特許第6598891号(P6598891)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6598891
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】エレベータ
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/22 20060101AFI20191021BHJP
   B66B 7/02 20060101ALI20191021BHJP
【FI】
   B66B5/22 Z
   B66B7/02 J
【請求項の数】8
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2018-18120(P2018-18120)
(22)【出願日】2018年2月5日
(65)【公開番号】特開2019-135183(P2019-135183A)
(43)【公開日】2019年8月15日
【審査請求日】2018年2月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安井 丈人
【審査官】 須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭62−181580(JP,U)
【文献】 特開2011−111263(JP,A)
【文献】 特開2004−026372(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/080626(WO,A1)
【文献】 特開平04−116078(JP,A)
【文献】 実開昭56−162274(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/22
B66B 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに間隔を存して平行に配置された一対のガイドレールを有する昇降路と、
前記昇降路に設けられ、前記ガイドレールに沿って昇降動されるとともに、前記ガイドレールの間に跨る横置きの梁を有する昇降体と、
前記梁の長手方向に沿う両端部の下面に設けられ、前記ガイドレールに対応する一対の非常止め装置と、を具備し、
前記非常止め装置は、前記ガイドレールを間に挟んで向かい合うとともに前記昇降体の下降速度が定格速度を超過した時に前記ガイドレールに向けて進出する一対の楔を含み、
少なくともいずれか一方の前記非常止め装置が前記梁の長手方向に沿って移動可能に前記梁の前記下面に支持されたエレベータであって、
前記梁の前記下面に取り外し可能に支持され、前記楔と前記ガイドレールとの間の相対的な位置関係が適切に調整された前記非常止め装置に対し、当該非常止め装置が対応する前記ガイドレールの反対側から突き当たる規制部材と、
前記梁の前記下面に移動不能に固定され、前記非常止め装置を前記規制部材に突き当てた時に、前記非常止め装置との間で前記規制部材を挟み込む位置決め部材と、
を具備したエレベータ。
【請求項2】
前記規制部材を前記梁から取り外した状態では、前記非常止め装置が対応する前記ガイドレールから遠ざかるように前記梁の長手方向に沿う中央部に向けて移動可能な状態に保たれる請求項1に記載のエレベータ。
【請求項3】
前記ガイドレールに接することで前記昇降体を昇降動可能に案内する案内装置をさらに備え、
前記案内装置は、前記非常止め装置に支持されているとともに、地震発生時に前記ガイドレールから前記案内装置を経て前記梁と前記非常止め装置との連結部に加わる荷重の一部を前記位置決め部材が荷担する請求項1に記載のエレベータ。
【請求項4】
少なくともいずれか一方の前記非常止め装置は、前記楔の並び方向に移動可能に前記梁の前記下面に支持され、
前記非常止め装置の上面に、前記梁を間に挟んで向かい合う第1のガイド部材および第2のガイド部材が移動不能に固定され、前記非常止め装置の前記楔と前記ガイドレールとの間の隙間が適正に調整された状態において、前記第1のガイド部材が前記楔の並び方向に沿う一方の側から前記梁に突き当たるとともに、前記第2のガイド部材が前記楔の並び方向に沿う他方の側から前記梁と間隔を存して向かい合い、
前記第2のガイド部材と前記梁との間で挟み込まれる調整部材が前記非常止め装置の前記上面に取り外し可能に支持された請求項1に記載のエレベータ。
【請求項5】
前記規制部材を前記梁から取り外した状態では、前記非常止め装置が対応する前記ガイドレールから遠ざかるように前記梁の長手方向に沿う中央部に向けて移動可能な状態に保たれ、
前記調整部材を前記非常止め装置の前記上面から取り外した状態では、前記非常止め装置が前記梁に対し前記楔の並び方向に移動可能な状態に保たれる請求項4に記載のエレベータ。
【請求項6】
前記第2のガイド部材は、前記調整部材が接する押圧面を有し、当該押圧面は、前記梁の長手方向に延びているとともに、前記梁の端から前記梁の中央部の方向に進むに従い前記梁に近づくように傾斜され、
前記調整部材は、傾斜された前記押圧面と前記梁との間の隙間に嵌りこむ楔形に形成された請求項4に記載のエレベータ。
【請求項7】
少なくともいずれか一方の前記非常止め装置は、前記楔の並び方向に移動可能に前記梁の前記下面に支持され、
前記非常止め装置の上面に、前記梁を間に挟んで向かい合う第1のガイド部材および第2のガイド部材が移動不能に固定され、前記非常止め装置の前記楔と前記ガイドレールとの間の隙間が適正に調整された状態において、前記第1のガイド部材が前記楔の並び方向に沿う一方の側から前記梁に突き当たるとともに、前記第2のガイド部材が前記楔の並び方向に沿う他方の側から前記梁と間隔を存して向かい合い、
前記第2のガイド部材に前記梁に突き当たる複数のねじ部材がねじ込まれた請求項1に記載のエレベータ。
【請求項8】
