特許第6598691号(P6598691)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6598691車両のヒルホールド制御方法及び制御装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6598691
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】車両のヒルホールド制御方法及び制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 10/04 20060101AFI20191021BHJP
   B60W 10/10 20120101ALI20191021BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20191021BHJP
   F02D 29/02 20060101ALI20191021BHJP
   B60T 7/12 20060101ALI20191021BHJP
   F16H 59/66 20060101ALI20191021BHJP
   F16H 59/74 20060101ALI20191021BHJP
   F16H 61/02 20060101ALI20191021BHJP
   F16H 63/50 20060101ALI20191021BHJP
   F16H 59/54 20060101ALI20191021BHJP
   F16H 61/12 20100101ALI20191021BHJP
【FI】
   B60W10/00 104
   B60W10/06
   B60W10/10
   F02D29/02 321A
   B60T7/12 A
   F16H59/66
   F16H59/74
   F16H61/02
   F16H63/50
   F16H59/54
   F16H61/12
【請求項の数】5
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-8863(P2016-8863)
(22)【出願日】2016年1月20日
(65)【公開番号】特開2017-128218(P2017-128218A)
(43)【公開日】2017年7月27日
【審査請求日】2018年10月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中崎 勝啓
(72)【発明者】
【氏名】西廣 義祐
(72)【発明者】
【氏名】立脇 敬一
(72)【発明者】
【氏名】大塩 伸太郎
(72)【発明者】
【氏名】手塚 淳
(72)【発明者】
【氏名】岩本 匡史
(72)【発明者】
【氏名】郡司 通晴
【審査官】 鶴江 陽介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−56432(JP,A)
【文献】 特開2007−271017(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/187221(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00−10/30
B60W 30/00−50/16
F02D 29/00−29/06
B60T 7/12
F16H 59/00−61/12
F16H 61/16−61/24
F16H 61/66−61/70
F16H 63/40−63/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動停止条件に基づき駆動源の自動停止/自動始動を制御する駆動源自動停止制御手段と、
前記駆動源から駆動輪へ動力伝達を行う際に締結されると共に、前記駆動源に駆動される油圧源からの油圧により締結制御される摩擦締結要素と、
前記駆動源の自動停止に伴い、ブレーキペダルが開放された状態にて、制動力を付与可能であるブレーキ制御手段と、を備える車両において、
前記駆動源が自動停止すると、前記ブレーキ制御手段により制動力を付与するヒルホールド制御を実行し、
前記駆動源が自動始動すると、所定時間が経過するタイミングにて完全締結状態となるように前記摩擦締結要素の締結速度を設定し、設定した締結速度になるフィードバック制御により前記摩擦締結要素の締結を開始し、
前記摩擦締結要素の締結を開始した後、前記摩擦締結要素を介して前記駆動輪へ伝達する実伝達トルクと、路面勾配によって車両をずり下がらせる方向に生じる勾配トルクと、を求め、
前記実伝達トルクと前記勾配トルクを比較し、前記実伝達トルクが前記勾配トルクを超えるタイミングになると、前記ブレーキ制御手段による制動力を解除し、
前記実伝達トルクが前記勾配トルクを超えないままで、前記摩擦締結要素が締結完了状態のタイミングになると、前記ブレーキ制御手段による制動力を解除する
ことを特徴とする車両のヒルホールド制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載された車両のヒルホールド制御方法において、
前記摩擦締結要素として、動力伝達状態とすることで異なる経路により前記駆動源から前記駆動輪へ動力伝達可能な第1摩擦締結要素と第2摩擦締結要素を有し、
前記駆動源の自動始動に伴い締結される前記第1摩擦締結要素が締結異常であるか否かを検知し、
前記第1摩擦締結要素の締結異常が検知されると、前記第2摩擦締結要素を動力伝達状態とする
ことを特徴とする車両のヒルホールド制御方法。
【請求項3】
請求項2に記載された車両のヒルホールド制御方法において、
前記第2摩擦締結要素への締結油圧の上昇勾配を、前記第1摩擦締結要素を締結する際の前記第1摩擦締結要素への指示油圧の上昇勾配より大きくする
ことを特徴とする車両のヒルホールド制御方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3までの何れか一項に記載された車両のヒルホールド制御方法において、
前記ブレーキ制御手段は、ブレーキペダル開放から所定時間経過すると、前記制動力を低下させるものであって、
前記所定時間が経過するまでに、前記摩擦締結要素の締結を完了させる
ことを特徴とする車両のヒルホールド制御方法。
【請求項5】
自動停止条件に基づき駆動源の自動停止/自動始動を制御する駆動源自動停止制御手段と、
前記駆動源から駆動輪へ動力伝達を行う際に締結されると共に、前記駆動源に駆動される油圧源からの油圧により締結制御される摩擦締結要素と、
前記駆動源の自動停止に伴い、ブレーキペダルが開放された状態にて、制動力を付与可能であるブレーキ制御手段と、を備える車両において、
前記駆動源自動停止制御手段と前記摩擦締結要素と前記ブレーキ制御手段とを統合制御する統合コントローラを設け、
前記統合コントローラは、前記駆動源が自動停止すると、前記ブレーキ制御手段により制動力を付与するヒルホールド制御を実行し、
前記駆動源が自動始動すると、所定時間が経過するタイミングにて完全締結状態となるように前記摩擦締結要素の締結速度を設定し、設定した締結速度になるフィードバック制御により前記摩擦締結要素の締結を開始し、
前記摩擦締結要素の締結を開始した後、前記摩擦締結要素を介して前記駆動輪へ伝達する実伝達トルクと、路面勾配によって車両をずり下がらせる方向に生じる勾配トルクと、を求め、
前記実伝達トルクと前記勾配トルクを比較し、前記実伝達トルクが前記勾配トルクを超えるタイミングになると、前記ブレーキ制御手段による制動力を解除し、
前記実伝達トルクが前記勾配トルクを超えないままで、前記摩擦締結要素が締結完了状態のタイミングになると、前記ブレーキ制御手段による制動力を解除する処理を行う
