(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態の一例を、図面に基づいて説明する。
図1に示される普通型コンバイン(「作業車」の一例)には、左右一対のクローラ走行装置1,1(「走行装置」に相当)と、これらクローラ走行装置1,1の駆動により走行する走行機体Aと、が備えられている。つまり、この普通型コンバインは、フルクローラ仕様に構成されている。走行機体Aの前部位置には、運転部Bと、刈取処理装置Cと、が備えられている。走行機体Aの後部位置には、刈取処理装置Cで刈り取られた穀稈が送り込まれる全稈投入型の脱穀装置Dと、脱穀装置Dから供給される穀粒を貯留するグレンタンクEと、グレンタンクEに貯留された穀粒を機外に排出するためのアンローダFと、が備えられている。また、走行機体Aの後端部でグレンタンクEと脱穀装置Dとの間に相当する箇所の機体フレーム10上には、燃料タンク17が備えられている。
【0018】
機体フレーム10における前部の左右中央側箇所には、エンジン3の出力軸(図示せず)から伝達される動力を、左右のクローラ走行装置1,1に伝える静油圧式無段変速装置(以下、HST30と称する)、及び、トランスミッション4が配備されている。
【0019】
図3、
図4に示されるように、エンジン3の出力軸に備えた出力プーリ(図示せず)と、HST30の入力軸38の入力プーリ38aとの間には、エンジン3の駆動力を伝える伝動ベルト37が掛け渡されている。入力軸38、及び、入力プーリ38aを支承する入力ケース39は、入力プーリ38aが存在する側とは反対側の端部がHST30の変速ケース35に連結固定され、入力軸38の長手方向での中間部に相当する箇所がトランスミッション4のミッションケース40の上部に固定されている。
【0020】
〔運転部について〕
機体フレーム10上に搭載されたエンジン3は、運転部Bの運転座席2の下方位置にあって、エンジン3の上方側が箱状のエンジンカバー11で覆われている。運転座席2は、エンジンカバー11の上面に備え付けられている。
【0021】
運転座席2の前方側には操縦塔12が立設され、操縦塔12の上面側には、操作レバー13が備えられている。操作レバー13は、前後、及び、左右に揺動自在に構成され、走行機体Aの操向制御を行う操作具と、刈取処理装置Cの昇降制御を行う操作具と、を兼ねている。
【0022】
図1に示されるように、運転座席2の左側部には、操縦塔12の左横端部位置から後方側へ向けて延設されたサイドパネル14が設けられている。サイドパネル14の前端部の上面には、走行機体Aの走行速度を制御する変速操作具として、主変速レバー15と副変速レバー16とが設けられている。
【0023】
さらに、サイドパネル14上には、排出クラッチレバー(図示せず)が設けられている。排出クラッチレバーは、エンジン3からの駆動力をグレンタンクEの底スクリュー21に対して断続する排出クラッチG(
図1参照)の入り切り操作を行って、アンローダFによる穀粒排出を可能にする状態と穀粒排出を停止する状態とに切換操作するための操作具である。
【0024】
〔刈取処理装置について〕
刈取処理装置Cは、植立穀稈の穂先側を掻き込みリール5の回転作動により掻き起こし、その穀稈の株元をカッター6で切断するように構成されている。刈り取られた穀稈(刈取穀稈)は、横送りオーガ7によって横送りされてフィーダ8の入り口近くに寄せ集められ、その刈取穀稈の全稈がフィーダ8により後方送りされて脱穀装置Dに送り込まれるように構成されている。
【0025】
また、刈取処理装置Cは、フィーダ8の後端部側に備えたフィーダ駆動軸(図示せず)を支点にして上下揺動自在に構成されている。フィーダ8の上下揺動は、機体フレーム10とフィーダ8の下部とに亘って設けられた油圧シリンダ等のアクチュエータ18によって行われる。アクチュエータ18の作動による揺動量の設定により、穀稈の刈高さの調節が可能に構成されている。
【0026】
フィーダ8の前端側の上方位置に配備された掻き込みリール5は、後端部側の揺動支点(図示せず)回りで前側を上下揺動することにより、フィーダ8に対する掻き込み高さ位置を変更可能に構成されている。このように、掻き込みリール5のフィーダ8に対する相対高さを変更することで、刈り高さを変えずに植立穀稈等の刈取対象作物に対する掻き込み高さを変更できる。掻き込みリール5の高さ位置の変更は、フィーダ8の上部との間に介装した油圧シリンダで構成されるリール昇降装置(図示せず)の伸縮作動によって行われる。リール昇降装置による昇降作動は、操作レバー13の握り部に設けた押しボタンスイッチ等の操作入力部(図示せず)からの指令によって行われる。
【0027】
〔脱穀装置について〕
脱穀装置Dには、扱室に供給された刈取穀稈の扱き処理を行うように走行機体Aの前後方向に沿う姿勢の軸心周りに駆動回転する軸流型の扱胴(図示せず)、及び、扱き処理によって得られた処理物から穀粒を選別する選別処理装置(図示せず)が備えられている。
選別処理装置では、選別された穀粒のうち、一番物は揚穀装置9によってグレンタンクEに供給し、二番物は二番還元装置19によって扱胴が旋回する扱室(図示せず)に戻され、穀粒以外の藁屑等は、選別処理装置の後部から走行機体Aの後方に落下放出される。
【0028】
〔グレンタンクについて〕
グレンタンクEには、揚穀装置9から供給される穀粒を貯留するためのタンク本体20が備えられている。タンク本体20には、走行機体Aへの収納姿勢で、機体前方側に向く前壁20aと、機体後方側に向く後壁20bと、左右の横壁20cと、が備えられている。つまり、タンク本体20は、ほぼ矩形箱状に形成されている。また、タンク本体20は、走行機体Aの後部位置の縦向き姿勢の上下軸心Y周りでの旋回により走行機体Aに収納される作業姿勢と、走行機体Aから横方向に張り出す点検姿勢とに、姿勢切換自在に機体フレーム10側に支持されている。グレンタンクEの旋回中心となる上下軸心Yは、タンク本体20の後面側に設けたアンローダFが備える縦搬送筒23の筒軸心と合致するように構成されている。
【0029】
図1〜
図4に示されるように、グレンタンクEには、タンク本体20に貯留した穀粒を後方に向けて送り出す底スクリュー21が、タンク本体20の底部に備えられている。タンク本体20の底壁の大部分は、タンク本体20が走行機体Aに収納された作業姿勢において、揚穀装置9から供給される穀粒がタンク本体20の左右方向での底部中央側へ集められるように、左右方向で中央側ほど低位となる先細り形状の傾斜面に形成されている。
【0030】
底スクリュー21は、そのスクリュー軸21Aの前端がタンク本体20の前壁20aよりも前方側に突出されている。このスクリュー軸21Aの前端に対してエンジン3からの駆動力が伝達されるように、かつ、伝動上手側に設けてある排出クラッチG(
図1参照)を介して、エンジン3からの駆動力が断続可能であるように構成されている。
【0031】
タンク本体20の後壁20bには、底スクリュー21から送られる穀粒をアンローダFに送る排出用筒部22が、後方向きに突出する状態で設けられている。排出用筒部22は、後端側が上向きに屈曲形成され、その上向きの端面にアンローダFの縦搬送筒23の下端側が接続されている。
【0032】
縦搬送筒23の内部に設けられた縦スクリュー軸23Aの下端部のベベルギヤ(図示せず)に対して、底スクリュー21のスクリュー軸21Aの後端部に備えたベベルギヤ(図示せず)を咬合させて動力を伝達するように構成されている。これにより、底スクリュー21からアンローダFの縦搬送筒23側へ穀粒が搬出される状態となる。
【0033】
〔アンローダについて〕
アンローダFには、上向きに立設された直管状の縦搬送筒23と、縦搬送筒23の上端部に接続された横搬送筒24と、が備えられている。横搬送筒24は、縦搬送筒23とともに上下軸心Y回りで左右揺動可能に、かつ、水平横軸心X回りで起伏揺動可能に構成されている。
【0034】
