(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6598772
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】ロールスタビライザの過負荷を識別するための自動車の運転のための方法
(51)【国際特許分類】
B60G 21/055 20060101AFI20191021BHJP
【FI】
B60G21/055
【請求項の数】8
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-526451(P2016-526451)
(86)(22)【出願日】2014年6月18日
(65)【公表番号】特表2016-526512(P2016-526512A)
(43)【公表日】2016年9月5日
(86)【国際出願番号】DE2014200265
(87)【国際公開番号】WO2015007280
(87)【国際公開日】20150122
【審査請求日】2017年6月15日
(31)【優先権主張番号】102013011898.0
(32)【優先日】2013年7月17日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102013223424.4
(32)【優先日】2013年11月18日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515009952
【氏名又は名称】シェフラー テクノロジーズ アー・ゲー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies AG & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マルコ ディ パチェ
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ヘッケル
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン ハックナー
【審査官】
高橋 武大
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−045226(JP,A)
【文献】
特開2007−290469(JP,A)
【文献】
特開2006−160125(JP,A)
【文献】
特開2005−035515(JP,A)
【文献】
特開2006−182239(JP,A)
【文献】
特開2009−046075(JP,A)
【文献】
特表2003−519588(JP,A)
【文献】
独国特許出願公開第102008024092(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60G 1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
介在的に設けられた回転駆動部を用いて相互に所定の捻り角度分だけ相対的に捻り可能な2つのスタビライザ部品を備え、捻り可能に車体に支持されたロールスタビライザの過負荷を識別するための自動車の運転のための方法であって、
前記回転駆動部によって消費された回転モーメント(M)に等価的な特性量と捻り角度(Φ)の関係を求め、
前記関係が所定の許容範囲外にある場合に、過負荷を確定する、方法において、
前記回転モーメント(M)と前記捻り角度(Φ)とから、捻り角度特性曲線(2)を、該捻り角度特性曲線(2)から離間しかつ低減された回転モーメント(M)を伴う許容特性曲線(3)と共に形成し、前記許容特性曲線(3)に対応する捻り角度(Φ)のもとで前記許容特性曲線(3)の回転モーメント(M)を下回った場合に過負荷を確定することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記等価的な特性量は、前記回転駆動部の回転モーメントを検出する回転モーメントセンサを用いて求められる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記等価的な特性量は、油圧式回転駆動部の回転モーメントを供給するための圧力を検出する圧力センサを用いて求められるか、または電気機械式回転駆動部の少なくとも1つの電気的特性量を用いて求められる、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記等価的な特性量は、前記車体における前記ロールスタビライザの支持部に設けられた、当該車体に対する当該ロールスタビライザの支持力を検出する力センサを用いて求められる、請求項1記載の方法。
【請求項5】
動作特性量と複数のセンサとから形成される、前記自動車の車両モデルに基づいて、前記車体に対する前記ロールスタビライザの支持力を求め、当該求められた支持力によって前記等価的な特性量を形成する、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記捻り角度(Φ)は、前記回転駆動部の内部捻り角度(Φintern)から前記スタビライザ部品の端部にて求められた外部捻り角度(Φextern)を割り引くことによって求められる、請求項1から5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記捻り角度(Φ)が、予め定められた最大捻り角度(Φmax)を越えた場合に、過負荷を確定する、請求項1から6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
