(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記上下位置の調整を無段階又は有段階で規制すると共に、前記前枕部に対して予め設定された値以上の上下方向の外力が加えられることにより前記規制を解除する規制機構を備えた請求項1に記載のヘッドレスト。
前記前枕部は、左右方向の両サイド部が、左右方向の中間部に対して、左右一対の上下に延びる軸回りに回動されることにより、前記中間部に対する前記両サイド部の前方側への迫出し量を調整可能とされている請求項1又は請求項2に記載のヘッドレスト。
前記上下に延びる軸は、前記前枕部の上下方向に対して、下方側へ向かうほど前記前枕部の左右方向中央側へ向かうように傾斜している請求項3に記載のヘッドレスト。
前記前枕部は、クッション材であるパッド材を有し、当該パッド材の少なくとも前部における上部側が下部側に比して高硬度に形成されている請求項1〜請求項4の何れか1項に記載のヘッドレスト。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両用シートに着座した乗員の快適性を向上させるためには、乗員の後頭部から頸部までの広い範囲をヘッドレストによって支持することが好ましい。この点、上記構成のヘッドレストでは、前枕部が後枕部に対して上端部を中心として前方側へ回転可能であるため、前枕部の前面が乗員の後頭部から頸部に沿うように前枕部の角度を調整することができる。しかしながら、前枕部の角度調整に伴って、前枕部の前面と後頭部との距離(所謂バックセット)が大きく変化してしまう。その結果、前枕部が後頭部に近すぎて鬱陶しい、又は前枕部が後頭部から遠すぎて後頭部が前枕部に当たり難いといったことから、乗員の快適性が損なわれる可能性がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、乗員の快適性を向上させることができるヘッドレスト及び車両用シートを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明に係るヘッドレストは、車両用シートのシートバックの上方側に配設される後枕部と、前記後枕部の前方側に取り付けられ、側面視で後方側へ凸をなす曲線状の軌跡に沿ったスライドにより、前記後枕部に対する上下位置を調整可能とされた前枕部と、を備え
、前記前枕部は、前記前枕部の下端が前記シートバックの上端よりも下方側に位置する快適使用位置へとスライド可能とされている。
【0007】
請求項1に記載のヘッドレストでは、車両用シートのシートバックの上方側に配設される後枕部の前方側に前枕部が取り付けられている。この前枕部は、側面視で後方側へ凸をなす曲線状の軌跡に沿ったスライドにより、後枕部に対する上下の位置を調整可能とされている。これにより、乗員の後頭部から頸部にかけての曲面に沿わせて前枕部の上下位置を調整することができるので、後頭部から頸部までの広い範囲が前枕部によって支持される位置へと前枕部を移動させることができる。しかも、前枕部の上下位置調整によって、前枕部の前面と後頭部との距離(バックセット)が変化することを抑制できる。これにより、乗員の快適性を向上させることが可能になる。
【0008】
請求項2に記載の発明に係るヘッドレストは、請求項1において、前記上下位置の調整を無段階又は有段階で規制すると共に、前記前枕部に対して予め設定された値以上の上下方向の外力が加えられることにより前記規制を解除する規制機構を備えている。
【0009】
請求項2に記載のヘッドレストでは、後枕部に対する前枕部の上下位置の調整が、規制機構によって無段階又は有段階で規制される。この規制機構では、前枕部に対して予め設定された値以上の上下方向の外力が加えられることにより、上記の規制が解除されるので、前枕部の上下位置調整を容易に行うことができる。
【0010】
請求項3に記載の発明に係るヘッドレストは、請求項1又は請求項2において、前記前枕部は、左右方向の両サイド部が、左右方向の中間部に対して、左右一対の上下に延びる軸回りに回動されることにより、前記中間部に対する前記両サイド部の前方側への迫出し量を調整可能とされている。
【0011】
請求項3に記載のヘッドレストでは、上記のように、前枕部の左右方向中間部に対する左右方向両サイド部の前方側への迫出し量を調整可能とされている。これにより、前枕部の左右方向両サイド部によって、乗員の少なくとも後頭部を側方から支持することが可能になるので、乗員の快適性の向上に寄与する。
【0012】
請求項4に記載の発明に係るヘッドレストは、請求項3において、前記上下に延びる軸は、前記前枕部の上下方向に対して、下方側へ向かうほど前記前枕部の左右方向中央側へ向かうように傾斜している。
【0013】
請求項4に記載のヘッドレストによれば、前枕部の左右方向中間部に対する左右方向両サイド部の前方側への迫出し量が調整される際には、左右方向両サイド部が、上記のように傾斜した一対の軸回りに前方側へ回動される。これにより、乗員の後頭部と頸部との幅寸法の違いに合わせて、前枕部の左右方向両サイド部の下部側を上部側に比し前枕部の左右方向中央側に変位させることができるので、上記両サイド部を後頭部から頸部までの広い範囲に適切にフィットさせることが可能になる。その結果、乗員の快適性の向上に一層寄与する。
【0014】
