(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
処理対象ガスに気液接触させて、この処理対象ガス中から酸性ガスを吸収、除去するために循環使用される吸収液を、吸収剤以外の共存物質と分離するリクレーミング装置であって、
リクレーミングの対象となる吸収液が水とともに導入され、不揮発性物質と蒸気状物質とに分離する気液分離器と、
前記気液分離器から抜き出された第1の抜出液を、前記気液分離器に吸収液が導入される吸収液導入口よりも下方の位置で、前記気液分離器に導入する第1の抜出液ラインと、
前記第1の抜出液ラインに配置され、前記第1の抜出液を加熱する第1の加熱器と、
前記気液分離器から抜き出された第2の抜出液を、前記気液分離器に前記第1の抜出液が導入される第1の抜出液導入口よりも下方の位置で、前記気液分離器に導入する第2の抜出液ラインと、
前記第2の抜出液ラインに配置され、前記第2の抜出液とアルカリ剤とを混合する混合タンクと
を備えるリクレーミング装置。
前記第2の抜出液ラインに配置され、前記混合タンクで混合した混合物を固液分離する固液分離器を更に備え、この固液分離器で分離された混合液が、前記第2の抜出液ラインで前記気液分離器に導入される請求項1に記載のリクレーミング装置。
前記第2の抜出液ラインの第2の抜出液が、前記気液分離器で分離された不揮発性物質を、前記気液分離器の底部から排出する廃液の一部である請求項1〜3のいずれか一項に記載のリクレーミング装置。
前記気液分離器にリクレーミング対象吸収液とともに導入される水が、前記酸性ガスを吸収した吸収液を再生する再生塔で生じる還流水である請求項1〜4のいずれか一項に記載のリクレーミング装置。
前記第1の抜出液ラインの第1の抜出液が、前記気液分離器で分離された不揮発性物質を、前記気液分離器の底部から排出する廃液の一部である請求項1〜5のいずれか一項に記載のリクレーミング装置。
前記第2の抜出液ラインに配置され、前記固液分離器で分離された混合液を加熱する第2の加熱器を更に備える請求項2を引用する請求項7に記載のリクレーミング装置。
前記第2の抜出液ラインに配置され、前記固液分離器で分離された混合液を加熱する第2の加熱器を更に備える請求項2を引用する請求項10に記載のリクレーミング装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した文献に記載されたリクレーミング処理は、いずれも、処理対象の吸収液にアルカリ剤を添加した混合物を加熱して、アミンを蒸発させて回収していることから、リクレーミング装置の加熱手段にアルカリ塩が析出し、加熱効率を下げる一方、混合物の突沸の原因にもなり、液飛散によって、回収するアミンを含む蒸気状物質に劣化物を含む共存物質やアルカリ剤が同伴し、リクレーミング処理が不十分となるという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、リクレーミング処理で回収する蒸気状物質に、液飛散などによって不純物が同伴するのを防ぐことができる酸性ガス回収システム及びそれに用いるリクレーミング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、その一態様として、処理対象ガスに気液接触させて、この処理対象ガス中から酸性ガスを吸収、除去するために循環使用される吸収液を、吸収剤以外の共存物質と分離するリクレーミング装置であって、リクレーミングの対象となる吸収液が水とともに導入され、不揮発性物質と蒸気状物質とに分離する気液分離器と、前記気液分離器から抜き出された第1の抜出液を、前記気液分離器に吸収液が導入される吸収液導入口よりも下方の位置で、前記気液分離器に導入する第1の抜出液ラインと、前記第1の抜出液ラインに配置され、前記第1の抜出液を加熱する第1の加熱器と、前記気液分離器から抜き出された第2の抜出液を、前記気液分離器に前記第1の抜出液が導入される第1の抜出液導入口よりも下方の位置で、前記気液分離器に導入する第2の抜出液ラインと、前記第2の抜出液ラインに配置され、前記第2の抜出液とアルカリ剤とを混合する混合タンクとを備えるものである。
【0010】
