特許第6598692号(P6598692)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6598692
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】銀ナノワイヤを含む組成物
(51)【国際特許分類】
   H01B 1/22 20060101AFI20191021BHJP
   H01B 1/00 20060101ALI20191021BHJP
   C09D 5/24 20060101ALI20191021BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20191021BHJP
   C09D 133/04 20060101ALI20191021BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20191021BHJP
   C08K 7/06 20060101ALI20191021BHJP
   H01G 9/20 20060101ALI20191021BHJP
   B82Y 30/00 20110101ALI20191021BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20191021BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20191021BHJP
【FI】
   H01B1/22 A
   H01B1/00 H
   C09D5/24
   C09D5/02
   C09D133/04
   C08L101/00
   C08K7/06
   H01G9/20 111D
   H01G9/20 115A
   B82Y30/00
   B82Y40/00
   H01B13/00
【請求項の数】12
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-9271(P2016-9271)
(22)【出願日】2016年1月20日
(65)【公開番号】特開2016-156000(P2016-156000A)
(43)【公開日】2016年9月1日
【審査請求日】2019年1月17日
(31)【優先権主張番号】14/610,287
(32)【優先日】2015年1月30日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イリアン・ウー
【審査官】 仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−132082(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/023889(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/083421(WO,A1)
【文献】 特開2015−174922(JP,A)
【文献】 特開2010−244746(JP,A)
【文献】 特表2017−505509(JP,A)
【文献】 特開2014−137860(JP,A)
【文献】 特表2017−532430(JP,A)
【文献】 特開2010−194788(JP,A)
【文献】 特開2013−189575(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/005833(WO,A1)
【文献】 特表2006−526689(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 1/22
C09D 5/24
H01B 1/00
H01G 9/20
H01B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性膜を作成するための組成物であって、
前記組成物は、
銀を含む複数のナノワイヤと
リマー粒子を含むラテックスと、
水性担体と
を含み、
前記ナノワイヤと前記ポリマー粒子の重量比が6:1〜2:1の範囲であ
前記ポリマー粒子は、15℃以下のガラス転移温度を有する、アクリル酸エステルと酢酸ビニルのコポリマー、又はアクリル酸ブチルとメタクリル酸ブチルのコポリマーを含む、組成物。
【請求項2】
