特許第6598570号(P6598570)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6598570
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】生体情報測定装置、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/00 20060101AFI20191021BHJP
【FI】
   A61B5/00 102A
   A61B5/00 102B
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-158854(P2015-158854)
(22)【出願日】2015年8月11日
(65)【公開番号】特開2017-35321(P2017-35321A)
(43)【公開日】2017年2月16日
【審査請求日】2018年7月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000230962
【氏名又は名称】日本光電工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100170911
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 啓太
(72)【発明者】
【氏名】北原 一義
【審査官】 伊藤 幸仙
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−537288(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/136050(WO,A1)
【文献】 特開2001−236583(JP,A)
【文献】 特開2001−344352(JP,A)
【文献】 特開平05−168602(JP,A)
【文献】 特開2008−061663(JP,A)
【文献】 特開平10−165377(JP,A)
【文献】 特開平10−080407(JP,A)
【文献】 特開2014−057691(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/26124(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2018/235469(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の生体情報を測定する生体情報測定装置であって、
音声データの送信モードを変更する複数の条件の各々にアクションの有無及びアクションの内容を関連付けて記憶する記憶部と、
前記音声データを含む各種データを送受信する無線通信部と、
前記複数の条件のいずれかに合致したと判定した場合に、前記無線通信部を、前記音声データに関する処理の一部が制限された省電力モードから前記音声データに関する処理の制限が解除されたハイパフォーマンスモードに切り替えるとともに、合致した条件にアクションが設定されている場合には設定されたアクションを実行する判定部と、
を備える生体情報測定装置。
【請求項2】
前記被験者に取り付けられたセンサから生体信号を取得して、各種の生体情報の測定値を取得する測定部を備え、
前記判定部は、前記測定の測定した測定値が正常範囲外となった場合に、前記無線通信部を前記省電力モードから前記ハイパフォーマンスモードに切り替える、
請求項1に記載の生体情報測定装置。
【請求項3】
前記被験者の転倒を検出する転倒センサを備え、
前記判定部は、前記転倒センサが前記被験者の転倒を検知した場合に、前記無線通信部を前記省電力モードから前記ハイパフォーマンスモードに切り替える、
請求項1または請求項2に記載の生体情報測定装置。
【請求項4】
前記被験者の移動速度を検出する速度センサを備え、
前記判定部は、前記速度センサの検出する移動速度が一定速度以上となった場合に、前記無線通信部を前記省電力モードから前記ハイパフォーマンスモードに切り替える、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の生体情報測定装置。
【請求項5】
前記判定部は、前記無線通信部が前記ハイパフォーマンスモードで動作している場合、前記ハイパフォーマンスモードを解除すべき条件を定めた解除条件を満たすかを判定し、当該解除条件を満たすと判定した際には前記無線通信部を前記ハイパフォーマンスモードから前記省電力モードに切り替える、
請求項1〜のいずれか1項に記載の生体情報測定装置。
