(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態に係る成形装置1は、
図1及び
図2に示すように、第1の金型(たとえば、上型)3と第2の金型(たとえば、下型)5とをお互いに接触させることなく、上型3と下型5とで被成形材(ガラス素材)7を挟み込んで押圧し、ガラス素材7を成形する装置である。成形装置1を用いて、ガラス素材7から成形品(たとえば、光学レンズ等の光学素子)(図示せず)が成形される。
【0021】
なお、成形装置1が、たとえば、上型3と下型5との間にガラス素材7を所定の力で挟み込んで押圧し、上型3、下型5の少なくともいずれかに形成されている微細な転写パターン(微細な凹凸で形成された転写パターン)をガラス素材7に転写する装置である場合、成形装置1を転写装置として考えることもできる。
【0022】
成形装置1は、上型3が設置される導電性で耐熱性を備えた第1の金型設置部(上型設置部)11、下型5が設置される導電性で耐熱性を備えた第2の金型設置部(下型設置部)13、ガラス素材7を成形のために加熱する、赤外線ランプ93と反射材95とで構成される加熱部(ヒータ)15、第1の電極棒19と第2の電極棒21と第1の弾性部材31と第2の弾性部材33と上側コネクタ67と下側コネクタ69と金型電荷電源71と配線73と電極軸クランプ部品75とで構成される電圧印加手段17等で構成されている。
【0023】
電圧印加手段17は、上型3に導通している第1の電極棒(上型用電極棒)19と下型5に導通している第2の電極棒(下型用電極棒)21とを用いて、上型3と下型5との間に電圧を印加するように構成されている。
【0024】
電圧印加手段17による電圧の印加は、たとえば、成形時のガラス素材7の温度を従来の成形装置を用いた場合よりも低くし、成形時において上型3と下型5とでガラス素材7を挟み込む力を従来の成形装置を用いた場合よりも小さくするためになされるものである。また、電圧印加手段17による電圧の印加は、上型3、下型5のそれぞれに、たとえば、モリブデンで構成された上型用電極棒19、下型用電極棒21のそれぞれを上型設置部11、下型設置部13を介して接触させ、これらの接触している上型用電極棒19、下型用電極棒21を介して、ガラス素材7を成形するときになされるように構成されている。電圧印加手段17による電圧の印加では、上型3を+10kVにし、下型5をアースに接続するようになっているが、上型3を+10kVにし、下型5を−10kVにしてもよいし、これらの逆のパターンで電圧を印加してもよい。
【0025】
また、成形装置1には、
図2、
図5及び
図6に示すように、第1の金型支持体(上型支持体)23と、第2の金型支持体(下型支持体)25と、第1の温度センサ(上型用温度センサ)27Aと第2の温度センサ(下型用温度センサ)27Bとからなる温度センサ27が設けられている。上型支持体23は、絶縁性で耐熱性を備えた材料(たとえば、窒化珪素等のファインセラミックス)で構成されて筒状に形成されており、上型設置部11は、上型支持体23の一端部(下端部;下側)を塞ぐように設けられている。下型支持体25も、絶縁性の耐熱性を備えた材料(たとえば、窒化珪素等のファインセラミックス)で構成されて筒状に形成されており、下型設置部13は下型支持体25の一端部(上端部;上側)を塞ぐように設けられている。上型用電極棒19は、一部が上型支持体23の内部に設けられており、下型用電極棒21は、一部が下型支持体25の内部に設けられている。
【0026】
また、成形装置1では、温度センサ27によって、ガラス素材7の温度が上型3及び下型5を介して測定され、この測定結果に応じて、入力部29Aと出力部29Bとを備えた制御装置(CPUを備えた制御装置)29の制御の下、加熱部15の出力を適宜フィードバック制御するようになっている。そして、ガラス素材7を成形するときガラス素材7の温度を上型3及び下型5を介して所定の成形用の温度(たとえば、500℃〜800℃)にするようになっている。なお、下型5の温度を測定する第2の温度センサ27Bは、
図2、
図5及び
図6に示すように、下型5を設置する下型設置部13に設けられており、上型3の温度を測定する第1の温度センサ27Aは、
図5及び
図6に示すように、上型3を設置する上型設置部11のところに設けられている。
