特許第6598710号(P6598710)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社フジクラの特許一覧

<>
  • 特許6598710-入力装置 図000003
  • 特許6598710-入力装置 図000004
  • 特許6598710-入力装置 図000005
  • 特許6598710-入力装置 図000006
  • 特許6598710-入力装置 図000007
  • 特許6598710-入力装置 図000008
  • 特許6598710-入力装置 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6598710
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】入力装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/02 20060101AFI20191021BHJP
   H01G 9/20 20060101ALI20191021BHJP
【FI】
   G06F3/02 F
   H01G9/20 315
   H01G9/20 309
   H01G9/20 113A
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-42895(P2016-42895)
(22)【出願日】2016年3月4日
(65)【公開番号】特開2017-157179(P2017-157179A)
(43)【公開日】2017年9月7日
【審査請求日】2018年12月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100129296
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 博昭
(74)【代理人】
【識別番号】100143764
【弁理士】
【氏名又は名称】森村 靖男
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 克佳
【審査官】 萩島 豪
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−232167(JP,A)
【文献】 特開2013−89527(JP,A)
【文献】 実開昭62−134155(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0245731(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0152632(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0079387(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0078230(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0298718(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/02
H01G 9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの光電変換セルと、
前記少なくとも1つの光電変換セルに対向し、基板を有するタッチセンサとを備え、
前記タッチセンサ及び前記光電変換セルを前記タッチセンサの前記基板の厚さ方向に見た場合に表示部を視認することが可能な入力装置であって、
前記光電変換セルが、
前記タッチセンサ側に設けられる透明電極基板と、
前記透明電極基板に対し前記タッチセンサと反対側に設けられ、前記透明電極基板に対向する対向基板と、
前記透明電極基板と前記対向基板との間に設けられ、色素を含有する発電部と、
前記発電部及び前記表示部を前記タッチセンサの前記基板の厚さ方向に見た場合に前記発電部と隣接するように且つ前記表示部と重なるように設けられる非発電部とを有している、入力装置。
【請求項2】
前記光電変換セルが、前記透明電極基板と前記対向基板とを接合する環状の封止部をさらに有し、
前記タッチセンサが、前記基板上に設けられ、前記タッチセンサ及び前記光電変換セルを前記タッチセンサの前記基板の厚さ方向に見た場合に前記表示部と重なるように設けられる電極と、
前記電極に接続される配線とを有し、
前記配線及び前記環状の封止部を前記タッチセンサの前記基板の厚さ方向に見た場合に、前記配線の少なくとも一部が、前記環状の封止部と重なるように且つ前記環状の封止部に沿うように配置されている、請求項1に記載の入力装置。
【請求項3】
前記光電変換セルが、前記透明電極基板と前記対向基板との間に電解質を有し、
