特許第6598574号(P6598574)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6598574
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】二官能化ポリマー
(51)【国際特許分類】
   C08C 19/25 20060101AFI20191021BHJP
   C08F 2/38 20060101ALI20191021BHJP
【FI】
   C08C19/25
   C08F2/38
【請求項の数】9
【外国語出願】
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2015-160096(P2015-160096)
(22)【出願日】2015年8月14日
(65)【公開番号】特開2016-44305(P2016-44305A)
(43)【公開日】2016年4月4日
【審査請求日】2018年5月10日
(31)【優先権主張番号】14/462,967
(32)【優先日】2014年8月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513158760
【氏名又は名称】ザ・グッドイヤー・タイヤ・アンド・ラバー・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100104374
【弁理士】
【氏名又は名称】野矢 宏彰
(72)【発明者】
【氏名】リキング・マー
(72)【発明者】
【氏名】ポール・ハリー・サンドストーム
(72)【発明者】
【氏名】エイリンダム・マズムダー
【審査官】 松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−108043(JP,A)
【文献】 特表2009−524715(JP,A)
【文献】 特開2013−216612(JP,A)
【文献】 特開2011−046644(JP,A)
【文献】 特開2000−302977(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08C 19/00 − 19/44
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二官能化エラストマーであって、1)官能性開始剤で開始されたリビングアニオン性エラストマー性ポリマーと、2)官能性重合停止剤との反応生成物を含み、
1)官能性開始剤で開始されたリビングアニオン性エラストマー性ポリマーは、少なくとも一つのジエンモノマーと任意に少なくとも一つのビニル芳香族モノマーから誘導されており、かつ式AYLiのもので、式中、Yは二価のポリマーラジカルであり、LiはYの炭素原子に結合したリチウム原子であり、そしてAは、式X:
【化1】
[式中、R15及びR16は、独立に1〜20個の炭素原子を有し、それぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基、芳香族基、置換アルキル基、置換シクロアルキル基又は置換芳香族基であるか、又はR15及びR16は、R15及びR16が共に結合している窒素と一緒になって、複素環式アミン基を構成しており、その場合R15及びR16は一緒になって4〜20個の炭素原子のアルカンジイル基又は4〜20個の炭素原子の置換アルカンジイル基を形成し、そしてR17は、共有結合、1〜20個の炭素原子のアルカンジイル基又は1〜20個の炭素原子の置換アルカンジイル基である]を有するアミン含有ラジカルであり;そして
2)官能性重合停止剤は、式I:
【化2】
[式中、Rは、C1〜C4直鎖アルキル、又はC1〜C4分枝アルカンジイルであり;
、X、Xは、独立にO、S、又は式(II)もしくは(III):
【化3】
{式中、RはC1〜C18直鎖又は分枝アルキルである}の基であり;Zは、R、−OR、又は−R−Xであり;R、Rは、独立にC1〜C18直鎖又は分枝アルキルであり;Rは、C1〜C18アルカンジイル又はジアルキルエーテルジイルであり;Xは、ハロゲン又は構造IV、V、VI、VIIもしくはVIII:
【化4】
{式中、R、R、R、R、及びR10は、独立に、H又はC1〜C8アルキルであり;R11は、C2〜C8アルカンジイルであり;R12及びR13は、独立に、H、アリール又はC1〜C8アルキルである}の基であり;Qは、N又は構造IX:
【化5】
{式中、R14は、C1〜C8アルキルである}の基である]の停止剤であることを特徴とする二官能化エラストマー。
【請求項2】
リビングアニオン性エラストマー性ポリマーが、イソプレン及びブタジエンの少なくとも一つと、任意にスチレンから誘導されることを特徴とする、請求項1に記載の官能化エラストマー。
【請求項3】
リビングアニオン性エラストマー性ポリマーが、ブタジエンとスチレンから誘導されることを特徴とする、請求項1に記載の官能化エラストマー。
【請求項4】
式Iの重合停止剤が下記構造:
【化6】
からなる群から選ばれることを特徴とする、請求項1に記載の官能化エラストマー。
【請求項5】
式Iの重合停止剤が構造:
【化7】
を有することを特徴とする、請求項1に記載の官能化エラストマー。
