(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。また、様々な処理を行う機能ブロックとして図面に記載される各要素は、ハードウェア的には、CPU、メモリ、その他の回路で構成することができ、ソフトウェア的には、メモリにロードされたプログラムなどによって実現される。したがって、これらの機能ブロックがハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは当業者には理解されるところであり、いずれかに限定されるものではない。なお、各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
(実施形態の概要)
【0014】
図1は、実施の形態の概要に係る信号変換器の構成を示すブロック図である。
図1において、信号変換器100は、第1位相シフタ101と、第2位相シフタ102と、合成器103を備える。信号変換器100は、キャリア周波数fcで励磁されたレゾルバから出力された少なくとも2相の信号を変換処理して、2相の信号を所定の位相差とする。
【0015】
第1位相シフタ101は、キャリア周波数fcより低い周波数f1の極で、レゾルバの第1位相信号の位相をシフトし、位相をシフトした第1位相信号を合成器103に出力する。
【0016】
第2位相シフタ102は、キャリア周波数fcより高い周波数f2の極で、レゾルバの第2位相信号の位相をシフトし、位相をシフトした第2位相信号を合成器103に出力する。
【0017】
合成器103は、位相をシフトした第1位相信号と、位相をシフトした第2位相信号とを合成し、合成した信号を外部に出力する。
【0018】
このように、実施形態の概要に係る信号変換器は、キャリア周波数fcより低い周波数f1の極で、レゾルバの第1位相信号の位相をシフトし、キャリア周波数fcより高い周波数f2の極で、レゾルバの第2位相信号の位相をシフトし、位相をシフトした第1位相信号と、位相をシフトした第2位相信号とを合成することにより、検出角度の精度が良く、且つ回路規模が小さい信号変換器を提供することができる。
(実施の形態1)
【0019】
実施の形態1では、実施の形態の概要で説明した信号変換器100の詳細な構成及び信号変換器100を用いたモータの制御装置について説明する。
【0020】
最初に実施の形態1に係る信号変換器及び制御装置の各構成の機能について説明する。
図2は、実施の形態1に係る制御装置の構成を示すブロック図である。
【0021】
図2において、制御装置200は、アナログ回路300と、カウンタ回路400と、マイコン制御器500と、パワー回路600とを備える。そして、制御装置200は、レゾルバ201からの信号に基づいてモータ202の回転を制御する。レゾルバ201とモータ202は、ロータ部分が共に回転軸203に固定され、共に回転する。
【0022】
レゾルバ201は、更に励磁コイル204と、検出コイル205と、検出コイル206とを備える。励磁コイル204は、入力された電気信号により磁場を発生するコイルである。検出コイル205及び206は、磁場の変動を検出して電気信号として出力するコイルである。
【0023】
レゾルバ201では、励磁コイル204、検出コイル205及び検出コイル206がステータ部分に配置され、ロータ部分の回転により磁場の変動が検出される。レゾルバ201は、ロータの回転による磁場の変動を少なくとも2相以上の電気信号として検出できるものであれば良く、例えば、ロータ部分に励磁コイル204が配置され、検出コイル205及び検出コイル206がステータ部分に配置され、ロータ部分の回転による磁場の変動が検出されてもよい。
【0024】
そして、検出コイル205と検出コイル206は、互いに所定の角度で配置されることにより、検出コイル205と検出コイル206は、磁場の変動を互いに異なる相の信号として検出する。例えば、検出コイル205と検出コイル206とが90°の角度で配置されることにより、検出コイル205で正弦波が検出され、検出コイル206で余弦波が検出される。
【0025】
次にアナログ回路300の構成について説明する。アナログ回路300は、励磁回路301と、位相シフタ101と、位相シフタ102と、バンドパスフィルタ329と、OPアンプOP302、OP315、OP320、OP327及びOP330と、トランジスタTR303及びTR304と、ダイオードD305及びD306と、抵抗R311、R312、R313、R314、R316、R317、R318、R319、R325、R326及びR328を備える。
【0026】
励磁回路301は、基準クロック信号を分周した周波数fcで正弦波のキャリア信号を生成し、キャリア信号をOPアンプOP302に出力する。
【0027】