本発明に係るリクレーミング装置は、前記第2の抜出液ラインに配置され、前記混合タンクで混合した混合物を固液分離する固液分離器を更に備えてもよく、この場合、この固液分離器で分離された混合液は、前記第2の抜出液ラインで前記気液分離器に導入される。また、本発明に係るリクレーミング装置は、前記固液分離器で分離された混合液の一部を、前記混合タンクに導入する混合液循環ラインを更に備えてもよい。
【0011】
前記第2の抜出液ラインの第2の抜出液は、前記気液分離器で分離された不揮発性物質を、前記気液分離器の底部から排出する廃液の一部としてもよい。
【0012】
前記気液分離器にリクレーミング対象吸収液とともに導入される水は、前記酸性ガスを吸収した吸収液を再生する再生塔で生じる還流水としてもよい。
【0013】
本発明に係るリクレーミング装置は、その一実施形態として、前記第1の抜出液ラインの第1の抜出液は、前記気液分離器で分離された不揮発性物質を、前記気液分離器の底部から排出する廃液の一部としてもよい。
【0014】
また、本発明に係るリクレーミング装置は、別の実施形態として、前記気液分離器は、その内部において、下方から上方へと気体を通過させるが、上方から下方へ液体を通過させない少なくとも1つの液受部を備えてもよく、この場合、前記第1の抜出液ラインの第1の抜出液は、前記少なくとも1つの液受部に溜まった貯留液であり、前記第1の抜出液ラインから前記気液分離器へ第1の抜出液が導入される第1の抜出液導入口は、前記吸収液導入口と前記液受部との間に位置し、前記第2の抜出液ラインから前記気液分離器へ第2の抜出液が導入される第2の抜出液導入口は、前記液受部よりも下方に位置する。
【0015】
この実施形態のリクレーミング装置は、前記第2の抜出液ラインに配置され、前記固液分離器で分離された混合液を加熱する第2の加熱器を更に備えてもよい。また、これに替えて、この実施形態のリクレーミング装置は、前記気液分離器に、前記少なくとも1つの液受部よりも下方の位置で、水を導入する水導入ラインと、前記水導入ラインに配置され、この水を加熱する第2の加熱器とを更に備えてもよい。
【0016】
本発明に係るリクレーミング装置は、更に別の実施形態として、前記気液分離器が、その内部において、下方から上方へと気体を通過させるが、上方から下方へ液体を通過させない少なくとも3つの液受部を備えていてもよく、この場合、前記第1の抜出液ラインの第1の抜出液は、前記少なくとも3つの液受部のうちの中間の液受部に溜まった貯留液であり、前記第1の抜出液ラインから前記気液分離器へ第1の抜出液が導入される第1の抜出液導入口は、前記中間の液受部とその上の液受部との間に位置し、前記第2の抜出液ラインから前記気液分離器へ第2の抜出液が導入される第2の抜出液導入口は、前記少なくとも3つの液受部のうちの最も底部側の液受部の底部側に位置する。
【0017】
この実施形態のリクレーミング装置は、前記第2の抜出液ラインに配置され、前記固液分離器で分離された混合液を加熱する第2の加熱器を更に備えてもよい。また、これに替えて、この実施形態のリクレーミング装置は、前記気液分離器に、前記少なくとも3つの液受部のうちの最も底部側の液受部よりも底部側の位置で、水を導入する水導入ラインと、
前記水導入ラインに配置され、この水を加熱する第2の加熱器とを更に備えてもよい。
【0018】
上述したいずれの実施形態のリクレーミング装置も、前記気液分離器で分離された蒸気状物質を、前記気液分離器の頂部から排出する回収ラインと、前記回収ラインに配置され、前記排出された蒸気状物質を圧縮する圧縮機とを更に備えてもよい。また、これに替えて、
上述したいずれの実施形態のリクレーミング装置も、前記気液分離器で分離された蒸気状物質を、前記気液分離器の頂部から排出する回収ラインと、前記回収ラインに配置され、前記排出された蒸気状物質を気液分離する仕上気液分離器と、前記仕上気液分離器で分離された気体成分を圧縮する圧縮機とを更に備えてもよい。
【0019】
