【実施例】
【0046】
以下、本発明について、実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例において行った物性の測定方法は次の通りである。
(1)溶融粘度
長さ10mm×直径1mmのダイを取り付けた島津製作所製高化式フローテスターを用いて溶融粘度を測定した。なお、その単位を(poise)として表した。
(2)電気抵抗(体積抵抗率)及び電気抵抗のバラつき
URSプローブを取り付けたハイレスタUP(MCP−HT450、ダイヤインスツルメンツ社製)を用い、460mm×400mmのサンプルについてTD方向に23点、MD方向に20点の体積抵抗率を測定した。次いで、体積抵抗率の測定値の平均値を求め、それをサンプルの体積抵抗率とした。(測定条件:温度23℃、相対湿度50%RH、荷重2kg、印加電圧500V、10秒)また、体積抵抗率の測定値のバラつきを求め、以下の評価基準に基づき評価した。
○:体積抵抗率のバラつきが1桁以内
×:体積抵抗率のバラつきが1桁を超える
(3)分散相サイズ
ロータリミクロトーム(ST−102型、株式会社日本ミクロトーム社製)を用いて厚さ2〜5μmに試験片を切出した後、得られた樹脂組成物の試験片をデジタルマイクロスコープ(VHX−500、株式会社キーエンス社製)を用いて試験片断面の観察を行った。試験片の相分離構造が
図1に示すような海島構造であった場合、測定サンプル上のランダムに選択した点を中心に低倍率から徐々に倍率を上げ、ポリアミド樹脂の分散相(島)が50個以上100個未満観察されたときに、分散相の粒径を測定した。(分散相の粒径は、長軸aの長さと短軸bの長さとの平均値とする。)この操作を10点で繰り返し行い、その平均値をポリアミド樹脂の平均粒径とした。
【0047】
原料としては、下記のものを用いた。
<ポリフッ化ビニリデン樹脂(A)>
・ポリフッ化ビニリデン(A−1)[融点:168℃、溶融粘度:4500poise(測定温度200℃、荷重100kg)、製品名:KYNAR710、アルケマ社製]
・ポリフッ化ビニリデン(A−2)[融点:168℃、溶融粘度:15000poise(測定温度200℃、荷重100kg)、製品名:KYNAR740、アルケマ社製)]
<ポリアミド樹脂(B)>
・ナイロン6,12(B−1)[融点:130℃、製品名:UBEナイロン 7128B、宇部興産社製]
・ナイロン6(B−2)[融点:225℃、溶融粘度:19340poise(測定温度230℃、荷重100kg)、製品名:アラミン CM1046、東レ社製]
・ナイロン6(B−3)[融点:215〜225℃、溶融粘度:1500poise(測定温度230℃、荷重100kg)、製品名:UBEナイロン 1013B、宇部興産社製]
・ナイロン6(B−4)[融点:215〜225℃、溶融粘度:1100poise(測定温度240℃、荷重100kg)、製品名:UBEナイロン 1011FX、宇部興産社製]
・ナイロン12(B−5)[融点:176〜180℃、溶融粘度:1700poise(測定温度200℃、荷重100kg)、製品名:UBEナイロン 3014U、宇部興産社製]
<カーボンブラック(C)>
・カーボンブラック(C−1)配合マスターバッチ[変性ポリオレフィン:ナイロン6,12:カーボンブラック=40:60:28、製品名:リオコンダクト、東洋インキ社製]
・カーボンブラック(C−2)[製品名:デンカブラック(粒状)、電気化学工業社製]
・カーボンブラック(C−3)[製品名:ENSACO 260G、ティムカル社製]
<相溶化剤(D)>
・相溶化剤(D−1)[メタクリル酸メチル−グリシジルメタクリレート共重合体、製品名:ブレンマー CP−50M、日油社製]
・相溶化剤(D−2)[主鎖:メタクリル酸メチル−グリシジルメタクリレート共重合体、側鎖:メタクリル酸メチル重合体、製品名:レゼタ GP−301、東亜合成社製]
・相溶化剤(D−3)[エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、側鎖:メタクリル酸ブチル重合体、製品名:モディパー A4300、日油社製]
・相溶化剤(D−4)[スチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、製品名:アルフォン UG−4035、東亜合成社製]
【0048】
[
参考例1乃至4、比較例1乃至3]
表1に示した配合比となるよう、各原料をドライブレンドし、得られた混合物をラボプラストミルのローラーミキサーR60H[東洋精機製]に仕込み、表1に示す条件にて溶融混練した。得られた組成物を卓上プレス機にて180℃で90秒間予熱し、次いで、180℃×30秒間熱圧プレスして厚さ150μmのフィルムを得た。得られたフィルムの分散相サイズの測定結果を表1に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
表1に示すように、相溶化剤(D)として、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体由来の構成単位と、エポキシ基を有するビニル単量体由来の構成単位とを含む共重合体(D−1)を用いた
参考例1及び2の樹脂組成物は、ポリフッ化ビニリデンのマトリクス中にナイロン6,12が微分散した海島構造を呈し、分散相のサイズが10μm以下となる結果を示した。また、相溶化剤(D)として、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体由来の構成単位と、エポキシ基を有するビニル単量体由来の構成単位と、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体由来のマクロモノマーとを含むグラフト共重合体(D−2)を用いた
