特許第6598475号(P6598475)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6598475
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】ゴム組成物及びタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/00 20060101AFI20191021BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20191021BHJP
   C08K 5/54 20060101ALI20191021BHJP
   C08K 5/103 20060101ALI20191021BHJP
   C08K 5/31 20060101ALI20191021BHJP
   C08K 5/36 20060101ALI20191021BHJP
   C08K 5/5398 20060101ALI20191021BHJP
   C08J 3/20 20060101ALI20191021BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20191021BHJP
【FI】
   C08L9/00
   C08K3/36
   C08K5/54
   C08K5/103
   C08K5/31
   C08K5/36
   C08K5/5398
   C08J3/20 DCEQ
   B60C1/00 Z
【請求項の数】11
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-44066(P2015-44066)
(22)【出願日】2015年3月5日
(65)【公開番号】特開2016-160423(P2016-160423A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2017年12月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 和幸
(72)【発明者】
【氏名】米元 真希子
【審査官】 水野 明梨
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−062836(JP,A)
【文献】 特表2005−534759(JP,A)
【文献】 特表2009−504810(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/098155(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/147274(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
C08K 3/00−13/08
B60C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエン系ゴム(A)と、シリカ(B)と、シランカップリング剤(C)と、グアニジン類、システイン類、チオ尿素類、チオシアン酸アンモニウム、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、チアジアゾール類から選ばれる少なくとも一種の活性剤(D)との全部又は一部、並びに、グリセリン脂肪酸エステル(E)を含む第1混合物を調製し、該第1混合物を混練することによって予備組成物を調製する、A工程と、
前記予備組成物に加硫剤(F)を加えて第2混合物を調製し、該第2混合物を混練することによってゴム組成物を調製する、B工程と、
を含むゴム組成物の製造方法により製造されるゴム組成物であって、
前記グリセリン脂肪酸エステル(E)が、グリセリンと、2種以上の脂肪酸とのエステルであって、該グリセリン脂肪酸エステルを構成する2種以上の脂肪酸のうち、最も多い脂肪酸成分が全脂肪酸中に10〜90質量%であることを特徴とする、
ゴム組成物。
【請求項2】
前記2種以上の脂肪酸のうち、最も多い脂肪酸成分が全脂肪酸中に15〜80質量%である、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記グリセリン脂肪酸エステル(E)が、グリセリン脂肪酸モノエステルを50〜100質量%含む、請求項1又は2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記グリセリン脂肪酸エステル(E)が、グリセリン脂肪酸モノエステルを60〜99質量%含む、請求項3に記載のゴム組成物。
【請求項5】
前記グリセリン脂肪酸エステル(E)が、グリセリン脂肪酸モノエステルを85〜98質量%含む、請求項4に記載のゴム組成物。
【請求項6】
前記グリセリン脂肪酸エステル(E)を構成する脂肪酸が、炭素数8〜22である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項7】
前記グリセリン脂肪酸エステル(E)を構成する2種以上の脂肪酸のうち、最も多い脂肪酸成分と2番目に多い脂肪酸成分は、一方が炭素数16の脂肪酸で他方が炭素数18の脂肪酸である、請求項6に記載のゴム組成物。
【請求項8】
前記炭素数が16の脂肪酸と前記炭素数が18の脂肪酸との質量比が90/10〜10/90である、請求項7に記載のゴム組成物。
【請求項9】
前記グリセリン脂肪酸エステル(E)の配合量が、前記シリカ(B)100質量部に対して0.5〜20質量部である、請求項1〜8のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項10】
前記活性剤(D)が、チオ尿素、ジエチルチオ尿素、チアジアゾール類から選ばれる少なくとも一種である、請求項1〜9のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載のゴム組成物を用いたことを特徴とする、タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物及びタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題への関心の高まりに伴う世界的な二酸化炭素排出の規制の動きに関連して、自動車の低燃費化に関する要求が高まりつつある。このような要求に対応するため、タイヤ性能についても転がり抵抗の低減が求められている。タイヤの転がり抵抗を低減する手法としては、ヒステリシスロスが小さい(即ち、低ロス性に優れる)ゴム組成物を用いることが一般的な手法として知られており、充填剤、特には、シリカの分散性を改良することで、かかるヒステリシスロスが小さいゴム組成物を実現することができる。
ここで、シリカの分散性を改良する手法としては、例えば、マトリクスのゴム成分として、変性ポリマーを用いる手法が一般的に知られており、該変性ポリマーはシリカとの親和性が高いため、ゴム組成物中において、シリカを高度に分散させることができる。
また、変性ポリマーを使用する以外の手法として、本出願人は、チオウレア類等の求核剤や、ジフェニルグアニジン(DPG)等の塩基を用いることで、シリカの分散性を改良することに成功している。しかしながら、これら求核剤や塩基をゴム組成物に配合すると、ゴム組成物の未加硫粘度が増大してしまうという問題があった。
一方、ゴム組成物の未加硫粘度を低減しつつ、シリカの分散性を改良する薬品として、国際公開第2014/098155号(特許文献1)に記載のようなグリセリン脂肪酸エステル等が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2014/098155号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者が検討したところ、上記特許文献1に開示の薬品を用いても、シリカの分散性には依然として改良の余地があることが分かった。また、ゴム組成物の加工性の更なる改良だけではなく、タイヤの転がり抵抗を低減し、破壊特性、耐摩耗性を向上させるために、タイヤに使用するゴム組成物には、低ロス性(低tanδ)や、破壊特性、耐摩耗性の向上も求められており、本発明者が更に検討したところ、上記特許文献1に記載の技術には、低ロス性、破壊特性、耐摩耗性に改善の余地があることが分かった。