縦搬送筒23は、内部に縦スクリュー軸23Aを内装していて、底スクリュー21の後端部から送り出される穀粒を上昇搬送する上向きの縦搬送経路を構成している。縦搬送筒23の上端部に接続された横搬送筒24は、内部に横スクリュー軸24Aを内装していて、縦搬送筒23の上端部から受け継いだ穀粒を、水平方向等の機体外方側へ向けて搬送する横向きの搬送経路を構成している。
【0035】
アンローダFは、その縦搬送筒23が、グレンタンクEの排出用筒部22に対して、縦搬送筒23の筒軸心に沿う上下軸心Y回りで旋回可能に接続されている。そして、縦搬送筒23の上下軸心Y回りでの旋回作動は、旋回駆動機構26によって行われる。旋回駆動機構26は、縦搬送筒23の下端部外周に備えた旋回用ギヤ部(図示せず)を電動モータ(図示せず)のピニオンギヤで駆動するように構成されている。また、横搬送筒24の水平横軸心X回りでの起伏揺動は、縦搬送筒23の上部との間に亘って設けられた油圧シリンダ25の伸縮作動によって行われるように構成されている。
【0036】
〔油圧駆動系について〕
刈取処理装置Cの昇降作動や、走行変速、及び、操向操作を行うための油圧駆動系について説明する。
刈取処理装置Cは、
図2に示されるように、昇降用の油圧制御ユニット27の作動によって昇降作動するように構成されている。油圧制御ユニット27には、作動油タンク28に貯留されている作動油が第一油圧ポンプ29の作動によって供給される。油圧制御ユニット27には、機体フレーム10とフィーダ8とに亘って架設された油圧シリンダ等のアクチュエータ18、及び、アクチュエータ18に対する操作圧を変更する昇降用のバルブユニット(図示せず)等が備えられている。
【0037】
この昇降用のバルブユニットは、操作レバー13に昇降用の機械式連係機構(図示せず)を介して連係している。そして、操作レバー13の前後方向での揺動操作に基づいて、作動油タンク28と第一油圧ポンプ29と昇降シリンダとの間における作動油の流れを制御することにより、アクチュエータ18に対する操作圧を変更するように構成している。
この構成から、操作レバー13を前後方向に揺動操作することにより、刈取処理装置Cを、収穫対象の未刈り穀稈を収穫する下側の作業領域と収穫しない上側の非作業位置とに昇降させることができる。
【0038】
HST30を構成する油圧ポンプ31と油圧モータ32とは、変速ケース35に内蔵されている。変速ケース35には、油圧ポンプ31と油圧モータ32とを収納するケース本体35A、及び、ポートブロック35Bが備えられている。そして、油圧ポンプ31のポンプ軸がHST30の入力軸33になり、かつ、油圧モータ32のモータ軸がHST30の出力軸34になるように構成されている。HST30は、入力軸33と出力軸34とが横向きになる状態で、かつ、油圧ポンプ31の真下に油圧モータ32が位置する状態で、縦長の横向き姿勢で走行機体Aに装備されている。油圧ポンプ31には、アキシャルプランジャ形の可変容量ポンプが採用されている。油圧モータ32には、アキシャルプランジャ形の固定容量モータが採用されている。
【0039】
HST30には、油圧ポンプ31のポンプ斜板(図示せず)を操作する変速操作軸36が、変速ケース35の前壁から前方に突出する状態で備えられている。変速操作軸36は、主変速レバー15の前後方向での揺動操作に連動して、ポンプ斜板の操作角が主変速レバー15の操作位置に対応した角度に変更されるように、その前端部に備えられた連係アーム36aが、主変速用の機械式連係機構36bを介して主変速レバー15に連係されている。
【0040】
図2に示されるように、ミッションケース40に配備されている各サイドクラッチ48の油室100には、第二油圧ポンプ102の作動によって、ミッションケース40に貯留している潤滑用の作動油が作動用として供給されるように構成されている。第二油圧ポンプ102から各サイドクラッチ48の油室100への作動油の供給は、ステアリング用のバルブユニット103を介して行われる。つまり、ステアリング用のバルブユニット103は、サイドクラッチ48に対して作動油の給排を行うように構成されている。
【0041】
〔トランスミッションについて〕
図3〜
図6に示されるように、トランスミッション4は、鋳造品で構成されたミッションケース40に、左右向きの入力軸44と従動軸45とサイドクラッチ軸46、コンスタントメッシュ式の選択歯車式に構成した副変速機構47、一対のサイドクラッチ48、左右の伝動機構49等を内蔵して、入力軸44から入力された動力を変速して伝動下手側の走行駆動軸50へ出力するように構成されている。ミッションケース40の下部には、左右の対応するクローラ走行装置1に亘る左右向きの左右の走行駆動軸50、左右の走行駆動軸50を個別に外囲した状態で回転可能に支持する左右の駆動軸ケース51等が備えられている。各伝動機構49には、サイドクラッチ軸46と走行駆動軸50との間に中継軸98が備えられている。各伝動機構49は、中継軸98を含めて配設された減速ギヤ伝動機構によって構成されている。
【0042】
ミッションケース40には、上下方向の分割線SLに沿う分割面を境にして左右に分割可能に構成された左側の半割ケース40Lと右側の半割ケース40Rと、が備えられている。そして、左側の半割ケース40Lと右側の半割ケース40Rとをボルト連結することにより、ミッションケース40の内部に、副変速機構47やサイドクラッチ48等を配設するための機器配設用空間40Sが形成される。機器配設用空間40Sが、作動油の貯留用空間を兼ねている。
【0043】
また、ミッションケース40には、
図5、
図6に示されるように、ミッションケース40の上部に、サイドクラッチ48等の油圧機器で使用された作動油が戻されてくる給油口41と、ミッションケース40の空気を抜くためのエア抜き孔42とが設けられている。
給油口41には油圧機器からの作動油を導く給油管41aが接続されている。エア抜き孔42には、取り外すことでエア抜きを行い易くし、装着することで外部からの異物が侵入しないようにするための栓体42aが装着されている。
【0044】
そして、ミッションケース40の内部側には、給油口41の下側に対向する箇所に、庇状の流下ガイド板部43が設けられている。流下ガイド板部43では、給油口41から注入された作動油がエア抜き孔42側へ短絡的に流れ込まないように規制しながら、下方に流下案内するものである。
【0045】
流下ガイド板部43には、給油口41から注入される作動油が直接に機器配設用空間40Sの液面に落下しないように、給油口41の直下に対向する箇所に庇状の案内面43aが備えられている。案内面43aは、給油口41の下方に近い側がエア抜き孔42に近い側よりも低くなるように、給油口41の下方に近い側ほど下位となる傾斜状に形成されている。
【0046】
案内面43aのうち、エア抜き孔42に近い側の端部は、エア抜き孔42よりも手前で、エア抜き孔42側と給油口41側とが隔絶されるように、ミッションケース40の内面に一体に接続されている。給油口41の下方に近い側では、案内面43aの一部が給油口41の下方近くでV字状に屈曲形成されて、案内面43aの上に注入された作動油を集めながら流下させる注ぎ口部43bが設けられている。
【0047】
図6に示されるように、ミッションケース40の前壁の一部には、吸込口40a、及び、内部油路40bが形成されている。内部油路40bに接続されたフィルタ106を経て、ミッションケース40からサイドクラッチ48等の油圧機器に作動油を供給する第二油圧ポンプ102側への作動油供給がなされるように構成されている。
【0048】
図4、
図5に示されるように、ミッションケース40には、運転部B側となる右側壁の上部に(
図4中では左側)、HST30のポートブロック35Bに備えられた出力部に連接する入力部が備えられている。そして、その入力部にポートブロック35Bの出力部を連接させた状態で、その右側壁の上部にHST30がボルト連結されている。
【0049】
トランスミッション4の入力軸44は、その入力側の端部となる右端部(
