特許第6598976号(P6598976)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6598976自動変速機の故障箇所検出装置及びこれを備えた自動変速機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6598976
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年11月6日
(54)【発明の名称】自動変速機の故障箇所検出装置及びこれを備えた自動変速機
(51)【国際特許分類】
   F16H 61/12 20100101AFI20191028BHJP
   F16H 59/70 20060101ALI20191028BHJP
   F16H 61/68 20060101ALI20191028BHJP
【FI】
   F16H61/12
   F16H59/70
   F16H61/68
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-502995(P2018-502995)
(86)(22)【出願日】2017年2月10日
(86)【国際出願番号】JP2017004840
(87)【国際公開番号】WO2017150137
(87)【国際公開日】20170908
【審査請求日】2018年7月6日
(31)【優先権主張番号】特願2016-42489(P2016-42489)
(32)【優先日】2016年3月4日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】遠山 裕
(72)【発明者】
【氏名】永島 史貴
(72)【発明者】
【氏名】河口 高輝
(72)【発明者】
【氏名】山本 英晴
(72)【発明者】
【氏名】濱野 正宏
【審査官】 西藤 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−286095(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/024790(WO,A1)
【文献】 特開2007−24231(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 59/00 − 61/12
F16H 61/16 − 61/24
F16H 61/66 − 61/70
F16H 63/40 − 63/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の摩擦係合要素の選択的な係合により複数の変速段を達成し、変速段切替の際には、二組以上の摩擦係合要素の掛け替えにより変速段切替を行う場合がある車両用の自動変速機において、前記複数の摩擦係合要素の何れかに係合不能又は解放不能の故障態様による故障が生じたときに、当該故障が生じた摩擦係合要素を特定する自動変速機の故障箇所検出装置であって、
前記自動変速機の変速前後の変速段を監視する変速段監視手段と、
前記故障に応じて発生する前記車両の挙動から前記故障態様を検知する故障検知手段と、
前記変速前後の変速段の組み合わせによる変速態様と前記故障態様とに基づいて、故障が生じた摩擦係合要素を限定する故障箇所限定手段と、
を備え、
前記故障箇所限定手段は、二組以上の摩擦係合要素の掛け替えによる変速段切替の場合に、前記変速態様により当該変速時に作動制御される摩擦係合要素を把握し、把握した摩擦係合要素の中から故障が生じた摩擦係合要素を一部の摩擦係合要素に限定し、
さらに、前記複数の摩擦係合要素のうちの所定の摩擦係合要素の係合・解放の作動状態を検知可能な作動状態検知手段を備え、
前記故障箇所限定手段は、前記変速に前記所定の摩擦係合要素が関与している場合、当該変速の変速態様と、前記故障態様と、前記所定の摩擦係合要素の作動状態とに基づいて、前記把握した摩擦係合要素の中から故障が生じた摩擦係合要素を一部の摩擦係合要素に限定するものである、自動変速機の故障箇所検出装置。
【請求項2】
前記故障箇所限定手段は、前記変速態様により当該変速時に作動制御される摩擦係合要素を把握し、把握した摩擦係合要素の中から故障が生じた摩擦係合要素を1つに特定するものである請求項1に記載の自動変速機の故障箇所検出装置。
【請求項3】
前記故障態様と前記変速態様とに応じて、故障が生じた摩擦係合要素を特定するマップが記憶された記憶手段を備え、
前記故障箇所限定手段は、前記故障態様と、前記変速態様とから、前記マップを用いて故障が生じた摩擦係合要素を限定するものである請求項1または2に記載の自動変速機の故障箇所検出装置。
【請求項4】
車両に搭載され、複数の摩擦係合要素のうちの何れかの摩擦係合要素の架け替えによって変速段の切り替えを行なう有段式の自動変速機であって、
