特許第6598775号(P6598775)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6598775遊星転動型ねじ山付スピンドル(PWG)を備えるアクチュエータ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6598775
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】遊星転動型ねじ山付スピンドル(PWG)を備えるアクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   F16H 25/20 20060101AFI20191021BHJP
   F16H 25/24 20060101ALI20191021BHJP
【FI】
   F16H25/20 D
   F16H25/20 B
   F16H25/24 B
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-536940(P2016-536940)
(86)(22)【出願日】2014年11月28日
(65)【公表番号】特表2017-503124(P2017-503124A)
(43)【公表日】2017年1月26日
(86)【国際出願番号】DE2014200667
(87)【国際公開番号】WO2015081951
(87)【国際公開日】20150611
【審査請求日】2017年11月24日
(31)【優先権主張番号】102013225120.3
(32)【優先日】2013年12月6日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515009952
【氏名又は名称】シェフラー テクノロジーズ アー・ゲー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies AG & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ラース シューマン
(72)【発明者】
【氏名】ラシュロ マン
(72)【発明者】
【氏名】ペーター グレープ
【審査官】 岡本 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−509541(JP,A)
【文献】 特開2007−285480(JP,A)
【文献】 特開平10−196756(JP,A)
【文献】 国際公開第2003/016743(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 25/20
F16H 25/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に車両のクラッチを作動させるための遊星転動型ねじ山付スピンドル(PWG)を備えるアクチュエータであって、
所定のピッチを有する中央のスピンドル(2)が、駆動装置のロータと回動不能に結合されていて、該駆動装置によって回動軸線(L)を中心に駆動可能であり、
複数の遊星ロール(3)が、前記スピンドル(2)と係合していて、前記遊星ロール(3)を包囲しかつ周方向で溝を有する内歯車(4)と噛み合い、前記遊星ロール(3)は、両方の端部で、遊星ロール支持体(5)内に位置決めされている、アクチュエータにおいて、
前記遊星ロール支持体(5)は、両方の端部で回動不能に支持されており、軸方向に作動可能なプランジャ(1)と作用結合された、前記PWGを用いて軸方向可動にされた構成要素の、軸方向ストロークに対する前記スピンドル(2)のピッチの変化が回避されており、
前記遊星ロール支持体(5)は、前記内歯車(4)を包囲するとともに両方の端部が半径方向内向きの第1のスリーブ(A)内に回動不能に支持されており、
前記第1のスリーブ(A)は、直接にまたは第2のスリーブ(B)を介して、回動不能にかつ軸方向摺動可能にフレーム固定のハウジング(8)に収容されており、
前記ハウジング(8)は、少なくとも1つのばねまたはばねユニット(12)に向けて予圧が掛けられていることを特徴とする、アクチュエータ。
【請求項2】
