特許第6599087号(P6599087)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6599087柔らかい食感を有する繊維状組織の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6599087
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】柔らかい食感を有する繊維状組織の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 21/10 20160101AFI20191021BHJP
【FI】
   A23L21/10
【請求項の数】10
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2014-177404(P2014-177404)
(22)【出願日】2014年9月1日
(65)【公開番号】特開2015-62411(P2015-62411A)
(43)【公開日】2015年4月9日
【審査請求日】2017年8月9日
(31)【優先権主張番号】特願2013-179840(P2013-179840)
(32)【優先日】2013年8月30日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000175283
【氏名又は名称】三栄源エフ・エフ・アイ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】丸岡 弘和
(72)【発明者】
【氏名】島 祐理
【審査官】 市島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】 特許第3435079(JP,B2)
【文献】 特開2003−125715(JP,A)
【文献】 特開平11−178520(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 21/00−21/25
A23L 29/20−29/206
A23L 29/231−29/30
CAplus/FSTA/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水、(i)乳タンパク質、(ii)キサンタンガム、(iii)ガラクトマンナン及び/又はグルコマンナン、並びに(iv)酸を含有する、pH5以下の混合物を調製することを特徴とする、柔らかい食感を有する繊維状組織を製造する方法であって、
前記混合物における(i)乳タンパク質の含量が0.102〜3.06質量%であり、
前記混合物における(ii)キサンタンガムの含量が0.04〜0.5質量%であり、
前記混合物における(iii)ガラクトマンナン及び/又はグルコマンナンの含量が0.05〜0.5質量%であり、
前記混合物におけるジェランガム含量が0.03質量%未満である、柔らかい食感を有する繊維状組織を製造する方法(ただし、前記混合物がカラギナンを含有する場合を除く)。
【請求項2】
水、(i)乳タンパク質、(ii)キサンタンガム、(iii)ガラクトマンナン及び/又はグルコマンナン、並びに(iv)酸を含有する、pH5以下の混合物を、
少なくとも成分(i)乳タンパク質を含む組成物A1と、
少なくとも成分(iv)酸を含む組成物A2とを混合して調製する、
請求項1に記載の繊維状組織を製造する方法。
【請求項3】
更に、下記条件(イ)及び/又は(ロ)を満たすことを特徴とする、請求項2に記載の繊維状組織を製造する方法;
(イ)前記組成物A1が、さらに成分(ii)キサンタンガムを含む、
(ロ)前記組成物A1又はA2が、成分(ii)キサンタンガム、並びに(iii)ガラクトマンナン及び/又はグルコマンナンを含む。
【請求項4】
水、(i)乳タンパク質、(ii)キサンタンガム、(iii)ガラクトマンナン及び/又はグルコマンナン、並びに(iv)酸を含有する、pH5以下の混合物を、
少なくとも成分(i)乳タンパク質及び(iv)酸を含む組成物B1と、
少なくとも成分(ii)キサンタンガムを含む組成物B2とを混合して調製する、
請求項1に記載の繊維状組織を製造する方法。
【請求項5】
水に、(i)乳タンパク質、(ii)キサンタンガム、(iii)ガラクトマンナン及び/又はグルコマンナン、並びに(iv)酸を添加する、請求項1に記載の繊維状組織を製造する方法。
【請求項6】
(i)乳タンパク質、(ii)キサンタンガム、並びに(iii)ガラクトマンナン及び/又はグルコマンナンを含有する水溶液と、
(iv)酸を混合し、前記水溶液のpHを5以下に調整することを特徴とする、柔らかい食感を有する繊維状組織の製造方法であって、
前記混合物における(i)乳タンパク質の含量が0.102〜3.06質量%であり、
前記混合物における(ii)キサンタンガムの含量が0.04〜0.5質量%であり、