前記非発電部が、着色材を含有する絶縁部と、前記絶縁部を被覆する被覆部とを有する、請求項1又は2に記載の入力装置。
【請求項4】
前記非発電部が前記表示部を兼ねる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の入力装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つの光電変換セルが複数の光電変換セルで構成され、前記複数の光電変換セルが直列に接続されている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の入力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチセンサを内蔵する入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
色素増感太陽電池や有機薄膜太陽電池などの光電変換素子は各種デバイスの電源として有望視されている。光電変換素子は通常は電池としてのみ使用されることが多いが、近年では、タッチセンサを有する入力装置の電源として、入力装置に内蔵されるケースも増えてきている。
【0003】
例えば下記特許文献1には、色素増感太陽電池と、色素増感太陽電池に対向するタッチセンサとを備える入力装置が開示されている。同公報には、色素増感太陽電池が、タッチセンサ側に設けられる透明電極基板と、透明電極基板に対しタッチセンサと反対側に設けられ、透明電極基板に対向する対向基板と、透明電極基板と対向基板との間に設けられる多孔質半導体層とを有することも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−89527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した特許文献1に記載の入力装置は以下に示す課題を有していた。
【0006】
すなわち、特許文献1に記載の入力装置は耐久性の向上の点で改善の余地を有していた。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、耐久性を向上させることができる入力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題が生じる原因について検討した結果、以下のように考えた。すなわち、まず、タッチセンサは通常、例えば「1」、「2」などの表示部を有するが、この表示部は、タッチセンサを構成する基板の厚さ方向に表示部を見た場合に、色素増感太陽電池の多孔質半導体層と重なり合っている。ここで、タッチセンサから入射された光が色素増感太陽電池に入射されると、多孔質酸化物半導体層は、表示部の影になる部分と、影にならずに光が入射される部分とに分かれる。このとき、影になる部分とそうでない部分とで電子の発生量に偏りが生じ、その結果、色素が変質して発電性能が低下するのではないかと本発明者は考えた。そこで、本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至ったものである。
【0009】
すなわち、本発明は、少なくとも1つの光電変換セルと、前記少なくとも1つの光電変換セルに対向し、基板を有するタッチセンサとを備え、前記タッチセンサ及び前記光電変換セルを前記タッチセンサの前記基板の厚さ方向に見た場合に表示部を視認することが可能な入力装置であって、前記光電変換セルが、前記タッチセンサ側に設けられる透明電極基板と、前記透明電極基板に対し前記タッチセンサと反対側に設けられ、前記透明電極基板に対向する対向基板と、前記透明電極基板と前記対向基板との間に設けられ、色素を含有する発電部と、前記発電部及び前記表示部を前記タッチセンサの前記基板の厚さ方向に見た場合に前記発電部と隣接するように且つ前記表示部と重なるように設けられる非発電部とを有している、入力装置である。
【0010】
この入力装置によれば、タッチセンサの基板の厚さ方向に発電部及び表示部を見た場合に、表示部が光電変換セルの発電部と隣接するように且つ非発電部と重なるように設けられている。このため、タッチセンサを通して光電変換セルに光が入射されると、表示部以外の発電部には、表示部によって影となる部分を生じさせることなく光が入射される。すなわち、発電部において、光が入射される部分と、光が入射されない部分とが生じることが十分に抑制される。その結果、発電部において電子の発生量に偏りが生じることが十分に抑制される。その結果、色素の変質が抑制される。従って、本発明によれば、光電変換セルの耐久性を向上させることができ、ひいては入力装置の耐久性を向上させることができる。
【0011】