OPアンプOP302、プッシュプル接続されたトランジスタTR303及びTR304、ダイオードD305及びD306は、キャリア信号を増幅し、増幅後のキャリア信号をレゾルバ201の励磁コイル204に出力する。
【0028】
OPアンプOP315及び抵抗R311、R312、R313及びR314は、差動アンプを構成し、検出コイル205において検出された信号を増幅して位相シフタ101に出力する。同様にOPアンプOP320及び抵抗R316、R317、R318、R319は、差動アンプを構成し、検出コイル206において検出された信号を増幅して位相シフタ102に出力する。
【0029】
位相シフタ101の出力と位相シフタ102の出力は、それぞれ抵抗R325、R326を介して接続することにより、キャリア周波数をロータ回転角で位相変調された信号が得られる。信号合成の詳細については後述する。
【0030】
OPアンプOP327及び抵抗R328は反転増幅回路を構成し、キャリア周波数をロータ回転角で位相変調された信号を増幅して、バンドパスフィルタ329に出力する。
【0031】
バンドパスフィルタ329は、位相変調信号の所定の周波数範囲以外を減衰し、OPアンプOP330に出力する。例えば、所定の周波数範囲は、キャリア周波数がロータの回転速度により変化しうる範囲である。
【0032】
OPアンプOP330は、コンパレータを構成して、位相変調信号を方形波に整形し、CLK同期回路403に出力する。
【0033】
次にカウンタ回路400の構成について説明する。カウンタ回路400は、基準CLK回路401と、励磁CLK回路402と、位相差カウンタ404と、CLK同期回路403とを備える。
【0034】
基準CLK回路401は、基準周波数の信号を生成し、生成した基準クロック信号を励磁CLK回路402、位相差カウンタ404及びCLK同期回路403に出力する。
【0035】
励磁CLK回路402は、基準CLK回路401において生成された基準クロック信号を分周し、分周により得られたキャリア周波数のクロック信号を励磁回路301及び位相差カウンタ404に出力する。
【0036】
CLK同期回路403は、整形された位相変調信号と整形されたキャリア信号とを同期検波し、検波信号を位相差カウンタ404及び位置演算器501に出力する。
【0037】
位相差カウンタ404は、同期検波により得られた位相差を基準周波数の分解能で計数し、計数結果を位置演算器501及び三相変換器509に出力する。
【0038】
次に、マイコン制御器500の構成について説明する。マイコン制御器500は、位置演算器501と、シリアル通信器502と、減算器503と、位置ゲイン演算器504と、微分処理器505と、減算器506と、速度ゲイン演算器507と、トルク演算器508と、三相変換器509と、乗算器510、511及び512とを備える。
【0039】
位置演算器501は、検波信号と位相差の計数結果とから位置検出値を算出し、減算器503及び微分処理器505に出力する。
【0040】
シリアル通信器502は、外部からの位置指示信号を受信し、位置指令値を減算器503に出力する。減算器503は、位置検出値から位置指令値を減算し、得られた位置偏差を位置ゲイン演算器504に出力する。
【0041】
位置ゲイン演算器504は、位置偏差に所定の位置ゲインを乗じて、モータ202の目標速度を算出する。微分処理器505は、回転位置を表す検出信号を微分して、モータ202の回転速度を算出する。減算器506は、目標速度から速度検出値を減算し、得られた速度偏差を速度ゲイン演算器507に出力する。
【0042】
速度ゲイン演算器507は、速度偏差に速度ゲインを乗じて、トルク指令値を算出する。トルク演算器508は、トルク指令値からモータ202の各相に流す電流指令値を算出する。三相変換器509は、位相差の計数結果から三相信号を生成し、三相信号を乗算器510、511及び512にそれぞれ出力する。
【0043】
乗算器510、511及び512は、それぞれ電流指令値に三相信号を乗算して、三相の制御信号を生成し、三相の制御信号をパワー回路600に出力する。パワー回路600は、三相の制御信号に基づいてモータ202を三相PWM(Pulse Width Modulation)制御するインバータである。
【0044】
以上の構成により、制御装置200はロータの回転角を検出し、モータを制御するが、制御装置200内の構成である位相シフタ101及び102は、位相をシフトできる構成であればいずれも適用できる。例えば、位相をシフトできる構成として、OPアンプを用いたオールパスフィルタが好適である。このOPアンプを用いた位相シフタについて
図3を用いて説明する。
図3は、実施の形態1の位相シフタの構成を示す回路図である。