【0027】
電圧印加手段17では、第1の弾性部材(上方弾性部材)31を用いて上型用電極棒19を上型3側に付勢し、上型設置部11を介して上型3に接触させ、第2の弾性部材(下方弾性部材)33を用いて下型用電極棒21を下型5側に付勢し、下型設置部13を介して下型5に接触させるようになっている。そして、上型3と下型5との間に電圧を印加するようになっている。
【0028】
上方弾性部材31、下方弾性部材33のそれぞれは、圧縮バネ(たとえば、圧縮コイルバネ)で構成されている。なお、弾性部材のかわりに空気圧シリンダ等のシリンダを用いて、上型用電極棒19、下型用電極棒21を付勢するようにしてもよい。
【0029】
上型用電極棒19はこの長手方向の中間部に第1の鍔部35Aを備えた棒状に形成され、下型用電極棒21はこの長手方向の中間部に第2の鍔部35Bを備えた棒状に形成されている。
【0030】
上型3は、上型支持体23の一端部(下端)に上型設置部11を介して設けられており、上型支持体23の他端部(上端)には、絶縁性で耐熱性を備えた材料(たとえば、窒化珪素等のファインセラミックス)で構成された第1の絶縁材(上型用絶縁プレート)37が上型支持体23の他端部を塞ぐように設けられている。
【0031】
また、上型用電極棒19の第1の鍔部35Aが、上型支持体23、上型設置部11、及び上型用絶縁プレート37により形成される空間内に配置されるとともに、上型用電極棒19が、上型3が設置される上型設置部11に対して接近・離反方向に移動可能なように上型用絶縁プレート37を貫通して設けられている。
【0032】
また、上方弾性部材31が、上型用電極棒19の第1の鍔部35Aと上型用絶縁プレート37との間に設けられていて、上型用電極棒19を下方に付勢している。
【0033】
下型5は、下型支持体25の一端部(上端)に下型設置部13を介して設けられており、下型支持体25の他端部(下端)には、絶縁性で耐熱性を備えた材料(たとえば、窒化珪素等のファインセラミックス)で構成された第2の絶縁材(下型用絶縁プレート)39が下型支持体25の他端部を塞ぐように設けられている。
【0034】
また、下型用電極棒21の第2の鍔部35Bが、下型支持体25、下型設置部13、及び下型用絶縁プレート39により形成される空間内に配置されるとともに、下型用電極棒21が、下型5が設置される下型設置部13に対して接近・離反方向に移動可能なように下型用絶縁プレート39を貫通して設けられている。
【0035】
また、下方弾性部材33が、下型用電極棒21の第2の鍔部35Bと下型用絶縁プレート39との間に設けられていて、下型用電極棒21を上方に付勢している。
【0036】
このように構成されていることで、上下方向で、上から下に向かって、上型用絶縁プレート37、上型支持体23、上型設置部11、上型3、下型5、下型設置部13、下型支持体25、下型用絶縁プレート39がこの順にならんでいる。上型用電極棒19の第1の鍔部35Aを含む下側の部位は、上型支持体23内に位置しており、上型用電極棒19の中間部は、上方弾性部材31を介して上型用絶縁プレート37に係止しており、上型用電極棒19の上側の部位は、上型用絶縁プレート37から上方に突出している。下型用電極棒21の第2の鍔部35Bを含む上側の部位は、下型支持体25内に位置しており、下型用電極棒21の中間部は、下方弾性部材33を介して下型用絶縁プレート39に係止しており、下型用電極棒21の下側の部位は、下型用絶縁プレート39から下方に突出している。
【0037】
また、成形装置1では、上型用電極棒19が中空になっていて筒状に形成されており、上型用電極棒19の内部(中空部)と、上型設置部11及び上型3に設けられた流路(図示せず)内とに、被成形材表面の改質、上型成形面の改質のためのガス(還元ガス)を流すことで、ガラス素材7の成形部位にガスを供給するように構成されている。すなわち、成形装置1には、ガラス素材7の成形部位にガスを供給する第1のガス供給路40A(
図5及び
図6参照)が設けられている。
【0038】