【請求項6】
前記判定部は、前記測定部の測定した測定値が正常範囲外から正常範囲内となった場合、前記無線通信部を前記ハイパフォーマンスモードから前記省電力モードに切り替える、
請求項2に記載の生体情報測定装置。
【請求項7】
前記判定部は、前記生体情報測定装置に内蔵されたバッテリの残量が閾値以下となった場合、前記無線通信部を前記ハイパフォーマンスモードから前記省電力モードに切り替える、
請求項1〜のいずれか1項に記載の生体情報測定装置。
【請求項8】
前記判定部は、前記音声データに関する処理が一定時間以上行われていない場合、前記無線通信部を前記ハイパフォーマンスモードから前記省電力モードに切り替える、
請求項1〜のいずれか1項に記載の生体情報測定装置。
【請求項9】
被験者の生体情報を測定する生体情報測定装置において実行されるプログラムあって、
コンピュータに、
音声データの送信モードを変更する複数の条件の各々にアクションの有無及びアクションの内容を関連付けて記憶する記憶ステップと、
前記音声データを含む各種データを送受信する無線処理ステップと、
前記複数の条件のいずれかに合致したと判定した場合に、前記音声データに関する処理の一部が制限された省電力モードから前記音声データに関する処理の制限が解除されたハイパフォーマンスモードに切り替えるとともに、合致した条件にアクションが設定されている場合には設定されたアクションを実行する判定ステップと、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生体情報測定装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、病院内において被験者(患者)の生体情報(血圧、体温、呼吸等のバイタルサイン)を測定可能な生体情報測定装置が広く使用されている。ここで生体情報測定装置とは、ベッドサイドモニタ、医用テレメータ等を含むものである。
【0003】
生体情報測定装置は、被験者の生体情報を測定するだけに限らず、遠隔地にいる医師や看護師と被験者との間のコミュニケーションツールとして使用される場合もある。例えば特許文献1には、マイクから集音された音声を外部装置に送信する生体情報測定装置が開示されている(段落0034等)。同様に特許文献2には、個人的な健康管理デバイスにおいて音声通信技術が実装されていることが開示されている(abstract等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−212167号公報
【特許文献2】米国特許第8487771号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上述の音声通信の機能は、消費電力(バッテリ消費量)の大きい。そのため携帯型の医療機器等においては、音声通信の機能を常にONにしておくことは好ましくない。上述の特許文献1及び2では、音声通信機能の消費電力についての示唆や教示が無い。そのため、音声通信機能を有することによって、消費電力の増大を招いてしまう恐れがあった。
【0006】
本発明は上述の課題を鑑みてなされたものであり、消費電力を抑えつつ、円滑な音声コミュニケーションが取れる生体情報測定装置、及びプログラムを提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかる生体情報測定装置の一態様は、
被験者の生体情報を測定する生体情報測定装置であって、
音声データを含む各種データを送受信する無線処理部と、
所定条件を満たす状態となったか否かを判定し、当該所定条件を満たすと判定した場合に、前記無線通信部を、前記音声データに関する処理の一部が制限された省電力モードから前記音声データに関する処理の制限が解除されたハイパフォーマンスモードに切り替える判定部と、を備える、ものである。
【0008】
判定部は、所定の条件を満たす場合にのみ無線通信部をハイパフォーマンスモードに切り替える。すなわち無線通信部は、必要な場合にのみ音声データに関する処理の制限が解除されたハイパフォーマンスモードとなり、それ以外の場合には音声データに関する処理の一部が制限された省電力モードとなる。これにより、無線通信部の消費電力が削減され、ひいては生体情報測定装置の消費電力の低減を実現することができる。また被験者と医師等がコミュニケーションを行うべき状況では、音声通信が可能な状態となる。これにより被験者は、非常事態等が生じた場合に円滑に医師等と会話を行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、消費電力を抑えつつ、円滑な音声コミュニケーションが取れる生体情報測定装置、及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1にかかる生体情報測定装置1の構成を示すブロック図である。