【0005】
そこで、本発明は、上記従来技術の問題を解決し、加工性、低ロス性、破壊特性、耐摩耗性に優れたゴム組成物を提供することを課題とする。
また、本発明は、転がり抵抗が小さく、破壊特性、耐摩耗性に優れたタイヤを提供することを更なる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明のゴム組成物及びタイヤの要旨構成は、以下の通りである。
【0007】
本発明のゴム組成物は、ジエン系ゴム(A)と、シリカ(B)と、シランカップリング剤(C)と、加硫促進剤、システイン類、チオ尿素類、チオシアン酸アンモニウム、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、チアジアゾール類から選ばれる少なくとも一種の活性剤(D)との全部又は一部、並びに、グリセリン脂肪酸エステル(E)を含む第1混合物を調製し、該第1混合物を混練することによって予備組成物を調製するA工程と、前記予備組成物に加硫剤(F)を加えて第2混合物を調製し、該第2混合物を混練することによってゴム組成物を調製するB工程とを含むゴム組成物の製造方法により製造されるゴム組成物であって、前記グリセリン脂肪酸エステル(E)が、グリセリンと、2種以上の脂肪酸とのエステルであって、該グリセリン脂肪酸エステルを構成する2種以上の脂肪酸のうち、最も多い脂肪酸成分が全脂肪酸中に10〜90質量%であることを特徴とする。そして、本発明のゴム組成物は、加工性、低ロス性、破壊特性、耐摩耗性に優れる。
【0008】
ここで、脂肪酸成分とは、アルキル炭素数に加えその立体配置と結合状態において同一である脂肪酸ごと、即ち立体異性体ごとに一成分と考える。例えば、同じ炭素数18の脂肪酸でも、n−1−オクタデカン酸(一般的な直鎖ステアリン酸)、2−オクチル−1−デカン酸(2位分岐のステアリン酸)、シス−9−オクタデセン酸(一般的なオレイン酸)、シス,シス−9,12−オクタデカジエン酸(一般的なリノール酸)などで別々の成分として考える。
【0009】
また、前記2種以上の脂肪酸の質量比率は、最も多い脂肪酸成分でも全脂肪酸中に10〜90質量%であるが、ゴム組成物の加工性、低ロス性、破壊特性、耐摩耗性を更に向上させる観点から、15〜80質量%であることが好ましく、20〜70質量%であることがより好ましく、30〜60質量%であることがよりさらに好ましい。
【0010】
本発明のゴム組成物の好適例においては、前記グリセリン脂肪酸エステル(E)が、グリセリン脂肪酸モノエステルを50〜100質量%含む。ここで、該グリセリン脂肪酸エステル(E)は、グリセリン脂肪酸モノエステルを60〜99質量%含むことが更に好ましく、85〜98質量%含むことが特に好ましい。グリセリン脂肪酸モノエステルを50〜100質量%含むグリセリン脂肪酸エステルは入手が容易であり、また、ゴム組成物の加工性、低ロス性、破壊特性、耐摩耗性を十分に向上させることができる。
【0011】
グリセリン脂肪酸エステルは、グリセリンと脂肪酸をエステル化反応して得る方法、天然油脂等のグリセリン脂肪酸トリエステルを加水分解して得る方法、天然油脂等のグリセリン脂肪酸トリエステルと脂肪酸を用いてエステル交換する方法などのいずれでもよい。グリセリン脂肪酸エステルを得る方法は、特に限定されるものではないが、公知の方法を用いることができる。生産性の観点から、グリセリンと脂肪酸をエステル化反応して得る方法が好ましい。
【0012】
脂肪酸の原料としては、植物油脂、動物油脂等の油脂を加水分解して得られたもの、及び、それらの油脂又は加水分解脂肪酸の硬化、反硬化して得られたものが使用できる。また、油脂原料としては、特に限定されないが、植物油脂、動物油脂が用いられ、具体的には、パーム油、大豆油、オリーブ油、綿実油、ヤシ油、パーム核油、牛脂、豚脂、魚油等を用いることができる。
【0013】
なお、本発明(及び後述する製造例、実施例等を含む)において、グリセリン脂肪酸エステル中のグリセリン脂肪酸モノエステル、ジエステル、トリエステルの含有量(質量%)の測定は、国際公開第2014/098155号(特許文献1)に記載の方法に従って行った。また、脂肪酸成分の含有量(質量%)の測定は、該グリセリン脂肪酸モノエステルを日本油化学会制定の基準油脂分析試験法に従ってけん化およびメチルエステル化を行い、GPC分析により測定した。
【0014】
本発明のゴム組成物の他の好適例においては、前記グリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸が、炭素数8〜22であることが好ましく、炭素数12〜18であることがより好ましく、炭素数14〜18であることが更に好ましい。炭素数が8〜22である脂肪酸は入手が容易であり、また、かかる脂肪酸を構成脂肪酸とするグリセリン脂肪酸エステルを配合することで、ゴム組成物の加工性、低ロス性、破壊特性、耐摩耗性を高いレベルでバランスさせることができる。
【0015】
ここで、前記グリセリン脂肪酸エステルを構成する2種以上の脂肪酸のうち、最も多い脂肪酸成分と2番目に多い脂肪酸成分は、一方が炭素数16の脂肪酸他方が炭素数18の脂肪酸であることが好ましい。炭素数が16の脂肪酸と炭素数が18の脂肪酸とは、入手が特に容易であり、また、かかる脂肪酸を構成脂肪酸とするグリセリン脂肪酸エステルを配合することで、ゴム組成物の加工性、低ロス性、破壊特性、耐摩耗性を特に高いレベルでバランスさせることができる。
【0016】
また、前記炭素数が16の脂肪酸と前記炭素数が18の脂肪酸との質量比は、90/10〜10/90であることが好ましく、80/20〜20/80であることがより好ましく、75/25〜25/75であることがさらに好ましい。炭素数が16の脂肪酸と炭素数が18の脂肪酸との質量比が90/10〜10/90である混合脂肪酸を原料とするグリセリン脂肪酸エステルを配合することで、ゴム組成物の加工性、低ロス性、破壊特性、耐摩耗性を更に向上させることができる。
【0017】
本発明のゴム組成物の他の好適例においては、前記グリセリン脂肪酸エステルの配合量が、前記シリカ100質量部に対して0.5〜20質量部である。この場合、ゴム組成物の加工性、低ロス性、破壊特性、耐摩耗性を十分に向上させることができる。
【0018】
本発明のゴム組成物の他の好適例においては、前記活性剤(D)が、チオ尿素、ジエチルチオ尿素、チアジアゾール類から選ばれる少なくとも一種である。この場合、シランカップリング剤(C)がジエン系ゴム(A)とシリカ(B)とをカップリングする作用が高く、ゴム組成物の加工性、低ロス性、破壊特性、耐摩耗性を更に向上させることができる。
【0019】
また、本発明のタイヤは、上記のゴム組成物を用いたことを特徴とする。本発明のタイヤは、上述したゴム組成物が用いられているため、転がり抵抗が小さく、破壊特性、耐摩耗性に優れる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、加工性、低ロス性、破壊特性、耐摩耗性に優れたゴム組成物を提供することができる。また、本発明によれば、転がり抵抗が小さく、破壊特性、耐摩耗性に優れたタイヤを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<ゴム組成物>
以下に、本発明のゴム組成物を、その実施形態に基づき、詳細に説明する。
本発明のゴム組成物は、ジエン系ゴム(A)と、シリカ(B)と、シランカップリング剤(C)と、加硫促進剤、システイン類、チオ尿素類、チオシアン酸アンモニウム、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、チアジアゾール類から選ばれる少なくとも一種の活性剤(D)との全部又は一部、並びに、グリセリン脂肪酸エステル(E)を含む第1混合物を調製し、該第1混合物を混練することによって予備組成物を調製する、A工程と、