前記ポリマー粒子は、平均粒径が300nm以下である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物中のナノワイヤの量は、1mg/mL〜10mg/mLの範囲である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ナノワイヤの平均厚みは、50nm以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記ナノワイヤの平均長さは、10μm〜100μmの範囲である、請求項に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物を150℃以下の温度で乾燥させると、前記ナノワイヤが埋め込まれた、連続したポリマー層を形成するために、前記ポリマー粒子が一緒に融合する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
導電性膜を作成するための組成物であって、
前記組成物は、
銀を含む複数のナノワイヤと
リマー粒子を含むラテックスと、
水性担体と
を含み、
前記ナノワイヤと前記ポリマー粒子の重量比が10:1〜2:1の範囲であ
前記ポリマー粒子は、15℃以下のガラス転移温度を有する、アクリル酸エステルと酢酸ビニルのコポリマー、又はアクリル酸ブチルとメタクリル酸ブチルのコポリマーを含む、組成物。
【請求項8】
前記ポリマー粒子は、平均粒径が300nm以下である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物中のナノワイヤの量は、1mg/mL〜10mg/mLの範囲である、請求項7又は8に記載の組成物。
【請求項10】
前記ナノワイヤと前記ポリマー粒子の重量比が6:1〜2:1の範囲である、請求項7〜9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記ナノワイヤの平均厚みは、50nm以下である、請求項7〜10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
前記ナノワイヤの平均長さは、10μm〜100μmの範囲である、請求項11に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、透明導電性膜を製造するためのナノワイヤおよびラテックスポリマーを含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
透明導電体は、多くの用途(例えば、タッチパネルディスプレイ、有機LED照明、有機光電池デバイスおよび色素増感太陽電池)で広く使用されている。今日、最も一般的に使用される透明導電体は、透明導電性酸化物、例えば、インジウムスズオキシド(ITO)である。ITO膜の脆弱性と、可撓性がないことと、インジウムの供給が限定されていることと、ITO膜を製造するために使用される減圧処理の高コストに起因して、代替例が積極的に求められている。このような代替例としては、銀ナノワイヤ、金属メッシュ、カーボンナノチューブ、グラフェンおよび導電性ポリマーが挙げられる。
【0003】
ITO代替例の中で、カーボンナノチューブ技術は、半導体性の管からの金属性管の分離を必要とし、グラフェンは、合成するのが非常に困難であり、通常、低い透明性を与え、導電性ポリマーは、高いシート抵抗を示す。他の代替例に伴う問題を考えると、銀ナノワイヤ技術は、比較的高い導電性、高い透明性および溶液加工能に起因して、最も有望な手法であろう。しかし、現行の銀ナノワイヤ技術は、膜の丈夫さが悪いこと、および/または接着性が悪いことといった観点で、安定性の問題がある。導電性と透明性を犠牲にしない、基材への銀ナノワイヤの接着性を高めるための新しい配合物が至急必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示の一実施形態は、導電性膜を作成するための組成物に関する。この組成物は、銀を含む複数のナノワイヤと、ポリマー粒子を含むラテックスと、水性担体とを含む。
【0005】
本開示の別の実施形態は、導電性膜を作成するための組成物に関する。この組成物は、銀を含む複数のナノワイヤと、ガラス転移温度が150℃以下のポリマー粒子を含むラテックスと、水性担体とを含む。ナノワイヤとポリマー粒子の重量比は、約10:1〜約1:1の範囲である。
【0006】
上の一般的な記載および以下の詳細な記載は、両方とも例示的であり、単なる説明であり、特許請求の範囲で請求されるような本教示を限定するものではないと理解されるべきである。
【0007】
