特許第6599078号(P6599078)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6599078
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】不織布の製造方法及びスクリュー
(51)【国際特許分類】
   D04H 3/007 20120101AFI20191021BHJP
   D04H 3/16 20060101ALI20191021BHJP
   B29B 7/38 20060101ALI20191021BHJP
   B29C 48/395 20190101ALI20191021BHJP
   B29C 48/505 20190101ALI20191021BHJP
【FI】
   D04H3/007
   D04H3/16
   B29B7/38
   B29C48/395
   B29C48/505
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-542738(P2019-542738)
(86)(22)【出願日】2019年2月14日
(86)【国際出願番号】JP2019005390
【審査請求日】2019年8月7日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】久本 敬司
(72)【発明者】
【氏名】本村 茂之
(72)【発明者】
【氏名】塩出 浩久
(72)【発明者】
【氏名】伊崎 健晴
【審査官】 相田 元
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−223312(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/002227(WO,A1)
【文献】 特開昭61−242809(JP,A)
【文献】 特開昭58−152023(JP,A)
【文献】 特開昭58−4807(JP,A)
【文献】 特開平05−64809(JP,A)
【文献】 特開2001−212870(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H 1/00−18/04
D01D 1/00−13/02
B29B 7/00−11/14
B29C 48/00−48/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレン系重合体と有機過酸化物とをクロスソー及びユニメルトを備えるスクリューを備える押出機内に供給し、
前記押出機内の前記プロピレン系重合体と前記有機過酸化物とを含むプロピレン系重合体樹脂組成物を溶融混練し、
溶融混練した前記プロピレン系重合体樹脂組成物を紡糸成形して不織布を製造する不織布の製造方法。
【請求項2】
前記クロスソーの長さは、前記スクリューの口径の0.5倍〜5倍である請求項1に記載の不織布の製造方法。
【請求項3】
前記ユニメルトのクリアランスが0.3mm〜1.5mmである請求項1又は請求項2に記載の不織布の製造方法。
【請求項4】
前記スクリューの円周長さ(円周率×スクリューの口径)に対するスクリュー円周方向における前記クロスソーのピッチ長さ(隣接する山部長さと谷部長さとの合計)の比(スクリュー円周方向におけるクロスソーのピッチ長さ/スクリューの円周長さ)が0.05〜0.15である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の不織布の製造方法。
【請求項5】
前記スクリューの口径に対するスクリュー軸方向における前記クロスソーのピッチ長さ(隣接する山部長さと谷部長さとの合計)の比(スクリュー軸方向におけるクロスソーのピッチ長さ/スクリューの口径)が0.15〜0.25である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の不織布の製造方法。
【請求項6】
前記スクリューは、一軸スクリューである請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の不織布の製造方法。
【請求項7】
押出機供給前の前記プロピレン系重合体の230℃でのメルトフローレート(MFR)は、1g/10分〜25g/10分であり、
前記不織布の230℃でのメルトフローレート(MFR)は、30g/10分〜200g/10分である請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の不織布の製造方法。
【請求項8】
