【実施例】
【0030】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら制限されるものではない。
【0031】
〈タンニン量の測定方法〉
インスタント粉末紅茶飲料中のタンニン量の乳成分を配合する前の抽出液、または乳を配合しない紅茶飲料を通常飲用濃度に溶解したもののタンニン量は、酒石酸鉄試薬を利用した公定法(日本食品分析センター編、「五訂 日本食品標準成分表 分析マニュアルの解説」、中央法規、2001年7月、p.252−254)に準じ、具体的には以下の方法で測定した。
〈試薬の調製〉
酒石酸鉄標準液:硫酸第一鉄・7水和物1g、酒石酸ナトリウム・カリウム(ロッシェル塩)5gをイオン交換水で1Lとした。
リン酸緩衝液:1/15Mリン酸水素二カリウム溶液と、1/15Mリン酸二水素ナトリウム溶液を84:16の割合で混合しpH7.5に調整した。
没食子酸標準液105℃で1時間乾燥させた没食子酸エチル(東京化成工業製)を5,10,15,20,25mg/100mLの水溶液となるように調製した。
〈操作〉
分析:検量線:25ml容量のメスフラスコに没食子酸エチル標準溶液または試料溶液5mLと酒石酸鉄試薬5mLを入れ、リン酸緩衝液で25mlに定容してよく撹拌し、分光光度計にて540nmの吸光度を測定した。標準溶液の吸光度をプロットして検量線を作成し、試料溶液の吸光度から没食子酸エチル相当濃度を求めた。得られた没食子酸エチル等量から、下記の式1を用いてタンニン量を算出し、必要に応じて試料の希釈倍率を参酌して原液中のタンニン濃度を求めた。
式1:タンニン量(mg%)=没食子酸エチル相当(mg%)×1.5
乳を含むインスタント粉末紅茶飲料又は乳を含むインスタント粉末紅茶飲料を飲用濃度に溶解した紅茶飲料中のタンニン量は、特開2008−054627に記載されている方法を用いて測定することができる。
【0032】
〈吸湿試験方法〉
まず、直径90mm×高さ15mmのプラスチック製シャーレにそれぞれ20gの対象粉末を入れ、シャーレも含めた全体重量を記録する。重量を記録したのち、それぞれのシャーレを気温35℃、湿度65%に設定したアメフレック社製恒温恒湿試験装置「ノードアα」に設置する。それらを一定時間毎に取り出し、重量測定と固結確認を実施する。固結状態の確認方法は、スパーテルをシャーレ内の対象粉末に突き刺し(中心と端で十字状に5箇所程度)、下記基準に従って評価した。
〈固結評価基準〉
◎:固結なし(ほぼ微粉状を保っている、シャーレ内の塊部分が全体の0〜10%)
○:ごく脆い固結(スパーテルで突くと簡単に崩れる、同上11〜20%)
△:崩れにくい固結(スパーテルで突くと割れるが崩れない、同上21〜40%)
×:崩れない固結(スパーテルで突いても割れない、崩れない、刺さらない、同上41%〜)
【0033】
〈官能評価方法〉
調製した粉末12gを80℃から90℃の熱水100mLで溶解し、5名の専門パネルにより官能評価を行った。評価基準は表1に従い実施し、5名の平均を採点結果とした。
【0034】
【表1】
【0035】
〈溶解性の評価〉
調製した粉末12gに、80℃から90℃の熱水100mLを加え、スパチュラを1秒間に1回転の速度で20回転した後に、ダマができず全く残っていない◎、ダマはできるが回転後にはダマが残っていない場合を○、ダマがわずかに残っている場合を△、ダマがかなり残っている場合を×と目視で評価した。
【0036】
さらに総合評価として、下記を基準にして評価した。
〈総合評価〉
各サンプルの総合評価は、下記の基準に従って実施した。
◎:全項目の評価が◎、かつ3.0以上
○:全項目の評価が○かつ2.5以上3.0未満
△:いずれかの項目に△もしくは1.5以上2.5未満を含む
×:いずれかの項目の評点に×もしくは1.5未満を含む