本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する添付の図面は、本記載と合わせ、本教示のいくつかの実施形態を示し、本教示の原理を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A図1Aは、本開示の比較例に従って、可溶性ポリマーが使用される場合に起こり得る絶縁性シェルに起因して、銀ナノワイヤ間の相互作用が悪いことを示す。
図1B図1Bは、本開示の一実施形態に従って、銀ナノワイヤおよびポリマーラテックスに基づく水性配合物を用いて作られた銀ナノワイヤ間の良好な相互作用を示す。
図2図2は、本開示の一実施形態の銀ナノワイヤ膜を含むデバイスの模式的な断面を示す。
図3図3は、本開示の一例の銀ナノワイヤおよびフッ素化ポリマーラテックスのSEM画像を示す。
図4A図4Aは、本開示の一例のACRONALラテックス中の銀ナノワイヤのSEM画像を示す。
図4B図4Bは、本開示の一例の図4Aの画像よりも高倍率でのACRONALラテックス中の銀ナノワイヤのSEM画像を示す。
図5図5は、本開示の一例のPLEXTOLラテックス中の銀ナノワイヤのSEM画像を示す。
図6図6は、本開示の例で記載されるような、異なるポリマー添加剤を含むか、または含まない透明導電性膜のシート抵抗に対し、550nmでの透明性のグラフを示す。
図7図7は、本開示の例で記載されるような、異なる溶媒を用いて洗浄したとき、ポリマーラテックスを含むか、または含まない銀ナノワイヤ透明導電性膜のシート抵抗の比較を示す。
図8図8は、融合したポリマーラテックスを含む、もっと厚い銀ナノワイヤ(125nm)のSEM画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面のいくつかの詳細は単純化されており、厳格な構造的な正確性、詳細および縮尺を維持するのではなく、実施形態の理解を促進するために描かれていることを注記すべきである。
【0010】
本教示の実施形態について詳細に参照し、その例を添付の図面に示す。図面において、全体で同一の要素を示すために同じ参照番号を使用した。以下の記載では、その一部を形成する添付の図面を参照し、本教示を実施し得る特定の例示的な実施形態を説明することによって示される。従って、以下の記載は、単なる例示である。
【0011】
(銀ナノワイヤおよびラテックス組成物)
本開示の一実施形態は、導電性膜を作成するための組成物に関する。この組成物は、銀を含む複数のナノワイヤと、ポリマー粒子を含むラテックスと、水性担体とを含む。
【0012】
銀ナノワイヤ膜にポリマーラテックスを使用すると、基材表面への銀ナノワイヤの接着性を実質的に増加させることができ、従って、優れた耐溶媒性を有する丈夫で透明な導電性膜が得られる。さらに、ポリマーラテックスを使用すると、可溶性ポリマーと比較して、広範囲のポリマーを使用することができる。図1に示されるように、水溶性ポリマーではなく、ポリマーラテックスを使用すると、膜中でワイヤ同士を良好に接触させることができ、その結果、低いシート抵抗が得られる。これは、図1Aに示されるように、部分的に、ナノワイヤの周囲を望ましくない状態で包む可溶性のポリマーおよび/またはナノワイヤ間の電気的接触を減らし得るその他の方法でのナノワイヤ上のポリマーシェルの生成に起因するだろう。一方、ラテックスポリマーは、電気的接触が可能なままで、ラテックス内にナノワイヤを分散および/または浸透させ、従って、例えば、図1Bに示されるように、改良された導電性を可能にする。
【0013】
ラテックス中のポリマー粒子は、透明ポリマー膜を生成することができる任意の適切なポリマー材料を含んでいてもよい。一実施形態において、ポリマー粒子は、ガラス転移温度が150℃以下、例えば、ガラス転移温度が120℃以下、100℃以下または75℃以下である。例えば、ポリマー粒子は、ガラス転移温度が25℃以下、またさらには15℃以下であってもよい。低いガラス転移温度は、粒子を一緒に融合させ、それによって、さらなる高温加熱を使用することなく、比較的低温での乾燥工程を用いて水または他の担体が除去された後、比較的低温で望ましい接着性を与えることができる。
【0014】
ポリマー粒子は、望ましい組成およびコーティング特性を与える任意の適切な粒径を有していてもよい。粒径が大きすぎる場合、組成物は、安定ではない場合があり、望ましくない沈殿を生じる場合がある。コーティングの均一性も、望ましくない影響を受ける場合がある。一実施形態において、ポリマー粒子は、平均粒径が300nm以下、例えば、200nm以下である。
【0015】
