【実施例】
【0043】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
なお、生成物の分析はいずれもプロトン核磁気共鳴スペクトル(以下、「
1H NMR分析」という)によって行った。
装置:日本電子株式会社製 EX―270(270 MHz for
1H)
【0044】
実施例1
<手順1>
二ロナスフラスコに酢酸パラジウム(II)(5.4mg,0.024mmol)、トリ−tert−ブチルホスホニウムテトラフルオロボラート(20.9mg,0.072mmol)及び5−ブロモ−7,7,13,13−テトラメチル−7H,13H−ベンゾ[g]インデノ[3,2−b]フルオレン(527mg,1.2mmol),ナトリウム−tert−ブトキシド(231mg,2.4mmol)を入れて窒素置換をした後にo−キシレン(12mL)を加え、120℃で12時間撹拌した。反応の進行をTLC(ヘキサン/酢酸エチル=19/1)で確認し、反応終了確認後、水により反応を停止させ、酢酸エチルを用いて抽出を行った。抽出した有機層は硫酸マグネシウムにて乾燥し、濾過後、濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=19/1)によって単離精製し、494mg(収率:95%)の5−tert−ブトキシ−7,7,13,13−テトラメチル−7H,13H−ベンゾ[g]インデノ[3,2−b]フルオレンを黄色の固体として得た。生成物は
1HNMR分析によって確認した。
1H NMR:δ1.54(s,9H),1.62(s,6H),1.65(s,6H),7.26(s,1H),7.35(q,J=7.6Hz,2H),7.45(dd,J=7.6,165 Hz,2H),7.74(t,J=7.6Hz,1H),7.78(d,J=7.3 Hz,lH),7.82(s,1H),8.62(s,1H),8.37(d,J=8.6 Hz,1H),8.76(d,J =8.6 Hz,1H)
【0045】
<手順2>
バイアル管に5−tert−ブトキシ−7,7,13,13−テトラメチル−7H,13H−ベンゾ[g]インデノ[3,2−b]フルオレン(130mg,0.30mmol)を入れ、テトラヒドロフラン(2.0mL)を加え、濃硫酸(0.16mL,3.0mmol)を滴下して室温で3時間撹拌した。反応の進行をTLC(ヘキサン/酢酸エチル=9/1)で確認し、反応終了確認後、20%水酸化ナトリウム水溶液で反応を停止させて酢酸エチルを用いて抽出を行った。抽出した有機層は硫酸マグネシウムにて乾燥し、濾過後、濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=9/1to4/1)によって単離精製して、95mg(84%)の5−ヒドロキシ−7,7,13,13−テトラメチル−7H,13H−ベンゾ[g]インデノ[3,2−b]フルオレン(8)を薄赤色の固体として得た。生成物は
1H NMR分析によって確認した。
1H NMR:δ1.43(s,6H),1.49(s,6H),7.04(s,1H),7.19(quin,J=7.2Hz,2H),7.39(t,J=7.6Hz,2H),7.55(t,J=7.6Hz,1H),7.71(d,J=6.8Hz,1H),7.88(s,1H),8.26(d,J=8.4Hz,1H),8.32(s,1H),8.78(d,J=8.6Hz,1H),9.11(br,1H)
【0046】
【化8】
【0047】
【化9】
【0048】
<手順3>
バイアル管に5−ヒドロキシ−7,7,13,13−テトラメチル−7H,13H−ベンゾ[g]インデノ[3,2−b]フルオレン(8)(50mg,0.13mmol)、1,1−ビス(4−メトキシフェニル)プロピ−2−イル−1−オル(9)(35mg,0.13mmol)、p−トルエンスルホン酸1水和物(1.0mg,0.0053mmol)を入れ、テフロン(登録商標)製セプタムキャップで密閉して窒素置換をしてトルエン(1.3mL)を加えた後、0℃で12時間撹拌した。反応の進行をTLC(ヘキサン/酢酸エチル=9/1)で確認し、反応終了確認後、炭酸水素ナトリウム水溶液で反応を停止させ、酢酸エチルを用いて抽出を行った。抽出した有機層は硫酸マグネシウムにて乾燥し、濾過後、濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=19/1〜9/1)によって単離精製して64mg(77%)の3,3−ジ(4−メトキシフェニル)−10,10,16,16−テトラメチル−3H,10H,16H−ベンゾ[3,4]インデノ[2',3’:6,7]フルオレノ[1,2−b]ピラン(10)を深緑色の固体として得た。生成物は
1H NMR分析によって確認した。
1H NMR:δ1.59(s,6H),1.72(s,6H),3.75(s,6H),6.23(d,J=10.0Hz,1H),6.82(d,J=8.6Hz,1H),7.25−7.35(m,3H),7.44(d,J=8.6Hz,5H),7.51(d,J=7.6Hz,1H),7.63(t,J=7.6Hz),7.75−7.77(m,2H),8.19(s,1H),8.46(d,J=8.1Hz,1H),8.71(d,J=8.1Hz,1H)
【0049】
【化10】
【0050】
実施例2
実施例1における<手順3>の基質である、1,1−ビス(4−メトキシフェニル)プロピ−2−イル−1−オル(9)(35mg,0.13mmol)(プロパルギルアルコール誘導体)を下記1,1−ビスフェニルプロピ−2−イル−1−オル(11)(27mg,0.13mmol)に変更した以外は、実施例1と同じ条件下で反応を行った。
【0051】
【化11】
【0052】
得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=19/1〜9/1)によって単離精製して38mg(収率:51%)の3,3−ジフェニル−10,10,16,16−テトラメチル−3H,10H,16H−ベンゾ[3,4]インデノ[2',3’:6,7]フルオレノ[1,2−b]ピラン(12)を黄色の固体として得た。