上記入力装置においては、前記光電変換セルが、前記透明電極基板と前記対向基板とを接合する環状の封止部をさらに有し、前記タッチセンサが、前記基板上に設けられ、前記タッチセンサ及び前記光電変換セルを前記タッチセンサの前記基板の厚さ方向に見た場合に前記表示部と重なるように設けられる電極と、前記電極に接続される配線とを有し、前記配線及び前記環状の封止部を前記タッチセンサの前記基板の厚さ方向に見た場合に、前記配線の少なくとも一部が、前記環状の封止部と重なるように且つ前記環状の封止部に沿うように配置されていることが好ましい。
【0012】
この場合、配線及び環状の封止部をタッチセンサの基板の厚さ方向に見た場合に、配線の少なくとも一部が、環状の封止部と重なるように且つ環状の封止部に沿うように配置されているため、発電部への光の入射を妨げる配線の面積を低下させることができ、開口率を上げることが可能となる。
【0013】
上記入力装置においては、前記光電変換セルが、前記透明電極基板と前記対向基板との間に電解質を有し、前記非発電部が、着色材を含有する絶縁部と、前記絶縁部を被覆する被覆部とを有することが好ましい。
【0014】
着色材を有する絶縁部が電解質に接触すると、着色材が電解質中に溶解する可能性がある。その点、本発明では、非発電部において、絶縁部が被覆部で被覆されているため、電解質中に入り込む着色材の量を低減させることができる。このため、本発明の入力装置によれば、着色材の混入による光電変換特性の低下を抑制することができ、耐久性をより十分に向上させることができる。
【0015】
上記入力装置においては、前記非発電部が前記表示部を兼ねることが好ましい。
【0016】
この場合、非発電部が表示部を兼ねることで、タッチセンサに表示部を設けることが必要でなくなるため、タッチセンサの一層の薄型化が可能となり、入力装置をより小型化することが可能となる。
【0017】
上記入力装置においては、例えば前記少なくとも1つの光電変換セルが複数の光電変換セルで構成され、前記複数の光電変換セルが直列に接続されている。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、耐久性を向上させることができる入力装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の入力装置の一実施形態を示す平面図である。
図2図1の入力装置を概略的に示す断面図である。
図3図1の入力装置の一部を示す平面図である。
図4図3のIV−IV線に沿った断面図である。
図5図2の光電変換素子の発電部及び非発電部をタッチセンサ側から見た平面図である。
図6図5のVI−VI線に沿った断面図である。
図7】本発明の入力装置の他の実施形態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る入力装置の実施形態について図1図6を参照しながら詳細に説明する。なお、図1は、本発明の入力装置の好適な実施形態を示す平面図、図2は、図1の入力装置を概略的に示す断面図、図3は、図1の入力装置の一部を示す平面図、図4は、図3のIV−IV線に沿った断面図、図5は、図2の光電変換素子の発電部及び非発電部をタッチセンサ側から見た平面図、図6は、図5のVI−VI線に沿った断面図である。
【0021】
図1及び図2に示すように、入力装置100は、第1開口110a及び第2開口110bを有する筺体110を有している。筺体110の内部には、筺体110の第1開口110aを塞ぐように配置されるタッチセンサ120と、タッチセンサ120に対向する位置に配置される1つの光電変換セル130と、筺体110の第2開口110bを塞ぐように配置される液晶表示部140と、光電変換セル130に接続される蓄電池150と、タッチセンサ120、光電変換セル130及び液晶表示部140に電気的に接続され、タッチセンサ120の操作に基づき液晶表示部140に対応する数字を表示させる制御部160とが設けられている。
【0022】
図4及び図5に示すように、光電変換セル130は、透明電極基板20と、透明電極基板20に対向する対向基板30と、透明電極基板20と対向基板30とを接合する環状の封止部40と、透明電極基板20上に設けられ、色素を含有する発電部50と、透明電極基板20上に発電部50に隣接して設けられる非発電部70と、透明電極基板20と対向基板30との間に設けられる電解質60とを有している。ここで、透明電極基板20は、タッチセンサ120側に設けられ、対向基板30は、透明電極基板20に対しタッチセンサ120と反対側に設けられている。また非発電部70は、本実施形態では表示部を兼ねており、表示部及び非発電部70をタッチセンサ120の基板121の厚さ方向に見た場合に表示部と重なるように設けられている。
【0023】