図4中では左側)を、HST30の出力軸34に、筒軸59を介してスプライン嵌合することにより、出力軸34の軸心を中心にして出力軸34と一体回転するように構成されている。
【0050】
図5、
図6に示されるように、副変速機構47は、ミッションケース40における機器配設用空間40Sの上部に、畦越え走行時等に使用する使用頻度が最も低い低速伝動用の低速駆動ギヤ60と低速従動ギヤ61、作業走行時等に使用する使用頻度が比較的高い中速伝動用の中速駆動ギヤ62と中速従動ギヤ63、作業走行時や移動走行時等に使用する使用頻度が最も高い高速伝動用の高速駆動ギヤ64と高速従動ギヤ65、及び、それらのギヤ選択操作を可能にするシフト機構66等を配備して、シフト機構66のギヤ選択操作による3段の変速が可能となるように構成されている。
【0051】
シフト機構66には、低速従動ギヤ61又は高速従動ギヤ65の何れかを選択する第一シフタ67、及び、中速従動ギヤ63を選択する第二シフタ68が備えられている。シフト機構66は、選択された何れかの低速従動ギヤ61,中速従動ギヤ63,高速従動ギヤ65から変速動力を取り出して従動軸45に伝えるように構成されている。
【0052】
第一シフタ67、及び、第二シフタ68は、第一シフタ67の操作用の第一フォーク部69Aと第二シフタ68の操作用の第二フォーク部69Bと、が備えられたシフトフォーク69が、左右向きの変速支軸70上を相対摺動し、位置保持用のデテント機構71で位置保持されることによって低速従動ギヤ61,中速従動ギヤ63,高速従動ギヤ65の選択操作を行うように構成されている。
【0053】
シフトフォーク69は、変速支軸70上でシフトフォーク69を左右方向に摺動操作する操作アーム72、及び、操作アーム72を支持する前後向きの変速操作軸73、連係アーム77等の、副変速用の機械式連係機構78を介して副変速レバー16に連係されている。
【0054】
上記のように、副変速機構47は、トランスミッション4の入力軸44から従動軸45に伝動する状態で、トランスミッション4の入力軸44と従動軸45とに亘って装備されている。そして、副変速機構47は、副変速レバー16の操作に連動したシフト機構66のギヤ選択操作によって従動軸45に連動連結する低速従動ギヤ61,中速従動ギヤ63,高速従動ギヤ65を選択することにより、その伝動状態が、HST30の出力軸34からの動力を、低速駆動ギヤ60及び低速従動ギヤ61を介して従動軸45に伝達する低速伝動状態と、中速駆動ギヤ62及び中速従動ギヤ63を介して従動軸45に伝達する中速伝動状態と、高速駆動ギヤ64及び高速従動ギヤ65を介して従動軸45に伝達する高速伝動状態とに、択一的に切り換わる副変速装置として機能するように構成されている。
【0055】
図4〜
図6に示されるように、従動軸45は、その中央部における中速従動ギヤ63と高速従動ギヤ65との間の部位に、副変速機構47の出力回転体として機能する小径の出力ギヤ81を、従動軸45と出力ギヤ81とが一体回転するようにスプライン嵌合されている。
【0056】
サイドクラッチ軸46は、ミッションケース40における機器配設用空間40Sの上下中間部に配備されている。サイドクラッチ軸46の左右中間位置には、出力ギヤ81と咬み合い連動する伝動回転体としての大径の伝動ギヤ82が、サイドクラッチ軸46と伝動ギヤ82とが相対摺動不能な状態で一体回転するようにスプライン嵌合されている。つまり、従動軸45からサイドクラッチ軸46に亘る伝動構造は、出力ギヤ81、及び、伝動ギヤ82によるギヤ伝動式に構成して、副変速機構47による変速後の動力が、従動軸45からサイドクラッチ軸46に減速伝達されるように構成されている。
【0057】
なお、副変速機構47におけるデテント機構71(
図6参照)は、ボールデテント機構により構成されている。デテント機構71には、シフトフォーク69側に設けられた圧縮バネで変速支軸70側に付勢されたボールと、シフトフォーク69に形成され、副変速レバー16の低速位置、中速位置、高速位置に対応する複数の変速溝と、が備えられている。副変速レバー16の低速位置、中速位置、高速位置の夫々において、ボールが対応する変速溝に嵌まり込むことにより、変速支軸70に対してシフトフォーク69が位置保持される。これにより、副変速レバー16が、低速位置、中速位置、高速位置のそれぞれで位置保持され、副変速機構47の変速状態が保持されるようになっている。
【0058】
〔サイドクラッチについて〕
次に、トランスミッション4における左右一対の油圧式のサイドクラッチ48に関する構成について説明する。左右のサイドクラッチ48に対する作動油の給排状態を制御することにより、左右一対のクローラ走行装置1に速度差を与えることが可能に構成されている。
【0059】
図4、
図5に示されるように、各サイドクラッチ48には、それぞれ、伝動ギヤ82から対応するクローラ走行装置1への伝動を断続する咬み合い式のクラッチ部83と、対応するクローラ走行装置1を制動する多板式のブレーキ部84と、が備えられている。
【0060】
そして、サイドクラッチ軸46の軸上において、伝動ギヤ82を中心にした左右対称になるように伝動ギヤ82を挟んだ状態で左右に分散配備してある。左側のサイドクラッチ48は、左側の伝動機構49、及び、左側の走行駆動軸50を介して左側のクローラ走行装置1に作用するように構成されている。右側のサイドクラッチ48は、右側の伝動機構49及び右側の走行駆動軸50を介して右側のクローラ走行装置1に作用するように構成されている。サイドクラッチ軸46は、これらサイドクラッチ48に伝動上手側から伝えられる動力を伝達する駆動軸となっている。
【0061】
出力ギヤ81、及び、伝動ギヤ82を介して伝動上手側の従動軸45からの駆動力が伝えられるサイドクラッチ軸46に対して、そのサイドクラッチ軸46の軸心方向での摺動による着脱可能な筒軸85が、相対回転可能な状態でサイドクラッチ軸46に外嵌されている。そして、サイドクラッチ軸46の軸端部近くに形成したスプライン部46Aに駆動側クラッチ体87が、サイドクラッチ軸46と一体回動するようにスプライン嵌合されている。サイドクラッチ軸46に外嵌する筒軸85の外端側の軸端部近くに形成した第一スプライン軸部85Aには、従動側クラッチ体86が筒軸85と一体回動するようにスプライン嵌合されている。
【0062】
外側の駆動側クラッチ体87と内側の従動側クラッチ体86とには、サイドクラッチ軸46の軸心方向で互いに対向する面のそれぞれに、歯部86A,87Aが備えられている。駆動側クラッチ体87と従動側クラッチ体86とにより、駆動側クラッチ体87に対する従動側クラッチ体86の遠近移動に伴って互いの歯部86A,87Aが係脱されるように、ドッグクラッチ型式のクラッチ部83が構成されている。
【0063】
各クラッチ部83には、駆動側クラッチ体87と従動側クラッチ体86との歯部86A,87Aが咬み合う入り位置に向けて従動側クラッチ体86を付勢する付勢手段としての圧縮バネ88、従動側クラッチ体86を入り位置にて受け止めるC字形の止め輪からなるストッパ89、圧縮バネ88の一端部を受け止めるバネ受け90等が備えられている。
【0064】
したがって、従動側クラッチ体86が、圧縮バネ88の作用によって入り位置に摺動することにより、従動側クラッチ体86の歯部86Aと駆動側クラッチ体87の歯部87Aとが咬み合う伝動状態に切り換わり、かつ、圧縮バネ88の作用に抗して切り位置に摺動することにより、従動側クラッチ体86の歯部86Aと駆動側クラッチ体87の歯部87Aとが咬み合いを解除する遮断状態に切り換わるように構成されている。
【0065】
各筒軸85には、伝動ギヤ82に近接する内端側に第一スプライン軸部85Aよりも大径の第二スプライン軸部85Bが備えられている。そして、第二スプライン軸部85Bの外端に位置する段差部85Cがバネ受けとして機能するように構成している。また、第一スプライン軸部85Aの外端部には、ストッパ89が着脱可能に外嵌する環状の係合溝85Dを形成されている。