【請求項6】
式Iの重合停止剤が構造:
【化8】
を有することを特徴とする、請求項1に記載の官能化エラストマー。
【請求項7】
式Iの重合停止剤が構造:
【化9】
を有することを特徴とする、請求項1に記載の官能化エラストマー。
【請求項8】
式Iの重合停止剤が構造:
【化10】
を有することを特徴とする、請求項1に記載の官能化エラストマー。
【請求項9】
式Xの構造が、3−(N,N−ジメチルアミノ)−1−プロピル;3−(N,N−ジメチルアミノ)−2−メチル−1−プロピル;3−(N,N−ジメチルアミノ)−2,2−ジメチル−1−プロピル;4−(N,N−ジメチルアミノ)−1−ブチル;5−(N,N−ジメチルアミノ)−1−ペンチル;6−(N,N−ジメチルアミノ)−1−ヘキシル;8−(N,N−ジメチルアミノ)−1−プロピル;3−ピペリジノ−1−プロピル及び3−ピロリジノ−1−プロピルからなる群から選ばれることを特徴とする、請求項1に記載の官能化エラストマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(1)官能性開始剤で開始されたリビングアニオン性エラストマー性ポリマーと、(2)官能性重合停止剤との反応生成物を含む二官能化エラストマーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、官能化ポリマーに対する需要が高まっている。官能化ポリマーは、様々なリビング/制御重合技術を通じて合成できる。活性カルバニオン中心に基づくリビング重合法では、周期表のI及びII族の金属が、モノマーからポリマーへの重合を開始するのに一般に使用されている。例えば、リチウム、バリウム、マグネシウム、ナトリウム、及びカリウムは、そのような重合にしばしば利用される金属である。この種の開始剤系は、立体規則ポリマーの製造に使用できるので商業的に重要である。例えば、リチウム開始剤は、イソプレンから合成ポリイソプレンゴムへのアニオン重合を開始したり、又は1,3−ブタジエンから所望の微細構造を有するポリブタジエンゴムへの重合を開始するのに利用できる。
【0003】
そのような重合で形成されたポリマーは、重合開始に使用された金属をそれらのポリマー鎖の成長末端に有しているので、リビングポリマーと呼ばれることもある。それらがリビングポリマーと呼ばれるのは、末端金属開始剤を含有するそれらのポリマー鎖が、すべての利用可能なモノマーが使い果たされるまで成長し続ける又は生き続けるからである。そのような金属開始剤を利用して製造されたポリマーは、通常本質的に線形で、通常相当量の枝分れを含有しない構造を有している。
【0004】
本発明では、官能化ポリマーの合成について詳述する。一般に、最良のタイヤパフォーマンス特性を達成するためには官能化ポリマーが非常に望ましい。タイヤの転がり抵抗を低減し、トレッドの摩耗特性を改良するために、高弾性反発の物理的性質(低ヒステリシス)を有する官能化エラストマーがタイヤトレッド用ゴム組成物に使用されている。しかしながら、タイヤトレッドの濡れ滑り抵抗を増大するためには、比較的低い弾性反発の物理的性質(より高いヒステリシス)を有する、すなわちエネルギー損失の大きいゴム状ポリマーが、時としてそのようなトレッドゴム組成物に使用されることがある。そのような比較的矛盾した粘弾性をタイヤトレッドのゴム組成物に対して達成するためには、様々なタイプの合成及び天然ゴムのブレンド(混合物)をタイヤトレッドに利用すればよい。
【0005】
リビング重合技術によって製造された官能化ゴム状ポリマーは、典型的には、硫黄、促進剤、劣化防止剤、充填剤、例えばカーボンブラック、シリカ又はデンプン、及びその他の所望のゴム薬品と配合された後、加硫又は硬化されて有用な物品、例えばタイヤ又はパワートランスミッションベルトの形態になる。そのような硬化ゴムの物理的性質は、充填剤がゴム全体に均一に分散されている程度に依存することが確立されている。これは、すなわち、充填剤が特定のゴム状ポリマーに対して有する親和性のレベルと関連する。このことは、そのようなゴム組成物を利用して製造されるゴム物品の物理的特性を改良するのに実際的に重要となりうる。例えば、タイヤの転がり抵抗及び牽引特性は、それに利用されるゴム状ポリマーに対するカーボンブラック及び/又はシリカの親和性を改良することによって改良できる。従って、所与のゴム状ポリマーの、カーボンブラック及びシリカなどの充填剤に対する親和性を改良することは非常に望ましいであろう。
【0006】
タイヤトレッド配合物において、充填剤とゴム状ポリマー間の良好な相互作用は低いヒステリシスをもたらすので、その結果、そのようなゴム配合物を用いて製造されたタイヤは低い転がり抵抗と場合によっては改良されたトレッド摩耗を有する。60℃における低いタンデルタ値は低いヒステリシスの指標であり、その結果、60℃における低いタンデルタ値を有するそのようなゴム配合物を利用して製造されたタイヤは、通常低い転がり抵抗を示す。タイヤトレッド配合物中の充填剤とゴム状ポリマー間の良好な相互作用は、典型的には0℃における高いタンデルタ値ももたらす。これは良好な牽引特性の指標である。
【0007】
