特許第6598794号(P6598794)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6598794ジアリルアミド架橋助剤を有する架橋性ポリマー組成物、それを作製するための方法、及びそれから作製された物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6598794
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】ジアリルアミド架橋助剤を有する架橋性ポリマー組成物、それを作製するための方法、及びそれから作製された物品
(51)【国際特許分類】
   H01B 3/44 20060101AFI20191021BHJP
   C08L 23/04 20060101ALI20191021BHJP
   C08K 5/14 20060101ALI20191021BHJP
   C08K 5/20 20060101ALI20191021BHJP
【FI】
   H01B3/44 F
   H01B3/44 D
   C08L23/04
   C08K5/14
   C08K5/20
【請求項の数】8
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-558185(P2016-558185)
(86)(22)【出願日】2015年3月20日
(65)【公表番号】特表2017-511406(P2017-511406A)
(43)【公表日】2017年4月20日
(86)【国際出願番号】CN2015074713
(87)【国際公開番号】WO2015149633
(87)【国際公開日】20151008
【審査請求日】2018年3月8日
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2014/074383
(32)【優先日】2014年3月31日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128484
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 司
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ユ・カイ
(72)【発明者】
【氏名】ホン・リアン・ジャン
(72)【発明者】
【氏名】ヤビン・サン
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー・エム・コーゲン
(72)【発明者】
【氏名】サウレヴ・エス・セングプタ
【審査官】 安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−193724(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 3/44
C08L 23/04
C08K 5/14
C08K 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝導性コアと、前記伝導性コアを少なくとも部分的に囲むポリマー層とを備える被覆導体であって、
前記ポリマー層の少なくとも一部は下記(a)〜(c)を含む架橋性ポリマー組成物から調製される架橋物品を含む、被覆導体。
(a)エチレン系ポリマー
(b)有機過酸化物
(c)少なくとも1つのN,N−ジアリルアミド官能基を有する架橋助剤
【請求項2】
前記架橋助剤は、式(I)の構造を有し、
【化1】
式中、Rは、(a)1〜20個の炭素原子を有するアルキル基またはアルケニル基、(b)1つ以上のさらなるN,N−ジアリルアミド官能基によって任意に置換された芳香族基を含有する置換基、(c)1つ以上のさらなるN,N−ジアリルアミド官能基を有する脂肪族基、及び(d)それらの2つ以上の組み合わせから成る群から選択される、
請求項1に記載の被覆導体
【請求項3】
Rは、(a)末端炭素−炭素二重結合及び5〜15個の炭素原子を有するアルケニル基、(b)1つ以上のさらなるN,N−ジアリルアミド官能基によって置換された芳香族基、(c)末端N,N−ジアリルアミド官能基を有するアルキル基、ならびに(d)それらの2つ以上の組み合わせから成る群から選択される、
請求項1または2に記載の被覆導体
【請求項4】
前記架橋助剤は、式(II)〜(IV)から成る群から選択される構造を有する、請求項1に記載の被覆導体
【化2】
【請求項5】
前記架橋助剤及び前記有機過酸化物は、1:1を超える助剤対過酸化物の重量比で存在する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の被覆導体
【請求項6】
前記エチレン系ポリマーは、高圧法低密度ポリエチレンを含み、前記有機過酸化物は、ジクミル過酸化物を含み、前記架橋性ポリマー組成物は、抗酸化剤をさらに含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の被覆導体
【請求項7】
前記エチレン系ポリマーは、前記架橋性ポリマー組成物の全重量に基づいて、50〜99重量%の範囲の量で存在し、前記有機過酸化物は、前記架橋性ポリマー組成物の全重量に基づいて、1.0重量%未満の量で存在し、前記架橋助剤は、前記架橋性ポリマー組成物の全重量に基づいて、0.1〜3重量%の範囲の量で存在する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の被覆導体
【請求項8】
前記架橋性ポリマー組成物は、23℃及び1気圧で4週間保存されるとき、前記架橋性ポリマー組成物の総重量に基づいて、1,000百万分率未満の前記架橋性ポリマー組成物の表面への架橋助剤の移動を呈する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の被覆導体
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願の参照
本出願は、2014年3月31日に出願された国際出願第PCT/CN14/074383号の利益を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本発明の種々の実施形態は、少なくとも1つのN,N−ジアリルアミド官能基を有する架橋助剤を含む架橋性ポリマー組成物、それを作製する方法、及びそれから作製された物品に関する。
