特許第6598708号(P6598708)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6598708
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】粉末飲料の固結抑制方法
(51)【国際特許分類】
   A23F 3/30 20060101AFI20191021BHJP
【FI】
   A23F3/30
【請求項の数】9
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-36961(P2016-36961)
(22)【出願日】2016年2月29日
(65)【公開番号】特開2017-153375(P2017-153375A)
(43)【公開日】2017年9月7日
【審査請求日】2018年4月27日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成27年8月31日に三井農林株式会社がインスタント粉末紅茶を全国販売
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成27年8月31日に三井農林株式会社のウエブサイトにて公開
(73)【特許権者】
【識別番号】303044712
【氏名又は名称】三井農林株式会社
(72)【発明者】
【氏名】米澤 洋朗
【審査官】 松原 寛子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−181781(JP,A)
【文献】 特開2012−010700(JP,A)
【文献】 特開2012−179042(JP,A)
【文献】 特開2015−181411(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0062886(US,A1)
【文献】 特開2001−000108(JP,A)
【文献】 特開2011−030495(JP,A)
【文献】 特開2008−104428(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23F 3/30
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/AGRICOLA/FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粉砕紅茶葉を粉末飲料に添加することを特徴とするインスタント粉末飲料の固結抑制方法であって、
微粉砕紅茶葉を粉末飲料に対して0.05重量%以上1.5重量%未満の割合で添加すること、および平均粒子径1.0μm以上20.0μm未満の微粉砕紅茶葉であることを特徴とするインスタント粉末飲料の固結抑制方法
【請求項2】
インスタント粉末飲料がインスタント粉末紅茶である請求項1に記載の固結抑制方法。
【請求項3】
請求項記載のインスタント粉末紅茶が成分(A)紅茶エキス1.0重量%以上33.0重量%以下、(B)糖類、及び(C)乳成分10重量%以上40重量%以下を含むミルク入りインスタント粉末紅茶であって、ミルク入りインスタント粉末紅茶に対して、0.1重量%以上1.5重量%未満となるように微粉砕紅茶葉を添加することを特徴とする請求項1〜2のいずれか一項に記載のインスタント粉末紅茶の固結抑制方法。
【請求項4】
次の成分を含むミルク入りインスタント粉末紅茶において、粉末紅茶全体に対する平均粒子径1.0μm以上20.0μm未満の微粉砕紅茶葉が0.1重量%以上1.5重量%未満を添加することを特徴とする固結が抑制されたミルク入りインスタント粉末紅茶の製造方法。
(A)紅茶エキス 1.0重量%以上33.0重量%以下
(B)糖
(C)乳成分 10重量%以上40重量%以下
【請求項5】
次の成分を含むミルク入りインスタント粉末紅茶に、粉末紅茶全体に対する平均粒子径1.0μm以上20.0μm未満の微粉砕紅茶葉が0.1重量%以上1.5重量%未満を含有することを特徴とする固結が抑制されたミルク入りインスタント粉末紅茶。
(A)紅茶エキス 1.0重量%以上33.0重量%以下
(B)糖
(C)乳成分 10重量%以上40重量%以下
【請求項6】
請求項に記載の粉末紅茶が成分(A)紅茶エキス1.0重量%以上33.0重量%以下、(B)糖類、及び(D)酸味料0.1重量%以上5.0重量%以下を含む酸味料入りインスタント粉末紅茶であって、酸味料入りインスタント粉末紅茶に対して、0.05重量%以上1.5重量%未満となるように微粉砕紅茶葉を添加することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のインスタント粉末紅茶の固結抑制方法。
【請求項7】
次の成分を含む酸味料入りインスタント粉末紅茶に、粉末紅茶全体に対する平均粒子径1.0μm以上20.0μm未満の微粉砕紅茶葉が0.05重量%以上1.5重量%未満を添加することを特徴とする固結が抑制された酸味料入りインスタント粉末紅茶の製造方法。