前記規制部材を前記梁から取り外した状態では、前記非常止め装置が対応する前記ガイドレールから遠ざかるように前記梁の長手方向に沿う中央部に向けて移動可能な状態に保たれ、
前記ねじ部材が前記梁から離れる方向に前記ねじ部材を緩めた状態では、前記非常止め装置が前記梁に対し前記楔の並び方向に移動可能な状態に保たれる請求項7に記載のエレベータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、非常止め装置を有するエレベータに関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータは、例えば乗りかごが定格速度を超過した速度で下降した際に、乗りかごを強制的に制止させる非常止め装置を備えている。非常止め装置は、ガイドレールの刃部を間に挟んで向かい合う一対の楔を有するとともに、ガイドレールと隣り合うようにかご枠の下梁の下面に取り付けられている。
【0003】
乗りかごの下降速度が定格速度を超過すると、ガバナ装置が作動し、当該ガバナ装置に連動するセフティリンク機構を介して非常止め装置の楔が引き上げられる。これにより、楔がガイドレールの刃部に向けて進出するとともに、当該楔に取り付けられたブレーキシューが刃部に押し付けられる。この結果、ブレーキシューとガイドレールとの間に摩擦に基づく制動力が発生し、乗りかごが緊急停止する。
【0004】
ところで、非常止め装置では、十分な制動力を得るために、楔とガイドレールの刃部との間の隙間が適切となるように、下梁に対する非常止め装置の取り付け位置を精度よく管理する必要がある。このため、従来では、工場で下梁に非常止め装置を取り付ける作業を行い、下梁に非常止め装置が一体化された構造物をエレベータの据え付け現場に運搬することが行われている。
【0005】
工場で下梁に非常止め装置を取り付けるに当たっては、仮想ガイドレールを用いて仮想ガイドレールと楔との間の隙間が適正となるように、下梁に対する非常止め装置の位置を調整した後、溶接等の手段を用いて非常止め装置を下梁に強固に固定している。
【0006】
非常止め装置が固定された下梁をエレベータの据え付け現場で一対のガイドレールの間に設置する際に、例えばガイドレールの間の間隔が狭く、非常止め装置の高さ寸法が大きいと、非常止め装置がガイドレールと干渉することがあり得る。
【0007】
このような場合には、非常止め装置を下梁に溶接せずに下梁の長手方向に移動可能に下梁に取り付け、当該非常止め装置をガイドレールから遠ざかる方向に一時的に移動させている。
【0008】
ガイドレールから遠ざけた非常止め装置は、下梁をガイドレールの間に設置する作業が完了した後に元の位置に戻し、楔とガイドレールの刃部との間の隙間を工場で調整した状態に復帰させることが必要となる。
【0009】
この課題に対し、従来は、工場で楔と仮想ガイドレールとの隙間を適正に調整した後、非常止め装置および下梁に互いに連通する通孔を形成している。エレベータの据え付け現場では、ガイドレールから遠ざかる方向に移動させた非常止め装置を元の位置に戻す際に、非常止め装置の通孔と下梁の通孔とが互いに合致するように、下梁に対する非常止め装置の位置を調整し、この状態で通孔の間に跨るようにスプリングピンを打ち込んでいる。
【0010】
これにより、下梁に対する非常止め装置の位置が工場出荷時の状態に戻り、楔とガイドレールの刃部との間の隙間が適正となる。それとともに、スプリングピンのせん断強度により、下梁に対する非常止め装置の取り付け強度が確保される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開昭60−244787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、非常止め装置は、重く大きな構造物であるため、人手による細かな位置調整が極めて困難であり、エレベータの据え付け現場で非常止め装置の通孔と下梁の通孔とを合致させる際に多大な手間と労力を要するのを避けられない。
【0013】
さらに、非常止め装置の通孔と下梁の通孔とが少しでもずれていると、スプリングピンを打ち込むことができず、下梁に対する非常止め装置の固定位置を工場で調整した位置に戻す作業が容易でない。
【0014】
本発明の目的は、非常止め装置が取り付けられた梁をガイドレールの間に設置するに際して、非常止め装置を梁の長手方向に沿って一時的に移動させた場合でも、当該非常止め装置を予め決められた適正な位置に容易に復帰させることができ、作業性に優れたエレベータを得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
実施形態によれば、エレベータは、互いに間隔を存して平行に配置された一対のガイドレールを有する昇降路と、前記昇降路に設けられ、前記ガイドレールに沿って昇降動されるとともに、前記ガイドレールの間に跨る横置きの梁を有する昇降体と、前記梁の長手方向に沿う両端部の下面に設けられ、前記ガイドレールに対応する一対の非常止め装置と、を備えている。
【0016】
前記非常止め装置は、前記ガイドレールを間に挟んで向かい合うとともに、前記昇降体の下降速度が定格速度を超過した時に前記ガイドレールに向けて進出する一対の楔を含み、少なくともいずれか一方の前記非常止め装置が前記梁の長手方向に沿って移動可能に前記梁の前記下面に支持されている。
【0017】
規制部材が前記梁の前記下面に取り外し可能に支持されている。前記規制部材は、前記楔と前記ガイドレールとの間の相対的な位置関係が適切に調整された前記非常止め装置に対し、当該非常止め装置が対応する前記ガイドレールの反対側から突き当たる。
位置決め部材が前記梁の前記下面に移動不能に固定されている。前記位置決め部材は、前記非常止め装置を前記規制部材に突き当てた時に、前記非常止め装置との間で前記規制部材を挟み込む