前記予備組成物に加硫剤(F)を加えて第2混合物を調製し、該第2混合物を混練することによってゴム組成物を調製する、B工程と、
を含むゴム組成物の製造方法により製造されるゴム組成物であって、
前記グリセリン脂肪酸エステル(E)が、グリセリンと、2種以上の脂肪酸とのエステルであって、該グリセリン脂肪酸エステルを構成する2種以上の脂肪酸のうち、最も多い脂肪酸成分が全脂肪酸に対して10〜90質量%であることを特徴とする。
本発明のゴム組成物においては、グリセリンと2種以上の脂肪酸とのエステルであるグリセリン脂肪酸エステル(E)が、ゴム組成物中のシリカの分散性を向上させるため、加工性に優れる。また、ゴム組成物中のシリカの分散性が高いため、シリカの配合効果が十分に発揮されて、低ロス性、破壊特性、耐摩耗性にも優れる。
【0022】
本発明のゴム組成物に用いるジエン系ゴム(A)としては、天然ゴム(NR)及び合成ジエン系ゴムが挙げられ、該合成ジエン系ゴムとして、具体的には、ポリブタジエンゴム(BR)、合成ポリイソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、スチレン−イソプレン共重合体ゴム(SIR)等が挙げられる。これらジエン系ゴムは、1種単独で用いてもよいし、2種以上のブレンドとして用いてもよい。また、使用するジエン系ゴムは、変性されていても、未変性であってもよい。
【0023】
本発明のゴム組成物に用いるシリカ(B)としては、特に制限はなく、例えば、湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム等が挙げられ、これらの中でも、湿式シリカが好ましい。これらシリカは、一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。また、シリカのBET比表面積(ISO 5794/1に準拠して測定する)は40〜350m2/gの範囲が好ましく、80〜350m2/gの範囲が更に好ましく、120〜350m2/gの範囲が特に好ましい。BET比表面積がこの範囲であるシリカは、ゴム補強性とジエン系ゴム(A)中への分散性とを両立できるという利点がある。このようなシリカとしては、東ソー・シリカ社製、商品名「ニプシルAQ」(BET比表面積=205m2/g)、「ニプシルKQ」、デグッサ社製、商品名「ウルトラジルVN3」(BET比表面積=175m2/g)等の市販品を用いることができる。
【0024】
前記シリカ(B)の配合量は、前記ジエン系ゴム(A)100質量部に対して、20〜120質量部の範囲が好ましく、30〜100質量部の範囲が更に好ましい。シリカ(B)の配合量がジエン系ゴム(A)100質量部に対して20質量部以上であれば、ゴム組成物の低ロス性、破壊特性、耐摩耗性を十分に向上させることができ、また、120質量部以下であれば、ゴム組成物の加工性を十分に向上させることができる。
【0025】
本発明のゴム組成物は、ジエン系ゴム(A)へのシリカ(B)の分散性を向上させるために、シランカップリング剤(C)を含有する。該シランカップリング剤(C)は、ジエン系ゴム(A)と反応すると共に、シリカ(B)とも反応するため、シリカ(B)のジエン系ゴム(A)への分散性を向上させることができる。
【0026】
前記シランカップリング剤(C)としては、下記一般式(I):
(R1O)3-p(R2pSi−R3−Sa−R3−Si(OR13-r(R2r ・・・ (I)
で表わされる化合物が好ましい。
式(I)中、R1は複数ある場合には同一でも異なっていてもよく、各々炭素数1〜8の直鎖、環状もしくは分枝のアルキル基、炭素数2〜8の直鎖もしくは分枝のアルコキシアルキル基又は水素原子であり、R2は複数ある場合には同一でも異なっていてもよく、各々炭素数1〜8の直鎖、環状もしくは分枝のアルキル基であり、R3は同一でも異なっていてもよく、各々炭素数1〜8の直鎖もしくは分枝のアルキレン基である。また、aは平均値として2〜6であり、p及びrは同一でも異なっていてもよく、各々平均値として0〜3である。但し、p及びrの双方が3であることはない。
【0027】
上記式(I)の化合物として、具体的には、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−メチルジメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3−メチルジメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−メチルジメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(3−モノエトキシジメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−モノエトキシジメチルシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−モノエトキシジメチルシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3−モノメトキシジメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−モノメトキシジメチルシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−モノメトキシジメチルシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−モノエトキシジメチルシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2−モノエトキシジメチルシリルエチル)トリスルフィド、ビス(2−モノエトキシジメチルシリルエチル)ジスルフィド等が挙げられる。
【0028】
また、前記シランカップリング剤(C)としては、下記一般式(II):
(R4O)3-s(R5sSi−R6−Sk−R7−Sk−R6−Si(OR43-t(R5t ・・・ (II)
で表わされる化合物も好ましい。
式(II)中、R4は複数ある場合には同一でも異なっていてもよく、各々炭素数1〜8の直鎖、環状もしくは分枝のアルキル基、炭素数2〜8の直鎖もしくは分枝のアルコキシアルキル基又は水素原子であり、R5は複数ある場合には同一でも異なっていてもよく、各々炭素数1〜8の直鎖、環状もしくは分枝のアルキル基であり、R6は同一でも異なっていてもよく、各々炭素数1〜8の直鎖もしくは分枝のアルキレン基である。また、R7は一般式:(−S−R8−S−)、(−R9−Sm1−R10−)及び(−R11−Sm2−R12−Sm3−R13−)のいずれかの二価の基(R8〜R13は各々炭素数1〜20の二価の炭化水素基、二価の芳香族基、又は硫黄及び酸素以外のヘテロ元素を含む二価の有機基であり、m1、m2及びm3は同一でも異なっていてもよく、各々平均値として1以上4未満である)であり、複数あるkは同一でも異なっていてもよく、各々平均値として1〜6であり、s及びtは各々平均値として0〜3である。但し、s及びtの双方が3であることはない。
【0029】
上記式(II)の化合物として、具体的には、
平均組成式:(CH3CH2O)3Si−(CH23−S2−(CH26−S2−(CH23−Si(OCH2CH33
平均組成式:(CH3CH2O)3Si−(CH23−S2−(CH210−S2−(CH23−Si(OCH2CH33
平均組成式:(CH3CH2O)3Si−(CH23−S3−(CH26−S3−(CH23−Si(OCH2CH33
平均組成式:(CH3CH2O)3Si−(CH23−S4−(CH26−S4−(CH23−Si(OCH2CH33
平均組成式:(CH3CH2O)3Si−(CH23−S−(CH26−S2−(CH26−S−(CH23−Si(OCH2CH33
平均組成式:(CH3CH2O)3Si−(CH23−S−(CH26−S2.5−(CH26−S−(CH23−Si(OCH2CH33