【0066】
各従動側クラッチ体86の内周部には、筒軸85の第一スプライン軸部85Aに相対摺動可能にスプライン嵌合するスプラインボス部86Bが備えられている。スプラインボス部86Bは、筒軸85と一体回動するように構成されている。
【0067】
従動側クラッチ体86の径方向で、内周側のスプラインボス部86Bと外周側のリム部86Cとの中間位置には、サイドクラッチ軸46の軸心方向で駆動側クラッチ体87が存在する機体横外方側へ向けて突出する円筒状の係止支持部86Dが設けられている。
【0068】
係止支持部86Dの存在箇所よりも径方向での外方側箇所には、従動側クラッチ体86とその従動側クラッチ体86を押圧操作するための押圧ピストン101との間に介在されるスラストベアリング80の装着箇所86Fが設けられている。
また、係止支持部86Dの存在箇所よりも径方向での内方側箇所には、複数の内歯状の歯部86Aを周方向に一定ピッチで形成することにより、筒状の係止支持部86Dの内周側に歯部86Aが位置するように設けられている。したがって、従動側クラッチ体86の歯部86Aに咬合するところの駆動側クラッチ体87の外歯状の歯部87Aも、係止支持部86Dの存在箇所よりも径方向での内方側箇所に位置する状態で、駆動側クラッチ体87の周方向に一定ピッチで形成されている。
【0069】
各駆動側クラッチ体87は、サイドクラッチ軸46に対するサイドクラッチ軸46の軸心方向での摺動による着脱が可能な状態でサイドクラッチ軸46と一体回転するように、サイドクラッチ軸46における対応する筒軸85よりも軸端側の両端部位に、筒軸85と隣接する状態でスプライン嵌合されている。これにより、各駆動側クラッチ体87が、左右のクラッチ部83において、サイドクラッチ軸46を介して伝動ギヤ82と一体回転する駆動側回転体として機能する状態に構成されている。
【0070】
ブレーキ部84には、摺動ユニット91に外嵌して一体回転する複数のセパレータプレート95、複数のセパレータプレート95とサイドクラッチ軸46の軸心方向に交互に配置する複数のブレーキディスク96と単一のプレッシャプレート97、複数のブレーキディスク96と単一のプレッシャプレート97とを回り止め状態で支持するブレーキハウジング94等が備えられている。
【0071】
摺動ユニット91には、筒軸85と一体回転するように第二スプライン軸部85Bに外嵌するスプラインボス92が伝動ギヤ82の左右両側に備えられている。各スプラインボス92は、ミッションケース40内の左右中央側に位置する内端側が駆動ギヤ部分92Aとして機能し、かつ、ミッションケース40内の左右一端側に位置する外端側がブレーキハブ部分92Bとして機能するように兼用部品として構成されている。サイドクラッチ軸46の軸上における伝動ギヤ82と左右の摺動ユニット91との間には、それらの間においてサイドクラッチ軸46の軸心方向に働く力を受け止めるスラストカラー93が介装されている。
【0072】
スプラインボス92と筒軸85と従動側クラッチ体86と圧縮バネ88とストッパ89とバネ受け90とによって、サイドクラッチ軸46に対して、サイドクラッチ軸46の軸心方向に着脱可能に一体摺動する摺動ユニット91が構成されている。
【0073】
ブレーキハウジング94は、セパレータプレート95及びブレーキディスク96等を外囲する略筒状で、ミッションケース40における左右の側壁の上下中間部位に一体形成されている。そして、ブレーキハウジング94は、複数のブレーキディスク96と単一のプレッシャプレート97とを、サイドクラッチ軸46の軸心方向に摺動可能な状態で回転不能に支持している。また、セパレータプレート95及びブレーキディスク96よりも内端部位には、サイドクラッチ軸46の軸心に沿ってミッションケース40の内部側に摺動するセパレータプレート95及びブレーキディスク96を受け止める受止部94Aが備えられている。
【0074】
各従動側クラッチ体86のリム部86Cは、対応するブレーキ部84のセパレータプレート95、及び、ブレーキディスク96に作用する押圧部として機能するように構成されている。これにより、各ブレーキ部84は、対応する従動側クラッチ体86が、圧縮バネ88の作用に抗して、前述した切り位置から、入り位置とは反対方向に位置する制動位置に向けて摺動するのに伴って、複数のセパレータプレート95、及び、ブレーキディスク96がリム部86Cの押圧作用による圧接を解除する制動解除状態から、複数のセパレータプレート95、及び、ブレーキディスク96がリム部86Cの押圧作用により圧接する制動状態に切り換わる。そして、圧縮バネ88の作用によって制動位置から切り位置に向けて摺動するのに伴って、制動状態から制動解除状態に切り換わるように構成されている。
【0075】
〔クラッチ部とブレーキ部の操作構造について〕
摺動ユニット91は、従動側クラッチ体86がミッションケース40に備えた環状のシリンダ空間となる油室100に対向する状態でサイドクラッチ軸46の軸上に装備されている。そして、油室100に、従動側クラッチ体86を摺動操作する環状の押圧ピストン101が、サイドクラッチ軸46の軸心方向に摺動可能な状態で嵌入装備されている。このように、押圧ピストン101、及び、油室100は、環状に形成されている。
【0076】
押圧ピストン101は、ステアリング用のバルブユニット103の作動によりサイドクラッチ軸46の軸心方向に摺動し、この摺動により、対応する従動側クラッチ体86をサイドクラッチ軸46の軸心方向に摺動操作するように構成されている。具体的には、ステアリング用のバルブユニット103の作動による油室100の昇圧に伴って、サイドクラッチ軸46の軸心に沿ってサイドクラッチ軸46の中央側に摺動し、この摺動により、対応する従動側クラッチ体86が圧縮バネ88の作用に抗してクラッチ入り位置からクラッチ切り位置に摺動操作され、その後、クラッチ切り位置から制動位置に摺動操作される。
また、ステアリング用のバルブユニット103の作動による油室100の減圧に伴って、サイドクラッチ軸46の軸心に沿ってサイドクラッチ軸46の軸端側に摺動し、この摺動により、対応する従動側クラッチ体86が圧縮バネ88の作用によって制動位置からクラッチ切り位置に摺動し、その後、クラッチ切り位置からクラッチ入り位置に摺動操作される。
【0077】
ステアリング用のバルブユニット103は、操作レバー13の左右方向での揺動操作に基づいて作動状態が切り換わるように、操作レバー13にステアリング用の機械式連係機構108を介して連係している。具体的には、操作レバー13が中立位置に位置する状態では、各押圧ピストン101に対する操作圧を減圧する減圧状態を維持する。操作レバー13が中立位置から左方に揺動操作されると、減圧状態から左側の押圧ピストン101に対する操作圧を昇圧する左昇圧状態に切り換わる。操作レバー13が中立位置から右方に揺動操作されると、減圧状態から右側の押圧ピストン101に対する操作圧を昇圧する右昇圧状態に切り換わる。操作レバー13が中立位置に揺動操作されると、左昇圧状態、又は、右昇圧状態から減圧状態に切り換わる。
【0078】
つまり、操作レバー13の操作量に応じて、左右のクローラ走行装置1の駆動状態を変化させることにより、速度差の状態が異なる複数の旋回モードが連続して現出されるように構成されている。左右のクローラ走行装置1に関する複数の旋回モードとしては、緩旋回モード(左緩旋回モード、及び、右緩旋回モード)と、ブレーキ旋回モード(左ブレーキ旋回モード、及び、右ブレーキ旋回モード)と、が備えられている。
【0079】
具体的には、操作レバー13を中立位置に保持することにより、ステアリング用のバルブユニット103を減圧状態に維持することができ、これにより、各従動側クラッチ体86を入り位置に維持することが可能となり、結果、走行状態を、左右のクローラ走行装置1を等速駆動する直進モード(非旋回モード)に維持できる。
【0080】