なお、第1のガス供給路40Aのように、上型用電極棒19の内部と、上型設置部11及び上型3に設けられた流路内とに、ガスを流すことに代えてもしくは加えて、下型用電極棒21の内部(中空部)と、下型設置部13及び下型5に設けられた流路内とに還元ガスを流すようにしてもよい。すなわち、下型用電極棒21が中空になっていて筒状に形成されており、下型用電極棒21の内部(中空部)と、下型設置部13及び下型5に設けられた流路(図示せず)内とに、被成形材表面の改質、上型成形面の改質のためのガスを流すことで、ガラス素材7の成形部位にガスを供給する第2のガス供給路40B(
図2、
図5及び
図6参照)を設ける構成にしてもよい。
【0039】
ここで、成形装置1について、
図1等を参照しつつさらに詳しく説明する。
【0040】
成形装置1では、成形チャンバ41が形成されるようになっており、上述した上型3、下型5を用いたガラス素材7の成形は、成形チャンバ41内でなされるようになっている。なお、ガラス素材7の成形をするときには、成形チャンバ41内は不活性ガス(たとえば、N
2ガス)で満たされている。なお、成形チャンバ41内を窒素ガスで満たすことなく真空状態のままにしておいてガラス素材7の成形をするようにしてもよい。
【0041】
また、上型用電極棒19、下型用電極棒21から供給される上述した改質ガスは、H
2ガスであるが、H
2ガスとは異なる種類のガス、例えば、O
2ガスであってもよいし、また、H
25%、N
295%の混合ガス、O
25%、N
295%の混合ガスであってもよい。
【0042】
また、成形装置1は、枠状のフレーム43、プレス用上軸材45を備えている。
【0043】
プレス用上軸材45は、フレーム43の内部でフレーム43に一体的に設けられている。プレス用上軸材45は筒状(たとえば、円筒状)に形成されており、中心軸の延伸方向が上下方向になるようにして、フレーム43の上部から下方に向かって延びている。
【0044】
上型用絶縁プレート37は、平板状に形成されており、厚さ方向がプレス用上軸材45の上下方向になり、プレス用上軸材45の下端の開口部を塞ぐようにして、フレーム43の内部でプレス用上軸材45の下端に一体的に設けられている。
【0045】
上型支持体23は、筒状(たとえば、円筒状)に形成されており、中心軸の延伸方向が上下方向になるようにして、フレーム43の内部で上型用絶縁プレート37の下端で上型用絶縁プレート37に一体的に設けられており、上型用絶縁プレート37の下端から下方に向かって延びている。
【0046】
上型3は、上型支持体23の下端で上型設置部11を介して上型支持体23に一体的に設けられている。
【0047】
上型用絶縁プレート37の中央部には、内径が上型用電極棒19の外径(第1の鍔部35A以外の部位の外径)よりもごく僅かに大きい貫通孔が設けられており、この貫通孔に上型用電極棒19が入り込むことで、上型用電極棒19が、上型用絶縁プレート37に係合し、上下方向で移動自在になっている。
【0048】
上型用電極棒19の下端は、上方弾性部材31で付勢されて上型設置部11に接触している。なお、上方弾性部材31を用いることなく、上型用電極棒19が重力のみで付勢されて上型設置部11に接触している構成であってもよいし、上型用電極棒19の下端に雄ねじ部を設け、上型設置部11に上記雄ねじ部に螺合する雌ねじ部を設け、上型用電極棒19を上型設置部11に一体的に設けた構成であってもよい。
【0049】
また、成形装置1は、プレス用下軸材47と、下型駆動部49とを備えている。プレス用下軸材47と下型駆動部49とは、フレーム43の内部でフレーム43に設けられている。プレス用下軸材47は筒状(たとえば、円筒状)に形成されており、中心軸の延伸方向が上下方向になるようにして、下型用絶縁プレート39の下側に設けられている。さらに説明すると、下型用絶縁プレート39は、平板状に形成されており、厚さ方向がプレス用下軸材47の上下方向になり、プレス用下軸材47の上端の開口部を塞ぐようにして、フレーム43の内部でプレス用下軸材47の上端に一体的に設けられている。下型駆動部49は、プレス用テーブル51、プレス用テーブル駆動部53等を備えている。プレス用テーブル駆動部53は、サーボモータ等のアクチュエータ57、減速機59とボールネジ61とを用いた回転運動を直線運動に変換する変換機構63等を備えている。
【0050】
下型支持体25は、筒状(たとえば、円筒状)に形成されており、中心軸の延伸方向が上下方向になるようにして、フレーム43の内部で下型用絶縁プレート39の上端で下型用絶縁プレート39に一体的に設けられており、下型用絶縁プレート39の上端から上方に向かって延びている。