ゴムとカーボンブラック間の相互作用は、カーボンブラック表面上の酸素含有官能基とゴムとの間の物理的吸収(ファンデルワールス力)及び化学吸着の組合せによるものである(D.Rivin,J.Aron,及びA.Medalia,Rubber Chem.& Technol.41,330(1968)並びにA.Gessler,W.Hess,及びA Medalia,Plast.Rubber Process,3,141(1968)参照)。ポリマー−充填剤相互作用の改良によるヒステリシス損の低減のための様々なその他の化学変性技術も、特に溶液重合によって製造されたスチレン−ブタジエンゴム(S−SBR)に関して報告されている。これらの技術の一つでは、溶液ゴム鎖末端がアミノベンゾフェノンで変性される。これは、ポリマーとカーボンブラック表面上の酸素含有基との間の相互作用を非常に改良する(N.Nagata,Nippon Gomu Kyokaishi,62,630(1989)参照)。アニオン溶液ポリマーのスズカップリングは、別のよく使用される鎖末端変性法で、おそらくはカーボンブラック表面上のキノン基との反応の増大を通じてポリマー−充填剤相互作用を補助しているのであろう。この相互作用の効果はカーボンブラック粒子間の凝集を削減することで、それが分散の改良につながり、最終的にヒステリシスを低減する。官能化リチウム開始剤を用いる溶液重合ゴム鎖末端の官能化も使用できる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】D.Rivin,J.Aron,及びA.Medalia,Rubber Chem.& Technol.41,330(1968)
【非特許文献2】A.Gessler,W.Hess,及びA Medalia,Plast.Rubber Process,3,141(1968)
【非特許文献3】N.Nagata,Nippon Gomu Kyokaishi,62,630(1989)
【発明の概要】
【0009】
主題発明は、ゴム状リビングポリマーの末端基を官能化して、カーボンブラック及び/又はシリカなどの充填剤に対するそれらの親和性を改良することを提供する。そのような官能化ポリマーは、改良されたポリマー/充填剤相互作用が望ましいタイヤ及びその他のゴム製品の製造に有益に使用できる。タイヤトレッドコンパウンドにおいて、これは低いポリマーヒステリシスをもたらすことができ、ひいては低レベルのタイヤ転がり抵抗を提供することができる。
【0010】
本発明は、1)官能性開始剤で開始されたリビングアニオン性エラストマー性ポリマーと、2)官能性重合停止剤との反応生成物を含む二官能化エラストマーに向けられる。ここで、
1)官能性開始剤で開始されたリビングアニオン性エラストマー性ポリマーは、式AYLiのもので、式中、Yは二価のポリマーラジカルであり、LiはYの炭素原子に結合したリチウム原子であり、そしてAは、式X:
【0011】
【化1】
【0012】
[式中、R15及びR16は、独立に1〜20個の炭素原子を有し、それぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基、芳香族基、置換アルキル基、置換シクロアルキル基又は置換芳香族基であるか、又はR15及びR16は、R15及びR16が共に結合している窒素と一緒になって、複素環式アミン基を構成しており、その場合R15及びR16は一緒になって4〜20個の炭素原子のアルカンジイル基又は4〜20個の炭素原子の置換アルカンジイル基を形成し、そしてR17は、共有結合、1〜20個の炭素原子のアルカンジイル基又は1〜20個の炭素原子の置換アルカンジイル基である]を有するアミン含有ラジカルであり;そして
2)官能性重合停止剤は、式I:
【0013】
【化2】
【0014】
[式中、Rは、C1〜C4直鎖アルキル、又はC1〜C4分枝アルカンジイルであり;X、X、Xは、独立にO、S、又は式(II)もしくは(III):
【0015】
【化3】
【0016】
{式中、RはC1〜C18直鎖又は分枝アルキルである}の基であり;Zは、R、−OR、又は−R−Xであり;R、Rは、独立にC1〜C18直鎖又は分枝アルキルであり;Rは、C1〜C18アルカンジイル又はジアルキルエーテルジイルであり;Xは、ハロゲン又は構造IV、V、VI、VIIもしくはVIII:
【0017】
【化4】
【0018】
{式中、R、R、R、R、及びR10は、独立に、H又はC1〜C8アルキルであり;R11は、C2〜C8アルカンジイルであり;R12及びR13は、独立に、H、アリール又はC1〜C8アルキルである}の基であり;
Qは、N又は構造IX:
【0019】
【化5】
【0020】
{式中、R14は、C1〜C8アルキルである}の基である]の停止剤である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
1)官能性開始剤で開始されたリビングアニオン性エラストマー性ポリマーと、2)官能性重合停止剤との反応生成物を含む二官能化エラストマーを開示する。ここで、
1)官能性開始剤で開始されたリビングアニオン性エラストマー性ポリマーは、式AYLiのもので、式中、Yは二価のポリマーラジカルであり、LiはYの炭素原子に結合したリチウム原子であり、そしてAは、式X:
【0022】
【化6】
【0023】