一実施形態において、ポリマー粒子は、アクリレートポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、スチレン系コポリマーおよびこれらの組み合わせからなる群から選択されるポリマーを含む。一実施形態において、ラテックスポリマーは、アクリレートポリマーである。
【0016】
一実施形態において、組成物中のナノワイヤの量は、約1mg/mL〜約10mg/mL、例えば、約1mg/mL〜約5mg/mLの範囲である。一実施形態において、ナノワイヤとポリマー粒子との重量比は、約10:1〜約1:1、例えば、約6:1〜約2:1、または約9:2〜約3:1の範囲である。この重量比は、膜の丈夫さと導電性の適切なバランスを達成する際の因子である。多すぎるポリマーが使用される場合、接着性が大きくなり、膜の丈夫さが向上するだろう。しかし、膜の導電性は減少するだろう。ポリマーが少なすぎると、導電性は良好であるが、膜の丈夫さが悪くなる。
【0017】
一実施形態において、ナノワイヤの平均厚みは、約50nm以下、例えば、約30nm以下である。例えば、ナノワイヤの平均厚みは、約50nm〜約1nm、または約40nm〜約10nmの範囲であってもよい。円筒形ではない形状のナノワイヤにおいて、その厚みは、長手方向の軸に垂直な方向がナノワイヤの最大寸法であってもよく、円筒形ナノワイヤの場合には、例えば、直径であってもよい。一実施形態において、ナノワイヤの平均長さは、約10μm〜約100μm、例えば、約30μm〜約80μmの範囲である。ワイヤの平均厚みが大きすぎる場合、所与のナノワイヤとポリマーの重量比で、膜の透明性が低下し、および/または導電性が低下する場合がある。
【0018】
コーティング媒体としての水の使用は、毒性がなく、環境に優しくない溶媒を使用し得るある種の他の透明導電性膜を用いた場合と比較して、環境に良いと考えられるだろう。このことは、特に、99重量%を超える溶媒を含むコーティング配合物のような大面積のコーティングを製造するときに当てはまる。
【0019】
組成物に使用される水性担体の量は、コーティングに望ましい流動特性を与える任意の望ましい量であってもよい。一実施形態において、組成物中の水の量は、コーティング組成物の合計重量を基準として95重量%以上、例えば、98重量%以上であってもよい。例えば、水の量は、約95重量%〜約99.9重量%の範囲であってもよい。
【0020】
本明細書に記載されるナノワイヤ、ラテックスおよび担体成分を任意の望ましい様式で一緒に混合し、本開示の組成物を作成することができる。この成分を任意の適切な順序で、または一度にすべて混合してもよい。当業者は、本開示の教示を与える本明細書に記載される水性組成物を簡単に配合することができるだろう。
【0021】
(導電性銀ナノワイヤ膜)
本開示は、透明導電性膜10にも関する。図2に示されるように、膜10は、融合したラテックスポリマー粒子から作られる透明ポリマー12を含む。銀を含む複数のナノワイヤ14は、透明ポリマー12に部分的に分散する。膜10は、表面に部分的に露出し、ラテックスポリマー中に部分的に埋め込まれたナノワイヤを含む。図2において、破線のナノワイヤは、ナノワイヤ14の埋め込まれた部分を表し、実線のナノワイヤは、露出した部分を表す。表面に露出したナノワイヤ部分は、文献のどこかに報告される透明導電性膜の表面形態とは異なると考えられる表面形態を生成する。いくつかの実施形態において、銀ナノワイヤの少なくとも一部が、融合したポリマーラテックス中に埋め込まれる。ほとんどのナノワイヤは、図1について上に説明されるように、一般的に高いアスペクト比を有する個々のナノワイヤの周囲を包むことができないナノメートルラテックス粒子の使用に起因して、膜中で優れたワイヤとワイヤの接触を維持する。
【0022】
透明ラテックスポリマー12から延びるナノワイヤ14の一部は、融合したラテックス接着剤層の外側でのワイヤとワイヤの接触を与えるのに十分であり、それによって、改良された導電性が得られる。膜のSEM画像に基づき、ナノワイヤ14は、平均で、ラテックスポリマー12の外側に延びるナノワイヤの長さの10%以上を有していてもよい。例えば、平均で、ナノワイヤの長さの約20%、または30%、または50%以上がポリマーの外側に延びる。従って、ナノワイヤのかなりの長さが、ポリマーに完全に埋め込まれていない。
【0023】
透明導電性膜10は、望ましい透明性を可能にする任意の適切な厚みを有していてもよい。例えば、その厚みは、100nm未満、例えば、50nm未満、または20nm未満であってもよい。一実施形態において、導電性膜は、厚みが約10nm〜約100nmの範囲である。
【0024】