参考例3及び4の樹脂組成物は、ポリフッ化ビニリデンマトリクス中にナイロン6,12が微分散した海島構造を呈し、分散相のサイズが3μm以下となる結果を示した。一方、表1に示すように、相溶化剤(D)として、主鎖がエチレン−グリシジルメタクリレート共重合体であり、側鎖がメタクリル酸ブチル重合体であるグラフト共重合体(D−3)を用いた比較例1及び2の樹脂組成物は、分散相のサイズが10μmを超える結果を示した。また、相溶化剤(D)を配合しなかった比較例3の樹脂組成物も、比較例1及び2と同様、分散相のサイズが10μmを超える結果を示した。
【0051】
[
参考例5乃至8、比較例4乃至6]
表2に示した配合比となるよう、各原料をドライブレンドし、得られた混合物をラボプラストミルのローラーミキサーR60H[東洋精機製]に仕込み、表2に示す条件にて溶融混練した。得られた組成物を卓上プレス機にて230℃で90秒間予熱し、次いで、230℃×30秒間熱圧プレスして厚さ150μmのフィルムを得た。得られたフィルムの分散相サイズの測定結果を表2に示す。
【0052】
【表2】
【0053】
表2に示すように、相溶化剤(D)として、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体由来の構成単位と、エポキシ基を有するビニル単量体由来の構成単位とを含む共重合体(D−1)を用いた
参考例5及び6の樹脂組成物は、ポリフッ化ビニリデンのマトリクス中にナイロン6が微分散した海島構造を呈し、分散相のサイズが8μm以下となる結果を示した。また、相溶化剤(D)として、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体由来の構成単位と、エポキシ基を有するビニル単量体由来の構成単位と、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体由来のマクロモノマーとを含むグラフト共重合体(D−2)を用いた
参考例7及び8の樹脂組成物は、ポリフッ化ビニリデンマトリクス中にナイロン6が微分散した海島構造を呈し、分散相のサイズが10μm以下となる結果を示した。一方、表2に示すように、相溶化剤(D)として、主鎖がエチレン−グリシジルメタクリレート共重合体であり、側鎖がメタクリル酸ブチル重合体であるグラフト共重合体(D−3)を用いた比較例4及び5の樹脂組成物は、分散相のサイズが10μmを超える結果を示した。また、相溶化剤(D)を配合しなかった比較例6の樹脂組成物も、比較例4及び5と同様、分散相のサイズが10μmを超える結果を示した。
【0054】
[実施例9乃至11、比較例7乃至10]
表3に示した配合比となるよう、各原料をドライブレンドし、得られた混合物をラボプラストミルのローラーミキサーR60H[東洋精機製]に仕込み、表3に示す条件にて溶融混練した。得られた組成物を卓上プレス機にて200℃で90秒間予熱し、次いで、200℃×30秒間熱圧プレスして厚さ150μmのフィルムを得た。得られたフィルムの分散相サイズの測定結果を表3に示す。
【0055】
【表3】
【0056】
表3に示すように、相溶化剤(D)として、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体由来の構成単位と、エポキシ基を有するビニル単量体由来の構成単位とを含む共重合体(D−1)を用いた実施例9及び10の樹脂組成物は、ポリフッ化ビニリデンのマトリクス中にナイロン12が微分散した海島構造を呈し、分散相のサイズが5μm以下となる結果を示した。また、相溶化剤(D)として、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体由来の構成単位と、エポキシ基を有するビニル単量体由来の構単位と、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体由来のマクロモノマーとを含むグラフト共重合体(D−2)を用いた実施例11の樹脂組成物は、ポリフッ化ビニリデンマトリクス中にナイロン12が微分散した海島構造を呈し、分散相のサイズが5μm以下となる結果を示した。一方、表3に示すように、相溶化剤(D)として、主鎖がエチレン−グリシジルメタクリレート共重合体であり、側鎖がメタクリル酸ブチル重合体であるグラフト共重合体(D−3)を用いた比較例7及び8の樹脂組成物は、分散相のサイズが10μmを超える結果を示した。また、相溶化剤(D)として、スチレン−グリシジルメタクリレート共重合体(D−4)を用いた比較例9の樹脂組成物は、ポリフッ化ビニリデン相とナイロン12相とが交錯した相互連結構造となっており、ナイロン12相が分散相とならず、分散相のサイズを測定することができなかった。なお、相溶化剤(D)を配合しなかった比較例10の樹脂組成物は、比較例7及び8と同様、分散相のサイズが10μmを超える結果を示した。
【0057】
[実施例12及び13]
表4に示した配合比となるよう、ポリフッ化ビニリデン(A−1)と、ナイロン6,12(B−1)と、カーボンブラック(C−1)配合マスターバッチと、相溶化剤(D−2)とをスクリュー径38φmm二軸混練押出機を用いて溶融混練し、コンパウンドを得た。次いで、得られたコンパウンドを環状ダイス(設定温度:195℃、押出径50φmm)を備えた単軸押出機に供給し、溶融状態でチューブ状に押出す(押出速度:1.0m/min)ことで厚さ100μmのチューブ状の半導電性樹脂組成物からなる成形体を得た。得られたチューブ状成形体の体積抵抗率、電気抵抗の均一性の測定結果を表4に示す。