[式中、R15及びR16は、独立に1〜20個の炭素原子を有し、それぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基、芳香族基、置換アルキル基、置換シクロアルキル基又は置換芳香族基であるか、又はR15及びR16は、R15及びR16が共に結合している窒素と一緒になって、複素環式アミン基を構成しており、その場合R15及びR16は一緒になって4〜20個の炭素原子のアルカンジイル基又は4〜20個の炭素原子の置換アルカンジイル基を形成し、そしてR17は、共有結合、1〜20個の炭素原子のアルカンジイル基又は1〜20個の炭素原子の置換アルカンジイル基である]を有するアミン含有ラジカルであり;そして
2)官能性重合停止剤は、式I:
【0024】
【化7】
【0025】
[式中、Rは、C1〜C4直鎖アルキル、又はC1〜C4分枝アルカンジイルであり;X、X、Xは、独立にO、S、又は式(II)もしくは(III):
【0026】
【化8】
【0027】
{式中、RはC1〜C18直鎖又は分枝アルキルである}の基であり;Zは、R、−OR、又は−R−Xであり;R、Rは、独立にC1〜C18直鎖又は分枝アルキルであり;Rは、C1〜C18アルカンジイル又はジアルキルエーテルジイルであり;Xは、ハロゲン又は構造IV、V、VI、VIIもしくはVIII:
【0028】
【化9】
【0029】
{式中、R、R、R、R、及びR10は、独立に、H又はC1〜C8アルキルであり;R11は、C2〜C8アルカンジイルであり;R12及びR13は、独立に、H、アリール又はC1〜C8アルキルである}の基であり;Qは、N又は構造IX:
【0030】
【化10】
【0031】
{式中、R14は、C1〜C8アルキルである}の基である]の停止剤である。
【0032】
主題発明は、官能性重合開始剤と官能性重合停止剤の両方の使用を通じてゴム状リビングポリマーの末端基を二官能化し、カーボンブラック及び/又はシリカなどの充填剤に対するそれらの親和性を改良する手段を提供する。本発明の方法は、周期表のI又はII族の金属で終端されたあらゆるリビングポリマーの官能化に使用できる。これらのポリマーは当業者に周知の技術を利用して製造できる。本発明に従って式Iの停止剤で官能化できる金属終端ゴム状ポリマーは、一般構造式P−M(式中、Pはポリマー鎖を表し、MはI又はII族の金属を表す)を有する一官能性開始剤を利用して製造できる。
【0033】
本発明に従って官能化されるリビングゴム状ポリマーの合成に使用される重合を開始するために使用される開始剤は、典型的には、バリウム、リチウム、マグネシウム、ナトリウム、及びカリウムからなる群から選ばれる。リチウム及びマグネシウムは、そのような金属終端ポリマー(リビングポリマー)の合成に最も一般的に利用される金属である。通常、リチウム開始剤がより好適である。
【0034】
有機リチウム化合物はそのような重合に利用するための好適な開始剤である。開始剤として利用される有機リチウム化合物は、通常、有機モノリチウム化合物である。開始剤として好適な有機リチウム化合物は、式:R−Li(式中、Rはヒドロカルビルラジカルを表す)によって表すことができる一官能性化合物である。本発明では、開始剤の存在下でのモノマーの重合により、式AYLiのリビングアニオン性エラストマー性ポリマーが形成される。前記式中、Yは二価のポリマーラジカルであり、LiはYの炭素原子に結合したリチウム原子であり、そしてAは、式X:
【0035】
【化11】
【0036】
[式中、R14及びR15は、独立に1〜20個の炭素原子を有し、それぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基、芳香族基、置換アルキル基、置換シクロアルキル基又は置換芳香族基であるか、又はR14及びR15は、R14及びR15が共に結合している窒素と一緒になって、複素環式アミン基を構成しており、その場合R14及びR15は一緒になって4〜20個の炭素原子のアルカンジイル基又は4〜20個の炭素原子の置換アルカンジイル基を形成し、そしてR16は、共有結合、1〜20個の炭素原子のアルカンジイル基又は1〜20個の炭素原子の置換アルカンジイル基である]を有するアミン含有ラジカルである。従って、開始剤は式R−Liで、Rが式Xの構造によって置換されたものである。
【0037】
一態様において、有機リチウム開始剤は、N,N−ジアルキルアミノアルキルリチウムで、例えば、3−(N,N−ジメチルアミノ)−1−プロピルリチウム、3−(N,N−ジメチルアミノ)−2−メチル−1−プロピルリチウム、3−(N,N−ジメチルアミノ)−2,2−ジメチル−1−プロピルリチウム、4−(N,N−ジメチルアミノ)−1−ブチルリチウム、5−(N,N−ジメチルアミノ)−1−ペンチルリチウム、6−(N,N−ジメチルアミノ)−1−ヘキシルリチウム、8−(N,N−ジメチルアミノ)−1−プロピルリチウムなどである。この態様に対応して、式Xにおける基の構造は、N,N−ジアルキルアミノアルキルで、例えば、3−(N,N−ジメチルアミノ)−1−プロピル、3−(N,N−ジメチルアミノ)−2−メチル−1−プロピル、3−(N,N−ジメチルアミノ)−2,2−ジメチル−1−プロピル、4−(N,N−ジメチルアミノ)−1−ブチル、5−(N,N−ジメチルアミノ)−1−ペンチル、6−(N,N−ジメチルアミノ)−1−ヘキシル、8−(N,N−ジメチルアミノ)−1−プロピルなどである。