請求項5に記載の発明に係るヘッドレストは、請求項1〜請求項4の何れか1項において、前記前枕部は、クッション材であるパッド材を有し、当該パッド材の少なくとも前部における上部側が下部側に比して高硬度に形成されている。
【0015】
請求項5に記載のヘッドレストでは、前枕部のパッド材が上記のように構成されているため、例えば、乗員の頸部に対する前枕部の下部側のフィット性を向上させつつ、後頭部の支持性能を、前枕部の上部側によって確保することができる。
【0016】
請求項6に記載の発明に係るヘッドレストは、請求項1〜請求項5の何れか1項において、前記前枕部は、スライドレール部が形成されたメインフレームと、前記スライドレール部に対して摺動可能に係合したガイド部が形成されると共に、前記後枕部のフレームに取り付けられたスライドガイドと、を有し、前記スライドレール部及び前記ガイド部が、側面視で後方側へ凸をなすように湾曲している。
【0017】
請求項6に記載のヘッドレストでは、後枕部に対する前枕部の上下位置が調整される際には、前枕部のメインフレームに形成されたスライドレール部が、後枕部のフレームに取り付けられたスライドガイドのガイド部に対して摺動する。これらのスライドレール部及びガイド部は、側面視で後方側へ凸をなすように湾曲している。これにより、側面視で後方側へ凸をなす曲線状の軌跡に沿った前枕部の上下位置調整を、簡単な構成で成立させることができる。
【0018】
請求項7に記載の発明に係るヘッドレストは、
請求項1〜請求項6の何れか1項に記載のヘッドレストにおいて、前記前枕部が前記快適使用位置にスライドされた状態では、前記前枕部がトルソーラインに沿うように傾斜する。
【0019】
請求項
8に記載のヘッドレスト
は、請求項1〜請求項7の何れか1項において、前記曲線状の軌跡は、前記車両用シートに着座した乗員がAM50のダミー人形である場合、前記前枕部が前記後枕部に対してスライドした際に前記前枕部の前面と前記乗員の後頭部との距離が略一定に保たれるように設定されている。
【0020】
請求項
9に記載の発明に係る車両用シートは、シートクッション及びシートバックと、前記シートバックの上方側に配設された請求項1〜請求項
8の何れか1項に記載のヘッドレストと、を備えている。
【0021】
請求項
9に記載の車両用シートでは、シートクレームの上方側に配設されたヘッドレストが、請求項1〜請求項
8の何れか1項に記載されたものであるため、前述した作用効果を奏する。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明に係るヘッドレスト及び車両用シートでは、乗員の快適性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、
図1〜
図9を用いて、本発明の実施形態に係るヘッドレスト10及び車両用シート12について説明する。なお、各図中に適宜示される矢印FRは車両前方向を示し、矢印LHは車両左方向を示し、矢印UPは車両上方向を示している。
【0025】
(構成)
図1及び
図2に示されるように、本実施形態に係る車両用シート12は、シートバック14と、該シートバック14の上方側に配設されたヘッドレスト10とを備えている。シートバック14は、図示しないシートクッションの後端部に傾倒可能に連結されており、シートクッションに着座した乗員Pの背部を支持する構成になっている。この車両用シート12の前後左右上下の方向は、車両の前後左右上下の方向と一致している。また、
図1に示される乗員Pは、例えばAM50(米国成人男性の50パーセンタイル)のダミー人形とされている。
【0026】
上記のシートバック14は、骨格部材であるバックフレーム16に、クッション材であるバックパッド(図示省略)が被せ付けられると共に、当該バックパッドの表面が表皮材であるトリムカバー18によって覆われた構成になっている。バックフレーム16の上端部には、ヘッドレスト10を連結するための左右一対のヘッドレストサポート20が取り付けられている。
【0027】
ヘッドレスト10は、上記一対のヘッドレストサポート20を介してバックフレーム16の上端部に連結された後枕部22と、後枕部22の前方側に取り付けられた前枕部24とによって構成されている。このヘッドレスト10の前後左右上下の方向は、シートバック14の前後左右上下の方向と略一致しており、
図1及び
図2に示されるようにシートバック14が起立した状態では、車両の前後左右上下の方向と略一致する。以下、単に前後左右上下の方向を用いて説明する場合、ヘッドレスト10の方向を示すものとする。
【0028】
後枕部22は、フレーム(骨格部材)であるステーアッシー26と、クッション材であるパッド材28と、表皮材であるトリムカバー30とによって構成されている。ステーアッシー26は、ヘッドレストステー32と、リヤブラケット34とを備えている。ヘッドレストステー32は、例えば金属製のパイプが曲げ加工されることにより、略逆U字状に形成されている。このヘッドレストステー32は、下方側へ延びる左右一対の脚部32Aが、左右一対のヘッドレストサポート20を介してバックフレーム16の上端部に連結されており、バックフレーム16に対して上下位置を調整可能に支持されている。
【0029】
リヤブラケット34は、例えば板金がプレス成形されることにより形成されたものであり、溶接等の手段によって左右の脚部32Aの上端側に固定されている。このリヤブラケット34は、左右の脚部32Aよりもヘッドレスト10の前方側へ膨出している(