前記混合物における(iii)ガラクトマンナン及び/又はグルコマンナンの含量が0.05〜0.5質量%であり、
前記混合物におけるジェランガム含量が0.03質量%未満である、柔らかい食感を有する繊維状組織を製造する方法(ただし、前記混合物がカラギナンを含有する場合を除く)。
【請求項7】
(ii)キサンタンガム、(iii)ガラクトマンナン及び/又はグルコマンナン、並びに
(iv)酸を含有し、pHが5以下である水溶液と、
(i)乳タンパク質を混合することを特徴とする、柔らかい食感を有する繊維状組織の製造方法であって、
前記混合物における(i)乳タンパク質の含量が0.102〜3.06質量%であり、
前記混合物における(ii)キサンタンガムの含量が0.04〜0.5質量%であり、
前記混合物における(iii)ガラクトマンナン及び/又はグルコマンナンの含量が0.05〜0.5質量%であり、
前記混合物におけるジェランガム含量が0.03質量%未満である、柔らかい食感を有する繊維状組織を製造する方法(ただし、前記混合物がカラギナンを含有する場合を除く)。
【請求項8】
前記繊維状組織が3mm以上の長径を有するものである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の繊維状組織を製造する方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の製造方法によって製造される繊維状組織を飲食品に配合することを特徴とする、柔らかい食感を有する繊維状組織を含有する飲食品の製造方法。
【請求項10】
前記飲食品が発酵セルロースを含有する、請求項9に記載の飲食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンゴー、桃、メロン等の果肉繊維を想起させるような、柔らかい食感を有する繊維状組織の製造方法、及び柔らかい食感の繊維状組織を含有する飲食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
果肉様食感を有する飲食品として、各種飲料やゼリー等が知られている。
例えば、キトサン溶液と、加熱溶解したゲル化剤溶液と、果肉汁溶液を均一に混合して得られる果肉繊維状ゲル入り果汁飲料(特許文献1)や、糖類、果汁、カラギーナン、ジェランガム並びにキサンタンガム及び/又はグルコマンナンを加熱した混合ゾル状物を冷却ゲル化し、これを緩慢凍結し、次いで解凍して得られる、果肉状組織を有する耐熱性ゼリー食品(特許文献2)等が知られている。
【0003】
また、特許文献3〜5には、キサンタンガムを用いた技術が開示されている。
例えば、特許文献3には、タンパク質を少なくとも0.02%含有し、pHが4.0以下である原料液と、寒天、ファーセレラン及びカラギナンからなる一種以上のゲル化剤、並びにキサンタンガム、アラビアガム及びプルランからなる一種以上のガム質を含有する原料液とを混合し、冷却固化することで、繊維状組織を有するゼリーを製造したことが示されている。
特許文献4には、ジェランガム、タマリンドシードガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム及び乳清タンパクを含んでなる果肉様ゼリーが記載され、また、特許文献5には、キサンタンガム、ラムダカラギーナン及びグァーガムを含む粉末飲料を、タンパク質含有飲食品に溶解させることで、スムージー様食感を有する飲料を提供できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平07−111882号公報
【特許文献2】特開平09−140339号公報
【特許文献3】特公平06−24473号公報
【特許文献4】特許第3435079号
【特許文献5】特開2012−115207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術では、マンゴー、桃、メロン等の果肉繊維を想起させるような、柔らかい食感を有する繊維状組織を提供することができなかった。
例えば、特許文献1に開示された技術は、正に帯電した高分子であるキトサンと、アニオン性高分子の間に生じる分子間力を利用した技術であり、分子間で引き合い、中和された分子が互いに絡み合って、大きなフロック(繊維状ゲル)が形成される。しかし、得られる繊維状ゲルは、硬い食感を有する繊維集合体であり、果肉の繊維のように柔らかくほぐれた状態ではない。そのため、本発明が目的とする、マンゴー、桃、メロン等の果肉繊維を想起させるような、柔らかい食感を有する繊維状組織を再現することができない。更には、撹拌時にプロペラ等に過度に巻き付きやすく、収率や作業効率の低下を招くといった問題や、キトサンを必須成分として用いているため、キトサンに起因する収斂味が最終飲食品に与える影響が大きいという問題を有している。
【0006】