一実施形態において、透明導電性膜10は、放射光の波長550nmでの透明性が少なくとも90%、例えば、少なくとも95%であり、シート抵抗が500オーム/スクエア以下である。透明性は、UV分光計を用いて測定された。
【0025】
一実施形態において、導電性膜は、25℃での4点プローブ方法によって測定される場合、シート抵抗が500オーム/スクエア以下、例えば、200オーム/スクエア以下である。2点プローブ方法によって測定される場合、シート抵抗は、25℃で50オーム/スクエア未満である。
【0026】
本開示の導電性膜は、改良された堅牢性を示すことができる。これにより、膜処理中、膜は望ましい導電性を良好に維持することができる。例えば、透明導電性膜の洗浄は、通常は、最終的な電子機器に組み込む前に行われる。従って、基材への銀ナノワイヤの良好な接着は、洗浄に耐えることができつつも望ましい電気特性を与える丈夫な膜を与えるという顕著な利点を与える。以下にもっと詳細に記載されるように、本開示の方法によって製造される膜は、水または他の溶媒、例えば、イソプロピルアルコール(「IPA」)およびアセトン溶媒で洗浄した後、50%未満のシート抵抗の増加を示すことができ、シート抵抗は、4点プローブ方法によって測定される。ナノワイヤの耐溶媒性および接着性の向上は、上述のように、のりまたは接着剤として機能するポリマーラテックスの使用に起因すると考えられる。本開示の目的のために、シート抵抗の増加率は、以下のように定義される。
ΔSR%=[−(SR1−SR2)/SR1]×100
式中、
ΔSR%は、シート抵抗の増加率であり、
SR1は、洗浄前のシート抵抗であり、
SR2は、洗浄後のシート抵抗である。
【0027】
本開示の膜を透明導電性膜として種々のデバイスに使用することができる。このようなデバイスの例としては、タッチパネルディスプレイ、有機LED照明、有機光電池デバイスおよび色素増感太陽電池が挙げられる。デバイスは、基材16と、基材の上に配置された導電性膜10とを含む。基材は、膜を塗布することができる任意の基材であってもよい。基材は、透明または不透明であってもよく、種々の電気要素、光学要素または他の要素を含んでいてもよい(示さない)。適切な基材は、当該技術分野で周知である。
【0028】
導電性透明膜10は、本明細書に教示される銀ナノワイヤおよびラテックスを含む任意の水性組成物を用いて製造することができる。分散組成物を堆積するのに適した任意の公知のコーティング方法を用い、水性組成物を基材16に堆積させることができる。例としては、メイヤーロッドコーティング、スロットダイコーティングおよびドローダウンコーティングが挙げられる。堆積の後、水性担体を乾燥によって除去する。任意の適切な様式で、例えば、加熱、低圧の使用、または両者によって乾燥を行うことができる。堆積および/または乾燥プロセスの間にラテックス粒子の融合を行うことができる。ラテックスポリマーのガラス転移温度に依存して、比較的低い乾燥温度を使用してもよい。例えば、乾燥温度は、150℃以下、例えば、約80℃〜約140℃、または100℃〜約130℃の範囲であってもよい。本明細書に記載する任意のラテックスポリマー粒子を融合することによって、透明ポリマー12を製造することができる。融合すると、ラテックス粒子は、ナノワイヤ14が埋め込まれた連続したポリマー層を形成する。
【実施例】
【0029】
(実施例1−銀ナノワイヤ/ラテックス組成物)
以下の実施例において、Seashell TechnologyおよびSigma−Aldrichから市販されている銀ナノワイヤを使用した。Seashellの銀ナノワイヤは、平均厚みがほぼ25nmであり、長さが約数μm〜約60μmである。Sigma−Aldrichの銀ナノワイヤは、平均厚みがほぼ125nmである。アクリル酸エステルおよび酢酸ビニルコポリマーに基づく接着剤ラテックス(ACRONAL(商標)、BASF製)、アクリル酸ブチルおよびメタクリル酸ブチルに基づくコポリマーのアクリル分散物(PLEXTOL(商標)、BASF製)、結晶性ポリエステルラテックスおよびアモルファスポリエステルラテックスを含め、種々のポリマーラテックスを実施例の配合物に使用し、最終的な透明導電性膜の接着性を高めた。すべてのラテックスは、粒径が100〜200nmであった。基材温度70℃でメイヤーロッドを用いて透明導電性膜をコーティングし、次いで、120℃で乾燥させた。
【0030】