また、操作レバー13を中立位置から左方に揺動操作することにより、ステアリング用のバルブユニット103を減圧状態から左昇圧状態に切り換えることができ、これにより、右側の従動側クラッチ体86を入り位置に維持しながら、左側の従動側クラッチ体86を入り位置から切り位置に摺動させることが可能となり、結果、走行状態を、直進モードから左側のクローラ走行装置1を従動させて車体を左方向に旋回させる左緩旋回モードに切り換えることができる。これにより、旋回半径がある程度大きく、圃場等の地面に与える負荷が小さくなるように旋回する左緩旋回動作が実現される。
【0081】
また、操作レバー13をさらに左方に揺動操作することにより、ステアリング用のバルブユニット103をさらに昇圧された左昇圧状態に切り換えることができ、これにより、右側の従動側クラッチ体86を入り位置に維持しながら、左側の従動側クラッチ体86を切り位置として、さらに、左側のブレーキ部84を制動状態とすることが可能となり、結果、走行状態を、左側のクローラ走行装置1を従動から制動に切り換えて車体を左方向に旋回させる左ブレーキ旋回モードに切り換えることができる。これにより、左緩旋回モードよりも旋回半径が小さく、小回りで旋回可能な左ブレーキ旋回動作が実現される。
【0082】
逆に、操作レバー13を中立位置から右方に揺動操作することにより、ステアリング用のバルブユニット103を減圧状態から右昇圧状態に切り換えることができ、これにより、左側の従動側クラッチ体86を入り位置に維持しながら、右側の従動側クラッチ体86を入り位置から切り位置に摺動させることが可能となり、結果、走行状態を、直進モードから右側のクローラ走行装置1を従動させて車体を右方向に旋回させる右緩旋回モードに切り換えることができる。
【0083】
また、操作レバー13をさらに右方に揺動操作することにより、ステアリング用のバルブユニット103をさらに昇圧された右昇圧状態に切り換えることができ、これにより、左側の従動側クラッチ体86を入り位置に維持しながら、右側の従動側クラッチ体86を切り位置としてさらに、右側のブレーキ部84を制動状態とすることが可能となり、結果、走行状態を、右側のクローラ走行装置1を従動から制動に切り換えて車体を右方向に旋回させる右ブレーキ旋回モードに切り換えることができる。これにより、右緩旋回モードよりも旋回半径が小さく、小回りで旋回可能な右ブレーキ旋回動作が実現される。
【0084】
そして、左緩旋回モード又は右緩旋回モードにおいて、操作レバー13を中立位置に揺動操作することにより、ステアリング用のバルブユニット103を左昇圧状態又は右昇圧状態から減圧状態に切り換えることができ、これにより、切り位置又は制動位置に位置する左右いずれか一方の従動側クラッチ体86を入り位置に摺動させることが可能となり、結果、走行状態を、左緩旋回モード又は右緩旋回モードから直進モードに切り換えることができる。
【0085】
図7〜
図10に示されるように、従動側クラッチ体86は次のように構成されている。
押圧ピストン101の押し操作と圧縮バネ88との戻し操作とで、サイドクラッチ軸46の軸心方向で摺動操作される従動側クラッチ体86は、
図7に示されるように駆動側クラッチ体87と咬合したクラッチ入り位置と、
図8に示されるように、駆動側クラッチ体87との咬合が解除され、かつ、ブレーキ部84が制動状態となるクラッチ切り及び制動位置とに移動可能に構成されている。
上記のクラッチ入り位置では、押圧ピストン101が最収縮姿勢で、従動側クラッチ体86は圧縮バネ88で横外側に押されて駆動側クラッチ体87と咬合し、従動側クラッチ体86にサイドクラッチ軸46からの駆動力が伝達される。
また、クラッチ切り、及び、制動位置では、圧縮バネ88の付勢力に抗して押圧ピストン101が最大伸長姿勢となり、従動側クラッチ体86と駆動側クラッチ体87との咬合が解除された後、複数のセパレータプレート95及びブレーキディスク96を圧接して、サイドクラッチ軸46からの駆動力の伝達を解除するとともに、従動側クラッチ体86からの動力が伝達される走行駆動軸50への伝動機構49に対して制動力が付与される。
【0086】
従動側クラッチ体86は、押圧ピストン101との間に装備されるスラストベアリング80との関係で、係止支持部86Dが次のように設定されている。
従動側クラッチ体86に備えられた係止支持部86Dは、スラストベアリング80の押圧ピストン101との当接箇所から係止支持部86Dの突出端部までの軸心方向での長さL2が、駆動側クラッチ体87の歯部87Aと従動側クラッチ体86の歯部86Aとの、軸心方向での係合代L1よりも長く設定されている。
このように構成された従動側クラッチ体86の係止支持部86Dは、サイドクラッチ軸46の軸心方向で常に押圧ピストン101と重複する状態に維持される。
つまり、
図7に示されるクラッチ入り位置でも、
図8に示される制動作用位置でも、そのクラッチ入り位置と制動作用位置との中間位置でも、従動側クラッチ体86に対して押圧ピストン101の押し操作力と圧縮バネ88との戻し操作力とが互いに逆向きに作用している。したがって、通常の作動状態では、従動側クラッチ体86と押圧ピストン101とは、間にスラストベアリング80を挟み込んだ状態で、これらの三者が一体的に移動して、クラッチ部83の入り切りや、ブレーキ部84の制動作動あるいは制動解除の操作が行われる。
【0087】
しかしながら、押圧ピストン101がシリンダ空間となる油室100の最も内奥側に引退して、駆動側クラッチ体87の歯部87Aと従動側クラッチ体86の歯部86Aとが咬合している状態で、例えば、従動側クラッチ体86に過大な負荷が作用して駆動側クラッチ体87の回転に追従できなくなったとする。この場合には、
図9に仮想線で示す状態から、同図に実線で示されるように、従動側クラッチ体86の歯部86Aが圧縮バネ88の付勢力に抗して駆動側クラッチ体87の歯部87Aから抜け出す方向に弾きだされた状態となる。
このような状態では、押圧ピストン101の先端部からスラストベアリング80や従動側クラッチ体86が離れてしまうが、この状態でも、押圧ピストン101と係止支持部86Dとは、
図9に示されるように重複代L3だけ、サイドクラッチ軸46の軸心方向で重複した状態に維持される。
【0088】
また、係止支持部86Dの外周面と、スラストベアリング80の内周面とは、ほぼ同径に形成されていて、スラストベアリング80を係止支持部86Dに外嵌させた状態で、筒状の係止支持部86Dの軸線方向に沿って力を加えることによって抜き差しが可能である程度に構成されている。
【0089】
従動側クラッチ体86のリム部86Cのうち、油室100と対向する側で、スラストベアリング80の装着箇所86Fよりも径方向での外方側に位置する部分には、装着箇所86Fで油室100と対向してスラストベアリング80を受ける底面よりも油室100側へ突出する外周係止部86Gが備えられている。
【0090】
〔ステアリング用のバルブユニットの具体構造について〕
ステアリング用のバルブユニット103には、操作レバー13の左右方向での操作に基づいて各サイドクラッチ48の油室100に対する作動油の流れを切り換える切換バルブ104、及び、操作レバー13の操作に基づいて左右のサイドクラッチ48の油室100に対するリリーフ圧を変更する可変リリーフバルブ105等が備えられている。ステアリング用のバルブユニット103は、そのバルブ操作軸121が操作レバー13の左右方向への揺動操作に連動して回動されことにより、バルブ操作軸121に備えたカム109が、切換バルブ104の切換用スプール120(「スプール」の一例)と可変リリーフバルブ105のリリーフ用スプール119とを摺動操作するように構成されている。このように、操作レバー13の左右方向での揺動操作によって、走行機体Aの操向操作が行われる。
【0091】