(A)紅茶エキス 1.0重量%以上33.0重量%以下
(B)糖
(D)酸味料 0.1重量%以上5.0重量%以下
【請求項8】
次の成分を含む酸味料入りインスタント粉末紅茶に、粉末紅茶全体に対する平均粒子径1.0μm以上20.0μm未満の微粉砕紅茶葉が0.05重量%以上1.5重量%未満を含有することを特徴とする固結が抑制された酸味料入りインスタント粉末紅茶。
(A)紅茶エキス 1.0重量%以上33.0重量%以下
(B)糖
(D)酸味料 0.1重量%以上5.0重量%以下
【請求項9】
微粉砕紅茶葉であることを特徴とする粉末飲料固結抑制剤であって、粉末飲料に対して0.05重量%以上1.5重量%未満の割合で用いること、および平均粒子径が1.0μm以上20.0μm未満であることを特徴とする粉末飲料の固結抑制剤
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インスタント粉末飲料において生じる、吸湿による固結を抑制する方法、該方法により粉末飲料を製造する方法、並びに該方法を用いて得られたインスタント粉末紅茶に関する。
【背景技術】
【0002】
インスタント粉末飲料は粉末を熱水等に溶解させるだけで手軽に複雑な味の飲食品を摂取することができる優れた商品である一方で、均一な分散性や、溶解性のほか、保存性が求められる。特に、チャック付アルミ袋等のように開閉を繰り返す粉末飲食品の場合は吸湿による固結を起こしやすく、吸湿による粉末の固結の改善が求められている。また、カップ式自動販売機での使用でも、粉末原料キャニスタは密閉度が低いため、吸湿による固結が生じやすく、カップに吐出されなくなる等の問題点を有し、同様の改善が求められている。
【0003】
上述した粉末飲料の固結の改善については、いくつかの方法が提案されているが、一般的にはリン酸三カルシウム、二酸化ケイ素等を添加する方法が広く用いられる。例えば、特許文献1には、酸化カルシウム及び微粒二酸化ケイ素を添加配合する粉末清涼飲料製剤が開示されている。
そのほか、粉末食品または飲料の固結抑制方法として、特許文献2には、澱粉分解物を粉末化基剤として使用する方法、特許文献3には油脂を原料粉末混合物に添加する方法、特許文献4にはDE値10以下のデキストリン水溶液をスプレーしながら造粒する方法、特許文献5には茶エキスに単糖類又は二糖類を混合する方法、特許文献6には植物パウダーに無機塩類及び有機酸及び/または有機酸塩を結晶の状態で添加する方法が開示されている。
インスタント粉末飲料の製造には、吸湿固結や分級を防止するために、粉末原料を混合した後、顆粒状に造粒する方法が用いられる。しかし、造粒工程では加湿、加熱、乾燥等の工程を経るため、粉末飲料の香味劣化等の品質の劣化が問題となっている。そこで、造粒の製造工程により失われる香気成分や風味を補うために、茶葉の粉砕品を添加する方法(特許文献7)、その他、粉末素材のひとつとして粉末飲料に微粉砕茶葉又は抹茶を添加する方法(特許文献8、特許文献9)が開示されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1から6の方法では添加する成分に由来する、異味が生じる等、原料本来の味を損なう可能性がある。例えば、固結防止剤として二酸化ケイ素、リン酸カルシウム等を添加する方法では、飲食品本来の味や香りが十分に味わえず、粉っぽさや薬品臭といった雑味が生じてしまうという問題がある。特に、粉末茶飲料においては、繊細な香味を特徴とするため、添加物の使用は香味への影響が避け難い。とりわけ紅茶飲料は香りが重視されるため、従来技術では決して満足できるものではなかった。また、近年の消費者は安心、安全の意識が高まっており、添加剤の使用は敬遠される一因にもなりうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8-196247
【特許文献2】特開2003-038119
【特許文献3】特開2006-158333
【特許文献4】特開平01-181781
【特許文献5】特開2013-153739
【特許文献6】特開2013-118865
【特許文献7】特開2012-080841
【特許文献8】特開2012-217361
【特許文献9】特開2008-306980
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
粉末飲料の固結抑制に関しては上記のようにいくつかの方法が開示されているものの、これらの方法を利用しても依然として、吸湿による固結を抑制し、更に飲食品素材本来の味を保持するまでには至っていない。
そこで本発明は、飲料素材の本来の味を保持しながらも、吸湿による固結を抑制する手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、微粉砕茶葉を粉末飲食品に添加することで、吸湿による固結が抑制された粉末飲食品が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、以下のとおりである。