請求項1〜3のいずれか一項に記載の自動変速機の故障箇所検出装置と、
前記故障箇所検出装置により故障が生じた摩擦係合要素が特定されたら、特定された故障摩擦係合要素に基づいて、故障対応変速段を決定し、前記故障対応変速段への変速段の切り替えを行なう変速制御手段と、
を備えている自動変速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有段式の自動変速機のいずれかの摩擦係合要素に故障が生じたときに、故障が生じた摩擦係合要素を特定する自動変速機の故障箇所検出装置及びこれを備えた自動変速機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有段式の自動変速機(有段変速機、以下、単に自動変速機という)では、複数の摩擦係合要素のうちの一部の摩擦係合要素を係合させて所定の変速段を達成する。しかし、このとき、いずれかの摩擦係合要素の係合状態を制御するソレノイドバルブ等のハード構成に故障が生じて、摩擦係合要素の係合や解放を制御することができなくなる機能故障が生じることが考えられる。
【0003】
例えば、係合対象の摩擦係合要素が係合できなくなる故障(係合不能又は誤解放)が生じると、自動変速機はニュートラル状態となる。また、係合対象ではない摩擦係合要素が解放できなくなるい故障(解放不能又は誤係合)が生じると、本来同時に係合されることのない摩擦係合要素が係合操作される、いわゆるインターロック状態(インターロックに向かう状態)となる。
【0004】
誤解放が生じた場合は、自動変速機はニュートラル状態となるので、車両の走行駆動力が失われ、指令変速段のギア比と実際のギア比とにずれが生じると共に、駆動源にとっては負荷が失われるため、駆動源がエンジン(内燃機関)の場合、エンジンに空吹けが発生する。したがって、エンジンに空吹けが発生したり、指令変速段のギア比と実際のギア比とにずれが生じたりしたならば、いずれかの摩擦係合要素に誤解放が生じたものと判定することができる。
【0005】
また、誤係合が生じた場合は、自動変速機はインターロック状態となるので、自動変速機の出力回転が停止に向かって減速すると共に、指令変速段のギア比と実際のギア比とにずれが生じる。したがって、減速操作をしていないにもかかわらず車速の急低下が発生したり、指令変速段のギア比と実際のギア比とにずれが生じたりしたならば、いずれかの摩擦係合要素に誤係合が生じたものと判定することができる。このような技術が例えば特許文献1に開示されている。
【0006】
このように、摩擦係合要素に誤解放或いは誤係合の故障が生じると、この故障の影響を回避して車両の走行性(リンプホーム機能)を確保することが必要になる。このためには、故障の種別(誤解放か誤係合)と、故障が生じている摩擦係合要素とを特定することが必要であり、故障の種別は車両の挙動から判定でき、故障摩擦係合要素の特定は、従来は以下の(a)〜(d)に手順を示すような手法で行なっていた。
【0007】
(a)まず、エンジンにオーバーレブが発生せず且つ車両に急減速が発生しない変速段(例えば、現変速段の付近で低速側の変速段)を暫定リンプホーム変速段に設定するか、変速機をニュートラルに設定して、変速段を実行する。
(b)次に、安全に本リンプホーム状態に移行できるように車両を停車させる。
(c)この停止状態から、選択可能な変速段を選んで、この変速段を達成するように、各摩擦係合要素を係合又は解放操作して、車両の走行を試みる。支障なく走行できればその変速段を達成する摩擦係合要素は正常であり、車両を発進できなければその変速段を達成する摩擦係合要素のいずれかが故障していると判定でき、この試行を繰り返して故障摩擦係合要素を特定する(この制御を「探り制御」と呼ぶ)。
(d)故障摩擦係合要素を特定できたら、達成可能な変速段から、修理工場まで車両を安全に走行できるような変速段(リンプホーム変速段)を選択し、この変速段を用いて車両を走行させる。
【0008】
しかしながら、上記のように「探り制御」を使用する場合、ギア比を変えても安全なように一回停車後、探りを行って故障部位を特定していた。その分、リンプホーム変速段の特定に時間がかかり、速やかにリンプホーム変速段に移行することができないという課題がある。
【0009】
また、いずれかの摩擦係合要素に故障が生じていることが判明してから、探り制御を開始するまでの間、ドライバの意図に関わらず、エンジンにオーバーレブが発生せず且つ車両に急減速が発生しない変速段に変速するか、若しくはニュートラルに移行させている。このため、ドライバビリティが著しく損なわれ、例えば加速要求しているドライバに対して加速不良感を与えるなど、ドライバに対して大きなストレスを与えてしまうことにもなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−232355号公報
【発明の概要】
【0011】