一方、図3及び図4に示すように、タッチセンサ120は、基板121と、基板121上に設けられる電極121aと、基板121に対し電極121aを覆うように設けられる被覆層122とを備えている。ここで、タッチセンサ120においては、タッチセンサ120の基板121の厚さ方向(タッチセンサ120の基板121の表面に直交する方向)にタッチセンサ120を見た場合に、光電変換セル130における表示部を兼ねる非発電部70が視認可能となっている。図1及び図3においては、非発電部70が10個示されており、それぞれ数字の「0」〜「9」を構成している。なお、表示部としての非発電部70及び電極121aは、タッチセンサ120の基板121の厚さ方向に見た場合に互いに重なるように配置されている。
【0024】
また図1及び図3に示すように、タッチセンサ120においては、電極121aに配線125が接続されている。配線125の少なくとも一部は、電極121aから延びて、配線125及び環状の封止部40をタッチセンサ120の基板121の厚さ方向に見た場合に環状の封止部40と重なるように且つ環状の封止部40に沿うように配置されている。そして、配線125の端部は制御部160に接続されている(図2参照)。
【0025】
この入力装置100によれば、タッチセンサ120の基板121の厚さ方向に表示部としての非発電部70を見た場合に、非発電部70が視認可能となっている。すなわち、入力装置100においては、表示部が光電変換セル130の発電部50と隣接するように且つ非発電部70と重なるように設けられている。このため、タッチセンサ120を通して光電変換セル130に光が入射されると、図6に示すように、発電部50には、表示部によって影となる部分を生じさせることなく光が入射される。すなわち、発電部50においては、光が入射される部分と、光が入射されない部分とが生じることが十分に抑制される。このため、発電部50において電子の発生量に偏りが生じることが十分に抑制される。その結果、色素の変質が抑制される。従って、入力装置100においては、光電変換セル130の耐久性が向上し、ひいては入力装置100の耐久性も向上する。
【0026】
また入力装置100においては、タッチセンサ120が、電極121aに接続される配線125を有し、配線125及び環状の封止部40をタッチセンサ120の基板121の厚さ方向に見た場合に、配線125の少なくとも一部が、環状の封止部40と重なるように且つ環状の封止部40に沿うように配置されている。
【0027】
このため、発電部50への光の入射を妨げる配線125の面積を低下させることができ、開口率を上げることが可能となる。
【0028】
さらに入力装置100においては、非発電部70が表示部を兼ねるため、タッチセンサ120に表示部を設けることが不要となる。このため、タッチセンサ120の一層の薄型化が可能となり、入力装置100をより小型化することが可能となる。
【0029】
次に、タッチセンサ120及び光電変換セル130について詳細に説明する。
【0030】
≪タッチセンサ≫
タッチセンサ120は、上述したように、基板121と、基板121上に設けられる電極121aと、基板121に対し電極121aを覆うように設けられる被覆層122とを備えている。
【0031】
(基板)
基板121としては、例えばPETフィルム、PENフィルムなどの樹脂フィルム、ガラスなどの無機材料で構成される基板などを用いることができる。
【0032】
(電極)
電極121aは、タッチセンサ120の基板121の厚さ方向に表示部としての非発電部70及び電極121aを見た場合に、表示部70と重なるように設けられる。電極121aは、発電部50への光の入射量を増加させるため、メッシュ配線で構成されることが好ましい。メッシュ配線で構成される場合、電極121aとしては、銀又は銅などの不透明な金属材料やカーボン材料を用いることができる。ここで、メッシュ配線の線幅は例えば100μm以下とし、タッチセンサ120の基板121の厚さ方向に光を入射させた場合に、メッシュ配線を通過する部分と、メッシュ配線以外の部分を通過する部分との可視光の透過率の差を10%以下とすることが好ましい。但し、電極121aは必ずしもメッシュ配線で構成される必要はない。例えば電極121aをITOやFTOなどの透明金属材料で構成することができる。
【0033】
(被覆層)
被覆層122は透明材料で構成されればよく、このような透明材料としては、例えばエポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ビニル樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂及びポリイミド樹脂などの透明樹脂が挙げられる。
【0034】
被覆層122は、基板121に対し、透明樹脂を印刷法などを用いて被覆することにより得ることができる。
【0035】
≪光電変換セル≫
次に、光電変換セル130について詳細に説明する。
【0036】
光電変換セル130は、上述したように、透明電極基板20、対向基板30、封止部40、発電部50、非発電部70及び電解質60を有する。以下、これらについて詳細に説明する。
【0037】
<透明電極基板>
