(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
回路基板の上にラミネート用の樹脂フィルムが載置されたワークを、搬送用フィルムの間に挟んで搬送する基板搬送手段を有するワーク搬送工程と、ワークを減圧状態で一対の押圧体の間に挟んで加圧し上記樹脂フィルムを回路基板表面に密着させる真空一体化手段、および、上記一対の押圧体の間の空間を減圧するための真空源を含む減圧手段を有する真空積層工程とを備え、
上記真空積層工程における真空源と真空一体化手段との間に、上記真空源が吸引する空気の流量を調節する減圧速度制御手段が介在配置され、上記減圧手段によるワーク周囲の空間の真空引きの速度が調節可能になっており、
上記減圧速度制御手段が、ピストンロッドを有するエアーシリンダと、このエアーシリンダのピストンロッドの往復動に連動して上記真空源による真空引きの作動を開と閉との間で切り替える開閉弁と、上記エアーシリンダに供給される作動流体の流量を調節する流量調整弁とを有しており、上記開閉弁の開閉が所定の時間をかけて定速で行われるようになっており、真空引きの時間の経過とともに上記開閉弁の開度が大きくなり、上記開閉弁を通過する空気の流量が多くなることを特徴とする真空積層方法。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型化、高性能化に伴い、これらに搭載される電子回路基板には、多層化した高密度タイプのプリント回路基板(いわゆる「ビルドアップ基板」)が、多用されるようになってきている。このビルドアップ基板は、表面に配線等の凹凸を有する基板と、絶縁層としての樹脂フィルムとを、交互に多段に積層(ラミネート)して形成されるもので、その製造には積層装置が用いられる。
【0003】
この積層装置は、回路基板の上にラミネート用の樹脂フィルムが載置(仮止め)された枚葉状のワーク(仮積層体)を、搬送用フィルム繰出し機から繰り出した上下一対の搬送用フィルムにより上下から挟み込んだ状態で、工程連続方向に断続的に搬送するものである。そして、その過程で、真空ラミネータまたは真空積層装置等の真空一体化手段により、ワークにおける回路基板とラミネート用樹脂フィルムとを一体化するとともに、そのフィルム表面を平坦化した後に、ワークを冷却する(特許文献1〜3を参照)。
【0004】
上記構成のようなビルドアップ基板(ビルドアップ工法)用の積層装置に関し、本出願人は、特許文献2において、積層装置の真空一体化手段として、風船のように膨らむ可撓性シートにより、ラミネート用フィルムを回路基板に押し付けて積層する、ダイヤフラム式の真空ラミネータ(図示せず)を用いた真空積層方法を開示している。
【0005】
このダイヤフラム式の真空ラミネータは、可撓性シートを付設した上側のプレートと下側のプレートとの間に、減圧空間(真空部)を形成するための真空枠が設けられており、これらが接近・嵌合して形成された上下のプレート間の真空部内を減圧した状態で、上記可撓性シートを背面への加圧等により膨らませることにより、上記ラミネート用フィルムを基板に強く押し付け、これらフィルムと基板との間にマイクロボイド等を発生させずに積層できるようになっている。
【0006】
また、本出願人は、特許文献3において、積層装置の真空一体化手段に、その表面に弾性プレス板(耐熱性ゴム等)が配設された上下のプレート(プレスプレート)を備える真空積層装置を用いることにより、被積層材(回路基板)表面の凹凸(配線)が深い(40μm以上)場合でも、被積層材と積層材(樹脂フィルム)との間に気泡を生じることなく、積層材を被積層材にぴったりと密着追従させることができる真空積層方法(加圧ラミネーション)を提案している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記のような真空積層方法において、出来上がった製品(積層体)の厚みが突然ばらついたり、真空積層工程から次工程(平面プレス工程等)へのワークの搬送が不規則に乱れたりといった不具合が、発生する場合があった。そこで、発明者らがその原因を追究したところ、これらの不具合は、上記真空積層工程の真空一体化手段において密封契合された減圧用の空間(真空部)を減圧する際に、この減圧用空間内で発生する気流によって、ワークが基板搬送手段(搬送用フィルム)の間で滑るように移動してしまうことにより発生していることが判明した。