図6参照)。このリヤブラケット34の上端側には、左右一対の貫通孔36が形成されている。これらの貫通孔36は、ヘッドレスト10の前方側から見て矩形状に形成されている。
【0030】
また、リヤブラケット34の下端部には、ヘッドレスト10の前方側へ突出した左右一対の締結片38が形成されている。これらの締結片38には、それぞれ図示しないビス挿通孔が形成されている。さらに、リヤブラケット34の前面の中央部には、板ばね40が取り付けられている。この板ばね40は、ヘッドレスト10の上下方向を長手とする長尺状に形成されており、下端部が例えばスクリュー42によってリヤブラケット34の前面に固定されている。この板ばね40は、ヘッドレスト10の上方側かつ前方側へ延びており、上端部がヘッドレスト10の後方側へ向けて屈曲している。
【0031】
上記構成のステーアッシー26は、上部側がパッド材28に埋設されている。このパッド材28は、例えばウレタンフォーム等の発泡体によって構成されており、トリムカバー30によって表面を覆われている。このトリムカバー30は、例えば布材、皮革又は合成皮革等からなる複数の表皮片が袋状に縫製されて形成されている。このトリムカバー30の前面の中央部には、ヘッドレスト10の前方側から見て矩形状の開口部44が形成されている。この開口部44は、前述した左右の貫通孔36、左右の締結片38及び板ばね40を含むリヤブラケット34の中央側を、後枕部22の前方側(外側)へ露出させている。
【0032】
一方、前枕部24は、フレーム(骨格部材)であるフロントフレームアッシー46と、クッション材であるパッド材48と、表皮材であるトリムカバー50とによって構成されている。フロントフレームアッシー46は、メインフレーム52と、スライドガイド54と、左右一対のサイドサポート調整機構56とを主要部として構成されている。
【0033】
メインフレーム52は、例えば樹脂の射出成形によって形成されたものであり、
図5に示されるように、ヘッドレスト10の前方側が開放された浅底な皿状をなしており、内側に格子状のリブが一体に形成されている。なお、
図2及び
図8では、メインフレーム52を概略的に記載しており、
図7では、メインフレーム52の図示を省略している。
図4に示されるように、メインフレーム52の背面の左右方向中央部には、前述した板ばね40が摺接する板ばね摺接部58が形成されている。この板ばね摺接部58の上端部及び上下方向中央部付近には、それぞれロック溝60、62が形成されている。
【0034】
また、メインフレーム52の背面(後面)において、板ばね摺接部58の左右両側には、ヘッドレスト10の上下方向に延びる左右一対のスライドレール部64が、ヘッドレスト10の左右方向に並んで形成されている。左右のスライドレール部64は、メインフレーム52の前方側へ窪んでいる。左右のスライドレール部64における左右方向外側の縁部には、それぞれ左右方向内側へ突出した板状のガイド係合部64Aが形成されている。左右のガイド係合部64Aは、ヘッドレスト10の上下方向に延在しており、スライドガイド54に形成された左右のガイド部74Aに対応している。
【0035】
スライドガイド54は、例えば樹脂の射出成形によって形成されたものであり、全体として矩形の板状に形成されている。このスライドガイド54は、板厚方向がヘッドレスト10の前後方向に沿う姿勢で配置されている。このスライドガイド54の背面の上部側には、前枕部24の後方側へ突出した左右一対の引掛け爪66が形成されている。これらの引掛け爪66は、ヘッドレスト10の側面視で鉤形に形成されている。これらの引掛け爪66は、前述したリヤブラケット34の左右の貫通孔36に挿入され、左右の貫通孔36の縁部に引っ掛けられている。
【0036】
また、スライドガイド54の下端部の左右方向両端部には、
図3及び
図4に示されるように、ビス用ボス68が設けられている。これらのビス用ボス68は、リヤブラケット34に形成された左右の締結片38(
図2参照)に対して上方側から当接しており、左右の締結片38に形成された図示しないビス孔に挿通された図示しないスクリューが、ビス用ボス68に形成された雌ねじ部70(
図3参照)に螺合している。これにより、スライドガイド54が、左右の引掛け爪66及び図示しない左右のスクリューによってリヤブラケット34に取り付けられて(固定されて)いる。
【0037】
このスライドガイド54の左右方向中央部には、スライドガイド54を前後方向に貫通した開口部72が形成されている。この開口部72は、ヘッドレスト10の前後方向から見てヘッドレスト10の上下方向を長手とする長尺矩形状に形成されている。この開口部72内には、前述した板ばね40が配置されており、当該板ばね40の上端部がメインフレーム52の板ばね摺接部58に当接している。
【0038】
また、スライドガイド54の前面には、
図4及び
図6に示されるように、ヘッドレスト10の上下方向に延びる左右一対の突出部74が、ヘッドレスト10の左右方向に並んで形成されている。左右の突出部74は、左右のスライドレール部64よりも上下方向寸法が十分に小さく設定されており、左右のスライドレール部64内に嵌入している。左右の突出部74における左右方向外側の縁部には、それぞれ左右方向外側へ突出したガイド部74Aが形成されている。左右のガイド部74Aは、左右のスライドレール部64のガイド係合部64Aに対してヘッドレスト10の前方側から係合している。これにより、メインフレーム52とスライドガイド54とがヘッドレスト10の前後方向に分離不能で且つヘッドレスト10の上下方向にスライド可能に連結されている。