図3において、位相シフタ101は、OPアンプOP701と、抵抗R702、R703及びR704と、キャパシタC705とを備える。
【0045】
レゾルバ201の検出コイル205からの信号は、抵抗R702を介してOPアンプ701の反転入力端子に接続し、抵抗R703を介してOPアンプ701の非反転入力端子に接続する。また、OPアンプ701の非反転入力端子は、キャパシタC705を介して接地される。また、OPアンプ701の出力端子は、抵抗R704を介してOPアンプ701の反転入力端子に接続する。
【0046】
以上の構成により、位相シフタ101は、OPアンプを用いたオールパスフィルタを構成する。位相シフタ102についても同様の構成とすることができる。
【0047】
位相シフト及び極はオールパスフィルタの伝達関数により決定できるので、抵抗R703のインピーダンス及びキャパシタC705のキャパシタンスは、所望の位相シフト及び極により決定される。
【0048】
ここで、キャリア周波数fcと、位相シフタ101の極の周波数f1と、位相シフタ102の極の周波数f2とは、f1=fc/n且つf2=fc×n(nは任意の正の実数)を満たすことにより位相シフタ101の位相シフトと位相シフタ102位相シフトの差を90°とすることができる。
【0049】
例えば、抵抗R702、R703及びR704のインピーダンスを100kΩとし、キャパシタC705のキャパシタンスを80pFとすることにより、f1=1.99kHzの極とすることができる。また、抵抗R702、R703及びR704のインピーダンスを100kΩとし、キャパシタC705のキャパシタンスを135pFとすることにより、f2=11.8kHzの極とすることができる。
【0050】
f1=1.99Hz及びf2=11.8kHzは、キャリア周波数fc=4.88kHzに対してf1=fc/n且つf2=fc×n(nは任意の正の実数)の関係を満たしているので、位相シフタ101の位相シフトと位相シフタ102位相シフトの差を90°となる。
【0051】
次に回転角の検出処理について
図2と共に説明する。まず、励磁回路301において生成されたキャリア信号は、OPアンプOP302、トランジスタTR303及びTR304において増幅され、励磁コイル204に入力される。
【0052】
励磁コイル204で発生した磁場は、レゾルバ201のロータ部分の回転により変動が生じる。そして、この磁気の変動が検出コイル205及び206において検出される。
【0053】
例えば、正弦波sinωtのキャリア信号で励磁コイル204を1相励磁し、検出コイル205及び206において検出された2相出力信号を増幅すると、増幅後の2相出力信号X1、X2は、それぞれ
X1=K・sinθm×sinωt
X2=K・cosθm×sinωt
で定義される。ここで、ωはキャリア信号の角運動量、tは時間、θmはレゾルバ201のロータの回転角、KはOPアンプOP315及びOPアンプ317のゲインを示す。
【0054】
ここで位相シフタ101における位相シフトφ1、位相シフタ102における位相シフトφ2とし、位相シフタ101及び102にオールパスフィルタを用いると、φ1−φ2=−90°に設計できる。例えば、キャリア周波数fc=4.88kHzに対して、位相シフタ101の極の周波数を1.99Hz、位相シフタ102の極の周波数を11.8kHzとすることにより、φ1−φ2=−90°とすることができる。
【0055】
そして位相シフタ101及び102におけるフィルタ後の信号は、
X1=K・sinθm×sin(ωt−φ1)
X2=K・cosθm×sin(ωt−φ2)
で定義される。
ここで、−φ2=−φ1−90°の関係より以下の関係式が導き出される。
X2=K・cosθm×sin(ωt−φ1−90°)
=−K・cosθm×cos(ωt−φ1)
【0056】
合成器103において、位相シフタ102及び103における位相シフト後の信号X1とX2が合成される。ここで、X1とX2を加算すると、以下の関係式が導き出される。
Y=X1+X2
=K・sinθm×sin(ωt−φ1)−K・cosθm×cos(ωt−φ1)
=−K・cos(ωt−φ1+θm)
【0057】
すなわち、キャリア周波数(角周波数)ωがロータ回転角θmで位相変調された信号が得られる。
図4は、キャリア信号と位相変調された信号の例を示すグラフである。
図4において、縦軸は振幅を示し、横軸は時間を示す。
図4に示すように、キャリア信号と位相変調された信号とは、周波数が同じで位相が異なる信号である。したがって、キャリア信号と位相変調された信号との位相差により、ロータの回転角を算出することができる。
【0058】
例えば、位相変調された信号を方形波に整形し、キャリア周波数のクロック信号との位相差を検出する方法が好適である。
図5は、キャリア周波数のクロック信号と整形後の位相変調された信号の位相差を示すグラフである。
