(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して実施形態にかかる災害情報処理装置および災害情報通知方法について説明する。なお、実施形態にかかる災害情報処理装置については、以下においてエレベータ監視装置へ適用した場合の一例を示す。
【0009】
(実施形態)
図1は、実施形態にかかる災害情報通知方法の一例を示す全体システム図である。
図1に示す災害情報通知システム1は、各建物A1、A2、・・・が備えるエレベータEV1、EV2、・・・の設備と、各建物A1、A2、・・・のエレベータEV1、EV2、・・・をサービスセンタなどで遠隔から監視するエレベータ監視装置10と、エレベータ監視装置10が各建物A1、A2、・・・のエレベータEV1、EV2、・・・から得た災害情報の出力先の端末11とを含む構成を有している。
【0010】
各建物A1、A2、・・・は、ユーザが利用する病院やマンションなどである。各建物A1、A2、・・・には、エレベータEV1、EV2、・・・が備えられ、建物内の制御設備12の制御盤12−1等により運転が制御される。また、各建物A1、A2、・・・には、地震や火災などの異常を感知して異常信号を制御設備12に出力する異常感知センサ21が設置されている。そして、本実施形態では、エレベータEV1、EV2、・・・に制御設備12から読み取りが可能な記憶部22を設置する。
【0011】
記憶部22は、例えば、制御設備12からエレベータEV1、EV2、・・・に延在する制御ケーブルに通信ケーブルを束ね、その通信ケーブルの端部に接続されたエレベータEV1、EV2、・・・の操作盤などのメモリである。この他、記憶部22をエレベータEV1、EV2、・・・に無線タグとして設け、移動するエレベータEV1、EV2、・・・やエレベータEV1、EV2、・・・の通過経路に設置したリーダなどに制御設備12からコマンドを送って情報を取得するようにしてもよい。
【0012】
記憶部22には、その建物を利用するユーザのユーザ情報D1と、その建物が病院である場合には、更に、その建物の病院名や、病院の診療情報などを含む病院情報D3を記憶させている。ユーザ情報D1には、ユーザのかかりつけの病院名と診療科目とを判別することができる情報(診療情報)とが含まれる。例えば、病院のエレベータの記憶部22には、その病院の利用者の診療情報を含める。また、マンションのエレベータの記憶部22には、その住人の診療情報を含める。診療科目は病名や治療内容などであってもよく、以下において、特に診療科目に限定しない場合に診療科目を上位概念で「診療情報」と呼ぶ場合がある。
【0013】
エレベータ監視装置10は、各建物A1、A2、・・・などから得られた情報に基づきデータベース作成システム10−1によりデータベースを作成し、病院の受け入れ可否や最適な病院を算出する。エレベータ監視装置10は、各建物A1、A2、・・・内の制御設備12がエレベータ監視装置10と通信するための遠隔監視端末装置12−2との間で、ネットワークN1を介してデータを送受信する。エレベータ監視装置10と端末11とはネットワークN2を介してデータを送受信する。ネットワークN1としては、専用線が考えられる。ネットワークN2は、携帯電話網やインターネットなどが考えられる。データベース作成システム10−1の詳細については後述する。
【0014】
端末11は、例えば、ユーザ端末や避難所に設けた表示ディスプレイなどである。ユーザ端末には、デスクトップ型のPC(Personal Computer)や、スマートフォンや、タブレット端末、携帯電話機や、ファックスや、プリンタなどが挙げられる。
【0015】
(災害情報通知方法)
以上のような災害情報通知システム1では、広域災害が発生すると、先ず、災害が生じた地域の建物内で異常感知センサ21が反応し、その建物内の制御設備12で異常感知センサ21による異常信号を検出する(S1)。
【0016】
制御設備12は、異常信号を検出すると建物内の各エレベータEV1、EV2、・・・の動作を、例えば後述するような管制運転を行ってチェックし、各エレベータEV1、EV2、・・・について稼動可能や稼動不可などの稼動状況(稼動状況情報D2)を収集する(S2)。
【0017】
続いて、制御設備12は、記憶部22からユーザ情報D1と、その建物が病院である場合は病院情報D3とを取得し、当該ユーザ情報D1と病院情報D3と収集した稼動状況情報D2とを、エレベータ監視装置10にネットワークN1を介して送信する(S3)。
【0018】
エレベータ監視装置10は、異常が感知され1つ又は複数の建物から送信された各情報を受信してデータベースを作成し、その中に病院情報D3が含まれていた場合に、データベースから病院の候補を算出するための処理を行う(S4)。データベースは、複数の病院の病院情報と、ユーザの持病又はかかりつけの病院を示すユーザ情報とを記憶する「災害情報処理装置が備える記憶部」の一例である。異常が感知され1つ又は複数の病院から送信された病院情報D3とユーザ情報D1とを各種のテーブルに設定して記憶する。なお、病院情報D3やユーザ情報D1は、エレベータ監視装置10に予め記憶させておいてもよいし、外部データベースなどから取得してもよい。病院情報D3を外部データベースから取得する場合の一例については、変形例3として後に示す。
【0019】
エレベータ監視装置10は、例えば、受信した稼動状況情報D2から、病院のエレベータの稼動可否をチェックする。そして、エレベータが稼動不可であった場合に、受け入れが困難な状況と判定し、その病院のユーザ情報(ユーザ情報D1に対応)に含まれている各ユーザを対象に、各ユーザのそれぞれの診療科目の受け入れが可能な他の病院の候補を他の病院情報(病院情報D3に対応)から抽出する。
【0020】