【0039】
ここで、左右のガイド係合部64Aを含む左右のスライドレール部64と、左右のガイド部74Aとは、ヘッドレスト10の側面視(後枕部22及び前枕部24の側面視)において、ヘッドレスト10の後方側(後枕部22及び前枕部24の後方側)へ凸をなすように湾曲している。これにより、メインフレーム52は、スライドガイド54に対してヘッドレスト10の側面視でヘッドレスト10の後方側へ凸をなす曲線状の軌跡に沿ってスライド可能とされている。
【0040】
また、左右のスライドレール部64の上端部及び下端部には、ゴム等の弾性体からなるストッパーラバー76が設けられている。これらのストッパーラバー76は、メインフレーム52の内側に配設された上下一対の金属製のラバーブラケット78に装着されている。これらのラバーブラケット78は、ここではタッピングスクリュー80によってメインフレーム52に締結固定されている。上下のラバーブラケット78には、それぞれ左右一対のストッパーラバー76が装着されている。これらのストッパーラバー76は、スライドレール部64の上端部及び下端部に形成された貫通孔82を通ってメインフレーム52の後方側へ突出している。これらのストッパーラバー76に対してスライドガイド54が当接することにより、スライドガイド54に対するメインフレーム52のスライド範囲が所定の範囲内に制限される構成になっている。
【0041】
さらに、メインフレーム52の左右両側には、左右のサイドサポート調整機構56の構成部材である左右一対のヒンジブラケット84と、左右一対のサイドパイプ(サイドフレーム)86と、左右一対の軸である左右一対のロングボルト88とが配設されている。なお、左右のサイドサポート調整機構56は、左右対称な以外は同一の構成とされている。
【0042】
左右のヒンジブラケット84は、例えば板金がプレス成形されて形成されたものであり、ヘッドレスト10の上下方向を長手とする長尺板状に形成されている。これらのヒンジブラケット84は、メインフレーム52の側壁の外側面に重ね合わされたブラケット本体84Aと、ブラケット本体84Aの上下両端部からヘッドレスト10の左右方向外側へ延びる上下一対の連結部84Bとを備えている。
【0043】
ブラケット本体84A及びメインフレーム52の側壁には、それぞれ上下一対のボルト孔90、92が形成されており、これらのボルト孔90、92に対してヘッドレスト10の左右方向外側から挿入された上下一対のボルト94が、メインフレーム52の内側に突出している。メインフレーム52の内側には、ヘッドレスト10の上下方向を長手とする長尺板状に形成され、メインフレーム52の側壁の内側面に重ね合わされた金属製のプレート96と、当該プレート96に溶着された上下一対のウェルドナット98とが配設されている。メインフレーム52の内側に突出した上下一対のボルト94は、プレート96に形成された上下一対の貫通孔100に挿通され、上下のウェルドナット98に螺合している。これにより、ヒンジブラケット84がメインフレーム52に締結固定されている。
【0044】
ヒンジブラケット84の上下の連結部84Bには、これらの連結部84Bをヘッドレスト10の上下方向に貫通した円形の貫通孔102が形成されている。これらの貫通孔102は、ロングボルト88及びサイドパイプ86に対応している。
【0045】
サイドパイプ86は、例えば金属製のパイプ材が曲げ加工されたものであり、ヘッドレスト10の左右方向内側が開放された略U字状に形成されている。このサイドパイプ86の上端部86A及び下端部86Bは、ヘッドレスト10の上下方向に潰し加工されており、平板状に形成されている。サイドパイプ86の上端部86Aは、上側の連結部84Bに対して上方側から重ね合わされており、サイドパイプ86の下端部86Bは、下側の連結部84Bに対して下方側から重ね合わされている。また、サイドパイプ86の上下両端部86A、86Bには、上下の連結部84Bに形成された貫通孔102と対向する部位に、それぞれ円形の貫通孔104が形成されている。これらの貫通孔102、104には、ヘッドレスト10の上方側又は下方側からロングボルト88が挿入されている。このロングボルト88は、ヘッドレスト10の上下に延びており、サイドパイプ86とヒンジブラケット84とを回動(回転)可能に連結している。
【0046】
上記のロングボルト88は、段付きボルトであり、上端部又は下端部に頭部88Aが形成されると共に、下端部又は上端部に雄ねじ部88Bが形成されている。この雄ねじ部88Bは、サイドパイプ86の下端部86Bの下方側又は上端部86Aの上方側へ突出しており、ナット106に螺合している。このロングボルト88の頭部88Aと、サイドパイプ86の上端部86A又は下端部86Bとの間には、ワッシャ108及びプラスチックブッシュ110が介在している。また、サイドパイプ86の下端部86B又は上端部86Aとナット106との間には、ワッシャ112及びディスクスプリング114が介在している。このディスクスプリング114は、ヒンジブラケット84に対するサイドパイプ86の回動に所定の抵抗力(摩擦抵抗)を付与している。
【0047】