摩擦に起因する基準トルク(Mg)を上回る回転モーメント(M)のもとで、捻り角度(Φ)が予め定めた捻り角度(Φi)よりも大きい場合に、過負荷の識別を開始する、請求項1から7のいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、介在的に設けられた回転駆動部を用いて相互に所定の捻り角度分だけ相対的に捻り可能な2つのスタビライザ部品を備え、捻り可能に車体に支持されたロールスタビライザの過負荷を識別するための自動車の運転のための方法に関している。
【背景技術】
【0002】
例えば国際公開第07/054489号パンフレット、国際公開第12/041556号及び欧州公開第2543528号パンフレットから公知のロールスタビライザは、自動車においてローリングの安定化のために用いられている。ここでは例えばトーションスプリングに相当するスタビライザ部品が回転駆動部によって捻り角度分だけ相互に捻られ、スタビライザ部品は車体に捻り可能に懸架されている。複数のスタビライザ部品の相互の相対的な捻れによって、自動車のアクスルは所望の平面内で安定化され、これらのスタビライザ部品が回転駆動部によって捻られ、それによって複数のホイール若しくはそれらのホイールを支持しているホイールキャリアが相互に引き上げられたり引き下げられたりする。
【0003】
ロールスタビライザの構成部材、例えば回転駆動部、ストラットおよび/またはスタビライザ部品の破断や塑性変形など過負荷がかかった場合には、ホイールキャリアおよび/またはストラットに対するロールスタビライザの支持力が急激に失われる可能性があり、それによって自動車は、例えばオーバーステアなどの不安定な状態に陥りかねない。さらにローリング安定化システムの活動中に例えばスタビライザ部品が破断しその支持力を失ってロールスタビライザの制御が過補償されると、ロールスタビライザは急激に制御不能に捻られる可能性がある。例えば車体へのロールスタビライザの機械的接合箇所が破断した場合には、安全上危険な二次災害的エラー、例えばロールスタビライザのワイヤーハーネスの破断や破損、隣接する装置、例えばホイール回転数センサのケーブルやブレーキホースなどの破断や破損を引き起こす可能性がある。
【0004】
発明の課題
それ故本発明の課題は、ロールスタビライザの過負荷を識別するための自動車のための方法を提案することである。
【0005】
発明の概要
前記課題は、請求項1の特徴部分に係る本発明による方法によって解決される。請求項1に従属する請求項は、請求項1に係る本発明の方法の有利な実施形態を表している。
【0006】
本願で提案される方法は、ロールスタビライザ構成部材の過負荷の識別に用いられ、さらにロールスタビライザ構成部材の車体およびホイールキャリアへの固定の識別に用いられる。例えばトーションバースプリング、回転駆動装置、例えばそのケーシングの形態の例えばスタビライザ部品の例えば塑性変形および破断には、例えば車両部材、例えば車体、ホイールキャリア、スタビライザリンク、スタビライザベアリングなどへのロールスタビライザの機械的な結合若しくは固定が含まれる。
【0007】
本願で提案される方法は、介在的に設けられた回転駆動部を用いて相互に所定の捻り角度分だけ相対的に捻り可能な2つのスタビライザ部品を備え、かつ捻り可能に車体に支持されたロールスタビライザの過負荷を識別するために設けられており、回転駆動装置からもたらされる回転モーメントに等価的な特性量に対する前記捻り角度の比率が求められ、この比率が所定の許容範囲外にある場合に、過負荷が決定される。
【0008】
有利な実施形態によれば、前記等価的特性量として、次のような全ての特性量が適する。すなわちそこから、スタビライザ部品間で効果的に、ロールスタビライザ部品を捻らせるために回転駆動部によって自動車のロール安定化に必要な捻り角度分だけもたらされる回転モーメントが、導出可能、推定可能または算出可能な全ての特性量である。このような等価的特性量は、例えば、回転駆動部の回転モーメントを検出する回転モーメントセンサを用いて求められてもよい。この種の回転モーメントセンサは、回転駆動部内に統合されていてもよい。
【0009】
好適にはこの回転モーメントが、既存の装置、例えば既存のセンサの既存の信号や特性量から導出的に求めることができる場合には、ロールスタビライザ内のさらなる構成部品は省くことができる。前記等価的特性量は、例えば作動圧のような圧力の形成によって回転モーメントを供給する油圧系回転駆動部の場合には、スタビライザ部品間で設定される捻り角度をもたらす圧力の評価によって供給することができる。この場合の圧力は、回転駆動部の油圧経路内に統合されている圧力センサの信号を用いて検出することが可能である。
【0010】
電気機械式回転駆動部を使用する場合には、回転モーメントを求めるための等価的特性量は、設定された捻り角度のもとで回転駆動部の少なくとも1つの電気的特性量、例えば回転駆動部および/または同じ様な駆動部のパルス幅制御された電動機のパルス幅、電力、電圧降下、電圧、動作電流のような電流等を用いて形成することが可能である。
【0011】
さらに等価的特性量は、車体へのロールスタビライザの支持力との関係に基づいて行われる。この目的のために、等価的特性量は、車体におけるロールスタビライザの支持体に配設された、車体に対するロールスタビライザの支持力を検出する力センサを用いて求められてもよい。
【0012】