平均組成式:(CH3CH2O)3Si−(CH23−S−(CH26−S3−(CH26−S−(CH23−Si(OCH2CH33
平均組成式:(CH3CH2O)3Si−(CH23−S−(CH26−S4−(CH26−S−(CH23−Si(OCH2CH33
平均組成式:(CH3CH2O)3Si−(CH23−S−(CH210−S2−(CH210−S−(CH23−Si(OCH2CH33
平均組成式:(CH3CH2O)3Si−(CH23−S4−(CH26−S4−(CH26−S4−(CH23−Si(OCH2CH33
平均組成式:(CH3CH2O)3Si−(CH23−S2−(CH26−S2−(CH26−S2−(CH23−Si(OCH2CH33
平均組成式:(CH3CH2O)3Si−(CH23−S−(CH26−S2−(CH26−S2−(CH26−S−(CH23−Si(OCH2CH33等で表される化合物が好ましい。
【0030】
前記シランカップリング剤(C)としては、上記一般式(I)で表わされる化合物が特に好ましい。一般式(I)で表わされる化合物を用いた場合、後述する活性剤(D)がジエン系ゴム(A)と反応するポリスルフィド結合部位の活性化を起こし易いからである。なお、上述したシランカップリング剤(C)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
また、前記シランカップリング剤(C)の配合量は、前記シリカ(B)100質量部に対して1〜20質量部の範囲が好ましく、3〜20質量部の範囲が更に好ましい。シランカップリング剤(C)の配合量がシリカ(B)100質量部に対して1質量部以上であれば、シリカ(B)の配合効果が十分に向上して、ゴム組成物の低ロス性を十分に向上させることができ、また、シランカップリング剤(C)の配合量がシリカ(B)100質量部に対して20質量部以下であれば、ゴム組成物の原料コストの上昇を抑制できる。
【0032】
本発明のゴム組成物に用いる活性剤(D)は、加硫促進剤、システイン類、チオ尿素類、チオシアン酸アンモニウム、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、チアジアゾール類から選択される。該活性剤(D)は、ジエン系ゴム(A)と反応するポリスルフィド結合部位の活性化作用を有するものである。ここで、前記加硫促進剤としては、グアニジン類、スルフェンアミド類、チアゾール類、チウラム類、チオウレア類、ジチオカルバミン酸塩類、キサントゲン酸塩類等が挙げられる。
【0033】
前記グアニジン類としては、1,3−ジフェニルグアニジン(DPG)、1,3−ジ−o−トリルグアニジン、1−o−トリルビグアニド、ジカテコールボレートのジ−o−トリルグアニジン塩、1,3−ジ−o−クメニルグアニジン、1,3−ジ−o−ビフェニルグアニジン、1,3−ジ−o−クメニル−2−プロピオニルグアニジン等が挙げられる。これらの中でも、反応性の観点から、1,3−ジフェニルグアニジン、1,3−ジ−o−トリルグアニジン及び1−o−トリルビグアニドが好ましく、1,3−ジフェニルグアニジンが特に好ましい。
【0034】
前記スルフェンアミド類としては、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CZ)、N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(NS)、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−メチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−エチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−プロピル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−ペンチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−ヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−ペンチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−オクチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−2−エチルヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−デシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−ドデシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−ステアリル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジメチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジエチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジプロピル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジペンチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジペンチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジオクチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジ−2−エチルヘキシルベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−デシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジドデシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジステアリル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド等が挙げられる。これらの中でも、反応性の観点から、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド及びN−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミドが好ましい。
【0035】
前記チアゾール類としては、2−メルカプトベンゾチアゾール(M)、ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド(DM)、2−メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩、2−メルカプトベンゾチアゾールのシクロヘキシルアミン塩、2−(N,N−ジエチルチオカルバモイルチオ)ベンゾチアゾール、2−(4’−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール、4−メチル−2−メルカプトベンゾチアゾール、ジ−(4−メチル−2−ベンゾチアゾリル)ジスルフィド、5−クロロ−2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾールナトリウム、2−メルカプト−6−ニトロベンゾチアゾール、2−メルカプト-ナフト[1,2−d]チアゾール、2−メルカプト−5−メトキシベンゾチアゾール、6−アミノ−2−メルカプトベンゾチアゾール等が挙げられる。これらの中でも、反応性の観点から、2−メルカプトベンゾチアゾール及びジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィドが好ましい。
【0036】