(1) 微粉砕紅茶葉を粉末飲料に添加することを特徴とするインスタント粉末飲料の固結抑制方法であって、
微粉砕紅茶葉を粉末飲料に対して0.05重量%以上1.5重量%未満の割合で添加すること、および
平均粒子径1.0μm以上20.0μm未満の微粉砕紅茶葉であることを特徴とするインスタント粉末飲料の固結抑制方法
(2)ミルク入りインスタント粉末紅茶において、粉末紅茶全体に対する平均粒子径1.0μm以上20.0μm未満の微粉砕紅茶葉が0.1重量%以上1.5重量%未満を添加することを特徴とする固結が抑制されたミルク入りインスタント紅茶の製造方法。
(3)ミルク入りインスタント粉末紅茶に、粉末紅茶全体に対する平均粒子径1.0μm以上20.0μm未満の微粉砕紅茶葉が0.1重量%以上1.5重量%未満を含有することを特徴とする固結が抑制されたミルク入りインスタント粉末紅茶。
(4)酸味料入りインスタント粉末紅茶に、粉末紅茶全体に対する平均粒子径1.0μm以上20.0μm未満の微粉砕紅茶葉が0.05重量%以上1.5重量%未満を添加することを特徴とする固結が抑制された酸味料入りインスタント粉末紅茶の製造方法。
(5)酸味料入りインスタント粉末紅茶に、粉末紅茶全体に対する平均粒子径1.0μm以上20.0μm未満の微粉砕紅茶葉が0.05重量%以上1.5重量%未満を含有することを特徴とする固結が抑制された酸味料入りインスタント粉末紅茶。
(6)微粉砕紅茶葉であることを特徴とする粉末飲料の固結抑制剤であって、粉末飲料に対して0.05重量%以上1.5重量%未満の割合で用いること、および平均粒子径が1.0μm以上20.0μm未満であることを特徴とする粉末飲料の固結抑制剤
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、インスタント粉末飲料等の粉末飲食品に異味を生じることなく、吸湿による固結が抑制され、流動性に優れたインスタント粉末飲料を提供することが可能である。
また、インスタント粉末紅茶においては、リン酸三カルシウム等の添加では溶解時に白濁してしまうことから、その使用がミルクを含む飲食品に限定されてしまうが、本発明の微粉砕紅茶葉では、お茶本来の自然な色調が得られることから、レモンティー、ストレートティー、またはフルーツティー、ミルクティーなど種類を選ばすに幅広く使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の微粉砕茶葉としては、ツバキ目ツバキ科ツバキ属の常緑樹であるチャノキ(Camellia sinensis)を原料としたものであれば良く、緑茶、白茶、烏龍茶、紅茶、ジャスミン茶として加工された茶葉をそのまま利用できる。本発明では発酵茶である紅茶葉が好ましく、ダージリン、アッサム、ニルギリ、ディンブラ、ウバ、ヌアラエリア、ケニア、キーモン等の海外産紅茶の他、やぶきた、べにほまれ、べにひかり、べにふじ、べにふうきなどの品種から加工された日本産紅茶葉の、1種あるいは2種以上の茶葉をブレンドして原料として使用できる。
本発明に用いる微粉砕紅茶葉は製茶された紅茶葉を微細に粉砕したものである。粉砕方法については、所望の粒子径に加工できれば特に限定されるものではなく、一般的に知られる粉砕機、例えば気流式粉砕機、機械式粉砕機、ボールミル、石臼等を用いて微粉末化すればよい。粉砕方式は、乾式粉砕、湿式粉砕、凍結粉砕があり特には限定されない。
微粉砕紅茶葉の粒子径は平均粒子径が1.0μm以上、20μm未満であることが好ましく、3.0μm以上15μm以下であることがより好ましく、4.0μm以上10μm以下であることが更に好ましい。平均粒子径が1.0μm未満の場合は、固結は抑制されるが、製造時に茶葉が舞いやすく、製造装置への付着が多くなるなど作業性が悪くなる。平均粒子径が30μm以上の場合は、ざらつき感や渋みが残りやすく、飲用として不適である。なお、本発明において、平均粒子径とは、粒度分布測定装置、例えば、レーザー回折式粒度分布測定装置(LMS−350(株)セイシン企業)を用いて測定した値をいう。
また、上記以外に茶葉の抽出残渣を乾燥後、同様に粉砕したものも微粉砕茶葉として利用できる。
【0011】
本発明が対象とする粉末飲料とは、水や牛乳などの水性溶媒に分散して溶解できる飲料を調製し得る粉末状の飲料であり、例えば茶、コーヒー、乳飲料、果汁飲料、野菜飲料などの一般的な粉末状の清涼飲料が挙げられる。その他、粉末スープ、粉末味噌汁、粉末だし、粉末中華スープ、粉末醤油等も挙げることができる。また、本発明における粉末飲料は造粒等により顆粒状にすることもできる。
【0012】
粉末飲料の固結とは、湿気や圧力等の要因により粉末が塊となり、全体としてさらさら感がなくなった状態を言う。固結した状態は外観上好ましくなく、固結状態がすすむと流動性が悪化し容器から取り出しにくくなる。さらに水等に対する溶解性が悪くなり、溶け残りが生じる可能性がある。