図2】実施の形態1にかかる判定部22が使用する条件の一例を示す図である。
図3】実施の形態1にかかる判定部22の処理の流れを示すフローチャートである。
図4】実施の形態1にかかる判定部22が使用する条件の一例を示す図である。
図5】実施の形態1にかかる判定部22の処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施の形態1>
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は、本実施の形態にかかる生体情報測定装置1の構成を示すブロック図である。生体情報測定装置1は、被験者Pの各種の生体情報(血圧、体温、呼吸波形、呼吸数、動脈血酸素飽和度等)を取得する医療機器である。生体情報測定装置1は、例えば被験者Pが携帯する医用テレメータである。
【0012】
生体情報測定装置1は、測定部11、転倒センサ12、速度センサ13、温度センサ14、照度センサ15、マイク16、スピーカ17、制御部18、メモリ19、及び表示部20を有する。制御部18は、判定部21及び無線通信部22を有する。また生体情報測定装置1は、図示しないもののバッテリ、各種制御回路等も内蔵する。
【0013】
被験者Pには、各種センサ30が取り付けられている。各種センサ30とは、例えばプローブ、電極、カフ、等の生体情報(バイタルサイン)の取得用の各種のセンサである。測定部11は、各種センサ30から被験者Pの生体信号を取得し、当該生体信号から各生体情報の測定値を取得する。測定部11は、各生体情報の測定値を制御部18に供給する。
【0014】
転倒センサ12は、生体情報測定装置1が測定対象とする被験者Pが転倒したことを検出するセンサである。転倒センサ12は、例えば地磁気測定機能により転倒を検出するものであってもよく、ジャイロセンサを応用して転倒を検出するものであってもよい。転倒センサ12は、被験者Pの転倒を検出した場合、制御部18に通知を行う。
【0015】
速度センサ13は、生体情報測定装置1の移動速度を検出するセンサである。速度センサ13は、一般的な速度検出機構を持つセンサであればよい。速度センサ13は、検出した速度を適宜制御部18に供給する。速度センサ13は加速度センサであってもよく、移動速度の代わりに加速度を算出する構成であっても構わない。
【0016】
温度センサ14は、生体情報測定装置1の周辺温度を測定するセンサである。温度センサ14は、一般的な温度計等と同様の構成を持つセンサであればよい。温度センサ14は、検出した温度を適宜制御部18に供給する。
【0017】
照度センサ15は、生体情報測定装置1の周辺の照度を測定するセンサである。照度センサ15は、一般的な照度測定機構(例えばフォトダイオード、電流増幅回路等を有する構成)であればよい。照度センサ15は、検出した周辺照度の測定値を適宜制御部18に供給する。
【0018】
なお、転倒センサ12、速度センサ13、温度センサ14、及び照度センサ15は、必ず生体情報測定装置1に設けられている必要はなく、必要なもののみが搭載されていればよい。また図示しないものの振動センサ等の他のセンサを備える構成であってもよい。
【0019】
マイク16は、生体情報測定装置1の周囲音を取得する集音機構である。マイク16は、取得した音を制御部18に適宜供給する。スピーカ17は、制御部18の制御に応じて報知音等を出力する。
【0020】
メモリ19は、各種データを記憶する不揮発性のメモリ(例えばハードディスク)、及びデータのバッファリングや作業領域として使用される揮発性のメモリ(例えばキャッシュメモリ)、を含む。制御部18は、メモリ19に対するデータの読み書きを適宜行う。
【0021】
表示部20は、生体情報測定装置1の筐体上に設けられた表示装置であり、例えば液晶ディスプレイやその周辺機器から構成される。表示部20には、被験者Pのバイタルサインの情報(例えば血圧、呼吸、体温、動脈血酸素飽和度、の測定値や測定波形)が表示される。
【0022】
制御部18は、生体情報測定装置1の各種の制御を行う。制御部18は、メモリ19から各種のプログラムを読み出して実行するCPU(Central Processing Unit)、各種回路等から構成される。なお制御部18は、複数のCPUを有する構成であってもよく、複数のチップに分かれた構成により実現されていてもよい。
【0023】