上述のように、操作レバー13の左右方向への揺動操作により、ステアリング用のバルブユニット103における切換バルブ104の切換用スプール120、及び、可変リリーフバルブ105のリリーフ用スプール119が、移動操作されることによって、バルブユニット103の作動油給排状態が変更されるようになっている。
【0092】
バルブ操作軸121は、ステアリング用のバルブユニット103の上部側においてバルブケース122の前壁から前方に突出されている。バルブ操作軸121の突出端部である前端部に、バルブ操作軸121と一体で動く連係アーム123の一端部側が取り付けられている。連係アーム123の他端部側は、ステアリング用の機械式連係機構108を介して、操作レバー13に連係されている。
【0093】
可変リリーフバルブ105のリリーフ用スプール119は、操作レバー13の直進位置から左右方向への操作量が大きくなるほど、リリーフ用スプール119の一端部に備えた受動部材118がカム109によって押圧されることにより、大径バネと小径バネからなる圧縮バネ117Aの作用に抗する方向に大きく摺動変位して、左右のサイドクラッチ48に対するリリーフ圧を大きくするように構成されている。そして、受動部材118が、バルブケース122に形成した弁座部122Dに当接した場合に、左右のサイドクラッチ48に対するリリーフ圧が最大になるように構成されている。
【0094】
切換バルブ104には、緩旋回モードとブレーキ旋回モードとの間で、旋回モードの切り換わりタイミングにおいて、切換用スプール120に負荷を与える負荷付与機構124が備えられている。
【0095】
負荷付与機構124は、直進モードと緩旋回モードの間は、切換用スプール120に負荷の付与を行わず、ブレーキ旋回モードにおいてのみ、切換用スプール120に負荷を付与するように構成されている。すなわち、負荷付与機構124は、切り換わり前の旋回モードが緩旋回モードで、切り換わり先の旋回モードがブレーキ旋回モードである場合に、切り換わり先のブレーキ旋回モードの間、切換用スプール120への負荷付与を継続するように構成されている。
【0096】
操作レバー13の左右方向の揺動領域には、中立位置P0を中心として左右に広がる中立領域Q0が設定され、中立領域Q0の左右それぞれに、第一切り換わり位置P1、緩旋回領域Q1、第二切り換わり位置P2、及び、ブレーキ旋回領域Q2が、この順で並ぶように設定されている。中立領域Q0、緩旋回領域Q1、ブレーキ旋回領域Q2は、それぞれ、左右方向において所定範囲の角度の広がりを有する領域となっている。
【0097】
切換バルブ104は、操作レバー13の左右方向の操作に基づいて左右のサイドクラッチ48の各油室100の作動油の流れを切り換え可能に構成されている。
切換用スプール120は、中立領域Q0を中心として、左右それぞれの緩旋回領域Q1、左右それぞれのブレーキ旋回領域Q2に向けて移動可能に構成されている。
【0098】
切換用スプール120の一端部側に、負荷付与機構124が備えられている。負荷付与機構124には、コイルスプリング125(「スプリング」の一例)、第一固定リング129(第1押圧部)、第二固定リング130(第2押圧部)、第一可動リング131、第二可動リング132、規制リング135(第1支持部)、規制壁部136(第2支持部)が備えられている。
【0099】
第一固定リング129と第二固定リング130とは、それぞれ、切換用スプール120に固定され、例えば、C字形の軸止め輪により構成されている。第一可動リング131と第二可動リング132とは、円環状の部材により構成されている。第一可動リング131と第二可動リング132とは、それぞれ、切換用スプール120の外周部に相対移動可能に外挿されている。
【0100】
コイルスプリング125は、切換用スプール120の作動に応じて伸縮するように構成されている。コイルスプリング125は、切換用スプール120に外挿され、切換用スプール120のスライド方向に沿って伸縮するコイルスプリング125である。コイルスプリング125は、第一可動リング131と第二可動リング132との間に位置している。
第一可動リング131と第二可動リング132とは、第一固定リング129と第二固定リング130との間に位置している。第一可動リング131と第二可動リング132とは、夫々、第一固定リング129と第二固定リング130と軸方向に重複するように構成されている。
【0101】
規制リング135は、バルブケース122のハウジングの内周面側に固定され、例えば、C字形の穴止め輪により構成されている。規制壁部136は、バルブケース122のハウジングの壁部の一部により構成されている。第一可動リング131、及び、第二可動リング132の内径は、第一固定リング129、及び、第二固定リング130の外径よりも小さく設定されている。第一可動リング131、及び、第二可動リング132の外径は、規制リング135、及び、規制壁部136の内径よりも大きく設定されている。
【0102】
バルブケース122の切換用スプール120のハウジングには、切換バルブ104に第二油圧ポンプ102からの作動油を供給する流入ポート126と、右側のサイドクラッチ48の押圧ピストン101に係る油室100と連通する第一ポート127と、左側のサイドクラッチ48の押圧ピストン101に係る油室100と連通する第二ポート128と、作動油を排出する排出ポート128Aと、が形成されている。
【0103】
〔旋回モード毎のバルブユニットの動作について〕
上述の旋回モード毎のバルブユニット103の動作について説明する。
まず、
図10に示されるように、操作レバー13が中立位置P0(中立領域Q0)にある場合、流入ポート126は、第一ポート127、第二ポート128、排出ポート128Aと連通している。これにより、左右の押圧ピストン101,101に係る油室100,100は、いずれも減圧状態となる。このため、左右のクラッチ部83,83はいずれも入り状態となり、左右のブレーキ部84,84はいずれも非制動状態となる。このため、左右のクローラ走行装置1,1は、速度差のない状態で駆動され、走行機体Aが直進走行する直進モードとなる。直進モードでは、負荷付与機構124は、切換用スプール120に負荷を与えないようになっている。
【0104】
そして、
図11に示されるように、操作レバー13が、第一切り換わり位置P1、又は、左側の緩旋回領域Q1にある場合、切換バルブ104の作動油が供給される流入ポート126は、第二ポート128と連通される。第二ポート128は、ほぼ半開状態で、流入ポート126と連通される。第一ポート127と排出ポート128Aは、流入ポート126と非連通となる。これにより、左側の押圧ピストン101に係る油室100が昇圧状態となり、右側の押圧ピストン101に係る油室100は減圧状態に維持される。左側の押圧ピストン101により、左側の従動側クラッチ体86が押圧されることにより、左側のクラッチ部83が切り状態となるとともに、左側のブレーキ部84が非制動状態に維持される。右側のクラッチ部83は入り状態に維持され、右側のブレーキ部84は非制動状態に維持される。
このため、左側のクローラ走行装置1が従動状態、右側のクローラ走行装置1が駆動状態となる左緩旋回モードが現出される。右緩旋回モードは、左緩旋回モードと左右逆で同様である。この緩旋回モードでは、負荷付与機構124は、切換用スプール120に負荷を与えないようになっている。
【0105】
さらに、
図12に示されるように、操作レバー13が、第二切り換わり位置P2、又は、左側のブレーキ旋回領域Q2にある場合、切換バルブ104の作動油が供給される流入ポート126は、第二ポート128と連通される。第二ポート128は、ほぼ全開状態で、流入ポート126と連通される。第一ポート127と排出ポート128Aは、流入ポート126と非連通となる。これにより、左側の押圧ピストン101に係る油室100が緩旋回モードよりも昇圧された状態となり、右側の押圧ピストン101に係る油室100は減圧状態に維持される。