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1および第2の非常止め装置を有する乗りかごとガバナ装置との位置関係を示す第1の実施形態に係るエレベータの正面図である。
図2】第1の実施形態において、かご枠の下梁に取り付けられた第1および第2の非常止め装置とセフティリンク機構との位置関係を示す正面図である。
図3】第1の実施形態において、かご枠の下梁に取り付けられた第1および第2の非常止め装置と一対の第1のガイドレールとの位置関係を示す平面図である。
図4】第1の実施形態において、下梁と第2の非常止め装置の上部端板との位置関係を示す断面図である。
図5】第1の実施形態で用いる第1の非常止め装置の斜視図である。
図6】第1の実施形態で用いる第1の非常止め装置の正面図である。
図7】第1の実施形態において、第1のガイドレールと一対の楔との相対的な位置関係を示す第1の非常止め装置の平面図である。
図8】第1の実施形態において、第2の非常止め装置が規制部材および位置決め部材を介して予め決められた位置に固定された状態を示す正面図である。
図9】第1の実施形態において、第1および第2の非常止め装置が取り付けられた下梁を一対の第1のガイドレールの間で斜めに傾けて吊り上げた状態を示す正面図である。
図10】第1の実施形態において、第2の非常止め装置が第1のガイドレールから遠ざかるように下梁の長手方向に沿う中央部に向けて移動された状態を示す平面図である。
図11】第1の実施形態において、第2の非常止め装置が第1のガイドレールから遠ざかるように下梁の長手方向に沿う中央部に向けて移動された状態を示す側面図である。
図12】第2の実施形態において、第2の非常止め装置が第1のガイド部材、第2のガイド部材およびジャッキボルトを介し予め決められた位置に固定された状態を示す平面図である。
図13】第2の実施形態において、第2の非常止め装置がガイドレールから遠ざかるように下梁の長手方向に沿う中央部に向けて移動された状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1の実施形態]
以下、第1の実施形態について、図1ないし図11を参照して説明する。
【0020】
図1は、トラクション方式のエレベータ1を概略的に示している。図1に示すように、エレベータ1は、建屋2に設けられた昇降路3を有している。乗りかご4および釣合錘5が昇降路3に配置されている。乗りかご4および釣合錘5は、夫々昇降体の一例である。乗りかご4は、昇降路3の壁面に固定した一対の第1のガイドレール6を介して昇降路3に昇降動可能に支持されている。釣合錘5は、昇降路3の壁面に固定した一対の第2のガイドレール7(一方のみを図示)を介して昇降路3に昇降動可能に支持されている。
【0021】
第1のガイドレール6および第2のガイドレール7は、夫々昇降路3の高さ方向に沿って一直線状に延びているとともに、昇降路3内で互いに間隔を存して平行に配置されている。
【0022】
図3に示すように、第1のガイドレール6は、夫々基部8および刃部9を備えている。基部8は、昇降路3の壁面に固定されている。刃部9は、基部8と直交するように基部8の中央部から昇降路3内に突出されている。
【0023】
図1に示すように、乗りかご4は、かご枠11およびかご本体12を備えている。かご枠11は、左右の縦桟13a,13b、下梁14および上梁15を有している。
【0024】
かご本体12は、四角い箱形の要素であって、かご枠11に支持されている。かご本体12は、かご枠11の縦桟13a,13b、下梁14および上梁15によって取り囲まれている。本実施形態によると、下梁14は、第1のガイドレール6の間でかご本体12の下方を通して水平に配置されている。上梁15は、第1のガイドレール6の間でかご本体12の上方を通して水平に配置されている。
【0025】
図1に示すように、かご枠11は、下部案内装置22a,22bおよび上部案内装置23a,23bを備えている。下部案内装置22a,22bおよび上部案内装置23a,23bは、夫々複数のローラを有する。ローラは、第1のガイドレール6の刃部9に対し三方から転がり接触することで、乗りかご4を第1のガイドレール6に沿って昇降動可能に案内する。
【0026】
縦桟13a,13bは、夫々第1のガイドレール6に沿って起立するように第1のガイドレール6の直前に位置されている。下梁14は、縦桟13a,13bの下端部の間に介在されている。上梁15は、縦桟13a,13bの上端部の間に介在されている。言い換えると、下梁14および上梁15は、縦桟13a,13bの間に跨るように横置きの姿勢で配置されている。
【0027】
図3および図4に示すように、本実施形態の下梁14は、一対の梁要素16a,16bを組み合わすことで構成され、全長に亘って下向きに開口された形状を有している。
【0028】
具体的には、各梁要素16a,16bは、起立した側板部17と、側板部17の上縁から向かい合う梁要素16a,16bに向けて水平に延出された上板部18と、側板部17の下縁から上板部18とは逆方向に水平に延出されたフランジ部19と、を有している。梁要素16a,16bの上板部18の先端縁は、下梁14の全長に亘って僅かな間隔を存して向かい合っている。
【0029】
図3に示すように、下梁14は、その長手方向に沿う一端および他端に逃げ部20a,20bを有している。下梁14の一端に位置された逃げ部20aは、一方の第1のガイドレール6の基部8および刃部9を避けるように切り欠かれた要素であって、梁要素16a,16bの上板部18の間に跨って形成されている。下梁14の他端に位置された逃げ部20bは、他方の第1のガイドレール6の刃部9を避けるように切り欠かれた要素であって、梁要素16a,16bの上板部18の間に跨って形成されている。一方の逃げ部20aは、他方の逃げ部20bよりも下梁14の長手方向および幅方向に沿う寸法が格段に大きく形成されている。
【0030】