Seashellから得られる25nmの銀ナノワイヤ(時に、以下の実施例で「25nm銀ナノワイヤ」と呼ばれることがある)を用い、配合物の量を5mg/mL〜1.0mg/mLの間で変えることによって、実施例の配合物で使用される銀ナノワイヤの濃度を選択した。異なる量のナノワイヤを含む透明導電性膜を調製し、4点プローブ方法を用いてシート抵抗を特性決定し、UV−Vis分光法を用いて透明性を評価した。濃度2.5mg/mLの銀ナノワイヤが、好ましい透明性(>90%)および許容範囲のシート抵抗を与えることがわかった。
【0031】
この実施例について、40℃〜100℃の範囲の異なる基材温度で多くの膜を堆積させることによって、コーティング温度を選択した。これらの実施例の水性配合物について、良好なコーティング温度は約60℃〜約80℃の範囲であることがわかった(例えば、約70℃)。
【0032】
約6:1〜約1:1の25nm銀ナノワイヤとポリマーラテックスの重量比を調べた。約3.8:1の重量比は、基材へのナノワイヤの良好な接着性を与えつつも低い抵抗率を与えることがわかった。
【0033】
ACRONAL、PLEXTOL、結晶性ポリエステルおよびアモルファスポリエステルラテックスをそれぞれ用い、25nm銀ナノワイヤの実施例の混合物を製造した。すべての例について、銀ナノワイヤの濃度は2.5mg/mlに維持され、銀ナノワイヤとポリマーの比率は3.8:1に維持された。基材温度70℃で、PET基材にメイヤーロッドを用いて透明導電性膜をコーティングし、120℃で5〜10分間乾燥させた。実験結果を以下に記載する。
【0034】
表1は、実施例に使用されるポリマーラテックスと、膜の対応するシート抵抗および透明性をまとめている。すべての場合に、透明性は、90%より高く、シート抵抗は、コントロールサンプルのITOガラスより小さかった。同様に他のポリマーラテックスを添加剤(接着促進剤)として使用することができることを注記すべきである。
【0035】
【表1】
【0036】
(実施例2)
コントロール実験として、以下の比較例の配合物を製造した。(a)ポリマーラテックスを含まない25nm銀ナノワイヤ膜、(b)ラテックスの代わりに水溶性ポリ(ビニルアルコール)ポリマーを用いて製造された25nm銀ナノワイヤ組成物、および(c)非常に高い融点を有するフッ素化ポリマーラテックスを用いて製造された25nm銀ナノワイヤ組成物。25nm銀ナノワイヤと、ポリ(ビニルアルコール)またはフッ素化ポリマーラテックスのいずれかとを混合することによって比較例の組成物を製造した。
【0037】
以下の実施例2A、2Bおよび2Cのすべての組成物について、銀ナノワイヤ濃度2.5mg/ml、銀ナノワイヤとポリマーの比率3.8:1を含め、実施例1で使用されるのと同じ濃度およびコーテイングプロセスを使用した。基材温度70℃で、PET基材にメイヤーロッドを用いて実施例の組成物をコーティングし、120℃で5〜10分間乾燥させることによって透明導電性膜を製造した。
【0038】
(実施例2A−高Tgフッ素化ポリマーラテックス対低Tgラテックス)
第1のコントロール実験として、良好なワイヤとワイヤの接触を可能にしつつ、ポリマーラテックスが特定の位置でナノウィアヤと会合し得るという概念を証明するために、フッ素化ポリマーラテックスを銀ナノワイヤと一緒に使用した。図3は、この配合物のコーティングされた膜のSEMを示す。きれいなワイヤが、ワイヤに接続しているラテックス粒子と互いに接続することがわかるだろう。しかし、フッ素化ポリマーラテックスの高い融点に起因して、ラテックス粒子は、ポリエチレンテレフタレート(「PET」)基材の上で一緒に融合することができなかった。従って、銀ナノワイヤは、PETへの接着性が悪かった。蒸留水を用いて洗浄すると、シート抵抗が顕著に増加し、このことは、銀ナノワイヤの一部が洗い流されたことを示している。
【0039】
次いで、フッ素化ポリマーラテックスを、約−13℃の低いガラス転移温度(Tg)を有する接着剤ラテックス(ACRONAL)と比較した。第2の配合物において、フッ素化ポリマーラテックスを、約9℃の低いガラス転移温度(Tg)を有する接着剤ラテックス(PLEXTOL)と置き換えた。ACRONALおよびPLEXTOLのような低いTgを有するポリマーラテックスについて、コーティングし、120℃で乾燥させた後、ラテックスを融合することができる。図4Aおよび4Bは、ACRONAL添加剤を含む透明導電性膜のSEM画像を示す。図5は、PLEXTOL添加剤を含む透明導電性膜のSEM画像を示す。両方の種類のラテックスについて、個々のラテックス粒子は、粒子が一緒に融合していることがわからないだろう。ある種の銀ナノワイヤについて、ワイヤの一部が、融合したポリマーラテックス中に埋め込まれていた。しかし、良好なワイヤとワイヤの接触が維持された。融合したラテックスは、ワイヤを一緒に、基材の上で結合する「のり」として機能した。
