(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6598832
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】竪型射出成形機の安全ドア
(51)【国際特許分類】
B29C 45/84 20060101AFI20191021BHJP
B29C 45/03 20060101ALI20191021BHJP
【FI】
B29C45/84
B29C45/03
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-173669(P2017-173669)
(22)【出願日】2017年9月11日
(65)【公開番号】特開2019-48414(P2019-48414A)
(43)【公開日】2019年3月28日
【審査請求日】2018年4月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100097696
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 嘉昭
(74)【代理人】
【識別番号】100147072
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 裕通
(72)【発明者】
【氏名】中山 清貴
(72)【発明者】
【氏名】森崎 基裕
【審査官】
菅原 洋平
(56)【参考文献】
【文献】
登録実用新案第3152637(JP,U)
【文献】
特開昭64−027572(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/126029(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00−45/84
B22D 15/00−17/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長方形状の扉と他の扉とからなりそれぞれの長辺において蝶番によって回動可能に支持され、その対辺が弧を描いて開閉されるようになっている竪型射出成形機の両開き戸の安全ドアであって、
前記安全ドアは、非接触型センサを備えた固定ドアからなり、
前記非接触型センサはコイルからなる検出部と磁石からなる被検出部とから構成される磁気型近接センサであり、前記検出部と前記被検出部のうち一方が前記扉の前記対辺近傍に、他方が前記他の扉の前記対辺近傍にそれぞれ設けられ、前記扉が閉じられると前記検出部によって前記被検出部が検出されて前記安全ドアの閉状態が検出されるようになっていることを特徴とする竪型射出成形機の安全ドア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、竪型射出成形機の安全ドアに関するものであり、1枚の扉の片開き戸、または2枚の扉の両開き戸からなる安全ドアに関するものである。
【背景技術】
【0002】
竪型射出成形機にも、横置きの射出成形機と同様に型締装置の周囲が囲われて作業者の安全が確保されている。囲いには、安全ドアが設けられ必要により開閉して作業者がメンテナンスできるようになっている。安全ドアには、その開閉状態を検出するリミットスイッチが必要な個数だけ設けられており、例えば特許文献1に記載されているように、運転中に安全ドアが開かれたら、これを検出してサーボモータを停止したり、制御を切換えるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−37758号公報
【0004】
ところで竪型射出成形機に設けられている安全ドアは、蝶番によって開閉される扉からなり、1枚の扉からなる片開き戸から構成される場合もあるし、2枚の扉から観音開き状に開閉される両開き戸から構成される場合もある。片開き戸や両開き戸からなる安全ドアには、その開閉状態を検出するリミットスイッチが所定の位置に所定の数だけ必要になるが、これを
図3によって説明する。
図3には、両開き戸からなる安全ドア50について、その内側から、つまり竪型射出成形機側から見た図が示されている。左の扉51は支柱53に対して蝶番56、56によって回動可能に支持され、右の扉52は固定枠部54に対して蝶番57、57によって回動可能に支持されている。従って、左右の扉51、52は外側に向かって、つまり図面の深さ方向に向かって観音開き状に開かれることになる。このような安全ドア50において、その開閉状態を検出するリミットスイッチ61、62、…は、いずれも左右の扉51、52の蝶番56、57側に設けられている。より正確には蝶番56、57が設けられている支柱53と固定枠部54とに設けられている。左右の扉51、52が開閉するとき蝶番56、57の近傍の扉51、52の可動範囲は小さいので、確実に閉状態を検出するために、リミットスイッチ61、62は2種類が併用されている。まず、第1のリミットスイッチ61、61は、プランジャ式のリミットスイッチからなり、扉51、52が閉じられると、内部に設けられているプランジャが押されてONするようになっている。すなわち扉51、52が閉状態でONになるA接点になっている。一方第2のリミットスイッチ62、62はレバー式のリミットスイッチからなり、扉が開くとレバーが駆動されてONするようになっている。つまり扉51、52が閉状態でOFFになるB接点になっている。このようにリミットスイッチ61、62はプランジャやレバーからなる可動部が設けられており、直接これらの可動部が扉51、52に接触して駆動されてON/OFFされる。つまり接触型のリミットスイッチ61、62になっている。そうすると確実に閉状態を検出するために2種類のリミットスイッチ61、62を併用している。このような理由により、安全ドア50が両開き戸からなる場合には、リミットスイッチ61、62は合計で4個必要になる。竪型射出成形機のコントローラは、第1、2のリミットスイッチ61、62がいずれも扉51、52が閉状態になっていることを検出したときに、運転を許可し、いずれか一方のリミットスイッチ61、62が閉状態を検出できなくなったら竪型射出成形機の運転を停止することになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