ことを特徴とする車両のヒルホールド制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動源が自動停止すると、ブレーキ制御手段により制動力を付与するヒルホールド制御を行う車両のヒルホールド制御方法及び制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アイドルストップ中、エンジンから駆動輪へ動力伝達を行うクラッチが開放状態であるため、特に登坂路にてアイドルストップを解除して発進する際、車両が後方にずり下がるおそれがある。これを防止すべく、アイドルストップ中、車輪に制動力を付与することによりヒルホールド制御を行っている。そして、発進に際して、クラッチが締結完了されたことに基づきヒルホールド制御を解除する車両のエンジン再始動時の制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−264096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来装置にあっては、発進に際して車両がずり下がらないために行っているヒルホールド制御を解除するタイミングについて改善の余地がある。即ち、車両がずり下がらない状態であれば、クラッチの締結が完了していなくてもヒルホールド制御を解除してもよい。例えば、登坂路の勾配が緩やかである場合や、登坂路の勾配が急であってもエンジンが出力するトルクが高い場合は、クラッチの締結が完了していなくても(クラッチがスリップ状態であっても)、クラッチが伝達する伝達容量が勾配抵抗に打ち勝ち、発進することができる。従来技術は、このような運転シーンであってもクラッチが締結完了されるまでヒルホールド制御を解除しないため、車両が発進できるにもかかわらず、ヒルホールド制御による制動力が働いたままとしており、発進ラグとなる、という問題がある。
【0005】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、駆動源の自動始動から発進する際、車両のずり下がりを防止しつつ、発進ラグを低減する車両のヒルホールド制御方法及び制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、駆動源自動停止制御手段と、摩擦締結要素と、ブレーキ制御手段と、を備える。
駆動源自動停止制御手段は、自動停止条件に基づき駆動源の自動停止/自動始動を制御する。
摩擦締結要素は、駆動源から駆動輪へ動力伝達を行う際に締結されると共に、駆動源に駆動される油圧源からの油圧により締結制御される。
ブレーキ制御手段は、駆動源の自動停止に伴い、ブレーキペダルが開放された状態にて、制動力を付与可能である。
この車両において、駆動源が自動停止すると、ブレーキ制御手段により制動力を付与するヒルホールド制御を実行する。
駆動源が自動始動すると、所定時間が経過するタイミングにて完全締結状態となるように摩擦締結要素の締結速度を設定し、設定した締結速度になるフィードバック制御により摩擦締結要素の締結を開始する。
摩擦締結要素の締結を開始した後、摩擦締結要素を介して駆動輪へ伝達する実伝達トルクと、路面勾配によって車両をずり下がらせる方向に生じる勾配トルクと、を求める。
実伝達トルクと勾配トルクを比較し、実伝達トルクが勾配トルクを超えるタイミングになると、ブレーキ制御手段による制動力を解除する。
実伝達トルクが勾配トルクを超えないままで、摩擦締結要素が締結完了状態のタイミングになると、ブレーキ制御手段による制動力を解除する。
【発明の効果】
【0007】
よって、駆動源が自動始動すると、実伝達トルクと勾配トルクが求められ、実伝達トルクと勾配トルクが比較され、実伝達トルクが勾配トルクを超えるタイミングになると、ブレーキ制御手段による制動力が解除される。
例えば、登坂路の勾配が緩やかである場合や、登坂路の勾配が急であっても駆動源が出力するトルクが高い場合は、摩擦締結要素の締結が完了していなくても(摩擦締結要素がスリップ状態であっても)、摩擦締結要素を介して駆動輪へ伝達される実伝達トルクが勾配抵抗である勾配トルクに打ち勝てば発進することができる。
この点に着目し、実伝達トルクが勾配トルクを超えるタイミングになると、ヒルホールド制御を解除するため、例えば、摩擦締結要素の締結が完了していなくても、車両がずり下がることなく発進可能な場合、ヒルホールド制御が解除される。従って、車両の発進に対して不要な制動力が作用することはなく、発進ラグを低減することができる。勿論、車両がずり下がるおそれがある間は、ヒルホールド制御による制動力が作用しているため、車両がずり下がることを防止することができる。
この結果、駆動源の自動始動から発進する際、車両のずり下がりを防止しつつ、発進ラグを低減することができる。
さらに、駆動源が自動始動すると、所定時間が経過するタイミングにて完全締結状態となるように摩擦締結要素の締結速度を設定し、設定した締結速度になるフィードバック制御により摩擦締結要素の締結が開始される。これにより、車両の後退を抑制できると共に、車体振動を低減することができる。
加えて、実伝達トルクが勾配トルクを超えないままで、摩擦締結要素が締結完了状態のタイミングになると、ブレーキ制御手段による制動力が解除される。このため、運転者の意図に応じた発進性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1のヒルホールド制御方法及び制御装置が適用された副変速機付き無段変速機が搭載されたエンジン車を示す全体構成図である。
図2】実施例1のヒルホールド制御方法及び制御装置が適用された制御系構成を示すブロック図である。
図3】実施例1の統合コントローラで実行されるヒルホールド制御処理の流れを示すフローチャートである。
図4】実施例1のヒルホールド制御処理において実伝達トルクと勾配トルクの算出及び比較判定を示すブロック図である。
図5】実施例1のヒルホールド制御処理においてクラッチ容量判定によりヒルホールド制御を解除する例を示す説明図である。
図6】実施例1のヒルホールド制御処理においてクラッチ締結判定によりヒルホールド制御を解除する例を示す説明図である。
図7】エンジン再始動後のヒルホールド制御状態での実伝達トルクと勾配トルクの関係を示す作用説明図である。
図8】車両のずり下がりを防止する適切なタイミングでヒルホールド制御を解除する場合の制動力・駆動力・エンジン回転数の各特性を示すタイムチャートである。
図9】登坂路でのIS停車→ブレーキOFF→即アクセルON発進(クラッチ容量判定)するときの車両状態・勾配判定・駆動力・アクセル開度・ブレーキSW・アイドルストップ判定・エンジン回転数・L/Bスリップ回転数・L/B指示圧(実圧)・ピストンストローク・実伝達トルク・L/B容量判定・L/B締結判定・ブレーキ保持タイマー・ブレーキ液圧の各特性を示すタイムチャートである。
図10】登坂路でのIS停車→ブレーキOFF→即アクセルON発進(クラッチ締結判定)するときの車両状態・勾配判定・駆動力・アクセル開度・ブレーキSW・アイドルストップ判定・エンジン回転数・L/Bスリップ回転数・L/B指示圧(実圧)・ピストンストローク・実伝達トルク・L/B容量判定・L/B締結判定・ブレーキ保持タイマー・ブレーキ液圧の各特性を示すタイムチャートである。
図11】ローブレーキを締結する際に締結異常があったときのブレーキ液圧・IS解除フラグ・エンジン回転・入力回転(SEC回転)・締結進行率・H/C指示圧(実圧)の各特性を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の車両のヒルホールド制御方法及び制御装置を実現する最良の形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【実施例1】