【0040】
ACRONAL添加剤を含む膜について、シート抵抗は、4点プローブ方法を用い、154オーム/スクエアであると測定され、透明性は550nmで92%であった。この値は、ポリマーラテックスを含まない透明導電性膜と同様であり、このことは、ポリマーラテックスの添加が、導電性および透明性にほとんど影響を与えないか、まったく影響を与えないことを示している。2つの導電性銀片を用いる2プローブ方法を用いて測定する場合、シート抵抗は、32オーム/スクエアと低かった。
【0041】
表2には、5種類の異なる比率(表2にサンプル1〜5として示される)の銀ナノワイヤを含む、ACRONALを用いて製造された透明導電性膜のシート抵抗をまとめている。銀ナノワイヤとポリマーラテックスの重量比を、約5.82:1〜約0.4:1の範囲で変えた。約5.8:1〜約3.8:1の比率で、純粋な銀ナノワイヤに匹敵する低いシート抵抗を得ることができたことがわかるだろう。約5.8:1〜約1:1の比率で、ITOガラスに匹敵する良好なシート抵抗を得ることができた。すべての場合において、シート抵抗は、市販の銀ナノワイヤ導電性膜(Seashell Companyから得られる)より良好であり、この場合、4点プローブ方法を用いて導電性を検出することができなかった。
【0042】
【表2】
【0043】
(実施例2B−水溶性ポリビニルアルコール対低Tgラテックス)
別のコントロール実験として、水溶性ポリビニルアルコール(「PVA」)ポリマーを銀ナノワイヤと一緒に使用し、透明導電性膜を作成した。図6は、PVAを用いて製造される透明導電性膜、ACRONALを用いて製造される透明導電性膜、ポリマーを含まないナノワイヤ(「NW」)の膜、インジウムスズオキシド膜(ITO)の550nmでの透明性(UV−Vis分光計で測定されるような)対シート抵抗を示す。
【0044】
ポリマー添加剤が使用されなかった場合には、ナノワイヤ膜は、約150オーム/スクエアのシート抵抗と、約90%の透明性を示した。ACRONALラテックスの添加は、シート抵抗および透明性を実質的に変えなかった。しかし、PVAを使用した場合には、シート抵抗は、1630オーム/スクエアまで10倍増加した。このことは、可溶性ポリマーが銀ナノワイヤを包み込み、ワイヤとワイヤの接触が悪くなり、高いシート抵抗が得られるとの図1Aおよび1Bに示される設計原理の正しさの証拠を与えた。ラテックスを使用するとき、ラテックス粒子がワイヤを包み込まないため、良好なワイヤとワイヤの接触を維持し、従って、ポリマー添加剤を含まないナノワイヤ膜と同様のシート抵抗が得られる。
【0045】
(実施例2C−丈夫さの試験)
丈夫さ(接着性)を比較するために、ACRONALラテックスを含む透明導電性銀ナノワイヤ膜と、ラテックスを含まないものを一般的な洗浄溶媒(例えば、蒸留水、イソプロピルアルコール(IPA)およびアセトン)で洗浄した。図7は、異なる溶媒を用いて洗浄する前後のシート抵抗を示す。この結果は、配合物にポリマーラテックスを使用しなかった場合、銀ナノワイヤが基材への接着性が悪いことを明らかに示した。ポリマーラテックスを使用しない場合には、シート抵抗が何桁か上昇するためである。一方、ポリマーラテックスを使用した場合、銀ナノワイヤは、顕著に向上した接着性を示し、シート抵抗はわずかに増加しただけだった。
【0046】
(実施例3−透明性)
本開示の方法を用いて透明導電性膜を製造し、基材に印刷されたXeroxロゴの上部に置いた。このロゴは、導電性膜を介して明らかに見ることができた。実験室条件でメイヤーロッド方法を用い、B5サイズからA4サイズまでの均一の膜を得ることができる。コーティング条件および方法を大面積のコーティングのためにさらに最適化することができることが予想される。
【0047】
(実施例4−ワイヤの厚み)
別のコントロール実験として、Sigma Aldrichから得られた厚みが125nmの銀ナノワイヤの使用を観察した。上の実施例と同様に、銀ナノワイヤ濃度は、2.5mg/mlであり、銀ナノワイヤとラテックスポリマーの重量比3.8:1を使用した。図8は、この膜のSEM画像を示す。融合したポリマーラテックス中に埋め込まれた同じ形態のナノワイヤが観察されたが、この膜は、600オーム/スクエアを超える高いシート抵抗を示した。この結果は、透明導電性膜には、薄いワイヤが好ましいことを示した。
図1A
図1B
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8