前記内歯車(4)は、前記遊星ロール(3)の軸方向力を、前記第1のスリーブ(A)に伝達し、該第1のスリーブ(A)は、該第1のスリーブ(A)に対して回動不能な、前記プランジャ(1)と結合された前記第2のスリーブ(B)に衝突する、請求項1記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記ハウジング(8)は、前記駆動装置を収容するモータブロックに回動不能に取り付けられており、
前記ばねユニット(12)が密着状態に圧縮されて、前記ばねユニット(12)の特性曲線を介して、前記PWGひいては前記プランジャ(1)のゼロ位置/軸方向の基準点が特定可能であるまで、前記第1のスリーブ(A)は、前記プランジャ(1)の押出し移動とは逆向きに、前記ばねユニット(12)へ向けて移動可能である、請求項1または2記載のアクチュエータ。
【請求項4】
前記遊星ロール支持体(5)と回動不能にかつ軸方向不動に結合された前記第1のスリーブ(A)は、軸方向力と軸方向ストロークの態様の移動とを、前記第2のスリーブ(B)を介して前記プランジャ(1)へ伝達し、基準方向では、ばね/ばねユニットを押圧する、請求項1から3までのいずれか1項記載のアクチュエータ。
【請求項5】
軸方向に所定の基準点を実現する前記ばねユニット(12)と組み合わせて、前記遊星ロール支持体の相対回動不能性により、位置特定が、駆動電動モータ(E)または前記スピンドル(2)の回動角度発信器を用いて実現可能である、請求項1から4までのいずれか1項記載のアクチュエータ。
【請求項6】
前記クラッチの位置は、該クラッチの特性曲線を介して、妥当性チェックにより特定可能である、請求項1から5までのいずれか1項記載のアクチュエータ。
【請求項7】
前記スピンドル(2)は、≠0のピッチを有し、駆動電動モータ(E)のロータと相対回動不能に結合された、角度センサ/位置センサに対する角度発信器と組み合わせられている、請求項1から6までのいずれか1項記載のアクチュエータ。
【請求項8】
前記第1のスリーブ(A)は、2つの部分から構成されており、
前記第1のスリーブ(A)の両方の部分は、該両方の部分を包囲するクランプ(7)を介して相互に結合されており、
前記第2のスリーブ(B)は、前記第1のスリーブ(A)と軸方向不動にかつ回動不能に結合されており、
前記第2のスリーブ(B)は、外径で、前記ハウジング(8)の内側輪郭における縦歯列と係合する縦歯列を有し、前記第2のスリーブ(B)は、回動不能にかつ軸方向摺動可能に前記ハウジング(8)に収容されている、請求項1から7までのいずれか1項記載のアクチュエータ。
【請求項9】
前記第2のスリーブ(B)は、前記プランジャ(1)と回動不能に結合されている、請求項1から8までのいずれか1項記載のアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載の遊星転動型ねじ山付スピンドル(PWG)を備えるアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
遊星転動型ねじ山付スピンドル(PWG)(遊星転動ねじ山付スピンドル駆動装置とも称される)は、長年来、先行技術となっていて、たとえば旧東ドイツ国経済特許第0277308号明細書に記載されている。文献としての独国特許出願公開第102010047800号明細書において、たとえば遊星転動型ねじ駆動装置が知られている。この遊星転動型ねじ駆動装置は、ハイドロスタティッククラッチアクチュエータの態様のハイドロスタティックアクチュエータに含まれており、これにより、電動モータEによって生成される回動運動が軸方向移動に変換される。ねじ山付スピンドルと、ねじ山付スピンドル上に配置されたナットと、周にわたって分配された、ねじ山付スピンドルとナットとの間に配置された複数の遊星ギヤであって、ナットの内周およびねじ山付スピンドルの外周に転動可能に配置されている遊星ギヤとを備える遊星転動型ねじ駆動装置が、独国特許出願公開第102010011820号明細書から知られている。この構成手段では、遊星ギヤに対する予圧装置が設けられており、ナットは、相互に軸方向に可動の2つのナット部分を有し、予圧装置は、1つのナット部分に対してばね力が掛けられたばね要素を有している。ナットは、2つの機能を担う:一方では、ナットは伝動装置部分であり、他方では、ナットは予圧装置の一部である。