前記チウラム類としては、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラプロピルチウラムジスルフィド、テトライソプロピルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、テトラペンチルチウラムジスルフィド、テトラヘキシルチウラムジスルフィド、テトラヘプチルチウラムジスルフィド、テトラオクチルチウラムジスルフィド、テトラノニルチウラムジスルフィド、テトラデシルチウラムジスルフィド、テトラドデシルチウラムジスルフィド、テトラステアリルチウラムジスルフィド、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)、テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラエチルチウラムモノスルフィド、テトラプロピルチウラムモノスルフィド、テトライソプロピルチウラムモノスルフィド、テトラブチルチウラムモノスルフィド、テトラペンチルチウラムモノスルフィド、テトラヘキシルチウラムモノスルフィド、テトラヘプチルチウラムモノスルフィド、テトラオクチルチウラムモノスルフィド、テトラノニルチウラムモノスルフィド、テトラデシルチウラムモノスルフィド、テトラドデシルチウラムモノスルフィド、テトラステアリルチウラムモノスルフィド、テトラベンジルチウラムモノスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等が挙げられる。これらの中でも、反応性の観点から、テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド及びテトラベンジルチウラムジスルフィドが好ましい。
【0037】
前記チオウレア類としては、N,N’−ジフェニルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、N,N’−ジエチルチオ尿素(DEU)、N,N’−ジメチルチオ尿素、N,N’−ジブチルチオ尿素、エチレンチオ尿素、N,N’−ジイソプロピルチオ尿素、N,N’−ジシクロヘキシルチオ尿素、1,3−ジ(o−トリル)チオ尿素、1,3−ジ(p−トリル)チオ尿素、1,1−ジフェニル−2−チオ尿素、2,5−ジチオビ尿素、グアニルチオ尿素、1−(1−ナフチル)−2−チオ尿素、1−フェニル−2−チオ尿素、p−トリルチオ尿素、o−トリルチオ尿素等が挙げられる。これらの中でも、反応性の観点から、N,N’−ジエチルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、N,N’−ジフェニルチオ尿素及びN,N’−ジメチルチオ尿素が好ましく、N,N’−ジエチルチオ尿素が特に好ましい。
【0038】
前記ジチオカルバミン酸塩類としては、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジプロピルジチオカルバミン酸亜鉛、ジイソプロピルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジペンチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジヘキシルジチオカルバミン酸亜鉛、ジヘプチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジオクチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジ(2−エチルヘキシル)ジチオカルバミン酸亜鉛、ジデシルジチオカルバミン酸亜鉛、ジドデシルジチオカルバミン酸亜鉛、N−ペンタメチレンジチオカルバミン酸亜鉛、N−エチル−N−フェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸銅、ジエチルジチオカルバミン酸銅、ジプロピルジチオカルバミン酸銅、ジイソプロピルジチオカルバミン酸銅、ジブチルジチオカルバミン酸銅、ジペンチルジチオカルバミン酸銅、ジヘキシルジチオカルバミン酸銅、ジヘプチルジチオカルバミン酸銅、ジオクチルジチオカルバミン酸銅、ジ(2−エチルヘキシル)ジチオカルバミン酸銅、ジデシルジチオカルバミン酸銅、ジドデシルジチオカルバミン酸銅、N−ペンタメチレンジチオカルバミン酸銅、ジベンジルジチオカルバミン酸銅、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジプロピルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジイソプロピルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジブチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジペンチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジヘキシルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジヘプチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジオクチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジ(2−エチルヘキシル)ジチオカルバミン酸ナトリウム、ジデシルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジドデシルジチオカルバミン酸ナトリウム、N−ペンタメチレンジチオカルバミン酸ナトリウム、ジベンジルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸第二鉄、ジエチルジチオカルバミン酸第二鉄、ジプロピルジチオカルバミン酸第二鉄、ジイソプロピルジチオカルバミン酸第二鉄、ジブチルジチオカルバミン酸第二鉄、ジペンチルジチオカルバミン酸第二鉄、ジヘキシルジチオカルバミン酸第二鉄、ジヘプチルジチオカルバミン酸第二鉄、ジオクチルジチオカルバミン酸第二鉄、ジ(2−エチルヘキシル)ジチオカルバミン酸第二鉄、ジデシルジチオカルバミン酸第二鉄、ジドデシルジチオカルバミン酸第二鉄、N−ペンタメチレンジチオカルバミン酸第二鉄、ジベンジルジチオカルバミン酸第二鉄等が挙げられる。これらの中でも、反応性の観点から、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛、N−エチル−N−フェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛及びジメチルジチオカルバミン酸銅が好ましい。
【0039】
前記キサントゲン酸塩類としては、メチルキサントゲン酸亜鉛、エチルキサントゲン酸亜鉛、プロピルキサントゲン酸亜鉛、イソプロピルキサントゲン酸亜鉛、ブチルキサントゲン酸亜鉛、ペンチルキサントゲン酸亜鉛、ヘキシルキサントゲン酸亜鉛、ヘプチルキサントゲン酸亜鉛、オクチルキサントゲン酸亜鉛、2−エチルヘキシルキサントゲン酸亜鉛、デシルキサントゲン酸亜鉛、ドデシルキサントゲン酸亜鉛、メチルキサントゲン酸カリウム、エチルキサントゲン酸カリウム、プロピルキサントゲン酸カリウム、イソプロピルキサントゲン酸カリウム、ブチルキサントゲン酸カリウム、ペンチルキサントゲン酸カリウム、ヘキシルキサントゲン酸カリウム、ヘプチルキサントゲン酸カリウム、オクチルキサントゲン酸カリウム、2−エチルヘキシルキサントゲン酸カリウム、デシルキサントゲン酸カリウム、ドデシルキサントゲン酸カリウム、メチルキサントゲン酸ナトリウム、エチルキサントゲン酸ナトリウム、プロピルキサントゲン酸ナトリウム、イソプロピルキサントゲン酸ナトリウム、ブチルキサントゲン酸ナトリウム、ペンチルキサントゲン酸ナトリウム、ヘキシルキサントゲン酸ナトリウム、ヘプチルキサントゲン酸ナトリウム、オクチルキサントゲン酸ナトリウム、2−エチルヘキシルキサントゲン酸ナトリウム、デシルキサントゲン酸ナトリウム、ドデシルキサントゲン酸ナトリウム等が挙げられる。これらの中でも、反応性の観点から、イソプロピルキサントゲン酸亜鉛が好ましい。
