33(33a、33b)の間の位置にある支持軸170を中心として、矢印で示したように回動可能な付勢部材171が設けられている。付勢部材171の先端部172は、ゴム等の弾性部材で形成されている。付勢部材171は、図示しない付勢部材駆動部130によって、
図9に示す退避位置と、支持軸170を中心として回動して先端部172が紙幣15に接触した状態でこれを付勢する付勢位置との間で移動する。押出部材34により紙幣15を開口側へ押し出す際に、付勢部材制御部113が付勢部材駆動部130を制御して、付勢部材171を付勢位置まで回動させることにより、紙幣15を左側壁30b側へ付勢する。そして、押出部材34による押し出しを終えると、付勢部材171を退避位置へ退避させる。
【0083】
図10は、集積部側面の開口133cに、進退可能に設けられた付勢部材の例を示す図である。
図10に示す例では、集積空間を形成する右側壁30cに設けられた開口133cに、矢印101で示したように進退可能な付勢部材173が設けられている。付勢部材173の先端には、回転可能に支持されたローラ174が取り付けられている。このローラ174は、押出部材34によって押し出される紙幣が矢印103で示した方向に移動する際に、この移動に合わせて矢印102で示したように回転するように支持されている。これにより、付勢部材173によって紙幣15を左側壁30b側へ付勢している間も、押し出される紙幣15で、押し出しに抗する抵抗が生じ難く、紙幣が円滑に移動する。この付勢部材173は、図示しない付勢部材駆動部130によって、
図10に示す押出位置と、開口133cより右側、すなわち集積空間の外側(右側壁30cより右側)へ移動した退避位置との間で移動する。押出部材34により紙幣15を開口側へ押し出す際に、付勢部材制御部113が付勢部材駆動部130を制御して、付勢部材173を付勢位置へ移動させることにより、紙幣15を左側壁30b側へ付勢する。そして、押出部材34による押し出しを終えると、付勢部材173を退避位置へ退避させる。
【0084】
なお、
図9に示す付勢部材171の先端部172を、
図10と同様に、紙幣15の押し出し方向に回転可能に支持されたローラとする構成であってもよいし、
図10に示す付勢部材173の先端を、ローラ174に代えて、
図9と同様に弾性部材とする態様であってもよい。また、押し出される紙幣15に押し出しに抗する抵抗力を生じさせないようにする構成が、ローラ174に限定されるものではなく、任意方向に回転可能に支持されたボール等を利用する態様であっても構わない。
【0085】
また、付勢部材171、173の数が1つに限定されるものではなく複数設ける態様であってもよい。例えば、
図9に示す付勢部材171を、例えばY軸方向に離れた位置に、複数設ける態様であってもよい。また、支持軸170から先端部172までの長さを変更して、紙幣15を付勢するZ軸方向の位置を変更するようにしてもよい。同様に、
図10に示す付勢部材173を、例えば、Y軸方向に離れた位置に複数設ける態様であってもよいし、Z軸方向に離れた位置に複数設ける態様であってもよい。
【0086】
図11は、風圧によって紙幣15を付勢する付勢部材の例を示す図である。
図11に示す付勢部材は、集積空間を形成する右側壁30cに設けられた吹出孔175と、吹出孔175から空気を吹き出して矢印104で示したように紙幣15に風圧を与える送風ユニット176とによって構成される。送風ユニット176と吹出孔175との間は、硬質のパイプや可撓性を有するチューブ等によって接続されており、送風ユニット176から送り出した空気を吹出孔175から吹き出すようになっている。押出部材34により紙幣15を開口側へ押し出す際に、付勢部材制御部113が送風ユニット176を制御することにより吹出孔175から空気を吹き出して、紙幣15に風圧を与えることによって、これを左側壁30b側へ付勢する。そして、押出部材34による押し出しを終えると、送風ユニット176を停止させる。なお、吹出孔175の形状及び数は一例であって、
図11に示す例に限定されるものではない。例えば、円形状の吹出孔を多数設ける態様であってもよいし、吹出孔の形状を、
図11のX軸方向に細長いスリット状とする態様であってもよい。