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、走行中に速やかに故障部位を限定することができ、ドライバに大きなストレスを与えないようにする手段を講じることができるようにした、自動変速機の故障箇所検出装置及びこれを備えた自動変速機を提供することを目的としている。
【0012】
(1)本発明の自動変速機の故障箇所検出装置は、複数の摩擦係合要素の選択的な係合により複数の変速段を達成し、変速段切替の際には、二組以上の摩擦係合要素の掛け替えにより変速段切替を行う場合がある車両用の自動変速機において、前記複数の摩擦係合要素のいずれかに係合不能又は解放不能の故障態様による故障が生じたときに、当該故障が生じた摩擦係合要素を特定する自動変速機の故障箇所検出装置であって、前記自動変速機の変速前後の変速段を監視する変速段監視手段と、前記故障に応じて発生する前記車両の挙動から前記故障態様を検知する故障検知手段と、前記変速前後の変速段の組み合わせによる変速態様と前記故障態様とに基づいて、故障が生じた摩擦係合要素を限定する故障箇所限定手段と、を有している。
【0013】
その上で、前記故障箇所限定手段は、二組以上の摩擦係合要素の掛け替えによる変速段切替の場合に、前記変速態様により当該変速時に作動制御される摩擦係合要素を把握し、把握した摩擦係合要素の中から故障が生じた摩擦係合要素を一部の摩擦係合要素に限定するものである。
【0014】
(2)前記故障箇所限定手段は、前記変速態様により当該変速時に作動制御される摩擦係合要素を把握し、把握した摩擦係合要素の中から故障が生じた摩擦係合要素を1つに特定することが好ましい。
【0015】
(3)前記複数の摩擦係合要素のうちの所定の摩擦係合要素の係合・解放の作動状態を油検知可能な作動状態検知手段をさらに備え、前記故障箇所限定手段は、前記変速に前記所定の摩擦係合要素が関与している場合、当該変速の変速態様と、前記故障態様と、前記所定の摩擦係合要素の作動状態とに基づいて、故障が生じた摩擦係合要素を一部の摩擦係合要素に限定することが好ましい。
【0016】
(4)前記故障態様と前記変速態様とに応じて、故障が生じた摩擦係合要素を限定するマップが記憶された記憶手段を備え、前記故障箇所限定手段は、前記故障態様と、前記変速態様とから、前記マップを用いて故障が生じた摩擦係合要素を限定することが好ましい。
【0017】
(5)本発明の自動変速機は、車両に搭載され、複数の摩擦係合要素のうちのいずれかの摩擦係合要素の架け替えによって変速段の切り替えを行なう有段式の自動変速機であって、(1)〜(4)のいずれか1つに記載の自動変速機の故障箇所検出装置と、前記故障箇所検出装置により故障が生じた摩擦係合要素が特定されたら、特定された故障摩擦係合要素に基づいて、故障対応変速段を決定し、前記故障対応変速段への変速段の切り替えを行なう変速制御手段と、を有している。
【0018】
本発明によれば、変速によりいずれかの摩擦係合要素の故障の発生が検知されたら、故障箇所限定手段が、当該変速の前後の変速段の組み合わせによる変速態様と、故障検知手段により検知された故障態様とに基づいて、故障が生じた摩擦係合要素を限定するので、速やかに故障部位を特定して、故障対応変速段(リンプホーム変速段)を決定してこれに移行することができるようになる。これにより、ドライバビリティの低下を抑制してドライバに対して大きなストレスを与えないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係る車両のパワートレーンをその制御系(自動変速機の故障箇所検出装置を含む)と共に示す全体システム構成図である。
図2】本発明の一実施形態に係る有段式の自動変速機の構成を示すスケルトン図である。
図3】本発明の一実施形態に係る有段式の自動変速機の変速段ごとの各摩擦係合要素の係合作動表である。
図4】本発明の一実施形態に係る有段式の自動変速機の変速線図である。
図5】本発明の一実施形態に係る故障箇所検出に適用される特定の変速種を示す表である。
図6】本発明の一実施形態に係る故障箇所検出に用いるマップを示す図であり、(a)はマップ全体を、(b)はマップ細部を示す。
図7】本発明の一実施形態に係る故障箇所検出の処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。以下の実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができるとともに、必要に応じて取捨選択することや適宜組み合わせることが可能である。
【0021】
[1.全体システム構成]
図1に示すように、本実施形態に係る車両のパワートレーンは、駆動源であるエンジン1と、ロックアップクラッチ付きトルクコンバータ2及び有段式の自動変速機構3からなる有段式の自動変速機(有段変速機、以下、単に自動変速機という)4と、自動変速機4の出力軸と駆動輪6との間に設けられた動力伝達機構5と、を備えている。