【0010】
まず、構成を説明する。
実施例1におけるヒルホールド制御方法及び制御装置は、メカオイルポンプのみを備え、電動オイルポンプが無い副変速機付き無段変速機を搭載したエンジン車に適用したものである。以下、実施例1におけるエンジン車のヒルホールド制御装置の構成を、「全体システム構成」、「ヒルホールド制御処理構成」に分けて説明する。
【0011】
[全体システム構成]
図1は、実施例1のヒルホールド制御方法及び制御装置が適用された副変速機付き無段変速機が搭載されたエンジン車の全体構成を示し、図2は、ヒルホールド制御方法及び制御装置が適用された制御系構成を示す。以下、図1及び図2に基づき、全体システム構成を説明する。
【0012】
図1に示すエンジン車は、走行駆動源として、エンジン始動用のスタータモータ15を有するエンジン1を備える。エンジン1の出力回転は、ロックアップクラッチ9を有するトルクコンバータ2、第1ギヤ列3、副変速機付き無段変速機4(以下、「自動変速機4」という。)、第2ギヤ列5、終減速装置6を介して駆動輪7へと伝達される。第2ギヤ列5には、駐車時に自動変速機4の出力軸を機械的に回転不能にロックするパーキング機構8が設けられている。油圧源として、エンジン1の動力により駆動されるメカオイルポンプ10を備える。このメカオイルポンプ10は、駆動源(エンジン1)に駆動される油圧源に相当する。そして、メカオイルポンプ10からの吐出圧を調圧して自動変速機4の各部位に供給する油圧制御回路11と、油圧制御回路11を制御する変速機コントローラ12と、が設けられている。さらに、統合コントローラ13と、エンジンコントローラ14と、ブレーキシステム50を制御するブレーキコントローラ16と、が設けられている。以下、各構成について説明する。
【0013】
前記自動変速機4は、ベルト式無段変速機構(以下、「バリエータ20」という。)と、バリエータ20に対して直列に設けられる副変速機構30とを備える。ここで、「直列に設けられる」とは、動力伝達経路においてバリエータ20と副変速機構30が直列に設けられるという意味である。副変速機構30は、この例のようにバリエータ20の出力軸に直接接続されていてもよいし、その他の変速ないし動力伝達機構(例えば、ギア列)を介して接続されていてもよい。
【0014】
前記バリエータ20は、プライマリプーリ21と、セカンダリプーリ22と、プーリ21,22の間に掛け回されるVベルト23とを備えるベルト式無段変速機構である。プーリ21,22は、それぞれ固定円錐板と、この固定円錐板に対してシーブ面を対向させた状態で配置され、固定円錐板との間にV溝を形成する可動円錐板と、この可動円錐板の背面に設けられて可動円錐板を軸方向に変位させるプライマリ油圧シリンダ23aとセカンダリ油圧シリンダ23bを備える。プライマリ油圧シリンダ23aとセカンダリ油圧シリンダ23bに供給される油圧を調整すると、V溝の幅が変化してVベルト23と各プーリ21,22との接触半径が変化し、バリエータ20の変速比が無段階に変化する。
【0015】
前記副変速機構30は、前進2段・後進1段の変速機構である。副変速機構30は、2つの遊星歯車のキャリアを連結したラビニョウ型遊星歯車機構31と、ラビニョウ型遊星歯車機構31を構成する複数の回転要素に接続され、それらの連係状態を変更する複数の摩擦締結要素(ローブレーキ32、ハイクラッチ33、リバースブレーキ34)とを備える。なお、ローブレーキ32は「L/B」と略称し、ハイクラッチ33は「H/C」と略称し、リバースブレーキ34は「R/B」と略称する。ローブレーキ32、ハイクラッチ33、リバースブレーキ34は、駆動源(エンジン1)から駆動輪7へ動力伝達を行う際に締結されると共に、メカオイルポンプ10からの油圧により締結制御される摩擦締結要素に相当する。
【0016】
前記副変速機構30の変速段は、各摩擦締結要素32〜34への供給油圧を調整し、各摩擦締結要素32〜34の締結・開放状態を変更すると変更される。例えば、ローブレーキ32を締結し、ハイクラッチ33とリバースブレーキ34を開放すれば副変速機構30の変速段は前進1速段になる。ハイクラッチ33を締結し、ローブレーキ32とリバースブレーキ34を開放すれば副変速機構30の変速段は1速よりも変速比が小さな前進2速段になる。また、リバースブレーキ34を締結し、ローブレーキ32とハイクラッチ33を開放すれば副変速機構30の変速段は後進段となる。なお、副変速機構30のローブレーキ32とハイクラッチ33とリバースブレーキ34の全てを開放すれば、駆動輪7への駆動力伝達経路が遮断される。
【0017】
前記変速機コントローラ12は、図2に示すように、CPU121と、RAM・ROMからなる記憶装置122と、入力インターフェース123と、出力インターフェース124と、これらを相互に接続するバス125とから構成される。この変速機コントローラ12は、バリエータ20の変速比を制御すると共に、副変速機構30の複数の摩擦締結要素(ローブレーキ32、ハイクラッチ33、リバースブレーキ34)を架け替えることで所定の変速段を達成する。
【0018】
前記入力インターフェース123には、アクセル開度APOを検出するアクセル開度センサ41、自動変速機4のプライマリ回転速度Npriを検出するPri回転速度センサ42、車速VSPを検出する車速センサ43、自動変速機4のライン圧PLを検出するライン圧センサ44の出力信号が入力される。さらに、セレクトレバーの位置を検出するインヒビタスイッチ45、ATF油温を検出するATF油温センサ46、自動変速機4のセカンダリ回転速度Nsecを検出するSec回転速度センサ48の出力信号が入力される。
【0019】
前記記憶装置122には、自動変速機4の変速制御プログラム、この変速制御プログラムで用いる図外の変速マップが格納されている。CPU121は、記憶装置122に格納されている変速制御プログラムを読み出して実行し、入力インターフェース123を介して入力される各種信号に対して各種演算処理を施して変速制御信号を生成し、生成した変速制御信号を、出力インターフェース124を介して油圧制御回路11に出力する。CPU121が演算処理で使用する各種値、その演算結果は記憶装置122に適宜格納される。
【0020】
前記油圧制御回路11は、複数の流路、複数の油圧制御弁で構成される。油圧制御回路11は、変速機コントローラ12からの変速制御信号に基づき、複数の油圧制御弁を制御して油圧の供給経路を切り替える。
【0021】
前記統合コントローラ13は、変速機コントローラ12による変速機制御、エンジンコントローラ14によるエンジン制御、ブレーキコントローラ16によるブレーキ制御が適切に担保されるように、複数の車載コントローラの統合管理を行う。この統合コントローラ13は、変速機コントローラ12やエンジンコントローラ14やブレーキコントローラ16などの車載コントローラとCAN通信線25を介して情報交換が可能に接続される。そして、アクセルOFF・ブレーキONで停車するとエンジン1を停止するアイドルストップ制御(IS制御)や勾配路停車時に車両のずり下がりを防止するヒルホールド制御、などを行う。なお、アイドルストップ制御が、駆動源自動停止制御に相当し、統合コントローラ13は、自動停止条件に基づき駆動源の自動停止/自動始動を制御する駆動源自動停止制御手段に相当する。
【0022】
前記エンジンコントローラ14は、エンジン1へのフューエルカットによるエンジン停止制御、スタータモータ15を用いてエンジン1を始動するエンジン始動制御、などを行う。このエンジンコントローラ14には、エンジン回転数Neを検出するエンジン回転数センサ47の出力信号、前後加速度(前後G)を検出する前後Gセンサ49などが入力される。
【0023】