前記有機過酸化物の供給量が、前記プロピレン系重合体の供給量に対して0.01質量%〜0.2質量%である請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の不織布の製造方法。
【請求項9】
クロスソー及びユニメルトを備え、
前記クロスソーの長さは、スクリューの口径の0.5倍〜5倍であり、
前記ユニメルトのクリアランスが0.3mm〜1.5mmであり、プロピレン系重合体と有機過酸化物とを含むプロピレン系重合体樹脂組成物の溶融混練に用いるスクリュー。
【請求項10】
スクリューの円周長さ(円周率×スクリューの口径)に対するスクリュー円周方向における前記クロスソーのピッチ長さ(隣接する山部長さと谷部長さとの合計)の比(スクリュー円周方向におけるクロスソーのピッチ長さ/スクリューの円周長さ)が0.05〜0.15である請求項9に記載のスクリュー。
【請求項11】
スクリューの口径に対するスクリュー軸方向における前記クロスソーのピッチ長さ(隣接する山部長さと谷部長さとの合計)の比(スクリュー軸方向におけるクロスソーのピッチ長さ/スクリューの口径)が0.15〜0.25である請求項9又は請求項10に記載のスクリュー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、不織布の製造方法及びスクリューに関する。
【背景技術】
【0002】
プロピレン系重合体を用いた不織布(ポリプロピレン不織布)は通気性、柔軟性及び軽量性に優れることから各種用途に幅広く用いられている。プロピレン系重合体を用いた不織布は、例えば、医療用資材、衛生材料、吸収性物品、各種物体の包装資材、担持用資材、及びバッキング資材として広く用いられている。
【0003】
特に、スパンボンド法、メルトブローン法等により得られるプロピレン系重合体を含む長繊維不織布は、軽量性、均一性、強度、柔軟性、及びバリア性の総合的な性能に優れている。
【0004】
例えば、長繊維不織布用の材料は、原料のポリプロピレンに過酸化物を加えて大きな分子から選択的に分子切断を起こさせることにより得られることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−96414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、プロピレン系重合体に過酸化物を添加したプロピレン系重合体樹脂組成物を紡糸成形して不織布を得る際、糸切れが発生して紡糸性が不十分な場合がある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、糸切れが抑制され、紡糸性に優れた不織布の製造方法、及びこの製造方法に用いられるスクリューを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための手段には、以下の態様が含まれる。
<1> プロピレン系重合体と有機過酸化物とをクロスソー及びユニメルトを備えるスクリューを備える押出機内に供給し、前記押出機内の前記プロピレン系重合体と前記有機過酸化物とを含むプロピレン系重合体樹脂組成物を溶融混練し、溶融混練した前記プロピレン系重合体樹脂組成物を紡糸成形して不織布を製造する不織布の製造方法。
<2> 前記クロスソーの長さは、前記スクリューの口径の0.5倍〜5倍である<1>に記載の不織布の製造方法。
<3> 前記ユニメルトのクリアランスが0.3mm〜1.5mmである<1>又は<2>に記載の不織布の製造方法。
<4> 前記スクリューの円周長さ(円周率×スクリューの口径)に対するスクリュー円周方向における前記クロスソーのピッチ長さ(隣接する山部長さと谷部長さとの合計)の比(スクリュー円周方向におけるクロスソーのピッチ長さ/スクリューの円周長さ)が0.05〜0.15である<1>〜<3>のいずれか1つに記載の不織布の製造方法。
<5> 前記スクリューの口径に対するスクリュー軸方向における前記クロスソーのピッチ長さ(隣接する山部長さと谷部長さとの合計)の比(スクリュー軸方向におけるクロスソーのピッチ長さ/スクリューの口径)が0.15〜0.25である<1>〜<4>のいずれか1つに記載の不織布の製造方法。
<6> 前記スクリューは、一軸スクリューである<1>〜<5>のいずれか1つに記載の不織布の製造方法。
<7> 押出機供給前の前記プロピレン系重合体の230℃でのメルトフローレート(MFR)は、1g/10分〜25g/10分であり、前記不織布の230℃でのメルトフローレート(MFR)は、30g/10分〜200g/10分である<1>〜<6>のいずれか1つに記載の不織布の製造方法。
<8> 前記有機過酸化物の供給量が、前記プロピレン系重合体の供給量に対して0.01質量%〜0.2質量%である<1>〜<7>のいずれか1つに記載の不織布の製造方法。