【0003】
中電圧、高電圧、及び超高電圧(「MV」、「HV」、及び「EHV」)ケーブルは、典型的には、架橋ポリエチレン等の架橋ポリマー材料を絶縁層として含有する。そのような架橋ポリマー材料は、過酸化物開始剤を有する架橋性ポリマー組成物から調製され得る。過酸化物とポリエチレンとの間のラジカル反応は、ポリエチレンを架橋した後に真空によって除去されなければならない望ましくない副産物を生成する。架橋性ポリマー組成物の分野において進歩が遂げられているが、改善が依然として望まれている。
【発明の概要】
【0004】
一実施形態は、
(a)エチレン系ポリマーと、
(b)有機過酸化物と、
(c)少なくとも1つのN,N−ジアリルアミド官能基を有する架橋助剤と、を含む、架橋性ポリマー組成物である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本発明の種々の実施形態は、エチレン系ポリマー、有機過酸化物、及び少なくとも1つのN,N−ジアリルアミド官能基を有する架橋助剤(「ジアリルアミド架橋助剤」)を含む架橋性ポリマー組成物に関する。さらなる実施形態は、そのような架橋性ポリマー組成物から調製される架橋ポリマー組成物に関する。さらなる実施形態は、被覆導体及び架橋性ポリマー組成物を使用して被覆導体を生産するためのプロセスに関する。
【0006】
架橋性ポリマー組成物
上述のように、本明細書に記載される架橋性ポリマー組成物の1つの成分は、エチレン系ポリマーである。本明細書で使用されるとき、「エチレン系」ポリマーは、一次(すなわち、50重量パーセント(「重量%」)を超える)モノマー成分としてエチレンモノマーから調製されるポリマーであるが、他のコモノマーも用いられ得る。「ポリマー」は、同一のまたは異なる種類のモノマーを反応させること(すなわち、重合すること)によって調製される高分子化合物を意味し、ホモポリマー及びインターポリマーを含む。「インターポリマー」は、少なくとも2つの異なる種類のモノマーの重合によって調製されるポリマーを意味する。この一般名称は、コポリマー(通常、2つの異なる種類のモノマーから調製されるポリマーを指すために用いられる)、及び2つを超える異なる種類のモノマーから調製されるポリマー(例えば、ターポリマー(3つの異なる種類のモノマー)及びクオーターポリマー(4つの異なる種類のモノマー))を含む。
【0007】
種々の実施形態において、エチレン系ポリマーは、エチレンホモポリマーであり得る。本明細書で使用されるとき、「ホモポリマー」は、単一の種類のモノマー由来の繰り返し単位から成るポリマーを示すが、連鎖移動剤等のホモポリマーを調製する際に使用される他の成分の残存量を除外しない。
【0008】
一実施形態において、エチレン系ポリマーは、インターポリマーの全重量に基づいて、少なくとも1重量%、少なくとも5重量%、少なくとも10重量%、少なくとも15重量%、少なくとも20重量%、または少なくとも25重量%のα−オレフィン含有量を有するエチレン/アルファ−オレフィン(「α−オレフィン」)インターポリマーであり得る。これらのインターポリマーは、インターポリマーの全重量に基づいて、50重量%未満、45重量%未満、40重量%未満、または35重量%未満のα−オレフィン含有量を有し得る。α−オレフィンが用いられるとき、α−オレフィンは、C3−20(すなわち、3〜20個の炭素原子を有する)直鎖、分岐、または環状のα−オレフィンであり得る。C3−20α−オレフィンの例としては、プロペン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、及び1−オクタデセンが挙げられる。α−オレフィンは、シクロヘキサンまたはシクロペンタン等の環状構造も有し得、その結果、3−シクロヘキシル−1−プロペン(アリルシクロヘキサン)及びビニルシクロヘキサン等のα−オレフィンが得られる。例示的なエチレン/α−オレフィンインターポリマーとしては、エチレン/プロピレン、エチレン/1−ブテン、エチレン/1−ヘキセン、エチレン/1−オクテン、エチレン/プロピレン/1−オクテン、エチレン/プロピレン/1−ブテン、及びエチレン/1−ブテン/1−オクテンが挙げられる。
【0009】
種々の実施形態において、エチレン系ポリマーは、単独で、または1つ以上の他の種類のエチレン系ポリマー(例えば、モノマー組成及び含有量、触媒の調製法等が互いに異なる2つ以上のエチレン系ポリマーのブレンド)と組み合わせて使用され得る。エチレン系ポリマーのブレンドが用いられる場合、ポリマーは、任意の反応器内または反応器後プロセスによってブレンドされ得る。
【0010】
種々の実施形態において、エチレン系ポリマーは、低密度ポリエチレン(「LDPE」)、直鎖状低密度ポリエチレン(「LLDPE」)、超低密度ポリエチレン(「VLDPE」)、及びそれらのうちの2つ以上の組み合わせから成る群から選択され得る。
【0011】
一実施形態において、エチレン系ポリマーは、LDPEであり得る。LDPEは、概して、高分岐エチレンホモポリマーであり得、高圧プロセスによって調製され得る(すなわち、HP−LDPE)。本明細書での使用に好適なLDPEは、0.91〜0.94g/cmの範囲の密度を有し得る。種々の実施形態において、エチレン系ポリマーは、少なくとも0.915g/cmであるが、0.94g/cm未満または0.93g/cm未満の密度を有する高圧LDPEである。本明細書で提供されるポリマー密度は、ASTM International(「ASTM」)方法D792に従って決定される。本明細書での使用に好適なLDPEは、20g/10分未満、もしくは0.1〜10g/10分、0.5〜5g/10分、1〜3g/10分の範囲のメルトインデックス(I)、または2g/10分のIを有し得る。本明細書で提供されるメルトインデックスは、ASTM方法D1238に従って決定される。別途示されない限り、メルトインデックスは、190℃及び2.16Kg(すなわち、I)で決定される。概して、LDPEは、広い分子量分布(「MWD」)を有し、比較的高い多分散インデックス(重量平均分子量と数平均分子量の比「PDI」)をもたらす。
【0012】