図5において、縦軸は振幅を示し、横軸は時間を示す。
図5に示すように、キャリア周波数のクロック信号と整形後の位相変調された信号とは、ロータの回転角に対応する位相差がある。
【0059】
CLK同期回路403において、このキャリア周波数ωがロータ回転角θmで位相変調された信号と、キャリア周波数のクロック信号とを同期化することにより、検波信号を得る。
【0060】
得られた検出信号に基づき、マイコン制御器500及びパワー回路600において、モータが制御される。
【0061】
次に、以上の処理により検出された回転角の精度について説明する。上述したように、位相シフタ101における位相シフトφ1、位相シフタ102における位相シフトφ2について、φ1−φ2=−90°(または90°)の関係とすることにより、ロータ回転角θmが求められる。
【0062】
したがって、φ1−φ2の値が−90°から離れるほど、検出角度の誤差が大きくなり、φ1−φ2の値が−90°に近いほど、検出角度の誤差が小さくなる。
【0063】
すなわち、レゾルバからの2相出力信号の周波数が、ロータの回転速度により変化しても、2つの位相シフタによる位相シフトの差は−90°を保つことにより、ロータの回転角度を精度良く検出することができる。
【0064】
図6は、実施の形態1の信号変換器における、レゾルバの検出コイルの検出した周波数と位相シフタによる位相シフトとの関係を示す図である。
図6において、横軸は検出コイル205及び206で検出した2相出力信号の周波数(Hz)を示し、縦軸は、位相シフタによる位相シフト(degree)を示す。
図6に示すように位相シフタ101は、周波数f1=1.99kHzを極としており、位相シフタ102は、周波数f2=11.8kHzを極としている。
【0065】
実施の形態1では、この2つ位相シフタによる位相シフトの差を略−90°を保つようにしている。
図7は、実施の形態1の信号変換器における、レゾルバの検出コイルの検出した周波数と2つ位相シフタによる位相シフトの差の関係を示す図である。
図7において、横軸は検出コイル205及び206で検出した2相出力信号の周波数(Hz)を示し、縦軸は、2つ位相シフタによる位相シフト(degree)の差を示す。
【0066】
図7に示すように、4.88kHz±1kHzの範囲で、2つ位相シフタによる位相シフトの差は略−90°に保たれている。
【0067】
ここで、1つのオールパスフィルタとの変動の差を説明する。
図8は、レゾルバの検出コイルの検出した周波数と位相シフタによる位相シフトの差との関係を、実施の形態1の信号変換器と1つのオールパスフィルタで比較した図である。
図8において、横軸は検出コイル205及び206で検出した2相出力信号の周波数(Hz)を示し、縦軸は、位相シフト(degree)を示す。
【0068】
図8に示すように、1つのオールパスフィルタを用いた場合、キャリア周波数4.88kHzから1kHzシフトした場合、位相シフトは−90°から−100°と10°も変化してしまう。一方、実施の形態1では、レゾルバからの2相出力信号の周波数がキャリア周波数の4.88kHzから1kHzシフトした場合、位相シフトは−90°からの変化が1°以下である。
【0069】
このように実施の形態1の信号変換器は、レゾルバからの2相出力信号の周波数が、ロータの回転により変化しても、2つの位相シフタによる位相シフトの差は−90°を保つことができ、ロータの回転角度を精度良く検出することができる。
【0070】
また、実施の形態1の信号変換器は、トラッキング方式のように、位相差をフィードバックして補正する回路が不要であるので、回路規模を小さくすることができる。
【0071】
また、実施の形態1の信号変換器は、トラッキング方式のように、位相差をフィードバックして補正する必要がないので、トラッキング方式に比べて短い時間で位置を検出できる。
【0072】
また、実施の形態1の信号変換器は、キャリア周波数がロータの回転速度により変化する周波数範囲で位相変調信号をパスさせるバンドパスフィルタを備えることにより、モータの磁気回路から発生する駆動電流ノイズや、インバータのPWM変調ノイズを除去することができ、精度の高い信号変換が実現できる。
【0073】
さらに実施の形態1の信号変換器は、シンプルで回路規模が小さいので、マイコンとのインターフェスが容易に構成でき、実施の形態1の信号変換器をマイコンデバイスに内蔵することにより、ブラシレスモータの高精度・低価格・小型化が実現できる。
【0074】
なお、2つの位相シフタによる位相シフトの差φ1−φ2は、ロータの回転角度の検出において、許容される誤差の範囲内であれば、略90°でよい。
図9は、実施の形態1の信号変換器における、レゾルバの検出コイルの検出した周波数と2つ位相シフタによる位相シフトの差の関係を示す図である。