【0009】
<9> クロスソー及びユニメルトを備え、前記クロスソーの長さは、スクリューの口径の0.5倍〜5倍であり、前記ユニメルトのクリアランスが0.3mm〜1.5mmであり、プロピレン系重合体と有機過酸化物とを含むプロピレン系重合体樹脂組成物の溶融混練に用いるスクリュー。
<10> スクリューの円周長さ(円周率×スクリューの口径)に対するスクリュー円周方向における前記クロスソーのピッチ長さ(隣接する山部長さと谷部長さとの合計)の比(スクリュー円周方向におけるクロスソーのピッチ長さ/スクリューの円周長さ)が0.05〜0.15である<9>に記載のスクリュー。
<11> スクリューの口径に対するスクリュー軸方向における前記クロスソーのピッチ長さ(隣接する山部長さと谷部長さとの合計)の比(スクリュー軸方向におけるクロスソーのピッチ長さ/スクリューの口径)が0.15〜0.25である<9>又は<10>に記載のスクリュー。
【発明の効果】
【0010】
本開示は、糸切れが抑制され、紡糸性に優れた不織布の製造方法、及びこの製造方法に用いられるスクリューを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の不織布の製造方法で用いるスクリューを示す概略図である。
図2】本開示の不織布の製造方法で用いるスクリューのクロスソーの拡大した展開図である。
図3】本開示の不織布の製造方法で用いるスクリューのユニメルトの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
本開示において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値または下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値または下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値または下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において実施形態を、図面を参照して説明する場合、当該実施形態の構成は図面に示された構成に限定されない。また、各図における部材の大きさは概念的なものであり、部材間の大きさの相対的な関係はこれに限定されない。
【0013】
[不織布の製造方法]
本開示の不織布の製造方法は、プロピレン系重合体と有機過酸化物とをクロスソー及びユニメルトを備えるスクリューを備える押出機内に供給し、前記押出機内の前記プロピレン系重合体と前記有機過酸化物とを含むプロピレン系重合体樹脂組成物を溶融混練し、溶融混練した前記プロピレン系重合体樹脂組成物を紡糸成形して不織布を製造する方法である。
【0014】
本開示の製造方法で用いるスクリューは、クロスソー及びユニメルトを備える。これにより押出機内でのプロピレン系重合体樹脂組成物の混練性に優れるため、糸切れが抑制され、紡糸性により優れた不織布を製造することができる。
【0015】
本開示の製造方法では、プロピレン系重合体樹脂組成物を溶融混練する温度としては、180℃〜280℃が好ましく、200℃〜260℃がより好ましい。
【0016】
本開示の製造方法では、プロピレン系重合体と有機過酸化物とをスクリューを備える押出機内に供給する。
【0017】
スクリューの口径は、特に限定されず、150mm〜300mmが好ましく、200mm〜250mmがより好ましい。
【0018】
押出機内に設けられたスクリューは、一軸スクリューであってもよく、二軸スクリューであってもよい。
【0019】
クロスソーは、スクリュー軸方向及びスクリュー円周方向のそれぞれで一定間隔に形成された複数の山部(凸部)を備え、プロピレン系重合体樹脂組成物を好適に撹拌混練するためのものである。クロスソーは、スクリューに1箇所設けられていてもよく、2箇所以上設けられていてもよい。
【0020】
クロスソーの長さは、プロピレン系重合体と有機過酸化物とがよく混練された状態を得るために、スクリューの口径の0.5倍〜5倍が好ましく、1倍〜4倍がより好ましく、2倍〜4倍が更に好ましく、2.5倍〜3.5倍が特に好ましい。特に、クロスソーの長さが、スクリューの口径の1倍以上であることにより、混練性がより向上する傾向にあり、クロスソーの長さが、スクリューの口径の4倍以下であることにより、プロピレン系重合体樹脂組成物の押出量低下がより抑制され、押出機の運転負荷をより低減できる傾向にある。
クロスソーの長さとは、スクリュー軸方向におけるクロスソーの長さを意味する。
【0021】