透明電極基板20は、透明基板21と、透明基板21のうち対向基板30側に設けられる電極としての透明導電層22とを備えている。
【0038】
(透明基板)
透明基板21を構成する材料は、例えば透明な絶縁材料であればよく、このような透明な材料としては、例えばホウケイ酸ガラス、ソーダライムガラス、白板ガラス、石英ガラスなどのガラス、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、および、ポリエーテルスルフォン(PES)などが挙げられる。透明基板21の厚さは、光電変換セル130のサイズに応じて適宜決定され、特に限定されるものではないが、例えば50〜10000μmの範囲にすればよい。
【0039】
(透明導電層)
透明導電層22を構成する材料としては、例えばスズ添加酸化インジウム(ITO)、酸化スズ(SnO)、及び、フッ素添加酸化スズ(FTO)などの導電性金属酸化物が挙げられる。透明導電層22は、単層でも、異なる導電性金属酸化物で構成される複数の層の積層体で構成されてもよい。透明導電層22が単層で構成される場合、透明導電層22は、高い耐熱性及び耐薬品性を有することから、FTOで構成されることが好ましい。透明導電層22の厚さは例えば0.01〜2μmの範囲にすればよい。
【0040】
<対向基板>
対向基板30は、本実施形態では対極で構成されており、導電性基板31と、導電性基板31のうち透明電極基板20側に設けられて電解質60の還元に寄与する触媒層32とを備えている。
【0041】
導電性基板31は、例えばチタン、ニッケル、白金、モリブデン、タングステン、アルミ、ステンレス等の耐食性の金属材料で構成される。また、導電性基板31は、基板と電極を分けて、上述した透明基板21上にITO、FTO等の導電性酸化物からなる導電層を電極として形成した積層体で構成されてもよく、ガラス上にITO、FTO等の導電性酸化物からなる導電層を形成した積層体でもよい。導電性基板31の厚さは、光電変換セル130のサイズに応じて適宜決定され、特に限定されるものではないが、例えば0.005〜0.1mmとすればよい。
【0042】
触媒層32は導電性材料で構成される。導電性材料としては、白金などの金属材料、炭素系材料又は導電性高分子などが挙げられる。ここで、炭素系材料としては、カーボンナノチューブが好適に用いられる。
【0043】
<封止部>
封止部40としては、例えば変性ポリオレフィン樹脂、ビニルアルコール重合体などの熱可塑性樹脂、及び、紫外線硬化樹脂などの樹脂が挙げられる。変性ポリオレフィン樹脂としては、例えばアイオノマー、エチレン−ビニル酢酸無水物共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体およびエチレン−ビニルアルコール共重合体が挙げられる。これらの樹脂は単独で又は2種以上を組み合せて用いることができる。
【0044】
<発電部>
発電部50は、酸化物半導体層と、酸化物半導体層に担持される色素とを含有する。
【0045】
(酸化物半導体層)
酸化物半導体層は酸化物半導体粒子で構成されている。酸化物半導体粒子は、例えば酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化タングステン(WO)、酸化ニオブ(Nb)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、酸化スズ(SnO)、酸化インジウム(In)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化タリウム(Ta)、酸化ランタン(La)、酸化イットリウム(Y)、酸化ホルミウム(Ho)、酸化ビスマス(Bi)、酸化セリウム(CeO)、酸化アルミニウム(Al)又はこれらの2種以上で構成される。酸化物半導体層50の厚さは、例えば0.1〜100μmとすればよい。
【0046】
(色素)
色素としては、例えばビピリジン構造、ターピリジン構造などを含む配位子を有するルテニウム錯体や、ポルフィリン、エオシン、ローダミン、メロシアニンなどの有機色素などの光増感色素や、ハロゲン化鉛系ペロブスカイト結晶などの有機−無機複合色素などが挙げられる。ハロゲン化鉛系ペロブスカイトとしては、例えばCHNHPbX(X=Cl、Br、I)が用いられる。上記色素の中でも、ビピリジン構造又はターピリジン構造を含む配位子を有するルテニウム錯体が好ましい。この場合、光電変換セル130の光電変換特性をより向上させることができる。なお、色素として、光増感色素を用いる場合には、光電変換セル130は色素増感光電変換セルとなる。
【0047】
<非発電部>
非発電部70は光電変換機能を有しないものであればよい。但し、本実施形態では、非発電部70は表示部を兼ねるため、タッチセンサ120の基板121の厚さ方向に非発電部70及び発電部50を見た場合に、発電部50と識別して視認可能であることが必要である。具体的には、非発電部70は、着色材を含む絶縁部を有して構成される。ここで、着色材は、可視光の波長領域に吸収ピークを有する物質をいう。