【0040】
前記システイン類としては、(L−)システイン、N−アセチル−L−システイン、(L−)システイン塩酸塩、(L−)システインエチルエステル塩酸塩、(L−)システインメチルエステル塩酸塩等が挙げられる。これの中でも、反応性の観点から、L−システインが好ましい。
【0041】
前記ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)としては、例えば、炭素数4〜12のアルキル基を有するジアルキルジチオリン酸亜鉛が挙げられる。
【0042】
前記チアジアゾール類としては、例えば、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール(MTD)、2−アミノ−5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2−アミノ−5−トリフルオロメチル−1,3,4−チアジアゾール等が挙げられる。これらの中でも、反応性の観点から、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールが好ましい。
【0043】
前記活性剤(D)としては、活性化作用の観点から、チオ尿素(TU)、ジエチルチオ尿素(DEU)、チアジアゾール類が特に好ましい。これら活性剤(D)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
本発明において、混練のA工程におけるゴム組成物中の活性剤(D)の分子数(モル数)は、前記シランカップリング剤(C)の分子数(モル数)の0.1〜2.0倍の範囲が好ましく、0.3〜1.5倍の範囲が更に好ましい。活性剤(D)の分子数(モル数)がシランカップリング剤(C)の分子数(モル数)の0.1倍以上であれば、シランカップリング剤(C)の活性化が十分に起こり、また、1.5倍以下であれば、加硫速度に大きな影響を及ぼさない。
【0045】
また、前記活性剤(D)の配合量は、ジエン系ゴム(A)100質量部に対して、好ましくは0.01〜6質量部であり、更に好ましくは0.05〜2.5質量部であり、特に好ましくは0.1〜1.5質量部である。活性剤(D)の配合量がジエン系ゴム(A)100質量部に対して0.01質量部以上であると、ゴム組成物の低ロス性が十分に向上し、また、6質量部以下であれば、ゴム組成物の加工性も十分に良好である。
【0046】
なお、前記活性剤(D)は、硫黄加硫の促進剤としても用いられるので、最初のA工程で全部を配合しなくてもよく、B工程においても所望により適量(一部)を配合してもよい。また、A工程とB工程の間に、更に混練工程がある場合は、該中間の混練工程で活性剤(D)の一部を配合してもよい。
【0047】
本発明のゴム組成物に用いるグリセリン脂肪酸エステル(E)は、グリセリンと、2種以上の脂肪酸とのエステルであって、該グリセリン脂肪酸エステルを構成する2種以上の脂肪酸のうち、最も多い脂肪酸成分が全脂肪酸に対して10〜90質量%である。なお、グリセリン脂肪酸エステルとは、グリセリンの3つのOH基の少なくとも1つと、脂肪酸のCOOH基とがエステル結合してなる化合物である。
また、前記2種以上の脂肪酸の質量比率は、最も多い脂肪酸成分でも全脂肪酸中に10〜90質量%であるが、ゴム組成物の加工性、低ロス性、破壊特性、耐摩耗性を更に向上させる観点から、15〜80質量%であることが好ましく、20〜70質量%であることがより好ましく、30〜60質量%であることがよりさらに好ましい。
【0048】
ここで、前記グリセリン脂肪酸エステルは、グリセリン1分子と脂肪酸1分子とがエステル化してなるグリセリン脂肪酸モノエステル(モノエステル成分)でも、グリセリン1分子と脂肪酸2分子とがエステル化してなるグリセリン脂肪酸ジエステル(ジエステル成分)でも、グリセリン1分子と脂肪酸3分子とがエステル化してなるグリセリン脂肪酸トリエステル(トリエステル成分)でもよいし、これらの混合物でもよいが、グリセリン脂肪酸モノエステルが好ましい。なお、グリセリン脂肪酸エステルがグリセリン脂肪酸モノエステル、グリセリン脂肪酸ジエステル、グリセリン脂肪酸トリエステルの混合物である場合、各エステルの含有率は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定することができる。また、グリセリン脂肪酸ジエステルを構成する2つの脂肪酸、並びに、グリセリン脂肪酸トリエステルを構成する3つの脂肪酸は、同一でも、異なってもよい。
【0049】
本発明のゴム組成物に用いるグリセリン脂肪酸エステルは、グリセリンと、2種以上の脂肪酸とのエステルであり、2種以上の脂肪酸がグリセリン1分子とエステル化してなるグリセリン脂肪酸ジエステルやグリセリン脂肪酸トリエステルでもよいが、グリセリン1分子と上記2種以上の脂肪酸のうち1種類の脂肪酸1分子とがエステル化してなるグリセリン脂肪酸モノエステルと、グリセリン1分子と他の種類の脂肪酸1分子とがエステル化してなるグリセリン脂肪酸モノエステルとの混合物であることが好ましい。
【0050】
また、本発明のゴム組成物において、前記グリセリン脂肪酸エステルは、グリセリン脂肪酸モノエステルを50〜100質量%含むことが好ましく、60〜99質量%含むことが更に好ましく、85〜98質量%含むことが特に好ましい。グリセリン脂肪酸モノエステルを50〜100質量%含むグリセリン脂肪酸エステルを配合することで、ゴム組成物の加工性、低ロス性、破壊特性、耐摩耗性を更に向上させることができる。なお、本発明においては、未反応物として、原料のグリセリンや脂肪酸を含むグリセリン脂肪酸エステルを使用することもできる。
【0051】
前記グリセリン脂肪酸エステルの原料となる2種以上の脂肪酸(即ち、グリセリン脂肪酸エステルの構成脂肪酸)としては、ゴム組成物の加工性、低ロス性、破壊特性、耐摩耗性の観点から、炭素数が8〜22である脂肪酸が好ましく、炭素数が12〜18である脂肪酸が更に好ましく、炭素数が14〜18である脂肪酸がさらに好ましく、炭素数が16の脂肪酸と炭素数が18の脂肪酸がよりさらに好ましい。また、前記グリセリン脂肪酸エステルの原料となる2種以上の脂肪酸のうち、最も多い脂肪酸成分と2番目に多い脂肪酸成分は、一方が炭素数16の脂肪酸で他方が炭素数18の脂肪酸であることが特に好ましい。
【0052】
また、前記グリセリン脂肪酸エステルがグリセリンと炭素数が16の脂肪酸及び炭素数が18の脂肪酸とのエステルである場合、炭素数が16の脂肪酸と炭素数が18の脂肪酸との質量比(炭素数16の脂肪酸/炭素数18の脂肪酸)は、90/10〜10/90の範囲が好ましく、80/20〜20/80の範囲がより好ましく、75/25〜25/75の範囲がより一層好ましい。炭素数が16の脂肪酸と炭素数が18の脂肪酸との質量比がこの範囲であれば、ゴム組成物の加工性、低ロス性、破壊特性、耐摩耗性を更に向上させることができる。
【0053】
前記グリセリン脂肪酸エステルの構成脂肪酸は、直鎖状でも、分岐状でもよいが、直鎖状であることが好ましく、また、飽和脂肪酸でも、不飽和脂肪酸でもよいが、飽和脂肪酸であることが好ましい。
【0054】
前記グリセリン脂肪酸エステルの構成脂肪酸として、具体的には、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラギン酸、アラキドン酸、ベヘン酸等が挙げられ、これらの中でも、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸が好ましく、パルミチン酸及びステアリン酸が特に好ましい。
【0055】
また、前記グリセリン脂肪酸エステルとして、具体的には、ラウリン酸モノグリセリド、ミリスチン酸モノグリセリド、パルミチン酸モノグリセリド、ステアリン酸モノグリセリドが好ましく、パルミチン酸モノグリセリド及びステアリン酸モノグリセリドが特に好ましい。
【0056】