本発明は、別の態様として、酸性ガス回収システムであって、処理対象ガスに吸収液を気液接触させて、この処理対象ガス中から酸性ガスを吸収、除去する吸収塔と、前記吸収塔で酸性ガスを吸収した吸収液を加熱して、酸性ガスを放散させて吸収液を再生する再生塔と、上述したリクレーミング装置とを備えるものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、リクレーミングの対象となる吸収液を、先ず、アルカリ剤と混合することなく、水とともに気液分離器に供給して加熱することで、アミン硝酸塩やアミン硫酸塩などの不揮発性物質と、吸収液の主成分であるアミンを含む蒸気状物質とに容易に分離することができるとともに、その後、第2の抜出液ラインによって、この不揮発性物質を含む第2の抜出液を抜き出し、混合タンクにて、これにアルカリ剤を添加して、不揮発性物質を、塩ではない元のフリーな状態のアミンとし、このアミンを含む混合液を、再び気液分離器に供給して加熱することで、アミンを含む蒸気状物質を回収することができる。また、気液分離器には、アルカリ剤添加によるアルカリ硫酸塩などの析出固体を含む混合液が供給されるものの、気液分離器では、第1の抜出液ラインによって抜き出した第1の抜出液を第1の加熱器で加熱し、これを気液分離器に供給していることから、気液分離器内で混合液が突沸するのを防ぐことができ、回収する蒸気状物質に、液飛散による気液分離器内の成分が同伴するのを防止することができる。
【0021】
また、混合タンク後に、固液分離器を設けることで、アルカリ剤の添加によって生じたアルカリ硫酸塩などの固体析出物を除去することができ、アミンを含む混合液を気液分離器に供給することができるので、更に安定して、回収する蒸気状物質に、液飛散による気液分離器内の成分が同伴するのを防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る酸性ガス回収システム及びそれに用いるリクレーミング装置の実施の形態について、詳細に説明する。
【0024】
[第1の実施の形態]
図1に示すように、本実施の形態の酸性ガス回収システムは、酸性ガスとしてCO
2を含有する処理対象ガスと、酸性ガスを吸収する吸収液としてアミン吸収液とを気液接触し、アミン吸収液中にCO
2を吸収させて処理対象ガス中からCO
2を除去する吸収塔10と、CO
2を吸収したアミン吸収液(リッチ吸収液)からCO
2を放出させて、このCO
2を放出したアミン吸収液(リーン吸収液)をCO
2の吸収液として再生する再生塔20と、このように循環使用されるアミン吸収液を、吸収剤以外の共存物質と分離するリクレーミング装置40とを少なくとも備える。本実施の形態のリクレーミング装置40の詳しい構成については、
図2にリクレーミング装置40Aとして示す。
【0025】
なお、本実施の形態では、酸性ガスがCO
2である場合について説明するが、本発明は、これに限定されず、酸性ガスがH
2Sの場合や、CO
2とH
2Sの両方の場合でも、同様に機能するものである。また、
図1及び
図2は、本実施の形態の概要を説明するための図であり、付属する機器を一部省略している。
【0026】
吸収塔10は、その塔下部に、CO
2を含有する処理対象ガスを吸収塔10内に供給するためのラインL
1を備えるとともに、塔頂部には、酸性ガスが除去された処理対象ガスを吸収塔10から排出するためのラインL
3を備える。そして、吸収塔10は、これらラインL
1、L
3の接続位置の間に、処理対象ガスとアミン吸収液が気液接触する充填部11を備える。吸収塔10の底部には、CO
2を吸収したアミン吸収液(リッチ吸収液)の一部を再生塔20に送るためのラインL
4が設けられている。このラインL
4には、アミン吸収液を送給するためのポンプP
4と、後述するリーン吸収液との熱交換を行うための熱交換器25とが、吸収塔10側から順に設けられている。
【0027】
再生塔20は、リッチ吸収液が供給されるラインL
4の位置の下方に、リッチ吸収液からCO
2を放出させるための下部充填部21aと、放出されたCO
2ガスを後述する還流水で洗浄するための上部充填部21bとを備える。また、再生塔20は、下部充填部21aの下方に、液受部21cを備える。この液受部21cは、下方から上方へと気体を通過させるが、上方から下方へ液体を通過させない構成となっている。そして、液受部21cには、液受部21cに溜まった吸収液を、液受部21cの下方から再生塔20内に供給するためのラインL
7が設けられている。このラインL
7には、吸収液からCO