【0038】
一態様において、有機リチウム開始剤は、アザシクロアルキルアルキルリチウム、例えば、3−ピペリジノ−1−プロピルリチウム、3−ピロリジノ−1−プロピルリチウムなどである。この態様に対応して、式Xにおける基の構造は、3−ピペリジノ−1−プロピル、3−ピロリジノ−1−プロピルなどである。一態様において、基は3−ピロリジノ−1−プロピルで、開始剤は3−ピロリジノ−1−プロピルリチウムである。
【0039】
利用される有機リチウム開始剤の量は、合成されるゴム状ポリマーに所望される分子量のほか、使用される正確な重合温度によっても変動する。所望分子量のポリマーを製造するのに必要とされる有機リチウム化合物の正確な量は、当業者であれば容易に求めることができる。しかしながら、通則として、0.01〜1phm(100重量部のモノマーあたりの部)の有機リチウム開始剤が利用されることになろう。ほとんどの場合、0.01〜0.1phmの有機リチウム開始剤が利用され、0.025〜0.07phmの有機リチウム開始剤を利用するのが好適である。
【0040】
炭素炭素二重結合を含有する多くの種類の不飽和モノマーが、そのような金属触媒を用いてポリマーに重合できる。エラストマー性又はゴム状ポリマーは、このタイプの金属開始剤系を利用してジエンモノマーを重合することによって合成できる。合成ゴム状ポリマーに重合できるジエンモノマーは、共役ジオレフィン又は非共役ジオレフィンのいずれでもよい。4〜8個の炭素原子を含有する共役ジオレフィンモノマーが一般的には好適である。ビニル置換芳香族モノマーも、一つ又は複数のジエンモノマーと共重合させてゴム状ポリマー、例えばスチレン−ブタジエンゴム(SBR)にすることができる。ゴム状ポリマーに重合できる共役ジエンモノマーのいくつかの代表例は、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ペンタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン、及び4,5−ジエチル−1,3−オクタジエンなどである。ゴム状ポリマーの合成に利用できるビニル置換芳香族モノマーのいくつかの代表例は、スチレン、1−ビニルナフタレン、3−メチルスチレン、3,5−ジエチルスチレン、4−プロピルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、4−ドデシルスチレン、3−メチル−5−ノルマル−ヘキシルスチレン、4−フェニルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、3,5−ジフェニルスチレン、2,3,4,5−テトラエチルスチレン、3−エチル−1−ビニルナフタレン、6−イソプロピル−1−ビニルナフタレン、6−シクロヘキシル−1−ビニルナフタレン、7−ドデシル−2−ビニルナフタレン、α−メチルスチレンなどである。
【0041】
本発明に従って式Iの停止剤で官能化される金属終端ゴム状ポリマーは、一般的に、飽和脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、又はエーテルなどの不活性有機溶媒を利用する溶液重合によって製造される。そのような溶液重合に使用される溶媒は、通常1分子あたり約4〜約10個の炭素原子を含有し、重合条件下で液体である。適切な有機溶媒のいくつかの代表例は、ペンタン、イソオクタン、シクロヘキサン、ノルマル−ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、テトラヒドロフランなどで、これらを単独で又は混合して使用する。例えば、溶媒は異なるヘキサン異性体の混合物でもよい。そのような溶液重合はポリマーセメント(高粘性ポリマー溶液)の形成をもたらす。
【0042】
本発明の実施に利用される金属終端リビングゴム状ポリマーは、実質的に任意の分子量であってよい。しかしながら、リビングゴム状ポリマーの数平均分子量は、典型的には約50,000〜約500,000の範囲内であろう。そのようなリビングゴム状ポリマーは、100,000〜250,000の範囲内の数平均分子量を有するのが、より典型的である。
【0043】
金属終端リビングゴム状ポリマーは、単に化学量論量の式Iの停止剤をゴム状ポリマーの溶液(リビングポリマーのゴム状セメント)に添加することによって官能化することができる。言い換えれば、リビングゴム状ポリマー中の末端金属基1モルあたり約1モルの式Iの停止剤を添加する。そのようなポリマーの金属末端基のモル数は、開始剤に利用された金属のモル数であると推定される。当然ながら、化学量論量より多い式Iの停止剤を添加することも可能である。しかしながら、より多量の利用は最終ポリマーの性質に有益でない。それでも、多くの場合、少なくとも化学量論量が実際に使用されることを確実にするため又は官能化反応の化学量論を制御するために、わずかに過剰の式Iの停止剤を利用するのが望ましいであろう。ほとんどの場合、処理されるリビングポリマー中の金属末端基1モルあたり約1.2〜約2モルの式Iの停止剤が利用される。万一、ゴム状ポリマーの金属終端鎖末端のすべてを官能化することが所望でない場合、当然ながら、より少量の式Iの停止剤を利用することもできる。