前記ブレーキシステム50は、ブレーキペダル51と、倍力装置52と、マスタシリンダ53と、ブレーキ液圧アクチュエータ54と、ホイールシリンダ55と、ブレーキディスク56と、を有する。ブレーキ液圧アクチュエータ54には、ブレーキ操作時にマスタシリンダ53からのマスタシリンダ液圧を増圧・保持・減圧してホイールシリンダ55へ供給するソレノイドバルブを有する。さらに、ブレーキ非操作時にホイールシリンダ55へ供給するホイールシリンダ液圧を作り出すための電動オイルポンプを有する。
【0024】
前記ブレーキコントローラ16は、ブレーキ液圧アクチュエータ54のソレノイドバルブや電動オイルポンプへの指令によりホイールシリンダ55へ供給するホイールシリンダ液圧(制動力)を制御する。このブレーキコントローラ16には、ブレーキ操作/非操作を検出するブレーキスイッチ57の出力信号、ホイールシリンダ液圧を検出するホイールシリンダ液圧センサ58などが入力される。なお、ブレーキコントローラ16は、駆動源(エンジン1)の自動停止に伴い、ブレーキペダル51が開放された状態にて、制動力を付与可能であるブレーキ制御手段に相当する。
【0025】
[ヒルホールド制御処理構成]
図3は、実施例1の統合コントローラ13で実行されるヒルホールド制御処理構成の流れを示す。以下、ヒルホールド制御処理構成をあらわす図3の各ステップについて説明する。
【0026】
ステップS1では、エンジン1の運転/停止状態をあらわす第1フラグF1がF1≠1であるか否かを判断する。YES(F1=0:エンジン停止状態)の場合はステップS2へ進み、NO(F1=1:エンジン運転状態)の場合はステップS8及びステップS15へ進む。
【0027】
ステップS2では、ステップS1でのF1=0(エンジン停止状態)であるとの判断に続き、アイドルストップ制御によりエンジン1を停止しているアイドルストップ状態であるか否かを判断する。YES(アイドルストップ状態)の場合はステップS3へ進み、NO(アイドルストップ状態以外)の場合はリターンへ進む。
【0028】
ステップS3では、ステップS2でのアイドルストップ状態であるとの判断に続き、停車している路面の勾配抵抗を算出し、ステップS4へ進む。
ここで、「勾配抵抗」は、前後Gセンサ49からの出力信号に基づき、停車路面の傾斜角度を推定し、傾斜角度と車両諸元(車重など)により、登坂路から受ける勾配抵抗(=勾配トルク)を算出する。
【0029】
ステップS4では、ステップS3での勾配抵抗の算出に続き、停車路面から受ける勾配抵抗にかかわらず、車両停車状態を維持するのに十分な制動力を付与するヒルホールド制御(H/H制御)を実行し、ステップS5へ進む。
【0030】
ステップS5では、ステップS4でのH/H制御の実行に続き、ブレーキペダル51を開放(BRK=off)したか否かを判断する。YES(BRK=off)の場合はステップS6へ進み、NO(BRK=on)の場合はリターンへ進む。
ここで、「ブレーキペダル51を開放したか否かの判断」は、ブレーキスイッチ57からのスイッチ信号により行う。なお、ブレーキスイッチ57からのスイッチ信号に限られず、ブレーキ液圧やブレーキペダル51のストローク量により、ブレーキペダル51を開放したか否かを判断しても良い。
【0031】
ステップS6では、ステップS5でのブレーキペダル開放(BRK=off)であるとの判断に続き、アイドルストップ制御条件が不成立になったことで、停止状態のエンジン1を再始動し、ステップS7へ進む。
【0032】
ステップS7では、ステップS6でのエンジン再始動に続き、エンジン1の運転/停止状態をあらわす第1フラグF1が、F1=0からF1=1(エンジン運転状態)に書き替えられ、ステップS8及びステップS15へ進む。
ここで、ステップS8〜ステップS14のヒルホールド制御の解除条件判断処理(クラッチ条件)と、ステップS15及びステップS16のヒルホールド制御の解除条件判断処理(時間条件)は、同時進行による並列処理にて行われる。
【0033】
ステップS8では、ステップS1でのF1=1との判断、或いは、ステップS7でのF1=0からF1=1への書き替えに続き、ローブレーキ32の締結を開始し、ステップS9へ進む。
【0034】
ステップS9では、ステップS8でのL/B締結開始に続き、ハイクラッチ33を開放状態のまま維持するH/Cゼロ点待機し、ステップS10へ進む。
ここで、「H/Cゼロ点待機」とは、ハイクラッチ33のピストンリターンスプリングを押しつぶし、摩擦板同士の隙間を低減し、伝達容量が発生する直前の状態で待機することをいう。
【0035】
ステップS10では、ステップS9でのH/Cゼロ点待機に続き、ローブレーキ32が正常に作動しているか否かを判断する。YES(L/B正常)の場合はステップS11へ進み、NO(L/B異常)の場合はステップS13へ進む。
ここで、「ローブレーキ32が正常に作動しているか否かの判断」は、エンジン1の再始動後、エンジン1により駆動されるメカオイルポンプ10からの吐出流量が増えてゆくことで、正常の場合は、所定時間内にローブレーキ32が締結状態になる。しかし、異常の場合は、所定時間を経過してもローブレーキ32がスリップ状態のままとなる。よって、エンジン1の再始動後、所定時間を経過してもローブレーキ32がスリップ状態のままであると異常と判断する(図11参照)。
なお、ローブレーキ32の締結異常とは、ローブレーキ32の締結制御を開始しても指示通りの締結トルク容量とならないことをいい、例えば、油圧を制御するソレノイドのフェールが原因で生じる。
【0036】
ステップS11では、ステップS10でのL/B正常であるとの判断に続き、ローブレーキ32を介した実伝達トルクを随時求め、実伝達トルクが勾配トルクを超えているか否かを判断する。YES(実伝達トルク>勾配トルク)の場合はステップS17へ進み、NO(実伝達トルク≦勾配トルク)の場合はステップS12へ進む。
ここで、「実伝達トルク」とは、締結が開始されたローブレーキ32を介して駆動輪7へ伝達するエンジン1からのトルクをいう。この実伝達トルクは、図4に示すように、エンジン回転数Neとタービン回転数Ntを用いて速度比eを求め、トルクコンバータ2での速度比eとトルク容量τの関係からトルク容量τを求める。タービントルクTtを、Tt=τNe2の式を用いて求める。そして、タービントルクTtとバリエータ20でのプーリ比によるL/B入力トルクとL/B実圧(L/Bトルク容量)を用い、実伝達トルクを求める。
また、「勾配トルク」とは、登坂路での路面勾配によって車両をずり下がらせる方向に生じるトルクをいう。この勾配トルクは、図4に示すように、前後Gセンサ49からの出力信号と車両諸元(車重など)に基づき求める。そして、時間の経過と共に上昇する実伝達トルクと勾配トルクを比較判定するのが、ステップS11である。
【0037】
ステップS12では、ステップS11での実伝達トルク≦勾配トルクであるとの判断に続き、ローブレーキ32が締結完了状態になったか否かを判断する。YES(L/B締結)の場合はステップS17へ進み、NO(L/B未締結)の場合はステップS18へ進む。
ここで、ローブレーキ32の締結完了状態とは、ローブレーキ32の入力回転速度と出力回転速度の速度差がゼロになった状態をいう。
【0038】
ステップS13では、ステップS10でのL/B異常であるとの判断に続き、ハイクラッチ33を即締結し、ステップS14へ進む。
ここで、ハイクラッチ33を即締結するとは、ハイクラッチ33への指示油圧を、ハイクラッチ33が高応答で完全締結状態となる上昇特性で与えることをいい(図11参照)、ローブレーキ32を締結する際のローブレーキ32への指示油圧の上昇勾配より、ハイクラッチ33への締結油圧の上昇勾配を大きくすることをいう。
【0039】