2を放出させるため、吸収液を加熱するリボイラ22が設けられている。このリボイラ22には、加熱用の飽和蒸気をリボイラ22に供給するためのラインL
6が設けられている。
【0028】
再生塔20の塔頂部には、リッチ吸収液から放出されたCO
2ガスを再生塔20から排出するためのラインL
10が設けられている。このラインL
10には、CO
2ガスを冷却するための冷却器23と、冷却により生じた凝縮水とCO
2ガスとを分離するための気液分離器24が設けられている。気液分離器24には、分離した凝縮水を還流水として再生塔20内の上部充填部21の上方から供給するためのラインL
9と、分離したCO
2ガスを系外へ排出するためのラインL
11が設けられている。還流水のラインL
9には、還流水を後述するリクレーミング装置40に供給するための水ライン53と、還流水を再生塔内に送給するためのポンプP
9が設けられている。
【0029】
再生塔20の塔底部には、リボイラ22によって加熱、再生されたリーン吸収液を、吸収塔10内の下部充填部11aの上方から供給するためのラインL
8が設けられている。このラインL
8には、アミン吸収液中に吸収剤以外の共存物質が蓄積された場合に、これを分離するために、リーン吸収液をリクレーミング装置40に送るためのラインL
8aと、ラインL
4を流れるリッチ吸収液との間で熱交換する熱交換器25と、リーン吸収液を送給するためのポンプP
8と、リーン吸収液を冷却する冷却器12とが、再生塔20側から順に設けられている。
【0030】
また、吸収塔10の処理対象ガスの流れ方向に対して前流側には、処理対象ガスを吸収塔10に供給する前に、処理対象ガスを冷却するための冷却塔30が設けられている。この冷却塔30は、その塔下部に、冷却塔30内に処理対象ガスを供給するためのラインL
0を備えるとともに、塔頂部に、冷却された処理対象ガスを冷却塔30から排出して吸収塔10へ供給するためのラインL
1を備える。そして、冷却塔30は、これらラインL
0、L
1の接続位置の間に、冷却水と処理対象ガスとを接触させるための充填部31を備える。処理対象ガスを供給するラインL
1には、処理対象ガスを送給するためのブロワB
1が設けられている。また、冷却塔30の塔底部には、この塔底部に溜まった冷却水を、冷却塔30内の充填部31の上方へ供給するためのラインL
2が設けられており、このラインL
2には、冷却水を冷却するための冷却器32が設けられている。
【0031】
リクレーミング装置40には、リーン吸収液のラインL
8からリクレーミング処理の対象となるリーン吸収液をリクレーミング装置40に供給するためのラインL
8aと、リクレーミング装置40でリクレーミング処理された吸収液を再生塔20に戻すためのラインL
12とが設けられている。後者のラインL
12は、再生塔20の液受部21cよりも底部側の位置に、リクレーミング処理後の吸収液を導入するように設けられている。
【0032】
リクレーミング装置40は、
図2に示すように、ラインL
8から処理対象のリーン吸収液を加熱により不揮発性物質と蒸気状物質とに分離する気液分離器50と、この気液分離器で分離された不揮発性物質を含む廃液の一部を加熱して気液分離器に戻す第1の加熱器56と、また、この廃液の他の一部をアルカリ剤とを混合する混合タンク60と、混合タンク60で混合した混合物を固液分離し、得られた混合液を気液分離器に戻す固液分離器65とを主に備える。
【0033】
気液分離器50に処理対象のリーン吸収液を供給するラインL
8aには、水ライン53aが設けられた混合器52が設置されている。この混合器52には、リーン吸収液の流量を測定する流量計(図示省略)と、この流量計の値に従って水ライン53aから所定の量の水を供給する調節弁(図示省略)などが設けられている。水ライン53aは、再生塔20の気液分離器24で得られる還流水の水ライン53の分岐の一つである。
【0034】
気液分離器50は、供給されたリーン吸収液を加熱して、アミン吸収液の主成分であるアミンを含む蒸気状物質と、アミンがNOxやSOxと反応して生じたアミン硝酸塩やアミン硫酸塩などの劣化物(および後述するアルカリ剤の添加により析出したアルカリ硫酸塩などの固体)を含む不揮発性物質とに分離する装置である。気液分離器50内には、蒸気状物質と不揮発性物質との分離を効率よく行うために、充填材を備えた充填層(図示省略)が設けられている。
