【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明のワイヤソー(8)は、切断エリア(13)と、前記切断エリア(13)で切断ワイヤ(3)を第1方向と前記第1方向と反対である第2方向に案内するためのワイヤ管理システム(7)であって、前記切断エリア(13)へ前記切断ワイヤ(3)を供給するためのワイヤ供給ユニット(5)と、前記切断エリア(13)から前記切断ワイヤ(3)を受け入れるためのワイヤ受入ユニット(6)とを包含するワイヤ管理システム(7)と、を包含し、前記ワイヤ供給ユニット(5)が、保管スプール(2)を駆動させて、その回転軸線(2b)を中心として回転する回転駆動装置(11)であって、前記保管スプール(2)は、前記切断ワイヤ(3)の一部分を一時的に受け入れ、前記ワイヤソーの使用時には、前記保管スプール(2)の一端部と収容スプール(1)の一端部とが対向するように、新しいワイヤを装填するための前記収容スプール(1)が、着脱可能式に前記保管スプール(2)に取り付けられる、回転駆動装置(11)と、切断プロセスにおける前記ワイヤソーの使用時には、10本以下の巻線が相互に前記保管スプール(2)の上で重複する、および/または、前記保管スプール(2)の上の前記巻線が前記収容スプール(1)の上の前記巻線よりも低い密度を有するように、前記切断ワイヤ(3)を前記保管スプール(2)へ案内するのに適応したワイヤ案内手段(9)と、を包含している。
【0017】
進歩的なワイヤ管理システムは、ワイヤ破損のリスクを効率的に低減し、切断ワイヤの寿命を延長し、ダイヤモンドなどの研磨粒子の不要な損失を低減させる。これは、切断手順の間の切断ワイヤの摩損を低減することにより達成される。
【0018】
収容スプールは、大量の切断ワイヤを重複巻線として支承することができる。保管スプールは、切断ワイヤを非重複巻線として支承することができる。保管スプールは、ピルグリムサイクル中に、つまり切断ワイヤが第1方向に動かされてから逆転される間に使用されるワイヤ部分を一時的に支承する。保管スプールに対する切断ワイヤの巻き付けおよび/または巻き出しの間に、ワイヤは多数巻線の受入部には巻き付けられず、保管スプールのワイヤ接触面と直接に接触している。
【0019】
本発明はまた、ピルグリムサイクル中に大量のワイヤ(つまり非常に長いワイヤ区分)を管理できる。それにもかかわらず、所望の量の新ワイヤを追加すること、および/または、切断エリアにおいて一つ以上のサイクルで進むワイヤ部分から所望の量の使用後ワイヤを取り出すことが可能である。
【0020】
「本質的に一致する」は、回転軸線が直線上で本質的に整列されることを意味する。正確に同一の直線からのわずかな偏差は、言うまでもなく本発明の範囲内である。切断中に、スプールの配向が大きく分散せず、その相対的配向(アライメント)が5度以内、より好ましくは2度以内、最も好ましくは1度以内に留まることが好適である。
【0021】
「ワイヤ巻線の密度」は、スプールの軸線に沿った単位長さごとのワイヤの数を意味する。
【0022】
好ましくは保管スプールにおいて、10本以下の巻線が互いに重複し、好ましくは5本以下の巻線が重複し、理想的には巻線が重複しない。つまり最適な実施形態では、非重複巻線としての保管スプールに、好ましくは少なくとも保管スプールの最大部分にわたって、切断ワイヤが支承される。
【0023】
収容スプールと関連の保管スプールとの回転速度は、切断サイクルの主要段階では本質的に等しい。ワイヤが二つのスプールに連続的に(最初に収容スプール、それから保管スプール、またはその逆)巻き付けられる時のみ、ワイヤ受入面の速度が重要である。また、収容スプールおよび保管スプールの表面速度が同一でない場合には、ワイヤはそれが巻き付けられているスプールの速度を取るので、ワイヤは加速も減速もされる必要がないだろう。ワイヤが使い切られると収容スプールの直径が変化するので、回転速度を変えることにより、ワイヤのための張力付加システムによって、またはその両方により、速度差が軽減されなければならない。移行後、一つのスプールから次のスプールへ移るワイヤの張力のわずかな調節を除いて回転速度は同一であるべきである。