前記グリセリン脂肪酸エステル(E)の配合量は、ゴム組成物の加工性の観点から、前記シリカ(B)100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、より一層好ましくは1.5質量部以上であり、また、ゴム組成物の破壊特性の観点から、前記シリカ(B)100質量部に対して、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下、より一層好ましくは5質量部以下である。
【0057】
また、前記グリセリン脂肪酸エステル(E)の配合量は、ゴム組成物の加工性の観点から、前記ジエン系ゴム(A)100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、より一層好ましくは1.5質量部以上であり、また、ゴム組成物の破壊特性の観点から、前記ジエン系ゴム(A)100質量部に対して、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、より一層好ましくは3質量部以下である。
【0058】
本発明のゴム組成物に用いる加硫剤(F)としては、硫黄等が挙げられる。
前記加硫剤(F)の配合量は、前記ジエン系ゴム(A)100質量部に対して、硫黄分として0.1〜10.0質量部の範囲が好ましく、1.0〜5.0質量部の範囲が更に好ましい。加硫剤(F)の配合量が硫黄分として0.1質量部以上であれば、加硫ゴムの破壊強度、耐摩耗性等を確保でき、また、10.0質量部以下であれば、ゴム弾性を十分に確保できる。
【0059】
本発明のゴム組成物は、ゴム組成物の破壊特性、耐摩耗性の観点から、更にカーボンブラックを含むことが好ましい。該カーボンブラックとしては、特に限定されるものではなく、例えば、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAFグレードのカーボンブラックが挙げられる。これらカーボンブラックは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、カーボンブラックの配合量は、前記ジエン系ゴム(A)100質量部に対して1〜30質量部の範囲が好ましく、5〜20質量部の範囲が更に好ましい。
【0060】
本発明のゴム組成物は、前記ジエン系ゴム(A)、シリカ(B)、シランカップリング剤(C)、活性剤(D)の全部又は一部、並びに、グリセリン脂肪酸エステル(E)を含む第1混合物を調製し、該第1混合物を混練することによって予備組成物を調製するA工程と、該予備組成物に加硫剤(F)を加えて第2混合物を調製し、該第2混合物を混練することによってゴム組成物を調製するB工程とを含むゴム組成物の製造方法により製造されるものである。
【0061】
本発明において、混練のA工程で、活性剤(D)の全部又は一部と、グリセリン脂肪酸エステル(E)を加えて混練するのは、シランカップリング剤(C)のカップリング機能の活性を高め、シリカ(B)の分散性を改良して、ゴム組成物の未加硫粘度の上昇を抑制し、未加硫粘度の低減による加工性の向上と、低ロス性を向上させるためである。
【0062】
前記混練のA工程においては、前記ジエン系ゴム(A)、シリカ(B)及び前記シランカップリング剤(C)、グリセリン脂肪酸エステル(E)を混練した後に、前記活性剤(D)の全部又は一部を加えて、更に混練することが好ましく、この場合、活性剤(D)、グリセリン脂肪酸エステル(E)の配合によるカップリング機能の活性向上効果の低減を更に好適に抑制できる。これは、シリカ(B)とシランカップリング剤(C)との反応が十分に進行した後に、シランカップリング剤(C)とジエン系ゴム(A)との反応を進行させることができるからである。
【0063】
前記混練のA工程においては、ジエン系ゴム(A)、シリカ(B)、及びシランカップリング剤(C)、グリセリン脂肪酸エステル(E)を加えた後、該A工程の途中で、活性剤(D)を加えるまでの時間を10〜180秒とすることがより好ましい。この時間の下限値は、30秒以上であることが更に好ましく、上限値は、150秒以下であることが更に好ましく、120秒以下であることが特に好ましい。この時間が10秒以上であれば、シリカ(B)とシランカップリング剤(C)の反応を十分に進行させることができる。一方、この時間が180秒を超えても、シリカ(B)とシランカップリング剤(C)の反応は既に十分に進行しているので、更なる効果は享受しにくく、生産性の観点から、上限値を180秒とすることが好ましい。
【0064】
前記混練のA工程におけるゴム組成物の最高温度は、120〜190℃の範囲が好ましい。これは、シリカ(B)とシランカップリング剤(C)との反応を十分に進行させるためである。この観点から、混練のA工程におけるゴム組成物の最高温度は、130〜190℃の範囲がより好ましく、140〜180℃の範囲がより一層好ましい。
【0065】
また、前記混練のB工程におけるゴム組成物の最高温度は、60〜140℃の範囲が好ましく、80〜120℃の範囲がより好ましく、100〜120℃の範囲がより一層好ましい。また、早期加硫を防止する観点から、A工程からB工程に進む際には、ゴム組成物の温度をA工程の温度より10℃以上低下させてからB工程へ進むことが好ましい。
【0066】
本発明におけるゴム組成物の混練工程は、前記加硫剤(F)を含まない混練のA工程と、前記加硫剤(F)を含む混練のB工程との少なくとも2つの工程を含むが、必要に応じ、加硫剤(F)を含まない混練の中間段階を含んでもよい。
【0067】
本発明のゴム組成物には、前記ジエン系ゴム(A)、シリカ(B)、シランカップリング剤(C)、活性剤(D)、グリセリン脂肪酸エステル(E)、加硫剤(F)、カーボンブラックの他、ゴム工業界で通常使用される配合剤、例えば、軟化剤、ステアリン酸、亜鉛華、老化防止剤等を、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して配合してもよい。これら配合剤としては、市販品を好適に使用することができる。また、これら配合剤は、混練のA工程又はB工程、あるいはA工程とB工程の中間段階において混練りされる。
前記混練においては、バンバリーミキサー、ロール、インテンシブミキサー等の混練装置を用いることができる。
【0068】
上述のようにして混練りされたゴム組成物は、更に、熱入れ、押出し、加硫等して、加硫ゴムとすることができる。
前記熱入れの条件としては、特に制限はなく、熱入れ温度、熱入れ時間、熱入れ装置等の諸条件について目的に応じて適宜選択することができる。前記熱入れ装置としては、例えば、通常ゴム組成物の熱入れに用いるロール機等が挙げられる。
また、前記押出しの条件としては、特に制限はなく、押出時間、押出速度、押出装置、押出温度等の諸条件について目的に応じて適宜選択することができる。前記押出装置としては、例えば、通常タイヤ用ゴム組成物の押出しに用いる押出機等が挙げられる。前記押出温度は、適宜決定することができる。
また、前記加硫を行う装置、方式、条件等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記加硫を行う装置としては、例えば、通常タイヤ用ゴム組成物の加硫に用いる金型による成形加硫機等が挙げられる。
【0069】
また、本発明のゴム組成物は、後述するタイヤを始め、防振ゴム、ベルト、ホース等の種々のゴム製品に利用できる。
【0070】
<タイヤ>
本発明のタイヤは、上述したゴム組成物を用いたことを特徴とする。本発明のタイヤは、前記ゴム組成物が用いられているため、転がり抵抗が小さく、破壊特性、耐摩耗性に優れる。ここで、前記ゴム組成物を用いるタイヤの部位としては、トレッド等が挙げられる。
【0071】
本発明のタイヤは、適用するタイヤの種類に応じ、未加硫のゴム組成物を用いて成形後に加硫して得てもよく、又は予備加硫工程等を経た半架橋ゴム組成物(半加硫ゴム)を用いて成形後、さらに本加硫して得てもよい。なお、本発明のタイヤは、好ましくは空気入りタイヤであり、空気入りタイヤに充填する気体としては、通常の或いは酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを用いることができる。