この際、左側の押圧ピストン101に係る油室100は、可変リリーフバルブ105に連通されるようになっている。可変リリーフバルブ105では、操作レバー13側のカム109に受動部材118が押圧されることにより、閉状態となっている。可変リリーフバルブ105は、油圧が設定圧になると、開状態となる。
そして、左側の押圧ピストン101により、左側の従動側クラッチ体86が緩旋回モードよりもさらに押圧されることにより、左側のクラッチ部83が切り状態となるとともに、左側のブレーキ部84が制動状態に維持される。右側のクラッチ部83は入り状態に維持され、右側のブレーキ部84は非制動状態に維持される。
このため、左側のクローラ走行装置1が制動状態、右側のクローラ走行装置1が駆動状態となる左ブレーキ旋回モードが現出される。右ブレーキ旋回モードは、左ブレーキ旋回モードと左右逆で同様である。このブレーキ旋回モードでは、負荷付与機構124は、切換用スプール120に継続的に負荷を与えるようになっている。
【0106】
ここで、
図12、
図13に示されるように、操作レバー13が、左側の緩旋回領域Q1から左側の第二切り換わり位置P2に揺動操作されると、切換用スプール120側の第二可動リング132が、ハウジングとしてのバルブケース122側の規制リング135に当接し、切換用スプール120に、コイルスプリング125の付勢力が作用し始める。また、操作レバー13が、左側の第二切り換わり位置P2から左側の緩旋回領域Q1に揺動操作されると、第二可動リング132が、規制リング135から離間し、切換用スプール120に、コイルスプリング125による負荷が作用しない状態となる。
【0107】
また、操作レバー13が、左側の第二切り換わり位置P2から左側のブレーキ旋回領域Q2側に大きく揺動されるにつれて、コイルスプリング125は縮められる。すなわち、操作レバー13が、左側のブレーキ旋回領域Q2に位置する状態(左ブレーキ旋回モード)では、切換用スプール120に、コイルスプリング125の付勢力が作用し続ける。
【0108】
一方、
図14に示されるように、操作レバー13が、右側の緩旋回領域Q1から右側の第二切り換わり位置P2に揺動操作されると、切換用スプール120側の第一可動リング131が、ハウジングとしてのバルブケース122側の規制壁部136に当接し、切換用スプール120に、コイルスプリング125の付勢力が作用し始める。また、操作レバー13が、右側の第二切り換わり位置P2から右側の緩旋回領域Q1側に揺動操作されると、第一可動リング131が、規制壁部136から離間し、切換用スプール120に、コイルスプリング125による負荷が作用しない状態となる。
【0109】
また、操作レバー13が、右側の第二切り換わり位置P2から右側のブレーキ旋回領域Q2側に大きく揺動されるにつれて、コイルスプリング125は縮められる。すなわち、操作レバー13が、右側のブレーキ旋回領域Q2に位置する状態(右ブレーキ旋回モード)では、切換用スプール120に、コイルスプリング125の付勢力が作用し続ける。
【0110】
このように、負荷付与機構124は、緩旋回モードからブレーキ旋回モードへの旋回モードの切り換わりタイミングに合わせてコイルスプリング125が初期状態から伸縮し始め、切換用スプール120に負荷を与えるものとなっている。これにより、緩旋回モードとブレーキ旋回モードとの間での旋回モードの切り換えタイミングが、切換用スプール120に連係される操作レバー13の操作感覚として操縦者にフィードバックされ、操縦者が操作レバー13を通じて旋回モードの切り換えタイミングを容易に感知できるものとなる。
【0111】
〔駆動側クラッチ体の中空構造について〕
図15〜
図17に示されるように、駆動側クラッチ体87には、本体部139と、スプライン部46Aにスプライン嵌合されるスプライン孔部140と、回動軸心X1を中心に本体部139の周方向に等間隔に並べて配置された爪部141と、が備えられている。本体部139には、爪部141が形成される側の面(表面)とは反対側の面(裏面)における各爪部141に対応する各所に、各中空部142が形成されている。中空部142は、本体部139を裏面側からくり抜いて(肉抜きして)形成されている。つまり、爪部141の内部は、中空状になっている。
これにより、駆動側クラッチ体87が咬み合う際に、駆動側クラッチ体87の中空部142において衝撃の吸収を図ることが可能となり、その結果、駆動側クラッチ体87の咬み合い時に生じる騒音を抑えることができる。
【0112】
〔副変速レバーの牽制構造について〕
図18、
図19に示されるように、副変速レバー16には、牽制構造が備えられている。操縦塔12側には、副変速レバー16を収納可能な複数の牽制溝143を有する牽制部144が形成されている。また、主変速レバー15における第一レバー杆15Aに押圧されることにより、揺動軸心Zを中心に揺動可能な揺動部材145が備えられている。揺動部材145と牽制部144との間には、左右方向に沿って移動可能に構成されている板状の押圧部146が形成されている。
【0113】
揺動部材145には、円弧状に形成された円弧状部147と、円弧状部147から副変速レバー16側に向けて斜め前方に延出される前側アーム部148と、円弧状部147から副変速レバー16側に向けて斜め後方に延出される後側アーム部149と、が備えられている。
【0114】
主変速レバー15を前方側(前進側)に揺動させると、主変速レバー15の第一レバー杆15Aにより円弧状部147の前側が押圧されて、揺動部材145が縦向きの揺動軸心Zを中心に揺動されて、前側アーム部148の先端が押圧部146を押圧する。そして、押圧部146が副変速レバー16における第二レバー杆16Aを押圧して、副変速レバー16が、現在の変速位置に対応する牽制溝143に収容され、前後方向への揺動操作が不能な状態となる。すなわち、主変速レバー15が中立位置P0以外の位置にあり、トランスミッション4におけるギヤ等が回転駆動されている場合、副変速レバー16の変速操作は、牽制部144により牽制される。
【0115】
これにより、トランスミッション4の各ギヤ等が駆動されている場合に、振動等の要因によりデテント機構71が仮に解除状態となっても、副変速レバー16が牽制部144により揺動不能となっているので、不測の副変速動作を回避できる。また、トランスミッション4の各ギヤ等が駆動されている場合に、操縦者が副変速レバー16を誤って操作しようとしたとしても、副変速レバー16が牽制部144により揺動不能な状態となっているので、望ましくない副変速操作を抑止できる。
【0116】
〔別実施形態〕
以下、本発明の別実施形態について説明する。下記の各別実施形態は、矛盾が生じない限り、複数組み合わせて上記実施形態に適用してもよい。なお、本発明の範囲は、これら実施形態の内容に限定されるものではない。
【0117】
〔副変速レバーの他の牽制構造について〕(1)上記実施形態では、複数の牽制溝143を有する牽制部144等が備えられた副変速レバー16の牽制構造が例示されているが、これに限られない。例えば、
図20、
図21に示されるような他の牽制構造であってもよい。この他の牽制構造では、副変速レバー16の揺動軸200に形成されるスプライン軸部201と、主変速レバー15の揺動に応じて、主変速レバー15側から副変速レバー16側に移動可能な牽制部材203が備えられている。牽制部材203には、スプライン軸部201に係合可能なスプライン穴部204が形成されている。牽制部材203には、一対の固定部材205Bにそれぞれ挿通される一対のガイドピン205Aが形成されている。牽制部材203は、一対のガイドピン205Aが一対の固定部材205Bに案内されることにより、回り止めされた状態で主変速レバー15と副変速レバー16との間をスライド移動するように構成されている。また、牽制部材203は、ガイドピン205Aに外挿されるスプリング等の付勢部材205により、副変速レバー16から離れる側に付勢されている。
【0118】