竪型射出成形機に設けられている従来の安全ドア50は、接触型の2種類のリミットスイッチ61、62を併用しているので、安全ドア50の閉状態を確実に検出し、作業員の安全を確保できる。しかしながら解決すべき問題も見受けられる。まず第1の問題は必要なリミットスイッチ61、62の個数の問題である。一般的に安全ドアには、ロック機構がなく運転中でも開閉できるようになっている、いわゆる可動ドアと、ロック機構によりロックされて運転中には開閉できないようになっている、いわゆる固定ドアとの2種類があり、必要なリミットスイッチの個数が規制により決められている。例えば固定ドアの場合には、安全ドア1枚に対してリミットスイッチは少なくとも1個以上設ければよい。そうすると規制をクリアするだけであればリミットスイッチは1個で済むはずであるが、両開き戸の安全ドア50の場合には、前記したように4個のリミットスイッチ61、62が必要になる。仮に閉状態の検出の精度が若干落ちることを甘受して第1、2のリミットスイッチ61、62のいずれか一方だけを使用するようにしたとしても2個は必要になる。そうするとリミットスイッチに要するコストが大きい。第2の問題は劣化や故障の問題である。リミットスイッチ61、62は接触型からなり可動部を備えているので、長期間の使用によって劣化し、故障が生じる。第3の問題は、リミットスイッチ61、62はホコリ等の異物が挟まると扉51、52の閉状態を正常に検出できない点である。閉状態が確認できないと竪型射出成形機を運転することができないので、作業者は一旦安全ドア50を開き、再度閉じる操作をしなければならない。安全ドア50を1〜2回繰り返し開閉すると、リミットスイッチ61、62近傍のホコリ等が除去されて扉51、52の閉状態を検出できるようになる。このようにホコリ等によって扉51、52の閉状態が検出できないことがあり、竪型射出成形機を運転できるようにするために、扉51、52の開閉を繰り返す作業が必要になるという問題がある。さらには竪型射出成形機の運転による振動により、誤って扉51、52が開かれたと誤った判断をすることもある。そうすると竪型射出成形機は異常終了してしまう。
【0006】
本発明は、上記したような問題点を解決した、竪型射出成形機の安全ドアを提供することを目的としており、具体的には、片開き戸または両開き戸からなる安全ドアにおいて、その閉状態を検出するリミットスイッチの個数が可及的に少なく、そして確実に閉状態を検出でき、実質的にリミットスイッチの経年劣化や故障の問題がなく、ホコリ等によって扉の閉状態の検出が妨げられることもなく、竪型射出成形機の運転の振動によっても誤動作のおそれがない、竪型射出成形機の安全ドアを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために、長方形状の扉と
他の扉とからなり
それぞれの長辺において蝶番によって回動可能に支持され、その対辺が弧を描いて開閉されるようになっている竪型射出成形機の
両開き戸の安全ドアを対象としている。本発明において、安全ドアは、
コイルからなる検出部と
磁石からなる被検出部とからなる
磁気型近接センサつまり非接触型センサを備えるようにする。検出部と被検出部の
一方と他方を、それぞれ前記扉と前記他の扉の扉のそれぞれの対辺近傍に設ける。扉を閉じると検出部によって被検出部が検出されて安全ドアの閉状態が検出されるようにする。安全ドアは
固定ドアとする。
【0008】
かくして、請求項1に記載の発明は、上記目的を達成するために、長方形状の扉
と他の扉とからなり
それぞれの長辺において蝶番によって回動可能に支持され、その対辺が弧を描いて開閉されるようになっている竪型射出成形機の
両開き戸の安全ドアであって、前記安全ドアは、
非接触型センサを備えた固定ドアからなり、
前記非接触型センサはコイルからなる検出部と磁石からなる被検出部とから構成される磁気型近接センサであり、前記検出部と前記被検出部のうち一方が前記扉の前記対辺近傍に
、他方が前記他の扉の前記対辺近傍にそれぞれ設けられ、前記扉が閉じられると前記検出部によって前記被検出部が検出されて前記安全ドアの閉状態が検出されるようになっていることを特徴とする竪型射出成形機の安全ドアとして構成される。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、本発明は、長方形状の扉
と他の扉とからなり
それぞれの長辺において蝶番によって回動可能に支持され、その対辺が弧を描いて開閉されるようになっている竪型射出成形機の
両開き戸の安全ドアを対象としている。安全ドアは、
非接触型センサを備えた固定ドアからなり、
非接触型センサはコイルからなる検出部と磁石からなる被検出部とから構成される磁気型近接センサであり、検出部と被検出部のうち一方が前記扉の対辺近傍に
、他方が前記他の扉の対辺近傍にそれぞれ設けられ、扉が閉じられると検出部によって被検出部が検出されて安全ドアの閉状態が検出されるようになっている。閉状態を検出するセンサは非接触型センサなので、経年劣化や故障の問題がない。そして、センサの個数は1個だけで済む。そうするとコストが小さい。さらには非接触的に閉状態が検出できるので、ホコリ等による外乱の影響が小さい。つまり精度良く閉状態を検出することができる。さらには、非接触的に閉状態を検出しているので、竪型射出成形機の運転の振動によっても状態を誤って判断することがない。