【0035】
気液分離器50には、気液分離器にて分離、回収した回収蒸気状物質を再生塔20へ送るためのラインL
12が、その頂部に設けられており、気液分離器で残された不揮発性物質を含む抜出液を気液分離器から抜き出す抜出液ライン55が、その底部に設けられている。抜出液ライン55は、3つに分岐しており、詳しくは、抜出液の一部を混合タンク60及び固液分離器65を経て再び気液分離器50に導入する混合液ライン55aと、抜出液の一部を系外へ排出する排出廃液ライン55bと、抜出液の一部を第1の加熱器56を経て再び気液分離器50に導入する加熱ライン55cとに別れている。
【0036】
また、気液分離器50は、頂部から底部に向かって、ラインL
8aを介してリーン吸収液が導入される導入口と、加熱ライン55cを介して加熱された抜出液が導入される導入口と、混合液ライン55aを介して混合液が導入される導入口とが、順に設けられている。
【0037】
加熱ライン55cに配置されている第1の加熱器56は、特に限定されないが、熱交換器が好ましく、加熱ライン55cを流れる抜出液を加熱するため、飽和蒸気などの熱源を第1の加熱器56に供給するためのラインが設けられている。
【0038】
混合液ライン55aには、混合タンク60と固液分離器65とが、抜出液もしくは混合液の流れの順に配置されている。
【0039】
混合タンク60は、混合液ライン55aの他に、タンク内の混合物を攪拌する攪拌機61と、混合タンク60内にアルカリ剤を添加するアルカリ剤ライン62とが設けられている。抜出液をタンクに供給する混合液ライン55aには、抜出液の流量を測定する流量計(図示省略)が設けられており、アルカリ剤ライン62には、この流量計の値に従って所定の量のアルカリ剤を供給する調節弁(図示省略)が設けられている。また、混合タンク60と固液分離器65との間の混合液ライン55a’は、抜出液とアルカリ剤の混合物が流れ、この混合液ライン55a’には、混合物を送給するためのポンプ64が設けられている。
【0040】
固液分離器65は、混合タンク60から供給された混合物を、アルカリ剤添加による析出固体などの固形物と、混合液とに分離する装置である。固液分離器65としては、例えば、ハイドロサイクロンなどの遠心分離器や、フィルタ濾過器などを用いることができる。固液分離器65には、分離された固形物を系外に排出するための排出固形物ライン67が設けられている。
【0041】
固液分離器65と気液分離器50との間の混合液ライン55a”は、固形物を分離した混合液が流れ、この混合液ライン55a”には、混合液の一部を混合タンク60に供給する循環混合液ライン66と、気液分離器50に供給する混合液に水を添加するための水ライン53bが、固液分離器65側から順に設けられている。水ライン53bは、再生塔20の気液分離器24で得られる還流水の水ライン53の分岐の一つである。なお、混合液ライン55aには、混合液の供給を止めるバルブ(図示省略)が設けられており、水ライン53bから水のみを気液分離器50に供給することもできる。
【0042】
このような構成を備えた本実施の形態の酸性ガス回収システムによれば、先ず、CO
2を含有する処理対象ガスをラインL
0から冷却塔30に供給して冷却する。なお、処理対象ガスの例としては、天然ガスや、アンモニア製造等の化学プラントにて製造されるプロセスガス、石炭ガス化ガス等の合成ガス、化石燃料の燃焼排ガスなど、少なくともCO
2を含むガスである。冷却塔30では、処理対象ガスを、冷却器32からの冷却水で充填部31において所定の温度まで冷却した後、ブロアB
1によりラインL
1を経て吸収塔10の下部に導入する。処理対象ガスは、吸収塔10での吸収効率から、一例として30〜40℃に冷却することが好ましい。なお、冷却塔30の塔底部に溜まった冷却水は、ポンプP
2によりラインL
2を介して冷却器32で冷却した後、冷却塔30に供給して、循環利用する。
【0043】
続いて、吸収塔10では、ラインL
1から導入する処理対象ガスを、ラインL
8より導入するアミン吸収液と充填部11にて向流接触させ、処理対象ガス中のCO
2をアミン吸収液に吸収することによって、処理対象ガスからCO
2を除去する。これにより、CO