【0013】
本発明の微粉砕茶葉の粉末飲料への混合方法は他の粉末と均等に混ざりうる方法であれば、いかなる方法を用いても良い。例えば、リボンミキサーによる撹拌混合や、ターンブレンダーによる転動式混合、流動層造粒などが挙げられるが、本発明のインスタント粉末飲料を製造するのに適した公知手法を適宜選択することが可能であり、これらに限定はされない。
【0014】
本発明のインスタント粉末紅茶とは、水、湯、牛乳、茶類、果汁入りエキスおよび水溶性エキスなど水性媒体を用いて液体状に溶解して飲用する飲料において、溶解前の粉末状態を意味する。また、インスタント紅茶飲料とは、上記インスタント粉末紅茶を水性媒体に溶解した液体状飲料を意味する。
【0015】
〈紅茶エキス〉
本発明のインスタント粉末紅茶は、紅茶葉の抽出物(いわゆる紅茶エキス)を主たる原料として、その他に糖類、酸味料、粉末果汁及び/又は乳成分を混合して得られる粉末状の紅茶のことである。本発明のインスタント粉末紅茶に使用する紅茶エキスは、微粉砕紅茶葉と同様の茶葉を使用して製造することができ、1種または2種以上の紅茶葉を温水又は熱水で抽出して得られた抽出液を粉末状に乾燥したものである。
紅茶エキスの調製方法は、従来から知られている一般的な方法で調製することができる。例えば、原料とする紅茶葉を10〜100倍重量の温水又は熱水にて抽出する。抽出時間、温度は使用する紅茶の種類や目的により適宜調整するが、通常は60℃以上100℃以下で3〜60分の抽出を行い、必要に応じて抽出中に撹拌を行う。次いで茶殻等の固形成分を濾過や遠心分離機により固液分離することにより紅茶抽出液を得ることができる。ここで、抽出時の温度や時間などは、特に限定されず、茶葉の種類や目的とする香味等に応じて任意に設定することができる。また、抽出に使用する水に予めアスコルビン酸やアスコルビン酸ナトリウムなどの有機酸又は有機酸塩類、食品加工に使用可能な重曹や炭酸カリウムを添加してもよい。また煮沸脱気や窒素ガスなどの不活性ガスを通気して溶存酸素を除去しつついわゆる非酸化的雰囲気下で抽出する方法を併用してもよい。得られた紅茶抽出液の乾燥方法は、加熱法、減圧法、凍結乾燥法等の公知手法を適宜選択することが可能であり、これらに限定はされない。
本発明のインスタント粉末紅茶に使用する紅茶エキスは、市販の紅茶抽出物を用いてもよい。例えば、三井農林(株)製「インスタントティーRX−100」、佐藤食品工業(株)製「紅茶エキスパウダー」等が挙げられる。
紅茶エキス中のタンニン濃度は10.0重量%以上40.0重量%以下が好ましい。ここでタンニンとは、茶の生葉などに存在するカテキン類((±)−カテキン、(−)−エピカテキン、(−)−エピガロカテキン、(±)−ガロカテキン、(−)−エピカテキンガレート、(−)−カテキンガレート、(−)−エピガロカテキンガレート、(−)−ガロカテキンガレート)、これらが酸化酵素であるポリフェノールオキシダーゼの発酵作用によって酸化重合することで形成されたオリゴマー(テアシネンシン類、テアフラビン類、テアルビジン類等)、さらに発酵が進むにつれこれら成分が複雑に重合した構造の定かではない化合物も含まれる。
【0016】
本発明のインスタント粉末紅茶における微粉砕紅茶葉の添加量は、全紅茶葉使用量のうち、微粉砕紅茶葉の割合が0.5重量%から10.0重量%となるよう、微粉砕紅茶葉を添加すればよく、1.5重量%から9.0重量%が好ましくは、2.0重量%から8.0重量%がより好ましく、4.0重量%から7.0重量%がさらに好ましい。0.5重量%未満では、固結抑制効果が得られず、また、10.0重量%を超える場合はざらつき・渋みが口に残りため、飲用として好ましくない。
【0017】
本発明のインスタント粉末紅茶は前記紅茶エキス、微粉砕茶葉の他、後述する他の成分、例えば糖類、乳成分、酸味料、粉末果汁等と混合して均一化して得られるが、本発明のインスタント粉末を製造するのに適した公知手法を適宜選択することが可能であり、これらに限定はされない。本発明のインスタント粉末は造粒することも可能であるが、造粒しなくても固結が抑制された粉末飲料が得られる。
【0018】
本発明のインスタント粉末紅茶において、微粉砕紅茶葉の含有量は、終濃度、即ちインスタント粉末紅茶全体に対して0.05重量%以上1.5重量%未満となるように添加することが好ましく、より好ましくは0.2重量%以上1.2重量%以下であり、更に好ましくは0.4重量%以上1.0重量%以下である。0.05重量%未満では本発明の十分な効果、即ち固結抑制効果が得られず、1.5重量%以上ではざらつき・渋みが口に残り、また微粉砕紅茶葉がダマになるため好ましくない。
【0019】