【0003】
さらに、ねじ山付スピンドル上に配置されたスピンドルナットと、ねじ山付スピンドルおよびスピンドルナットと転動係合する、周にわたって分配して配置された複数の遊星ギヤとを備えるPWGのスリップ検出のための絶対位置測定を行うことが知られている(独国特許出願公開第102011088995号明細書参照)。スピンドルナットに対して軸方向摺動不能に配置されたセンサ素子が、ねじ山付スピンドルとスピンドルナットとの相互の軸方向の変位を検出する。スピンドルナットは、センサ要素を有するハウジングに、スピンドル軸回りに回動可能に支持されている。
【0004】
まだ公開されていない出願にも、自動車のクラッチ用のレリーズシステムが記載されている。このレリーズシステムでは、駆動装置を使用して、PWGを介して、ハウジング内に軸方向摺動可能に支持されたプランジャが作動させられ、センサ装置によって、プランジャの位置を検出可能である。
【0005】
しかし、公知のシステムは、割合煩雑である。というのも、予圧を実現しなければならず、また、PWGシステムの、スリップに起因するピッチ変化のため、正確な位置決めのために距離センサが必要となるからである。
【0006】
内歯車ナットおよび遊星ロールにおけるピッチがゼロである枠条件について、以下の極端なケースが生じる。
ケース1:スピンドルと遊星ロールとの間の拘束状態では、スピンドルの回動時に、スピンドルに対して相対的な送り/軸方向移動が行われない。このため、遊星ロールと内歯車ナットとの間の100%スリップが記録され、作用効率はゼロである。
ケース2:遊星ロールと内歯車ナットとの間の拘束状態では、遊星ロールとスピンドルとの間の100%のスリップで1:1のスピンドルピッチが実施される。このため、作用効率は極めて小さい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、遊星転動型ねじ駆動装置を備えるアクチュエータを改良して、スリップに起因するピッチ変化を回避し、良好な効率を保証し、かつ簡単な構造を有するアクチュエータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、請求項1の特徴部に記載の構成によって解決される。
【0009】
好適な態様は、従属請求項において明らかである。
【0010】
アクチュエータは、遊星転動型ねじ山付スピンドルを備え、特に車両のクラッチを作動させるために使用される。所定のピッチを有する中央のスピンドルが、駆動装置のロータと回動不能に結合されていて、駆動装置によって回動軸線を中心に駆動可能である。複数の遊星ロールが、スピンドルと係合していて、遊星ロールを包囲しかつ周方向で溝を有する内歯車と噛み合う。遊星ロールは、両方の端部で、遊星ロール支持体内に位置決めされている。本発明によれば、遊星ロール支持体は、両方の端部で回動不能に支持されており、軸方向に作動可能なプランジャと作用結合された、PWGを用いて軸方向可動にされた構成要素の、軸方向ストロークに対するスピンドルのピッチの対応付けが固定される。
【0011】
これにより初めて、スピンドルのピッチを介して軸方向のストロークを特定することが可能であり、そのために煩雑なセンサ装置が用いられることはない。
【0012】
回動不能に支持された遊星ロール支持体と、これに結合された、スリップに依存しないシステムピッチと、を有するPWGを初めて使用することにより、アクチュエータにおいて、距離センサ(背景技術によれば距離センサはスリップに基づいて必要である)と、これに属する、電子装置における構成要素とを省略することができる。というのも、スリップが、PWGの軸方向可動の構成要素の軸方向移動に作用しないからである。
【0013】
好適には、本発明による構成は、基準設定の手段と組み合わされ、これにより、アクチュエータの軸方向可動の要素の軸方向の基準位置/ゼロ位置が特定可能である。
【0014】