【0051】
下型5は、下型支持体25の上端で下型設置部13を介して下型支持体25に一体的に設けられている。
【0052】
下型用絶縁プレート39の中央部には、内径が下型用電極棒21の外径(第2の鍔部35B以外の部位の外径)よりもごく僅かに大きい貫通孔が設けられており、この貫通孔に下型用電極棒21が入り込むことで、下型用電極棒21が、下型用絶縁プレート39に係合し、上下方向で移動自在になっている。
【0053】
下型用電極棒21の上端は、下方弾性部材33で付勢されて下型設置部13に接触している。なお、下方弾性部材33を用いることなく、下型用電極棒21の上端に雄ねじ部を設け、下型設置部13に上記雄ねじ部に螺合する雌ねじ部を設け、下型用電極棒21を下型設置部13に一体的に設けた構成であってもよい。
【0054】
下型駆動部49は、プレス用下軸材47の下側に設けられており、プレス用下軸材47を支持している。さらに説明すると、下型駆動部49は、プレス用テーブル51とプレス用テーブル駆動部53とを備えている。プレス用テーブル51は、リニアベアリング55を介して、フレーム43に支持されており、上下方向で移動自在になっている。また、プレス用テーブル51の上方には、プレス用下軸材47が一体的に設けられている。
【0055】
プレス用テーブル51は、下型駆動部49によって、制御装置29の制御の下、上下方向で移動位置決め自在になっている。
【0056】
プレス用テーブル駆動部53は、サーボモータ等のアクチュエータ57と、減速機59とボールネジ61を用いた回転運動を直線運動に変換する変換機構63とを備えている。また、下型駆動部49のところには、上型3と下型5とでガラス素材7を挟み込んで押圧するときの押圧力を測定するためのプレス用ロードセル65が設けられている。
【0057】
これにより、制御装置29の制御の下、下型5が上型3に対して上下方向で移動位置決め自在になっているとともに、上型3と下型5とでガラス素材7を挟み込んで所定の押圧力で押圧し、成形することができるようになっている。
【0058】
電圧印加手段17は、
図1及び
図2に示すように、上述した上型用電極棒19と下型用電極棒21との他に、上側コネクタ67と下側コネクタ69と金型電荷電源71と配線73と電極軸クランプ部品75とを備えている。
【0059】
下側コネクタ69は、プレス用下軸材47の下側の蓋部材77に設けられている。そして、金型電荷電源71から延びている配線73が下側コネクタ69を経由して、プレス用下軸材47内を通り、下型用電極棒21まで延び、電極軸クランプ部品75を介して下型用電極棒21に接続されている。
【0060】
さらに説明すると、プレス用下軸材47は、プレス用テーブル51に一体的に設けられているとともに、下端が蓋部材77で塞がれている。下側コネクタ69は、
図4に示すように、蓋部材77に設けられており、配線73は、蓋部材77の下側から下側コネクタ69を通り、プレス用下軸材47内に延びている。なお、下側コネクタ69は気密性を備えており、プレス用下軸材47の外部(蓋部材77の下側空間)とプレス用下軸材47の内部(蓋部材77の上側)との間は、気密性が保たれている。
【0061】
電極軸クランプ部品75は、下型用電極棒21の下端部で下型用電極棒21に一体的に設けられている。
【0062】
上側コネクタ67は、フレーム43の上部中央のところに設けられている。そして、金型電荷電源71から延びている配線73が上側コネクタ67を経由して、プレス用上軸材45内を通り、上型用電極棒19まで延び、電極軸クランプ部品(図示せず)を介して上型用電極棒19に接続されている。なお、上側コネクタ67も気密性を備えており、プレス用上軸材45の外部とプレス用上軸材45の内部との間は、気密性が保たれている。さらに、図示していないが、電極軸クランプ部品は、上型用電極棒19の上端部で上型用電極棒19に一体的に設けられている。
【0063】
成形チャンバ41は、
図1に示すように、筒状の成形チャンバ構成材79と、環状の上側成形チャンバ構成材支持体81と、環状の下側成形チャンバ構成材支持体83とで形成されるようになっている。また、フレーム43には、下側成形チャンバ構成材支持体83を支持するチャンバ構成材支持部85が設けられている。