【0053】
生成物は
1H NMR分析によって確認した。
1H NMR:δ1.59(s,6H),1.72(s,6H),6.30(d,J=10.0Hz,1H),7.20−7.70(m,9H),7.45(d,J=14.9Hz,1H),7.53−7.62(m,5H),7.64(t,J=7.4Hz),7.75−7.77(m,2H),8.19(s,1H),8.51(d,J=8.1Hz),8.72(d,J=8.6Hz)
【0054】
【化12】
【0055】
実施例3
実施例1における<手順3>の基質である、1,1−ビス(4−メトキシフェニル)プロピ−2−イル−1−オル(9)(35mg,0.13mmol)(プロパルギルアルコール誘導体)を1,1−ビス(4−フルオロフェニル)プロピ−2−イル−1−オル(13)(32mg,0.13mmol)に変更した以外は、実施例1と同じ条件下で反応を行った。
【0056】
【化13】
【0057】
得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=19/1〜9/1)によって単離精製して66mg(収率:84%)の3,3−ジ(4−フルオロフェニル)−10,10,16,16−テトラメチル−3H,10H,16H−ベンゾ[3,4]インデノ[2',3’:6,7]フルオレノ[1,2−b]ピラン(14)を黄色の固体として得た。
【0058】
生成物は
1H NMR分析によって確認した。
1H NMR:δ1.59(s,6H),1.71(s,6H),6.21(d,J=10.0Hz,1H),6.99(t,J= 8.6Hz,4H),7.30−7.38(m,3H),7.44−7.56(m,6H),7.67(t,J=7.7Hz,1H),7.76−7.78(m,2H),8.20(s,1H),8.43(d,J=8.1Hz,1H),8.73(d,J=8.4Hz,1H)
【0059】
【化14】
【0060】
実施例4
実施例1における<手順3>の基質である、1,1−ビス(4−メトキシフェニル)プロピ−2−イル−1−オル(9)(35mg,0.13mmol)(プロパルギルアルコール誘導体)を下記1,1−ビス(4−tert−ブチルフェニル)プロピ−2−イル−1−オル(15)(40mg,0.13mmol)に変更した以外は、実施例1と同じ条件下で反応を行った。
【0061】
【化15】
【0062】
得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=19/1〜9/1)によって単離精製して67mg(収率:76%)の3,3−ジ(4−tert−ブチルフェニル)−10,10,16,16−テトラメチル−3H,10H,16H−ベンゾ[3,4]インデノ[2',3’:6,7]フルオレノ[1,2−b]ピラン(16)を黄色の固体として得た。
【0063】
生成物は
1H NMR分析によって確認した。
1H NMR:δ1.27(s,18H),1.59(s,3H),1.72(s,3H),6.23(d,J=10.3Hz,1H),7.30−7.38(m,7H),7.45(d,J=8.4Hz,5H),7.53(d,J=7.8Hz,1H),7.66(t,J=7.3Hz,1H),7.75−7.77(m,2H),8.20(s,1H),8.52(d,J=8.1Hz,1H),8.72(d,J=8.6Hz,1H)
【0064】
【化16】
【0065】
比較例1
実施例1における<手順3>の基質である、5−ヒドロキシ−7,7,13,13−テトラメチル−7H,13H−ベンゾ[g]インデノ[3,2−b]フルオレン(8)(50mg,0.13mmol)(ヒドロキシフルオレン誘導体)を下記5−ヒドロキシ−7,7−ジメチル−7H−ベンゾ[c]フルオレン(17)(34mg,0.13mmol)に変更した以外は、実施例1と同じ条件下で反応を行った。
【0066】
【化17】
【0067】
得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=19/1〜9/1)によって単離精製して54mg(収率:82%)の3,3−ジ(4−メトキシフェニル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2',3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン(18)を深紫色の固体として得た。
生成物は
1H NMR分析によって確認した。
1H NMR:δ1.67(s,6H),3.77(s,6H),6.30(d,J=10.0Hz,1H),6.85−6.88(m,4H),7.30−7.55(m,9H),7.63(dt,J=1.2Hz,8.0Hz,1H),8.22(d,J=8.0Hz,1H),8.46(d,J=8.4Hz,1H),8.67(d,J=8.4Hz,1H)
【0068】
【化18】
【0069】
以上の実施例、比較例の結果を表1に示した。
【0070】
【表1】
【0071】
<フォトクロミック特性の評価>
実施例1〜4及び比較例1で得られた化合物をクロロホルムに溶解させ、0.05mMの濃度に調製し、この溶液を光路長1mmの石英セルに入れて試料とした。これにオプトコード株式会社製のUVライトを60秒間照射し発色させ、株式会社島津製作所製の分光光度計(紫外可視近赤外分光光度計UV−3100)により、前記試料の可視光領域(400nm〜750nm)における極大吸収波長(λmax)を測定した。
【0072】
その後、前記極大吸収波長においてUVライトを60秒間照射した後の吸光度(ABS)及び退色速度を測定し、その吸光度よりモル吸光係数を算出した。
退色速度(T
1/2)とはUVライトの照射を止めたときに、試料の前記極大吸収波長において最も高い吸光度の2分の1に達するまでの時間を秒で表すものである。
以上の結果を表2に示した。
【0073】
【表2】
【0074】
表2のデータは、本発明の実施例が対応する比較例に対して、一定の退色速度を保ちつつ発色濃度を向上させていることを示す。