2を処理対象ガス中から90%以上除去することができる。アミン吸収液は、アミンの水溶液であり、主成分であるアミンとしては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミンを用いることができる。
【0044】
CO
2が除去された処理対象ガスは、吸収塔10の塔頂部からラインL
3を介して排出する。CO
2を吸収したリッチ吸収液は、吸収塔10の塔底部に溜まり、その一部を、ラインL
4を介して熱交換器25で加熱した後、再生塔20に供給する。再生塔20に供給したリッチ吸収液は、下部充填部21aにて吸熱反応によりCO
2を放出しながら流下して液受部21cに溜まり、ラインL
7を介してリボイラ22に供給し、ラインL
6からの高温の飽和蒸気と熱交換させて昇温し、リッチ吸収液中のCO
2を放散する。リボイラ22に導入した飽和蒸気は、吸収液との熱交換により凝縮して飽和水となりリボイラ22から排出する。CO
2を放散したリーン吸収液は、再生塔20の塔底部に溜まる。
【0045】
吸収液から分離したCO
2ガスは、再生塔20の上部充填部21bにてラインL
9から供給した還流水と気液接触させて同伴するアミン吸収液を除去した後、再生塔20の塔頂部からラインL
10を介して排出する。そして、CO
2ガスを冷却器23にて冷却することで同伴する水蒸気を凝縮し、気液分離器24にてCO
2ガスと凝縮水とに分離する。分離したCO
2ガスはラインL
11を介して排出して、純度の高いCO
2ガスとして回収し、凝縮水はポンプP
9によりラインL
9を介して再生塔20に供給して還流水として再利用する他、ライン53を介してリクレーミング装置40にて再利用する。再生塔20の塔底部に溜まったリーン吸収液は、ラインL
8を介して熱交換器25に導入し、リッチ吸収液と熱交換させて冷却し、更に冷却器12で冷却した後、吸収塔10に供給し、アミン吸収液として循環利用する。
【0046】
このようにしてアミン吸収液は、吸収塔10でCO
2を吸収し、再生塔20でCO
2を放散した後、再び吸収塔10でCO
2を吸収するという循環利用が行われるが、この循環利用によって、排ガス中の酸素でアミンが酸化劣化したり、排ガス中の残存NOxや残存SOxとアミンが反応してアミン硝酸塩やアミン硫酸塩が生じたり、排ガスに含まれる煤塵などの固形物が混入したりして、これらの劣化物や不純物等の吸収剤以外の共存物質が吸収液中に蓄積されてしまう。よって、これら吸収剤以外の共存物質をアミン吸収液から分離する場合には、再生塔20のラインL
8aからリーン吸収液の一部をリクレーミング装置40に導入する。
【0047】
リクレーミング装置40では、
図2に示すように、先ず、ラインL
8aのリーン吸収液に、再生塔20の還流水を水ライン53aから所定の量で供給し、混合器52で混合した後、気液分離器50に供給する。気液分離器50内に供給されたリーン吸収液および水は、充填層(図示省略)を流下し、底部の抜出液ライン55から抜き出し、加熱ライン55cを介して第1の加熱器56で飽和蒸気などにより加熱した後、再び気液分離器50に供給する。加熱された吸収液は、吸収液中のアルカノールアミン等のフリーなアミンが蒸発し、水とともに蒸気状物質として気液分離器50内を上昇し、ラインL
8aから供給される吸収液と向流接触してこれらを加熱しつつ、頂部のラインL
12で回収する。ラインL
12で回収した蒸気状物質は、再生塔20に送り、再利用する。
【0048】
気液分離器50および第1の加熱器56で吸収液を加熱する温度は、供給されるリーン吸収液と水との混合物の沸点以上とし、具体的には、例えば、80〜180℃の範囲であり、好ましくは100〜150℃の範囲である。なお、混合器52でリーン吸収液に水を供給するのは、加熱対象となる吸収液中のアミン濃度を低下させて沸点を下げるためであり、沸点を下げることで、気液分離器50で回収されるアルカノールアミン等の吸収液の主成分の回収率を向上させることができる。また、水として再生塔20の還流水を使用するのは、系内で発生した水を再利用して、本システム内における水を閉じた系に極力することで、吸収液のアミン濃度を一定に保つことができる。
【0049】