ステップS14では、ステップS13でのH/C即締結に続き、ハイクラッチ33の締結が完了したか否かを判断する。YES(H/C締結完了)の場合はステップS17へ進み、NO(H/C締結未完)の場合はステップS18へ進む。
【0040】
ステップS15では、ステップS1でのF1=1との判断、或いは、ステップS7でのF1=0からF1=1への書き替えに続き、タイマー値Tを、ステップS15を通過する制御周期毎にT=T+1の式により増加させ、ステップS16へ進む。
【0041】
ステップS16では、ステップS15でのT=T+1に続き、タイマー値Tが、予め設定されたヒルホールド制御の解除時間を超えたか否かを判断する。YES(T>解除時間)の場合はステップS17へ進み、NO(T≦解除時間)の場合はステップS18へ進む。
ここで、「ヒルホールド制御の解除時間」は、ブレーキOFFからブレーキ液圧が解除されるまでに要する時間よりも短い時間に設定する。即ち、ブレーキOFFから所定時間(例えば、2秒)を経過するとブレーキ液圧は保持することができず、ブレーキ液圧が解除されてしまう(図9図10のブレーキ保持タイマーを参照)。
【0042】
ステップS17では、ステップS11での実伝達トルク>勾配トルク、或いは、ステップS12でのL/B締結、或いは、ステップS14でのH/C締結完了、或いは、ステップS16でのT>解除時間であるとの判断に続き、ヒルホールド制御の解除条件成立/不成立をあらわす第2フラグF2を、F2=0(ヒルホールド制御の解除条件不成立)からF2=1(ヒルホールド制御の解除条件成立)に書き替え、ステップS18へ進む。
ここで、ステップS11からステップS17へ進む流れは、図5に示すように、クラッチ容量判定(実伝達トルク>勾配トルク)によりヒルホールド制御の解除タイミングを決める流れである。ステップS12からステップS17へ進む流れは、図6に示すように、実伝達トルクの上昇勾配が緩やかであり、クラッチ容量判定ではヒルホールド制御の解除タイミングを決められないとき、クラッチ締結判定(L/B締結)によりヒルホールド制御の解除タイミングを決める流れである。
【0043】
ステップS18では、ステップS12でのL/B未締結、或いは、ステップS14でのH/C締結未完、或いは、ステップS16でのT≦解除時間であるとの判断、又は、ステップS17でのF2=1に続き、F2=1(ヒルホールド制御の解除条件成立)であるか否かを判断し、YES(F2=1)の場合はステップS19へ進み、NO(F2=0)の場合はリターンへ進む。
【0044】
ステップS19では、ステップS18でのF2=1であるとの判断に続き、保持されているブレーキ液圧を抜くことによりヒルホールド制御を解除し、リターンへ進む。
【0045】
次に、作用を説明する。
実施例1のエンジン車のヒルホールド制御装置における作用を、「ヒルホールド制御処理作用」、「クラッチ容量判定によるヒルホールド制御解除作用」、「クラッチ締結判定によるヒルホールド制御解除作用」、「締結異常によるヒルホールド制御解除作用」、「ブレーキOFF操作からの時間経過によるヒルホールド制御解除作用」に分けて説明する。
【0046】
[ヒルホールド制御処理作用]
実施例1のヒルホールド制御処理作用を、図3に示すフローチャートに基づき説明する。
まず、エンジン1を停止しているアイドルストップ状態であり、車両が路面から勾配抵抗を受けるときは、図3のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS4へと進む。ステップS4では、停車路面から受ける勾配抵抗にかかわらず、車両停車状態を維持するのに十分な制動力を付与するヒルホールド制御(H/H制御)が実行される。そして、次のステップS5でブレーキ踏み込み操作中であると判断されている間は、ステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS4→ステップS5→リターンへと進む流れが繰り返され、ヒルホールド制御の実行が維持される。
【0047】
ステップS5にてブレーキペダル51の開放操作を行ったと判断されると、ステップS5からステップS6へ進み、ステップS6では、アイドルストップ制御条件が不成立になったことで、停止状態のエンジン1が再始動され、次のステップS7では、エンジン1の運転/停止状態をあらわす第1フラグF1が、F1=0からF1=1(エンジン運転状態)に書き替えられる。そして、ステップS7でF1=1に書き替えられると、ステップS8〜ステップS14のヒルホールド制御の解除条件判断処理(クラッチ条件)と、ステップS15及びステップS16のヒルホールド制御の解除条件判断処理(時間条件)とに分かれて同時進行による並列処理が行われる。
【0048】
クラッチ条件による処理側では、L/B正常であり、実伝達トルク≦勾配トルクであり、L/B未締結である間は、ステップS8→ステップS9→ステップS10→ステップS11→ステップS12→ステップS18→リターンへ進む。そして、次の制御周期からは、ステップS1→ステップS8→ステップS9→ステップS10→ステップS11→ステップS12→ステップS18→リターンへ進む流れが繰り返され、ヒルホールド制御が維持される。
【0049】
その後、ステップS11で(実伝達トルク≦勾配トルク)から(実伝達トルク>勾配トルク)へ移行したと判断されると、ステップS11からステップS17→ステップS18→ステップS19へと進む。そして、ステップS19では、保持されているブレーキ液圧を抜くことによりヒルホールド制御が解除される(クラッチ容量判定によるH/H解除)。
【0050】
一方、ステップS11で(実伝達トルク≦勾配トルク)を維持していて、(実伝達トルク>勾配トルク)へ移行する前に、ステップS12にてL/B締結と判断されると、ステップS12からステップS17→ステップS18→ステップS19へと進む。そして、ステップS19では、保持されているブレーキ液圧を抜くことによりヒルホールド制御が解除される(クラッチ締結判定によるH/H解除)。
【0051】
さらに、L/B締結を開始した後、L/B異常であると判断されると、ステップS10からステップS13へと進み、ハイクラッチ33の締結が即開始される。そして、ステップS1→ステップS8→ステップS9→ステップS10→ステップS13→ステップS14→ステップS18→リターンへ進む流れが繰り返されている間に、ハイクラッチ33の締結が完了すると、ステップS14からステップS17→ステップS18→ステップS19へと進む。そして、ステップS19では、保持されているブレーキ液圧を抜くことによりヒルホールド制御が解除される(L/B締結異常によるH/H解除)。
【0052】
また、ヒルホールド制御が解除されることなく、ブレーキOFF操作時からカウントが開始されていたタイマー値Tが、予め設定されたヒルホール制御の解除時間を超えると、ステップS16からステップS17→ステップS18→ステップS19へと進む。そして、ステップS19では、保持されているブレーキ液圧を抜くことによりヒルホールド制御が解除される(ブレーキOFF操作からの時間経過によるH/H解除)。
【0053】
このように、ヒルホールド制御の解除処理は、クラッチ容量判定によるH/H解除処理と、クラッチ締結判定によるH/H解除処理と、L/B締結異常によるH/H解除処理と、ブレーキOFF操作からの時間経過によるH/H解除処理と、の4つのパターンに分かれる。以下、各パターンによるヒルホールド制御解除作用を説明する。
【0054】
[クラッチ容量判定によるヒルホールド制御解除作用]
実施例1のクラッチ容量判定によるヒルホールド制御解除作用を、図7図9に基づき説明する。