また、総合病院などのように診療科目に応じて診察室や検査室などに昇降するためのエレベータが異なる場合には、稼動状況情報D2から、診療科目ごとにエレベータの稼動可否をチェックする。そして、一部の診療科目の受け入れが困難な状況にあれば、その病院のユーザ情報D1において当該一部の診療科目の受診が設定されているユーザを対象に、各ユーザのそれぞれの診療科目の受け入れが可能な他の病院の候補を病院情報から抽出する。この場合、各エレベータEV1、EV2、・・・に記憶部22を設け、各記憶部22に対し、それぞれのエレベータEV1、EV2、・・・に対応する診療科目のユーザ情報を記憶させることができ、ユーザをエレベータEV1、EV2、・・・毎に管理することができる。
【0021】
続いて、エレベータ監視装置10は、算出した各ユーザのそれぞれの病院の候補を、各ユーザが確認可能な端末11に出力する(S5)。
【0022】
続いて、災害情報通知システム1の各装置の具体的な構成や処理フローについて説明する。なお、各建物A1、A2、・・・については、各建物A1、A2、・・・の既存の設備において、記憶部22の設置や、稼動状況情報D2を収集する管制運転などを行うことにより実施することができる。従って、各建物A1、A2、・・・については、記憶部22のユーザ情報D1のデータ構成や、制御設備12による稼動状況情報D2の収集処理について説明する。また、ユーザの端末11については、情報の出力を行うことができる端末であり、その構成は一般的に知られている。従って、ここでは、端末11の構成について説明は省略する。
【0023】
(制御設備12による収集処理)
先ず、各建物A1、A2、・・・の制御設備12が各々の建物内のエレベータEV1、EV2、・・・の稼動状況情報D2を収集する処理について説明する。ここでは、異常感知センサ21が地震に反応した場合の制御設備12の管制運転制御の処理を例に説明する。
【0024】
図2は、制御設備12の管制運転制御の処理の一例を示す図である。
図2に示すように、制御設備12は、異常感知センサ21の出力をモニタし、その出力が「P波」または「特低レベルの加速度値」以上かを判定する(S21)。「P波」または「特低レベルの加速度値」以上でない場合(S21:No判定)、各エレベータEV1、EV2、・・・を平常運転のままにし(S22)、各エレベータEV1、EV2、・・・について、稼動状況情報D2に「稼動可能」を示す情報を設定する(S23)。
【0025】
一方、「P波」または「特低レベルの加速度値」以上であった場合は(S21:Yes判定)、「低レベルの加速度値」以上を示すかを判定する(S24)。ここで、「低レベルの加速度値」以上でない場合は(S24:No判定)、地震規模が「特低レベルの加速度値」の範囲であることを示す。続けて、各エレベータEV1、EV2、・・・が走行中であるかを判定し(S25)、エレベータが走行中でない場合(S25:No判定)、そのエレベータを60秒程度停止後(S26)、平常運転に戻し(S27)、そのエレベータについて稼動状況情報D2に「稼動可能」を示す情報を設定する(S28)。
【0026】
また、エレベータが走行中である場合は(S25:Yes判定)、最寄階または非常着床階へ10秒程度で着床できるかを判定する(S29)。10秒程度で着床できる場合(S29:Yes判定)、ステップS26に移行する。
【0027】
10秒程度で着床できない場合(S29:No判定)、そのエレベータの非常停止安全装置が正常かをチェックし(S30)、正常である場合(S30:Yes判定)、ステップS26に移行する。
【0028】
非常停止安全装置が正常でない場合は(S30:No判定)、運転を休止し(S31)、そのエレベータについて稼動状況情報D2に「稼動不可」を示す情報を設定する(S32)。
【0029】
一方、「低レベルの加速度値」以上である場合は(S24:Yes判定)、そのエレベータが走行中かを判定し(S33)、走行中でなければ(S33:No判定)、そのエレベータを停止した状態で(S34)、そのエレベータについて稼動状況情報D2に「稼動不可」を示す情報を設定する。その後、自動復旧運転または点検員による点検により(S36)、平常運転に戻ると(S37)、そのエレベータについて稼動状況情報D2の「稼動不可」を「稼動可能」に更新する(S38)。
【0030】
「低レベルの加速度値」以上である場合において(S24:Yes判定)、エレベータが走行中である場合は(S33:Yes判定)、そのエレベータが最寄階または非常着床階へ10秒程度で着床可能かを判定する(S39)。着床可能でない場合(S39:No判定)、そのエレベータを非常停止し(S40)、ステップS42に移行する。
【0031】
一方、着床可能である場合(S39:Yes判定)、安全装置が一時的に作動しエレベータが停止した状態になったかを判定する(S41)。そうなっていない場合(S41:No判定)、異常感知センサ21の出力が「高レベルの加速度値」以上を示すかを判定する(S42)。ここで「高レベルの加速度値」以上でない場合(S42:No判定)は、地震規模が「低レベルの加速度値」の範囲であることを示す。この場合、続いて、安全装置が正常かを判定し(S43)、安全装置が正常な場合に(S43:Yes判定)、ステップS34に移行する。
【0032】
安全装置が正常でない場合には(S43:No判定)、そのエレベータを停止し(S44)、そのエレベータについて稼動状況情報D2に「稼動不可」を示す情報を設定する(S45)。
【0033】
一方、異常感知センサ21の出力が「高レベルの加速度値」以上である場合(S42:Yes判定)は、地震規模が「高レベルの加速度値」の範囲であることを示す。この場合、非常救出運転して運転を休止し(S46)、そのエレベータについて稼動状況情報D2に「稼動不可」を示す情報を設定する(S47)。
【0034】
なお、安全装置が一時的に作動しエレベータが停止した状態になった場合は(S41:Yes判定)、そのエレベータについて稼動状況情報D2に「稼動不可」を示す情報を設定する(S45)。
【0035】
以上のように、異常感知センサ21が地震に反応すると、制御設備12が管制運転を実施し、その建物内の各エレベータEV1、EV2、・・・について、稼動状況情報D2に稼動可否の情報が設定される。