【0087】
図12は、風圧によって紙幣15を付勢する付勢部材の他の例を示す図である。
図12に示す付勢部材は、集積空間を形成する右側壁30cに設けられた送風ユニット177によって構成される。送風ユニット177は、矢印105で示したように空気を吹き出すようになっている。押出部材34により紙幣15を開口側へ押し出す際に、付勢部材制御部113が送風ユニット177を制御することにより空気を吹き出して、紙幣15に風圧を与えることによって、これを左側壁30b側へ付勢する。そして、押出部材34による押し出しを終えると、送風ユニット177を停止させる。
【0088】
本実施形態では、2つの紙幣集積部30、40のそれぞれに、羽根車33、43を2つずつ設けた例を示したが、紙幣集積部30、40の数や羽根車33、43の数は特に限定されない。また、羽根車33、43の他、従来利用されている札叩き車と呼ばれる回転部材を、付勢部材として利用する態様であっても構わない。具体的には、回転軸によって支持されて回転駆動される軸部と、該軸部から径方向に延びた腕部とを有する回転部材であれば、上述した羽根車33、43と同様に回転しながら腕部によって紙幣を付勢する付勢部材として利用することができる。なお、腕部の数は特に限定されない。また、腕部の径方向外方先端に
図8に示すように叩き部160が形成された態様であってもよい。
【0089】
また、紙幣集積部30、40で紙幣の押し出しが必要になったことを制御部110が認識して自動的に、押出部材34、44による押し出しや、付勢部材として機能する羽根車33、43による付勢を行う例を示したが、本実施形態がこれに限定されるものではない。例えば、紙幣処理装置1の利用者が、操作表示部70で紙幣の押し出しを指示する操作を行うことにより、紙幣の押し出し及び付勢が行われる態様であってもよい。
【0090】
また、紙幣集積部30、40で紙幣を押し出す際に、紙幣集積部30、40内の紙幣の集積状態に応じて、紙幣の付勢が必要である場合にのみ紙幣を付勢する態様であってもよい。具体的には、紙幣集積部30、40内の紙幣を検知する紙幣検知センサ140を、
図5に示すように集積状態が悪く、押し出す際に付勢が必要である紙幣15a、15bを検知できるように配置する。そして、紙幣集積部30、40の紙幣を押し出す際には、付勢部材制御部113が、先に、紙幣検知センサ140によって紙幣の集積状態を検知して紙幣の付勢が必要であるか否かを判定する。集積状態の悪い紙幣があるため紙幣を付勢する必要があると判定した場合には、上述したように、付勢部材駆動部130を制御して紙幣15a、15bを付勢する。一方、紙幣が整列状態で集積されており、付勢する必要はないと判定した場合には付勢を行わないようにする。
【0091】
また、紙幣の押し出しを行う際に、常に紙幣を付勢する態様、紙幣の付勢が必要である場合にのみ紙幣を付勢する態様の他、紙幣を付勢しないように、紙幣の付勢機能をオフにできる態様であってもよい。これにより、例えば、紙幣処理装置1が新しい紙幣の処理のみに利用される場合には、事前に付勢機能をオフにして利用することも可能である。
【0092】
上述してきたように、本実施形態に係る紙葉類処理装置によれば、紙幣集積部30、40内で、押出部材34、44によって押し出される紙幣を、付勢部材によって、押し出される方向と交差する方向に付勢することができる。例えば、紙幣が、紙幣面が集積空間を形成する壁面と平行になるように集積される際には、紙幣面がこの壁面に沿うように付勢する。
【0093】
また、例えば、紙幣集積部30、40内で紙幣を集積するために利用する羽根車33、43を付勢部材として利用して、羽根車33、43から離れる方向に紙幣を付勢することができるので、押し出される紙幣が、羽根車33、43や羽根車33、43が設けられた壁面の開口等に引っかかることがなく、紙幣を確実に押し出すことができる。また、回転速度及び回転方向等、羽根車33、43の回転方法を設定により変更することができるので、紙幣集積部30、40及び羽根車33、43の構造や位置関係、集積される紙幣サイズや紙質等に基づいて、羽根車33、43の回転方法を設定することにより、紙幣を確実に付勢しながら開口側へ押し出すことができる。