【0064】
上側成形チャンバ構成材支持体81は、成形チャンバ構成材79の上端に設けられている。上側成形チャンバ構成材支持体81が設けられた成形チャンバ構成材79(成形チャンバ組立体87)は筒状になっている。
【0065】
そして、成形チャンバ組立体87は、この中心軸が上下方向に延伸し、内側に上型3、下型5、上型支持体23、下型支持体25等が入り込むようにして、フレーム43に設けられているとともに、空気圧シリンダ等のアクチュエータ89で上下方向に移動自在になっている。なお、
図1に示す状態では、成形チャンバ組立体87が下降端に位置しており、成形チャンバ組立体87は
図1に示す状態よりも上方に移動するようになっている。成形チャンバ組立体87が上昇端に移動した状態では、成形チャンバ41が開放されるようになっている。そして、成形チャンバ組立体87の下端が上型3よりも上方に位置するようになっている。
【0066】
また、下側成形チャンバ構成材支持体83は、チャンバ構成材支持部85に一体的に設けられており、下側成形チャンバ構成材支持体83の内側に、プレス用下軸材47が位置している。
【0067】
そして、成形チャンバ組立体87が
図1に示すように下降端に位置しているときに、成形チャンバ構成材79、上側成形チャンバ構成材支持体81、下側成形チャンバ構成材支持体83、プレス用上軸材45、プレス用下軸材47等によって、内側に上型3と下型5とガラス素材7とが入るとともに気密性を備えた成形チャンバ41が形成されるようになっている。
【0068】
また、ガラス素材7を成形するときには、成形チャンバ41内の空気が配管92を介して真空ポンプ90で除かれ、かわりに窒素ガスが、配管94を介して、ガス供給部88から成形チャンバ41内に供給されるようになっている。
【0069】
また、成形チャンバ41の気密性を確保するために成形チャンバ構成材79、上型成形チャンバ構成材支持体81、下型成形チャンバ構成材支持体83、プレス用上軸材45、及び、プレス用下軸材47のそれぞれの部材間にOリング等のシール部材91が設けられている。
【0070】
加熱部15は、環状の赤外線ランプ93と筒状の反射材95とで構成されている。赤外線ランプ93は、成形チャンバ構成材79の外側で成形チャンバ構成材79を囲むように配置されている。反射材95は、赤外線ランプ93の外側で赤外線ランプ93を囲むように配置されている。
【0071】
そして、赤外線ランプ93から出た赤外線が、たとえば、石英で構成された成形チャンバ構成材79を透過して、上型3と下型5とガラス素材7とを加熱するようになっている。なお、赤外線ランプ93と反射材95とは、成形チャンバ組立体87に一体的に設けられている。
【0072】
下型用温度センサ27Bは、
図2等に示すように、配線99によって制御装置29に接続されている。さらに、説明すると、蓋部材77には、コネクタ97が設けられている。下型用温度センサ27Bから延出している配線99は、下型支持体25の外側、下型支持体25に設けられた貫通孔、下型用絶縁プレート39に設けられた貫通孔、プレス用下軸材47の内側、コネクタ97を通って、制御装置29の入力部29Aまで延びている。なお、コネクタ97も、下側コネクタ69と同様に気密性を備えている。
【0073】
また、上型用温度センサ27Aも、下型用温度センサ27Bと同様にして、配線等によって制御装置29の入力部29Aに接続されている。
【0074】
下型用電極棒21にガスを流す第2のガス供給路40Bは、
図2及び
図3に示すように、還元ガス供給部100から配管(チューブ)101と、コネクタ103と、コネクタ105(
図4をも参照)とを介してガスが供給されるように構成されている。コネクタ103は、下型用電極棒21の下端に設けられており、コネクタ103から配管101がプレス用下軸材47内を、蓋部材77に設けられたコネクタ105まで延びている。なお、コネクタ105も、下側コネクタ69と同様に気密性を備えている。
【0075】
コネクタ105から延びている配管101は、フレーム43の外部に設けられている還元ガス供給部100に接続されている。また、図示していないが、上型用電極棒19にガスを流す第1のガス供給路40Aも、下型用電極棒21にガスを流す第2のガス供給路40Bと同様にして、配管等によって還元供給部100に接続されている。