一実施形態において、エチレン系ポリマーは、LLDPEであり得る。LLDPEは、概して、コモノマー(例えば、α−オレフィンモノマー)の不均一な分布を有するエチレン系ポリマーであり、短鎖分岐を特徴とする。例えば、LLDPEは、上記のもの等のエチレンとα−オレフィンモノマーとのコポリマーであり得る。本明細書での使用に好適なLLDPEは、0.916〜0.925g/cmの範囲の密度を有し得る。本明細書での使用に好適なLLDPEは、1〜20g/10分または3〜8g/10分の範囲のメルトインデックス(I)を有し得る。
【0013】
一実施形態において、エチレン系ポリマーは、VLDPEであり得る。VLDPEは、当技術分野において、超低密度ポリエチレンまたはULDPEとしても既知であり得る。VLDPEは、概して、コモノマー(例えば、α−オレフィンモノマー)の不均一な分布を有するエチレン系ポリマーであり、短鎖分岐を特徴とする。例えば、VLDPEは、エチレンと上記のそれらのα−オレフィンモノマーのうちの1つ以上等のα−オレフィンモノマーとのコポリマーであり得る。本明細書での使用に好適なVLDPEは、0.87〜0.915g/cmの範囲の密度を有し得る。本明細書での使用に好適なVLDPEは、0.1〜20g/10分または0.3〜5g/10分の範囲のメルトインデックス(I)を有し得る。
【0014】
上述に加えて、エチレン系ポリマーは、アクリル酸または酢酸ビニル等の1つ以上の極性コモノマーを含有し得る。さらに、上記のもの等の非極性エチレン系ポリマーと極性コポリマー(例えば、1つ以上の種類の極性コモノマーを含有するそれらのコポリマー)のブレンドも用いられ得る。さらに、The Dow Chemical Companyから商品名ENGAGE(商標)で市販されているもの等のポリオレフィンエラストマーは、エチレン系ポリマーとして、または上記のエチレン系ポリマーのうちの1つ以上と組み合わせて使用され得る。
【0015】
一実施形態において、エチレン系ポリマーは、上記のエチレン系ポリマーのうちのいずれか2つ以上の組み合わせを含み得る。
【0016】
エチレン系ポリマーを調製するために使用される生産プロセスは、広範囲であり、多様であり、当技術分野において既知である。上記の特性を有するエチレン系ポリマーを生産するための任意の従来のまたは今後発見される生産プロセスが、本明細書に記載されるエチレン系ポリマーを調製するために用いられ得る。概して、重合は、Ziegler−NattaまたはKaminsky−Sinn型重合反応について当技術分野において既知の条件で、すなわち、0〜250℃、または30もしくは200℃の温度及び大気圧〜10,000気圧(1,013メガパスカル(「MPa」))の圧力で達成され得る。多くの重合反応において、用いられる重合可能な化合物に対する触媒のモル比は、10−12:1〜10−1:1または10−9:1〜10−5:1である。
【0017】
本明細書での使用に好適な好ましいエチレン系ポリマーの例は、高圧プロセスで生産され、0.92g/cmの密度及び2g/10分のメルトインデックス(I)を有する低密度ポリエチレンである。
【0018】
上述のように、上記のエチレン系ポリマーは、有機過酸化物と組み合わせられる。本明細書で使用されるとき、「有機過酸化物」は、構造R−O−O−RまたはR−O−O−R−O−O−Rを有する過酸化物を示し、R及びRのそれぞれは、ヒドロカルビル部分であり、Rは、ヒドロカルビレン部分である。本明細書で使用されるとき、「ヒドロカルビル」は、1つ以上のヘテロ原子を任意に有する炭化水素(例えば、エチル、フェニル)から1個の水素原子を除去することによって形成される一価基を示す。本明細書で使用されるとき、「ヒドロカルビレン」は、1つ以上のヘテロ原子を任意に有する炭化水素から2個の水素原子を除去することによって形成される二価基を示す。有機過酸化物は、同一のまたは異なるアルキル、アリール、アルカリール、またはアラルキル部分を有する、任意のジアルキル、ジアリール、ジアルカリール、またはジアラルキル過酸化物であり得る。一実施形態において、R及びRのそれぞれは独立して、C〜C20またはC〜C12アルキル、アリール、アルカリール、またはアラルキル部分である。一実施形態において、Rは、C〜C20またはC〜C12アルキレン、アリーレン、アルカリーレン、またはアラルキレン部分であり得る。種々の実施形態において、R、R、及びRは、同一のまたは異なる数の炭素原子及び構造を有し得るか、またはR、R、及びRのうちのいずれか2つが同一の数の炭素原子を有し得る一方で、3つ目は、異なる数の炭素原子及び構造を有する。
【0019】
本明細書での使用に好適な有機過酸化物としては、単官能性過酸化物及び二官能性過酸化物が挙げられる。本明細書で使用されるとき、「単官能性過酸化物」は、一対の共有結合した酸素原子(例えば、構造R−O−O−Rを有する)を有する過酸化物を示す。本明細書で使用されるとき、「二官能性過酸化物」は、二対の共有結合した酸素原子(例えば、構造R−O−O−R−O−O−Rを有する)を有する過酸化物を示す。一実施形態において、有機過酸化物は、単官能性過酸化物である。
【0020】
例示的な有機過酸化物としては、ジクミル過酸化物(「DCP」)、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−tert−アミル過酸化物(「DTAP」)、ビス(アルファ−t−ブチル−パーオキシイソプロピル)ベンゼン(「BIPB」)、イソプロピルクミルt−ブチル過酸化物、t−ブチルクミル過酸化物、ジ−t−ブチル過酸化物、2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン、2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)−2,5−ジメチルヘキシン−3、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、イソプロピルクミルクミル過酸化物、ブチル4,4−ジ(tert−ブチルパーオキシ)吉草酸、ジ(イソプロピルクミル)過酸化物、及びそれらの2つ以上の混合物が挙げられる。種々の実施形態において、一種類のみの有機過酸化物が用いられる。一実施形態において、有機過酸化物は、ジクミル過酸化物である。
【0021】