遊星ロール支持体は、好適には、内歯車を包囲しかつ両方の端部が半径方向内向きの第1のスリーブ内に回動不能に支持されており、第1のスリーブは、直接にまたは第2のスリーブもしくは別の中間要素を介して、回動不能にかつ軸方向摺動可能にフレーム固定のハウジングに収容されている。内歯車は、遊星ロールの軸方向力を、第1のスリーブに伝達し、第1のスリーブは、第1のスリーブに対して回動不能な、プランジャと結合された第2のスリーブに衝突し、プランジャは、たとえばクラッチを作動させる。
【0015】
ハウジングは、駆動装置(好適には電動モータ)を収容するモータブロックに回動不能に取り付けられていて、少なくとも1つのばねまたはばねユニットに対して予圧を掛けられており、ばねユニットが密着状態に圧縮されるまで、第1のスリーブは、プランジャの押出し移動とは逆向きに、ばねユニットへ向けて移動可能である。これにより、ばねユニットの特性曲線を介して、PWGひいてはプランジャのゼロ位置または軸方向の基準点が特定可能である。
【0016】
遊星ロール支持体と回動不能にかつ軸方向不動に結合された第1のスリーブは、軸方向力と軸方向ストロークの態様の移動とを、直接にまたは第2のスリーブ(もしくは同等の中間要素)を介してプランジャへ伝達し、これにより、プランジャは、押出し移動を行う。基準方向で、第1のスリーブは、軸方向の基準点/ゼロ位置を特定するためにばね/ばねユニットを押圧する。
【0017】
基準点/ゼロ位置が明らかになった後で、スピンドルのピッチを介して、第1のスリーブひいては第1のスリーブと結合された別の軸方向可動の構成要素(第2のスリーブ/プランジャ)の軸方向位置が特定可能である。というのも、これらは遊星ロール支持体とともにハウジングに対して回動不能に固定されているからである。
【0018】
軸方向に所定の基準点を実現するばねユニットと組み合わせて、遊星ロール支持体の相対回動不能性により、位置特定が、電動モータまたはスピンドルの回動角度発信器を用いて実現可能である。さらに、軸方向の位置特定は、モータ特性曲線またはモータ電流の特性曲線を可介して可能である。というのも、これらの特性曲線は、ばね/ばねユニットの特性曲線(力/距離/推移)に対応するからである。
【0019】
さらに、クラッチの位置は、クラッチの特性曲線を介して、妥当性チェックにより特定可能である。
【0020】
スピンドルは、≠0のピッチを有し、好適には、駆動電動モータのロータと相対回動不能に結合された、角度センサ/位置センサに対する角度発信器とのみ組み合わせされている。
【0021】
第1のスリーブは、好適には、2つの部分から構成されていて、たとえば、両方の部分を包囲するクランプを介して相互に軸方向不動にかつ回動不能に結合されている。
【0022】
第2のスリーブは、外径で、ハウジングの内側輪郭における縦歯列と係合する縦歯列を有し、第2のスリーブは、回動不能にかつ軸方向摺動可能にハウジングに収容されている。さらに、第2のスリーブは、プランジャと結合されているので、軸方向移動がプランジャに伝達され、これによりクラッチが作動させられる。
【0023】
本発明による構成手段により、スリップに起因するピッチ変化が回避される(スリップの回避ではない)、良好な効率が維持される。したがって、距離センサを省略することができ、高まる機能確実性要求に基づいて適切な位置に移動しなければならないアクチュエータにおける電子装置を簡略化することができる。位置決めのために、統合された回転発信器が1つのみ使用され、その信号は、妥当な基準設定のみを介して、特性曲線に対して調整される。
【0024】
以下、1つの実施の形態および付属の図面に基づいて本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】アクチュエータの縦断面図である。
図2】プランジャの押出し方向に力伝達経路Fが記入された、アクチュエータの縦断面斜視図である。
図3】第1のスリーブおよび第2のスリーブとともにPWGを示す縦断面図である。
図4図2および図3に示されたPWGの斜視図であるが、第2のスリーブを省いて示す図である。