【0036】
(エレベータ監視装置10の構成)
エレベータ監視装置10は、制御部51(
図1参照)と、HDD(Hard Disk Drive)と、通信インタフェースとを有する。これらは、バスなどを介して接続されている。
【0037】
制御部51は、CPU(Central Processing Unit)とROM(Read Only Memory)とRAM(Random Access Memory)とを備えたコンピュータ構成であり、CPUがROMのプログラムを実行することにより、演算処理やエレベータ監視装置10の各部の制御処理を行う。RAMはCPUの作業領域などとして使用する。
【0038】
HDDは、磁気ディスクを備え、制御部51からの命令に基づき、磁気ディスクからのデータの読出しや、磁気ディスクへのデータの書き込みなどを行う。HDDは、後述するデータベース(「記憶部」の一例)などを格納する。
【0039】
通信インタフェースは、ネットワークN1、ネットワークN2に接続し、通信先とデータを送受信する例えばイーサネット(登録商標)ボードである。
【0040】
エレベータ監視装置10のデータベース作成システム10−1は、制御部51を備えている。
図1には、制御部51における機能ブロックの構成の一例を示しておる。制御部51がプログラムを実行することにより、各種機能が実現される。
図1には、それらの内の主な機能として、第1の受付部101と、処理部103と、出力部104とを示している。
【0041】
第1の受付部101は、各建物A1、A2、・・・の制御設備12から送信されるエレベータEV1、EV2、・・・の稼動状況情報D2を受け付ける。具体的には、各建物A1、A2、・・・の制御設備12から送信された稼動状況情報D2とユーザ情報D1と、その建物が病院である場合は更に病院情報D3とを含む、送信データを通信インタフェースが受信し、通信インタフェースからの通知などにより、第1の受付部101が稼動状況情報D2とユーザ情報D1と病院情報D3とを処理対象として処理部103に渡す。
【0042】
処理部103は、稼動状況情報D2とユーザ情報D1と病院情報D3とを含むデータベースを作成し、当該データベースから病院の受け入れが可能かの要否や、他の受け入れ可能な病院の候補を算出する。例えば、稼動状況情報D2の設定から病院内の各診療科目の受け入れ状況を読み取る。そして、稼動状況情報D2と共に送信されたユーザ情報D1において、当該病院の診療科目がかかりつけになっている各ユーザを対象に、当該病院においてユーザの受診科目の受け入れが可能かどうかの判定や、当該病院で受け入れが困難な場合には、さらに他の病院の候補を他の病院情報D3から抽出する処理などを行う。
【0043】
出力部104は、処理部103による判定結果(算出結果)、つまり、かかりつけの病院の受け入れ状況の結果や各ユーザのそれぞれの最適な病院の候補を、該当する各ユーザの端末11に出力する。
【0044】
(テーブル)
続いて、データベースが備えるテーブルの一例を示す。
図3は、病院情報D3についての設定テーブルの一例を示す図である。
図3(a)に示す各診療科目テーブルT1は、「診療科目」と、その「診療科目」を行き先とする「エレベータの識別情報」とを、「病院単位」で設定するテーブルである。各診療科目テーブルT1には、処理部103が病院情報D3から病院の診療科目についてのリストと、各診療科目を利用するためのエレベータEV1、EV2、・・・とを抽出して設定する。ここでは、一例として「第1病院」と「第2病院」と「第3病院」についての3つのテーブルを示し、その他は図示を省略しているが、その他の病院についてのテーブルについても、同様に有するものとする。
【0045】
図3(b)に示す病院位置情報テーブルT2は、病院の場所を設定するテーブルである。病院位置情報テーブルT2には、処理部103が病院情報D3から病院の場所として位置情報(緯度情報、経度情報)を抽出して設定する。
【0046】
具体的に、
図3(a)に示す各診療科目テーブルT1の例では、「診療科目」の項目に全ての病院の各診療科目を示し、「内科」や「外科」などの各診療科目ごとに、対応するエレベータがあれば「○」を設定している。「×」は該当しないことを表している。
【0047】
例えば、「第1病院」の診療科目テーブルT1において、各エレベータEV1、EV2、・・・の内の「EV1」で「内科」と「外科」に「○」が設定されている。また、「EV2」で「耳鼻科」に「○」が設定されている。これは、「第1病院」では、「内科」と「外科」を各エレベータEV1、EV2、・・・の内の「EV1」により利用できることを表し、「耳鼻科」を「EV2」により利用できることを表している。ここから「第1病院」には診療科目として「内科」、「外科」、「耳鼻科」が含まれていることも分かる。
【0048】
これに対し、「第2病院」は、2台のエレベータの「EV1」と「EV2」のどちらにおいても「内科」は「×」となっている。つまり「第2病院」には「内科」が含まれていないことが分かる。また、「第3病院」は、2台のエレベータの「EV1」と「EV2」のどちらにおいても「外科」は「×」となっており、「第3病院」に「外科」が含まれていないことが分かる。
【0049】
なお、病院情報D3から各診療科目とエレベータEV1、EV2、・・・との分類までを示す情報が得られない場合には、エレベータ単位で分けて設定しなくてもよい。そのような場合、処理部103は、その病院の診療科目テーブルT1に、エレベータEV1、EV2、・・・を代表して表す「EV0」を設け、「EV0」のレコードに「内科」や「外科」や「耳鼻科」などの「○」や「×」を設定する。
【0050】
図4は、稼動状況情報D2についての設定テーブルの一例を示す図である。
図4(a)には、各建物A1、A2、・・・から地震などの災害検出により送信されてくる稼動状況情報D2の設定テーブル(稼動状況情報設定テーブルT3)の一例を示している。稼動状況情報設定テーブルT3には、処理部103により各建物A1、A2、・・・の稼動状況情報D2がレコードごとに設定される。
