(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6598657
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】蓋付き容器
(51)【国際特許分類】
B65D 43/08 20060101AFI20191021BHJP
【FI】
B65D43/08
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-233281(P2015-233281)
(22)【出願日】2015年11月30日
(65)【公開番号】特開2017-100735(P2017-100735A)
(43)【公開日】2017年6月8日
【審査請求日】2018年6月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100076598
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 一豊
(74)【代理人】
【識別番号】100165607
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 一成
(74)【代理人】
【識別番号】100196690
【弁理士】
【氏名又は名称】森合 透
(72)【発明者】
【氏名】早川 茂
【審査官】
家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−241970(JP,A)
【文献】
特表2002−518263(JP,A)
【文献】
特開平08−244812(JP,A)
【文献】
国際公開第2014/144226(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D39/00−55/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口端部(11)の外側に容器側フランジ部(15)が一体に周設されたトレイ型の容器本体(10)と、前記開口端部(11)の外側に嵌合する蓋側周壁部(24)を有して前記容器本体(10)に冠着する蓋体(20)と、前記蓋体(20)の隅部に設けられたタブ(26)と、を有して構成される蓋付き容器であって、
前記蓋体(20)と前記タブ(26)との間に、前記蓋側周壁部(24)の下端と前記タブ(26)の基端部(26A)と連結する連結部(27)と、該連結部(27)に隣接配置されると共に、前記蓋側周壁部(24)の下端と前記タブ(26)の基端部(26A)との間に形成された隙間(29a)と、前記タブ(26)から前記蓋側周壁部(24)に向かって前記隙間(29a)内に突出し且つ前記蓋側周壁部(24)との間に前記隙間(29a)よりも小さな寸法から成るクリアランス部(29b)を介して対向する凸部(26d)とを有して形成されると共に、前記蓋体(20)が前記容器本体(10)に冠着された閉蓋状態において前記連結部(27)及び前記凸部(26d)が前記容器側フランジ部(15)上に載置されていることを特徴とする蓋付き容器。
【請求項2】
連結部(27)がタブ(26)中央の基端部(26A)と蓋体(20)との間に設けられ、隙間(29a)が前記連結部(27)の両端に夫々配置されると共に、前記タブ(26)の2つの端部(26B)に前記隙間(29a)内に突出する凸部(26d)が形成されている請求項1記載の蓋付き容器。
【請求項3】
連結部(27)がタブ(26)の2つの端部(26B)と蓋体(20)との間に夫々設けられ、隙間(29a)が一方の連結部(27)と他方の連結部(27)との間に配置されると共に、タブ(26)中央の基端部(26A)に前記隙間(29a)内に突出する凸部(26d)が形成されている請求項1記載の蓋付き容器。
【請求項4】
タブ(26)と連結部(27)との間にヒンジ部(28)を構成する溝部(28a)が形成されている請求項1乃至3のいずれか一項に記載の蓋付き容器。
【請求項5】
蓋体(20)に、容器本体(10)の開口端部(11)の外面に嵌合する蓋側周壁部(24)が周設されている請求項1乃至4のいずれか一項に記載の蓋付き容器。
【請求項6】
蓋体(20)に、容器側フランジ部(15)に載置される蓋側フランジ部(25)が周設されている請求項1乃至5のいずれか一項に記載の蓋付き容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓋体を容器本体から容易に開放できるようにした蓋付き容器に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載の蓋付き容器は、容器本体2に、開口を形成する周側部5の上縁全周に設けられた係合突部6と、周側部5にヒンジ部7aを支点として回動するタブ7と、このタブ7のヒンジ部7a近傍に形成された突起部9とが設けられ、蓋3に、容器本体2の係合突部6に嵌合可能な係止凹部13と、係止凹部13部から延びるスカート部14が設けられて構成されている。