さらに、本実施形態では、梁要素16a,16bのフランジ部19に夫々ガイド孔21が形成されている。ガイド孔21は、下梁14の他端の側に位置されるとともに、下梁14の長手方向に沿って一直線状に延びている。
【0031】
図1に示すように、巻上機24が昇降路3の上端の機械室25に設置されている。巻上機24は、メインロープ26を介して乗りかご4および釣合錘5を昇降路3に吊り下げている。エレベータ1では、メインロープ26を巻き上げたり、巻き戻す方向に巻上機24の運転を制御することで、乗りかご4および釣合錘5が昇降路3に沿ってつるべ式に駆動される。
【0032】
図1に示すように、エレベータ1は、乗りかご4および釣合錘5のような昇降体が予め規定された定格速度を超過した速度で下降した時に、昇降体を強制的に制止させる安全装置28を装備している。安全装置28は、ガバナ装置29、第1の非常止め装置30aおよび第2の非常止め装置30bを主要な要素として備えている。安全装置28は、乗りかご4および釣合錘5のいずれにも適用可能であるが、本実施形態では、乗りかご4に適用した場合について説明する。
【0033】
ガバナ装置29は、一対のフライウエイトを有するガバナシーブ31、ラチェットホイール32、ロープ掴み33、テンショナシーブ34、ガバナロープ35およびガバナスイッチ36を備えている。
【0034】
ガバナシーブ31、ラチェットホイール32、ロープ掴み33およびガバナスイッチ36は、機械室25に収容されている。テンショナシーブ34は、昇降路3の底に設置されている。ガバナロープ35は、ガバナシーブ31とテンショナシーブ34との間に無端状に巻き掛けられている。そのため、ガバナロープ35は、乗りかご4が昇降動する範囲の全域に亘るように昇降路3に沿って鉛直方向に延びている。
【0035】
ガバナロープ35は、ガバナシーブ31とテンショナシーブ34との間の中間部がセフティリンク機構38に連結されている。図2は、かご枠11の下梁14に取り付けられた第1の非常止め装置30aおよび第2の非常止め装置30bとセフティリンク機構38との位置関係を示す正面図である。図1ないし図3に示すように、セフティリンク機構38は、第1の回動レバー38a、第2の回動レバー38b、コネクティングロッド38cおよび中継レバー38dを有している。
【0036】
図3に示すように、第1の回動レバー38a、第2の回動レバー38bおよびコネクティングロッド38cは、下梁14の梁要素16a,16bの間に収容されている。図2および図3に示すように、第1の回動レバー38aは、下梁14の長手方向に沿う一端部にピボット軸39aを介して回動可能に支持されている。第2の回動レバー38bは、下梁14の長手方向に沿う他端部にピボット軸39bを介して回動可能に支持されている。コネクティングロッド38cは、第1の回動レバー38aと第2の回動レバー38bとの間に跨っている。
中継レバー38dは、下梁14の他端部の外側でピボット軸39bに連結されているとともに、当該ピボット軸39bを介して第2の回動レバー38bと一緒に回動するようになっている。中継レバー38dの先端は、ガバナロープ35の中間部に連結されている。(図1参照)
これにより、乗りかご4の動きがセフティリンク機構38を介してガバナロープ35に伝わり、当該ガバナロープ35が乗りかご4が昇降動する方向に乗りかご4と同じ速度で走行するようになっている。
【0037】
さらに、本実施形態によると、第1の回動レバー38aの先端部および第2の回動レバー38bの先端部は、夫々二又状に分岐されているとともに、各分岐端にリフトロッド40が連結されている。リフトロッド40は、下梁14の長手方向に沿う一端部および他端部から下向きに突出されている。
【0038】
図1に示すように、ロープ掴み33は、固定シュー42および可動シュー43を有している。固定シュー42は、機械室25内でガバナシーブ31から下向きに繰り出されたガバナロープ35と向かい合っている。可動シュー43は、固定シュー42に対しガバナロープ35を間に挟んだ反対側に位置されている。さらに、可動シュー43は、固定シュー42の上側に退いた第1の位置と、固定シュー42と協働してガバナロープ35を挟み込む第2の位置との間で回動可能となっている。
【0039】
第1の位置では、可動シュー43がガバナロープ35から離れた状態でラチェットホイール32に引っ掛かっている。そのため、可動シュー43は、乗りかご4の下降速度が定格速度を超過しない限り第1の位置に保持されている。
【0040】
図1ないし図3に示すように、第1の非常止め装置30aおよび第2の非常止め装置30bは、夫々第1のガイドレール6の直前に位置するように下梁14に取り付けられている。第1の非常止め装置30aおよび第2の非常止め装置30bは、互いに共通の構成を有するため、第1の非常止め装置30aを代表して説明する。
【0041】
図5は、第1の実施形態で用いる第1の非常止め装置30aの斜視図、図6は、第1の実施形態で用いる第1の非常止め装置30aの正面図、図7は、第1の実施形態で用いる第1の非常止め装置30aの平面図である。
【0042】
図5ないし図7に示すように、第1の非常止め装置30aは、装置本体45、一対の楔受け46a,46b,板ばね47および一対の楔48a,48bを主要な要素として備えている。
【0043】
装置本体45は、上部端板49、下部端板50および柱51を備えている。上部端板49は、フラットな四角い板であり、梁要素16a,16bのフランジ部19の下面に突き合わされる上面49aを有している。(図4参照)下部端板50は、上部端板49よりも一回り小さな四角い板であり、上部端板49の下方に位置されている。柱51は、上部端板49と下部端板50との間に介在されて、上部端板49と下部端板50との間を一体的に連結している。
【0044】
図5ないし図7に示すように、上部端板49の上面49aの四隅部には、夫々ねじ孔49bが形成されている。さらに、上部端板49の前端中央部には、第1のガイドレール6の刃部9が入り込むスリット52が形成されている。