上述のように、架橋性ポリマー組成物は、架橋助剤をさらに含む。架橋助剤は、少なくとも1つのN,N−ジアリルアミド官能基を有する。種々の実施形態において、架橋助剤は、式(I)の構造を有してもよく、
【0022】
【化1】
【0023】
式中、Rは、(a)1〜20個の炭素原子を有するアルキル基またはアルケニル基、(b)1つ以上のさらなるN,N−ジアリルアミド官能基によって任意に置換された芳香族基を含有する置換基、(c)1つ以上のさらなるN,N−ジアリルアミド官能基を有する脂肪族基、及び(d)それらの2つ以上の組み合わせから成る群から選択される。当業者に既知のように、「アルキル」基は、飽和直鎖または分岐状脂肪族基であり、「アルケニル」基は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有する直鎖または分岐状脂肪族基である。種々の実施形態において、式(I)のRは、(a)末端炭素−炭素二重結合及び5〜15個または8〜12個の炭素原子を有するアルケニル基、(b)1つ以上のさらなるN,N−ジアリルアミド官能基によって置換された芳香族基(例えば、フェニル)、(c)末端N,N−ジアリルアミド官能基及び5〜15個または8〜12個の炭素原子を有するアルキル基、及び(d)それらの2つ以上の組み合わせから成る群から選択されてもよい。
【0024】
種々の実施形態において、ジアリルアミド架橋助剤は、式(II)〜(IV)の群から選択される構造を有してもよい。
【0025】
【化2】
【0026】
種々の実施形態において、架橋性ポリマー組成物は、1つ以上のさらなる架橋助剤を含み得る。そのような架橋助剤の例としては、ポリアリル架橋助剤、例えば、トリアリルイソシアヌレート(「TAIC」)、トリアリルシアヌレート(「TAC」)、トリアリルトリメリテート(「TATM」)、オルトギ酸トリアリル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、クエン酸トリアリル、及びアコニット酸トリアリル、エトキシ化ビスフェノールAジメタアクリレート、α−メチルスチレンダイマー(「AMSD」)、アクリレート系助剤、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート(「TMPTA」)、トリメチロールプロパントリメチルアクリレート(「TMPTMA」)、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、及びプロポキシル化グリセリルトリアクリレート、ビニル系助剤、例えば、高1,2−ビニル含有量を有するポリブタジエン及びトリビニルシクロヘキサン(「TVCH」)、ならびに米国特許第5,346,961号及び第4,018,852号に記載のような他の助剤が挙げられる。
【0027】
種々の実施形態において、ジアリルアミドは、架橋性ポリマー組成物中に存在する架橋助剤の総重量に基づいて、架橋助剤の総量の少なくとも1重量%、少なくとも10重量%、少なくとも50重量%、少なくとも75重量%、少なくとも90重量%、または少なくとも99重量%を構成し得る。さらなる実施形態において、ジアリルアミドは、架橋性ポリマー組成物中に存在する架橋助剤の総重量に基づいて、架橋助剤の全てまたは実質的に全てを構成し得る。本明細書で使用されるとき、ジアリルアミド架橋助剤に関して「実質的に全て」とは、他の全ての架橋助剤が10重量百万分率(「ppmw」)以下の総量で存在することを意味する。
【0028】
種々の実施形態において、架橋性ポリマー組成物は、架橋性ポリマー組成物の全重量に基づいて、50〜99重量%、80〜99重量%、90〜99重量%、95〜99重量%の範囲の量でエチレン系ポリマーを含み得る。さらに、架橋性ポリマー組成物は、架橋性ポリマー組成物の全重量に基づいて、0.1〜5重量%、0.1〜3重量%、0.4〜2重量%、0.4〜1.7重量%、0.5〜1.4重量%、または0.7〜1.0重量%未満の範囲の量で有機過酸化物を含み得る。種々の実施形態において、有機過酸化物は、架橋性ポリマー組成物の全重量に基づいて、1.0重量%未満の量で、または0.5〜0.85重量%の範囲で存在し得る。その上さらなる実施形態において、有機過酸化物は、エチレン系ポリマーの100重量部に基づいて、1.0質量部(「phr」)未満の量、0.85phr未満の量、または0.5〜0.85phrの範囲で存在し得る。さらに、架橋性ポリマー組成物は、架橋性ポリマー組成物の全重量に基づいて、0.1〜3重量%、0.5〜3重量%、0.7〜3重量%、1.0〜3重量%、または1.2〜3重量%の範囲の量でジアリルアミド架橋助剤を含み得る。さらなる実施形態において、有機過酸化物及びジアリルアミド架橋助剤は、少なくとも1:1、または1:1を超える助剤と過酸化物の重量比で存在し得る。
【0029】
種々の実施形態において、架橋助剤及び有機過酸化物は、少なくとも1.6、少なくとも1.9、少なくとも2.5、または少なくとも3.0のアリル基と活性酸素原子のモル比、及び最大5、最大7.5、最大10、最大12、または最大16のアリル基と活性酸素原子のモル比を達成するのに十分な量で存在し得る。この比率を決定する上で、有機過酸化物中で2つの共有結合した酸素原子のうちの1つとして存在する酸素原子のみが、「活性酸素原子」とみなされる。例えば、単官能性過酸化物は、2つの活性酸素原子を有する。別の酸素原子に共有結合しない有機過酸化物またはポリアリル架橋助剤中に存在する酸素原子は、活性酸素原子とみなされない。さらに、ポリアリル架橋助剤上に見られるペンダントアリル基のみが、アリル基/活性酸素原子のモル比に含まれる。アリルと活性酸素のモル比は、以下の通りに計算される。
【0030】
【数1】
【0031】
上記の成分に加えて、架橋性ポリマー組成物は、抗酸化剤、加工助剤、賦形剤、カップリング剤、紫外線吸収剤または安定剤、帯電防止剤、核剤、スリップ剤、可塑剤、潤滑剤、粘度調節剤、粘着付与剤、アンチブロッキング剤、界面活性剤、エクステンダー油、酸捕捉剤、難燃剤、及び金属不活性化剤を含むが、これらに限定されない1つ以上の添加剤も含有し得る。賦形剤以外の添加剤は、典型的には、組成物の総重量に基づいて、0.01未満〜10重量%以上の範囲の量で使用される。賦形剤は、概して、より多い量で添加されるが、その量は、組成物の総重量に基づいて、0.01重量%以下もの少量から65重量%以上までの範囲であり得る。賦形剤の例示的な例としては、15ナノメートルを超える典型的な算術平均粒子径を有する、粘土、沈殿シリカ及びケイ酸、フュームドシリカ、炭酸カルシウム、粉末状鉱物、三水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、及びカーボンブラックが挙げられる。