図9において、横軸は検出コイル205及び206で検出した2相出力信号の周波数(Hz)を示し、縦軸は、2つ位相シフタによる位相シフト(degree)の差を示す。
【0075】
図9では、位相シフタ102の位相シフトを変化させて、2つの位相シフタによる位相シフトの差φ1−φ2を−88°から−92°まで変化させた例が示されている。レゾルバからの2相出力信号の周波数がキャリア周波数の4.88kHzから1kHzシフトした場合、位相シフトは−90°からの変化が2°以下であり、1つのオールパスフィルタを用いた例に比べて、位相シフトの誤差が1/5となっている。
【0076】
したがって、φ1−φ2の値は略−90°であればよい。具体的にはφ1−φ2の値は−88°から−92°の範囲でも、略−90°であり、ロータの回転角度の検出において、実用上十分な精度である。
【0077】
なお、φ1−φ2は、二つの位相の相対的な差を意味するので、−90°と90°は、いずれの位相が先であるかにより表現が異なるに過ぎず、同じ位相差であれば、いずれでも適用することができる。φ1−φ2の値が−88°から−92°である場合も同様である。
(実施の形態2)
【0078】
実施の形態2では、レゾルバに4相コイルを用いる例について説明する。
図10は、実施の形態2に係る信号変換器及び制御装置の構成を示すブロック図である。
【0079】
図10において、
図2と同一の構成については、同一の番号を付し、説明を省略する。
図10において、制御装置800は、コイル801、802、803及び804と、抵抗R811、R812、R813、R814とを備える。
【0080】
励磁回路301は、基準クロック信号を分周した周波数fcで正弦波のキャリア信号を生成し、キャリア信号をOPアンプOP302に出力する。OPアンプOP302、プッシュプル接続されたトランジスタTR303及びTR304、ダイオードD305及びD306は、キャリア信号を増幅し、増幅後のキャリア信号をレゾルバ201のコイル801、802、803及び804に出力する。
【0081】
コイル801は、一方をOPアンプOP302、プッシュプル接続されたトランジスタTR303及びTR304から構成される増幅回路の出力に接続され、他方をOPアンプOP315の反転入力端子に接続される。
【0082】
また、コイル803は、一方をOPアンプOP302、プッシュプル接続されたトランジスタTR303及びTR304から構成される増幅回路の出力に接続され、他方をOPアンプOP315の非反転入力端子に接続する。
【0083】
OPアンプOP315は、0相のコイル801と180相のコイル803の出力を差動増幅する差動アンプを構成する。
【0084】
同様に、コイル802は、一方をOPアンプOP302、プッシュプル接続されたトランジスタTR303及びTR304から構成される増幅回路の出力に接続され、他方をOPアンプOP320の反転入力端子に接続される。
【0085】
また、コイル804は、一方をOPアンプOP302、プッシュプル接続されたトランジスタTR303及びTR304から構成される増幅回路の出力に接続され、他方をOPアンプOP320の非反転入力端子に接続する。
【0086】
OPアンプOP320は、90相のコイル802と270相のコイル804の出力を差動増幅する差動アンプを構成する。
【0087】
このように、実施の形態2の信号変換器及び制御装置は、レゾルバに4相コイルを用いてロータの回転角度を精度良く検出することができる。
(実施の形態3)
【0088】
レゾルバに巻き線バラツキがあると、位相変調信号に固定位相のキャリア信号がキヤリア誤差成分として残ってしまい、位置誤差の大きな要因となる。実施の形態3では、このキャリア信号に起因するノイズを除去する例について説明する。
【0089】
レゾルバの2相信号を合成したX1+X2にキャリア成分が含まれていない場合は、速度は一定になる。レゾルバの巻線誤差等によりキャリア成分が含まれていると、速度には交流の変動成分が重畳する。これを速度リップルVrと呼ぶ。
【0090】
図11は、実施の形態3に係る信号変換器及び制御装置の構成を示すブロック図である。
図11において、
図2と同一の構成については、同一の番号を付し、説明を省略する。
図11において、制御装置900は、速度リップル演算器901と、キャリア振幅位相補正器902と、D/A変換器903と、抵抗R904とを備える。
【0091】
速度リップル演算器901は、微分処理器505において算出された、回転位置を表す検出信号の微分値から、リップル成分を算出し、キャリア振幅位相補正器902に出力する。
【0092】