【0045】
一対の楔受け46a,46bは、上部端板49の前端部と下部端板50の前端部との間に配置されている。楔受け46a,46bは、第1のガイドレール6の刃部9を間に挟んで向かい合うように並んでいるとともに、夫々刃部9に近づいたり遠ざかる方向に移動可能に装置本体45に支持されている。
【0046】
楔受け46a,46bは、夫々ガイド面54を有している。ガイド面54は、第1のガイドレール6の刃部9の側面と向かい合うように第1のガイドレール6に沿って起立されている。さらに、ガイド面54は、楔受け46a,46bの下端から上端の方向に進むに従い刃部9の側面に近づくように傾斜されている。
【0047】
図7に示すように、板ばね47は、略U形に湾曲された要素であって、楔受け46a,46bを互いに近づく方向に弾性的に付勢している。
【0048】
楔48a,48bは、楔受け46a,46bの間で第1のガイドレール6の刃部9を間に挟んで向かい合うように配置されている。楔48a,48bは、夫々楔受け46a,46bのガイド面54と向かい合う受圧面55を有している。さらに、楔48a,48bの第1のガイドレール6の刃部9と向かい合う面にブレーキシュー56が取り付けられている。
【0049】
図5および図6に示すように、楔受け46a,46bと楔48a,48bとの間に夫々ローラユニット58が介在されている。ローラユニット58は、一対のローラ支持板59a,59bと、複数の転送ローラ60と、を備えている。
【0050】
ローラ支持板59a,59bは、第1のガイドレール6に沿って起立するように楔受け46a,46bと楔48a,48bとの間に跨るとともに、刃部9の突出方向に互いに間隔を存して向かい合っている。
【0051】
転送ローラ60は、ローラ支持板59a,59bの間に回転自在に支持されている。転送ローラ60は、第1のガイドレール6の長手方向に一列に並んでいるとともに、板ばね47の付勢力を受けて楔受け46a,46bのガイド面54および楔48a,48bの受圧面55に回転自在に押し付けられている。
【0052】
図3に示すように、第1の非常止め装置30aは、下梁14の長手方向に沿う一端に位置するように梁要素16a,16bのフランジ部19の下面に四本のボルト62で固定されている。ボルト62は、フランジ部19を貫通するとともに、上部端板49のねじ孔49bにねじ込まれている。
【0053】
さらに、第1の非常止め装置30aの上部端板49は、ボルト62に隣接した四箇所がフランジ部19の側縁に溶接等の手段で強固に固定されている。図3の符号Wは、上部端板49の上面49aとフランジ部19の側縁との間に跨る溶接ビードを示している。
【0054】
第2の非常止め装置30bは、下梁14の長手方向に沿う他端に位置するように梁要素16a,16bのフランジ部19の下面に四本のボルト63で固定されている。ボルト63は、フランジ部19のガイド孔21を貫通するとともに、上部端板49のねじ孔49bにねじ込まれている。
【0055】
第1の非常止め装置30aおよび第2の非常止め装置30bを下梁14に固定した状態では、第1のガイドレール6の刃部9が楔48a,48bのブレーキシュー56の間に介在されている。(図6参照)さらに、楔48a,48bの下端部にリフトロッド40の下端部が連結されており、当該リフトロッド40を介してセフティリンク機構38と楔48a,48bとが互いに連携されている。(図8参照)
本実施形態によると、前記下部案内装置22a,22bは、第1の非常止め装置30aおよび第2の非常止め装置30bの装置本体45の下面に固定されている。このため、例えば地震により建屋2が揺れた場合、第1のガイドレール6の動きが下部案内装置22a,22bから第1の非常止め装置30aおよび第2の非常止め装置30bを介して下梁14に伝わるようになっている。
【0056】
乗りかご4が第1のガイドレール6に沿って昇降動すると、ガバナロープ35を介してガバナシーブ31が回転し、当該ガバナシーブ31に支持されたフライウエイトが遠心力により変位する。
【0057】
乗りかご4の下降速度が定格速度を超過した場合、変位したフライウエイトによりガバナスイッチ36が操作される。これにより、巻上機24の電源が遮断されるとともに、巻上機24の電磁ブレーキが作動される。
【0058】
ガバナスイッチ36が操作されたにも拘らず、乗りかご4が停止せずにフライウエイトに作用する遠心力が増大すると、フライウエイトがさらに変位してラチェットホイール32に引っ掛かる。
【0059】
これにより、ラチェットホイール32がガバナシーブ31に追従して回転し、ロープ掴み33の可動シュー43がラチェットホイール32から外れる。そのため、可動シュー43が第1の位置から第2の位置に向けて回動し、固定シュー42と協働してガバナロープ35を掴む。
【0060】
この結果、ガバナロープ35の走行が停止、又はガバナロープ35の走行速度が低下する。乗りかご4が下降を続けた状態で、ガバナロープ35の走行が停止、又はガバナロープ35の走行速度が低下すると、セフティリンク機構38を介してリフトロッド40が引き上げられる。
【0061】
リフトロッド40の動きは、第1の非常止め装置30aおよび第2の非常止め装置30bの楔48a,48bに伝わり、当該楔48a,48bが第1のガイドレール6に沿って強制的に引き上げられる。楔48a,48bの受圧面55および楔受け46a,46bのガイド面54は、図6に示すように、上方に進むに従い第1のガイドレール6の刃部9に近づくように傾いている。
【0062】
このため、楔48a,48bは、受圧面55とガイド面54との間に介在された転送ローラ60にガイドされつつ、第1のガイドレール6の刃部9に向けて進出する。この結果、ブレーキシュー56が刃部9に押し付けられ、当該ブレーキシュー56と刃部9との間に生じる摩擦力により楔48a,48bが上部端板49に向けて押し上げられる。