【0022】
有段式の自動変速機構3は、ロックアップクラッチ20を備えたトルクコンバータ2を介してエンジン1と接続され、種々の摩擦係合要素(クラッチ又はブレーキ)を備え、これらの摩擦係合要素を係合又は解放することにより各変速段が達成される。種々の摩擦係合要素の係合又は解放やトルクコンバータ2のロックアップクラッチの係合状態は、油圧回路ユニット7に設けられた所定のソレノイドバルブを制御して油の供給状態を切り替えることによって行なう。
【0023】
このような油圧回路ユニット7を制御するために、自動変速機コントローラ(変速機制御手段)10が設けられ、また、エンジン1を制御するために、エンジンコントローラ100が設けられている。自動変速機コントローラ10では種々のセンサ類11〜15からの情報に基づいて油圧回路ユニット7を制御する。なお、自動変速機コントローラ10とエンジンコントローラ100とは、互いに情報伝達できるように接続されており、自動変速機4とエンジン1とを連携して制御できるようになっている。
【0024】
[2.自動変速機の構成]
図2に示すように、自動変速機構3は、第1プラネタリギヤ機構(PG1)31、第2プラネタリギヤ機構(PG2)32、第3プラネタリギヤ機構(PG3)33、第4プラネタリギヤ機構(PG4)34の4つのプラネタリギヤ機構が、同軸上に直列に配置され、第1速〜第9速の前進9段及び後退段の変速段を有している。なお、各プラネタリギヤ機構31〜34は、サンギヤ(第1構成要素)31S〜34S、キャリア(第2構成要素)31C〜34C、リングギヤ(第3構成要素)31R〜34Rを備えて構成される。
【0025】
自動変速機構3は、トルクコンバータ2を介してエンジン1から回転が入力される入力軸30Aと、動力伝達機構5を介して駆動輪へ回転を出力する出力軸30Bと、プラネタリギヤ機構31〜34の特定の要素間を連結する中間軸30C,30Dとを備えている。各プラネタリギヤ機構31〜34の所定の要素が選択的に組み合わされることにより、所定の動力伝達経路が構成され対応する変速段が達成される。
【0026】
つまり、自動変速機構3の入力軸30Aには、第1プラネタリギヤ機構31のサンギヤ31S及び第4プラネタリギヤ機構34のキャリア34Cが直接結合されている。したがって、第1プラネタリギヤ機構31のサンギヤ31S及び第4プラネタリギヤ機構34のキャリア34Cは、入力軸30Aと常に一体回転する。また、自動変速機構3の入力軸30Aには、第2クラッチK81を介して第1プラネタリギヤ機構31のキャリア31Cが連結されている。なお、一体に回転する入力軸30A、サンギヤ31S及びキャリア34Cを第1回転メンバーM1と呼ぶ。
【0027】
自動変速機構3の出力軸30Bには、第3プラネタリギヤ機構33のキャリア33Cが直接連結されている。したがって、第3プラネタリギヤ機構33のキャリア33Cは、出力軸30Bと常に一体回転する。また、自動変速機構3の出力軸30Bには、第1クラッチK27を介して第4プラネタリギヤ機構34のリングギヤ34Rが連結されている。なお、一体に回転する出力軸30B及びキャリア33Cを第2回転メンバーM2と呼ぶ。
【0028】
第2プラネタリギヤ機構32のリングギヤ32R、第3プラネタリギヤ機構33のサンギヤ33S及び第4プラネタリギヤ機構34のサンギヤ34Sはいずれも中間軸30Cに直接連結されている。したがって、第2プラネタリギヤ機構32のリングギヤ32Rと第3プラネタリギヤ機構33のサンギヤ33Sと第4プラネタリギヤ機構34のサンギヤ34Sとは常に一体回転する。なお、一体に回転する中間軸30C、リングギヤ32R、サンギヤ33S及びサンギヤ34Sを第3回転メンバーM3と呼ぶ。
【0029】
第1プラネタリギヤ機構31のリングギヤ31R及び第2プラネタリギヤ機構32のキャリア32Cはいずれも中間軸30Dに直接連結されている。したがって、第1プラネタリギヤ機構31のリングギヤ31Rと第2プラネタリギヤ機構32のキャリア32Cとは常に一体回転する。なお、一体に回転する中間軸30D、リングギヤ31R及びキャリア32Cを第4回転メンバーM4と呼ぶ。
【0030】
第1プラネタリギヤ機構31のキャリア31Cには連結軸30Hが一体回転するように連結され、キャリア31Cは、この連結軸30H及び第3クラッチK38を介して中間軸30Cに連結されている。さらに、第1プラネタリギヤ機構31のキャリア31Cは、この連結軸30H及び第1ブレーキB08を介してトランスミッションケース3Aに連結されている。
【0031】
また、第2プラネタリギヤ機構32のサンギヤ32Sには連結軸30Eが一体回転するように連結され、サンギヤ32Sはこの連結軸30E及び第3ブレーキB05を介してトランスミッションケース3Aに連結されている。