また、上下の連結部84Bの前後両端部には、ヒンジブラケット84に対するサイドパイプ86の回動範囲を制限するためのストッパ部(符号省略)が上下に突出形成されている。さらに、ヒンジブラケット84の後方側には、樹脂製のカバー116が取り付けられている。このカバー116は、ヒンジブラケット84、ロングボルト88及びサイドパイプ86の上下両端部86A、86B等を後方側から覆っている。
【0048】
上記構成のフロントフレームアッシー46には、パッド材48が取り付けられている。パッド材48は、例えばウレタンフォーム等の発泡体によって形成されている。このパッド材48は、ヘッドレスト10の左右方向に沿った寸法が、ヘッドレスト10の上下方向に沿った寸法に比して大きく設定されると共に、ヘッドレスト10の前後方向に沿った寸法がヘッドレスト10の上下方向に沿った寸法及び左右方向に沿った寸法に比して十分に小さく設定されている。このパッド材48の背面の中央部には、フロントフレームアッシー46のメインフレーム52が嵌め込まれた凹部118が形成されている。また、この凹部118の左右両側には、左右のサイドパイプ86が挿入された挿入孔120が形成されている。これにより、パッド材48がフロントフレームアッシー46に支持されている。このパッド材48は、トリムカバー50によって覆われている。
【0049】
トリムカバー50は、例えば布材、皮革又は合成皮革等からなる複数の表皮片が袋状に縫製されて形成されている。このトリムカバー50の背面の中央側には、ヘッドレスト10の前後方向から見て矩形状の開口部122が形成されている。この開口部122は、メインフレーム52の左右のスライドレール部64及びスライドガイド54を前枕部24の後方側(外側)へ露出させている。
【0050】
上記構成のヘッドレスト10では、前枕部24のメインフレーム52に形成された左右のスライドレール部64が、後枕部22に固定されたスライドガイド54の左右のガイド部74Aに対してスライド可能とされている。これらのスライドレール部64及びガイド部74Aは、前述したようにヘッドレスト10の側面視でヘッドレスト10の後方側へ凸をなすように湾曲している。これにより、前枕部24は、ヘッドレスト10の側面視でヘッドレスト10の後方側(厳密にはヘッドレスト10の後方側かつ若干下方側)へ凸をなす曲線状の軌跡に沿ったスライドにより、後枕部22に対する上下の位置を調整可能とされている。また、このヘッドレスト10では、後枕部22に対する前枕部24の上下位置調整が、板ばね40及び上下のロック溝60、62からなる規制機構41によって、有段階で規制される構成になっている。以下、具体的に説明する。
【0051】
前枕部24は、
図1に実線で示される通常使用位置と、
図1に二点鎖線で示される快適使用位置との間で後枕部22に対してスライド可能とされている。なお、
図9(A)には、前枕部24が通常使用位置に位置する状態が図示されており、
図9(B)には、前枕部24が通常使用位置と快適使用位置との間の中間に位置する状態が示されており、
図9(C)には、前枕部24が快適使用位置に位置する状態が図示されている。これらの図に示されるように、快適使用位置は、通常使用位置よりも下方側に設定されている。
【0052】
前枕部24が通常使用位置に位置する状態では、
図1に実線で示されるように、前枕部24によって乗員Pの後頭部BHを支持可能となる。この状態では、前枕部24のスライドガイド54が、メインフレーム52に取り付けられた上側のストッパーラバー76に当接することにより、それ以上の前枕部24の上方側へのスライドが規制される。またこの状態では、リヤブラケット34に固定された板ばね40が、メインフレーム52の上側のロック溝60に嵌入する。これにより、前枕部24が後枕部22に対して通常使用位置に保持される構成になっている。この状態で、前枕部24に対し予め設定された値以上の下向きの外力が加えられると、板ばね40が弾性変形してロック溝60から抜け出し、通常使用位置における前枕部24の保持が解除される。これにより、前枕部24が快適使用位置へとスライド可能になる。
【0053】
前枕部24が快適使用位置へとスライドされる際には、前枕部24は、ヘッドレスト10の側面視でヘッドレスト10の後方側かつ若干下方側へ凸をなす曲線状の軌跡に沿ってスライドされる。そして、前枕部24が快適使用位置にスライドされた状態では、前枕部24が、
図1に示されるトルソーラインTに沿うように傾斜する。この状態では、前枕部24が通常使用位置に位置する状態よりも、前枕部24の上部側がヘッドレスト10の後方側へ退避すると共に、前枕部24の下部側がヘッドレスト10の前方側へ迫り出す(突出する)。これにより、前枕部24の下部側が乗員Pの頸部Nに接近し、乗員Pの後頭部BHから頸部Nまでの広い範囲を前枕部24によって支持可能となる。なお、上記のトルソーラインは、車両用シート10の設計基準によって定められるものである。また、上記の曲線状の軌跡は、曲率が一つのものに限らず、複数の曲率を有するものであってもよい。
【0054】
前枕部24が快適使用位置に位置する状態では、前枕部24のスライドガイド54が、メインフレーム52に取り付けられた下側のストッパーラバー76に当接することにより、それ以上の前枕部24の下方側へのスライドが規制される。またこの状態では、リヤブラケット34に固定された板ばね40が、メインフレーム52の下側のロック溝62に嵌入する。これにより、前枕部24が後枕部22に対して快適使用位置に保持される構成になっている。この状態で、前枕部24に対し予め設定された値以上の上向きの外力が加えられると、板ばね40が弾性変形してロック溝62から抜け出し、快適使用位置における前枕部24の保持が解除される。これにより、前枕部24が通常使用位置へとスライドすることが可能になる。