【0037】
〈微粉砕紅茶葉の調製〉
紅茶葉(アッサム)をジェットミル((株)セイシン企業製)で粉砕した後、100メッシュの篩で未粉砕物や異物を除去し、平均粒子径4.5μmの微粉砕紅茶葉を得た。粒子径の測定は、水を分散媒として、レーザー回折散乱式の粒度分布計(LMS−300((株)セイシン企業製)を用いて行い、体積基準での累積50%径を平均粒子径として示した。
【0038】
[試験例1]
乳成分(脱脂粉乳、全粉乳)、糖類(砂糖)、紅茶エキス粉末、単独、又は混合物を表2の配合で作製した。またそれぞれ、前記の微粉砕紅茶葉(平均粒子径4.5μm)を添加と無添加に分け、固結抑制効果を比較した(表2)。紅茶エキス粉末はインスタントティーRX−100(三井農林(株))、乳成分は、全粉乳及び脱脂粉乳(よつ葉乳業(株))を等量、砂糖はグラニュー糖(GHC−1三井製糖(株))、微粉砕紅茶葉はアッサム種、平均粒子径4.5μmのものを使用した。混合方法は、上記成分をミキサーに投入し、機械的に撹拌して混合した。評価方法は前記吸湿試験方法および固結確認方法に従って実施した。
【0039】
【表2】
【0040】
表2より、固結の主な原因として乳成分であることが確認できた。乳を含む場合は、紅茶エキス、砂糖を配合したものでも乳のみと同様固結の程度が重度であった。紅茶エキスを配合した場合は比較的固結が緩やかであったが、いずれも微粉砕紅茶葉を添加した場合の方がより固結を抑制できることを確認した。
以上より、微粉砕紅茶葉は、固結抑制剤として有効であることが確認できた。また、粉末飲料の固結抑制方法として有効であることを確認した。
【0041】
[試験例2]
表3に示す紅茶エキス、乳成分、砂糖を含むオーソドックスなインスタントミルクティー(ミルク入りインスタント粉末紅茶)を作製し、微粉砕紅茶葉を振り分け、固結状態と、それぞれの飲料としての品質評価(香味、ざらつき、溶解性)を実施した。なお、上記粉末紅茶の混合方法は、表3の成分をミキサーに投入し、機械的に撹拌して混合した。また、もっとも効果的な固結抑制効果が得られる濃度で従来の添加剤であるリン酸三カルシウム(米山化学工業(株)社製)、二酸化ケイ素(富士シリシア化学(株)社製)を添加し、同様に固結状態等の効果を比較した(表4)。また、紅茶エキス、乳成分の濃度を変更し、同様に評価した(表4)。
紅茶エキスはインスタントティーRX−100(三井農林(株))、乳成分は全粉乳、脱脂粉乳(よつ葉乳業)、グラニュー糖(三井製糖(株))、微粉砕紅茶葉はアッサム(平均粒子径4.5μm)を使用した。評価方法は前記吸湿試験方法および固結確認方法、官能評価方法に従って実施した。表3においてはNo.8、表4においてはNo.18をコントロールとして評価した。茶葉使用量中の微粉砕茶葉の割合は、以下のように算出した。
紅茶エキス1gは茶葉換算4gに相当するとし、紅茶エキスの含有量から、紅茶エキスのみの茶葉使用量を算出し、更に微粉砕紅茶葉の含有量をくわえ、全茶葉使用量を算出する。全茶葉使用量から、微粉砕紅茶葉の割合を算出した。
乳成分に対する微粉砕紅茶葉の割合は、脱脂粉乳と全粉乳の合計値から算出した。
【0042】
表3に示した結果より粉末紅茶に対して微粉砕紅茶葉を0.1〜1.5重量%未満配合することで固結が抑制され、香味に優れたミルク入りインスタント粉末紅茶が得られることを確認した。また、微粉砕紅茶葉の添加量は全茶葉使用量中の1.0から10.0重量%とすることで、固結が抑制され、香味に優れた、微粉砕紅茶葉がダマにならず、液体中に分散された均一な飲料が得られた。
表4に示した結果より、No.20のリン酸三カルシウム、No.21の二酸化ケイ素をそれぞれ添加したものは、固結は抑制されているものの、香味の点でよい評価が得られなかった。これらの添加によって、飲料本来の香りがマスキングされ、紅茶の香味の点で十分な効果が得られたなったと考えられる。更に、紅茶エキス、乳成分の多いものでも、十分固結抑制効果が得られたことが確認できた(No.22,23)。