そして両開き戸で扉が2枚あるにも
かかわらず、わずか1個の非接触型センサによって閉状態を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態に係る竪型射出成形機の型締装置とこの型締装置を囲う保護カバーと安全ドアとを示す上面図である。
【
図2】本実施の形態に係る竪型射出成形機に設けられている安全ドアを内側から示す正面図である。
【
図3】従来の竪型射出成形機に設けられている安全ドアを内側から示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本実施の形態について説明する。本実施の形態に係る竪型射出成形機1も、
図1に示されているように、その周囲が保護カバー3と安全ドア4、4とによって覆われている。
図1には竪型射出成形機1の型締装置2が示されており、保護カバー3は型締装置2を構成している上可動盤7を後方から取り囲むように所定の間隔を空けて設けられている。この保護カバー3に接続して安全ドア4、4が左右に設けられている。つまり安全ドア4、4は型締装置2を構成しているターンテーブル8の左右に配置されている。ターンテーブル8の前方は開口しており、作業者が必要に応じて作業できるようになっている。ところで左右に設けられている安全ドア4、4は、左右対称で同様の構造からなるが、いずれも両開き戸つまり観音開きになっている。1組の安全ドア4を内側から見た正面図が
図2に示されているが、安全ドア4は、長方形状の第1の扉10と第2の扉11とからなる。第1の扉10は蝶番13、13によって保護カバー3に対して回動自在に支持されており、第2の扉11は蝶番14、14によって支柱16に対して回動自在に支持されている。従って、第1、2の扉10、11は、
図1において2点鎖線の円弧で示されているように開閉することになる。本実施の形態においては、これらの安全ドア4、4は、図に示されていないロック機構により閉状態でロックされるようになっており、竪型射出成形機1の運転中には開閉ができない。つまりこれらの安全ドア4、4は、いわゆる固定ドアということができる。
【0012】
本実施の形態に係る安全ドア4、4は、閉状態を検出するセンサが1個のみ設けられている。つまり固定ドアに対して規制上必要とされている最小の個数のセンサが設けられている。センサは非接触型センサからなり、具体的には、センサは磁気型近接センサ18からなる。磁気型近接センサは非接触型のセンサであり、磁石からなる被検出部19と、この磁石が近接しているか否かを検出するコイルつまり検出部20とから構成されている。このような磁気型近接センサ18は次のように第1、2の扉10、11に設けられている。まず検出部20は、第1の扉10に設けられているが、第1の扉10の長方形の長辺のうち、蝶番13、13が設けられている長辺の対辺に対応する長辺に設けられている。一方被検出部19は、第2の扉11の長方形の長辺のうち、蝶番14、14が設けられている長辺の対辺に対応する長辺に設けられている。検出部20と被検出部19は同じ高さになるように設けられ、安全ドア4が閉状態になるときに近接するようになっている。検出部20を構成しているコイルにはケーブル22が設けられ、図に示されていないコントローラに接続されている。なおケーブル22は第1の扉10が開閉するときにその妨げにならないように所定長さだけ余裕を持って設けられており、蝶番13近傍において湾曲している。この湾曲した部分は第1の扉10に対して非拘束になっており第1の扉10が開閉するとき伸び縮みすることになる。つまり、遊びが確保されている。
【0013】
本実施の形態に係る安全ドア4はこのように構成されているので、安全ドア4が開閉するとこれを精度良く検出できる。まず安全ドア4を開状態から閉状態にすると、検出部20と被検出部19とが近接する。すなわちコイルと磁石とが近接する。そうすると誘導起電力により正の電圧が発生する。コントローラはこれを検出して閉状態であると判断する。閉状態においては竪型射出成形機1の運転が可能になる。一方、安全ドア4を閉状態から開く。このとき検出部20と被検出部19とが離間する。すなわちコイルと磁石とが離間する。そうすると誘導起電力により負の電圧が発生する。コントローラはこれを検出して閉状態から開状態になったと判断する。竪型射出成形機1が運転中であれば、速やかに運転を停止したり制御を切換える。これによって作業者の安全が確保される。
【0014】
本実施の形態に係る安全ドア4は色々な変形が可能である。例えば安全ドア4は両開き戸からなるように説明したが、扉が1枚の片開き戸から構成することもできる。この場合においても、磁気型近接センサ18は、扉の開閉される側の長辺、すなわち蝶番が設けられている長辺の対辺に設けるようにする。なお扉に設ける磁気型近接センサ18は、被検出部19であっても検出部20であってもよく、いずれか一方とし、他方を支柱等の固定部に設けるようにする。このようにしても扉を開閉すると、磁気型近接センサ18によって閉状態、閉状態からの変化を検出することができる。他の変形も可能であり、磁気型近接センサ18の代わりに他の非接触型センサを設けても良い。例えば、光センサから構成することもできる。光センサは発光部からなる被検出部と受光部からなる検出部とから構成されているが、このような非接触型センサによっても安全ドア4の開閉状態を精度良く検出できる。
【符号の説明】
【0015】
1 竪型射出成形機 2 型締装置
3 保護カバー 4 安全ドア
7 上可動盤 8 ターンテーブル
10 第1の扉 11 第2の扉
13 蝶番 14 蝶番
16 支柱 18 磁気型近接センサ
19 被検出部 20 検出部
22 ケーブル