【0048】
上記絶縁部としては、例えばガラスフリットなどの無機絶縁材料、熱硬化性樹脂(ポリイミド樹脂など)および熱可塑性樹脂などの有機絶縁材料が挙げられる。中でも、ガラスフリットなどの無機絶縁材料が好ましい。この場合、絶縁材料が有機絶縁材料である場合に比べて、絶縁部の寸法変化が小さくなる。
【0049】
絶縁部中に含まれる着色材は、絶縁部を着色させるものであればいかなるものでもよいが、このような着色材としては、例えば遷移金属の酸化物、炭素系材料及び有機染料などが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合せて用いられてもよい。
【0050】
遷移金属の酸化物としては、例えば酸化銅、酸化鉄、酸化コバルト及び酸化マンガンなどが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合せて用いられてもよい。
【0051】
さらに非発電部70は、封止部40で囲まれる領域内(図3の破線で囲まれる領域内)のうち非発電部70の総面積が10%以上を占める場合には、着色材を含む絶縁部に加えて、絶縁部を被覆する被覆部をさらに有することが好ましい。この場合、着色材を有する絶縁部が電解質60に接触すると、着色材が電解質60中に溶解する可能性がある。その点、光電変換セル130では、非発電部70において、絶縁部が被覆部で被覆されているため、電解質60中に入り込む着色材の量を低減させることができる。このため、入力装置100によれば、着色材の混入による光電変換特性の低下を抑制することができ、耐久性をより十分に向上させることができる。
【0052】
(被覆部)
被覆部は絶縁材料で構成される。この絶縁材料としては、絶縁部を構成する絶縁材料と同様のものを用いることができる。
【0053】
被覆部は通常、着色材を含有していないが、絶縁部中の含有率よりも小さい含有率で着色材を含有するのであれば含有していてもよい。
【0054】
この場合、被覆部中の着色材は通常、絶縁部中に含まれる着色材と同一の着色材を意味する。例えば絶縁部中に含まれる着色材が遷移金属の酸化物であれば、被覆部における着色材も遷移金属の酸化物である。
【0055】
被覆部の絶縁部の表面からの厚さは通常、3〜20μmであり、好ましくは5〜10μmである。
【0056】
なお、絶縁部の表面(絶縁部と透明電極基板20との界面を除く)のうち被覆部が設けられていない領域の面積は10%以下であることが好ましい。この場合、絶縁部中の着色材が電解質60に溶け出しても、光電変換セル130の耐久性に与える影響を十分に低減することができる。
【0057】
<電解質>
電解質60は、酸化還元対と有機溶媒とを含んでいる。有機溶媒としては、アセトニトリル、メトキシアセトニトリル、メトキシプロピオニトリル、プロピオニトリル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、バレロニトリル、ピバロニトリル、などを用いることができる。酸化還元対としては、例えばヨウ化物イオン/ポリヨウ化物イオン(例えばI/I)、臭化物イオン/ポリ臭化物イオンなどのハロゲン原子を含む酸化還元対のほか、亜鉛錯体、鉄錯体、コバルト錯体などのレドックス対が挙げられる。なお、ヨウ化物イオン/ポリヨウ化物イオンは、ヨウ素(I)と、アニオンとしてのアイオダイド(I)を含む塩(イオン性液体や固体塩)とによって形成することができる。アニオンとしてアイオダイドを有するイオン性液体を用いる場合には、ヨウ素のみ添加すればよく、有機溶媒や、アニオンとしてアイオダイド以外のイオン性液体を用いる場合には、LiIやテトラブチルアンモニウムアイオダイドなどのアニオンとしてアイオダイド(I)を含む塩を添加すればよい。また電解質60は、有機溶媒に代えて、イオン液体を用いてもよい。イオン液体としては、例えばピリジニウム塩、イミダゾリウム塩、トリアゾリウム塩等の既知のヨウ素塩などが用いられる。このようなヨウ素塩としては、例えば、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムアイオダイド、1−エチル−3−プロピルイミダゾリウムアイオダイド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムアイオダイド、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムアイオダイド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムアイオダイド、又は、1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムアイオダイドが好適に用いられる。
【0058】