【0024】
ワイヤ案内手段は、保管スプールの軸線に沿って、および/または収容スプールの軸線に沿って、移動可能である。
【0025】
ある実施形態では、重複巻線としての切断ワイヤを保管スプールにも巻き付けることが可能であろう。しかし、本発明のねらいは、保管スプールの巻線の密度を収容スプールの巻線よりはるかに小さく保つことである。好適な実施形態において、切断ワイヤは非重複巻線として保管スプールに支承される。
【0026】
切断ワイヤの低摩損性は、巻線密度が低いか非重複巻線を全く含まない保管スプールの使用によって生じる。切断ワイヤの寿命が長いことで、ピルグリムサイクル中に新しいワイヤ部分の追加を抑えられる。
【0027】
本発明の好適な実施形態は、高いダイヤモンド密度を有するダイヤモンド切断ワイヤの使用を可能にする。典型的なワイヤは、1mm
2につき約600個のダイヤモンドを有する。高密度のワイヤは、1mm
2につき800個またはそれ以上のダイヤモンドを表面に有する。好ましくは、ダイヤモンド密度は、切断ワイヤ面1mm
2につきダイヤモンドが少なくとも800個、より好ましくは少なくとも1,000個に上る。非重複(またはほとんど重複しない)巻線の保管スプールに対する巻き付け/巻き出しは、切断ワイヤにほとんど影響しない(つまり巻き付けおよび巻き出しから生じる摩耗はわずかである)。ダイヤモンドの摩耗および離脱が回避されうる。
【0028】
収容スプールと保管スプールの一方が他方のスプールよりも高速で回転しないように、通常は同期化手段が設けられる。このような同期化は、機械的に、または制御デバイスによって実現されうる。ワイヤの歪みおよび/または捻じれを防止するため、保管スプールおよび収容スプールは少なくとも本質的に同じ回転速度で回転すべきである。
【0029】
本発明のさらなる利点は、以下の通りである。
ワイヤソー全体の切断性能にとって不可欠である切断ワイヤを破損させないことが明白である。
ダイヤモンドワイヤウェハ成形において最大のコスト要因である高価な切断ワイヤの必要性が低い。切断ワイヤの消費量が著しく低減される。切断ワイヤのコストが50%まで削減されると予測される。
良好なウェハ品質。ワイヤは尖鋭なままであり、撓曲ははるかに少ない。この結果、良好なTTV、SM、Warp値が得られる。
ワイヤが長い間尖鋭なままであることによる切断の高速化。
スプールが長い寿命も有してワイヤ破損がそれほど頻繁に発生しないことによる停止時間の減少。
【0030】
保管スプールと収容スプールの回転軸線の一致により、非常に単純で省スペースの構造が達成される。一つのスプールから他のスプールへも切断ワイヤの進行は、簡易な手法で実現されうる。
【0031】
ワイヤ案内手段は好ましくは、ワイヤ供給ユニットの収容スプールの新ワイヤを切断エリアへ漸増的に追加することを容易にする、および/または、摩損ワイヤを受入ユニットの収容スプールへ廃棄するのに適応している。
【0032】
保管スプールの一端部が収容スプールの一端部と対向するように、保管スプールと収容スプールとが配設される。回転軸線はスプール軸線と一致する。
【0033】
好ましくは、保管スプールのワイヤ支承面の直径は、収容スプールのワイヤ支承面の直径より大きい。こうして、大量のワイヤを多数の重複巻線として収容スプールに保持することができる。他方、ワイヤは保管スプールでは重複せず、そのため直径は大きくなりうる。直径が大きいと、大量のワイヤを非重複状態で一時的に保管できる。発明の好適な実施形態では、移行領域での保管スプールおよび収容スプールの直径は本質的に同じである。こうして、切断ワイヤを取り出す時、つまり一つのスプールから他のスプールへ取り出しを変更する時に、妨げのない移行となる。最も好適な実施形態では、保管スプールの直径と収容スプールの直径とは本質的に同一である。
【0034】