【0032】
種々の実施形態において、架橋性ポリマー組成物は、1つ以上の抗酸化剤を含み得る。例示的な抗酸化剤としては、ヒンダードフェノール(例えば、テトラキス[メチレン(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)]メタン)、レスヒンダードフェノール、及びセミヒンダードフェノール、ホスフェート、ホスファイト、及びホスホナイト(例えば、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスフェート)、チオ化合物(例えば、ジステアリルチオジプロピオネート、ジラウリルチオジプロピオネート)、種々のシロキサン、ならびに種々のアミン(例えば、重合2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン)が挙げられる。種々の実施形態において、抗酸化剤は、ジステアリルチオジプロピオネート、ジラウリルチオジプロピオネート、オクタデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート、ベンゼンプロパン酸、3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ−チオジ−2,1−エタンジイルエステル、ステアリル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、2,4−ビス(ドデシルチオメチル)−6−メチルフェノール、4,4’−チオビス(6−tert−ブチル−m−クレゾール)、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、1,3,5−トリス(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオン、ペンタエリスリトールテトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、2’,3−ビス[[3−[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル]プロピオニル]]プロピオノヒドラジド、及びそれらの2つ以上の混合物から成る群から選択される。抗酸化剤は、存在する場合、架橋性ポリマー組成物の総重量に基づいて、0.01〜5重量%、0.01〜1重量%、0.1〜5重量%、0.1〜1重量%、または0.1〜0.5重量%の範囲の量で使用され得る。
【0033】
架橋性ポリマー組成物の調製
架橋性ポリマー組成物の調製は、上記の化合物を配合することを含み得る。例えば、配合は、(1)全ての成分をエチレン系ポリマー中に配合することか、または(2)後述するように浸漬され得る有機過酸化物及び架橋助剤を除く全ての成分を配合することのいずれかによって行われ得る。架橋性ポリマー組成物の配合は、当業者には既知の標準的な機器によって達成され得る。配合機器の例は、Brabender(商標)、Banbury(商標)、またはBolling(商標)ミキサー等の内部バッチミキサーである。あるいは、Farrel(商標)連続ミキサー及びPfleiderer(商標)二軸スクリューミキサー、またはBuss(商標)混練連続押出機等の連続一軸または二軸スクリューミキサーが使用され得る。配合は、エチレン系ポリマーの融解温度を超える温度から、エチレン系ポリマーが分解し始める温度までの温度で行われ得る。種々の実施形態において、配合は、100〜200℃または110〜150℃の範囲の温度で行われ得る。
【0034】
1つ以上の実施形態において、エチレン系ポリマー及び何らかの任意の成分は、最初に、上記の手順に従って融解配合され得、ペレット化され得る。次に、有機過酸化物及び架橋助剤は、同時にまたは順次のいずれかで、結果として生じるエチレン系ポリマー化合物中に浸漬され得る。一実施形態において、有機過酸化物及び助剤は、どちらか高い方の有機過酸化物及び助剤の融解温度を超える温度で予混合され得、続いて、1〜168時間、1〜24時間、または3〜12時間の範囲の時間の間、30〜100℃、50〜90℃、または60〜80℃の範囲の温度で、有機過酸化物及び架橋助剤の結果として生じる混合物中にエチレン系ポリマー化合物を浸漬する。
【0035】
結果として生じる架橋性ポリマー組成物は、ある向上した特性を有し得る。理論に縛られることを望まないが、ジアリルアミド架橋助剤の使用が、驚くほど、架橋性ポリマー組成物からの助剤の移動に対して優れた耐性を提供し得ると考えられる。したがって、種々の実施形態において、架橋性ポリマー組成物は、4週間の期間にわたって、室温23℃及び1気圧で保存されるとき、1,000百万分率(「ppm」)未満、750ppm未満、500ppm未満、または200ppm未満の架橋性ポリマー組成物の表面への架橋助剤の移動を呈し得る。さらに、架橋性ポリマー組成物は、4週間の期間にわたって、23℃及び1気圧で保存されるとき、架橋性ポリマー組成物の全重量に基づいて、1〜1,000ppm、10〜750ppm、50〜500ppm、または100〜200ppmの範囲で、架橋性ポリマー組成物の表面への架橋助剤の移動を呈し得る。助剤の移動を決定するための方法は、架橋性ポリマー組成物の全重量に基づいて2.34重量%の助剤の充填で、下記の試験方法の項で詳述される。
【0036】
架橋ポリマー組成物
上記の架橋性ポリマー組成物は、架橋エチレン系ポリマーを形成するために、硬化され得るか、または硬化することを可能にされ得る。そのような硬化は、架橋性ポリマー組成物を、175〜260℃の範囲の温度で維持され得る加熱された硬化ゾーン中で高温に供することによって行われ得る。加熱された硬化ゾーンは、加圧蒸気によって加熱され得るか、または加圧窒素ガスによって誘導加熱され得る。その後、架橋ポリマー組成物は、(例えば、周囲温度まで)冷却され得る。
【0037】