【0044】
式Iの停止剤は、金属終端リビングゴム状ポリマーと非常に広い温度範囲にわたって反応する。実用的理由から、そのようなリビングゴム状ポリマーの官能化は通常0℃〜150℃の範囲内の温度で実施される。反応速度を増大するために、ほとんどの場合、20℃〜100℃の範囲内の温度を利用するのが好適で、50℃〜80℃の範囲内の温度が最も好適である。キャッピング反応は非常に迅速で、通常0.1〜2時間の範囲内のごく短い反応時間しか必要としない。しかしながら、場合によっては、最大変換を確実にするために約24時間までの反応時間を使用することもある。
【0045】
一態様において、式Iの停止剤は、表1に示されている構造の一つを有する。
【0046】
【表1】
【0047】
ESTE:1−エトキシ−2,8,9−トリオキサ−5−アザ−1−シラビシクロ[3.3.3]ウンデカン、又はエトキシシラトラン
ESTI:1−エトキシ−3,7,10−トリメチル−2,8,9−トリオキサ−5−アザ−1−シラビシクロ[3.3.3]ウンデカン、又は1−エトキシ−3,7,10−トリメチルシラトラン
ESTM:1−エトキシ−4−メチル−2,6,7−トリオキサ−1−シラビシクロ[2.2.2]オクタン
BSTI:1−イソブチル−3,7,10−トリメチル−2,8,9−トリオキサ−5−アザ−1−シラビシクロ[3.3.3]ウンデカン、又は1−イソブチル−3,7,10−トリメチルシラトラン
OSTI:1−オクチル−3,7,10−トリメチル−2,8,9−トリオキサ−5−アザ−1−シラビシクロ[3.3.3]ウンデカン、又は1−オクチル−3,7,10−トリメチルシラトラン
CSTI:1−(3−クロロプロピル)−3,7,10−トリメチル−2,8,9−トリオキサ−5−アザ−1−シラビシクロ[3.3.3]ウンデカン、又は1−(3−クロロプロピル)−3,7,10−トリメチルシラトラン
BIPOS:1,2−ビス(3,7,10−トリメチル−2,8,9−トリオキサ−5−アザ−1−シラビシクロ[3.3.3]ウンデカン−1−イル)エタン、又は1,2−ビス(3,7,10−トリメチルシラトラン)エタン
BIDECS:1,1’−(デカン−1,2−ジイル)ビス(3,7,10−トリメチル−2,8,9−トリオキサ−5−アザ−1−シラビシクロ[3.3.3]ウンデカン)、又は1,1’−(デカン−1,2−ジイル)ビス(3,7,10−トリメチルシラトラン)
BIOCTS:1,8−ビス(3,7,10−トリメチル−2,8,9−トリオキサ−5−アザ−1−シラビシクロ[3.3.3]ウンデカン−1−イル)オクタン、又は1,8−ビス(3,7,10−トリメチルシラトラン)オクタン
DMASTI:N,N−ジメチル−3−(3,7,10−トリメチル−2,8,9−トリオキサ−5−アザ−1−シラビシクロ[3.3.3]ウンデカン−1−イル)プロパン−1−アミン
PYSTI:3,7,10−トリメチル−1−(3−(ピロリジン−1−イル)プロピル)−2,8,9−トリオキサ−5−アザ−1−シラビシクロ[3.3.3]ウンデカン
BIMSTI:N−ベンジリデン−3−(3,7,10−トリメチル−2,8,9−トリオキサ−5−アザ−1−シラビシクロ[3.3.3]ウンデカン−1−イル)プロパン−1−アミン
ETTS:1−エトキシ−2,8,9−トリチア−5−アザ−1−シラビシクロ[3.3.3]ウンデカン;又は1−エトキシ−チオシラトラン
ETAS:1−エトキシ−2,8,9−トリメチル−2,5,8,9−テトラアザ−1−シラビシクロ[3.3.3]ウンデカン;又は1−エトキシ−2,8,9−トリアザシラトラン
EPTI:3,7,10−トリメチル−1−(3−(オキシラン−2−イルメトキシ)プロピル)−2,8,9−トリオキサ−5−アザ−1−シラビシクロ[3.3.3]ウンデカン;又は1−(3−(オキシラン−2−イルメトキシ)プロピル)−3,7,10−トリメチルシラトラン
官能化反応の完了後、残存しているリビングポリジエン鎖があれば、それを“止める”のが通常望ましいであろう。これは、メタノール又はエタノールなどのアルコールを官能化反応の完了後にポリマーセメントに添加し、式Iの停止剤との反応によって消費されなかった何らかのリビングポリマーを除去することによって達成できる。その後、末端基官能化ポリジエンゴムは、標準技術を用いて溶液から回収できる。
【0048】
本発明を以下の実施例によって例示するが、下記実施例は単に例示を目的としたものであって、本発明の範囲又はそれが実施されうる様式の制限と見なされてはならない。特に明記しない限り、部及びパーセンテージは重量によって示されている。
【実施例】
【0049】
実施例1.
本実施例では、非官能化エラストマーのパイロット規模の重合を例示する。重合は60ガロンの反応器内65℃で実施された。スチレンとブタジエン(113.5kg、12wt%)のプレミックスをヘキサンと共に反応器に装入し、次いで変性剤(TMEDA、39〜43mL)及び開始剤(n−ブチルリチウム、52〜63mL、15wt%)を加えた。変換率が98%を超えたら、重合をイソプロパノールで停止させた。得られた非官能化エラストマーを対照サンプル1と呼ぶ。
【0050】
実施例2.