閉蓋状態において、ヒンジ部7aを支点にタブ7を回動させると、突起部9がスカート部14を押動し、係止凹部13が係合突部6から外れ、蓋3を開くことが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−123140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1に記載の先行技術では、容器本体2側に設けられたタブ7は、その下側部分である作動片7cの両側部が切り離し部11、11を介して鍔部10の両端にそれぞれ連結された構成であるため、最初に作動片7cを強く引いて切り離し部11において鍔部10から切断し、その後に作動片7cだけをヒンジ部7aを支点として上方へ回動させる、という2段階の作業を要することから、蓋3を容易に外すことが難しいという問題がある。
【0005】
また容器本体2は鍔部10を備えた構成とする必要があると共に、この鍔部10に切り離し部11、11を形成しておく必要があることから構成が複雑であり、
製造コストを低く抑えることが困難であるという問題もある。
【0006】
本発明は、上記した従来技術における問題点を解消すべく、簡単な作業により、蓋体と容器本体との嵌合を容易に解除して開放できるようにすると共に、簡単な構成によって製造コストを低く抑えることを可能とする蓋付き容器を創出することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段のうち、本発明の主たる手段は、
開口端部の外側に容器側フランジ部が一体に周設されたトレイ型の容器本体と、
開口端部
の外側に嵌合
する蓋側周壁部を有して容器本体
に冠着する蓋体と、蓋体の隅部に設けられたタブと、を有して構成される蓋付き容器であって、
蓋体とタブとの間に、
蓋側周壁部の下端とタブ
の基端部と連結する連結部と、連結部に隣接配置され
ると共に、蓋側周壁部の下端とタブ
の基端部との間に形成された隙間と、タブから
蓋側周壁部に向かって隙間内に突出し且つ蓋側周壁部との間に隙間よりも小さな寸法から成るクリアランス部を介して対向する凸部とを有して形成されると共に、蓋体が容器本体に冠着された閉蓋状態において連結部及び凸部が容器側フランジ部
上に載置されていることを特徴とする、と云うものである。
【0008】
本発明の主たる手段では、閉蓋状態において、タブの先端を指で摘みながら上方に持ち上げると、ヒンジ部(溝部)を支点にタブが回転して凸部が容器側フランジ部の上面を蹴り上げ、蓋体に上向きの力を作用させるため、容器本体側の開口端部と蓋側周壁部との嵌合解除を達成し得る。
【0009】
また本発明の他の手段は、本発明の主たる手段に、連結部がタブ中央の基端部と蓋体との間に設けられ、隙間が連結部の両端に夫々配置されると共に、タブの2つの端部に隙間内に突出する凸部が形成されている、との構成を加えたものである。
【0010】
上記手段では、タブの両側に夫々設けた2つの凸部で容器側フランジ部の上面を蹴り上げることで、蓋体をバランス良く押し上げることを達成し得る。
【0011】
また本発明の他の手段は、本発明の主たる手段に、連結部がタブの2つの端部と蓋体との間に夫々設けられ、隙間が一方の連結部と他方の連結部との間に配置されると共に、タブ中央の基端部に隙間内に突出する凸部が形成されている、との構成を加えたものである。
【0012】
上記手段では、容器側フランジ部の上面を蹴り上げる凸部をタブの中央の一ヵ所に設けた構成であるため、集中的に発生する大きな押し上げる力で蓋体を押し上げることを達成し得る。
【0013】
また本発明の他の手段は、上記いずれかの手段に、タブと連結部との間にヒンジ部を構成する溝部が形成されている、との構成を加えたものである。
【0014】
上記手段では、ヒンジ部を構成する溝部を支点とするタブのスムーズな回動を達成し得る。
【0015】
また本発明の他の手段は、上記いずれかの手段に、蓋体に、容器本体の開口端部の外面に嵌合する蓋側周壁部が周設されている、との構成を加えたものである。
【0016】
上記手段では、蓋体と容器本体との間の密封状態の保持を達成し得る。
【0017】
また本発明の他の手段は、上記いずれかの手段に、蓋体に、容器側フランジ部に載置される蓋側フランジ部が周設されている、との構成を加えたものである。