架橋プロセスは、架橋ポリマー組成物中に揮発性分解副産物を生成し得る。架橋後、架橋ポリマー組成物は脱気を受けて、揮発性分解副産物の少なくとも一部を除去し得る。脱気を、脱気温度、脱気圧力で脱気時間の間行って、脱気されたポリマー組成物を生産し得る。種々の実施形態において、脱気温度は、50〜150℃または60〜80℃の範囲であり得る。一実施形態において、脱気温度は、65〜75℃である。脱気は、標準的な大気圧(すなわち、101,325Pa)下で実施され得る。
【0038】
被覆導体
導体及び絶縁層を備えるケーブルは、上記の架橋性ポリマー組成物を用いて調製され得る。「ケーブル」及び「電力ケーブル」は、シース、例えば、絶縁カバー及び/または保護外側ジャケット内の少なくとも1つのワイヤーまたは光ファイバーを意味する。典型的には、ケーブルは、典型的には、共通の絶縁カバー及び/または保護ジャケット中の共に結合した2つ以上のワイヤーまたは光ファイバーである。シース内部の個々のワイヤーまたはファイバーは、裸であり得るか、カバーされ得るか、または絶縁され得る。組み合わせケーブルは、電線及び光ファイバーの両方を含み得る。典型的なケーブル設計は、米国特許第5,246,783号、第6,496,629号、及び第6,714,707号に例示されている。「導体」は、熱、光、及び/または電気を伝導するための1つ以上のワイヤーまたはファイバーを示す。導体は、単一のワイヤー/ファイバーまたは複数のワイヤー/ファイバーであり得、鎖状形態または管状形態であり得る。好適な導体の非限定的な例としては、銀、金、銅、炭素、及びアルミニウム等の金属が挙げられる。導体はまた、ガラスまたはプラスチックのいずれかから作製される光ファイバーであり得る。
【0039】
そのようなケーブルは、種々の種類の押出機(例えば、一軸または二軸スクリュータイプ)で、架橋性ポリマー組成物を導体上に直接または介在層上に押し出すことによって調製され得る。従来の押出機の説明は、米国特許第4,857,600号で見つけることができる。したがって、共押出及び押出機の一例は、米国特許第5,575,965号で見つけることができる。
【0040】
押出後、押し出されたケーブルは、押出ダイの下流の加熱された硬化ゾーン中に移行して、架橋性ポリマー組成物を架橋することを助け、それによって、架橋ポリマー組成物を生産し得る。加熱された硬化ゾーンは、175〜260℃の範囲の温度で維持され得る。一実施形態において、加熱された硬化ゾーンは、連続加硫(「CV」)管である。種々の実施形態において、その後、架橋ポリマー組成物は、上述のように冷却され、脱気され得る。
【0041】
交流ケーブルは、本開示に従って調製され得、低電圧、中電圧、高電圧、または超高電圧ケーブルであり得る。さらに、直流ケーブルは、本開示に従って調製され得、高または超高電圧ケーブルを含み得る。
【0042】
試験方法
【0043】
密度
ASTM D792に従って密度を決定する。
【0044】
メルトインデックス
ASTM D1238、条件190℃/2.16kgに従って、メルトインデックス、すなわちIを測定し、10分あたりに溶出されるグラム数で報告する。
【0045】
ムービングダイレオメータ(「MDR」)
硬化挙動は、ASTM D5289に従って180℃でMDRによって記録する。
【0046】
核磁気共鳴(「NMR」)
Bruker Ultrashield 400プラスNMRスペクトロメータからNMRデータを収集した。基準として重水素化クロロホルムのピークを使用し、その化学シフトを7.27ppmに設定した。
【0047】
質量分析(「MS」)
【0048】
液体クロマトグラフィー/質量分析
Agilent 1220 HPLC/G6224A TOF質量分析計でLC−MSデータを記録した。
【0049】
助剤移動
ペレット化したPE試料を、助剤移動を決定する前に所望される時間の間、周囲条件で保存する。エイジングが完了した後、ペレット試料を3.000±0.001g秤量し、40−mLの小瓶に入れる。14.5mLのアセトニトリルを小瓶に添加し、小瓶を密封し、5分間振盪機で振盪させる。40−mLの小瓶中の液体を収集し、2−mLの試料小瓶に入れ、高圧液体クロマトグラフィー(「HPLC」)分析を行う。以下の条件に従って、HPLCにより試料を分析する。
【0050】
[表]
【0051】
アセトニトリル(「ACN」)溶液中の助剤含有量を、事前に確立された較正曲線から計算する。いくつかの異なる濃度で、ある助剤のアセトニトリル溶液に対して、HPLC検出器からのUV吸収度応答をプロットすることによって、較正曲線を確立する。その後、試料助剤溶液の濃度を、この事前に確立された曲線から決定し得る。試料溶液中の助剤の既知の含有量を用いて、試料からの移動レベルを逆算し得る。数値は、XLPE化合物の総重量のppmで示される。
【0052】
材料
下記の実施例において、以下の材料が用いられる。
【0053】
用いられる低密度ポリエチレン(「LDPE」)は、2g/10分のメルトインデックス(I)及び0.920g/cmの密度を有する。このLDPE(「LDPE1」)は、The Dow Chemical Company(米国ミシガン州ミッドランド)によって生産され、0.14重量%のCyanox 1790(Cytec Industries製)、0.23重量%のDSTDP(Reagens製)、及び0.008重量%のCyasorb UV 3346(Cytec Industries製)を含有する。
【0054】
2g/10分のメルトインデックス(I)及び0.920g/cmの密度を有する第2のLDPEが用いられる。このLDPE(「LDPE2」)は、The Dow Chemical Company,Midland,MIによって生産される。
【0055】
ジクミル過酸化物は、Shanghai Fangruida Chemicals Co.,Ltd.から市販されている。
【0056】
セバシド酸(sebacid acid)は、Sigma−Aldrich Corporationから市販されている。
【0057】
ジアリルアミンは、Sigma−Aldrich Corporationから市販されている。
【0058】
N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N′−エチルカルボジイミド塩酸塩(「EDCI」)は、Sigma−Aldrich Corporationから市販されている。