【0063】
押し上げられた楔48a,48bは、第1のガイドレール6と楔受け46a,46bとの間に食い込み、楔受け46a,46bが板ばね47の付勢力に抗して互いに遠ざかる方向に押し広げられる。
【0064】
楔48a,48bは、板ばね47の反力を受けることで第1のガイドレール6の刃部9に向けて強制的に押圧され、刃部9が楔48a,48bに取り付けられたブレーキシュー56の間で強固に挟み込まれる。したがって、ブレーキシュー56と刃部9との間に摩擦に基づく制動力が発生し、乗りかご4が緊急停止する。
【0065】
ところで、第1の非常止め装置30aおよび第2の非常止め装置30bでは、楔48a,48bと第1のガイドレール6の刃部9との位置関係が適切となるように、下梁14に対する第1の非常止め装置30aおよび第2の非常止め装置30bの固定位置を精度よく管理する必要がある。
【0066】
具体的には、第1の非常止め装置30aおよび第2の非常止め装置30bは、下梁14の長手方向に沿う水平なX方向および下梁14の長手方向と直交する水平なY方向に沿う位置が個々に調整されている。
【0067】
X方向に関しては、刃部9の先端部が楔48a,48bのブレーキシュー56の間に位置するように、下梁14に対する第1の非常止め装置30aおよび第2の非常止め装置30bの位置が調整されている。Y方向に関しては、楔48a,48bのブレーキシュー56と刃部9との間の隙間が適正となるように、下梁14に対する第1の非常止め装置30aおよび第2の非常止め装置30bの位置が調整されている。
【0068】
第1の非常止め装置30aおよび第2の非常止め装置30bの位置を調整する作業は、エレベータ1の据え付け現場ではなく、工場で仮想ガイドレールを用いて行われる。下梁14の一端に位置する第1の非常止め装置30aにおいては、下梁14に対するX方向およびY方向の位置を調整した後、ボルト62による締め付けと溶接とを併用して下梁14に移動不能に強固に固定する。
【0069】
一方、下梁14の他端に位置する第2の非常止め装置30bにおいては、下梁14に対するX方向およびY方向の位置を調整した後、ボルト63で下梁14に仮固定する。この後、X方向に関しては、規制部材65および位置決め部材66を用いて下梁14に移動不能に固定する。さらに、Y方向に関しては、第1のガイド部材67、第2のガイド部材68および調整部材69を用いて下梁14に移動不能に固定する。
【0070】
詳しく述べると、図2および図3に示すように、第2の非常止め装置30bのX方向の位置を規定する規制部材65は、例えば下梁14の長手方向と直交する方向に延びる板状の要素であって、梁要素16a,16bのフランジ部19の下面に二本の締結ボルト71およびナット72で取り外し可能に固定されている。締結ボルト71は、フランジ部19のガイド孔21および規制部材65を貫通するとともに、当該規制部材65の下方に突出されている。ナット72は、締結ボルト71の突出端にねじ込まれている。
【0071】
このねじ込みにより、規制部材65が梁要素16a,16bのフランジ部19の下面の間に跨るように固定されている。規制部材65を下梁14に固定した状態では、当該規制部材65の一側面がX方向およびY方向の位置が適正に調整された第2の非常止め装置30bの上部端板49の背面に隙間なく突き当っている。
【0072】
第2の非常止め装置30bのX方向の位置を規定する位置決め部材66は、例えば下梁14の長手方向と直交する方向に延びる板状の要素であって、梁要素16a,16bのフランジ部19の下面に例えば溶接等の手段で移動不能に強固に固定されている。このため、位置決め部材66は、梁要素16a,16bのフランジ部19の間に跨るように当該梁要素16a,16bと一体化されている。
【0073】
位置決め部材66を下梁14に固定した状態では、当該位置決め部材66の一側面が規制部材65の他側面に隙間なく突き当たっている。言い換えると、位置決め部材66は、第2の非常止め装置30bの上部端板49と協働して規制部材65を下梁14の長手方向から挟み込んでいる。これにより、第2の非常止め装置30aのX方向の位置が固定的に定められている。
【0074】
図3に示すように、第2の非常止め装置30bのY方向の位置を規定する第1のガイド部材67および第2のガイド部材68は、例えば下梁14の長手方向に真っ直ぐに延びる角柱状の要素である。第1のガイド部材67および第2のガイド部材68は、第2の非常止め装置30bの上部端板49の上面49aに例えば溶接等の手段で移動不能に強固に固定されており、前記楔48a,48bの並び方向から下梁14を間に挟んで向かい合っている。
【0075】
第1のガイド部材67は、下梁14の長手方向に延びる真っ直ぐな第1の当接面74を有している。第1の当接面74は、第2の非常止め装置30bのX方向およびY方向の位置が適正に調整された状態において、楔48a,48bの並び方向に沿う一方の側から一方の梁要素16aのフランジ部19の側縁に隙間なく突き当たっている。
【0076】
第2のガイド部材68は、下梁14の長手方向に延びる真っ直ぐな押圧面75を有している(図3参照)。押圧面75は、下梁14の他端から下梁14の長手方向に沿う中央部の方向に進むに従い他方の梁要素16bのフランジ部19の側縁に近づくように傾斜されている。
【0077】
さらに、押圧面75は、第2の非常止め装置30bのX方向およびY方向の位置が適正に調整された状態において、他方の梁要素16bのフランジ部19の側縁に対し間隔を存して向かい合っている。
【0078】
第2の非常止め装置30bのY方向の位置を規定する調整部材69は、第2のガイド部材68の押圧面75と他方の梁要素16bのフランジ部19の側縁との間の隙間に嵌り込むような楔形に形成されている。調整部材69は、下梁14の長手方向に延びる真っ直ぐな第2の当接面76を有している。