図5】単品で示されたハウジングの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1には、アクチュエータが縦断面図で示されている。アクチュエータは、遊星転動型ねじ山付スピンドル(PWG)を備える。遊星転動型ねじ山付スピンドルによって、電動モータEにより生成される回動運動が軸方向のストローク移動に変換され、ストローク移動により、プランジャ1が押出し可能であり、これにより、図示されていないクラッチが作動可能である。遊星転動型ねじ山付スピンドルPWG(図2及び図3も参照)の1つの態様としてのこの伝動装置は、所定のピッチを持つ雄ねじ山2.1を有するスピンドル2を備える。スピンドル2は、駆動装置(ここでは電動モータE)の図示されていないロータと回動不能に結合されていて、駆動装置によって回動軸線Lを中心に駆動可能である。スピンドル2と複数の遊星ロール3とが係合しており、遊星ロール3は、遊星ロール3を包囲する、周方向に溝を有する内歯車4と噛み合う。好適には、3つまたは3の倍数の遊星ロール3が、スピンドル2を中心とする周方向に位置決めされている。遊星ロール3は、両方の端部で、それぞれ1つの遊星ロール支持体5に回動可能に保持され、両方の遊星ロール支持体5は、回動不能に支持されている。
【0027】
そのために、各遊星ロール支持体5は、第1のスリーブAの、端部側で半径方向内向きの領域A1に保持されている。第1のスリーブAは、2つの半部に分割されている。これらの半部は、半径方向外向きの鍔部6を備え、鍔部6で、クランプ7(好適には金属薄板から成る)を介して相互に回動不能にかつ軸方向不動に相互に結合されている。第1のスリーブAは、第2のスリーブB内に回動不能にかつ軸方向不動に嵌め込まれており、第2のスリーブBは、同様に回動不能に、ただし軸方向摺動可能にハウジング8内に収容されていて、ハウジング8に対してシールされている。第2のスリーブBは、外径部に、外側歯列B1を有し(図2参照)、外側歯列B1は、ハウジング8の内側歯列8.1(図5も参照)に対応する。ハウジング8は、半径方向外向きのフランジ領域8.2を介して、電動モータEのモータハウジング9にフレーム固定に取り付けられている。
【0028】
したがって、ハウジング8を介して、第2のスリーブB、第1のスリーブAおよび遊星ロール支持体5は、相対回動不能に配置されている。
【0029】
内歯車4は、内部のPWG−力後続伝達を保証する、PWGの2つのスラスト軸受10を介して、軸方向力を、遊星ロール3から、形状結合(図示されていない周方向に延在する溝)を用いて、スリーブAへ伝達する。
【0030】
第1のスリーブAは、軸方向力および軸方向ストロークを、第2のスリーブBを介して、作動すべき要素(ここではプランジャ1)に後続伝達する。プランジャ1は、図1によれば、保持部11を介して、ハウジング8の中央開口8.3を通して第2のスリーブBの外向きの端部に取り付けられている。
【0031】
図1から判るように、ハウジング8は、半径方向外向きのフランジ領域8.2でもって、ここでは皿ばねユニット12の形態のばねユニット12を、モータハウジング9に緊締する。第1のスリーブAは、クランプ7によって包囲された半径方向外向きの鍔部6でもって、プランジャ1の押出し移動とは逆向きに方向付けされた基準設定方向に、ばねユニット12を押圧する。ばねユニット12は、ハウジング8によって緊締されており、これにより、妥当な基準設定が保証される。
【0032】
スピンドル2は、≠0のピッチを有し、図示されていない所定の角度に対する角度発信器および/または位置センサを有する。角度発信器および/または位置センサは、駆動電動モータEのロータと相対回動不能に結合されている。
【0033】
軸受ユニット13は、好適には4点接触軸受として、ここではスラスト軸受とラジアル軸受との組み合わせとして構成されており、これにより、ハウジング8に対するスピンドル2の軸方向力および回転が吸収される。
【0034】
モータハウジング9は、ステータ9.1と、図示されていない所要な電子装置と、外部へのインタフェース(コネクタ14、コンデンサ15など)とを有する。さらに、モータハウジング9とハウジング8がフレーム固定に連結されており、ハウジング8内で、縦溝の態様の内側歯列8.1を介して、遊星ロール支持体5の回動支持が、間接的に第1のスリーブAと第2のスリーブBとを介して実現される。
【0035】