代替的実施形態では、保管スプールのワイヤ支承面は収容スプールのワイヤ支承面とほぼ同じ直径を有するか、切断ワイヤが完全に装填された収容スプールの直径は、保管スプールのワイヤ支承面と同じかこれより大きい直径を有する。収容スプールがほどける際に、ワイヤ巻線上面の直径は減少する。(新しいワイヤを含むスプールが使用される時間にわたる)平均では、収容スプールのワイヤ巻線上面と保管スプールのワイヤ支承面との間の差は、可能な限り小さく抑えられる。ワイヤ支承面はワイヤと接触しているスプールの表面であり、ワイヤ巻線上面はこのスプールのワイヤ巻線により形成される上面である。
【0035】
好ましくは、保管スプールのワイヤ支承面の長さは収容スプールのワイヤ支承面の長さより大きい。こうして、大量の切断ワイヤの一時的保管が可能となる。
【0036】
収容スプールが好ましくは着脱可能状態で保管スプールに取り付けられることが好ましい。真新しい切断ワイヤをワイヤソーに挿入する時には、新しい切断ワイヤが装填された新しい収容スプールによって空の収容スプールが容易に交換されうる。
【0037】
好ましくは、収容スプールはスリーブ状に形成されて保管スプールの端部領域に被せられる。このように、着脱可能な収容スプールは軽量でコスト効率の良い構造であり、容易に同心状態で保管スプールに取り付けられる。
【0038】
好ましくは、ワイヤ供給ユニットとワイヤ受入ユニットの少なくとも一方は、収容スプールの回転速度と保管スプールの回転速度とを互いに同期化することが可能な同期化手段を包含する。こうして、収容スプールと保管スプールとに巻き付けられたワイヤ部分すべてが同じ速度で回転するので、最適なワイヤ管理が可能となる。
【0039】
収容スプールと保管スプールとは、共通の回転軸上に取り付けられうる。回転軸は、支持体により収容スプールと保管スプールとの間に支持されうる。こうして、収容スプールは片側のみから取り付けられ、ゆえに容易な交換が可能である。取り付け部はさらに、収容スプールから保管スプールへの、またその逆のワイヤの乗り換えを容易にする(静止または回転している自由または強制的な)傾斜またはテーパ部分を有しうる。好ましくは、共通回転軸は、共通機械回転軸などの機械回転軸である。
【0040】
好ましくは、同期化手段は保管スプールと収容スプールとの間の固定接続であり、保管スプールと収容スプールとは共通の回転駆動装置を有する。耐トルク接続であるこのような機械的接続は、スプールの最適な同期化を保証する。
【0041】
好ましくは、保管スプールおよび収容スプールの各々は独自の回転駆動装置を有し、同期化手段は、回転駆動装置に接続された制御デバイスである。両方のスプールが個別の駆動装置を有する場合には、回転速度が一時的に変化して、「表面速度」または円周速度(ワイヤが巻き付けられる円周)を均等化する。このようにして、スプール間で切り換わる時のワイヤの衝撃が軽減されうる。しかし、切断手順時間の大部分で回転速度は均等でなければならない。
【0042】
別々の駆動装置により、スプールの間で切り換わる時のワイヤ速度の急変に対処できる。発生する力を(おそらくは電動式の)ダンサプーリなど他の衝撃減衰手段が容易に補正するように、スプールの間の移行は好ましくは非常に低い回転速度で行われる。トラベラプーリは、ワイヤの張力を所与の公差内に保持しうる。収容スプールと保管スプールとは、通常は同じ回転速度を有する。移行エリアのみで、回転速度の若干の偏差が望ましい。これは、別々の駆動装置を制御する制御デバイスにより達成されうる。
【0043】
収容スプールと保管スプールとの間の移行エリアでは、ワイヤ張力の変化を軽減するため弾性材料が設けられうる。収容スプールと保管スプールとが切断手順中に互いに同期化されることでワイヤ破損を回避することが重要である。
【0044】
保管スプールおよび/または収容スプールは、一つのスプールから他のスプールへのワイヤの移行を容易にする移行エリアを有しうる。このエリアは、ワイヤの保管ではなく移行をスムーズにするのに使用される。
【0045】