【0009】
すなわち、真空積層工程の減圧用空間内では、ワーク(仮積層体)は前記搬送用フィルムに挟持されて一時的に空中に懸架された状態になっているが、この時、ワークは固定されておらず、上記搬送用フィルム間でまだ自由に動ける状態である。そのため、この減圧用空間内の空気を排出する際に生じる気流(風)が激しい場合、この気流により、PET製等からなる搬送用フィルムに挟持されたワークが位置ずれを起こしてしまう現象が観察された。そして、これが、上記ワークの真空積層工程から次工程への搬送の乱れや、製品(積層体)の厚みのばらつき等の不具合の原因となっていることを、発明者らは突き止めた。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、真空一体化手段の減圧用空間内を排気する際も、基板搬送手段によりその中を通過する基板に、排気の気流に起因する位置ずれが発生せず、積層体を安定して製造することのできる真空積層方法の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するため、本発明は、回路基板の上にラミネート用の樹脂フィルムが載置されたワークを、搬送用フィルムの間に挟んで搬送する基板搬送手段を有するワーク搬送工程と、ワークを減圧状態で一対の押圧体の間に挟んで加圧し上記樹脂フィルムを回路基板表面に密着させる真空一体化手段、および、上記一対の押圧体の間の空間を減圧するための真空源を含む減圧手段を有する真空積層工程とを備え、上記真空積層工程における真空源と真空一体化手段との間に、上記真空源が吸引する空気の流量を調節する減圧速度制御手段が介在配置され、上記減圧手段によるワーク周囲の空間の真空引きの速度が調節可能になっている真空積層方法を第1の要旨とする。
【0012】
また、本発明は、そのなかでも、上記減圧速度制御手段が、ピストンロッドを有するエアーシリンダと、このエアーシリンダのピストンロッドの往復動に連動して上記真空源による真空引きの作動を開と閉との間で切り替える開閉弁と、上記エアーシリンダに供給される作動流体の流量を調節する流量調整弁とからなり、上記開閉弁の開閉が、所定の時間をかけて定速で行われるようになっている真空積層方法を第2の要旨とする。
【0013】
すなわち、本発明の発明者らは、前記課題を解決するために工夫を重ね、その結果、真空積層方法の真空積層工程において、積層前の減圧用空間の排気の際に、その中の空気を一気に排気するのではなく、これを調節しながらゆっくり真空度を上げてゆくことにより、空中懸架状態のワーク搬送用フィルムにも振動等を発生させずに、安定してワークを搬送可能なことを見出し、本発明に到達した。
【発明の効果】
【0014】
本発明の真空積層方法は、ワークを搬送用フィルムの間に挟んで搬送するワーク搬送工程と、ワークを減圧状態で一対の押圧体の間に挟んで加圧し上記樹脂フィルムを回路基板表面に密着させる真空一体化手段、および、上記一対の押圧体の間の空間を減圧するための真空源を含む減圧手段を有する真空積層工程と、ワークの表面を平坦化する平面プレス工程とを備え、上記真空積層工程における真空源と真空一体化手段との間に、上記真空源が吸引する空気の流量を調節する減圧速度制御手段が介在配置されている。
【0015】