【実施例】
【0072】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0073】
<ゴム組成物の製造及び評価>
表1〜表4に示す配合処方で、通常のバンバリーミキサーを用いて、第1混練工程、第2混練工程の順に混練を行って、ゴム組成物を製造した。なお、第1混練工程におけるゴム組成物の最高温度は170℃とし、第2混練工程におけるゴム組成物の最高温度は110℃とした。ここで、第1混練工程は前記A工程に相当し、第2混練工程は前記B工程に相当する。得られたゴム組成物に対して、下記の方法で、加工性、破壊特性、低ロス性、耐摩耗性を評価した。
【0074】
(1)加工性
得られたゴム組成物の未加硫粘度を、JIS K 6300−1:2001(ムーニー粘度)に従って測定し、表1及び表2においては比較例1の未加硫粘度を100とし、表3においては比較例14の未加硫粘度を100とし、表4においては比較例17の未加硫粘度を100として、それぞれ逆数の指数表示とした。指数値が大きい程、未加硫粘度が低く、加工性が良好であることを示す。
【0075】
(2)破壊特性
得られたゴム組成物を160℃で20分加硫後、JIS K6251に準拠して室温(23℃)で引張試験を行うことによって、Tb(引張強さ(MPa))を測定し、表1及び表2においては比較例1を100とし、表3においては比較例14を100とし、表4においては比較例17を100として、それぞれ指数表示した。指数値が大きい程、引張強さが大きく、破壊特性が良好であることを示す。
【0076】
(3)低ロス性
得られたゴム組成物を160℃で20分加硫後、粘弾性測定装置(レオメトリックス社製)を使用し、温度60℃、動歪5%、周波数15Hzでtanδを測定し、表1及び表2においては比較例1のtanδを100とし、表3においては比較例14のtanδを100とし、表4おいては比較例17のtanδを100として、それぞれ逆数の指数表示とした。指数値が大きい程、tanδが小さく、低ロス性に優れることを示す。
【0077】
(4)耐摩耗性
得られたゴム組成物を160℃で20分加硫後、JIS K 6264−2:2005に準拠し、ランボーン摩耗試験機を使用して23℃で摩耗量を測定し、表1及び表2においては比較例1の摩耗量の逆数を100とし、表3においては比較例14の摩耗量の逆数を100とし、表4においては比較例17の摩耗量の逆数を100として、下記式にてそれぞれ指数表示した。
耐摩耗性指数={(比較例1、14又は17の加硫ゴム組成物の摩耗量)/(供試加硫ゴム組成物の摩耗量)}×100
指数値が大きい程、摩耗量が少なく、耐摩耗性が良好であることを示す。
【0078】
【表1】
【0079】
【表2】
【0080】
【表3】
【0081】
【表4】
【0082】
*1 SBR: スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、旭化成株式会社製、溶液重合SBR、商品名「タフデン2000」
*2 BR: ポリブタジエンゴム、JSR株式会社製、溶液重合BR、商品名「JSR BR01」
*3 アロマオイル: 富士興産社製、商品名「アロマックス#3」
*4 カーボンブラック: 三菱化学社製、商品名「ダイヤブラックN234」、ISAF−HS
*5 シリカ: 東ソー・シリカ社製、商品名「ニプシルAQ」
*6 シランカップリング剤: デグッサ社製、商品名「Si69」
【0083】
*7 グリセリン脂肪酸エステルA: 国際公開第2014/098155号(特許文献1)の製造例4に記載の方法に従って合成した実施例4で使用のグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸モノエステル含有率=64質量%、グリセリン脂肪酸ジエステル含有率=34質量%、グリセリン脂肪酸トリエステル含有率=1質量%、グリセリン含有率=1質量%、構成脂肪酸の99質量%がパルミチン酸、1質量%がその他脂肪酸
*8 グリセリン脂肪酸エステルB: 上記グリセリン脂肪酸エステルAを分子蒸留することで調製したもの、グリセリン脂肪酸モノエステル含有率=97質量%、構成脂肪酸の99質量%がパルミチン酸、1質量%がその他脂肪酸
*9 グリセリン脂肪酸エステルC: 国際公開第2014/098155号(特許文献1)の製造例1に記載の方法に従い、脂肪酸をオクタン酸から同モル量のパーム由来硬化脂肪酸に変えて合成し、さらに分子蒸留することで調製したもの、グリセリン脂肪酸モノエステル含有率=97質量%、構成脂肪酸の54質量%がステアリン酸で且つ42質量%がパルミチン酸、4質量%がその他脂肪酸
*10 グリセリン脂肪酸エステルD: グリセリン脂肪酸エステルBとグリセリン脂肪酸エステルCとの質量比1:1の混合物、グリセリン脂肪酸モノエステル含有率=97質量%、構成脂肪酸の71質量%がパルミチン酸で且つ27質量%がステアリン酸、2質量%がその他脂肪酸
【0084】
*11 老化防止剤6C: 大内新興化学工業社製、商品名「ノクラック6C」、N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン
*12 加硫促進剤DPG: 大内新興化学工業社製、商品名「ノクセラーD」、1,3−ジフェニルグアニジン
*13 チオウレア: 堺化学工業製、チオ尿素
*14 ジエチルチオウレア: ラインケミー製、商品名「Rhenogran ETU−80」、N,N’−ジエチルチオ尿素
*15 チアジアゾール: 東京化成製、商品名「Bismuthiol」、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール
*16 加硫促進剤M: 大内新興化学工業社製、商品名「ノクセラーM−P」、2−メルカプトベンゾチアゾール
*17 加硫促進剤TBzTD: サンシン化学工業製、商品名「サンセラーTBZTD」、テトラベンジルチウラムジスルフィド
*18 加硫促進剤DM: 大内新興化学工業社製、商品名「ノクセラーDM」、ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド
*19 加硫促進剤NS: 大内新興化学工業社製、商品名「ノクセラーNS−F」、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド
*20 加硫促進剤CZ: 大内新興化学工業社製、商品名「ノクセラーCZ−G」、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド
*21 天然ゴム: RSS#3
【0085】
表1の比較例1と比較例3及び4の結果、並びに、表4の比較例17と比較例18の結果から、グリセリン脂肪酸エステル(E)を配合せずに、活性剤(D)を配合すると、ゴム組成物の未加硫粘度が大幅に上昇することが分かる。これに対して、表1の比較例4と表2の実施例1の結果、表1の比較例3と表2の実施例3及び4の結果、並びに、表4の比較例18と実施例10の結果から、本発明に従うゴム組成物は、未加硫粘度の上昇が抑制されて、加工性が良好であることに加えて、破壊特性、低ロス性、耐摩耗性の総てに優れることが分かる。
【0086】
また、表2の比較例12と実施例3及び4の結果、並びに、表3の比較例15と実施例6及び8の結果から、国際公開第2014/098155号(特許文献1)に開示の薬品と活性剤(D)を組み合わせると、ゴム組成物の未加硫粘度が大幅に上昇するのに対し、本発明で規定のグリセリン脂肪酸エステル(E)と活性剤(D)を組み合わせると、ゴム組成物の未加硫粘度の上昇を抑制しつつ、破壊特性、低ロス性、耐摩耗性を大幅に改善できることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明のゴム組成物は、タイヤ及びその他のゴム製品に利用できる。また、本発明のタイヤは、各種車輌向けのタイヤとして利用できる。