本実施例では、官能性開始剤を用いて得られた末端官能化エラストマーのパイロット規模の重合を例示する。
【0051】
重合は60ガロンの反応器内65℃で実施された。スチレンとブタジエン(113.5kg、12wt%)のモノマープレミックスを溶媒としてのヘキサンと共に反応器に装入し、次いで変性剤(TMEDA、39〜43mL)及び官能性開始剤(3−ピロリジノ−1−プロピルリチウム、200〜250mL、5.75wt%)を加えた。変換率が98%を超えたら、重合をイソプロパノールで停止させた。得られた一官能化エラストマーを比較サンプル2と呼ぶ。
【0052】
実施例3.
本実施例では、官能性停止剤を用いて得られた末端官能化エラストマーのパイロット規模の重合を例示する。
【0053】
重合に使用された官能性停止剤は以下のように製造された。トリイソプロパノールアミン(253.0g、Aldrich社製)、テトラエチルシリケート(289g、Aldrich社製)及び水酸化カリウム(3.7g、Aldrich社製)を、蒸留装置を備えた1リットル入り三つ口丸底フラスコ中で混合した。次に、混合物を加熱マントルにより85℃に加熱し、反応から生じたエタノールを200mmHgの減圧下で除去した。2時間の反応後、圧力を100mmHgにセットし、混合物をさらに1時間120℃に加熱した。合計230mLのエタノールが蒸留から回収された。次に、油性粗生成物を、〜2mmHgの圧力及び120℃の温度下で留出させた。合計305g(収率88.2%)の白色結晶固体、1−エトキシ−3,7,10−トリメチルシラトラン(ESTI)が得られた。HNMR及び13CNMRの分光分析により、所望生成物の95%を超える純度が示された。m.p.80〜83℃。
【0054】
溶液SBRの重合は60ガロンの反応器内65℃で実施された。スチレンとブタジエン(113.5kg、12wt%)のモノマープレミックスを溶媒としてのヘキサンと共に反応器に装入し、次いで変性剤(TMEDA、39〜43mL)及び開始剤(n−ブチルリチウム、52〜63mL、15wt%)を加えた。変換率が98%を超えたら、重合を官能性停止剤1−エトキシ−3,7,10−トリメチルシラトラン(ESTI)で停止させた。得られた一官能化エラストマーを比較サンプル3と呼ぶ。
【0055】
実施例4.
本実施例では、両鎖末端が官能化された二官能化エラストマーのパイロット規模の重合を例示する。二官能化エラストマーは、官能性開始剤と官能性停止剤を用いて得られた。
【0056】
重合は60ガロンの反応器内65℃で実施された。スチレンとブタジエン(113.5kg、12wt%)のモノマープレミックスを、溶媒としてのヘキサンと共に反応器に装入し、次いで変性剤(TMEDA、39〜43mL)及び官能性開始剤(3−ピロリジノ−1−プロピルリチウム、200〜250mL、5.75wt%)を加えた。変換率が98%を超えたら、重合を官能性停止剤1−エトキシ−3,7,10−トリメチルシラトラン(ESTI)で停止させた。得られた二官能化エラストマーを発明サンプル4と呼ぶ。
【0057】
実施例5.
実施例1〜4のポリマーを、様々な技術を用いて特徴付けした。例えば、分子量の決定についてはサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、Tgの決定については動的走査熱量測定(dynamic scanning calorimetry)(DSC、10℃/分での変曲点)、シス、トランス、スチレン及びビニル含量の決定についてはIR、及びムーニー粘度の測定。結果を表2及び3に示す。実施例1の非官能化SBRであるサンプル1を対照とした。官能性開始剤を用いて得られた実施例2の一官能化SBRであるサンプル2を比較とした。官能性停止剤を用いて得られた実施例3の一官能化SBRであるサンプル3も比較とした。官能性開始剤と官能性停止剤の両方を用いて得られた実施例4の二官能化SBRであるサンプル4が本発明を表す。
【0058】
【表2】
【0059】
非官能化SBR(実施例1)
ピロリジノプロピルリチウム(PPL)で開始された官能化SBR(実施例2)
1−エトキシ−3,7,10−トリメチルシラトラン(ESTI)で停止された官能化SBR(実施例3)
PPLで開始され、ESTIで停止された官能化SBR(実施例4)
【0060】
【表3】
【0061】
ビニル含量は、全ポリマー重量を基にした重量パーセントとして表されている。
【0062】
スチレン含量約18パーセント、ビニル含量約10パーセント、及びTg約−72℃を有する、これらのポリマーの低ビニル及び低Tg類似体も合成された。
【0063】
主題発明を例示する目的で一定の代表的態様及び詳細を示してきたが、主題発明の範囲から逸脱することなく、その中で多様な変更及び修正が可能であることは当業者には明らかであろう。
【0064】
[発明の態様]