これにより、真空積層時の真空引き(真空度の上昇)をゆっくりと行うことが可能になり、減圧用空間(一対の押圧体の間の真空部)に上記真空引きに伴う激しい気流(風)が発生するのを防止することができる。しかも、上記減圧速度制御手段は、上記減圧手段によるワーク周囲の空間の真空引きを、始めはゆっくりと低速(最少流量)で行い、その後に徐々に流量を上げて高速で行うようにすることができる。したがって、この真空積層方法は、上記真空引き初期の流量の制限による「真空引き完了までのタイムロス」を極小にして、装置のタクトタイムの増大および生産効率の低下を最小に抑えることができる。
【0016】
また、本発明の真空積層方法において、上記減圧速度制御手段が、ピストンロッドを有するエアーシリンダと、このエアーシリンダのピストンロッドの往復動に連動して上記真空源による真空引きの作動を開と閉(ONとOFF)との間で切り替える開閉弁と、上記エアーシリンダに供給される作動流体の流量を調節する流量調整弁とからなり、上記開閉弁の開閉が、所定の時間をかけて定速で行われるようになっている場合は、真空引きの圧力を測定(フィードバック)しながら制御するような複雑なシステム等を導入することなく、上記エアーシリンダ用の流量調整弁(いわゆる「スピードコントローラ」またはチェック弁付き流量調整弁)の調節だけで、真空引きの速度を調節する上記開閉弁の開閉が所定の時間をかけて定速でゆっくり行われるように、シンプルに制御することが可能になる。これにより、大掛かりな制御装置に頼ることなく、最小限の設備投資で、上記真空積層工程の減圧速度制御を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
つぎに、本発明の実施の形態を、図面にもとづいて詳しく説明する。ただし、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0019】
図1は、本発明の実施形態の真空積層方法に用いる積層装置の構成を説明する構成図であり、
図2は、
図1の真空積層工程(工程B:真空一体化手段)部分を拡大した拡大図である。
【0020】
図1に示す積層装置は、表面に配線等の凹凸を有する基板と、絶縁層としての樹脂フィルムとを、交互に多段に積層(ラミネート)するビルドアップ工法等に用いられる積層装置であり、工程の両端(工程始点である図示右側と工程終点である図示左側)には、上下に位置する搬送用フィルム繰出し機10,10’および搬送用フィルム巻取り機40,40’と、基板搬送中の搬送用フィルムF,F’(PET製等)を工程各所で支承する複数のローラーとからなるワーク搬送工程A,A’(図中一点鎖線で表示。以下同じ。)が構築されている。
【0021】
また、上記ワーク搬送工程(A→A’)の途中には、搬送用フィルムF,F’により上下から挟み込まれた状態で搬送された枚葉状のワークW(仮積層体:回路基板の上にラミネート用の樹脂フィルムが仮止めされたもの)を、減圧状態で上下のプレート21,21’の間に挟み込んでフィルムを基板に密着させる真空一体化装置20を備える真空積層工程Bと、上記積層後のワークWを上下のプレスブロック31,31’間で押圧してラミネートフィルムの表面を平坦化させ、積層体(ワークW)全体を均一厚みとする平面プレス装置30を備える平面プレス工程Cと、上記平面プレス後のワークWを冷却するためのファン42,42’を有するワーク冷却工程Dと、が配設されている。
【0022】
さらに、この実施形態の真空積層方法は、上記真空積層工程Bにおいて、この真空一体化装置20の下側のプレート21’を上昇させた際に上下のプレート21,21’間に形成される減圧空間(
図3参照)を減圧するための真空源(真空ポンプP等)と、上記減圧空間の内部に連通する排気用開口部25との間に、
図5(a)に示すような、上記真空源が吸引する空気の流量を調節する開閉弁51,エアーシリンダ52,スピードコントローラ53等からなる減圧速度制御手段50が介在配置されている。これが、本発明の真空積層方法の最大の特徴である。
【0023】
上記真空積層方法の過程について説明すると、まず、ワーク搬送工程A,A’は、工程の始点に位置する上下の搬送用フィルム繰出し機10,10’、および、工程にワークWを搬入するための搬入用コンベア部11と、工程の終点に配置された搬送用フィルム巻取り機40,40’、および、工程からワークWを搬出するための搬出用コンベア部41と、基板(ワークW)搬送中の搬送用フィルムF,F’を工程各所で支承する複数のガイドローラー等と、を備えている。