調整部材69は、第2の非常止め装置30bのX方向およびY方向の位置が適正に調整された状態において、下梁14の長手方向に沿う他端の側から第2のガイド部材68の押圧面75と他方の梁要素16bのフランジ部19の側縁との間の隙間に取り外し可能に嵌合されている。この嵌合により、第2の当接面76が他方の梁要素16bのフランジ部19の側縁に対し隙間なく突き当たっている。
【0079】
さらに、調整部材69は、締結ボルト77を介して上部端板49の上面49aに取り外し可能に固定されている。締結ボルト77は、調整部材69を貫通するとともに、上部端板49の上面のねじ孔78にねじ込まれている。
このねじ込みにより、第1のガイド部材67の第1の当接面74および調整部材69の第2の当接面76が、夫々梁要素16a,16bのフランジ部19の側縁に隙間なく突き当たり、第2の非常止め装置30aのY方向の位置が固定的に定められている。
【0080】
本実施形態によると、下梁14、第1の非常止め装置30aおよび第2の非常止め装置30bは、工場で一体構造物として組み立てられた後、エレベータ1の据え付け現場に運搬される。
【0081】
図9は、第1の非常止め装置30aおよび第2の非常止め装置30bが固定された下梁14を、エレベータ1の据え付け現場に既に配置された一対の第1のガイドレール6の間に設置する過程を示している。図9に示すように、下梁14は、第1の非常止め装置30aが第2の非常止め装置30bよりも下方に位置するように斜めに傾けた姿勢で第1のガイドレール6の間に吊り上げられている。
【0082】
この場合、例えば第1のガイドレール6の間の間隔Sが狭く、第1の非常止め装置30aおよび第2の非常止め装置30bの高さ寸法Hが大きい場合、斜めに吊り上げた下梁14を第1のガイドレール6の間に跨るように水平な姿勢に戻す際に、第2の非常止め装置30bが第1のガイドレール6と干渉し合うことがあり得る。
【0083】
そこで、本実施形態では、下梁14をエレベータ1の据え付け現場で第1のガイドレール6の間に設置する際に、締結ボルト71およびナット72による規制部材65の締め付けを解除することで、当該規制部材65を下梁14から一時的に取り外す。それとともに、締結ボルト77による調整部材69の締め付けを解除することで、当該調整部材69を第2の非常止め装置30bの上部端板49から一時的に取り外す。
【0084】
規制部材65を下梁14から取り外すことで、規制部材65の幅寸法に相当するスペースが第2の非常止め装置30bの上部端板49と位置決め部材66との間に生じる。さらに、調整部材69を上部端板49から取り外すことで、第1のガイド部材67と調整部材69との間での下梁14の挟み込みが解除される。
【0085】
このため、リフトロッド40を取り外した後にボルト63を緩めることで、図10および図11に示すように、第2の非常止め装置30bの上部端板49が位置決め部材66に突き当たるまで、第2の非常止め装置30bを下梁14の長手方向に沿う中央部に向けて移動させることができる。第2の非常止め装置30bの移動可能な距離は、規制部材65の幅寸法と一致する。
加えて、本実施形態では、ボルト63のねじ部とガイド孔21の長手方向に沿う側縁との間に隙間が確保されている。そのため、第2の非常止め装置30bを下梁14の長手方向に移動させる際に、ボルト63のねじ部とガイド孔21の側縁との間に大きな摺動抵抗が生じるのを回避できる。よって、第2の非常止め装置30bを下梁14の長手方向に移動させる作業を少ない力で容易に行うことができる。
【0086】
第2の非常止め装置30bは、下梁14を第1のガイドレール6の間に設置する作業が完了した後、位置決め部材66から遠ざかる方向に再び移動させる。この状態で、梁要素16a,16bのフランジ部19の下面に先に取り外した規制部材65を締結ボルト71およびナット72を用いて固定する。
【0087】
さらに、第2の非常止め装置30bの上部端板49の背面を規制部材65の一側面に突き当て、上部端板49と位置決め部材66との間で規制部材65を下梁14の長手方向に沿って隙間なく挟み込む。
引き続いて、第2のガイド部材68の押圧面75と他方の梁要素16bのフランジ部19の側縁との間の隙間に調整部材69を嵌め込み、当該調整部材69を締結ボルト77で第2の非常止め装置30bの上部端板49に固定する。
規制部材65および調整部材69の固定が完了した後、先に緩めたボルト63を上部端板49のねじ孔49bにねじ込み、第2の非常止め装置30bを下梁14に対し動かないようにしっかりと固定する。
これにより、第2の非常止め装置30bは、下梁14の長手方向に沿うX方向および下梁14の長手方向と直交するY方向に沿う位置が予め工場で調整された位置に戻り、楔48a,48bと第1のガイドレール6の刃部9との相対的な位置関係が適正に保たれる。
【0088】
第1の実施形態によれば、下梁14から取り外した規制部材65を再び下梁14に固定するとともに、上部端板49から取り外した調整部材69を再び上部端板49に固定するだけの作業で、下梁14の中央部の方向に移動させた第2の非常止め装置30bを工場で予め調整された適正な位置に戻すことができる。
【0089】
そのため、従来のような面倒で手間のかかる細かな位置合わせ作業が不要となり、第1の非常止め装置30aおよび第2の非常止め装置30bが取り付けられた下梁14を第1のガイドレール6の間に設置する際の作業性が向上する。
【0090】
さらに、本実施形態によると、調整部材69が楔状に形成されているので、当該調整部材69を第2のガイド部材68の押圧面75と梁要素16bのフランジ部19の側縁との間に嵌め込むことで、第2の非常止め装置30bがブレーキシュー56と第1のガイドレール6の刃部9との間の隙間が適正となるようにY方向に自動的に移動する。このため、第2の非常止め装置30bのY方向の位置を工場で調整された適正な位置に容易に戻すことができる。