主変速レバー15の揺動軸と副変速レバー16の揺動軸200との軸心は異なるように構成されていている。主変速レバー15が中立位置にある場合は、主変速レバー15の第一レバー杆15Aは、牽制部材203の凹部203Aに位置しており、スプライン軸部201とスプライン穴部204とは係合しない。このため、副変速レバー16は自由に揺動可能な状態となる。一方、主変速レバー15を中立位置から前進位置または後進位置に向けて揺動すると、主変速レバー15の第一レバー杆15Aが、牽制部材203の傾斜部206を押圧し、牽制部材203が副変速レバー16側に移動され、スプライン軸部201とスプライン穴部204とが係合される。これにより、副変速レバー16が揺動不能な状態となる。主変速レバー15を、前進位置または後進位置から中立位置に戻すと、付勢部材205の作用により、牽制部材203が副変速レバー16から離れる側に移動し、スプライン軸部201とスプライン穴部204との係合が解除され、副変速レバー16が揺動可能な状態に復帰される。
なお、主変速レバー15の揺動軸と副変速レバー16の揺動軸200とが軸心が一致するように構成されていてもよい。
【0119】
(2)上記実施形態では、負荷付与機構124は、緩旋回モードとブレーキ旋回モードとの切り換わりタイミング、及び、ブレーキ旋回モードにおいて、切換用スプール120に負荷を与えるように構成されているものが例示されているが、これに限られない。例えば、負荷付与機構124が、緩旋回モードとブレーキ旋回モードとの旋回モードの切り換わりタイミングにおいてのみ、切換用スプール120に負荷を与えるように構成されていてもよい。この場合、負荷付与機構は、例えば、ボールデテント機構を備えるものとすることができる。このボールデテント機構は、例えば、切換用スプール120の外周面側に形成される溝部と、バルブケース122のハウジングの内周面側に、付勢バネにより切換用スプール120側へ付勢されたボールと、により構成される。緩旋回モードとブレーキ旋回モードとの旋回モードの切り換わりタイミングにおいて、ボールが溝部に嵌まり込んで、切換用スプール120に瞬間的な負荷がかかり、切換用スプール120に連係される操作レバー13に瞬間的な反力が生じるものとなる。これにより、操作レバー13を通じて操縦者が適度なクリック感を感じることが可能となる。なお、このようなボールデテント機構を、例えば、バルブケース122のハウジングの内周面側に形成される溝部と、切換用スプール120の外周面側に備えられ、付勢バネにより切換用スプール120側へ付勢されたボールと、により構成することもできる。
【0120】
(3)上記実施形態では、操作レバー13が、緩旋回領域Q1とブレーキ旋回領域Q2の境界である第二切り換わり位置P2にある場合、すなわち、緩旋回モードとブレーキ旋回モードの切り換わりタイミングで、負荷付与機構124による切換用スプール120に負荷の付与が切り換えられるようになっているが、これに限られない。例えば、操作レバー13が中立領域Q0と緩旋回領域Q1の境界である第一切り換わり位置P1にある場合、すなわち、直進モードから緩旋回モードへの切り換わりタイミングで、負荷付与機構124により切換用スプール120に負荷が与えられるようにしてもよい。また、操作レバー13が第一切り換わり位置P1にある場合(直進モードと緩旋回モードとの切り換わりタイミング)、及び、操作レバー13が第二切り換わり位置P2にある場合(緩旋回モードとブレーキ旋回モードとの切り換わりタイミング)の両方において、切換用スプール120に与えられる負荷が変化するようにしてもよい。
【0121】
(4)上記実施形態では、切換用スプール120に、コイルスプリング125が外挿されているものが例示されているが、これに限られない。例えば、切換用スプール120の外周部側に、複数のコイルスプリング125が周方向に並べて配置されているものであってもよい。
【0122】
(5)上記実施形態では、切換用スプール120側に負荷付与機構124のコイルスプリング125が備えられているものが例示されているが、これに限られない。例えば、
図22に示されるように、バルブケース122側に負荷付与機構324のコイルスプリング325(「スプリング」の一例)が備えられていてもよい。
具体的には、この負荷付与機構324には、コイルスプリング325、第一固定リング329(第2支持部)、第二固定リング330(第1支持部)、第一可動リング331、第二可動リング332、第一規制リング335(第2押圧部)、第二規制リング336(第1押圧部)が備えられている。第一固定リング329と第二固定リング330とは、それぞれ、バルブケース122のハウジングの内周面側に固定され、例えば、C字型の穴止め輪により構成されている。第一可動リング331と第二可動リング332とは、円環状の部材により構成されている。第一可動リング331と第二可動リング332とは、バルブケース122のハウジングの内周面と切換用スプール120の外周面との間に位置している。第一規制リング335と第二規制リング336とは、切換用スプール120の外周面側に固定され、例えば、C字型の軸止め輪により構成されている。第一可動リング331、及び、第二可動リング332の内径は、第一規制リング335、及び、第二規制リング336の外径よりも小さく設定されている。第一可動リング331、及び、第二可動リング332の外径は、第一固定リング329、及び、第二固定リング330の内径よりも小さく設定されている。
操作レバー13が、左側の緩旋回領域Q1から左側の第二切り換わり位置P2に揺動操作されると、ハウジングとしてのバルブケース122側の第二可動リング332が、切換用スプール120側の第一規制リング335に当接し、切換用スプール120に、コイルスプリング325の付勢力が作用し始める。また、操作レバー13が、左側の第二切り換わり位置P2から左側の緩旋回領域Q1に揺動操作されると、第二可動リング332が、第一規制リング335から離間し、切換用スプール120に、コイルスプリング325による負荷が作用しない状態となる。
一方、操作レバー13が、右側の緩旋回領域Q1から右側の第二切り換わり位置P2に揺動操作されると、ハウジングとしてのバルブケース122側の第一可動リング331が、切換用スプール120側の第二規制リング336に当接し、切換用スプール120に、コイルスプリング325の付勢力が作用し始める。また、操作レバー13が、右側の第二切り換わり位置P2から右側の緩旋回領域Q1側に揺動操作されると、第一可動リング331が、第二規制リング336から離間し、切換用スプール120に、コイルスプリング325による負荷が作用しない状態となる。
【0123】
(6)上記実施形態では、負荷付与機構124により負荷が与えられるスプールとして切換用スプール120が例示されているが、これに限られない。例えば、負荷付与機構124により負荷が与えられるスプールが、リリーフ用スプール119であってもよい。
【0124】
(7)上記実施形態では、スプリングとして、コイルスプリング125が例示されているが、これに限られない。例えば、板バネ等の他のスプリングであってもよい。
【0125】
(8)上記実施形態では、複数の旋回モードとして、緩旋回モード、ブレーキ旋回モードが示されているが、これに限られない。例えば、緩旋回モード、ブレーキ旋回モード以外の他の旋回モードが備えられていてもよい。
【0126】
(9)上記実施形態では、外側に駆動側クラッチ体87が位置し、内側に従動側クラッチ体86が位置するサイドクラッチ48が例示されているが、これに限られない。例えば、内側に駆動側クラッチ体87が位置し、外側に従動側クラッチ体86が位置する他のサイドクラッチ48であってもよい。サイドクラッチとしては、これ以外にも種々の形態を採用しうる。
【0127】
(10)上記実施形態では、クローラ走行装置1への伝動系に備えられる駆動側クラッチ体87を中空構造とすることについて例示されているが、これに限られない。ドッグクラッチ型式の他のクラッチ構造における駆動側クラッチ体に、上述のような中空構造を採用してもよい。