例えば、大容量の電動オイルポンプを備えるシステムである場合、アイドリングストップ制御中に電動オイルポンプを駆動して、ローブレーキ32とハイクラッチ33とを動力伝達状態としてインターロック状態とし、ずり下がり力に打ち勝つ伝達容量としておくことができる(インターロック制御)。しかしながら、電動オイルポンプを備えない構成のシステムにおいては、アイドリングストップ制御中、油圧が供給されないことで摩擦締結要素は開放状態となり、動力伝達されない。このようなシステム構成においては、車輪に制動力を付与するヒルホールド制御を行うことで、アイドリングストップ制御からの発進に際して、ずり下がりを低減させることができる。
【0055】
実施例1では、電動オイルポンプを備えないシステムを前提としている。この場合、システムを成立させるポイントは、ヒルホールド制御の解除タイミングにある。例えば、摩擦締結要素が締結する前にヒルホールド制御を解除してしまうと、車両のずり下がりになり、逆に、解除タイミングが遅すぎると、発進時に制動力による引っ掛かり感が出て、運転性が悪くなってしまう。
【0056】
つまり、車両がすり下がろうとするトルク(勾配トルク)に対して、摩擦締結要素を介して車輪へ伝達される駆動トルク(実伝達トルク)が打ち勝っているか否かを正確に判定し、適切なタイミングでヒルホールド制御を解除することが重要となる。
ここで、実伝達トルクは、図7に示すように、エンジン1から駆動輪7へ向かう駆動トルクであり、勾配トルクは、逆に駆動輪7からエンジン1へ向かうトルクである。そして、例えば、図8に示すように、時刻t1にてブレーキOFF操作が行われ、時刻t2にてエンジン始動が行われた場合、駆動力がずり下がりを防止するレベルまで上がった時刻t3にてヒルホールド制御を解除(制動力の低下を開始)するのが良い。
【0057】
この考え方を実現する実施例1における登坂路でのIS停車→ブレーキOFF→即アクセルON発進するときのクラッチ容量判定によるヒルホールド制御解除作用を、図9に示すタームチャートに基づき説明する。
【0058】
なお、図9において、時刻t1はブレーキOFF・エンジン再始動・L/B締結開始時刻、時刻t2はアクセルON時刻、時刻t3は実伝達トルク発生開始時刻、時刻t4はクラッチ容量判定時刻、時刻t5は発進時刻、時刻t6はクラッチ締結判定時刻、時刻t7はブレーキ保持タイマー解除時刻である。
【0059】
時刻t1にてブレーキOFF操作がなされると、同時にアイドルストップ制御解除に基づき自動的にエンジン再始動が開始され、さらに、ローブレーキ32の締結も開始される。そして、時刻t2にてアクセルON操作がなされるが、時刻t1〜時刻t3まではローブレーキ32のピストンストローク域であり(オープン制御)、ローブレーキ32で伝達容量を発生しない。時刻t3にて実伝達トルクが発生を開始し、時間の経過と共に実伝達トルクが上昇すると(フィードバック制御)、時刻t4にて実伝達トルク>勾配トルクになることで(図3の(a)に対応)、L/B容量判定がセットされる。このL/B容量判定セットにより、時刻t4にてヒルホールド制御を解除し、ブレーキ液圧の低下を開始する。そして、時刻t5になると、制動力<駆動力になることで発進を開始する。なお、時刻t6になるとローブレーキ32の締結が完了し、L/B締結判定がセットされる。時刻t7になると時刻t1から保持されていたブレーキ保持タイマーが解除される。
【0060】
このように、実施例1では、エンジン1が自動始動すると、実伝達トルクと勾配トルクを求める。そして、実伝達トルクと勾配トルクが比較され、実伝達トルクが勾配トルクを超えるタイミングになると、ブレーキ液圧による制動力を解除するようにした。
【0061】
例えば、登坂路の勾配が緩やかである場合や、登坂路の勾配が急であってもエンジン1が出力するトルクが高い場合は、ローブレーキ32がスリップ締結状態であり締結が完了していなくても、ローブレーキ32を介して駆動輪7へ伝達される実伝達トルクが勾配抵抗である勾配トルクに打ち勝てば発進することができる。
【0062】
この点に着目し、実伝達トルクが勾配トルクを超えるタイミングになると、ヒルホールド制御を解除するため、例えば、ローブレーキ32の締結が完了していなくても、車両がずり下がることなく発進可能な場合、ヒルホールド制御が解除される。従って、車両の発進に対して不要な制動力が作用することはなく、発進ラグを低減することができる。勿論、実伝達トルク≦勾配トルクであって、車両がずり下がるおそれがある間は、ヒルホールド制御による制動力(ブレーキ液圧)が作用しているため、車両がずり下がることを防止することができる。
【0063】
この結果、駆動源の自動始動から発進する際、車両のずり下がりを防止しつつ、発進ラグが低減される。ちなみに、実施例1の場合、ローブレーキ32の締結完了まで待つ場合に比べ、ヒルホールド制御を解除するタイミングが時間Δt(=t6−t4)だけ短縮され、その分、発進ラグを低減するができる。
【0064】
[クラッチ締結判定によるヒルホールド制御解除作用]
実施例1における登坂路でのIS停車→ブレーキOFF→即アクセルON発進するときのクラッチ締結判定によるヒルホールド制御解除作用を、図10に示すタイムチャートに基づき説明する。
【0065】
なお、図10において、時刻t1はブレーキOFF・エンジン再始動・L/B締結開始時刻、時刻t2はアクセルON時刻、時刻t3は実伝達トルク発生開始時刻、時刻t4はクラッチ締結判定時刻、時刻t5は発進時刻、時刻t6はクラッチ容量判定時刻、時刻t7はブレーキ保持タイマー解除時刻である。
【0066】
時刻t1にてブレーキOFF操作がなされると、同時にアイドルストップ制御解除に基づき自動的にエンジン再始動が開始され、さらに、ローブレーキ32の締結も開始される。そして、時刻t2にてアクセルON操作がなされるが、時刻t1〜時刻t3まではローブレーキ32のピストンストローク域であり(オープン制御)、ローブレーキ32で伝達容量を発生しない。時刻t3にて実伝達トルクが発生を開始し、時間の経過と共に実伝達トルクが上昇する(フィードバック制御)。しかし、実伝達トルク>勾配トルクになる前に時刻t4にてローブレーキ32の締結が完了することで(図3の(b)に対応)、L/B締結判定がセットされる。このL/B締結判定セットにより、時刻t4にてヒルホールド制御を解除し、ブレーキ液圧の低下を開始する。そして、時刻t5になると、制動力<駆動力になることで発進を開始する。なお、時刻t6になると実伝達トルク>勾配トルクになり、L/B容量判定がセットされる。時刻t7になると時刻t1から保持されていたブレーキ保持タイマーが解除される。
【0067】
このように、実施例1では、実伝達トルクが勾配トルクを超えないままで、ローブレーキ32が締結完了状態のタイミングになると、ブレーキ液圧による制動力を解除するようにした。
即ち、ローブレーキ32が締結完了状態となると、エンジン1及び自動変速機4からの駆動力が、路面勾配によるずり下がり力に対抗することになる。つまり、発進時に運転者が駆動力不足を感じると、アクセル踏み込み操作により駆動力を上げることで対応できる。このとき、不要な制動力が作用していると、運転者の意図に応じた発進性が低下する。
従って、ローブレーキ32が締結完了状態のタイミングになると、不要な制動力を解除することで、運転者の意図に応じた発進性が確保される。
【0068】
ここで、実伝達トルクが勾配トルクを超えないままで、ローブレーキ32が締結完了状態となることがある理由について説明する。
【0069】