気液分離器50の底部の抜出液ライン55から抜き出した抜出液には、アミン硝酸塩やアミン硫酸塩などの不揮発性物質が含まれており、この抜出液の一部は、混合液ライン55aを介して混合タンク60に供給する。混合タンク60には、抜出液の供給量に合わせて、アルカリ剤ライン62から所定量のアルカリ剤を添加し、攪拌機61にて抜出液とアルカリ剤との混合物を撹拌する。アルカリ剤としては、例えば、水酸化ナトリウムや炭酸ナトリウムなどが好ましい。このようにアルカリ剤を添加することで、吸収液中のアミン硝酸塩やアミン硫酸塩と反応させて、塩ではない元のフリーな状態のアミンとなるともに、硫酸ナトリウムなどが析出する。
【0050】
混合タンク60で得た混合物は、ポンプ64により混合液ライン55a’を介して固液分離器65に送る。固液分離器65では、上述した硫酸ナトリウムといった析出固体などの固形物と、アミン水溶液を含む混合液とに分離する。分離された固形物は、排出固形物ライン67から系外に排出する。
【0051】
固液分離器65で得たアミン水溶液を含む混合液は、その一部を循環混合液ライン66から混合タンク60に戻す。このように混合液を混合タンク60で循環させることによって、混合タンク60や混合液ラインでの析出固体の堆積やラインの閉塞などを防止するという利点がある。残りの混合液は、水ライン53bからの水と混合し、混合液ライン55a”を介して気液分離器50に供給する。気液分離器50では、アルカリ剤添加により塩ではないフリーな状態のアミンが、第1の加熱器による加熱で蒸発し、ラインL
12から水とともに蒸気状物質として回収される。一方、アミン硝酸塩やアミン硫酸塩などの共存物質や、アルカリ硫酸塩などの析出固体は、底部の排出廃液ライン55bを介して系外へ排出する。
【0052】
このように、ラインL8aから供給される吸収液を、アルカリ剤と混合することなく、水とともに気液分離器50に供給することで、比較的に低い温度の加熱によって、不揮発性物質と蒸気状物質とに容易に分離することができるとともに、抜出液ライン55および混合液ライン55aを介して混合タンク60にて、この不揮発性物質を含む抜出液にアルカリ剤を添加して、不揮発性物質をフリーな状態のアミンとし、このアミンを含む混合液を、再び気液分離器50に供給して加熱することで、アミンを含む蒸気状物質を回収するが、気液分離器50では、抜出液ライン55および加熱ライン55cによって抜き出した抜出液を第1の加熱器56で加熱し、これを気液分離器50に戻すということをしていることから、気液分離器50には、アルカリ剤添加による析出固体を含む混合液が供給されるものの、気液分離器50内で混合液が突沸するのを防ぐことができ、その頂部に設けられたラインL
12から回収する蒸気状物質に、気液分離器50内の成分が液飛散により同伴するのを防止することができる。
【0053】
また、混合タンク60の後に、固液分離器65を設けることで、アルカリ剤添加による固体析出物を除去した後に、混合液を気液分離器50に供給するため、気液分離器50に混合液を供給する混合液ライン55a”中の混合液中の析出固体の濃度を大幅に下げることができる。
図2に示す構成のリクレーミング装置において、気液分離器に供給される混合液中の固体析出物質塩の濃度を
図3に示す。
図3には、比較例として、特開2015−77581号公報の
図2に開示されている構成において、第1気液分離器に供給される気液混合物中の固体析出物質塩の濃度を1として示した。比較例では、気液分離器が設けられていないことから、比較例に比べて、気液分離器がある
図2に示す本発明の構成は、固体析出物質塩の濃度を、その約10%にまで低下させることができた。
【0054】
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態のリクレーミング装置40Bは、
図4に示すように、第1の実施の形態のリクレーミング装置40Aと比べ、気液分離器50の内部に、下方から上方へと気体を通過させるが、上方から下方へ液体を通過させない液受部57を備えている点と、第1の加熱器56が、加熱ライン55cに替えて、液受部57に溜まった貯留液を抜き出して、ラインL
8aの吸収液導入口と液受部57との間の位置に、加熱した貯留液を導入する貯留液加熱ライン58に配置されている点、固液分離器65で固形物を除去した混合液を加熱するために、混合液ライン55a”に第2の加熱器68を備えている点で主に異なる。