また、スクリューの円周長さ(円周率×スクリューの口径)に対するスクリュー円周方向におけるクロスソーのピッチ長さ(隣接する山部長さと谷部長さとの合計)の比(スクリュー円周方向におけるクロスソーのピッチ長さ/スクリューの円周長さ)は、プロピレン系重合体と有機過酸化物とがよく混練された状態を得るために、0.05〜0.15が好ましい。
スクリュー円周方向におけるクロスソーのピッチ長さ/スクリューの円周長さは、0.07〜0.13がより好ましく、0.08〜0.12が更に好ましい。
【0022】
スクリューの口径に対するスクリュー軸方向におけるクロスソーのピッチ長さ(隣接する山部長さと谷部長さとの合計)の比(スクリュー軸方向におけるクロスソーのピッチ長さ/スクリューの口径)は、プロピレン系重合体と有機過酸化物とがよく混練された状態を得るために、0.15〜0.25が好ましい。
スクリュー軸方向におけるクロスソーのピッチ長さ/スクリューの口径は、0.17〜0.24がより好ましく、0.19〜0.23が更に好ましい。
【0023】
ユニメルトは、スクリュー軸方向に対して一定角度で傾斜し、かつ一定のクリアランスで配置された複数の湾曲した溝形状を有するものである。ユニメルトは、スクリューに1箇所設けられていてもよく、2箇所以上設けられていてもよい。
【0024】
ユニメルトは、プロピレン系重合体と有機過酸化物とがよく混練された状態を得るために、スクリュー軸方向に対して30°〜60°傾斜して配置されていてもよく、40°〜50°傾斜して配置されていてもよい。
【0025】
ユニメルトのクリアランスは、プロピレン系重合体と有機過酸化物とがよく混練された状態を得るために、0.3mm〜1.5mmが好ましく、0.4mm〜1.2mmがより好ましく、0.5mm〜1.1mmが更に好ましく、0.5mm〜0.8mmが特に好ましい。特に、ユニメルトのクリアランスが0.5mm以上であることにより、プロピレン系重合体樹脂組成物の押出量低下がより抑制され、押出機の運転負荷をより低減できる傾向にあり、ユニメルトのクリアランスが1.1mm以下であることにより、混練性がより向上する傾向にある。
【0026】
スクリューがクロスソー及びユニメルトを1つずつ備える場合、プロピレン系重合体と有機過酸化物とがよく混練された状態を得るために、ユニメルトはクロスソーよりもスクリューの先端側に位置することが好ましい。
【0027】
以下、本開示の不織布の製造方法で用いるスクリューの例について、図1図3を用いて説明する。図1図3では、クロスソー及びユニメルトを備えるスクリューについて説明するが、本発明の不織布の製造方法で用いるスクリューはこれに限定されない。
【0028】
図1は、本開示の不織布の製造方法で用いるスクリューを示す概略図である。図1に示すスクリュー10は、螺旋状のフライト1と、クロスソー2と、ユニメルト3とを備える。図1における矢印Xは、スクリュー10の軸方向を意味する。
【0029】
スクリュー10は、一定間隔に設けられた螺旋状のフライト1を有し、スクリュー10の後端側からみて、クロスソー2及びユニメルト3がこの順に設けられている。
【0030】
図2は、スクリュー10のクロスソー2の拡大した展開図である。図2において、矢印Xは、スクリュー10の軸方向を意味するため、クロスソーの長さ方向にも該当する。図2において、aはクロスソーの長さであり、bはスクリュー軸方向におけるクロスソーのピッチ長さであり、cはスクリューの円周長さであり、dはスクリュー円周方向におけるクロスソーのピッチ長さである。そのため、前述したスクリュー及びクロスソーの各数値は、a〜dを適宜組み合わせることにより算出できる。
【0031】
図3は、スクリュー10のユニメルト3の拡大図である。図3において、eはユニメルト3のクリアランスである。
【0032】
スクリュー10は、スクリュー10の先端側が押出機の押出孔側に位置し、かつスクリュー10の後端側が押出機のホッパー側に位置するように、押出機内に配置される。そして、ホッパーから押出機内にプロピレン系重合体、有機過酸化物等が供給され、押出機内で溶融混練される。このとき、プロピレン系重合体と有機過酸化物とを含むプロピレン系重合体樹脂組成物を溶融混練する。これにより、糸切れが抑制され、紡糸性に優れた不織布を製造することができる。
【0033】
不織布の製造方法としては、メルトブローン法、スパンボンド法等が挙げられる。
【0034】
スパンボンド不織布を製造する際の方法としては、溶融混練したプロピレン系重合体樹脂組成物を、複数の紡糸ノズルから吐出されたフィラメントを冷却及び延伸させた後、冷却及び延伸させたフィラメントを捕集面上に堆積させ、エンボスロールで加熱加圧処理する方法が挙げられる。
【0035】