【0032】
また、第3プラネタリギヤ機構33のリングギヤ33Rには連結軸30Fが一体回転するように連結され、リングギヤ33Rは連結軸30F及び第2ブレーキB06を介してトランスミッションケース3Aに連結されている。
【0033】
また、第4プラネタリギヤ機構34のリングギヤ34Rには連結軸30Gが一体回転するように連結され、リングギヤ34Rは連結軸30Gを介して第1クラッチK27の一方に連結されている。
【0034】
そして、一体に回転する連結軸30E及びサンギヤ32Sを第5回転メンバーM5と呼び、一体に回転する連結軸30F及びリングギヤ33Rを第6回転メンバーM6と呼び、一体に回転する連結軸30G及びリングギヤ34Rを第7回転メンバーM7と呼び、一体に回転する連結軸30H及びキャリア31Cを第8回転メンバーM8と呼ぶ。
【0035】
また、入力軸30Aと出力軸30Bとの間に配置される第3〜8回転メンバーM3〜M8については、中間回転要素とも呼ぶ。
【0036】
このように構成された自動変速機構3においては、第1クラッチK27、第2クラッチK81、第3クラッチK38、第1ブレーキB08、第2ブレーキB06、第3ブレーキB05といった各摩擦係合要素の係合の組み合わせによって、第1速〜第9速の前進9段及び後退段のうちのいずれかの変速段が達成される。
【0037】
図3は自動変速機構3について変速段ごとの各摩擦係合要素の係合状態を示す係合作動表である。図3において、○印は当該摩擦係合要素が係合状態となることを示し、空欄は当該摩擦係合要素が解放状態となることを示す。段数の1〜9は前進第1速〜第9速を示し、段数のRevは後退段を示す。
【0038】
図3に示すように、第1速を達成するには、第2ブレーキB06、第3ブレーキB05、第3クラッチK38を係合し、他の摩擦係合要素は解放する。第2速を達成するには、第2ブレーキB06、第2クラッチK81、第3クラッチK38を係合し、他の摩擦係合要素は解放する。第3速を達成するには、第2ブレーキB06、第3ブレーキB05、第2クラッチK81を係合し、他の摩擦係合要素は解放する。
【0039】
第4速を達成するには、第2ブレーキB06、第3ブレーキB05、第1クラッチK27を係合し、他の摩擦係合要素は解放する。第5速を達成するには、第3ブレーキB05、第1クラッチK27、第2クラッチK81を係合し、他の摩擦係合要素は解放する。第6速を達成するには、第1クラッチK27、第2クラッチK81、第3クラッチK38を係合し、他の摩擦係合要素は解放する。
【0040】
また、第7速を達成するには、第3ブレーキB05、第1クラッチK27、第3クラッチK38を係合し、他の摩擦係合要素は解放する。第8速を達成するには、第1ブレーキB08、第1クラッチK27、第3クラッチK38を係合し、他の摩擦係合要素は解放する。第9速を達成するには、第1ブレーキB08、第3ブレーキB05、第1クラッチK27を係合し、他の摩擦係合要素は解放する。後退段を達成するには、第1ブレーキB08、第2ブレーキB06、第3ブレーキB05を係合し、他の摩擦係合要素は解放する。
【0041】
[3.自動変速機の変速制御]
このような自動変速機構3の各摩擦係合要素の係合や解放による変速制御は自動変速機コントローラ10によって行なわれる。図4はDレンジ選択時に変速制御に用いられる変速線図である。図4において実線はアップシフト線を、破線はダウンシフト線を示している。なお、図1に示すように、自動変速機コントローラ10には、アクセル開度センサ11、エンジン回転センサ12、インヒビタスイッチ13、タービン回転センサ(入力軸回転センサ)14、出力軸回転センサ(車速センサ)15からの各情報が入力される。
【0042】
自動変速機コントローラ10は、自動変速機構3を制御する変速制御部(変速制御手段)10Aと、自動変速機4のいずれかの摩擦係合要素に故障が生じたときにいずれの摩擦係合要素に故障が生じたかを検出する故障箇所検出部(故障箇所検出手段)10Bと、を備えている。
【0043】
変速制御部10Aでは、インヒビタスイッチ13のレンジ選択情報からレンジの選択を判断し、Dレンジ選択時には、出力軸回転センサ15からの変速機出力軸回転数No(変速機出力軸回転速度ω)から得られる車速VSPと、アクセル開度センサ11からのアクセル開度APOとに基づき決まる運転点が、変速線図上において存在する位置を検索する。そして、運転点が動かない、あるいは、運転点が動いても図4の変速線図上で1つの変速段領域内に存在したままであれば、そのときの変速段をそのまま維持する。
【0044】
一方、運転点が動いて図4の変速線図上でアップシフト線を横切ると、横切る前の運転点が存在する領域が示す変速段から横切った後の運転点が存在する領域が示す変速段へのアップシフト指令を出力する。また、運転点が動いて図4の変速線図上でダウンシフト線を横切ると、横切る前の運転点が存在する領域が示す変速段から横切った後の運転点が存在する領域が示す変速段へのダウンシフト指令を出力する。