キャリア振幅位相補正器902は、補正信号を生成して、D/A変換器903に出力する。またキャリア振幅位相補正器902は、リップル成分が最小となるように補正信号の位相と振幅を任意に変更する。位相と振幅の変更動作については後述する。
【0093】
D/A変換器903は、補正信号をデジタル/アナログ変換し、変換後の補正信号を、抵抗R904を介してOPアンプOP327の反転入力端子に出力する。
【0094】
OPアンプOP327の反転入力端子には、位相シフタ101の出力と、位相シフタ102の出力と、D/A変換器903の出力とが重畳された信号が入力される。
【0095】
次に実施の形態3に係る信号変換器及び制御装置の動作について説明する。
図12は、実施の形態3に係る信号変換器及び制御装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【0096】
まずステップS1001において、モータ202を一定速度で連続回転させ、ステップS1002に進む。
【0097】
ステップS1002において、キャリア振幅位相補正器902において、振幅εと位相Δの初期値が設定され、ステップS1003に進む。
【0098】
ステップS1003において、キャリア振幅位相補正器902において、振幅εと位相Δでキャリア補正信号が生成され、ステップS1004に進む。
【0099】
ステップS1004において、速度リップル演算器901において、位相Δに対して速度リップルVrが最小であるか否か判断される。位相Δに対して速度リップルVrが最小でない場合には、ステップS1005に進み、位相Δに対して速度リップルVrが最小である場合には、ステップS1006に進む。
【0100】
ステップS1005において、キャリア振幅位相補正器902において、位相Δが変化され、ステップS1003に戻る。
【0101】
ステップS1006において、速度リップル演算器901において、振幅εに対して速度リップルVrが最小であるか否か判断される。振幅εに対して速度リップルVrが最小でない場合には、ステップS1007に進み、振幅εに対して速度リップルVrが最小である場合には、ステップS1009に進む。
【0102】
ステップS1007において、キャリア振幅位相補正器902において、振幅εが変化され、ステップS1008に進む。
【0103】
ステップS1008において、キャリア振幅位相補正器902において、振幅εと位相Δでキャリア補正信号が生成され、ステップS1006に戻る。
【0104】
ステップS1009において、速度リップル演算器901において、位相Δ及び振幅εを固定してキャリア補正信号が生成され、振幅εと位相Δの設定処理が終了する。
【0105】
この動作は出荷時の校正動作で、一度だけ実行すれば良い。したがって、位相Δ及び振幅εの設定した値は、マイコン制御器500内の不揮発メモリに格納しても良い。また、この動作が出荷後に行われても良い。例えば、この動作が電源投入時などに行う初期化動作時に行われても良い。
【0106】
このように実施の形態3の信号変換器及び制御装置は、レゾルバのキャリア信号に起因するリップル成分をキャンセルする補正信号を生成し、リップル成分が最小となる補正信号の位相と振幅をサーチして、補正信号を位相変調信号に重畳することにより、キャリア信号に起因するノイズを除去することができる。
【0107】
なお、上記各実施の形態において、カウンタ回路400及びマイコン制御器500は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のハードウェアまたはソフトウェアで実施できる。また、処理の一部をソフトウェアで実施し、それ以外をハードウェアで実施することとしても良い。ソフトウェアで実施する際には、マイクロプロセッサ等の1つあるいは複数のCPU(Central Processing Unit)を有するコンピュータシステムに機能ブロックの処理に関するプログラムを実行させればよい。
【0108】
また、上述したプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non−transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD−ROM(Read Only Memory)CD−R、CD−R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0109】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は既に述べた実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることはいうまでもない。
【0110】
たとえば、キャリア周波数及び位相シフトは、いずれも上記実施の形態の数値に限定されるものではない。