【0055】
さらに、このヘッドレスト10では、前枕部24は、左右方向の両サイド部24Bが、左右方向の中間部24Aに対して、左右のロングボルト(軸)88回りに回動されることにより、中間部24Aに対する両サイド部24Bの前方側への迫出し量を調整可能とされている。具体的には、左右のサイドパイプ86が配設された左右両サイド部24Bに対して、予め設定された値以上の前方側への外力が加えられると、左右のサイドパイプ86がヒンジブラケット84に対して左右のロングボルト88回りに回転される。これにより、パッド材48の左右両サイド部が左右のサイドパイプ86に押されて前方側へ迫り出すようになっている(
図6の二点鎖線参照)。そして、上記外力が解除されると、左右のサイドパイプ86は、左右のヒンジブラケット84との間に生じる摩擦力によってその位置に保持されるようになっている。なお、左右のサイドパイプ86と左右のヒンジブラケット84との間にラチェット機構を配設し、当該ラチェット機構によって左右のサイドパイプ86の不用意な回動を規制する構成にしてもよい。
【0056】
しかも、上記左右のロングボルト88は、
図7及び
図8に示されるように、前枕部24の上下方向に対して、下方側へ向かうほど前枕部24の左右方向中央側へ向かうように傾斜している。このため、前枕部24の両サイド部24Bが、左右のロングボルト88回りに前方側へ回動されると、前枕部24の両サイド部24Bの下部側が上部側に比して前枕部24の左右方向中央側に変位するように構成されている。これらのロングボルト88は、乗員Pの後頭部BH及び頸部Nの左右方向の幅寸法の違いに対応して傾斜しており、乗員P及びヘッドレスト10を前方側から見た場合に、左右のロングボルト88の軸線(
図7及び
図8の一点鎖線L参照)が、乗員Pの頭部H及び頸部Nの左右両側面に沿って延びるように構成されている。詳細には、
図8に示される前枕部24の中心C付近よりも下方側において、左右のロングボルト88の軸線L間の距離が小さくなるように構成されている(
図8においてW1>W2)。
【0057】
(作用及び効果)
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0058】
本実施形態に係る車両用シート12のヘッドレスト10では、シートバックの上方側に配設される後枕部22の前方側に前枕部24が取り付けられている。この前枕部24は、ヘッドレスト10の側面視でヘッドレスト10の後方側へ凸をなす曲線状の軌跡に沿ったスライドにより、後枕部22に対する上下の位置を調整可能とされている。これにより、乗員Pの後頭部BHから頸部Nにかけての曲面に沿わせて前枕部24の上下位置を調整することができるので、後頭部BHから頸部Nまでの広い範囲が前枕部24によって支持される快適使用位置へと前枕部24を移動させることができる。しかも、前枕部24の上下位置調整によって、前枕部24の前面と後頭部BHとの距離(バックセット)が変化することを抑制できる。これにより、乗員Pの快適性を向上させることが可能になる。
【0059】
上記の効果について、
図10(A)及び
図10(B)に示されるヘッドレスト200(比較例)を用いて補足する。このヘッドレスト200は、背景技術の欄で説明したヘッドレストと同様に、前枕部202が後枕部204に対して上端部を中心として前方側へ回転可能に取り付けられている。このため、前枕部202の角度調整に伴って、バックセットが大きく変化してしまう。その結果、前枕部202が後頭部BHに近すぎて、乗員Pの頭部Hが顎を引く姿勢になる場合(
図10(B)参照)や、前枕部202が後頭部から遠すぎて、乗員Pの頭部Hが顎を前方に突き出す姿勢になる場合(図示省略)があり、乗員Pの快適性を阻害する可能性がある。
【0060】
また、前枕部202の角度を調整する構成であるため、後頭部BHや頸部Nに対する前枕部202の接触面積が狭くなり、後頭部BHや頸部Nが受ける面圧が増加する場合がある。したがって、これによっても乗員Pに不快な感じを与え易い傾向にある。なお、前枕部202の前面を後頭部BHから頸部Nに沿うような形状に形成することも考えられるが、そのような構成の場合、前枕部202の角度が変更されることにより、後頭部BHから頸部Nまでが前枕部202によって適切に支持されなくなる。
【0061】
一方、本実施形態では、ヘッドレスト10を前枕部24と後枕部22からなる2体構造とし、前枕部24を後方側へ凸の曲線状の軌跡に沿って上下動させることにより、バックセットを略一定に保ちつつ、前枕部24を通常使用位置及び快適使用位置に移動させることができる。これにより、後頭部BHや頸部Nに対する前枕部24の接触面積が狭くならないようにすることができ、どちらの使用状態においても後頭部BHや頸部Nを適切に支持することができる。
【0062】
また、このヘッドレスト10では、前枕部24が通常使用位置及び快適使用位置に位置する状態では、後枕部22に対する前枕部24の上下位置の調整が、規制機構41によって有段階で規制される。この規制機構では、前枕部24に対して予め設定された値以上の上下方向の外力が加えられることにより、上記の規制が解除されるので、前枕部24の上下位置調整を容易に行うことができる。