【0045】
上記のように、自動変速機では、複数の摩擦係合要素のうちの一部の摩擦係合要素を係合させて所定の変速段を達成するが、いずれかの摩擦係合要素の係合状態を制御するソレノイドバルブ等のハード構成に故障が生じて、摩擦係合要素の係合や解放を制御することができなくなる機能故障が生じることが考えられる。これに対処するには、いずれの摩擦係合要素がどのような態様で故障しているかを検出することが必要になり、故障箇所検出装置によってこれらの状態を検出するようになっている。
【0046】
[4.故障箇所検出装置]
本実施形態に係る故障箇所検出装置は、自動変速機コントローラ10内の機能要素(故障箇所検出部10B)として設けられる。図1に示すように、故障箇所検出部10Bには、変速段監視部(変速段監視手段)10cと、故障検知部(故障検知手段)10dと、故障箇所限定部(故障箇所限定手段)10eと、を有している。
【0047】
変速段監視部10cは、変速制御部10Aによる指令変速段から自動変速機4の変速(変速段切替)とこのときの変速前後の変速段を監視する。
【0048】
故障検知部10dは、摩擦係合要素の故障に応じて発生する車両の挙動から、故障の発生とその故障の形態とを検知する。つまり、いずれかの摩擦係合要素に故障が発生すると、指令変速段のギア比(変速比)と実際のギア比(変速比)とにずれが生じる。
【0049】
なお、このときの指令変速段の情報は変速段監視部10cの監視情報から得られる。また、実際のギア比の情報は、タービン回転センサ14及び出力軸回転センサ15の検出情報から得られる。
【0050】
この故障が、係合しようとする摩擦係合要素の係合が不可能になる故障(係合不能又は誤解放)である場合には、変速機のギア比の指令値と実際値との間にずれが生じると共に、エンジンが空吹け状態となりエンジン回転が急上昇する。このときのエンジン回転情報はエンジン回転センサ12から得られる。
【0051】
また、この故障が、本来同時に係合されることのない摩擦係合要素が係合操作される、いわゆるインターロック状態(インターロックに向かう状態)となる故障(解放不能又は誤係合)であれば、ギア比にずれが生じると共に、車速が急減速する。このときの車速情報はエンジン回転センサ12と出力軸回転センサ15との検出情報から得られる。
【0052】
故障箇所限定部10eは、変速段監視部10c及び故障検知部10dからの情報に基づいて、変速段の切り替え(単に、変速、又は、変速段切替とも言う)により摩擦係合要素の故障の発生が検知されたら、この変速段切替の前後の変速段組み合わせと、故障検知部10dにより検知された故障の態様、即ち、誤解放であるか誤係合であるかと、に基づいて、故障が生じた摩擦係合要素を限定する。なお、この限定には、故障が生じた摩擦係合要素を1つに特定する場合と、一部の複数のものに限定する場合とがある。
【0053】
この故障箇所限定部10eによる故障が生じた摩擦係合要素を特定或いは限定する手法を説明する。
図3に示すように、本実施形態では、第1クラッチK27、第2クラッチK81、第3クラッチK38、第1ブレーキB08、第2ブレーキB06、第3ブレーキB05といった6つの摩擦係合要素のうちのいずれか3つを係合させて他を解放することにより所望の変速段が達成される。
【0054】
変速段切替の際には、係合中の3つの摩擦係合要素のうちのいずれか1つ以上を解放に切り替え、解放中の3つの摩擦係合要素のうちのいずれか1つ以上を係合に切り替える。つまり、一組の摩擦係合要素の掛け替え(一重掛け替え)により変速段切替を行なう場合と、二組の摩擦係合要素の掛け替え(二重掛け替え)により変速段切替を行なう場合と、三組の摩擦係合要素の掛け替え(三重掛け替え)により変速段切替を行なう場合と、がある。
【0055】
本実施形態に係る自動変速機4の場合、図5に示す変速段切替が一重掛け替えによって行なわれる。この一重掛け替えによる変速段切替は、隣の変速段にアップシフト又はダウンシフトする1段変速と、離れた変速段にアップシフト又はダウンシフトする段飛び変速とがある。
【0056】
一重掛け替えによる変速段切替の場合に、係合中の3つの摩擦係合要素のうちのいずれか1つを解放に切り替え、解放中の3つの摩擦係合要素のうちのいずれか1つを係合に切り替える。したがって、変速段切替によって、もしも誤解放が発生したことが検知されれば、解放から係合に切り替え指令された摩擦係合要素が誤解放状態であると特定することができる。
【0057】
また、変速段切替によって誤解放や誤係合が発生する場合、この切り替え指令を受けた摩擦係合要素に誤解放や誤係合が発生する確率が高いことが判明している。したがって、一重掛け替えによる変速段切替の場合に、変速段切替によってもしも誤係合が発生したことが検知されれば、係合から解放に切り替え指令された摩擦係合要素が誤係合状態であると特定することができる。