本発明の方法により、インスタント粉末紅茶の固結が抑制され、更に香味、溶解性に優れたインスタント粉末紅茶が得られた。
【0043】
【表3】
【0044】
【表4】
【0045】
[試験例3]
平均粒子径4.5μm、11.8μm、13.7μm、1.91μmの微粉砕紅茶葉4品を使用し、吸湿試験および官能評価を実施した。微粉砕紅茶葉はアッサムを用い、4.5μmはジェットミル((株)セイシン企業製)、11.8μm及び1.91μmはエアータグミル(ミクロパウテック(株))、13.7μmはACMパルぺライザ(ホソカワミクロン(株)製)を用いて製造した。インスタント粉末紅茶は表3のNo.12微粉砕紅茶葉添加量0.5重量%)と同等の組成で作製した。評価方法は前記吸湿試験方法および固結確認方法、官能評価方法に従って実施した。
表5に示した結果より平均粒子径がより細かいほうが固結が抑制されることがわかった。さらに香味・ざらつき等の飲感についての評価結果を考慮すると、平均粒子径が5μm以下がより効果的であることが確認できた。
【0046】
【表5】
【0047】
[試験例4]
各例の調製は、乳成分を酸味料(クエン酸、粉末レモン果汁)に代える以外は、試験例2と同様にして行った。配合については表6に示した。評価方法は前記吸湿試験方法および固結確認方法、官能評価方法に従って実施した。微粉砕紅茶葉はアッサム(平均粒子径4.5μm)を使用した。グラニュー糖は三井製糖(株)、デキストリンはサンエイ糖化(株)、レモン果汁(粉末)は佐藤食品工業(株)、クエン酸は磐田化学工業(株)、紅茶エキスはインスタントティーRX‐100(三井農林(株)を使用した。表6に示す酸味料に対する微粉砕紅茶葉の割合は、粉末果汁とクエン酸の合計値から算出し、糖に対する微粉砕紅茶葉の割合は、グラニュー糖から算出した。評価結果を表6に示す。
表6に示した結果より、本発明の微粉砕紅茶葉を添加することにより、粉末果汁およびクエン酸等の酸味料を含有するインスタント粉末紅茶に対しても、固結抑制および優れた香味特性をもつインスタント粉末紅茶が得られることが確認できた。また、リン酸三カルシウム、二酸化ケイ素を配合したNo.31、No.32は溶解後の水色が白い濁りが生じた。リン酸三カルシウム、二酸化ケイ素を配合した場合、固結は抑制されたものの、微粉砕紅茶葉を添加したNo.30と比較して十分な香味が得られなかった。
【0048】
【表6】
【0049】
[試験例5]
表7に示すインスタント粉末スポーツドリンクに、微粉砕紅茶葉(アッサム、平均粒子径4.5μm)を配合し、固結状態を実施した。調製方法は、表7に示す成分をミキサーに投入し、機械的に撹拌して混合した。固結抑制効果の確認は前記吸湿試験方法および固結状態の確認方法に従って実施した。
グラニュー糖は三井製糖(株)、リンゴ酸、クエン酸、クエン酸三ナトリウムは磐田化学工業(株)、塩は赤穂化成(株)、グルタミン酸ナトリウムは協和発酵キリン(株)、グレープフルーツ果汁は佐藤食品工業(株)、スクラロースは三栄源エフエフアイ(株)のものを使用した。表7に示した結果より、本発明の微粉砕紅茶葉を添加することにより、塩やアミノ酸、クエン酸等の酸味料を含有するインスタント粉末スポーツドリンクに対しても、固結抑制効果が確認できた。
【0050】
【表7】
【0051】
[試験例6]
微粉砕紅茶葉にやぶきたを原料とした日本産紅茶葉を用いた以外は、試験例2、No.12と同様にして試験した。評価方法は前述の吸湿試験方法および固結状態の確認方法、官能評価方法に従って実施した。
日本産微粉砕紅茶葉を使用した場合でも、固結が抑制された、香味の優れたインスタント粉末紅茶が得られた。