【0063】
さらに、このヘッドレスト10では、前枕部24は、左右方向の両サイド部24Bが、左右方向の中間部24Aに対して、上下に延びる左右一対のロングボルト88回りに回動されることにより、中間部24Aに対する両サイド部24Bの前方側への迫出し量を調整可能とされている。これにより、前枕部24の両サイド部24Bによって、乗員Pの少なくとも後頭部BHを側方から支持することが可能になるので、乗員Pの快適性の向上に寄与する。
【0064】
しかも、このヘッドレスト10では、上記一対のロングボルト88は、前枕部24の上下方向に対して、下方側へ向かうほど前枕部24の左右方向中央側へ向かうように傾斜している。このため、前枕部24の中間部24Aに対する両サイド部24Bの前方側への迫出し量が調整される際には、両サイド部24Bが、上記のように傾斜した一対のロングボルト88回りに前方側へ回動される。これにより、乗員Pの後頭部BHと頸部Nとの左右方向の幅寸法の違いに合わせて、前枕部24の両サイド部24Bの下部側を上部側に比し前枕部24の左右方向中央側に変位させることができるので、両サイド部24Bを後頭部BHから頸部Nまでの広い範囲に適切にフィットさせることが可能になる。その結果、乗員Pの快適性の向上に一層寄与する。
【0065】
また、このヘッドレスト10では、後枕部22に対する前枕部24の上下位置が調整される際には、前枕部24のメインフレーム52に形成された左右のスライドレール部64が、後枕部22のステーアッシー26に取り付けられたスライドガイド54の左右のガイド部74Aに対して摺動する。これらのスライドレール部64及びガイド部74Aは、ヘッドレスト10の側面視でヘッドレスト10の後方側へ凸をなすように湾曲している。これにより、ヘッドレスト10の側面視でヘッドレスト10の後方側へ凸をなす曲線状の軌跡に沿った前枕部24の上下位置調整を、簡単な構成で成立させることができる。
【0066】
また、本実施形態では、前枕部24の構成部材であるメインフレーム52及びスライドガイド54によって、前枕部24のスライド機構が成立しており、スライドガイド54が後枕部22のステーアッシー26に固定される構成になっている。これにより、ヘッドレスト10の製造時には、前枕部24を後枕部22とは別にサブアッセンブリ化しておくことができるので、ヘッドレスト10の製造を容易なものにすることができる。
【0067】
また、本実施形態では、前枕部24のスライドガイド54が、一対の引掛け爪66及び図示しない一対のスクリューによって後枕部22のステーアッシー26に固定されるので、後枕部22への前枕部24の取り付けが容易である。
【0068】
なお、上記第1実施形態では、後枕部22に対する前枕部24の上下位置調整が、板ばね40及びロック溝60、62からなる規制機構41によって、有段階で規制される構成にしたが、本発明はこれに限らず、後枕部22に対する前枕部24の上下位置調整が、無段階で規制される構成にしてもよい。その場合、例えば、規制機構は、スライドガイド54とメインフレーム52との間に生じる摩擦力によって、スライドガイド54に対するメインフレーム52のスライド(上下位置調整)を規制する構成になる。
【0069】
また、上記第1実施形態では、前枕部24に対して予め設定された値以上の上下方向の外力が加えられることにより、規制機構41の規制が解除される構成にしたが、本発明はこれに限るものではない。例えば、前枕部24又は後枕部22に設けられた操作部(押ボタン等)が操作されることにより、後枕部22に対する前枕部24の上下位置調整が可能になる構成にしてもよい。
【0070】
また、上記第1実施形態では、シートバック14とは別体に形成された後枕部22が、シートバック14の上端部に上下位置を調整可能に連結された構成にしたが、本発明はこれに限るものではない。すなわち、
図11に示される車両用シート132のヘッドレスト130(第1変形例)のように、後枕部22がシートバック14と一体に形成された構成にしてもよい。なお、
図11〜
図15では、上記第1実施形態と基本的に同様の構成については、同符号を付している。
【0071】
図11に示される車両用シート132は、例えばセダンタイプの車両の後部座席とされている。この車両用シート132のヘッドレスト130では、ヘッドレストステー32における左右の脚部32Aの下端部が、バックフレーム16の上端部に溶接等の手段によって固定されている。このヘッドレスト130(車両用シート132)においても、前記第1実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0072】
また、上記第1実施形態において、
図12及び
図13に示されるヘッドレスト140の(第2変形例)のように、前枕部24のパッド材48の硬度を上部48Uと下部48Lとで異ならせる構成にしてもよい。このヘッドレスト140では、パッド材48の上部48Uの硬度が下部48Lの硬度よりも高く設定されている。このパッド材48が成形される際には、仕切りが形成されたモールド型において、仕切りの一側及び他側に異なる原液が注入されて発泡される。このため、パッド材48の前部には、上記の仕切りに対応する部位に凹部(溝)142が形成されている。このヘッドレスト140では、乗員の頸部に対する前枕部24の下部48Lのフィット性を向上させ、乗員の快適性を向上させつつ、後頭部の支持性能を前枕部24の上部48Uによって確保することができる。