メルトブローン不織布を製造する際の方法としては、溶融混練したプロピレン系重合体樹脂組成物を、複数の紡糸ノズルから加熱ガスと共に吐出して、繊維状にし、繊維状のプロピレン系重合体樹脂組成物を、ウェブ状に捕集する方法が挙げられる。
【0036】
以下、本開示の製造方法で用いるプロピレン系重合体、有機過酸化物等の詳細について説明する。
【0037】
本開示の製造方法で用いるプロピレン系重合体としては、プロピレンを構成単位として含む重合体であればよく、プロピレン単独重合体であってもよく、プロピレンランダム共重合体であってもよく、これらの混合物であってもよい。
【0038】
プロピレンランダム共重合体としては、全構成単位に対するプロピレンの含有率が50モル%以上であるランダム共重合体であることが好ましい。プロピレンランダム共重合体としては、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体であることが好ましい。
【0039】
プロピレンランダム共重合体としては、全構成単位に対するプロピレンの含有率が70モル%〜99.5モル%が好ましく、80モル%〜99モル%がより好ましく、90モル%〜99モル%が更に好ましい。
【0040】
α−オレフィンとしては、プロピレンを除く炭素数が2以上のα−オレフィンが好ましく、炭素数が2又は4〜8のα−オレフィンがより好ましく、炭素数2のα−オレフィンであるエチレンが更に好ましい。
【0041】
具体的なα−オレフィンとしては、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン等が挙げられる。
α−オレフィンは、1種単独であってもよく、または2種以上を併用してもよい。
【0042】
押出機供給前のプロピレン系重合体の230℃でのメルトフローレート(MFR)は、1g/10分〜25g/10分が好ましく、1.5g/10分〜20g/10分がより好ましく、2g/10分〜10g/10分が更に好ましい。
【0043】
押出機供給前のプロピレン系重合体の230℃でのMFRは、後述する実施例に記載の方法により測定される値である。
【0044】
本開示の製造方法で用いる有機過酸化物としては、プロピレン系重合体とともに溶融混練することによりプロピレン系重合体をデグラデーション可能なものであれば特に限定されない。有機過酸化物としては、例えば、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチル−ペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(t−ブチル−ペルオキシ−イソプロピル)ベンゼンなどが挙げられる。
【0045】
押出機内への有機過酸化物の供給量は、プロピレン系重合体の供給量に対して0.01質量%〜0.2質量%が好ましく、0.02質量%〜0.15質量%がより好ましい。
【0046】
本開示の製造方法では、プロピレン系重合体及び有機過酸化物とともにその他の成分を押出機内に供給してもよい。その他の成分としては、例えば、他の重合体、界面活性剤、着色剤、リン系、フェノール系等の酸化防止剤、ベンゾトリアゾール系等の耐候安定剤、ヒンダードアミン系等の耐光安定剤、ブロッキング防止剤、ステアリン酸カルシウム等の分散剤、滑剤、核剤、顔料、柔軟剤、親水剤、撥水剤、助剤、撥水剤、充填剤、抗菌剤、農薬、防虫剤、薬剤、天然油、合成油などが挙げられる。
【0047】
押出機内へのその他の成分の供給量としては、例えば、プロピレン系重合体の供給量に対して0.001質量%〜1質量%であってもよく、0.01質量%〜0.5質量%であってもよい。
【0048】
本開示の製造方法にて製造される不織布の230℃でのメルトフローレート(MFR)は、押出機供給前のプロピレン系重合体の230℃でのMFRよりも大きければ特に制限されない。例えば、前述の不織布の230℃でのMFRは、30g/10分〜200g/10分が好ましく、40g/10分〜170g/10分がより好ましく、50g/10分〜150g/10分が更に好ましい。
なお、前述の不織布の230℃でのMFRは、例えば、プロピレン系重合体とともに溶融混練する有機過酸化物の量を変えて調節してもよい。
【0049】
本開示の製造方法にて製造される不織布の230℃でのMFRは、後述する実施例に記載の方法により測定される値である。
【0050】
[スクリュー]
本開示のスクリューは、クロスソー及びユニメルトを備え、前記クロスソーの長さは、スクリューの口径の0.5倍〜5倍であり、前記ユニメルトのクリアランスが0.3mm〜1.5mmであり、プロピレン系重合体と有機過酸化物とを含むプロピレン系重合体樹脂組成物の溶融混練に用いる。本開示のスクリューを用いることにより、押出機内でのプロピレン系重合体樹脂組成物の混練性に優れ、その結果、紡糸性により優れた不織布を製造することができる。