【0024】
そして、搬入用コンベア部11から所定間隔で工程に供給された枚葉状のワークW(回路基板の上にラミネート用の樹脂フィルムを載置・仮止めしたもの)は、各搬送用フィルム繰出し機10,10’から繰り出された上下の搬送用フィルムF,F’の間に、所定の間隔で断続的に(間欠的に)挟み込まれ、これら搬送用フィルムF,F’の流れ(走行)と同期した状態で、上記各ガイドローラーに案内されながら、真空一体化装置20の上下のプレート21,21’の間、および、平面プレス装置30の上下のプレスブロック31,31’の間と、ワーク冷却工程Dとを経由した後、上下の搬送用フィルムF,F’が離型される。
【0025】
ワークWから離型した上下の搬送用フィルムF,F’は、それぞれ、搬送用フィルム巻取り機40,40’に巻き取られ、再利用等に供される。また、搬送用フィルムF,F’から離型したワークWは、工程終端(図示左側)の搬出用コンベア部41から搬出されるようになっている。
【0026】
つぎに、本実施形態における真空積層方法の要部である、真空一体化装置20を備える真空積層工程Bは、前記搬送用フィルムF,F’により搬送されてきたワークW(仮積層状態)を、減圧真空状態で加熱加圧して、ラミネートフィルムを回路基板に密着させる過程である。
【0027】
上記真空一体化装置20は、
図2〜
図4のように、プレス台27(安定台座)に立設された複数本(図面では四隅4本のうち2本しか図示せず)の支柱28と、これら各支柱28にボルト,ナット等の固定手段で固定された上側のプレスプレート21と、上記各支柱28に上下移動(昇降)可能に取り付けられた下側のプレスプレート21’とを備えている。
【0028】
また、上下のプレート21,21’の内側(プレス側)には、断熱材(図示省略)を介して、ヒーターを内蔵する熱盤22,22’が取り付けられており、そのさらに内側(プレス側)に、耐熱性ゴム等からなる弾性プレス板23,23’が配設されている。さらに、上記上下のプレート21,21’および熱盤22,22’の周囲には、各プレート21,21’と一体になって相対移動する真空枠24,24’(可動真空枠)が配置されており、下側のプレート21’が所定位置まで上昇した際に、これら上下のプレート21,21’間に、減圧可能な密封空間が形成されるようになっている。
【0029】
そして、この真空一体化装置20を用いた真空積層工程Bは、まず、
図2に示すように、基板搬送手段(搬送用フィルムF,F’)により上下から挟み込まれた状態のワークWを、この搬送用フィルムF,F’の水平移動(走行)に伴って、上下のプレスプレート21,21’間まで移動させ、このワークWを所定位置に位置決めする。
【0030】
ついで、
図3に示すように、下側のプレスプレート21’を上昇させ、上下の真空枠24,24’を係合(嵌合)させることにより、このワークWの周囲に、密封契合された減圧用の空間(真空部)を形成する。そして、別途配設した真空ポンプP等の真空源を作動させ、真空枠24,24’や上側のプレスプレート21を穿孔する等して複数設けられた排気用開口部25を通じて、上記減圧用空間内の空気を排気し、この減圧用空間内(ワークWの周囲)を所定の圧力(通常200Pa以下、好ましくは100Pa以下)まで減圧する。
【0031】
この時、従来の真空積層方法であれば、上記減圧用空間内の空気の排気が一気に進行するため、減圧用空間内に生じる激しい気流(風)によって、空中懸架状態の搬送用フィルムF,F’間に挟まれたワークWが、滑るように位置ずれを起こす場合があった。しかしながら、本実施形態の真空積層方法においては、上記真空ポンプPと上記真空一体化装置20の排気用開口部25との間に配設された減圧速度制御手段50〔