【0051】
一例では、「第1病院」と、「第2病院」と、「第3病院」と、「第1マンション」とから稼動状況情報D2が送信されたときの設定を示している。例えば「第1病院」については、稼動状況情報D2から、災害発生日時の「2017年11月9日、10:30」や、各エレベータEV1、EV2、・・・の「稼動可能」または「稼動不可」を示す情報が設定される。なお、「第2病院」と「第3病院」についてはエレベータが「EV1」と「EV2」しか設定されていないため「EV3」は情報が無いものとして「−」で表している。
【0052】
図4(b)には、処理部103が稼動状況情報設定テーブルT3の設定に基づいて生成した判定テーブルT4の一例を示している。この例において、判定テーブルT4は、各病院の診療科目テーブルT1の設定と、稼動状況情報設定テーブルT3の設定とから生成しており、各病院の診療科目の受け入れ状況を示している。例えば、稼動状況情報設定テーブルT3において「第1病院」は何れのエレベータも「稼動不可」である。これは、「第1病院」では患者の受け入れができないことを表している。このため、判定テーブルT4の「第1病院」には何れの診療科目にも受け入れ不可の「△」が設定される。判定テーブルT4において、「○」は受け入れ可を示し、「△」は受け入れ不可を示し、「×」は対応する診療科目がないことを示す。このようにして処理部103は、判定テーブルT4を随時生成し、生成した最新の判定テーブルから診療科目単位で受け入れ先の病院を探すことが可能になる。
【0053】
図5は、ユーザ情報D1についての設定テーブルの一例を示す図である。
図5に示す設定テーブル(ユーザ情報テーブルT5)は、設定項目として、「ユーザ識別情報」と、「病院名」と、「受診科目」と、「端末情報」とを有する。これらのデータは、送信されたユーザ情報D1に基づいて処理部103が設定する。これらのデータには個人情報が含まれているため、記憶部22にユーザ情報D1としてユーザ登録時に割り当てられたユニークな識別コードを記憶させてもよい。この場合、エレベータ監視装置10において、各識別コードから「ユーザ識別情報」、「病院名」、「受診科目」、および「端末情報」のデータをデータベースなどから照会して抽出する。ここで「端末情報」とは、ユーザのスマートフォンなどの端末11に登録されている各種のアドレス(MAC(Media Access Control address)アドレスやEメールアドレスなど、端末11の送信先を示す情報)である。
【0054】
(病院の候補を抽出する処理のフロー)
続いて、エレベータ監視装置10における災害通知処理の手順について説明する。
【0055】
図6は、エレベータ監視装置10(制御部51)が行う災害通知処理の手順の一例を示すフローチャートである。この処理は、エレベータ監視装置10が、災害の発生を検出した各建物A1、A2、・・・から送信される稼動状況情報D2とユーザ情報D1と、建物が病院である場合は更に病院情報D3とを含む送信データを受信することにより開始される。
【0056】
先ず、制御部51は、各建物A1、A2、・・・からの各送信データに含まれるユーザ情報D1と稼動状況情報D2と病院情報D3とを受け付ける(S101)。
【0057】
続いて、制御部51は、各建物A1、A2、・・・から送信された上記ユーザ情報D1と上記稼動状況情報D2と上記病院情報D3とについてデータベースを作成する(S102)。本実施形態において示す例では、制御部51は、上記ユーザ情報D1のデータをユーザ情報テーブルT5(
図5参照)に設定し、上記稼動状況情報D2のデータを稼動状況情報設定テーブルT3(
図4(a)参照)に設定する。また、制御部51は、上記病院情報D3のデータを診療科目テーブルT1(
図3(a)参照)と病院位置情報テーブルT2(
図3(b)参照)とに設定する。そして、各病院の診療科目テーブルT1(
図3(a)参照)の設定と、稼動状況情報設定テーブルT3の設定とから、判定テーブルT4(
図4(b)参照)を生成する。
【0058】
判定テーブルT4の生成は、具体的には、処理部103が次のように行う。先ず、各病院の診療科目テーブルT1から、各エレベータに対応する診療科目をエレベータ毎に抽出し、稼動状況情報設定テーブルT3において、該当する病院且つエレベータの稼動状況を示す情報を抽出する。そして、判定テーブルT4に対し、病院名と、その病院のそれぞれの診療科目について、上記稼動状況を示す情報が「稼動可」であれば「○」を、「稼動不可」であれば「△」を設定する。先にも説明したが、「×」は診療科目がないことを示す。
【0059】
例えば、第1病院の診療科目テーブルT1において、エレベータEV1は「内科」と「外科」に通じ、エレベータEV2は「耳鼻科」に通じることが設定されている。一方、稼動状況情報設定テーブルT3において、「第1病院」の「EV1」と「EV2」は共に「稼動不可」になっている。従って、判定テーブルT4において、「第1病院」の「内科」、「外科」、および「耳鼻科」が「△」になっている。
【0060】
また、第2病院の診療科目テーブルT1において、エレベータEV1は「外科」に通じ、エレベータEV2は「耳鼻科」に通じることが設定されている。一方、稼動状況情報設定テーブルT3において、「第2病院」の「EV1」は「稼動可能」で、「EV2」は「稼動不可」になっている。従って、判定テーブルT4において、「第2病院」の「外科」が「○」で「耳鼻科」が「△」になっている。「内科」は設けていないため「×」になっている。
【0061】
続いて、制御部51は、ユーザ情報テーブルT5に設定されている各ユーザについて、かかりつけの病院の診療科目が患者を受け入れることが可能かを判定テーブルT4から判定する(S103)。
【0062】