1.二官能化エラストマーであって、1)官能性開始剤で開始されたリビングアニオン性エラストマー性ポリマーと、2)官能性重合停止剤との反応生成物を含み、
1)官能性開始剤で開始されたリビングアニオン性エラストマー性ポリマーは、式AYLiのもので、式中、Yは二価のポリマーラジカルであり、LiはYの炭素原子に結合したリチウム原子であり、そしてAは、式X:
【0065】
【化12】
【0066】
[式中、R15及びR16は、独立に1〜20個の炭素原子を有し、それぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基、芳香族基、置換アルキル基、置換シクロアルキル基又は置換芳香族基であるか、又はR15及びR16は、R15及びR16が共に結合している窒素と一緒になって、複素環式アミン基を構成しており、その場合R15及びR16は一緒になって4〜20個の炭素原子のアルカンジイル基又は4〜20個の炭素原子の置換アルカンジイル基を形成し、そしてR17は、共有結合、1〜20個の炭素原子のアルカンジイル基又は1〜20個の炭素原子の置換アルカンジイル基である]を有するアミン含有ラジカルであり;そして
2)官能性重合停止剤は、式I:
【0067】
【化13】
【0068】
[式中、Rは、C1〜C4直鎖アルキル、又はC1〜C4分枝アルカンジイルであり;
、X、Xは、独立にO、S、又は式(II)もしくは(III):
【0069】
【化14】
【0070】
{式中、RはC1〜C18直鎖又は分枝アルキルである}の基であり;Zは、R、−OR、又は−R−Xであり;R、Rは、独立にC1〜C18直鎖又は分枝アルキルであり;Rは、C1〜C18アルカンジイル又はジアルキルエーテルジイルであり;Xは、ハロゲン又は構造IV、V、VI、VIIもしくはVIII:
【0071】
【化15】
【0072】
{式中、R、R、R、R、及びR10は、独立に、H又はC1〜C8アルキルであり;R11は、C2〜C8アルカンジイルであり;R12及びR13は、独立に、H、アリール又はC1〜C8アルキルである}の基であり;Qは、N又は構造IX:
【0073】
【化16】
【0074】
{式中、R14は、C1〜C8アルキルである}の基である]の停止剤である、二官能化エラストマー。
【0075】
2.リビングアニオン性エラストマーが、少なくとも一つのジエンモノマーと任意に少なくとも一つのビニル芳香族モノマーから誘導される、1記載の官能化エラストマー。
【0076】
3.リビングアニオン性エラストマーが、イソプレン及びブタジエンの少なくとも一つと、任意にスチレンから誘導される、1記載の官能化エラストマー。
【0077】
4.リビングアニオン性エラストマーが、ブタジエンとスチレンから誘導される、1記載の官能化エラストマー。
【0078】
5.式Iの重合停止剤が、ESTI、1−エトキシ−3,7,10−トリメチルシラトランである、1記載の官能化エラストマー。
【0079】
6.式Iの重合停止剤が、CSTI、1−(3−クロロプロピル)−3,7,10−トリメチルシラトランである、1記載の官能化エラストマー。
【0080】
7.式Iの重合停止剤が、BSTI、1−イソブチル−3,7,10−トリメチルシラトランである、1記載の官能化エラストマー。
【0081】
8.式Iの重合停止剤が、OSTI、1−オクチル−3,7,10−トリメチルシラトランである、1記載の官能化エラストマー。
【0082】
9.式Iの重合停止剤が、BIPOS、1,2−ビス(3,7,10−トリメチルシラトラン)エタンである、1記載の官能化エラストマー。
【0083】
10.式Iの重合停止剤が下記構造:
【0084】
【化17】
【0085】
からなる群から選ばれる、1記載の官能化エラストマー。
【0086】
11.式Iの重合停止剤が構造:
【0087】
【化18】
【0088】
を有する、1記載の官能化エラストマー。
【0089】
12.式Iの重合停止剤が構造:
【0090】
【化19】
【0091】
を有する、1記載の官能化エラストマー。
【0092】
13.式Iの重合停止剤が構造:
【0093】
【化20】
【0094】
を有する、1記載の官能化エラストマー。
【0095】
14.式Iの重合停止剤が構造:
【0096】
【化21】
【0097】
を有する、1記載の官能化エラストマー。
【0098】
15.式Xの構造が、3−(N,N−ジメチルアミノ)−1−プロピル、3−(N,N−ジメチルアミノ)−2−メチル−1−プロピル、3−(N,N−ジメチルアミノ)−2,2−ジメチル−1−プロピル、4−(N,N−ジメチルアミノ)−1−ブチル、5−(N,N−ジメチルアミノ)−1−ペンチル、6−(N,N−ジメチルアミノ)−1−ヘキシル、及び8−(N,N−ジメチルアミノ)−1−プロピルからなる群から選ばれる、1記載の官能化エラストマー。
【0099】
16.式Xの構造が、3−ピペリジノ−1−プロピル及び3−ピロリジノ−1−プロピルからなる群から選ばれる、1記載の官能化エラストマー。