インスタント粉末紅茶の水性媒体に対する溶解量は、溶解の均一性および作業性の観点から1〜30g/100mLが好ましく、3〜20g/100mLがさらに好ましく、5〜15g/100mLが特に好ましく、7〜10g/100mLが最も好ましく、これらの範囲から選ばれてなる最適量を水性媒体50〜400mL、好ましくは80〜200mL、最も好ましくは100〜160mLに溶解させたものが通常飲用濃度として味の面で優れている。
上記通常飲用濃度に溶解したインスタント紅茶飲料中の紅茶由来タンニンの検出濃度は30〜500mg/100mLであるのが好ましく、35〜450mg/100mLであるのがより好ましく、40〜400mg/100mLであるのが更に好ましく、45〜350mg/100mLであるのが特に好ましく、50〜300mg/100mLであるのが最も好ましい。
【0020】
本発明のインスタント粉末紅茶は、ストレートティー、ミルクティー、酸味料を添加したレモンティー等のフルーツティー、香料を添加したフレーバードティーなどが挙げられる。
【0021】
本発明のインスタント粉末紅茶は、乳成分を配合してミルクティーとすることが好ましい。本発明で使用する乳成分とは、牛やヤギ等の乳から加工される粉乳などの粉体製品を利用するのが好ましく、例えば全粉乳、脱脂粉乳、加糖粉乳、クリームパウダー、チーズパウダー、バターパウダー、ホエーパウダー、バターミルクパウダー、ヨーグルトパウダー、カゼイン、乳糖などが好適である。また、生乳、練乳、クリーム、発酵乳などの液状乳製品を利用し乾燥させて使用することもできる。さらに、必要に応じて、これらの乳成分を2種類以上混合後調整した乳成分も使用することができる。これら乳成分は、本発明のインスタント粉末紅茶中に10.0重量%以上40.0重量%以下、特に15.0重量%以上〜30.0重量% 配合することが好ましい。
【0022】
本発明のミルク入りインスタント粉末紅茶中の紅茶エキスは、粉末飲料全体に対し、好ましくは1.0重量%以上33.0重量%以下、より好ましくは2.0重量%以上20重量%以下、更に好ましくは3.0重量%以上10.0重量%以下配合することができる。
本発明のミルク入りインスタント粉末紅茶中に配合する糖類は、風味の観点から粉末飲料全体に対し、50重量%以上、好ましくは60重量%以上の糖類を含有することが好ましい。上限は通常98重量%である。ここで、糖類とはブドウ糖・果糖などの単糖類、ショ糖・麦芽糖・乳糖などの二糖類、グラニュー糖、パラチノース、トレハロース、オリゴ糖類、糖アルコール類等の甘味を呈す水溶性成分が挙げられる。
【0023】
本発明のミルク入りインスタント粉末紅茶は、飲料全量に対し、0.1重量%以上1.5重量%未満の微粉砕紅茶葉を添加することができる。より好ましくは0.2重量%以上1.2重量%以下であり、更に好ましくは0.4重量%以上1.0重量%以下である。前述同様微粉砕紅茶葉の平均粒子径は平均粒子径が1.0μm以上、20μm以下であることが好ましい。
また、微粉砕紅茶葉は、乳成分に対して0.3重量%以上5.0重量%未満、糖類に対して、0.15重量%以上2.0重量%以下、紅茶エキスに対して、1.68重量%以上35.75重量%以下配合される場合に、固結抑制効果と、更に飲用した場合のざらつき、香味に優れた効果が得られる。
【0024】
本発明のインスタント粉末紅茶は、酸味料を添加して、酸味料入りインスタント紅茶であるレモンティー等のフルーツティーとしてもよい。本発明の酸味料入りインスタント紅茶に使用する酸味料は、クエン酸、アスコルビン酸、エリソルビン酸、グルコン酸、リンゴ酸、乳酸、酒石酸等のヒドロキシモノカルボン酸が挙げられ、上記したヒドロキシモノカルボン酸酸は、塩の形態であってもよく、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩が挙げられ、中でもアルカリ金属塩が好ましく、ナトリウム塩、カリウム塩が特に好ましい。また、天然成分から抽出した果汁類等を粉末状とした粉末果汁を酸味料として配合してもよい。上記粉末果汁は、レモン、ライム、アップル、ゆず、ライチ、ミカン、葡萄等のフルーツ類が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて配合することができる。
本発明のインスタント粉末紅茶は、果実粉砕物、果実ピール、スパイスを添加することができる。例えば、レモン、ライム、アップル、ゆず、ライチ、ミカン、葡萄等のフルーツ類、またショウガ、カルダモン、シナモン、黒胡椒などが挙げられる。
また、本発明のインスタント粉末紅茶は、香料を添加することができる。本発明に使用できる香料は液体でも、粉末状のものを用いてもよく、レモン、オレンジ、アップル、ピーチ等のフルーツ系フレーバー等の香料があげられるがこれらに限定されないが、粉末香料が好適である。これら酸味料は、本発明のインスタント粉末紅茶中に0.1重量%以上10.0重量%以下、特に1.0重量%以上〜3.0重量%配合することが好ましい。
【0025】