ローブレーキ32の締結速度は、変速ショックとならないようF/B制御している。このローブレーキ32の締結完了までの時間が所定時間よりも長くなると、所定時間経過に伴うヒルホールド制御を解除する際、ローブレーキ32は完全締結状態となっておらず、エンジン1からの出力された駆動力が十分に駆動輪7に伝達されない状態であって、登坂路においては車両が後退するおそれがある。そこで、所定時間が経過するタイミングにて、完全締結状態となるようローブレーキ32の締結速度を設定する。具体的には、ローブレーキ32へのF/B制御中、締結速度が遅い場合は、所定時間が経過するタイミングにて締結が完了するよう、締結速度を早くする。これにより、所定時間の経過により、ヒルホールド制御が解除されて、車両への制動力がなくなった場合であっても、エンジン1から出力された駆動力を十分に伝達することができ、車両の後退を抑制することができる。このとき、所定時間が経過するタイミングよりも前にローブレーキ32を完全締結状態とすることが考えられるが、ローブレーキ32を早く締結させると、発生する車体の振動が大きくなり、運転者に違和感を与える。
【0070】
即ち、ローブレーキ32の締結前、ローブレーキ32の下流側は駆動輪7に連結しており、制動力を与えるヒルホールド制御により回転していない。これに対し、ローブレーキ32の上流側はエンジン1の回転により回転されている。このような状態にてローブレーキ32を締結させると、反力による車体振動が発生する。この車体振動は、締結速度が早いほど大きくなる。そこで、締結速度を極力遅くすることで、車体振動を低減させる。
以上の点を考慮し、ヒルホールド制御が作用している時間内で、最も締結速度を遅くするため、所定時間が経過するタイミングにて完全締結状態となるよう、ローブレーキ32の締結速度を設定する。これにより、車両の後退を抑制できると共に、車体振動を低減することができる。
【0071】
[締結異常によるヒルホールド制御解除作用]
実施例1におけるローブレーキ32を締結する際に締結異常があったときの締結異常によるヒルホールド制御解除作用を、図11に基づき説明する。
【0072】
なお、図11において、時刻t1はブレーキOFF・エンジン再始動・L/B締結開始時刻、時刻t2はエンジン始動完了・オープン制御開始時刻、時刻t3はフィードバック制御開始時刻、時刻t4はローブレーキ32の締結異常判定時刻、時刻t5はハイクラッチ33の締結完了時刻である。
【0073】
時刻t1にてブレーキOFF操作されると、エンジン再始動を開始すると同時にローブレーキ32の締結制御が開始される。そして、時刻t2にてエンジン始動が完了すると、メカオイルポンプ10の駆動により油量が吐出されることで、オープン制御からフィードバック制御を経過し、締結正常時において、スリップ状態からスリップ量を減少させながら締結が進行し、時刻t4にてローブレーキ32が締結される。一方、締結異常時においては、スリップ量が上昇し、進行状態の異常検知閾値を上回り、時刻t4になってもローブレーキ32がスリップ状態のままになる。そこで、時刻t1〜時刻t4を進行状態の異常検知タイマーとし、時刻t4になったとき、ローブレーキ32が異常検知閾値を上回るスリップ状態であると、時刻t4にてローブレーキ32が締結異常と判定される。ローブレーキ32が締結異常と判定されると、時刻t4にて直ちにハイクラッチ33の高い締結速度による締結制御が開始され、時刻t5にてハイクラッチ33の締結を完了する。即ち、ローブレーキ32を締結しての前進1速発進から、ハイクラッチ33を締結しての前進2速発進へと移行する。
【0074】
このように、実施例1では、摩擦締結要素として、動力伝達状態とすることでそれぞれ異なる変速比経路によりエンジン1から駆動輪7へ動力伝達可能なローブレーキ32とハイクラッチ33を有する。そして、エンジン1の自動始動に伴い締結されるローブレーキ32が締結異常であるか否かを検知し、ローブレーキ32の締結異常が検知されると、前記第2摩擦締結要素を動力伝達状態とするようにした。
即ち、ローブレーキ32の締結異常(フェール)の要因は複数考えられ、フェールの要因を特定して、フェールセーフ制御を行うことで、ローブレーキ32での発進を行うことも考えられる。しなしながら、フェールの要因を特定するには、油圧センサなどの検知手段を設ける必要があるなど、コストアップとなる。
これに対し、締結異常によりローブレーキ32による発進が不能であると検知された場合は、ハイクラッチ33を動力伝達状態として発進させることで、コストアップとなることなく、ローブレーキ32による発進ができない場合であっても、発進不能となることを防ぐことができる。
【0075】
さらに、実施例1では、ハイクラッチ33の指示油圧は、ハイクラッチ33が高応答で完全締結状態となる上昇特性で与えるようにした。
即ち、ローブレーキ32による発進ができない場合、ハイクラッチ33を即座に締結させることで、エンジン1から駆動輪7への動力伝達が行われない時間を極力低減させることができ、車両発進に際して動力伝達されるまでの応答性が低下することによる違和感を、低減させることができる。
【0076】
[ブレーキOFF操作からの時間経過によるヒルホールド制御解除作用]
実施例1におけるブレーキOFF操作からの時間経過によるヒルホールド制御解除作用を、図9及び図10に基づき説明する。
【0077】
実施例1では、ブレーキOFFから所定時間(図9及び図10に示すように、時刻t1〜時刻t7までのブレーキ保持タイマー時間)を経過すると、ブレーキ液圧による制動力を低下させるものとしている。そして、ブレーキ保持タイマー時間が経過するまでに、ローブレーキ32の締結を完了させるようにしている。
【0078】
即ち、ブレーキ制御では、ブレーキペダル開放操作からブレーキ保持タイマー時間を経過するとヒルホールド制御を解除する。これは、例えば、安価なブレーキである場合、ブレーキペダル踏み込みにより貯留した油を保持することしかできず、リークにより保持した油が抜けてしまうため、ヒルホールド制御が可能な時間が所定時間であることによる。また、ブレーキペダルの踏み込み操作にかかわらず、加圧式のブレーキである場合、リークした油分、加圧して(制動力を増大させて)保持することで、所定時間経過後もヒルホールド制御を維持することが可能である。しかしながら、“実伝達トルク”や“勾配トルク”がセンサのフェールや誤検知により正しく演算されない場合、いつまでもヒルホールド制御が解除されないこととなり、車両を発進させることができない。従って、後者の場合に不要な制動力が作用することを防ぐため、ブレーキ保持タイマー時間を経過するとヒルホールド制御を解除する(図3のS16→S17→S18→S19)。
【0079】
このように、ブレーキペダル開放操作からブレーキ保持タイマー時間を経過することによりヒルホールド制御を解除するものにおいて、ローブレーキ32の締結完了に要する時間をブレーキ保持タイマー時間以内とするように指示することが望ましい。これは、ブレーキ保持タイマー時間を経過した後は、ヒルホールド制御が解除されるため、このとき、いずれの摩擦締結要素も開放状態である、またはスリップ状態であると、駆動輪7へ伝達される駆動力が不足し、車両がずり下がる。従って、ヒルホールド制御が解除されるまでにローブレーキ32の締結が完了する(回転速度差がゼロとなる)よう指示することで、ヒルホールド制御が解除されるまでにローブレーキ32を締結完了させることができる。
【0080】
また、ローブレーキ32が締結異常であっても、ブレーキ保持タイマー時間を経過するまでにローブレーキ32の締結異常を検知することができ、ブレーキ保持タイマー時間を経過するまでにハイクラッチ33を動力伝達状態とすることができ、車両がずり下がることを抑制することができる。
【0081】
次に、効果を説明する。
実施例1のエンジン車のヒルホールド制御方法及び制御装置にあっては、下記に列挙する効果が得られる。
【0082】
(1) 自動停止条件に基づき駆動源(エンジン1)の自動停止/自動始動を制御(アイドルストップ制御)する駆動源自動停止制御手段(エンジンコントローラ14)と、
駆動源(エンジン1)から駆動輪7へ動力伝達を行う際に締結されると共に、駆動源(エンジン1)に駆動される油圧源(メカオイルポンプ10)からの油圧により締結制御される摩擦締結要素(ローブレーキ32、ハイクラッチ33)と、