例えば、ユーザ情報テーブルT5において、「User1」は「第1病院」の「内科」をかかりつけとする設定になっている。判定テーブルT4には、第1病院の「内科」は受け入れ不可を示す「△」が設定されている。このため、「User1」については第1病院に行っても「内科」を受けられる可能性が低いことが判明する。一方、「User2」は、ユーザ情報テーブルT5において「第2病院」の「外科」をかかりつけとする設定になっている。判定テーブルT4にも、第2病院の「外科」は受け入れ可を示す「○」が設定されている。このため、「User2」についてはかかりつけの第2病院で「外科」を受けられることが判明する。
【0063】
ステップS103においてかかりつけの病院の診療科目が受け入れ不可と判定されたユーザについては、続いて制御部51が最適な病院を選択する処理を行う(S104)。
【0064】
例えば、「User1」の場合は「内科」を受診するため、他の病院の中から「内科」を受け入れているところで最適な場所(所定の優先順序で決めた病院)を選択する。処理の具体例として、例えば、制御部51は、判定テーブルT4において「内科」に「○」が設定されているものを抽出する。この例では、その内の一つとして「第3病院」が該当する。制御部51は、抽出した各病院(この例では「第3病院」も含む)について、所定の優先順序でユーザに提示する病院の候補を決定する。例えば、基準とする位置(ユーザのかかりつけの病院や、ユーザの住居や、ユーザの現在位置など)から病院までの距離が近い順に病院の候補を上位順に並べる。
【0065】
そして、制御部51は、該当するユーザの端末11のアドレスをそれぞれ指定し、そのユーザについての病院候補を含む通知画面情報を配信する(S105)。
【0066】
(端末11に出力する通知画面)
図7は、端末11において出力される通知画面の構成の一例を示す図である。
図7に示す通知画面91には、端末11のユーザについてのかかりつけの病院の情報910と別の病院候補の情報911とを出力可能に組み込んでいる。この例では、「User1」の端末11における出力例を示しており、「User1」のかかりつけの病院の患者の受け入れ状況を「困難」として示している。また、その他の病院の候補を、距離が近い順にリスト表示し、それぞれの病院の位置を示す記号と文字を地図情報912に重畳させて示している。地図情報912は、エレベータ監視装置10が予め記憶しておいたものを出力してもよいし、外部の地図情報データベースから取得して出力してもよい。また、病院の位置を示す方法は、記号と文字に限らず、任意に設定してよい。例えば、基準とする位置(ユーザのかかりつけの病院や、ユーザの住居や、ユーザの現在位置など)から病院までの経路情報を示してもよい。
【0067】
これらの表示により、「User1」は、かかりつけの病院に行っても診療が受けられない可能性が高いと判断し、病院候補の中から別の病院を見つけ出すことができるようになる。
【0068】
本実施形態では、各建物A1、A2、・・・に、それぞれ、異常感知センサ21が1つ備わっているものとして、各処理について一例を示したが、各エレベータEV1、EV2、・・・のそれぞれに異常感知センサ21が設置されている場合も考えられる。この場合には、制御設備12において、異常信号が出力されたエレベータの動作についてチェックし、残りのエレベータについては稼動可能として稼動状況情報D2をまとめてもよい。
【0069】
また、ユーザ情報D1は、本実施形態では、各建物A1、A2、・・・の記憶部22が記憶するものとして説明したが、これに限らない。例えば、エレベータ監視装置10が予めユーザから登録を受けたり、外部のデータベースなどから取得したりしてもよい。その場合、ユーザ情報D1の各ユーザのかかりつけの病院や住居(マンション)などの情報も取得し、稼動状況情報D2が送信された各建物A1、A2、・・・とユーザとの対応関係が分かるようにしておく。
【0070】
本実施形態では、災害の発生範囲内においてユーザに最適な病院を通知することが可能になる。
【0071】
(変形例1)
災害発生時に、ユーザの端末11に対しユーザの怪我の状況や体調などの被災情報を確認する問い合わせを行い、応答されたユーザの被災情報に応じて病院の候補を抽出できるようにした変形例について示す。なお、ここでは、実施形態と異なる部分について説明し、実施形態と共通する箇所の説明は、適宜省略する。
【0072】
変形例1では、実施形態のエレベータ監視装置10の機能ブロックの構成(
図1参照)において、さらに、第2の受付部(不図示)を設けている。変形例1では、出力部104において、ユーザの端末11に候補情報と共に入力フォームも送信する。入力フォームは、ユーザの怪我の状況(体調なども含む)の被災情報を問い合わせる定型文などを含む送信情報である。
【0073】
第2の受付部は、ユーザの端末11から入力フォームに基づいて返信される被災情報を受け付ける。そして、被災情報を処理部103に渡し、病院候補を再判定させる。ここで、「返信」は、「応答」の一手段である。
【0074】
図8は、変形例1にかかる災害通知処理の一例を示すフローチャートである。ここでは、繰り返しの説明を避けるため、実施形態の災害通知処理の手順(
図6参照)に係る処理については簡単に説明する。
【0075】
ステップS104で持病についての他の病院候補を抽出すると、出力部104は、当該ユーザの端末11に対して入力フォームが送信済みかを判定する(S105−1)。
【0076】
入力フォームが送信済みでない場合(S105−1:No判定)、出力部104は、上記病院候補と共に所定の入力フォームをユーザの端末11に送信する(S105−2)。
【0077】
そして、第2の受付部が、入力フォームが送信されたユーザから返信があるかを判定する(S105−3)。例えば、第2の受付部は、一定の返信時間をカウントし、その時間内に返信がなかった場合に返信なしと判定し(S105−3:No判定)、処理を終了する。
【0078】
一定の返信時間内に返信があった場合(S105−3:Yes判定)、第2の受付部は、その返信内容(一例としてユーザの怪我を示す情報とする)を受け付け、処理部103により、ステップS103で、ユーザの怪我の状況に基づいて判定テーブルT4から再判定し、ステップS104で病院候補を抽出する。