本発明の酸味料入りインスタント粉末紅茶は、飲料全量に対し、0.05重量%以上1.5重量%未満の微粉砕紅茶葉を添加することができる。より好ましくは0.1重量%以上1.2重量%以下であり、更に好ましくは0.2重量%以上1.0重量%以下である。微粉砕茶葉の粒子径は前述同様平均粒子径が1.0μm以上、20μm以下であることが好ましい。また、微粉砕紅茶葉は、酸味料に対して5重量%以上150重量%、糖類に対して、0.06重量%以上2.0重量%以下、紅茶エキスに対して、3.4重量%以上100重量%以下配合される場合に、固結抑制効果と、更に飲用した場合のざらつき、香味に優れた効果が得られる。本発明の酸味料入りインスタント粉末紅茶中の紅茶エキスは、粉末飲料全体に対し、好ましくは1.0重量%以上33.0重量%以下、より好ましくは2.0重量%以上20重量%以下、更に好ましくは3.0重量%以上10.0重量%以下配合することができる。本発明の酸味料入りインスタント粉末紅茶中に配合する糖類は、風味の観点から粉末飲料全体に対し、50重量%以上、好ましくは60重量%以上の糖類を含有することが好ましい。上限は通常98重量%である。ここで、糖類とはブドウ糖・果糖などの単糖類、ショ糖・麦芽糖・乳糖などの二糖類、グラニュー糖、パラチノース、トレハロース、オリゴ糖類、糖アルコール類等の甘味を示す水溶性成分が挙げられる。
【0026】
本発明のインスタント粉末飲料には、調合時に所望により、消泡剤、増粘多糖類、糖質(デキストリン等)、果汁、野菜汁、アルコール類、酸味料、炭酸ガス、香料、着色料、食物繊維、コラーゲン、ビタミン類、ミネラル類、アミノ酸、油脂、乳化剤、安定剤、高甘味度甘味料(人工甘味料)等の食品上許容される任意成分を含有してもよい。これら任意成分を適宜選択することで、嗜好性の幅を広げることができる。
【0027】
また、微粉砕紅茶葉を配合するインスタント粉末飲料のうち乳成分を主成分とする飲料として、紅茶以外では、インスタント粉末乳入りコーヒー、抹茶、ココア、いちご、バナナ、スープ等が挙げられる。上記の粉末飲料には、茶抽出残渣を乾燥して粉砕した紅茶葉が固結抑制及び味の点で好適として挙げられる。
【0028】
本発明のインスタント粉末飲料は、自動販売機等で利用する場合、流動性改良剤としての二酸化ケイ素、微粒二酸化ケイ素、又はリン酸三カルシウム等の添加剤を利用することができる。例えば、インスタント粉末飲食品中に0.2重量%以下、好ましくは0.1重量%以下添加することができる。
【0029】
本発明の粉末飲料の包装形態は、特に制限はなく、紙、プラスチック、アルミなどからなる袋、瓶、缶、プラスチックボトル等の容器に大容量が詰められ、スプーンで計量するタイプの形態を用いても良い。また、一杯分ずつ分包タイプのものでもよい。包装品の材質は酸素・湿度透過性の低いものの方がインスタント粉末茶の品質を維持する上で好ましく、窒素ガスを充填するとより好ましい。アルミ袋などの大容量に詰められた粉末飲食品をカップ式自動販売機やディスペンサー等で使用することも可能である。
【実施例】
【0030】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら制限されるものではない。
【0031】
〈タンニン量の測定方法〉
インスタント粉末紅茶飲料中のタンニン量の乳成分を配合する前の抽出液、または乳を配合しない紅茶飲料を通常飲用濃度に溶解したもののタンニン量は、酒石酸鉄試薬を利用した公定法(日本食品分析センター編、「五訂 日本食品標準成分表 分析マニュアルの解説」、中央法規、2001年7月、p.252−254)に準じ、具体的には以下の方法で測定した。
〈試薬の調製〉
酒石酸鉄標準液:硫酸第一鉄・7水和物1g、酒石酸ナトリウム・カリウム(ロッシェル塩)5gをイオン交換水で1Lとした。
リン酸緩衝液:1/15Mリン酸水素二カリウム溶液と、1/15Mリン酸二水素ナトリウム溶液を84:16の割合で混合しpH7.5に調整した。
没食子酸標準液105℃で1時間乾燥させた没食子酸エチル(東京化成工業製)を5,10,15,20,25mg/100mLの水溶液となるように調製した。
〈操作〉
分析:検量線:25ml容量のメスフラスコに没食子酸エチル標準溶液または試料溶液5mLと酒石酸鉄試薬5mLを入れ、リン酸緩衝液で25mlに定容してよく撹拌し、分光光度計にて540nmの吸光度を測定した。標準溶液の吸光度をプロットして検量線を作成し、試料溶液の吸光度から没食子酸エチル相当濃度を求めた。得られた没食子酸エチル等量から、下記の式1を用いてタンニン量を算出し、必要に応じて試料の希釈倍率を参酌して原液中のタンニン濃度を求めた。
式1:タンニン量(mg%)=没食子酸エチル相当(mg%)×1.5
乳を含むインスタント粉末紅茶飲料又は乳を含むインスタント粉末紅茶飲料を飲用濃度に溶解した紅茶飲料中のタンニン量は、特開2008−054627に記載されている方法を用いて測定することができる。
【0032】
〈吸湿試験方法〉