図5(a)参照〕により、減圧初期(真空引き開始時)の排気の流量が制限されているため、減圧用空間内に生じる気流も穏やかで、搬送用フィルムF,F’間に挟まれたワークWにまで影響を及ぼすことがない。したがって、本発明の真空積層方法は、減圧時に発生するワークWの位置ずれが、未然に防止されている。
【0032】
上記減圧速度制御手段50の構成について、より詳しく説明すると、先にも述べたように、この減圧速度制御手段50は、
図5(a)に示すように、開閉弁51と、エアーシリンダ52と、スピードコントローラ53〔エアーシリンダ52の吸気(イン)ポート側53A,排気(アウト)ポート側53B〕とで構成されている。
【0033】
上記開閉弁51は、前記真空一体化装置20の排気用開口部25(図示下方)に繋がる吸引側開口部51bと真空源(図示左方)に繋がる排気側開口部51cとを有するハウジング51aと、このハウジング51aの内部に配置され、後記のエアーシリンダ52のピストンロッド52cの一方の端部に取り付けられて、ピストンロッド52cの往復動により上記真空源側の排気側開口部51cを密閉する弁部材51dと、からなる。
【0034】
また、上記エアーシリンダ52は、筒状のシリンダ52aと、このシリンダ52a内を往復するピストン52bと、シリンダ52aの両端から突出するピストンロッド52cとから構成されている、両ロッドタイプのエアーシリンダである。
【0035】
そして、上記エアーシリンダ52の作動流体(高圧空気)のインポートとアウトポートには、それぞれ、メーターアウト形のスピードコントローラ(チェック弁付き流量調整弁)53Aと53Bが配設されており、このシリンダ52a内から排出される作動流体の時間あたりの空気量(流量)を制限することによって、上記ピストン52bおよびピストンロッド52cの動作速度を制御している(メーターアウト制御)。
【0036】
以上の構成により、減圧速度制御手段50は、動作の初期(真空引きの始まり)の段階においては、
図5(b)のように、開閉弁51の弁(弁部材51d)の開度が低いため、真空一体化装置20の減圧空間(真空部)の空気は、真空源に少量ずつゆっくり吸引され、この減圧用空間内に激しい気流(風)が生じることが抑制されている。そして、時間の経過とともに減圧用空間内の圧力(気圧)がある程度低下すると同時に、
図5(c)のように、上記開閉弁51の弁(弁部材51d)の開度も次第に大きくなり、この開閉弁51を通過する空気の流量が多く(真空引きの抵抗が小さく)なって、素早く目標の減圧状態(好ましくは100Pa以下)に到達することができる。
【0037】
したがって、上記減圧速度制御手段50は、減圧空間内において問題となる、真空引きによる風の発生を防止しながら、工程上のロスとなる真空引き時間(真空引き開始から完了までにかかる時間)の増加を最小限に抑えることができる。
【0038】
なお、上記スピードコントローラ53を用いたエアーシリンダ52の動作速度の制御としては、シリンダ52a内に供給される作動流体の流量を制限して、ピストン52bおよびピストンロッド52cの動作速度を制御するメーターイン制御としてもよく、エアーシリンダに代えて、油圧シリンダ等を使用してもよい。
【0039】
また、上記真空一体化装置20の減圧速度制御手段50としては、上記開閉弁51,エアーシリンダ52,スピードコントローラ53の組み合わせの他に、例えば、単純な一方向絞り弁や、チェック弁付きの流量制御弁を使用することもできる(ただし、これらの弁単体での使用は、真空引き時間の増大を招く。)。
【0040】
さらに、上記構成の減圧速度制御手段50に代えて、圧力および流量を電気的に制御できる電空レギュレータや電磁ソレノイド、あるいはサーボモータやステッピングモータ等を用いた電動シリンダ(電動アクチュエータ)を使用してもよい。これらの圧力(流量)可変機構を用いても、本実施形態の減圧速度制御手段50と同等の効果を奏することができる。
【0041】
ついで、上下のプレスプレート21,21’間の真空部の圧力が、所定の圧力(通常200Pa以下)に到達したら、