制御部18は、判定部21及び無線通信部22を有する。無線通信部22は、他の装置(例えばセントラルモニタ)と音声データを含む各種のデータの送受信を行う。無線通信部22は、音声データをリアルタイムで伝送する技術(以下、VoIP(Voice over Internet Protocol)機能と呼称する)を実装している。詳細には無線通信部22は、音声データを各種符号化方式で符号化/暗号化して送受信する機能を実装している。なお音声データとは、会話などを含む音データ全般を指すものである。
【0024】
無線通信部22の動作モードには、ハイパフォーマンスモードと省電力モードがある。ハイパフォーマンスモードとは、上述のVoIP機能がONになっている(すなわち音声送受信のための符号化や暗号化を実行可能な)モードである。すなわちハイパフォーマンスモードとは、音声データに関する処理の制限が解除された(音声データをリアルタイム伝送できる機能が実行できる)モードである。ハイパフォーマンスモードは、音声データの送受信が正確に実行できるものの、電力消費量(生体情報測定装置1に内蔵されたバッテリの電力消費量)が大きいモードである。
【0025】
省電力モードとは、上述の音声データに関する処理の少なくとも一部が制限された(すなわち音声送受信のための符号化や暗号化の少なくとも一部が実行不可能な)モードである。省電力モードでは、外部装置からの音声データの受信はできるものの、当該音声データを復号化等の処理が制限される。すなわち省電力モードでは、既定のプロトコル(VoIPプロトコル)に沿った音声データのリアルタイム伝送ができないものの、電力消費量が小さいモードである。
【0026】
無線通信部22の動作モード(ハイパフォーマンスモード、省電力モード)は、判定部21の制御に応じて変更される。以下、判定部21の判定処理について例を参照しつつ説明する。
【0027】
はじめに無線通信部22が省電力モードで動作している場合の判定部21の制御処理について説明する。判定部21は、所定条件を満たす状態となったかを判定する。当該所定条件とは、省電力モードからハイパフォーマンスモードに切り替える際に使用される各種条件である。図2は、省電力モードでの動作時に使用する所定条件の例を示す図である。図2では、7つの条件例が開示されている。
【0028】
判定部21は、測定部11の測定する各種の生体情報の測定値が正常範囲外、すなわちアラームを鳴動させる状態(アラーム状態)となった場合(図2No.1)、無線通信部22をハイパフォーマンスモードに切り替える。また判定部21は、条件に応じて外部装置等(好適にはセントラルサーバや看護師が携帯する携帯端末等)に通知を行ってもよい(図2No.1)。例えばアラーム状態となった場合、判定部21は看護師の携帯端末に通知を行うべきと判定する。これに応じて無線通信部22は、被験者Pがアラーム状態であること、及びどのような状態であるか等を通知する。当該通知は、音声通知であってもよく、テキスト通知であってもよい。
【0029】
また判定部21は、転倒センサ12が転倒を検知した場合、無線通信部22をハイパフォーマンスモードに切り替えると共に外部装置等に対して通知(点灯状態であることを知らせる通知)を行う(図2No.2)。
【0030】
判定部21は、速度センサ13が検出する移動速度が10km/h〜20km/hである場合(一定の速度範囲内である場合)、無線通信部22をハイパフォーマンスモードに切り替える(図2No.3)。
【0031】
判定部21は、速度センサ13が検出する移動速度が20km/h以上である場合(一定速度以上となった場合)、無線通信部22をハイパフォーマンスモードに切り替えると共に外部装置等に対して通知(走っている等の異常状態であることを知らせる通知)を行う(図2No.4)。
【0032】
判定部21は、温度センサ14が検出する周辺温度が35℃以上である場合、無線通信部22をハイパフォーマンスモードに切り替える(図2No.5)。判定部21は、照度センサ15が検出する周辺照度が500ルクス以上であり時刻が23時以降である場合、無線通信部22をハイパフォーマンスモードに切り替える(図2No.6)。判定部21は、無線通信部22が外部装置(好適にはセントラルサーバや看護師が携帯する携帯端末)から音声データを受信した場合、無線通信部22をハイパフォーマンスモードに切り替える(図2No.7)。
【0033】
なお図2はあくまでも一例であり、ユーザ(例えば看護師や医師)が任意に条件とその条件に対応するアクションを設定できるようにしてもよい。
【0034】