【0059】
4−(ジメチルアミノ)ピリジン(「DMAP」)は、Sigma−Aldrich Corporationから市販されている。
【0060】
ジクロロメタンは、Sigma−Aldrich Corporationから市販されている。
【0061】
硫酸マグネシウムは、Sigma−Aldrich Corporationから市販されている。
【0062】
10−ウンデセン酸は、Sigma−Aldrich Corporationから市販されている。
【0063】
1,3,5−トリメソイルクロリドは、Sigma−Aldrich Corporationから市販されている。
【0064】
1,3,5−トリヒドロキシベンゼンは、Sigma−Aldrich Corporationから市販されている。
【0065】
トリアリルイソシアヌレート(「TAIC」)は、Shanghai Fangruida Chemicals Co.,Ltd.から市販されている。
【0066】
安定剤プレブレンドは、Cyanox 1790(Cytec Industries製)、DSTDP(Reagens製)、及びCyasorb UV 3346(Cytec Industries製)の37:61:2重量%の混合物の融解ブレンドである。
【0067】
4,4’−(プロパン−2,2−ジイル)ビス((アリルオキシ)ベンゼン)(助剤B)は、以下の構造を有する。
【0068】
【化3】
【0069】
4,4’−(プロパン−2,2−ジイル)ビス((アリルオキシ)ベンゼン)は、Laiyu Chemicals(中国山東)から市販されている。
【実施例】
【0070】
助剤調製手順
,N,N10,N10−テトラアリルデカンジアミド(助剤I)の調製
セバシン酸(3g、0.0148mol)、ジアリルアミン(2.88g、0.0296mol)、EDCI(5.96g、0.0311mol)、及びDMAP(0.135g、0.0011mol)をジクロロメタン(35mL)中に溶解する。この溶液を磁気撹拌器で5時間撹拌し、その後、水(10mL)、塩酸(5重量%、10mL)、及び飽和塩酸溶液(10mL)で連続して抽出する。この有機溶液を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、回転蒸発(500mbar、40℃)及び動的真空下で2時間蒸発させる。これにより、淡黄色の油(4.86g、91%)を得る。H NMR(400MHz、CDCl)δ5.75(m,4H)、5.14(m,8H)、3.92(d,8H)、2.30(t,4H)、1.63(m,4H)、1.30(s,8H)。ESI−MS(m/z,MH)計算値:361.29Da、実測値:361.32Da。
【0071】
N,N−ジアリルウンデス−10−エナミド(助剤II)の調製
10−ウンデセン酸(3g、0.0163mol)、ジアリルアミン(1.58g、0.0163mol)、EDCI(3.43g、0.0179mol)、及びDMAP(0.074g、0.61mmol)をジクロロメタン(35mL)中に溶解する。この溶液を磁気撹拌器で5時間撹拌し、その後、水(10mL)、塩酸(5重量%、10mL)、及び飽和塩化ナトリウム溶液(10mL)で連続して抽出する。この有機溶液を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、回転蒸発(500mbar、40℃)及び動的真空下で蒸発させる。これにより、透明な油(3.86g、90%)を得る。H NMR(400MHz,CDCl)δ5.79(m,3H)、5.17(m,4H)、4.95(2d,2H)、3.92(2d,4H)、2.29(t,2H)、2.02(q,2H)、1.62(m,2H)、1.29(m,10H)。ESI−MS(m/z,MH)計算値:264.23Da、実測値:264.26Da。
【0072】
,N,N,N,N,N−ヘキサアリルベンゼン−1,3,5−トリカルボキサミド(助剤III)の調製
1,3,5−トリメソイルクロリド(5g、0.0188mol)を一定の磁気撹拌によりジクロロメタン(50mL)中に溶解し、この溶液を氷水浴中で4℃に冷却する。この撹拌溶液に、ジクロロメタン(10mL)中のジアリルアミン(12.07g、0.124mol)の溶液を4℃で1時間にわたって滴加する。添加が完了した時点で、結果として生じる溶液を室温まで温め、さらに3時間撹拌し続ける。その後、この溶液を水(10mL)、塩酸(5重量%、10mL)、及び飽和塩化ナトリウム溶液で連続して抽出する。この有機溶液を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、回転蒸発(500mbar、40℃)及び動的真空(2時間)下で蒸発させる。この粗生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカ、ジクロロメタン)でさらに精製する。これにより、淡黄色の油(4.89g、58%)を得る。H NMR(400MHz,CDCl)δ7.57(s,3H)、5.70(m,6H)、5.22(m,12H)、3.97(d,12H)。ESI−MS(m/z,MH)計算値:448.26Da、実測値:448.27Da。
【0073】
1,3,5−トリス(アリルオキシ)ベンゼン(比較助剤A)の調製
1,3,5−トリス(アリルオキシ)ベンゼンは、以下の構造を有する。
【0074】
【化4】
【0075】
1,3,5−トリヒドロキシベンゼン(5g、0.0396mol)を一定の磁気撹拌によりN,N−ジメチルホルムアミド(「DMF」)(40mL)中に溶解し、炭酸カリウム(21.89g、0.158mol)を添加する。結果として生じる混合物を熱制御された油浴で、50℃で30分間加熱する。臭化アリル(19.11g、0.158mol)を滴加する。滴加を30分後に終了し、懸濁液を80℃まで16時間加熱する。その後、この反応混合物を室温まで冷却し、水で希釈し、エチルエーテル(3×50mL)で抽出する。このエーテル溶液を水(20mL)で抽出し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、回転蒸発(500mbar、25℃)及び動的真空(2時間)下で濃縮する。結果として生じる橙色の油をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル20:1)で分離して、最終生成物として淡黄色の油(5.96g)を得る。H NMR(400MHz,CDCl)δ6.15(s,3H)、6.04(m,3H)、5.36(m,6H)、4.49(m,6H)。ESI−MS(m/z,MH)計算値:247.13Da、実測値:247.15Da。