特許文献2に開示された技術は、凍結時に生じる氷結晶をゼリー組織中で適度に成長させることで、ゼリー組織の一部を破壊し、果肉様食感を付与するものである。これにより、内部に粒状食感ゼリーを含有し、部分的に食感が異なる不均一なゼリーを得ることが可能であるが、繊維状物は含まれておらず、本発明が目的とする繊維状組織を得ることができない。更に、制御された条件下で緩慢凍結・解凍を行なわなければならず、製造工程が煩雑となるという問題や、品質が十分に安定しないといった問題も有している。
【0007】
同様に、特許文献3〜5に開示された技術をもってしても、柔らかい食感を有する繊維状組織を調製することができない。
例えば、特許文献3で使用されているタンパク質含量は0.3%未満と低く、外観上、あたかも繊維状組織の様なものが形成されているようなゼリー(繊維模様を有するゼリー)を調製することはできるが、得られる組織は繊維の有無を判別できないほど極僅かであり、繊維質の果肉を想起させるような、繊維状食感を付与することは到底できない。また、例えば、当該技術を用いて繊維状食感を付与することを目的として、タンパク質を増量した場合であっても、得られる繊維状組織は硬く締まったギシギシとした食感となるため、マンゴー、桃、メロン等の果肉繊維の食感を想起させるような、柔らかい食感を有する繊維状組織を得ることは到底できない。
【0008】
特許文献4には、ジェランガム、タマリンドシードガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム及び乳清タンパクを含んでなる果肉様ゼリーが開示されているが、ジェランガムを0.03%以上用いているため、塊状の組織が形成され、本発明が目的とする細長い繊維状組織を調製することができない。また、特許文献2に開示された技術と同様に、本技術も、凍結時に生じる氷結晶をゼリー組織中で適度に成長させることで、ゼリー組織の一部を破壊し、果肉様食感を付与する技術であるため、冷凍解凍工程を経なかった場合は、果肉様食感を十分に付与することが難しい。例えば、実施例1には、繊維質組織の外観ができている旨が開示されているが、冷凍解凍工程を経なかった場合は、あたかも繊維質組織の様なものが形成されているようなゼリー(模様を有するゼリー)を調製することはできるが、繊維状組織として認識される十分な食感を有する組織は得られなかった。
【0009】
特許文献5に開示された技術は、飲料に粘性を付与し、更に不溶性固形分(加工澱粉、ココア等)を併用することで、スムージー食感を付与する技術である。従って、不溶性固形分を含有しなかった場合は、良好なスムージー食感を付与できないという問題を有していた。例えば、特許文献5の表9に記載された配合4cは、加工澱粉を含まない系であるが、その食感は5段階評価で「2(評価:やや好ましくない)」である。
また、特許文献5には、酸を用いてpHを5以下に調整する技術について何ら開示がない。当該pHに関し、特許文献5の実施例処方の中で、pHが最も低いと考えられる配合14a及び14c(表14参照)について、実際に飲料を調製したところ、そのpHは5.3及び5.6であった。また、得られた飲料は、果肉様の粒状食感を有する飲料であり、飲料中に繊維状組織は形成されていなかった。
【0010】
上記従来技術に鑑み、本発明では、従来技術では達成できなかった、マンゴー、桃、メロン等の繊維質の果肉を想起させるような、柔らかい食感の繊維状組織、並びに当該繊維を含有する飲食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは上記のごとき課題を解決すべく鋭意研究した結果、水、(i)タンパク質、(ii)キサンタンガム、(iii)ガラクトマンナン及び/又はグルコマンナン、並びに(iv)酸を含有する、pH5以下の混合物を調製することで、柔らかい食感を有する繊維状組織を製造できることを見出して本発明に至った。
【0012】
また、本発明者らは、以下の組成物を用いることで、店舗や家庭等で、柔らかい食感を有する繊維状組織を簡便に製造できる組成物を提供できることを見出して本発明に至った;
(組成物1)タンパク質含有飲食品と混合することで、繊維状組織を有する飲食品を調製するための組成物であり、
前記組成物が次の成分を含有することを特徴とする組成物;
(ii)キサンタンガム、
(iii)ガラクトマンナン及び/又はグルコマンナン、
(iv)前記タンパク質含有飲食品との混合物のpHが5以下となる量の酸。
(組成物2)pHが5以下である飲食品と混合することで、繊維状組織を有する飲食品を調製するための組成物であり、
前記組成物が次の成分を含有することを特徴とする組成物;
(i)タンパク質、
(ii)キサンタンガム、
(iii)ガラクトマンナン及び/又はグルコマンナン。
【0013】
本発明は、以下の態様を有する、柔らかい食感を有する繊維状組織を製造する方法に関する;
項1.
水、(i)タンパク質、(ii)キサンタンガム、(iii)ガラクトマンナン及び/又はグルコマンナン、並びに(iv)酸を含有する、pH5以下の混合物を調製することを特徴とする、柔らかい食感を有する繊維状組織を製造する方法。
項2.