好ましくは、保管スプールと収容スプールとの間の移行エリアはテーパ状または丸い形状を有し、好ましくは、保管スプールと収容スプールとの間に挿入される別の部材によって移行エリアが形成される。こうして、収容スプールから保管スプールへのワイヤのスムーズな移行が可能となる。好ましくは、移行エリアは弾性材料で形成される。
【0046】
好ましくは、ワイヤ案内手段は、保管スプールの回転軸線上で移動可能であるトラベラプーリを包含する。トラベラプーリの線形移動により、規定の状態で、好ましくは非重複巻線として保管スプールにワイヤを巻きつけることができる。トラベラプーリの経路は好ましくは保管スプールの長さにわたって、そして収容スプールの長さにわたって延在するため、新しいワイヤを追加する時に、ワイヤが収容スプールから直接的に取り出されうる。
【0047】
好ましくは、ワイヤ案内手段は、保管スプールのワイヤ支承面にある少なくとも一つの螺旋ワイヤ案内溝を包含する。こうして非規定状態での巻きを防止できる。
【0048】
好ましくは、保管スプールはドラムである。ドラムは、好ましくは比較的軟質のシースまたはマントル(ショア硬度98°など)を有する。軟質のマントルは交換されうる。保管スプールは、マントルが交換される前にドラムが多数回使用されうるように表面を平滑にするため数回の旋盤加工または研削が行われうる弾性コーティングを有しうる。
【0049】
すでに上述したように、保管スプールは、螺旋ワイヤ案内溝を含むマントルを有しうる。ワイヤはスプールを中心に螺旋状に置かれなければならないので、ワイヤが正しい場所にあることが重要である。螺旋溝は、この目的を効率的にサポートする。
【0050】
この目的は、インゴット、ブリック、またはコアなど、好ましくは半導体材料である材料の材片を切断するためのワイヤソーによっても達成され、ワイヤソーは、切断エリアと、切断エリアで切断ワイヤを案内するための案内手段と、切断ワイヤを両方向に駆動するための駆動手段とを有し、上記実施形態の一つによるワイヤ管理システムを包含するワイヤソーであることを特徴とする。工作物は何らかの材料、一般的には、サファイア、ホウ素、ガラス、水晶、シリコン等のような脆性材料でありうる。
【0051】
ワイヤソーは、ウェハ(ワイヤウェブ)の切断、ブリック形成(WO2010128011A1などに開示されているワイヤメッシュ)、クロッピング、方形化(丸いインゴットを方形または疑似方形、つまり傾斜角部を含む一般的な単結晶形状にする)、ロッドの切断、および/または脆性材料の他の切断動作に使用されうる。
【0052】
ワイヤソーの切断ワイヤは、供給ユニットの収容スプールと受入ユニットの収容スプールとの間に延在する。つまり、ワイヤの両端部は収容スプールに固定されている。これらのスプールの間で、ワイヤは、工作物を切断するための切断部分(ワイヤウェブや単一切断範囲など)を切断エリアに形成する。
【0053】
好ましくは、ワイヤソーは、切断ワイヤからワイヤウェブを形成するための少なくとも二つのワイヤ案内ローラを包含する。
【0054】
しかし本発明は、方形化、ブリック形成、クロッピングにも使用されうる。切断領域は、単一のワイヤ、または隣接するか交差する多数のワイヤを含みうる。ワイヤ間の距離は1ミリメートル未満(ウェハ成形など)か、10センチメートルより大きい(ブリッキングなど)。本出願において、ワイヤソーの語はこれらのタイプのソーをすべて指す。
【0055】
インゴット、ブリック、またはコアなどの、好ましくは半導体材料である材料の材片を、上述したようなワイヤソーで切断する切断方法により、この目的が達成され、切断エリアでの切断ワイヤの移動方向は交互に逆転され、第1方向での切断ワイヤの移動中に、ワイヤ供給ユニットおよびワイヤ受入ユニットの一方の保管スプールから切断ワイヤが巻き出される。
【0056】
好ましくは、保管スプールのワイヤ支承面の長さの少なくとも60%、好ましくは少なくとも80%に切断ワイヤが見られなくなるまで第1方向での切断ワイヤの移動が続き、それから切断ワイヤの移動方向が逆転される。方向が変更される時に保管スプールのワイヤ支承面がワイヤを案内するように、ワイヤはワイヤ支承面に少なくとも部分的に残りうる。
【0057】