【0058】
二重掛け替えによる変速段切替の場合に、係合中の3つの摩擦係合要素のうちのいずれか2つを解放に切り替え、解放中の3つの摩擦係合要素のうちのいずれか2つを係合に切り替える。したがって、変速段切替によって、もしも誤解放が発生したことが検知されれば、解放から係合に切り替え指令された2つの摩擦係合要素のいずれかが誤解放状態であると限定することができる。ただし、誤解放状態の摩擦係合要素を2つに絞ることはできるが、1つに特定することはできない。
【0059】
二重掛け替えによる変速段切替の場合に、変速段切替によって、もしも誤係合が発生したことが検知されれば、係合から解放に切り替え指令された2つの摩擦係合要素のいずれかが誤係合状態であると特定することができる。この場合も、誤解放状態の摩擦係合要素を2つに絞ることはできるが、1つに特定することはできない。
【0060】
また、二重掛け替えによる変速段切替の場合であっても、掛け替えに係る摩擦係合要素のいずれか1つの状態を把握できる場合は、二重掛け替えによる変速段切替であっても、解放から係合に切り替え指令された2つの摩擦係合要素のいずれが誤解放状態であるかを特定することや、係合から解放に切り替え指令された2つの摩擦係合要素のいずれが誤係合状態であるかを特定することができる。
【0061】
本実施形態の場合、図示しないがクラッチK38(所定の摩擦係合要素)については、作動状態検知手段としての油圧センサによって係合状態か解放状態かが検知可能であるため、その状態が正常であるか、誤解放状態であるか、誤係合状態であるかを把握できるようになっている。したがって、二重掛け替えによる変速段切替であって、誤解放状態又は誤係合状態である摩擦係合要素が2つに絞られていて、この2つの摩擦係合要素の一方がクラッチK38である場合には、誤解放状態又は誤係合状態である摩擦係合要素を1つに特定することができる。
【0062】
同様に、三重掛け替えによる変速段切替の場合であっても、掛け替えに係る摩擦係合要素のいずれか1つの状態(ここでは、クラッチK38)を把握できる場合は、三重掛け替えによる変速段切替であっても、誤解放状態又は誤係合状態である摩擦係合要素を2つに絞ることができる。
【0063】
故障箇所検出装置は、このような故障の形態と変速段の切り替え態様(変速段切替前後の変速段の組み合わせである変速態様)とに応じて、故障が生じた摩擦係合要素を特定するマップがマップ記憶部(記憶手段)10fに記憶されており、故障箇所特定部10eでは、故障の形態と、変速段の切り替え態様とから、このマップを用いて故障が生じた摩擦係合要素を特定する。
【0064】
図6(a)はこのマップを示す図であり、縦方向の1〜9は変速段切替前の変速段を示し、横方向の1〜9は変速段切替後の変速段を示し、変速段切替はこれらの組み合わせとしてマトリックス状に表されている。マトリックスの各要素には、A、B、C、D、Eの符号を付すが、Aは一重掛け替えによる変速段切替を示し、B、Cは二重掛け替えによる変速段切替を示し、D、Eは三重掛け替えによる変速段切替を示す。
【0065】
二重掛け替えのB、Cのうち、Bは掛け替えに係る2つの摩擦係合要素のいずれか1つの状態(ここでは、クラッチK38)を把握できる場合であり、Cはこれを把握できない場合である。また、三重掛け替えのD、Eのうち、Dは掛け替えに係る2つの摩擦係合要素のいずれか1つの状態(ここでは、クラッチK38)を把握できる場合であり、Eはこれを把握できない場合である。
【0066】
なお、このようなマップは、誤解放状態判定用のものと誤係合状態判定用のものとの2つが記憶されている。
【0067】
Aは一重掛け替えによる変速段切替の場合であり、上記のように誤解放状態又は誤係合状態である摩擦係合要素を1つに特定することができる。例えば、4速から3速への変速段切替時にいずれかの摩擦係合要素が誤解放状態であることが検知された場合、図6(a)にAと記すように、一重掛け替えによる変速段切替であり、具体的には、クラッチK27を係合状態から解放状態に切り替え、クラッチK81を解放状態から係合状態に切り替える(図3参照)。したがって、解放状態から係合状態に切り替えたクラッチK81が誤解放状態であると特定でき、マップ内の該当するマトリックス要素Aには、図6(b)に示すように、クラッチK81が誤解放である旨が記載されている。
【0068】
Bは二重掛け替えによる変速段切替であるが、掛け替えに係る2つの摩擦係合要素のいずれか1つの状態(ここでは、クラッチK38)を把握できるので、マップ内の該当するマトリックス要素Bには、誤解放である摩擦係合要素が1つ記載されている。
【0069】
Cは二重掛け替えによる変速段切替であり、掛け替えに係る2つの摩擦係合要素のいずれかを把握できないので、マップ内の該当するマトリックス要素Cには、誤解放である摩擦係合要素の候補が2つ記載されている。