【0018】
上記手段では、容器本体に冠着する蓋体の姿勢を水平とし、蓋体と容器本体との間の気密性の向上を達成し得る。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、上記した構成となっているので、以下に示す効果を奏する。
本発明では、閉蓋状態において、タブの先端を指で摘みながら上方に持ち上げるだけで容器本体側の開口端部と蓋側周壁部との嵌合が解除され、蓋体を容易に開放させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の第1実施例としての蓋付き容器を示す平面図である。
【
図2】
図1の蓋付き容器を側方から見た状態を示す半断面図である。
【
図3】第1実施例の要部を拡大して示す平面図である。
【
図4】
図3のIV−IV線における縦断面図である。
【
図5】
図3のV−V線における縦断面図であり、Aは閉蓋状態、Bはタブを操作した状態である。
【
図6】本発明の第2実施例の要部を拡大して示す平面図である。
【
図7】
図6のVII−VII線における縦断面図であり、Aは閉蓋状態、Bはタブを操作した状態である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明の第1実施例としての蓋付き容器を示す平面図、
図2は
図1の蓋付き容器を側方から見た状態を示す半断面図、
図3は第1実施例の要部を拡大して示す平面図、
図4は
図3のIV−IV線における縦断面図、
図5は
図3のV−V線における縦断面図であり、Aは閉蓋状態、Bはタブを操作した状態である。
【0022】
本発明である蓋付き容器1は、例えばバターやマーガリン、あるいは各種のジャム、チョコレート等の食品を収納するための容器であり、例えばポリプロピレン、ポリエチレン等の合成樹脂製から成る容器本体10と蓋体20を有して構成される。
【0023】
容器本体10は平面視略長方形状から成るトレイ型であり、開口端部11、容器側段差部12、容器側周壁部13及び底部14を有して構成され、開口端部11の外側下端には水平に突出する容器側フランジ部15が一体に周設されている。
【0024】
蓋体20は容器本体10同様のトレイ型で形成され、頂壁部21、上壁部22、蓋側段差部23、蓋側周壁部24、蓋側フランジ部25及びタブ26を有して構成されている。
蓋体20を容器本体10に嵌着した閉蓋状態では、蓋側段差部23が開口端部11の上端に載置され、蓋側フランジ部25が容器側フランジ部15の上に載置され、且つ容器本体10側の開口端部11の外側に蓋側周壁部24が嵌合されることにより、蓋付き容器1の密封状態を保持することが可能となっている。
【0025】
タブ26は蓋体20の四つの隅部の一角に設けられており、
図3に示すように、蓋側周壁部24に沿って湾曲線状に形成された底辺26aと2つの斜辺26bとを有して成る平面視略直角二等辺三角形状の部材として形成されている。
【0026】
第1実施例に示すタブ26は、底辺26a中央の基端部26Aに突設された連結部27を介して蓋体20の隅部の蓋側周壁部24の下端に連結されており、基端部26A以外の両端部分は蓋側周壁部24から所定の寸法d1から成る隙間29aを介して対向配置されている。そして、隙間29aに隣接する2つの端部26Bには蓋側周壁部24に向かって隙間29a内に突出する凸部26dが夫々形成されている。これら2つの凸部26dと蓋側周壁部24とが対向する部分には、隙間29aよりも小さな寸法d2(d2<d1)から成るクリアランス部29bが設けられている。
タブ26の基端部26Aと連結部27との間にはヒンジ部28を構成する溝部28aが形成されており、タブ26はこの溝部28aにおいて折り曲げることが可能となっている。
なお、閉蓋状態においては、これら2つの凸部26d及び連結部27は、蓋側フランジ部25同様に容器側フランジ部15の上に載置される。
【0027】
図4に示すように、閉蓋状態において、タブ26の先端を指で摘みながら上方に持ち上げると、タブ26の基端部26Aがヒンジ部28を構成する溝部28aを中心に折り曲るため、タブ26を回動させることができる。この際、
図5A及び
図5Bに示すように、タブ26の両端の2つの端部26Bにおいては、ヒンジ部28(溝部28a)を支点にタブ26が回転して2つの凸部26dが容器側フランジ部15の上面を蹴り上げ、蓋体20に上向きの力を作用させる。これにより、容器本体10側の開口端部11と蓋側周壁部24との嵌合が解除され、蓋体20を容器本体10の開口端部11から容易に開放させることができる。
【0028】