図3は、無線通信部22が省電力モードで動作している場合の判定部21の動作を示すフローチャートである。判定部21は、定期的に所定の条件(図2)を満たす状況となったか否かを判定する(S11)。所定条件を満たす状態となっていない場合(S11:No)、判定部21は条件判定を引き続き行う。
【0035】
一方、所定条件を満たす状態となった場合(S11:Yes)、判定部21は無線通信部22をハイパフォーマンスモードに切り替える(S12)。そして判定部21は、当該条件に対して通知等のアクションが設定されているか否かを判定する(S13)。特に設定が行われていない場合(S13:No)、判定部21は処理を終了する。一方、満たすこととなった条件に対して通知等のアクションが設定されている場合(S13:Yes)、判定部21は無線通信部22等に対して設定されているアクションを実行させる(S14)。
【0036】
続いて無線通信部22がハイパフォーマンスモードで動作している場合の判定部21の制御処理について説明する。図4は、ハイパフォーマンスモードでの動作時に使用する条件の例を示す図である。当該条件は、ハイパフォーマンスモードを解除すべき条件を定めた解除条件である。
【0037】
判定部21は、測定部11の測定する各種の生体情報の測定値がアラームを鳴動させる状態(アラーム状態)から正常状態に戻った後に一定時間が経過した場合(図4No.1)、無線通信部22を省電力モードに切り替える。同様に判定部21は、転倒センサ12が転倒を検知してから一定時間以上が経過した場合、無線通信部22を省電力モードに切り替える(図4No.2)。また判定部21は、各種の異常(移動速度異常、温度異常、照度異常)が正常となった後に一定時間以上経過した場合、無線通信部22を省電力モードに切り替える(図4No.3、No.4)。なお判定部21は、各種の異常が正常となったら即座に無線通信部22を省電力モードに切り替えてもよい。すなわち判定部21は、各種の異常が正常となった場合に無線通信部22を省電力モードに切り替えればよい。
【0038】
また判定部21は、生体情報測定装置1の筐体上に設けられたボタン(音声通話終了ボタン)の押下等を検知した場合、無線通信部22を省電力モードに切り替えてもよい(図2No.5)。さらに判定部21は、生体情報測定装置1のバッテリの残量が20%以下となった場合、無線通信部22を省電力モードに切り替えてもよい(図2No.6)。なおバッテリの残量の閾値は、20%に限らずこれ以外の値であってもよい。また一定時間以上にわたり音声データに関する処理が行われていない場合、判定部21は無線通信部22を省電力モードに切り替える(図2No.7)。
【0039】
なお図4はあくまでも一例であり、ユーザ(例えば看護師や医師)が任意に条件とその条件に対応するアクションを設定できるようにしてもよい。
【0040】
図5は、無線通信部22がハイパフォーマンスモードで動作している場合の判定部21の動作を示すフローチャートである。判定部21は、図4に示すような解除条件を満たす状態となったか否かを定期的に判定する(S21)。解除条件を満たす状態とはなっていない場合(S21:No)、判定部21は判定処理を継続して行う。一方、解除条件を満たす状態となった場合(S21:Yes)、判定部21は無線通信部22をハイパフォーマンスモードから省電力モードに切り替える(S22)。
【0041】
なお判定部21は、省電力モードに移行した後に各種の処理(省電力モードへの移行を通知するメッセージの表示等)を適宜行ってもよい。
【0042】
続いて本実施の形態にかかる生体情報測定装置1の効果について説明する。上述のように判定部21は、所定の条件(例えば図2に示す条件)を満たす場合にのみ無線通信部22をハイパフォーマンスモードに切り替える。すなわち無線通信部22は、必要な場合にのみ音声通信に関する符号化等を実行可能なハイパフォーマンスモードとなり、それ以外の場合にはテキスト送受信や音声データの受信といった限定された機能のみを実現する省電力モードとなる。これにより、無線通信部22の消費電力が削減され、ひいては生体情報測定装置1の消費電力の低減を実現することができる。また被験者Pと医師等がコミュニケーションを行うべき状況では、音声データに関する処理が制限されない状態となる。これにより被験者Pは、非常事態等が生じた場合に円滑に医師等と会話を行うことが可能となる。
【0043】
例えば被験者Pの生体情報の測定値が正常範囲外となった場合、すなわちアラームが鳴動する状態となった場合(図2No.1)、被験者Pはマイク16及びスピーカ17を介した音声通信が可能な状態となる。これにより被験者Pは医師等に対して身体状態を説明することができるとともに、医師等は迅速な対応を行うことができる。
【0044】