【0076】
また、
図2に示すように、プレス用下軸材47は二重構造になっており、二重構造によって形成された筒状の空間107内を冷却剤(冷却水)が流れるようになっている。プレス用上軸材45にも、プレス用下軸材47と同様にして、冷却剤が流れるようになっている。
【0077】
次に、成形装置1の動作について説明する。
【0078】
初期状態として、下型5にガラス素材7が設置されており、上型3が下型5及びガラス素材7から離れており、成形チャンバ組立体87が下降して成形チャンバ41が形成されており、加熱部15は停止しており、空間107内を冷却剤が流れていないものとする。
【0079】
上記初期状態において、制御装置29の制御の下、成形チャンバ41内を、真空ポンプ90で真空にした後、ガス供給部88によって窒素ガスで満たすとともに、加熱部15を稼動してガラス素材7の温度を上昇させる。
【0080】
ガラス素材7が成形温度になったときに、電圧印加手段17での電圧の印加を開始し、下型5を上昇させて上型3に接触させるとともに、還元ガス供給部100から第1、第2のガス供給路40A,40Bへのガスの供給を開始して、ガラス素材7を成形する。
【0081】
この後、ガス供給部88及び還元ガス供給部100によるガスの供給を停止し、加熱部15による加熱を停止し、電圧印加手段17での電圧の印加を停止し、空間107内に冷却剤を流し、ガラス素材7の温度が成形品9(
図6参照)としての形状を保つことができる程度まで下降したときに、成形チャンバ組立体87を上昇させるとともに、下型5を下降させて、成形品9を取り出す。
【0082】
成形装置1によれば、電圧印加手段17が、上型用電極棒19と下型用電極棒21とを備えており、上型用電極棒19を、上型設置部11を介して上型3に導通させ、下型用電極棒21を、下型設置部13を介して下型5に導通させることで、上型3と下型5との間に電圧を印加するように構成されているので、上型3と下型5とに電圧を印加したときの電気的な短絡を防止する絶縁構造とすることができる。
【0083】
また、成形装置1によれば、上型3と下型5(ガラス素材7)との間に電圧を印加することにより、ガラス素材7と上型3との間に静電引力が働き、この静電引力により成形が行われるため、成形時に外部から付加する荷重を低減することができる。これにより、荷重を付加するための機構を小型簡略化することができる。そして、成形装置1の小型化と低コスト化、ひいては成形プロセスの低コスト化が可能となる。
【0084】
また、成形装置1によれば、外部からの荷重が低減されると共に、静電引力は上型3、下型5の成形部全体に均一に作用するため荷重の集中が無いことにより、ガラス素材7や上型3や下型5の荷重による破損を防止することが可能となる。
【0085】
また、成形装置1によれば、静電引力では局所的に非常に大きな成形荷重を与えることが可能であり、特に上型3、下型5の角部など通常の方法では成形が困難な部分に電界集中により大きな力が働くため、より精度の高い成形が可能である。さらに、ガラス素材7の軟化が十分に進んでない状態でも成形が可能となり、より低い温度で成形が可能となる。これにより、成形装置1の遮熱及び断熱構造が簡略化でき、成形装置1の小型化と低コスト化が可能となる。
【0086】
また、成形装置1によれば、成形のプロセス温度が低くなることにより、上型3、下型5の劣化が抑制され寿命が長くなることでコスト低減が図れると共に、上型3、下型5の交換にかかる時間が節約出来るため生産性が向上する。
【0087】
また、成形装置1によれば、静電引力は成形される面全体に均一に作用すると共に、大面積であっても必要な印加電圧は変わらないので、大型で複雑な荷重負荷機構を用いることなく、簡便な成形装置により大面積の成形が可能となる。
【0088】
ここで、成形装置1を用いた成形試験結果について説明する。
【0089】
成形対象のガラス素材7として、次のものを使用した。
【0090】
屈折率:1.58313
転移点:506℃
屈服点:538℃
軟化点:607℃
直径φ50mm、厚さt12mmの円板状のガラス素材7に20μmピッチのライン&スペースの微細な凹凸のパターンを上型3から転写した。
【0091】
電圧を印加していない状況下でもプレス成形では、成形温度が580℃であり、プレス力が25kNであり(真空環境下)、プレス時間が60秒であった。