また、電解質60は、上記有機溶媒に代えて、上記イオン液体と上記有機溶媒との混合物を用いてもよい。
【0059】
また電解質60には添加剤を加えることができる。添加剤としては、1−メチルベンゾイミダゾール(NMB)、1−ブチルベンゾイミダゾール(NBB)などのベンゾイミダゾール、LiI、テトラブチルアンモニウムアイオダイド、4−t−ブチルピリジン、グアニジウムチオシアネートなどが挙げられる。中でも、ベンゾイミダゾールが添加剤として好ましい。
【0060】
さらに電解質60としては、上記電解質にSiO、TiO、カーボンナノチューブなどのナノ粒子を混練してゲル様となった擬固体電解質であるナノコンポジットゲル電解質を用いてもよく、また、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンオキサイド誘導体、アミノ酸誘導体などの有機系ゲル化剤を用いてゲル化した電解質を用いてもよい。
【0061】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、非発電部70が、着色材を含む絶縁部を有して構成されているが、非発電部70は、必ずしも、着色材を含む絶縁部を有して構成されるものに限定されない。例えば非発電部70は、タッチセンサ120の基板121の厚さ方向に非発電部70及び発電部50を見た場合に、発電部50と識別して視認可能であれば、単なる空間で構成されてもよい。また、発電部50に対して対向基板30側に光反射層が設けられており、この光反射層が発電層50と識別して視認可能であれば、光反射層のうち、タッチセンサ120の基板121の厚さ方向に非発電部70を見た場合に空間を通して視認可能な部分が非発電部70となる。
【0062】
また、上記実施形態では、光電変換セル130の非発電部70が表示部を兼ねており、タッチセンサ120が表示部を有していないが、図7に示す入力装置のように、タッチセンサ120が表示部124を有していてもよい。この場合、タッチセンサ120を通して光電変換セル130に光が入射されると、非発電部70には表示部124によって影になる部分が生じるが、発電部50には、表示部124によって影となる部分を生じさせることなく光が入射される。すなわち、発電部50においては、光が入射される部分と、光が入射されない部分とが生じることが十分に抑制される。このため、発電部50において電子の発生量に偏りが生じることが十分に抑制される。その結果、色素の変質が抑制される。従って、図7に示す入力装置においても、光電変換セル130の耐久性が向上し、ひいては入力装置の耐久性も向上する。また、図7に示す入力装置では、タッチセンサ120の基板121の厚さ方向に非発電部70及び表示部124を見た場合に非発電部70は視認できなくなるため、非発電部70は着色材を含有していなくてもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、光電変換セル130において、透明電極基板20上に酸化物半導体層50が設けられているが、酸化物半導体層50は対向基板30上に設けられてもよい。この場合、触媒層32は透明電極基板20の上に設けられる。
【0064】
さらに、上記実施形態では、対向基板30が対極で構成され、透明電極基板20と対向基板30とが封止部40によって連結されているが、透明電極基板20と対向基板30との間で、酸化物半導体層50上に、電解質60を含浸した多孔性の絶縁層及び電極層が順次積層される場合には、対向基板30は絶縁性の基材で構成されてもよい。
【0065】
さらにまた、上記実施形態では、入力装置100が1つの光電変換セル130を有しているが、入力装置100は、光電変換セル130を複数備えていてもよい。ここで、複数の光電変換セル130は直列に接続されてもよいし、並列に接続されてもよい。
【実施例】
【0066】
以下、本発明の内容を、実施例を挙げてより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0067】
(実施例1)
まずガラスからなる厚さ1mmの透明基板21の上に、厚さ1μmのFTOからなる透明導電層22を形成してなる積層体を準備した。
【0068】
次に、透明導電層上に、スクリーン印刷によりガラスフリット及び着色材を含む絶縁部形成用ペーストを、「2」の文字を形成するように塗布し乾燥させて絶縁部の前駆体を形成した。このとき、絶縁部形成用ペーストにおいて、着色材は、ガラスフリット中の着色材の含有率が15質量%となるように含有させた。着色材としては、酸化鉄、酸化銅及び酸化マンガンからなるものを用いた。
【0069】
続いて、絶縁部の前駆体の全体を覆うように被覆部の前駆体を形成した。被覆部の前駆体は、ガラスフリットからなる被覆部形成用ペーストを塗布し乾燥させることによって形成した。このとき、被覆部形成用ペースト中の着色材の含有率は0質量%とした。
【0070】