駆動源(エンジン1)の自動停止に伴い、ブレーキペダル51が開放された状態にて、制動力を付与可能であるブレーキ制御手段(ブレーキコントローラ16)と、を備える車両(エンジン車)において、
駆動源(エンジン1)が自動停止すると、ブレーキ制御手段(ブレーキコントローラ16)により制動力を付与するヒルホールド制御を実行し、
駆動源(エンジン1)が自動始動すると、摩擦締結要素(ローブレーキ32、ハイクラッチ33)を介して駆動輪7へ伝達する実伝達トルクと、路面勾配によって車両をずり下がらせる方向に生じる勾配トルクと、を求め、
実伝達トルクと勾配トルクを比較し、実伝達トルクが勾配トルクを超えるタイミングになると、ブレーキ制御手段(ブレーキコントローラ16)による制動力を解除する。
このため、駆動源(エンジン1)の自動始動から発進する際、車両のずり下がりを防止しつつ、発進ラグを低減する車両(エンジン車)のヒルホールド制御方法を提供することができる。
【0083】
(2) 摩擦締結要素として、動力伝達状態とすることで異なる経路により駆動源(エンジン1)から駆動輪7へ動力伝達可能な第1摩擦締結要素(ローブレーキ32)と第2摩擦締結要素(ハイクラッチ33)を有し、
駆動源(エンジン1)の自動始動に伴い締結される第1摩擦締結要素(ローブレーキ32)が締結異常であるか否かを検知し、
第1摩擦締結要素(ローブレーキ32)の締結異常が検知されると、第2摩擦締結要素(ハイクラッチ33)を動力伝達状態とする。
このため、(1)の効果に加え、コストアップとなることなく、第1摩擦締結要素(ローブレーキ32)による発進ができない場合であっても、発進不能になることを防止することができる。
【0084】
(3) 第2摩擦締結要素(ハイクラッチ33)の指示油圧は、第2摩擦締結要素(ハイクラッチ33)が高応答で完全締結状態となる上昇特性で与える。
このため、(2)の効果に加え、駆動源(エンジン1)から駆動輪7への動力伝達が行われない時間を極力低減させることができ、車両発進に際して動力伝達されるまでの応答性が低下することによる違和感を低減することができる。
【0085】
(4) 実伝達トルクが勾配トルクを超えないままで、摩擦締結要素(ローブレーキ32)が締結完了状態のタイミングになると、ブレーキ制御手段(ブレーキコントローラ16)による制動力を解除する。
このため、(1)〜(3)の効果に加え、摩擦締結要素(ローブレーキ32)が締結完了状態のタイミングになると、不要な制動力を解除することで、運転者の意図に応じた発進性を確保することができる。
【0086】
(5) ブレーキ制御手段(ブレーキコントローラ16)は、ブレーキペダル開放から所定時間(ブレーキ保持タイマー時間)経過すると、制動力を低下させるものであって、
所定時間(ブレーキ保持タイマー時間)が経過するまでに、摩擦締結要素(ローブレーキ32)の締結を完了させる。
このため、(1)〜(4)の効果に加え、所定時間(ブレーキ保持タイマー時間)を経過すると強制的にヒルホールド制御を解除することで、不要な制動力作用を防止することができる。加えて、所定時間(ブレーキ保持タイマー時間)の経過によりヒルホールド制御が解除されるまでの間に、摩擦締結要素(ローブレーキ32)の締結を完了させることができると共に、摩擦締結要素(ローブレーキ32)の締結異常を検知することができる。
【0087】
(6) 自動停止条件に基づき駆動源(エンジン1)の自動停止/自動始動を制御(アイドルストップ制御)する駆動源自動停止制御手段(エンジンコントローラ14)と、
駆動源(エンジン1)から駆動輪7へ動力伝達を行う際に締結されると共に、駆動源(エンジン1)に駆動される油圧源(メカオイルポンプ10)からの油圧により締結制御される摩擦締結要素(ローブレーキ32、ハイクラッチ33)と、
駆動源(エンジン1)の自動停止に伴い、ブレーキペダル51が開放された状態にて、制動力を付与可能であるブレーキ制御手段(ブレーキコントローラ16)と、を備える車両(エンジン車)において、
駆動源自動停止制御手段(エンジンコントローラ14)と摩擦締結要素(ローブレーキ32、ハイクラッチ33)とブレーキ制御手段(ブレーキコントローラ16)とを統合制御する統合コントローラ13を設け、
統合コントローラ13は、駆動源(エンジン1)が自動停止すると、ブレーキ制御手段(ブレーキコントローラ16)により制動力を付与するヒルホールド制御を実行し、
駆動源(エンジン1)が自動始動すると、摩擦締結要素(ローブレーキ32、ハイクラッチ33)を介して駆動輪7へ伝達する実伝達トルクと、路面勾配によって車両をずり下がらせる方向に生じる勾配トルクと、を求め、
実伝達トルクと勾配トルクを比較し、実伝達トルクが勾配トルクを超えるタイミングになると、ブレーキ制御手段(ブレーキコントローラ16)による制動力を解除する処理を行う。
このため、駆動源(エンジン1)の自動始動から発進する際、車両のずり下がりを防止しつつ、発進ラグを低減する車両(エンジン車)のヒルホールド制御装置を提供することができる。
【0088】
以上、本発明の車両のヒルホールド制御方法及び制御装置を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0089】
実施例1では、摩擦締結要素を駆動源に駆動されるメカオイルポンプ10からの油圧により制御される例を示した。しかし、メカオイルポンプ10に代えて/加えて、他の駆動源に駆動されるオイルポンプ(例えば、電動オイルポンプ)からの油圧により制御されるようにしても良い。
【0090】
実施例1では、ブレーキ制御手段として、運転者のブレーキペダル操作と独立してブレーキ液圧を制御可能、つまり、ブレーキペダルを開放しても制動力を付与可能な液圧ブレーキシステムによる例を示した。しかし、ブレーキ制御手段としては、液圧ブレーキシステムに限られず、電動モータを用いて制動力を出す電制ブレーキシステムであっても良い。
【0091】
実施例1では、自動停止条件に基づきエンジン1の自動停止/自動始動を制御する駆動源自動停止制御として、アイドルストップ制御の例を示した。しかし、駆動源自動停止制御としては、減速走行状態からエンジンを自動停止するコーストストップ制御としても良い。
【0092】
実施例1では、本発明の車両のヒルホールド制御方法及び制御装置を、副変速機付き無段変速機を搭載したエンジン車に適用する例を示した。しかし、本発明のヒルホールド制御方法及び制御装置は、無段変速機を搭載したエンジン車や有段変速機を搭載したエンジン車や変速機を搭載していないエンジン車、さらには、駆動源として走行用モータが搭載された電動車両に適用しても良い。要するに、駆動源が自動停止すると、ブレーキ制御手段により制動力を付与するヒルホールド制御を行う車両であれば適用できる。
【符号の説明】
【0093】
1 エンジン(駆動源)
2 トルクコンバータ
3 第1ギヤ列
4 自動変速機
5 第2ギヤ列
6 終減速装置
7 駆動輪
9 ロックアップクラッチ
10 メカオイルポンプ
11 油圧制御回路
12 変速機コントローラ
13 統合コントローラ
14 エンジンコントローラ(駆動源自動停止制御手段)
16 ブレーキコントローラ(ブレーキ制御手段)
20 バリエータ
21 プライマリプーリ
22 セカンダリプーリ
23 Vベルト
30 副変速機構
31 ラビニョウ型遊星歯車機構
32 ローブレーキ(第1摩擦締結要素、L/B)
33 ハイクラッチ(第2摩擦締結要素、H/C)
34 リバースブレーキ
50 ブレーキシステム
51 ブレーキペダル
図1
図2
図3
図4
図5
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図10
図11