【0092】
電圧を印加することで、成形温度を520℃とすることができ、60℃の温度低下が可能になった。
【0093】
また、成形装置1によれば、上型用電極棒19、下型用電極棒21のそれぞれが上型支持体23、下型支持体25それぞれの内部に設けられているので、上型用電極棒19、下型用電極棒21が保護されている。また、加熱部15によって上型3、下型5や上型支持体23、下型支持体25の外部から上型3、下型5やガラス素材7を加熱しても、上型用電極棒19、下型用電極棒21に直接熱が輻射されず、上型用電極棒19、下型用電極棒21の温度上昇を抑制することができる。
【0094】
また、上型用電極棒19、下型用電極棒21から延出している配線73も、上型支持体23、下型支持体25それぞれの内部で延伸するので、上型用電極棒19、下型用電極棒21の場合と同様にして保護される。
【0095】
また、成形装置1によれば、ガラス素材7の温度を測定する温度センサ27(
図5参照)が設けられているので、加熱部15によってガラス素材7の温度を、電圧印加状態下での成形のための適切な温度にすることができる。
【0096】
また、成形装置1によれば、上方弾性部材31を用いて上型用電極棒19を、上型設置部11を介して上型3に付勢し、下方弾性部材33を用いて下型用電極棒21を、下型設置部13を介して下型5に付勢するように構成されているので、簡素な構成で、上型3、下型5のそれぞれに上型用電極棒19、下型用電極棒21のそれぞれ確実に接触させることができるとともに、上型3、下型5の交換作業がしやすくなる。
【0097】
また、成形装置1によれば、上方弾性部材31、下方弾性部材33が圧縮バネ(圧縮コイルバネ)で構成されているので、上型用電極棒19、下型用電極棒21の付勢のストロークを長くすることが容易であるとともに、上方弾性部材31、下方弾性部材33の耐久性が向上する。
【0098】
また、成形装置1によれば、上型用絶縁プレート37、下型用絶縁プレート39を備えており、また、上型用電極棒19、下型用電極棒21が第1、第2の鍔部35A,35Bを備えており、上型用絶縁プレート37、下型用絶縁プレート39と第1、第2の鍔部35A,35Bとに上方弾性部材31、下方弾性部材33を係合させることで上型用電極棒19、下型用電極棒21を付勢しているので、簡素な構成で上型用電極棒19、下型用電極棒21を上型3、下型5側に確実に付勢することができる。
【0099】
また、成形装置1によれば、上型用電極棒19、下型用電極棒21が筒状に形成されており、上型用電極棒19、下型用電極棒21の内部と上型3、下型5に設けられた流路(第1、第2のガス供給路40A,40B)内にガスを流すことでガラス素材7の成形部位にガスを供給するように構成されているので、別途ガス用の配管を設ける必要が無くなり、簡素な構成でガラス素材7表面の改質や金型成形面の改質を行うことができる。
【0100】
次に、上型設置部11と上型用電極棒19との接続と、下型設置部13と下型用電極棒21との接続とについて説明する。
【0101】
図7に示すように、上金型3には水平方向の中心に上下方向に貫通し、第1のガス供給路40Aとして機能する第1の貫通孔109が設けられ、上型設置部11には、水平方向の中心に上下方向に貫通して第1の貫通孔109に連通し、第1ガス供給路40Aとして機能する第2の貫通孔111が設けられるとともに、上側に、第2の貫通孔111を中心にした第1の被圧入凹部(第1の被嵌合凹部)113が設けられている。
【0102】
そして、上型用電極棒19の一端(下端)を、上型設置部11の第1の被圧入凹部113に圧入する(嵌合させる)ことにより、第1のガス供給路40A(上型用電極棒19の中空部)が第2の貫通孔111及び第1の貫通孔109に連通するように構成されている。
【0103】
また、下金型5には水平方向の中心に上下方向に貫通し、第2のガス供給路40Bとして機能する第3の貫通孔115が設けられ、下型設置部13には、水平方向の中心に上下方向に貫通して第3の貫通孔115に連通し、第2のガス供給路40Bとして機能する第4の貫通孔117が設けられるとともに、下側に、第4の貫通孔117を中心にした第2の被圧入凹部(第2の被嵌合凹部)119が設けられている。
【0104】