図3のように、油圧シリンダ26を作動させ、下側のプレスプレート21’を上昇させて、上下のプレスプレート21,21’間で、ワークW(仮積層体)を挟圧して加熱(約30〜185℃)・加圧(約0.1〜2MPa)し、基板の表面にラミネート用フィルムを貼り合わせて、積層体を作製する。
【0042】
そして、所定時間経過後、上記減圧用空間(真空部)の減圧を開放して大気圧に戻し、
図4のように下側のプレスプレート21’を下降させて、上記積層体(ワークW)を、搬送用フィルムF,F’の走行により、次工程である平面プレス工程Cに向けて搬出する。
【0043】
つぎに、平面プレス工程Cを構成する平面プレス装置30は、
図1に示すように、基本的な構成は、前記真空一体化装置20(
図2参照)と同様であり、プレス台37に立設された複数本(
図1では四隅4本のうち2本しか図示せず)の支柱38と、これら各支柱38にボルト,ナット等の固定手段で固定された上側のプレスブロック31と、上記各支柱38に上下移動(昇降)可能に取り付けられた下側のプレスブロック31’とを備える。
【0044】
また、上下のプレスブロック31,31’の内側(プレス側)には、断熱材(図示省略)を介してヒーターを内蔵する熱盤32,32’が取り付けられており、そのさらに内側(プレス側)に、緩衝材33,33’を介してフレキシブル金属板34,34’が配設されている。
【0045】
上記平面プレス装置30を有する平面プレス工程Cにおいて、前記真空積層工程Bを経たワークWは、搬送用フィルムF,F’の走行により上下のプレスブロック31,31’の間の所定位置に位置決めされる。ついで、油圧シリンダ36を作動させて下側のプレスブロック31’を上昇させ、上下のフレキシブル金属板34,34’でワークWを挟圧するようにして加熱(約30〜200℃)・加圧(約0.1〜2MPa)し、ワークWの表面(ラミネートフィルム側)を平滑にする。
【0046】
なお、上記平面プレス装置30に、前記真空一体化装置20と同様の、上下のプレスブロック31,31’の間に減圧空間(真空部)を形成するための真空枠を配設し、ワークWの周囲を減圧雰囲気(通常200Pa以下)として、平面プレスを行ってもよい。この場合も、平面プレス装置30とその減圧空間を減圧する真空源との間に、前記真空一体化装置20と同様の減圧速度制御手段50(
図5参照)を配設し、減圧時に発生する気流に起因するワークWの位置ずれを防止するようにしてもよい。
【0047】
つぎに、前記平面プレス後のワークWを冷却するワーク冷却工程Dは、
図1のように、搬送用フィルムF,F’の上下にファン42,42’が配設されたもので、これら搬送用フィルムF,F’に挟まれた状態で平面プレス装置30から搬送されてきたワークWに対して、上下方向から空気(冷風)を吹き付けることにより、このワークWを冷却する。
【0048】
最後に、冷却されたワークWは、その表裏面(上下面)から搬送用フィルムF,F’が剥離され、単体となったワークWが、搬出用コンベア部41によって工程から搬出される。また、ワークWから離型した上下の搬送用フィルムF,F’は、それぞれ、搬送用フィルム巻取り機40,40’に巻き取られて、次回の製造等に再利用される。
【0049】
なお、上記実施形態では、真空一体化装置20の次工程に平面プレス装置30を有する積層装置を例示したが、上記平面プレス装置30がない構成や、他の機能を有する装置が配設された積層装置もある。本発明は、これら他の構成の積層装置にも等しく適用することが可能である。
【0050】
〔実施例〕
つぎに、前記真空一体化装置20(
図2参照)と真空源(真空ポンプP)との間に介在配置された減圧速度制御手段50(
図5参照)の効果を確認するために行った、確認試験の結果について説明する。
【0051】
積層装置として、フィルムを用いた搬送工程と加圧式真空ラミネータおよび高精度平面プレス装置、冷却システム等を一体化した、2ステージビルドアップラミネーター CVP600(ニッコー・マテリアルズ社製)を用いた。