第1実施例に示す蓋付き容器1では、容器側フランジ部15の上面を蹴り上げる2つの凸部26dをタブ26の両側に夫々設けた構成であるため、蓋体20をバランス良く押し上げることが可能となり、タブ26の先端を指で摘みながら上方に持ち上げるという一度の作業により、蓋体20を簡単且つ確実に開放することができる。
しかもタブ26の2つの端部26Bに凸部26dを夫々形成するという簡単な構成とすることができるため、製造コストを低く抑えることが可能となる。
【0029】
図6は本発明の第2実施例の要部を拡大して示す平面図、
図7は
図6のVII−VII線における縦断面図であり、Aは閉蓋状態、Bはタブを操作した状態である。
第2実施例に示す蓋付き容器1が、上記第1実施例と異なる点はタブ26の構成にあり、その他の構成及び効果は上記第1実施例同様である。このため、以下においては主に第1実施例と異なる部分について説明する。なお、第1実施例と同一の部材については同一の符号を付して説明する。
【0030】
第2実施例に示す蓋付き容器1では、平面視略直角二等辺三角形状に形成されているタブ26の底角である2つの端部26Bが連結部27を介して蓋体20の蓋側周壁部24に夫々連結されており、中央の基端部26Aで且つ一方の連結部27と他方の連結部27との間には隙間29aが隣接配置されている。そして、この中央の基端部26Aには、蓋側周壁部24に向かって隙間29a内に突出する凸部26dが形成されている。この凸部26dと蓋側周壁部24との間には、隙間29aよりも小さな寸法d2(d2<d1)から成るクリアランス部29bが設けられている。
タブ26の2つの端部26Bと連結部27との間にはヒンジ部28を構成する溝部28aが夫々形成されており、タブ26はこの2つの溝部28aにおいて折り曲げることが可能となっている。
なお、閉蓋状態においては、凸部26d及び2つの連結部27は、蓋側フランジ部25同様に容器側フランジ部15の上に載置される。
【0031】
閉蓋状態において、タブ26の先端を指で摘みながら上方に持ち上げると、タブ26は2つの端部26Bにおいてヒンジ部28を構成する溝部28aを中心に折り曲るため、タブ26を回動させることができる。この際、
図7A及び
図7Bに示すように、タブ26中央においては、タブ26が回転して凸部26dが容器側フランジ部15の上面を蹴り上げ、蓋体20に上向きの力を作用させる。これにより、上記第1実施同様に、容器本体10側の開口端部11と蓋側周壁部24との嵌合が解除され、蓋体20を容器本体10の開口端部11から容易に開放させることができる。
【0032】
第2実施例に示す蓋付き容器1では、容器側フランジ部15の上面を蹴り上げる凸部26dをタブ26の中央に設けた構成であるため、蓋体20を押し上げる力を集中的に作用させることが可能となり、タブ26の先端を指で摘みながら上方に持ち上げるという一度の作業により、大きな力を得て蓋体20を簡単且つ確実に開放することができる。
またこの第2実施例も、タブ26の中央の基端部26Aに凸部26dを夫々形成するという簡単な構成とすることができるため、製造コストを低く抑えることが可能となる。
【0033】
以上、実施例に沿って本発明の構成とその作用効果について説明したが、本発明の実施の形態は上記実施例に限定されるものではない。
例えば、上記実施例では平面視略長方形状から成る蓋付き容器を示して説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、例えば平面視円形状や平面視略楕円形状などその他の形状から成る蓋付き容器で合っても良い。
【0034】
また上記実施例では、平面視略直角二等辺三角形状から成るタブの形状を示して説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、例えば平面視円形状の一部を使用した形状などその他の形状から成る蓋付き容器で合っても良い。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、例えばバターやマーガリン等を入れる蓋付き容器の分野における用途展開をさらに広い領域で図ることができる。
【符号の説明】
【0036】
1 : 蓋付き容器
10 : 容器本体
11 : 開口端部
12 : 容器側段差部
13 : 容器側周壁部
14 : 底部
15 : 容器側フランジ部
20 : 蓋体
21 : 頂壁部
22 : 上壁部
23 : 蓋側段差部
24 : 蓋側周壁部
25 : 蓋側フランジ部
26 : タブ
26A: 基端部
26B: 端部
26a: 底辺
26b: 斜辺
26d: 凸部
27 : 連結部
28 : ヒンジ部
28a: 溝部
29a: 隙間
29b: クリアランス部