【0070】
Dは三重掛け替えによる変速段切替であるが、掛け替えに係る3つの摩擦係合要素のいずれか1つの状態(ここでは、クラッチK38)を把握できるので、マップ内の該当するマトリックス要素Dには、誤解放である摩擦係合要素の候補が2つに絞られて記載されている。
【0071】
Eは三重掛け替えによる変速段切替であり、掛け替えに係る3つの摩擦係合要素のいずれかを把握できないので、マップ内の該当するマトリックス要素Eには、誤解放である摩擦係合要素の候補が3つ記載されている。
【0072】
このようにして、本故障箇所検出装置により、故障が生じた摩擦係合要素を1つに特定することができなかった場合には、3つ以下に限定された故障摩擦係合要素の候補のみを対象に、以下の(a)〜(c)に示す探り制御を適用して、故障が生じた摩擦係合要素を1つに特定する。
【0073】
(a)まず、エンジンにオーバーレブが発生しないで、車両に急減速が発生しない変速段を暫定リンプホーム変速段に設定するか、変速機をニュートラル段に設定して、この変速段に移行する。
(b)次に、安全に本リンプホーム状態に移行できるように車両を停車させる。
(c)この停止状態から、選択可能な変速段を選んで、この変速段を達成するように、各摩擦係合要素を係合又は係合操作して、車両の走行を試みる。支障なく走行できればその変速段を達成する摩擦係合要素は正常であり、車両を発進できなければその変速段を達成する摩擦係合要素の何れかが故障していると判定でき、この試行を繰り返して故障摩擦係合要素を特定する。
【0074】
そして、故障の形態と故障が生じた摩擦係合要素を1つに特定できたら、変速制御部10Aでは、特定された故障摩擦係合要素と、現状の変速段とに基づいてリンプホーム変速段(故障対応変速段)を決定し、リンプホーム変速段への変速段の切り替えを行なう。
【0075】
[5.作用及び効果]
本発明の一実施形態に係る自動変速機の故障箇所検出装置及び自動変速機は、上述のように構成されているので、例えば、図7に示すように、故障箇所の検出及び退避操作を行なうことができる。
【0076】
つまり、まず、常時、変速状態をモニタ(監視)しながら、変速段切替時には、現ギア段(現変速段)と現ギア段に至る前のギア段とを記憶する(ステップS10)。
【0077】
変速段切替時に、異常検知、即ち、いずれかの摩擦係合要素に誤解放又は誤係合の故障が生じたか否かを、ギア比の異常等から判定する(ステップS20)。異常検知がなければリターンし、次の制御周期で再びステップS10を実施する。
【0078】
異常検知があれば、故障部位(故障が生じた摩擦係合要素)の特定を行なう(ステップS30)。この特定は、故障形態(誤解放か誤係合か)と変速種(何速段から何速段への変速段切替か)に基づいて、図6(a)に示すマップを用いて行なう。
このとき、マップに示すC〜Eの状態では、故障部位の特定ができないが、この場合には、探り制御を利用して、故障が生じた摩擦係合要素を1つに特定する。
【0079】
故障の形態と故障が生じた摩擦係合要素を1つに特定できたら、特定された故障摩擦係合要素と現状の変速段とに基づいてリンプホーム変速段を決定し、リンプホーム変速段への変速段の移行を行なう(ステップS40)。
【0080】
このようにして、本故障箇所検出装置によれば、走行中における変速段の切替時に、いずれかの摩擦係合要素に故障が生じたら、故障形態(誤解放か誤係合か)と故障した摩擦係合要素を1つに特定できる場合があり、この場合、車両を走行させたままで速やかに故障部位を特定して、速やかにリンプホーム変速段を決定してこれに移行することができるようになる。特に、本実施形態では、故障が生じた摩擦係合要素を、マップを用いて瞬時に特定できる。
【0081】
また、故障した摩擦係合要素を1つに特定できない場合にも、故障した摩擦係合要素の候補を絞ることができ、探り制御を効率よく短時間で実施することができる。これにより、ドライバビリティが向上し、ドライバに対して大きなストレスを与えないようにすることができる。
【0082】
[6.その他]
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明にかかる故障箇所検出装置は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記の実施形態を適宜変更して実施することができる。
例えば、上記の実施形態では図2に示す前進9段の変速機構3を例に説明したが、本発明は、複数のギア機構を組み合わされて構成されると共に複数の摩擦係合要素の選択的な係合によって変速段を達成する種々の有段式の自動変速機構を有する自動変速機に適用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7