まず、直径90mm×高さ15mmのプラスチック製シャーレにそれぞれ20gの対象粉末を入れ、シャーレも含めた全体重量を記録する。重量を記録したのち、それぞれのシャーレを気温35℃、湿度65%に設定したアメフレック社製恒温恒湿試験装置「ノードアα」に設置する。それらを一定時間毎に取り出し、重量測定と固結確認を実施する。固結状態の確認方法は、スパーテルをシャーレ内の対象粉末に突き刺し(中心と端で十字状に5箇所程度)、下記基準に従って評価した。
〈固結評価基準〉
◎:固結なし(ほぼ微粉状を保っている、シャーレ内の塊部分が全体の0〜10%)
○:ごく脆い固結(スパーテルで突くと簡単に崩れる、同上11〜20%)
△:崩れにくい固結(スパーテルで突くと割れるが崩れない、同上21〜40%)
×:崩れない固結(スパーテルで突いても割れない、崩れない、刺さらない、同上41%〜)
【0033】
〈官能評価方法〉
調製した粉末12gを80℃から90℃の熱水100mLで溶解し、5名の専門パネルにより官能評価を行った。評価基準は表1に従い実施し、5名の平均を採点結果とした。
【0034】
【表1】
【0035】
〈溶解性の評価〉
調製した粉末12gに、80℃から90℃の熱水100mLを加え、スパチュラを1秒間に1回転の速度で20回転した後に、ダマができず全く残っていない◎、ダマはできるが回転後にはダマが残っていない場合を○、ダマがわずかに残っている場合を△、ダマがかなり残っている場合を×と目視で評価した。
【0036】
さらに総合評価として、下記を基準にして評価した。
〈総合評価〉
各サンプルの総合評価は、下記の基準に従って実施した。
◎:全項目の評価が◎、かつ3.0以上
○:全項目の評価が○かつ2.5以上3.0未満
△:いずれかの項目に△もしくは1.5以上2.5未満を含む
×:いずれかの項目の評点に×もしくは1.5未満を含む
【0037】
〈微粉砕紅茶葉の調製〉
紅茶葉(アッサム)をジェットミル((株)セイシン企業製)で粉砕した後、100メッシュの篩で未粉砕物や異物を除去し、平均粒子径4.5μmの微粉砕紅茶葉を得た。粒子径の測定は、水を分散媒として、レーザー回折散乱式の粒度分布計(LMS−300((株)セイシン企業製)を用いて行い、体積基準での累積50%径を平均粒子径として示した。
【0038】
[試験例1]
乳成分(脱脂粉乳、全粉乳)、糖類(砂糖)、紅茶エキス粉末、単独、又は混合物を表2の配合で作製した。またそれぞれ、前記の微粉砕紅茶葉(平均粒子径4.5μm)を添加と無添加に分け、固結抑制効果を比較した(表2)。紅茶エキス粉末はインスタントティーRX−100(三井農林(株))、乳成分は、全粉乳及び脱脂粉乳(よつ葉乳業(株))を等量、砂糖はグラニュー糖(GHC−1三井製糖(株))、微粉砕紅茶葉はアッサム種、平均粒子径4.5μmのものを使用した。混合方法は、上記成分をミキサーに投入し、機械的に撹拌して混合した。評価方法は前記吸湿試験方法および固結確認方法に従って実施した。
【0039】
【表2】
【0040】
表2より、固結の主な原因として乳成分であることが確認できた。乳を含む場合は、紅茶エキス、砂糖を配合したものでも乳のみと同様固結の程度が重度であった。紅茶エキスを配合した場合は比較的固結が緩やかであったが、いずれも微粉砕紅茶葉を添加した場合の方がより固結を抑制できることを確認した。
以上より、微粉砕紅茶葉は、固結抑制剤として有効であることが確認できた。また、粉末飲料の固結抑制方法として有効であることを確認した。
【0041】
[試験例2]
表3に示す紅茶エキス、乳成分、砂糖を含むオーソドックスなインスタントミルクティー(ミルク入りインスタント粉末紅茶)を作製し、微粉砕紅茶葉を振り分け、固結状態と、それぞれの飲料としての品質評価(香味、ざらつき、溶解性)を実施した。なお、上記粉末紅茶の混合方法は、表3の成分をミキサーに投入し、機械的に撹拌して混合した。また、もっとも効果的な固結抑制効果が得られる濃度で従来の添加剤であるリン酸三カルシウム(米山化学工業(株)社製)、二酸化ケイ素(富士シリシア化学(株)社製)を添加し、同様に固結状態等の効果を比較した(表4)。また、紅茶エキス、乳成分の濃度を変更し、同様に評価した(表4)。
紅茶エキスはインスタントティーRX−100(三井農林(株))、乳成分は全粉乳、脱脂粉乳(よつ葉乳業)、グラニュー糖(三井製糖(株))、微粉砕紅茶葉はアッサム(平均粒子径4.5μm)を使用した。評価方法は前記吸湿試験方法および固結確認方法、官能評価方法に従って実施した。表3においてはNo.8、表4においてはNo.18をコントロールとして評価した。茶葉使用量中の微粉砕茶葉の割合は、以下のように算出した。
紅茶エキス1gは茶葉換算4gに相当するとし、紅茶エキスの含有量から、紅茶エキスのみの茶葉使用量を算出し、更に微粉砕紅茶葉の含有量をくわえ、全茶葉使用量を算出する。全茶葉使用量から、微粉砕紅茶葉の割合を算出した。
乳成分に対する微粉砕紅茶葉の割合は、脱脂粉乳と全粉乳の合計値から算出した。
【0042】