回動不能に支持された遊星ロール支持体5と、これに伴う、基準設定の手段と組み合わされた、スリップに依存しないシステムピッチとを有するPWGの使用によって、本発明に係るアクチュエータでは、距離センサ(背景技術によれば、この距離センサはスリップに基づいて必要である)と、これに属する、電子装置における構成要素とを省略することができる。
【0036】
図2および図3には、再度明確にするために、既に図1で主に記載された、遊星転動型ねじ山付スピンドルPWGの態様のアクチュエータの伝動装置が示されている。
【0037】
図2には、スピンドル2を介して第2のスリーブB(第2のスリーブBによって、図示されていないプランジャ1が作動させられる)へ向かう力伝達経路Fが、矢印で示されている。図2および図3から、第2のスリーブBに設けられた、縦溝の態様の外側歯列B1が看取される。第2のスリーブBは、外側歯列B1を有する領域でもって、第1のスリーブAの半分のみにわたって延在しており、外側歯列B1に続いて、半径方向内向き段部B2を有し、段部B2に、第1のスリーブAが内側で軸方向に衝突する。半径方向内側で、段部B2に、管状の領域B3が続いており、管状の領域B3は、スピンドル2を包囲し、管状の領域B3にプランジャ1(図1参照)が取り付けられている。
【0038】
図4には、図2および図3に示されたPWGの斜視図であるが、第1のスリーブAのみがともに示されており、第2のスリーブBは省略されている。半径方向内向きの領域A1で、第1のスリーブAは、切欠きA2を有し、切欠きA2に、遊星ロール支持体5が形状結合式に係合するので、遊星ロール支持体5は、第1のスリーブAに対して回動不能である。第1のスリーブAの両方の半部とクランプ7とは、内外に係合する形状要素16を介して相互に回動不能にかつ軸方向不動に固定されている。
【0039】
図5において、単品で示されたハウジング8が看取される。ハウジング8は、縦歯列または縦溝の態様の内側歯列8.1を有し、これにより、第2のスリーブBを、外側歯列B1でもって、回動不能にかつ軸方向摺動可能に収容する。ハウジング8は、フランジ領域8.2でもって、モータハウジング9(ここでは図示されていない)に取り付けられ、そのためにねじ穴8.4を有している。
【0040】
本発明において、初めて、遊星ロール支持体が回動不能に支持される。スピンドル2は、ロータと相対回動不能に結合され、内歯車4は、遊星ロール3の軸方向力を、第1のスリーブAに伝達する。第1のスリーブAは、2つの部分から、好適には金属薄板から構成されている。第1のスリーブAは、第2のスリーブBに衝突し、第2のスリーブBは、プランジャ1のストローク移動を可能にする。スリーブAは、スリーブBに対して回動不能であり、遊星ロール支持体5は、相対回動不能にスリーブAに支持されている。軸方向で基準点を実現するばねユニット12と組み合わせて、この相対回動不能性により、位置測定を、簡単に、電動モータEまたはスピンドル2の回動角度発信器によって行うことができる。好適な実施の態様では、クラッチの特性曲線を介して妥当性チェックが行われ、これにより、位置が正しく特定される。
【0041】
良好な効率を維持しつつ、スリップに起因するピッチ変化の回避(スリップの回避ではない)を実現することができる。さらに、基準設定の簡単な手段が提供される。これにより、距離センサを省略することができ、高まる機能確実性要求に基づいて適切な位置に移動しなければならないアクチュエータにおける電子装置を省略することができる。位置決めのために、統合された回転発信器が1つのみ使用され、その信号は、妥当な基準設定のみを介して、特性曲線に対して調整される。
【符号の説明】
【0042】
1 プランジャ
2 スピンドル
2.1 雄ねじ山
3 遊星ロール
4 内歯車
5 遊星ロール支持体
6 鍔部
7 クランプ
8 ハウジング
8.1 内側歯列
8.2 フランジ領域
8.3 開口
8.4 ねじ穴
9 モータハウジング
9.1 ステータ
10 スラスト軸受
11 保持部
12 ばねユニット
13 軸受ユニット
14 コネクタ
15 電子装置(コンデンサ)
16 形状要素
A 第1のスリーブ
A1 半径方向内向きの領域
B 第2のスリーブ
B1 外側歯列
B2 段部
B3 管状の領域
E 電動モータ
F 力伝達経路
L 回動軸線
PWG 遊星転動型ねじ山付スピンドル
図1
図2
図3
図4
図5