【0076】
試料配合
以下の実施例で使用される全ての試料は、以下の手順に従って配合される。最初に、存在する場合、ポリエチレンペレット及び安定剤プレブレンドをHaakeミキサー中に120℃で供給する。30rpmのローター速度でポリエチレンが完全に融解することを可能にする。次に、助剤を添加し、30rpmで1分間融解混合する。その後、ジクミル過酸化物(「DCP」)を融液に30秒間にわたって緩徐に添加し、その後、35rpmで3分間混合する。その後、回転を停止し、組成物をHaakeミキサーから除去し、120℃で1mmの厚さのシートに迅速にホットプレスする。
【0077】
実施例1:硬化挙動
以下の表1に提供される処方に従って、かつ上記の試料調製方法を使用して、3つの試料(S1〜S3)及び1つの比較試料(CS1)を調製する。CS1は、唯一の架橋剤として過酸化物を含有し(すなわち、助剤なし)、S1〜S3は、それぞれ、過酸化物及び助剤(I)〜(III)を含有する。
【0078】
【表1】
【0079】
上記の試験方法を使用して、CS1及びS1〜S3の硬化挙動を分析する。結果を下記の表2に提供する。
【0080】
【表2】
【0081】
表2の結果は、ジアリルアミド助剤の添加が、DCP充填の減少を補償し、2.7dN・mを超えるMH(すなわち、架橋後に加硫曲線に記録された最大トルク値)を維持することができることを示す。
【0082】
実施例2:助剤移動
以下の表3に提供される処方に従って、かつ上記の試料調製方法を使用して、2つのさらなる比較試料(CS2及びCS3)及び1つのさらなる試料(S4)を調製する。CS2及びCS3をコーゲント(cogent)としてTAICで調製し、S2を架橋助剤として助剤IIIで調製する。
【0083】
【表3】
【0084】
上記の試験方法を使用して、CS2、CS3、及びS4の助剤移動を分析する。結果を下記の表4に提供する。
【0085】
【表4】
【0086】
表4に提供される結果は、S4においてポリマー組成物の表面への助剤移動の大幅な減少(CS3で見られる移動量の約10分の1)を示す。これは、S4中の助剤IIIがCS3中のTAICの量の約3倍の量で存在することを考慮すると、特に驚くべきことである。
【0087】
実施例3(比較):エーテル結合アリル助剤
以下の表5に提供される処方に従って、かつ上記の試料調製方法を使用して、2つのさらなる比較試料(CS4及びCS5)及び対照試料を調製する。対照試料を架橋助剤としてTAICで調製し、比較試料4を架橋助剤として比較助剤A(1,3,5−トリス(アリルオキシ)ベンゼン)で調製し、比較試料5を架橋助剤として比較助剤B(4,4’−(プロパン−2,2−ジイル)ビス((アリルオキシ)ベンゼン))で調製する。
【0088】
【表5】
【0089】
上記の試験方法を使用して、対照試料、CS4、及びCS5の硬化挙動を分析する。結果を下記の表6に提供する。
【0090】
【表6】
【0091】
表6の結果に示されるように、エーテル結合アリル助剤の使用は、CS4及びCS5のMH値(すなわち、架橋後に加硫曲線に記録された最大トルク値)の低さから明らかなように、十分な硬化可能性を提供しない。
本願発明には以下の態様が含まれる。
項1.
(a)エチレン系ポリマーと、
(b)有機過酸化物と、
(c)少なくとも1つのN,N−ジアリルアミド官能基を有する架橋助剤と、を含む、架橋性ポリマー組成物。
項2.
前記架橋助剤は、式(I)の構造を有し、
【化1】
式中、Rは、(a)1〜20個の炭素原子を有するアルキル基またはアルケニル基、(b)1つ以上のさらなるN,N−ジアリルアミド官能基によって任意に置換された芳香族基を含有する置換基、(c)1つ以上のさらなるN,N−ジアリルアミド官能基を有する脂肪族基、及び(d)それらの2つ以上の組み合わせから成る群から選択される、項1に記載の前記架橋性ポリマー組成物。
項3.
Rは、(a)末端炭素−炭素二重結合及び5〜15個の炭素原子を有するアルケニル基、(b)1つ以上のさらなるN,N−ジアリルアミド官能基によって置換された芳香族基、(c)末端N,N−ジアリルアミド官能基を有するアルキル基、ならびに(d)それらの2つ以上の組み合わせから成る群から選択される、項2に記載の前記架橋性ポリマー組成物。
項4.
前記架橋助剤は、式(II)〜(IV)から成る群から選択される構造、
【化2】
及びそれらの2つ以上の組み合わせを有する、項1に記載の前記架橋性ポリマー組成物。
項5.
前記架橋助剤及び前記有機過酸化物は、1:1を超える助剤と過酸化物の重量比で存在する、項1〜4のいずれか1項に記載の前記架橋性ポリマー組成物。
項6.
前記エチレン系ポリマーは、高圧法低密度ポリエチレンを含み、前記有機過酸化物は、ジクミル過酸化物を含み、前記架橋性ポリマー組成物は、抗酸化剤をさらに含む、項1〜5のいずれか1項に記載の前記架橋性ポリマー組成物。
項7.
前記エチレン系ポリマーは、前記架橋性ポリマー組成物の全重量に基づいて、50〜99重量%の範囲の量で存在し、前記有機過酸化物は、前記架橋性ポリマー組成物の全重量に基づいて、1.0重量%未満の量で存在し、前記架橋助剤は、前記架橋性ポリマー組成物の全重量に基づいて、0.1〜3重量%の範囲の量で存在する、項1〜6のいずれか1項に記載の前記架橋性ポリマー組成物。
項8.
前記架橋性ポリマー組成物は、23℃及び1気圧で4週間保存されるとき、前記架橋性ポリマー組成物の総重量に基づいて、1,000百万分率未満の前記架橋性ポリマー組成物の表面への架橋助剤の移動を呈する、項1〜7のいずれか1項に記載の前記架橋性ポリマー組成物。
項9.
項1〜8のいずれか1項に記載の前記架橋性ポリマー組成物から調製される、架橋物品。
項10.
伝導性コアと、
前記伝導性コアを少なくとも部分的に囲むポリマー層と、を備え、前記ポリマー層の少なくとも一部は、項9に記載の前記架橋物品を含む、被覆導体。