さらに透明導電層の上に発電部を構成する酸化物半導体層の前駆体を形成した。但し、このとき、被覆部の前駆体を覆わないようにした。酸化物半導体層の前駆体は、チタニア粒子を含む酸化物半導体層形成用ペーストをスクリーン印刷により塗布し、乾燥させることで形成した。
【0071】
次に、絶縁部の前駆体、被覆部の前駆体および酸化物半導体層の前駆体を500℃で1時間焼成した。こうして、絶縁部及び被覆部からなる非発電部と、発電部を構成する酸化物半導体層とを有する電極構造体を得た。
【0072】
次に、上記電極構造体を、N719からなる光増感色素を0.2mM含み、溶媒を、アセトニトリルとtertブタノールとを1:1の体積比で混合してなる混合溶媒とした色素溶液中に一昼夜浸漬させた後、取り出して乾燥させ、酸化物半導体層に光増感色素を担持させた。
【0073】
次に、酸化物半導体層の上に、3−メトキシプロピオニトリルからなる溶媒中に、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムアイオダイド2M、I0.002M、n−メチルベンゾイミダゾール0.3M、グアニジウムチオシアネート0.1Mからなる電解質を滴下し乾燥させて電解質を配置した。
【0074】
次に、封止部を形成するための封止部形成体を準備した。封止部形成体は、無水マレイン酸変性ポリエチレン(商品名:バイネル、デュポン社製)からなる1枚の封止用樹脂フィルムを用意し、その封止用樹脂フィルムに1つの四角形状の開口を形成することによって得た。このとき、開口が4.2cm×9.7cm×60μmの寸法となるように、且つ、封止部形成体の幅が1.8mmとなるように封止部形成体を作製した。
【0075】
そして、この封止部形成体を、上記電極構造体に重ね合わせた後、封止部形成体を加熱溶融させることによって上記電極構造体上に接着させた。
【0076】
次に、1枚の対向基板を用意した。1枚の対向基板は、4.6cm×10.0cm×40μmのチタン箔の上にスパッタリング法によって白金からなる触媒層を形成することによって用意した。
【0077】
そして、上記電極構造体に接着させた封止部形成体と、対向基板とを対向させて重ね合わせた。そして、この状態で封止部形成体を加圧しながら加熱溶融させた。こうして電極構造体と対向基板との間に封止部を形成した。
【0078】
以上のようにして光電変換セルを作製した。
【0079】
一方、以下のようにしてタッチセンサを用意した。すなわち、まず、PETフィルムからなる基板を用意し、基板の表面上で、42mm×97mmの領域にスクリーン印刷によって電極を形成した。このとき、電極は、線幅4μmのメッシュ配線で、且つ、メッシュ配線を通過する部分とメッシュ配線以外の部分を通過する部分とで可視光の透過率の差が10%となるように形成した。また電極からは、線幅10μmとなるように配線を形成した。このとき、配線は、基板の縁部から0.3mmの領域まで延ばし、そこからその領域に沿って配置されるように形成した。
【0080】
そして、上記基板に対し、電極を被覆するようにPETフィルムからなる被覆層で被覆させた。こうしてタッチセンサを得た。
【0081】
そして、上記のようにして得た光電変換セル及びタッチセンサを互いに積層させた。このとき、光電変換セルとタッチセンサとは周囲を接着剤で接着させて固定した。また、このとき、タッチセンサの基板の厚さ方向に非発電部を見た場合に、非発電部が、タッチセンサの電極と重なるようにした。こうして入力装置を作製した。
【0082】
(比較例1)
透明導電層上に、ガラスフリット及び着色材を含む絶縁部の前駆体を形成せず、絶縁部の前駆体の全体を覆うように被覆部の前駆体を形成しないことにより非発電部を形成しなかったこと以外は実施例1と同様にして入力装置を作製した。
【0083】
<耐久性の評価>
実施例1および比較例1で得られた入力装置の光電変換セルについて、初期出力(η)を測定した。続いて、これらの光電変換セルに対し、白色LEDの光源を用いて光を1000時間入射させ、その後に出力(η)を測定した。そして、下記式:
出力の保持率(%)=η/η×100
に基づき、出力の保持率(出力保持率)を算出した。結果を表1に示す。
【表1】
【0084】
表1に示すように、実施例1の光電変換セルは、比較例1の光電変換セルに比べて高い出力保持率を示すことが分かった。
【0085】
以上より、本発明によれば、光電変換セルの耐久性を向上させることができ、ひいては、入力装置の耐久性を向上させることができることが確認された。
【符号の説明】
【0086】
20…透明電極基板
30…対向基板
40…封止部
50…発電部
60…電解質
70…非発電部
100…入力装置
120…タッチセンサ
121…基板
121a…電極
125…配線
130…光電変換セル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7