【0079】
続いて、入力フォームは送信済みのため(S105−1:Yes判定)、出力部104は、通知画面に上記怪我についての病院候補を設定し、ユーザの端末11に送信し(S105−4)、本処理を終了する。
【0080】
図9は、第2の受付部が行う受付処理の一例を示す図である。
図9には、一例として「User1」から怪我の返信を受け付けた場合の受付処理について示している。
【0081】
先ず、災害発生時において、ユーザ情報テーブルT5には「User1」の「受診科目」が「内科」に設定されている(S201)。この設定に基づき、「User1」についての病院候補が判定テーブルT4から判定され(S202)、判定結果と、怪我を入力する入力フォームとが「User1」の端末11に送信される(S203)。
【0082】
その後、「User1」の端末11から、ユーザの怪我の状況として「打撲」と返信があったとする(S204)。すると、第2の受付部が、「打撲」が属する診療科目を診療科目テーブルT6から照会し(S205)、照会結果の診療科目を「User1」の「受診科目」に設定する(S206)。
【0083】
その後は、処理部103により「User1」の最新の設定で判定テーブルT4から病院候補が再判定され(S207)、再判定結果が「User1」の端末11に送信される(S208)。
【0084】
図10は、端末11に送信する入力フォーム情報の一例を示す図である。
図10に示す入力フォーム情報913は、ユーザの負傷内容を受け付けるための入力フォームを設けている。
図10に示す例では、災害時の主な負傷内容の一覧(打撲、骨折、捻挫、・・・など)を表示し、それぞれに対応するチェックボックス913−1を設けている。また、その他の負傷内容を受け付けるためのテキスト入力ボックス913−2を設けている。それらの入力内容の返信を行って画面を終了させる指示は、「送信する」ボタン913−3で受け付ける。入力フォームによる返信を行わずに画面を終了させる指示は、「送信しない」ボタン913−4で受け付ける。
【0085】
入力フォーム情報913は、通知画面91(
図7参照)に組み込んでもよいし、通知画面91とは別の入力フォーム画面として送信してもよい。
【0086】
本変形例1では、ユーザから被災情報として怪我の状況を受け取り、その怪我に該当する診療科目の病院候補を抽出したが、被災情報の内容に従い、病院候補を抽出する優先順序に所定の重みづけを行ってもよい。例えば、被災情報からユーザが動けるか動けないかを判定し、動ける場合は、少し遠目の病院を候補として通知し、動けない場合は、近めの病院を通知したり、その程度に応じて病院に緊急通報したりする。
【0087】
また、本変形例1では、入力フォームをエレベータ監視装置10から端末11へ送信する例を示したが、入力フォームを送信する主体は、エレベータ監視装置10に限らなくてもよい。例えば、建物が災害を感知すると、その建物のエレベータの無線アクセスポイントから、付近のユーザ(主に、そのエレベータや建物内などにいるユーザ)の端末11に入力フォーム情報が配信されるようにしてもよい。ユーザは、各端末11において被災情報を入力し、その被災情報を無線アクセスポイントからエレベータ監視装置10に送信する。この場合、エレベータ監視装置10は、災害を感知した建物から送信されるユーザ情報D1において、かかりつけの診療科目をユーザから送られた被災情報に基づく診療科目に変更して病院候補を抽出する。
【0088】
このように、変形例1では、例えば、マンションにおいてエレベータの異常が検出された場合、そのマンションから送信されるユーザ情報D1に負傷している住人の情報を含む可能性が高い。そこで、マンションなどから送られてきたユーザ情報D1に設定されているユーザの端末11に向け、入力フォームを送信し、住人の被災情報(怪我などの情報)を取得する。エレベータ監視装置10は、各住人の被災情報から該当する診療科目を判定し、受け入れ可能な病院の候補を各住人の端末11に送信する。これにより、現在の怪我に応じた病院の候補を提示することができる。
【0089】
(変形例2)
被災地域では、通信経路に断線等が発生し、通信できなくなる可能性があるため、各建物A1、A2、・・・内における通信や、各建物A1、A2、・・・とエレベータ監視装置10との間の一部または全ての通信を無線ネットワークにより構築してもよい。
例えば、各建物A1、A2、・・・のエレベータEV1、EV2、・・・に無線アクセスポイントを設ける。この場合、各無線アクセスポイントを通じて、端末11と制御設部12間や、端末11とエレベータ監視装置10間の一部または全てで、無線通信を行うことができる。各無線アクセスポイントは、例えば建物内のユーザの端末11にユーザの被災情報を確認する入力フォームを送信して、各無線アクセスポイントから各ユーザの怪我の状況などを示す被災情報を回収するなどの利用形態が考えられる。
【0090】
(変形例3)
実施形態では、災害発生範囲内において病院候補を抽出する形態を示したが、災害発生範囲外の病院も含めて病院候補を抽出することができるようにした変形例を示す。
【0091】
変形例3では、エレベータ監視装置10は、各病院の病院情報D3を外部データベース(病院情報データベースなど)から取得する。
【0092】
このように、エレベータ監視装置10は病院情報D3を外部から取得するため、各病院のエレベータに設けられた記憶部22にはユーザ情報D1を記憶させておけばよいことになる。
【0093】
エレベータ監視装置10は、災害を検出した病院から、当該病院のユーザ情報D1と当該病院の稼動状況情報D2とを受け付ける。病院情報D3については、所定のタイミングでエレベータ監視装置10が外部データベースから取得する。そして、エレベータ監視装置10は、外部データベースから取得した病院情報D3により、各病院のエレベータと診療科目との関係を診療科目テーブルT1(
図3参照)に設定する。また、病院位置情報テーブルT2(