本開示のスクリューの好ましい構成は、前述の本開示の不織布の製造方法にて用いるスクリューの好ましい構成と同様であるため、その説明を省略する。
【実施例】
【0051】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0052】
<原料>
実施例1〜6及び比較例1〜2では、プロピレン系重合体としてプロピレン単独重合体(ホモPP、サビック社製)を用い、実施例1〜6及び比較例1〜2では、有機過酸化物として1,3−ビス(t−ブチル−ペルオキシ−イソプロピル)ベンゼンを用いた。
【0053】
<スクリュー>
実施例1〜6、比較例1では、図1に示すクロスソー及びユニメルトを備えるスクリューを用い、比較例2では、クロスソー及びユニメルトを有していないスクリューを用いた。
スクリューにおけるクロスソー及びユニメルトの各条件を、表1に示す。なお、スクリューの口径(D)は225mmであり、スクリュー軸に対するユニメルトの傾斜は45°であり、ユニメルトの長さは450mmであり、スクリュー円周方向におけるクロスソーのピッチ長さは70.7mm(クロスソー全体で一定)であり、スクリュー軸方向におけるクロスソーのピッチ長さは48mm(クロスソー全体で一定)であった。
【0054】
[実施例1〜6、比較例1〜2]
表1に示す条件を満たす一軸スクリューを備える押出機内にプロピレン系重合体と有機過酸化物とを表1に示す組成となるように供給し、押出機内のプロピレン系重合体と有機過酸化物とを含むプロピレン系重合体樹脂組成物を押出機内温度220℃、スクリュー回転数80rpmで溶融混練した。
溶融混練したプロピレン系重合体樹脂組成物を、スパンボンド法により紡糸成形して不織布を製造した。
【0055】
<MFR(メルトフローレート)>
押出機供給前のプロピレン系重合体及び不織布の230℃でのメルトフローレートを、JIS K 7210−1:2014における規定の距離をピストンが動くのに必要な時間を測定するB法に従い測定した。具体的には以下の(1)〜(3)のようにして測定した。
結果を表1に示す。
(1) 試料を5g採取し、長さ160mm×内径9.550mmのシリンダーにピンセットで試料を詰め込んだ。
(2) 自動押出しプラストメータ(テスター産業株式会社製、TP−406型)を用い、試験温度230℃、荷重2.16kg、測定距離6mmの条件でMFRを測定した。
(3) 測定を3回行い、その算術平均値を求め、小数点第1位を四捨五入しMFRとした。
【0056】
<紡糸性>
紡糸性は、溶融混練したプロピレン系重合体樹脂組成物を60分間連続で紡糸成形した際の観察結果で評価した。結果を表1に示す。
−評価基準−
A+:糸切れなし(0回)
A:糸切れ1回
B:糸切れ2回以上
【0057】
<経済性>
プロピレン系重合体の市場情報からMFRが60g/10分であるプロピレン系重合体の原料価格、及びMFRが2g/10分、3.2g/10分又は25g/10分であるプロピレン系重合体の原料価格から経済性を評価した。MFRが60g/10分であるプロピレン系重合体に対し、経済的メリットがある場合、評価をAとした。
結果を表1に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
表1に示すように、有機過酸化物を用いた場合であっても、実施例1〜6にて得られた不織布は、比較例2にて得られた不織布よりも紡糸性に優れていた。
更に、実施例1〜6にて得られた不織布は、比較例1にて得られた不織布よりも経済性に優れていた。
また、実施例1、2及び4では、実施例3、5及び6よりも、紡糸性に優れていた。この理由は、実施例1、2及び4では、クロスソーの長さ及びユニメルトのクリアランスのバランスが実施例3、5及び6よりも良く、押出機内でのプロピレン系重合体樹脂組成物の混練性がより良好であったためと考えられる。
【0060】
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
【符号の説明】
【0061】
1 フライト
2 クロスソー
3 ユニメルト
10 スクリュー
【要約】
プロピレン系重合体と有機過酸化物とをクロスソー及びユニメルトを備えるスクリューを備える押出機内に供給し、前記押出機内の前記プロピレン系重合体と前記有機過酸化物とを含むプロピレン系重合体樹脂組成物を溶融混練し、溶融混練した前記プロピレン系重合体樹脂組成物を紡糸成形して不織布を製造する不織布の製造方法。
図1
図2
図3