さらにロールスタビライザを備えた自動車においては、複数のセンサおよびデバイスからの包括的なデータから車両モデルを形成してもよい。この目的のために、個々のユニットや装置を制御する自動車内に既存の制御機器、例えばエンジン、トランスミッション、シャーシなどを制御する制御機器が、CANバスなどのネットワークを介して相互に通信し、例えばセンサを用いて得られたデータや動作状態などが供給される。それにより車両モデルが、1つ以上の制御機器の計算ユニット内でマッピングされ得る。これらのデータに基づいて、車両モデル内で、回転駆動部の回転モーメントが所定の捻り角度のもとでマッピングされ、提案された方法によれば、等価的特性量として利用可能である。代替的に、車両モデルに基づき、車両モデルの動作量とセンサとから、車体に対するロールスタビライザの支持力が求められ、この求められた支持力が、等価的特性量を形成し得る。
【0013】
この方法は、好ましくは、ロールスタビライザを制御する制御機器内または上位に置かれた制御装置内、例えばシャーシ制御部において実施される。この場合好ましくは、回転モーメントと捻り角度から、捻り角度特性曲線が、この曲線から離間して平行に延在する、低減された回転モーメントを伴う許容特性曲線と共に形成される。対応する捻り角度のもとで所定の回転モーメントを下回った場合には、過負荷が確定される。ここでの許容特性曲線は、好ましくは捻り角度に対する回転モーメントの直線として形成される。
【0014】
過負荷を求めるための捻り角度は、「スタビライザ部品端部において求められた外部捻り角度」と「回転駆動部内部の捻り角度」の差分によって求められると好適であることがわかっている。回転モーメント依存性の過負荷の認識に対して代替的若しくは付加的に、例えばロールスタビライザの構造空間状況によって予め設定される最大捻り角度に関する超過で行ってもよい。ここでの最大捻り角度の超過は、例えば回転駆動部のケーシングやスタビライザ部品(例えばアーム)が塑性変形するか破断した場合にのみ生じ得る。
【0015】
さらに過負荷の種別は、次のような方法を用いて求めることが可能である。すなわちある回転モーメントが所定の捻り角度のもとで第1の閾値を下回った場合に少なくとも1つのスタビライザ部品の塑性変形が確定されるような方法である。この場合は設定された捻り角度に関して、低減された回転モーメントが必要であるが、但しこれはスタビライザ部品相互の捻りがまだ消費可能なものでなければならない。消費された回転モーメントが、第1の閾値よりもさらに低い第2の閾値を下回って低下すると、少なくとも1つのスタビライザ部品、2つのスタビライザ部品および/または回転駆動部のケーシングの破断が確定される。ここでの消費される回転モーメントとは、実質的にロールスタビライザの摩擦力に対応している。その際の2つのホイールキャリアの間の捻り角度のサポートはもはや行われない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【0017】
以下では本願で提案される方法を、図面に基づいて詳細に説明する。この図では、消費される回転モーメントが、スタビライザアームなどの2つのスタビライザ部品の間で設定される捻り角度のもとで示されている。
【0018】
図1には、トーションスプリングやスタビライザアームなどのスタビライザ部品の捻り角度Φを設定調整するための、ロールスタビライザの回転駆動部によって消費される回転モーメントMが線
図1で示されている。この場合、直線として示されている捻り角度特性曲線2は、支承なく動作しているロールスタビライザにおける回転モーメントMと捻り角度Φの間の関係を表している。この場合、スタビライザアームの捻りの増加に伴って、回転駆動部により消費される回転モーメントMも増加する。捻り角度Φは、捻り角度実効値Φとして、内部捻り角度Φ
internと外部捻り角度Φ
externの差分Φ
intern−Φ
externから形成される。ここでの内部捻り角度Φ
internとは、回転駆動部の構成部材の捻り角度を意味し、外部捻り角度Φ
externとは、スタビライザアーム端部の捻り角度を意味する。経年劣化、摩耗、製造公差に起因して、捻り角度特性曲線2のほかに、相応の捻り角度Φのもとで、減少した回転モーメントMを伴い平行に延在する許容特性曲線3も生じており、この特性曲線3はロールスタビライザのまだ許容可能な特性を示している。設定された捻り角度Φ
iに関し最大捻り角度Φ
maxまでもたらされる回転モーメントMが、通常のモーメントM
nと許容モーメントM
tとの間に存在する場合には、ロールスタビライザの支障のない動作が確定される。この場合摩擦等に基づいて基準モーメントMが回転駆動部によってもたらされる。小さな捻り角度のもとで、ロールスタビライザの過負荷が誤って確定されることを避けるために、過負荷を識別するための当該方法は、基準モーメントM
gを越えた消費に必要とされる回転モーメントMが有意となる捻り角度Φ、例えば捻り角度Φ
iを上回る捻り角度Φのもとで初めて開始される。最大捻り角度Φ
maxまでもたらされる回転モーメントMが、ここでは閾値M
sとして設けられている許容特性曲線3を下回ると、ロールスタビライザの過負荷、例えば塑性変形や破断が確定され、自動車による危険な状況から乗員を保護するために、例えば自動車が停止され、最大走行速度が定められ(リンプホームモード)、または他の手段が講じられる。
【0019】
代替的若しくは付加的に、捻り角度Φが最大捻り角度Φ
maxよりも大きく設定できる場合にも、過負荷が確定されてもよい。なぜならそのような捻り角度は、ロールスタビライザの仕様を外れているからであり、したがって、ロールスタビライザの構成部材の塑性変形若しくは破断が存在するはずである。
【符号の説明】
【0020】
1 線図
2 捻り角度特性曲線
3 許容特性曲線
M 回転モーメント
M
g 基準モーメント
M
n 通常モーメント
M
s 閾値
M
t 許容モーメント
Φ 捻り角度
Φ
extern 外部捻り角度
Φ
intern 内部捻り角度
Φ
max 最大捻り角度
Φ
i 捻り角度