【0052】
また、減圧速度制御手段としては、
図5に示すような形状の開閉弁51に、エアーシリンダとして、薄型シリンダ(内径40mmφ ストローク100mm)を、スピードコントローラとして、低速制御用スピードコントローラ(メーターアウト形のチェック弁付き絞り弁)を組み合わせて使用した。なお、スピードコントローラは、ニードル回転数(ニードル弁の開度)に対応して、流量がパラレル(一次関数的)に増加するタイプのものである。
【0053】
そして、上記構成の減圧速度制御手段を使用せず、真空ポンプP直結で、真空一体化装置20の排気用開口部25(
図3参照)から直接真空引きを行う場合を「比較例」(従来例)とするとともに、上記減圧速度制御手段を使用して、真空引き初期の排気量を制限した場合を「実施例」として、比較を行った。
【0054】
[真空引きにかかる時間の確認]
真空引きの流路上に、減圧速度制御手段を介在させた場合と介在させない場合とで、真空引き開始(大気圧)から、本実施形態で好ましいとした真空度(100Pa以下)に到達するまでの時間(秒)を比較した。
【0055】
<実施例1>
真空引きの流路上に減圧速度制御手段を介在させ、前記スピードコントローラのニードル回転数(ニードル弁の開度)を「1」として、上記真空ポンプPを用いて減圧空間が100Pa以下に到達するまでゆっくり減圧を行ったところ、減圧に要した時間は17.9秒であった。なお、搬送用フィルムF,F’に振動は観察されなかった。
【0056】
<実施例2>
真空引きの流路上に減圧速度制御手段を介在させ、前記スピードコントローラのニードル回転数(ニードル弁の開度)を「1.25」として、上記と同様に減圧空間が100Pa以下に到達するまでゆっくり減圧を行ったところ、減圧に要した時間は16.4秒であった。なお、搬送用フィルムF,F’に振動は観察されなかった。
【0057】
<実施例3>
真空引きの流路上に減圧速度制御手段を介在させ、前記スピードコントローラのニードル回転数(ニードル弁の開度)を「1.5」として、上記と同様に減圧空間が100Pa以下に到達するまでゆっくり減圧を行ったところ、減圧に要した時間は15.5秒であった。なお、搬送用フィルムF,F’に振動は観察されなかった。
【0058】
<実施例4>
真空引きの流路上に減圧速度制御手段を介在させ、前記スピードコントローラのニードル回転数(ニードル弁の開度)を「1.75」として、上記と同様に減圧空間が100Pa以下に到達するまでゆっくり減圧を行ったところ、減圧に要した時間は12.0秒であった。なお、搬送用フィルムF,F’に振動は観察されなかった。
【0059】
<実施例5>
真空引きの流路上に減圧速度制御手段を介在させ、前記スピードコントローラのニードル回転数(ニードル弁の開度)を「2」として、上記と同様に減圧空間が100Pa以下に到達するまでゆっくり減圧を行ったところ、減圧に要した時間は10.9秒であった。なお、搬送用フィルムF,F’に振動は観察されなかった。
【0060】
<実施例6>
真空引きの流路上に減圧速度制御手段を介在させ、前記スピードコントローラのニードル回転数(ニードル弁の開度)を「2.5」として、上記と同様に減圧空間が100Pa以下に到達するまでゆっくり減圧を行ったところ、減圧に要した時間は10.6秒であった。なお、搬送用フィルムF,F’に振動は観察されなかった。
【0061】
<比較例1>
これらに対して、減圧速度制御手段を介在させない場合(従来法)、減圧空間が100Pa以下に到達するのに6.1秒を要した。なお、減圧空間に気流(風)が巻き起こるため、搬送用フィルムF,F’が上下に振動し、ワークWが所定の位置からずれる現象が観察された。
【0062】
上記各実施例の製造条件によれば、真空引きによるタイムロスを最小限に抑えつつ、排気の気流に起因する搬送用フィルムの振動の発生を防止すことができた。したがって、フィルム−基板積層体を、不具合なく、効率的に安定して製造することができる。