また被験者Pの転倒を検知した場合、被験者Pはマイク16及びスピーカ17を介した音声通信が可能な状態となる(図2No.2)。これにより被験者Pは医師等に対して状況を説明することができるとともに、医師等は迅速な対応を行うことができる。
【0045】
被験者Pが走っているような場合(移動速度が所定値以上である場合)、被験者Pの携帯する生体情報測定装置1は音声通信が可能な状態となる(図2No.3,No.4)。これにより医師等は、被験者Pに対して注意を促す会話を行うことができる。
【0046】
また被験者Pの周辺温度が高い場合(周辺温度が所定値以上である場合)、被験者Pの携帯する生体情報測定装置1は音声通信が可能な状態となる(図2No.5)。これにより医師等は、被験者Pに対して注意を促す会話(例えばクーラーの使用を促す会話)を行うことができる。さらに被験者Pの周辺温度が著しく高い場合(周辺温度が例えば50℃以上である場合)、被験者Pの携帯する生体情報測定装置1は音声通信が可能な状態にすると共に、アラーム通知を行ってもよい。これにより、火事等の事件をいち早く検出することができる。
【0047】
深夜の時間帯に被験者Pの周辺照度が高い場合、被験者Pの携帯する生体情報測定装置1は音声通信が可能な状態となる(図2No.6)。これにより医師等は、被験者Pに対して注意を促す会話(例えば早く就寝するように促す会話)を行うことができる。
【0048】
また判定部21は、解除条件(例えば図4に示す条件)を満たす場合には無線通信部22をハイパフォーマンスモードから省電力モードに切り替える。すなわち判定部21は、音声通話が必要なくなったと思われる状況になった場合、無線通信部22をバッテリ消費の少ない省電力モードに切り替える。これにより、生体情報測定装置1に内蔵されたバッテリの消費量を適切に抑制することができる。
【0049】
例えば異常状態が解除されたと考えられる場合(図4No.1〜4)、判定部21は無線通信部22をハイパフォーマンスモードから省電力モードに移行させる。これにより、バッテリ消費の大きいハイパフォーマンスモードが継続してしまう状況を回避することができる。
【0050】
また被験者Pが明示的に音声通話をOFFした場合(図4No.5)、判定部21は無線通信部22をハイパフォーマンスモードから省電力モードに移行させる。これにより、被験者Pの意思に応じてバッテリ消費を抑制できる。
【0051】
またバッテリ残量が所定値(例えば20%以下)となった場合(図4No.6)、判定部21は無線通信部22をハイパフォーマンスモードから省電力モードに強制的に切り替えてもよい。一般的に、生体情報測定装置1では連続的にバイタルサインを測定できることが望ましい。バッテリ残量が少ない場合に消費電力の大きい音声データに関する処理を抑制することにより、生体情報測定装置1は長期的なバイタルサインの測定を行うことができる。
【0052】
音声データに関する処理が一定時間以上行われていない場合(図4No.7)、判定部21は無線通信部22をハイパフォーマンスモードから省電力モードに切り替える。これにより、不必要なバッテリ消費を抑制することができる。
【0053】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は既に述べた実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることはいうまでもない。
【0054】
なお測定部11及び制御部18の処理の少なくとも一部は、生体情報測定装置1内において実行されるコンピュータプログラムとして実現することができる。また各種センサ(転倒センサ12、速度センサ13、温度センサ14、照度センサ15)の処理の一部についても生体情報測定装置1内において実行されるコンピュータプログラムとして実現することができる。
【0055】
ここでプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD−ROM(Read Only Memory)、CD−R、CD−R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(random access memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【符号の説明】
【0056】
1 生体情報測定装置
11 測定部
12 転倒センサ
13 速度センサ
14 温度センサ
15 照度センサ
16 マイク
17 スピーカ
18 制御部
19 メモリ
20 表示部
21 判定部
22 無線通信部
30 各種センサ
P 被験者
図1
図2
図3
図4
図5