図3参照)に各病院の位置を設定する。そして、エレベータ監視装置10は、判定テーブルT4(
図4(b)参照)を、異常感知センサ21が反応しなかった災害範囲外の病院の判定情報も含めて生成する。例えば、エレベータ監視装置10は、診療科目テーブルT1において災害範囲外の病院の各診療科目を受け入れ可の「○」に設定する。この設定により、エレベータ監視装置10は、判定テーブルT4の生成の際に、災害範囲外の病院について各診療科目に判定情報「○」を設定する。
【0094】
このように、判定テーブルT4には、災害発生範囲の病院と災害発生範囲外の病院とが設定されることになる。エレベータ監視装置10は、判定テーブルT4から、かかりつけの病院での受け入れが不可の利用者について利用可能な病院の候補を所定の優先順序で災害範囲内と災害範囲外とから算出する。例えば、判定情報が「○」の病院から、基準とする位置から病院までの距離が近い順に、災害発生範囲外の病院も含めて、病院の候補を上位順に並べる。そして、その算出結果である病院候補を利用者の端末11に送信する。
【0095】
なお、病院情報D3は、システムの起動時や、1日1回など、適宜設定したタイミングで最新のデータに書き換えることが望ましい。最新データへの書き換えは、例えば、エレベータ監視装置10が外部データベースに要求して取得したり、外部データベースから更新の通知を受け取るなどして行う。
【0096】
変形例3では、災害の発生範囲だけでなく、災害の発生範囲以外においての病院も含め、ユーザに最適な病院候補を抽出する。このように、災害の発生範囲以外の病院も含めることにより、災害発生範囲で病院が見つからなかった場合に災害発生範囲外の近隣地区からユーザに最適な病院を確実に通知することが可能になる。
【0097】
(変形例4)
災害情報の1回目の配信から所定時間経過後に、エレベータ監視装置10がユーザの端末11に病院候補の最新情報を配信できるようにした変形例について示す。ここでは、変形例1の構成において、ユーザの端末11から入力フォームの返信があった場合を一例に、最新情報を配信する構成について示す。なお、ここでは、変形例1と異なる部分について説明し、変形例1と共通する箇所の説明は、適宜省略する。
【0098】
図11は、変形例4にかかるエレベータ監視装置10の機能ブロックの構成の一例を示す図である。変形例1の機能ブロックの構成において、さらに、タイマ201と取得部202とを設けている。なお、第2の受付部301は変形例1において不図示であった第2の受付部である。
【0099】
タイマ201は、所定時間をカウントし、その時間経過を取得部202に通知する。ここでは、一例として災害発生時におけるユーザからの被災情報により再判定された病院候補が出力部104からユーザの端末11に再配信されたときから、カウントを開始し、設定された時間が経過する度に、その時間経過を取得部202に通知する。例えば、刻み間隔が「30分」で継続時間が「24時間」になるように設定した場合、タイマ201は、24時間が経過するまで30分刻みで設定時間の経過を通知する。
【0100】
取得部202は、タイマ201から設定時間の経過の通知を受ける度に、各建物A1、A2、・・・から、当該設定時間までのエレベータEV1、EV2、・・・の稼動状況を示すログ(「稼動頻度を示す情報」の一例)を取得する。そして、各ログを解析し、更新用の稼動状況情報D2を生成する。
【0101】
図12は、上記ログの一例を示す図である。
図12(a)と
図12(b)には、ある設定時間後の、第1病院から送られてきたログD21と、第3病院から送られたログD22とを示している。ここでは第1病院と第3病院のログを一例として示しているが、この他にも、第2病院や第4病院など他の病院からもログを取得する。
【0102】
ログD21は、第1病院のエレベータEV1、EV2、・・・の稼動状況を示すログである。日付と時刻の欄に示すように、「2017年11月9日」の発生時刻10時30分から1時間後の11時30分までのログである。ログD22や、その他の病院のログも同様に、「2017年11月9日」の発生時刻10時30分から1時間後の11時30分までのログが送られる。ここでは、災害発生直後からのログの全てを示しているが、送信時前に送ったログとの差分を送ってよい。
【0103】
ログD21には、第1病院のエレベータEV1とエレベータEV2は共に、発生時刻10時30分から11時27分まで稼動不可(×)であったことが記録されている。エレベータEV3など、他のエレベータも、ここでは図示を省略しているが、エレベータEV1とエレベータEV2と同様に稼動不可(×)である。そして、11時28分において、エレベータEV1とエレベータEV2とにおいて行き先の階数が「3F」と「2F」として記録されており、ここで稼動が再開したことが推測できる。再開後は、エレベータの利用が少ないため、エレベータの移動が無いことを示す(−)が記録されている。
【0104】
他方のログD22においては、第3病院のエレベータEV1とエレベータEV2は共に、発生時刻10時30分後も稼動していることが記録されている。そして、11時27分頃から、エレベータEV1とエレベータEV2とがそれぞれ頻繁に「3F」と「4F」とを行き来していることが記録され、混雑し始めてきたことが推測できる。
【0105】
図13は、病院候補が再配信された後にエレベータ監視装置10がユーザの端末11に最新の病院候補を配信するための手順の一例を示すフローチャートである。
図13には、変形例1の災害通知処理の手順(
図8参照)については省略し、ステップS105−4の後の処理について示している。なお、
図13には、説明を分かり易くするため、一人のユーザに対する処理手順を示しているが、この処理フローは、各ユーザに対して行われるものとする。
【0106】
制御部51は、ステップS105−4の再配信が終わると、タイマ201により設定時間のカウントを開始する(S301)。
【0107】