【0058】
【表4】
【0059】
表4に示すように、相溶化剤(D)として、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体由来の構成単位と、エポキシ基を有するビニル単量体由来の構成単位と、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体由来のマクロモノマーとを含むグラフト共重合体(D−2)を用いた樹脂組成物からなる実施例12及び13のチューブ状成形体は、ポリフッ化ビニリデンのマトリクス中にナイロン6,12が微分散した海島構造を呈し、半導電性領域の体積抵抗率のバラつきが小さい結果を示した。
【0060】
[マスターバッチ1及び2の調製]
ナイロン6(B−4)70重量%とカーボンブラック(C−2)30重量%とをスクリュー径38φmm二軸混練押出機を用いて溶融混練し、カーボンブラック(C−2)30重量%のマスターバッチ1を調製した。また、カーボンブラック(C−3)25重量%のマスターバッチ2を同様の方法により調整した。
【0061】
[
参考例14
、実施例15、参考例16及び17]
表5に示した配合比となるよう、上記マスターバッチとポリフッ化ビニリデン樹脂(A)と、ポリアミド樹脂(B)と、相溶化剤(D)とをスクリュー径38φmm二軸混練押出機を用いて溶融混練し、コンパウンドを得た。次いで、得られたコンパウンドを環状ダイス(設定温度:240℃、押出径50φmm)を備えた単軸押出機に供給し、溶融状態でチューブ状に押出す(押出速度:1.5m/min)ことで厚さ100μmのチューブ状の半導電性樹脂組成物からなる成形体を得た。得られたチューブ状成形体の体積抵抗率、電気抵抗の均一性の測定結果を表5に示す。
【0062】
【表5】
【0063】
表5に示すように、相溶化剤(D)として、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体由来の構成単位と、エポキシ基を有するビニル単量体由来の構成単位と、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体由来のマクロモノマーとを含むグラフト共重合体(D−2)を用いた樹脂組成物からなる
参考例14
、実施例15、参考例16及び17のチューブ状成形体は、ポリフッ化ビニリデンのマトリクス中にナイロン6が微分散した海島構造を呈し、半導電性領域の体積抵抗率のバラつきが小さい結果を示した。
【0064】
[マスターバッチ3及び4の調製]
ナイロン12(B−5)75重量%とカーボンブラック(C−3)25重量%とをスクリュー径38φmm二軸混練押出機を用いて溶融混練し、カーボンブラック(C−3)25重量%のマスターバッチ3を調製した。また、カーボンブラック(C−3)20重量%のマスターバッチ4を同様の方法により調整した。
【0065】
[実施例18乃至21]
表6に示した配合比となるよう、上記マスターバッチと、ポリフッ化ビニリデン樹脂(A)と、ポリアミド樹脂(B)と、相溶化剤(D)とをスクリュー径38φmm二軸混練押出機を用いて溶融混練し、コンパウンドを得た。次いで、得られたコンパウンドを環状ダイス(設定温度:190℃、押出径50φmm)を備えた単軸押出機に供給し、溶融状態でチューブ状に押出す(押出速度:2.0m/min)ことで厚さ100μmのチューブ状の半導電性樹脂組成物からなる成形体を得た。得られたチューブ状成形体の体積抵抗率、電気抵抗の均一性の測定結果を表6に示す。
【0066】
【表6】
【0067】
表6に示すように、相溶化剤(D)として、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体由来の構成単位と、エポキシ基を有するビニル単量体由来の構成単位とを含む共重合体(D−1)を用いた実施例18及び19のチューブ状成形体、及び相溶化剤(D)として、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体由来の構成単位と、エポキシ基を有するビニル単量体由来の構成要件と、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体由来のマクロモノマーとを含むグラフト共重合体(D−2)を用いた樹脂組成物からなる実施例20及び21のチューブ状成形体は、ポリフッ化ビニリデンのマトリクス中にナイロン12が微分散した海島構造を呈し、半導電性領域の体積抵抗率のバラつきが小さい結果を示した。
【0068】
以上の如く、本発明によれば、ポリフッ化ビニリデン樹脂(A)とポリアミド樹脂(B)との相溶化剤(D)として、ポリフッ化ビニリデン樹脂(A)と相溶性を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体由来の構成単位と、ポリアミド樹脂(B)末端のアミノ基と反応性を示すエポキシ基を有するビニル単量体由来の構成単位とを含む共重合体を用いることにより、ポリフッ化ビニリデン樹脂(A)マトリクス中にポリアミド樹脂(B)が微分散した海島構造を呈する半導電性樹脂組成物を得ることができ、該半導電性樹脂組成物は電子写真方式を用いた画像形成装置に用いる電子写真用シームレスベルト等に好適に使用することができる。