好ましくは、第1方向での切断ワイヤの移動中に、切断ワイヤがワイヤ供給ユニットおよびワイヤ受入ユニットの他方の保管スプールに巻き付けられる、および/または、保管スプールのワイヤ支承面の長さの少なくとも40%、好ましくは少なくとも20%に切断ワイヤが見られない時に第1方向での切断ワイヤの移動が逆転される。
【0058】
好ましくは、保管スプールのワイヤ支承面全体に切断ワイヤが見られなくなり新しい切断ワイヤの一部分が収容スプールから巻き出されるまで、第1方向での切断ワイヤの移動が続く。
【0059】
好ましくは、切断ワイヤは、固定砥粒を有するワイヤ、好ましくはダイヤモンドワイヤである。
【0060】
ワイヤは、特許文献4から、および/または、特許文献5から周知のような構造化ワイヤでありうる。
【0061】
特許文献6から、研磨粒子としてナノチューブを使用するワイヤが知られている。
【0062】
基本的に、張力状態でのスプールに対する巻き付けおよび巻き出しに神経を使うあらゆる種類の切断ワイヤにとって、本発明は有益である。
【0063】
切断方法の一実施形態は、未使用ワイヤが切断区分へ、好ましくは間隔を空けて追加されることを特徴とする。一ステップで、ワイヤ供給ユニットの収容スプールからワイヤ受入ユニットの保管スプールへ切断エリアを介してワイヤが移送される(「新しい」ワイヤ部分)の追加)。別のステップでは、ワイヤ供給ユニットの保管スプールからワイヤ受入ユニットの収容スプールへ切断エリアを介してワイヤが移送される(摩損ワイヤ部分の廃棄)。
【0064】
切断ワイヤのための張力付与システムは、好ましくは、移動可能でありプーリアームに取り付けられるダンサプーリから成る。好ましくは、実際張力を測定するために測定デバイスが一体化される。このようにして、トラベラプーリの最適位置を事前に算出することにより、被制御巻き取りプロセスが達成されうる。
【0065】
切断区分への未使用ワイヤの追加にも同じことが当てはまる。巻線に応じて収容スプール上の正確な位置を取るように、トラベラプーリが制御される。
【0066】
スプール上のワイヤピッチを正確に考慮に入れるためと、保管スプール上の巻線が互いに接触するのを防止する(非重複)ために、制御が必要とされる。これは高速においても保証される。
【0067】
好ましくは、第1方向での切断ワイヤの移動中に、切断ワイヤは、ワイヤ供給ユニットの保管スプールから巻き出され、ワイヤウェブの新ワイヤ側を介してワイヤウェブへ移送され、ワイヤウェブの使用後ワイヤ側を介してワイヤウェブからワイヤ受入ユニットへ移送されてここで保管スプールに巻き付けられ、また第2方向での切断ワイヤの移動中に、切断ワイヤは、ワイヤ受入ユニットの保管スプールから巻き出され、ワイヤウェブの使用後ワイヤ側を介してワイヤウェブへ移送され、ワイヤウェブの新ワイヤ側を介してワイヤウェブからワイヤ供給ユニットへ移送され、ここで保管スプールに巻き付けられる。
【0068】
好ましくは、類似の長さ、好ましくは等しい長さの切断ワイヤ材片がワイヤ供給ユニットの保管スプールから巻き出され新ワイヤ側を介してワイヤウェブへ移送される間に確実にこのスプールに保管されるように、使用後切断ワイヤの自由規定材片は、ワイヤウェブの使用後ワイヤ側を介してワイヤウェブから移送されてワイヤ受入ユニットの収容スプールに巻き付けられる。
【0069】
好ましくは、類似の長さ、好ましくは等しい長さの切断ワイヤ材片が使用後ワイヤ側を介してワイヤウェブへ移送されワイヤ受入ユニットの保管スプールに巻き付けられる間にワイヤウェブを部分的に取り替えるため、ワイヤ供給ユニットの収容スプールから巻き出された新しい切断ワイヤの自由規定材片がワイヤウェブの新ワイヤ側を介してワイヤウェブへ移送される。
【0070】
好ましくは、ワイヤ受入ユニットの収容スプールに切断ワイヤを巻き付けた後に、ワイヤ案内手段により誘導されてからワイヤ受入ユニットの保管スプールに巻き付けられる間に、切断ワイヤが切断エリアで同じ方向に移動し続ける。
【0071】