そして、下型用電極棒21の一端(上端)を、下型設置部13の第2の被圧入凹部119に圧入する(嵌合させる)ことにより、第2のガス供給路40B(下型用電極棒21の中空部)が第4の貫通孔117及び第3の貫通孔115に連通するように構成されている。
【0105】
このように構成されていることで、被成形材表面の改質、金型成形面の改質のための還元ガスをガラス素材7の成形部位に効率よく供給することができる。
【0106】
なお、
図7に示すように、上型設置部11と上型用電極棒19とを接続し、下型設置部13と下型用電極棒21とを接続したとき、上型設置部11と上型用電極棒19との間に隙間がなく、下型設置部13と下型用電極棒21との間に隙間がない場合は、上方弾性部材31、下方弾性部材33を使用する必要がない。
【0107】
しかしながら、
図7に示すように、上型設置部11と上型用電極棒19とを接続し、下型設置部13と下型用電極棒21とを接続したとき、上型設置部11と上型用電極棒19との間に隙間が発生し、下型設置部13と下型用電極棒21との間に隙間が発生した場合は、その隙間からガスが漏れるため、上方弾性部材31、下方弾性部材33を使用して上型用電極棒19、下型用電極棒21を上型設置部11、下型設置部13に当接させ、ガスが漏れるのを防止する必要がある。
【0108】
また、
図8に示すように、上金型3には上下方向に貫通し、第1のガス供給路40Aとして機能する第1の貫通孔109が設けられ、上型設置部11には、上下方向に貫通して第1の貫通孔109に連通し、第1のガス供給路40Aとして機能する第2の貫通孔111が設けられるとともに、上側に、第2の貫通孔111を中心にした第1の雌ねじ部121が設けられている。
【0109】
そして、上型用電極棒19の一端(下端)の外周に形成された第1の雄ねじ部123を、上型設置部11の第1の雌ねじ部121に螺合させることにより、第1のガス供給路40Aが第2の貫通孔111及び第1の貫通孔109に連通するように構成されている。
【0110】
また、下金型5には上下方向に貫通し、第2のガス供給路40Bとして機能する第3の貫通孔115が設けられ、下型設置部13には、上下方向に貫通して第3の貫通孔115に連通し、第2のガス供給路40Bとして機能する第4の貫通孔117が設けられるとともに、下側に、第4の貫通孔117を中心にした第2の雌ねじ部125が設けられている。
【0111】
そして、下型用電極棒21の一端(上端)の外周に形成された第2の雄ねじ部127を、下型設置部13の第2の雌ねじ部125に螺合させることにより、第2のガス供給路40Bが第4の貫通孔117及び第3の貫通孔115に連通するように構成されている。
【0112】
このように構成されていることで、被成形材表面の改質、金型成形面の改質のための還元ガスをガラス素材7の成形部位に漏れることなく供給することができる。
【0113】
本発明におけるガラス素材7の成形部位への還元ガスの供給は、上型3と下型5とが離れているとき、または、上型3がガラス素材7にほぼ接したとき、または、上型3がガラス素材7に完全に接したときのように、ガラス素材7の表面の改質や、上型3、下型5の表面の改質を行うのに適したタイミングで行うのがよい。
【0114】
また、上型設置部11、下型設置部13と上型用電極棒19、下型用電極棒21との接続例を
図7及び
図8に示したが、上型用電極棒19は、一端が上型設置部11の第1の被圧入凹部113に圧入されることによって上金型設置部11に取り付けられる構成、第1の雄ねじ部123が上金型設置部11の第1の雌ねじ部121に螺合することによって上金型設置部11に取り付けられる構成のうちのいずれかの構成を採用し、下型用電極棒21は、一端が下金型設置部13の第2の被圧入凹部119に圧入されることによって下金型設置部13に取り付けられる構成、第2の雄ねじ部127が下金型設置部13の第2の雌ねじ部125に螺合することによって下型設置部13に取り付けられる構成のうちのいずれかの構成を採用することができる。
【0115】
また、上型設置部11、下型設置部13を介して上型3、下型5を上型用電極棒19、下型用電極棒21に接続させたが、上型支持体23の下端を上型3で閉塞するとともに、下型支持体25の上端を下型5で閉塞し、上型用電極棒19を上型3に接続し、下型用電極棒21を下型5に接続する構成であってもよい。