表3に示した結果より粉末紅茶に対して微粉砕紅茶葉を0.1〜1.5重量%未満配合することで固結が抑制され、香味に優れたミルク入りインスタント粉末紅茶が得られることを確認した。また、微粉砕紅茶葉の添加量は全茶葉使用量中の1.0から10.0重量%とすることで、固結が抑制され、香味に優れた、微粉砕紅茶葉がダマにならず、液体中に分散された均一な飲料が得られた。
表4に示した結果より、No.20のリン酸三カルシウム、No.21の二酸化ケイ素をそれぞれ添加したものは、固結は抑制されているものの、香味の点でよい評価が得られなかった。これらの添加によって、飲料本来の香りがマスキングされ、紅茶の香味の点で十分な効果が得られたなったと考えられる。更に、紅茶エキス、乳成分の多いものでも、十分固結抑制効果が得られたことが確認できた(No.22,23)。
本発明の方法により、インスタント粉末紅茶の固結が抑制され、更に香味、溶解性に優れたインスタント粉末紅茶が得られた。
【0043】
【表3】
【0044】
【表4】
【0045】
[試験例3]
平均粒子径4.5μm、11.8μm、13.7μm、1.91μmの微粉砕紅茶葉4品を使用し、吸湿試験および官能評価を実施した。微粉砕紅茶葉はアッサムを用い、4.5μmはジェットミル((株)セイシン企業製)、11.8μm及び1.91μmはエアータグミル(ミクロパウテック(株))、13.7μmはACMパルぺライザ(ホソカワミクロン(株)製)を用いて製造した。インスタント粉末紅茶は表3のNo.12微粉砕紅茶葉添加量0.5重量%)と同等の組成で作製した。評価方法は前記吸湿試験方法および固結確認方法、官能評価方法に従って実施した。
表5に示した結果より平均粒子径がより細かいほうが固結が抑制されることがわかった。さらに香味・ざらつき等の飲感についての評価結果を考慮すると、平均粒子径が5μm以下がより効果的であることが確認できた。
【0046】
【表5】
【0047】
[試験例4]
各例の調製は、乳成分を酸味料(クエン酸、粉末レモン果汁)に代える以外は、試験例2と同様にして行った。配合については表6に示した。評価方法は前記吸湿試験方法および固結確認方法、官能評価方法に従って実施した。微粉砕紅茶葉はアッサム(平均粒子径4.5μm)を使用した。グラニュー糖は三井製糖(株)、デキストリンはサンエイ糖化(株)、レモン果汁(粉末)は佐藤食品工業(株)、クエン酸は磐田化学工業(株)、紅茶エキスはインスタントティーRX‐100(三井農林(株)を使用した。表6に示す酸味料に対する微粉砕紅茶葉の割合は、粉末果汁とクエン酸の合計値から算出し、糖に対する微粉砕紅茶葉の割合は、グラニュー糖から算出した。評価結果を表6に示す。
表6に示した結果より、本発明の微粉砕紅茶葉を添加することにより、粉末果汁およびクエン酸等の酸味料を含有するインスタント粉末紅茶に対しても、固結抑制および優れた香味特性をもつインスタント粉末紅茶が得られることが確認できた。また、リン酸三カルシウム、二酸化ケイ素を配合したNo.31、No.32は溶解後の水色が白い濁りが生じた。リン酸三カルシウム、二酸化ケイ素を配合した場合、固結は抑制されたものの、微粉砕紅茶葉を添加したNo.30と比較して十分な香味が得られなかった。
【0048】
【表6】
【0049】
[試験例5]
表7に示すインスタント粉末スポーツドリンクに、微粉砕紅茶葉(アッサム、平均粒子径4.5μm)を配合し、固結状態を実施した。調製方法は、表7に示す成分をミキサーに投入し、機械的に撹拌して混合した。固結抑制効果の確認は前記吸湿試験方法および固結状態の確認方法に従って実施した。
グラニュー糖は三井製糖(株)、リンゴ酸、クエン酸、クエン酸三ナトリウムは磐田化学工業(株)、塩は赤穂化成(株)、グルタミン酸ナトリウムは協和発酵キリン(株)、グレープフルーツ果汁は佐藤食品工業(株)、スクラロースは三栄源エフエフアイ(株)のものを使用した。表7に示した結果より、本発明の微粉砕紅茶葉を添加することにより、塩やアミノ酸、クエン酸等の酸味料を含有するインスタント粉末スポーツドリンクに対しても、固結抑制効果が確認できた。
【0050】
【表7】
【0051】
[試験例6]
微粉砕紅茶葉にやぶきたを原料とした日本産紅茶葉を用いた以外は、試験例2、No.12と同様にして試験した。評価方法は前述の吸湿試験方法および固結状態の確認方法、官能評価方法に従って実施した。
日本産微粉砕紅茶葉を使用した場合でも、固結が抑制された、香味の優れたインスタント粉末紅茶が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明のインスタント粉末紅茶の製造方法によれば、保管時における固結が抑制されるため長期保存が可能となり、複数回開閉可能な袋入りのインスタント粉末紅茶がさらさらの状態を保持することができる。本発明のインスタント粉末紅茶はさらさらとしていて取り扱いが容易であるため、カップベンダーなどの業務用インスタント飲料としても幅広く利用することが可能である。