【0091】
加えて、本実施形態では、下部案内装置22bが第2の非常止め装置30bの装置本体45に取り付けられているので、例えば地震発生時に建屋2が揺れると、第1のガイドレール6の動きが下部案内装置22bから第2の非常止め装置30bを経由して下梁14に伝わる。
【0092】
この際、第2の非常止め装置30bの上部端板49は、下梁14に強固に溶接された位置決め部材66で受け止められているので、地震発生時に下梁14と第2の非常止め装置30bとの連結箇所に加わる荷重の一部を位置決め部材66で荷担することができる。したがって、第2の非常止め装置30bを工場で調整した位置に戻した状態においても、下梁14に対する第2の非常止め装置30bの固定強度を十分に確保することができ、耐震性が良好となる。
[第2の実施形態]
図12および図13は、第2の実施形態を開示している。第2の実施形態は、第2の非常止め装置30bのY方向の位置を規定するための構成が第1の実施形態と相違しており、それ以外の構成は第1の実施形態と同様である。そのため、第2の実施形態において、第1の実施形態と同一の構成部分については同一の参照符号を付して、その説明を省略する。
【0093】
図12に示すように、第2の非常止め装置30bのY方向の位置を規定する第2のガイド部材68は、下梁14の長手方向に延びる真っ直ぐなガイド面81を有している。ガイド面81は、工場で第2の非常止め装置30bのX方向およびY方向の位置が調整された状態において、他方の梁要素16bのフランジ部19の側縁に対し間隔を存して向かい合っている。
【0094】
一対のジャッキボルト82が第2のガイド部材68にねじ込まれている。ジャッキボルト82は、ねじ部材の一例であって、下梁14の長手方向に間隔を存して並んでいるとともに、Y方向に沿って水平に配置されている。
ジャッキボルト82のねじ部83の先端は、第2の非常止め装置30bのX方向およびY方向の位置が調整された状態において、楔48a,48bの並び方向に沿う他方の側から梁要素16bのフランジ部19の側縁に隙間なく突き当たっている。
この結果、梁要素16aのフランジ部19の側縁が第1のガイド部材67の第1の当接面74に押し付けられ、第2の非常止め装置30aのY方向の位置が固定的に定められている。
第2の実施形態によると、第1の非常止め装置30aおよび第2の非常止め装置30bが固定された下梁14を第1のガイドレール6の間に設置するに当たっては、第1の実施形態と同様に規制部材65を下梁14から取り外すとともに、ジャッキボルト82を緩める。これにより、ジャッキボルト82のねじ部83の先端が梁要素16bのフランジ部19の側縁から離脱し、ねじ部83の先端とフランジ部19の側縁との間にY方向に沿う隙間が生じる。
この状態でボルト63を緩めれば、図13に示すように第2の非常止め装置30bの上部端板49が位置決め部材66に突き当たるまで、第2の非常止め装置30bを下梁14の長手方向に沿う中央部に向けて移動させることができる。
【0095】
第2の非常止め装置30bは、下梁14を第1のガイドレール6の間に設置する作業が完了した後、位置決め部材66から遠ざかる方向に再び移動させる。この状態で、梁要素16a,16bのフランジ部19の下面に先に取り外した規制部材65を締結ボルト71およびナット72を用いて固定する。
【0096】
さらに、第2の非常止め装置30bの上部端板49の背面を規制部材65の一側面に突き当て、上部端板49と位置決め部材66との間で規制部材65を下梁14の長手方向に沿って隙間なく挟み込む。
引き続いて、先に緩めたジャッキボルト82を締め付けることで、ねじ部83の先端を他方の梁要素16bのフランジ部19の側縁に突き当てる。これにより、下梁14が第1のガイド部材67に向けて押し出され、一方の梁要素16aのフランジ部19の側縁が第1のガイド部材67の第1の当接面74に突き合わされる。
最後にボルト63を第2の非常止め装置30bの上部端板49にねじ込み、第2の非常止め装置30bを下梁14に対し動かないようにしっかりと固定する。この結果、第2の非常止め装置30bは、下梁14の長手方向に沿うX方向および下梁14の長手方向と直交するY方向に沿う位置が予め工場で調整された位置に戻り、楔48a,48bと第1のガイドレール6との相対的な位置関係が適正に保たれる。
第2の実施形態によれば、下梁14の中央部の方向に移動させた第2の非常止め装置30bを工場で調整された位置に戻すに際して、従来のような面倒で手間のかかる細かな位置合わせ作業が不要となる。そのため、前記第1の実施形態と同様に、第1の非常止め装置30aおよび第2の非常止め装置30bが取り付けられた下梁14を第1のガイドレール6の間に設置する際の作業性が向上する。
上記実施形態では、第1の非常止め装置30aを下梁14に移動不能に固定したが、当該第1の非常止め装置30aを第2の非常止め装置30bと同様に下梁14の長手方向に移動可能としてもよい。
さらに、第1および第2の非常止め装置30a,30bは、下梁14の下面に固定することに限らず、上梁15の下面あるいは下梁14および上梁15の双方の下面に固定するようにしてもよい。
【0097】
加えて、上記実施形態では、乗りかごの下梁に非常止め装置を固定したが、釣合錘の錘要素を支える枠体の下梁又は上梁に非常止め装置を取り付ける場合でも同様に実施可能である。
【0098】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0099】
3…昇降路、4,5…昇降体(乗りかご、釣合錘)、6,7…ガイドレール(第1のガイドレール、第2のガイドレール)、14,15…梁(下梁、上梁)、30a…第1の非常止め装置、30b…第2の非常止め装置、48a,48b…楔、65…規制部材、66…位置決め部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13