続いて、制御部51は、タイマ201が設定時間になると、各建物A1、A2、・・・から、災害発生から当該設定時間までのエレベータEV1、EV2、・・・の稼動状況を示すログ(ログD21、・・・、ログD22、・・・)を取得する(S302)。
【0108】
続いて、制御部51は、各ログから得られた最新の稼動状況情報D2によりデータベースを更新する(S303)。具体的に、制御部51は、最新の稼動状況情報D2により稼動状況情報設定テーブルT3(
図4(a)参照)の設定を更新し、稼動状況情報設定テーブルT3の更新後の設定に基づいて判定テーブル(
図4(b)参照)を生成する。
【0109】
続いて、制御部51は、当該ユーザについて、判定テーブルT4の設定に基づき最新の病院候補を抽出する(S304)。
そして、制御部51は、当該ユーザの端末11のアドレスを指定し、当該ユーザについての病院候補を含む通知画面情報を配信し(S305)、本処理を終了する。
【0110】
なお、本処理が示すように、制御部51は所定時間になると最新の病院候補を再算出し、算出結果を再配信するように動作するが、この一連の動作は、1回に限らず、複数回繰り返してもよい。例えば、タイマ201に刻み間隔が「30分」で継続時間が「24時間」になるように設定し、24時間が経過するまで30分刻みで上記処理を繰り返させるようにする。
【0111】
次に、最新の稼動状況情報D2に基づく稼動状況情報設定テーブルT3の設定例と、その設定に基づいて再生成された判定テーブルT4の設定例とについて説明する。
【0112】
図4(a)に示す稼動状況情報設定テーブルT3については、時刻が設定時刻の11時30分に更新される。また、各病院の各エレベータEV1、EV2、・・・の設定が書き換わる。
【0113】
具体的に、「第1病院」のログD21では、災害発生時は何れのエレベータEV1、EV2、・・・でも「稼動不可」であったが、11時30分頃のEV1、EV2、・・・の記録データの解析により、11時28分に復旧したことが予測され、EV1、EV2、・・・が「稼動可能」に書き換わる。また、「第3病院」のログD22では、災害発生直後もエレベータEV1、EV2共に「稼動可能」であったが、11時30分頃のEV1、EV2の記録データの解析により、11時27分頃からの頻繁な稼動が混雑と予測され、EV1、EV2が共に「混雑」に書き換わる。
【0114】
図4(b)に示す判定テーブルT4については、第1病院の各診療科目が「△」から「○」に変更される。また第3病院については、内科が「○」であったものが「混雑」により「△」に変更される。
【0115】
従って、この場合、「User1」の端末11において10時30分時点でかかりつけの病院の患者の受け入れ状況を「困難」として示されていたもの(
図7参照)が、11時30分の更新により、受け入れ可能を示す「可」に変更されることになる。「User1」については、かかりつけの病院が利用できることになるため、病院候補などの他の情報は、通知画面情報から削除してもよい。
【0116】
図14は、通知画面の内容の更新の一例を示す図である。
図14には、一例として「User3」の端末11における通知内容の更新例を示している。
図14(a)は、10時30分時点の通知例であり、
図14(b)は、11時30分時点の通知例である。これまでに説明してきたように10時30分時点では第3病院の「内科」が利用できるため、
図14(a)に示すように、かかりつけの病院の情報910の「患者の受け入れ」が「可」で示されている。一方、
図14(b)に示す11時30分時点には、第3病院の「内科」が「不可」として判断されるため、「患者の受け入れ」が「困難」に変更され、別の病院候補の情報911に病院候補として「第1病院」などが提示される。
【0117】
なお、本例の通知画面91には、エレベータが「混雑」と解析された場合であっても、かかりつけの病院の情報910の「患者の受け入れ」の欄にエレベータが稼動不可の場合と同じ「困難」を設定しているが、この設定をエレベータが稼動不可の場合と区別できるように「混雑」に変えてもよい。また、解析の際に、エレベータの頻度から混雑度数を算定し、「患者受け入れ」の欄にその「混雑度数」を設定してもよい。
【0118】
また、本例では、エレベータ監視装置10にタイマ201を設け、タイマ201の設定時刻になるとエレベータ監視装置10が各建物A1、A2、・・・からログを取得する構成としたが、各建物A1、A2、・・・が、災害を検出すると、災害発生後の一定期間、各建物A1、A2、・・・が、上記ログをエレベータ監視装置10に定期的に送信し、そのログをエレベータ監視装置10で受け付けるようにしてもよい。
【0119】
このように、変形例4では、各建物A1、A2、・・・から各時点の稼動状況情報D2の最新情報を取得して、それを病院候補の判定に反映し、最新の病院候補をユーザの端末11に配信する。このようにすることで、例えば、かかりつけの病院が災害発生当初において患者を受け入れることができなかった場合でも、災害発生から10分経過後、30分経過後、1時間経過後など、時間の経過により復旧し、受け入れが可能になる可能性が高まるため、復旧された時点で知ることができるようになる。また、他の病院候補が受け入れ可能として情報提供されていた場合であっても、時間の経過により、そこに患者が集中し、新たな患者の受け入れが困難になる場合がある。このような場合に、一定時間の経過後、改めて病院候補が提示されることで、最新の受け入れ状況を知ることが可能になる。
【0120】
本発明の実施形態および変形例を説明したが、これらは、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態および変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態および変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0121】
例えば、実施形態および変形例で設けた機能部の一部または全てをASICなどにより構成してもよい。