【0073】
また、
図14及び
図15に示されるヘッドレスト150(第3変形例)のように、前枕部24のパッド材48の硬度を部分的に異ならせるに際し、スラブウレタンを用いる構成にしてもよい。このヘッドレスト150のパッド材48は、モールドウレタンからなる本体部152と、スラブウレタンからなる前上部154及び前下部156とによって構成されている。前上部154及び前下部156は、本体部152の前面側に上下に並んで配設されており、接着等の手段によって本体部152の前面に接合されている。前上部154の硬度は、前下部156の硬度よりも高く設定されている。また、本体部152の硬度は、例えば前上部154の硬度よりも低くかつ前下部156の硬度よりも低く設定されている。この第3変形例においても、前記第2変形例と同様の作用効果が得られる。
【0074】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。なお、前記第1実施形態と基本的に同様の構成及び作用については、前記第1実施形態と同符号を付与しその説明を省略する。
また、以下に記載する実施形態は、参考例とする。
【0075】
<第2の実施形態>
図16及び
図17には、本発明の第2実施形態に係る車両用シート162におけるシートバック14の上端部及びヘッドレスト160が概略的な側面図にて示されている。この車両用シート162のヘッドレスト160では、前記第1実施形態に係るヘッドレスト10と同様に、後枕部22のリヤブラケット34の前面側に、前枕部24のスライドガイド54が固定されており、スライドガイド54の前面側には、前枕部24のメインフレーム52が上下にスライド可能に取り付けられている。但し、メインフレーム52は、スライドガイド54に対して上下に直線的にスライドされる構成になっている。
【0076】
また、このヘッドレスト160では、前枕部24の下部24L内に配設されたネックサポート調整機構164が、メインフレーム52の下端部に取り付けられている。このネックサポート調整機構164は、前記第1実施形態に係るサイドサポート調整機構56と基本的に同様の構成とされており、ロングボルト88と同様のロングボルト166(軸)を備えている。但し、このロングボルト166は、ヘッドレスト160の左右方向(
図16及び
図17では紙面に垂直な方向)に延びるように配設されている。
【0077】
この実施形態では、前枕部24が後枕部22に対して下方側にスライドした状態において、前枕部24の下部24Lが、前枕部24の上部24Uに対して、ロングボルト166(左右方向に延びる軸)回りに回動されることにより、上部24Uに対する下部24Lの前方側への迫出し量を調整可能とされている(
図17参照)。これにより、前枕部24の下部24Lを乗員の頸部に対して接近させることができるので、乗員の後頭部から頸部までを前枕部24の上部24U及び下部24Lによって適切に支持することが可能になる。しかも、前枕部24が後枕部22に対して上下にスライドされる構成であるため、前枕部24の上下位置の調整によってバックセットが変化することを抑制できる。以上のことから、乗員の快適性を向上させることができる。
【0078】
<第3実施形態>
図18及び
図19には、本発明の第3実施形態に係る車両用シート172におけるシートバック14の上端部及びヘッドレスト170が概略的な側面図にて示されている。この車両用シート172のヘッドレスト170では、後枕部22のリヤブラケット34の前面に取り付けられたスライドガイド174が、リヤブラケット34に対して上下に直線的にスライド可能とされている。このスライドガイド174の前面からは、ヘッドレスト170の前方側へ向けて左右一対の連結アーム176(
図18及び
図19では右側の連結アーム176は図示省略)が延出されている。
【0079】
左右の連結アーム176の先端部には、それぞれヘッドレスト170の左右方向中央側へ延びる軸部176A(左右方向に延びる軸)が形成されている。これら左右の軸部176Aは、メインフレーム52の左右の側壁に形成された円形の軸受孔に回転自在に嵌入している。これにより、前枕部24が後枕部22に対して左右の軸部176A回りに回転可能に連結されている。
【0080】
この実施形態では、前枕部24が後枕部22に対して下方側にスライドした状態において、前枕部24が左右の軸部176A回りに回動されることにより、前枕部24の下部24Lを上部24Uに対して前方側へ迫出し可能とされている(
図19参照)。この際には、前枕部24の上部側が、後枕部22の前面側に形成された凹部178内に嵌まり込む。上記のように前枕部24の下部24Lが前方側へ迫出すことにより、前枕部24の下部24Lを乗員の頸部に対して接近させることができるので、乗員の後頭部から頸部までを前枕部24の上部24U及び下部24Lによって適切に支持することが可能になる。しかも、前枕部24が後枕部22に対して上下にスライドされる構成であるため、前枕部24の上下位置の調整によってバックセットが変化することを抑制できる。以上のことから、乗員の快適性を向上させることができる。
【0081】
以上、幾つかの実施形態及び変形例を示して本発明について説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲が上記各実施形態及び各変形例に限定されないことは勿論である。