好ましくは、ワイヤ供給ユニットの保管スプールから切断ワイヤを完全に巻き出した後に、ワイヤ案内手段により誘導されてからワイヤ供給ユニットの収容スプールから巻き出される間に、切断ワイヤが切断エリアで同じ方向に移動し続ける。
【0072】
好ましくは、ワイヤ案内手段により保管スプールから収容スプールへ、またその逆に誘導される間に、切断ワイヤのワイヤ速度は最大ワイヤ速度の20%未満、好ましくは5%未満まで低下する。
【0073】
好ましくは、供給ユニットの保管スプールのワイヤ支承面の長さの少なくとも80%、好ましくはほぼ100%に切断ワイヤが存在しなくなるまで、第1方向での切断ワイヤの移動が継続し、それから切断ワイヤの移動方向が逆転し、続いて、受入ユニットの保管スプールのワイヤ支承面の長さの少なくとも80%、好ましくはほぼ100%に切断ワイヤが存在しなくなるまで、第2方向での切断ワイヤの移動が継続する。
【0074】
好ましくは、時間とともに、ワイヤ供給ユニットの収容スプールが完全に空になってから新しい満載収容スプールと交換されなければならなくなり、同じくワイヤ受入ユニットの満載収容スプールが空の収容スプールと交換されなければならなくなるまで、使用後切断ワイヤの一つの材片が次々にワイヤ受入ユニットの収容スプールに載置される。
【0075】
好ましくは、切断ワイヤの移動方向の複数逆転を包含する第1切断サイクルの間に、切断ワイヤの一区分、好ましくは切断ワイヤの未使用区分は切断エリアに達することなく供給ユニットの回転保管スプールに残るように、切断ワイヤが供給ユニットの回転保管スプールから完全に巻き出される前に切断ワイヤの移動方向が逆転され、切断ワイヤの移動方向の複数逆転を包含する第2切断サイクルの間に、第1サイクルの間に切断エリアに達することなく供給ユニットの回転保管スプールに残っている切断ワイヤの一区分が切断エリアへ給送されるように、好ましくはここまで運ばれるように、切断ワイヤの移動方向が逆転される。好ましくは、第2切断サイクルの間に、切断ワイヤの使用後区分が切断エリアに達することなく受入ユニットの回転保管スプールに保管されるように、切断ワイヤが受入ユニットの回転保管スプールから完全に巻き出される前に切断ワイヤの移動方向が逆転される。
【0076】
この実施形態では、続いて行われる切断サイクルによって材片を切断することができ、各切断サイクルは重複していてもいなくても、切断ワイヤの異なる区分を使用する。切断ワイヤの一区分が(ダイヤモンドなどの粒子の摩耗により)完全に摩損した場合には、切断ワイヤの隣接区分が使用されうる。このような未使用区分は供給ユニットの保管スプールに見られる。最初に、少なくとも2回の異なる切断サイクルのためのワイヤ長さを用意するように、供給ユニットの保管スプールに充分なワイヤが保管される。(使用後)区分から(未使用)区分への切り替えは、供給ユニットの収容スプールから新しい(未使用)ワイヤを巻き出すことなく、また受入ユニットの収容スプールへ古い(使用後)ワイヤを巻き付けることなく、行われうる。このようにして、切断(つまり材片、インゴット、ブリック、またはコアの完全な切断)の間に、保管スプールと収容スプールとの間の移行が回避される。
【0077】
この実施形態では、切断される材料への力または圧が切断サイクルを通してより均一に分散される。新しいワイヤは、同じスプール、つまり同じ直径の保管スプールから引き出されて、ワイヤ張力の突然の変化が生じないので、新しいワイヤの追加は力または圧力を変化させない。保管スプールのワイヤは、ワイヤウェブのワイヤと概ね同じ張力(20N〜25Nなど)を有する。しかし、収容スプールのワイヤは通常、低い張力(7N)を有する。上記の実施形態によれば、ワイヤが同じスプールから引き出されるので、切断ワイヤ速度、切断ワイヤの張力などの変化は生じない。こうして、細溝(ワイヤの軸方向の溝)等、不均質なスプール表面によるウェハの理想的切断からの逸脱が、効率的に回避されうる。
【0078】