図2と同様の構成については同じ符号を付し、ここでは説明を省略する。
【0055】
また、本実施の形態のリクレーミング装置40Bでは、混合液ライン55a”から気液分離器50に導入される混合液の導入口は、液受部57の下方に位置されている。水ライン53bは、混合液ライン55a”の混合液とともに第2の加熱器68に供給されるように配置されている。気液分離器50は、液受部57に溜まった貯留液を、液受部57の下方に供給する上段抜出液ライン59を備える。
【0056】
この実施の形態によれば、気液分離器50の液受部57からの抜出液を加熱する第1の加熱器56には、混合液ライン55a”からの混合液が混入しないことから、その頂部に設けられたラインL
12から回収する蒸気状物質に、気液分離器50内の成分が液飛散により同伴するのをより確実に防止することができる。なお、気液分離器50の液受部57の下方側の混合液は、第2の加熱器68によって所定の温度に加熱することができる。
【0057】
[第3の実施の形態]
第3の実施の形態のリクレーミング装置40Cは、
図5に示すように、第2の実施の形態のリクレーミング装置40Bと比べ、第2の加熱器71が、混合液ライン55a”に替えて、気液分離器50に水を供給する水ライン53bに配置されている点で主に異なる。
図4と同様の構成については同じ符号を付し、ここでは説明を省略する。
【0058】
この実施の形態によれば、第2の加熱器71が水ライン53bに配置されているので、第2の実施の形態に比べて、第2の加熱器71に混合液の供給がないことから、加熱器に固体が析出するのを確実に防ぐことができ、第2の加熱器71における突沸は確実に防ぐことができ、より安定した運転を行うことができる。
【0059】
[第4の実施の形態]
第4の実施の形態のリクレーミング装置40Dは、
図6に示すように、第3の実施の形態のリクレーミング装置40Cと比べ、気液分離器50の内部に、3段の液受部57a、57b、57cを備えている点と、第1の加熱器56が、3段のうちの中間の液受部57bに溜まった貯留液を抜き出して、ラインL
8aの吸収液導入口と上段の液受部57aとの間の位置に、加熱した貯留液を導入する貯留液加熱ライン58に配置されている点と、3段の液受部57a、57b、57cに溜まった貯留液を、液受部のそれぞれの下方に供給する3つの上段抜出液ライン59a、59b、59cが設けられている点で主に異なる。
図5と同様の構成については同じ符号を付し、ここでは説明を省略する。
【0060】
この実施の形態によれば、第1の加熱器56で加熱された抜出液は、上段の液受部5757aよりも下方の位置に供給されることから、この第1の加熱器56において液飛散が生じても、ラインL
12から回収する蒸気状物質に、気液分離器50内の成分が液飛散により同伴するのをより確実に防止することができる。
【0061】
[第5の実施の形態]
第5の実施の形態のリクレーミング装置40Eは、
図7に示すように、第1の実施の形態のリクレーミング装置40Aと比べ、気液分離器50の頂部のラインL
12に、蒸気状物質を圧縮する圧縮機73が設けられている点で異なる。
図2と同様の構成については同じ符号を付し、ここでは説明を省略する。
【0062】
この実施の形態によれば、気液分離器50から再生塔20への吸収液のラインL
12に圧縮機73を設けたことから、リクレーミング装置40Eは、再生塔20よりも低い運転圧力でも安定した運転を行うことができる。
【0063】
[第6の実施の形態]
第6の実施の形態のリクレーミング装置40Fは、
図8に示すように、第6の実施の形態のリクレーミング装置40Eと比べ、気液分離器50の頂部のラインL
12に、蒸気状物質を冷却する冷却器74と、この冷却された蒸気状物質を気液分離する仕上気液分離器75が順に設けられている点と、分離された回収蒸気状物質を圧縮する圧縮機77が設けられている点で異なる。
図7と同様の構成については同じ符号を付し、ここでは説明を省略する。
【0064】
この実施の形態によれば、第5の実施の形態と比べて、回収蒸気状物質に含まれる不純物を仕上気液分離器75で除去することができるので、リクレーミング処理を精度高く行うことができる。