好ましくは、切断方法は、受入ユニットの保管スプールから受入ユニットの収容スプールへ切断ワイヤの使用後区分を移送するステップを包含し、この移送ステップは、受入ユニットの保管スプールから切断ワイヤの使用後区分を完全に巻き出す(つまり切断エリアへ、または切断エリアまで一時的に移動させる)ことと、続いて、切断ワイヤの移動方向を逆転させることと、切断ワイヤの使用後区分を受入ユニットの収容スプールへ巻きつけることにより、好ましくは行われる。この実施形態では、受入ユニットの保管スプールに一時的に保管されたワイヤを当該の収容スプールへ取り出すための別のステップが実施される。
【0079】
好ましくは、受入ユニットの保管スプールから受入ユニットの収容スプールへの切断ワイヤの使用後区分の移送ステップは、二つの連続切断の間に行われる。この実施形態では、材料の切断は二つの切断の間に、つまりワイヤウェブ(切断エリア)と接触している(切断対象)材料が存在しない時に実施されるので、この移送ステップによって材料の切断は影響を受けない。
【0080】
発明の別の態様は、切断ワイヤの不均一な摩耗に関する。通常、切断ワイヤは区分単位で使用される、つまり第1切断サイクルでは切断ワイヤの第1区分が使用され(つまり切断される材片と接触し)、次のサイクルでは次の切断ワイヤが切断に使用されるのである。切断ワイヤの区分は、この区分の端部領域では特に不均一な摩耗に抵抗し、まだ「尖鋭である」切断ワイヤの損失、つまり最適とは言えない切断ワイヤの利用につながることが認識されている。
【0081】
この問題は、好ましくはインゴット、ブリック、またはコアの形をした好ましくは半導体材料である材料の材片を、切断エリアで案内される切断ワイヤを有するワイヤ管理システムを包含するワイヤソーにより切断する、特に上述した実施形態の一つによる切断方法によって解決され、ワイヤ管理システムは、ワイヤソーの切断エリアへ切断ワイヤを供給するためのワイヤ供給ユニットと、ワイヤソーの切断エリアから切断ワイヤを受け入れるためのワイヤ受入ユニットとを包含し、
切断ワイヤの移動方向の複数逆転を包含する第1切断サイクルの間に、切断ワイヤの第1区分が材片の切断のための切断エリアで使用され、第1切断サイクルの逆転の間に切断される材片と少なくとも一度は接触するすべてのワイヤ点により第1区分が画定され、
切断ワイヤの移動方向の複数逆転を包含する第2切断サイクルの間に、材片を切断するための切断エリアで切断ワイヤの第2区分が使用され、第2区分は第1区分と異なっており、第2切断サイクルの逆転の間に、切断される材片と接触するすべての点により画定され、
切断ワイヤの第1区分と切断ワイヤの第2区分とが、その端部領域で重複する。
【0082】
原理的には、発明のこの態様は、上述した実施形態から独立している。供給ユニットと受入ユニットとは異なる手法で構築され、例えば(収容スプールを追加せずに)保管スプールのみを各々が包含しうる。しかし、前述の実施形態の一つとの組み合わせは好適な実施形態をもたらす。
【0083】
この切断方法は、切断ワイヤを、特に切断サイクル中に使用される切断ワイヤ区分の端部領域も、最適な形で利用できる。原理は、対応の図に関して以下で詳細に説明される。
【0084】
好ましくは、切断サイクル内での切断ワイヤの2回の連続逆転の間に、材片と本質的に同じ有効相互作用長さを有するワイヤ点の範囲の外側に、重複範囲が配置される。また、切断中にワイヤウェブを完全に横切るがワイヤ案内ロールの間に残っているワイヤ区分、言わば完全利用区分は、平均するとすべてが同じ摩損を有する。その相互作用長さはすべて同じである。理想的には、第2切断区分は第1切断サイクルの完全利用区分の端部を始点とする。こうして、摩損の少ない領域が重複する。驚くことに、こうして重複区分の少ない摩損は完全利用区分と同じ量の摩損に達することが分かっている。この実施形態では、許容限度を超える切断ワイヤ区分の摩損が防止される。上記実施形態による方法を実行するための制御ユニットが設けられることは、当業者には明白である。制御ユニットは特に、切断サイクル、逆転、ピルグリム長さ、ワイヤ張力等を制御する。
【0085】
本発明のさらなる実施形態は図および従属請求項に記される。参照符号のリストは開示の一部を成す。これから図面により発明が詳細に説明される。