項1に記載のpH5以下の混合物を、
少なくとも成分(i)タンパク質を含む組成物A1と、
少なくとも成分(iv)酸を含む組成物A2とを混合して調製する、
項1に記載の繊維状組織を製造する方法。
項3.
更に、下記条件(イ)及び/又は(ロ)を満たすことを特徴とする、項2に記載の繊維状組織を製造する方法;
(イ)前記組成物A1が、さらに成分(ii)キサンタンガムを含む、
(ロ)前記組成物A1又はA2が、成分(ii)キサンタンガム、並びに(iii)ガラクトマンナン及び/又はグルコマンナンを含む。
項4.
項1に記載のpH5以下の混合物を、
少なくとも成分(i)タンパク質及び(iv)酸を含む組成物B1と、
少なくとも成分(ii)キサンタンガムを含む組成物B2とを混合して調製する、
項1に記載の繊維状組織を製造する方法。
項5.
水に、(i)タンパク質、(ii)キサンタンガム、(iii)ガラクトマンナン及び/又はグルコマンナン、並びに(iv)酸を添加する、項1に記載の繊維状組織を製造する方法。
項6.
(i)タンパク質、(ii)キサンタンガム、並びに(iii)ガラクトマンナン及び/又はグルコマンナンを含有する水溶液と、
(iv)酸を混合し、前記水溶液のpHを5以下に調整することを特徴とする、柔らかい食感を有する繊維状組織の製造方法。
項7.
(ii)キサンタンガム、(iii)ガラクトマンナン及び/又はグルコマンナン、並びに(iv)酸を含有し、pHが5以下である水溶液と、
(i)タンパク質を混合することを特徴とする、柔らかい食感を有する繊維状組織の製造方法。
項8.
前記混合物におけるタンパク質含量が0.3質量%以上である、項1〜7のいずれか一項に記載の繊維状組織を製造する方法。
項9.
前記繊維状組織が3mm以上の長径を有するものである、項1〜8のいずれか一項に記載の繊維状組織を製造する方法。
【0014】
本発明はまた、以下の態様を有する、繊維状組織を有する飲食品を調製するための組成物、繊維状組織、及び繊維状組織を含有する飲食品にも関する;
項10.項1〜9のいずれか一項に記載の製造方法によって製造される、繊維状組織。
項11.項10に記載の繊維状組織を含有する飲食品。
項12.更に発酵セルロースを含有する、項11に記載の飲食品。
項13.
タンパク質含有飲食品と混合することで、繊維状組織を有する飲食品を調製するための組成物であり、
前記組成物が次の成分を含有することを特徴とする組成物;
(ii)キサンタンガム、
(iii)ガラクトマンナン及び/又はグルコマンナン、
(iv)前記タンパク質含有飲食品との混合物のpHが5以下となる量の酸。
項14.
pHが5以下である飲食品と混合することで、繊維状組織を有する飲食品を調製するための組成物であり、
前記組成物が次の成分を含有することを特徴とする組成物;
(i)タンパク質、
(ii)キサンタンガム、
(iii)ガラクトマンナン及び/又はグルコマンナン。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、簡便な製造工程によって、マンゴー、桃、メロン等の繊維質の果肉を想起させるような、柔らかい食感を有する繊維状組織を製造できる。本発明で得られる繊維状組織は、果肉繊維と遜色ない食感を有するため、当該繊維状組織を各種飲食品に配合することで、果肉が含まれていない場合においても、あたかも果肉繊維が含まれているような食感を飲食品に付与できる。
また、本発明によれば、タンパク質含有飲食品や、pHが5以下である飲食品と混合することで、繊維状組織を有する飲食品を簡便に調製できる組成物が提供される。これにより、店舗や家庭等において、繊維状組織を有する飲食品を簡便に調製することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実験例1における繊維状組織(参考例1−1)を示した写真である。
図2】実験例1における塊状組織(比較例1−1)を示した写真である。
図3】実験例1における細かな塊状組織(比較例1−4)を示した写真である。
図4】実験例2における繊維状組織(実施例2−1)を示した写真である。
図5】実験例3における繊維状組織(比較例3−1)を示した写真である。
図6】実験例3における繊維状組織(実施例3−1)を示した写真である。
図7】実験例3における繊維状組織(実施例3−2)を示した写真である。
図8】実験例4における繊維状組織(実施例4−4)を示した写真である。
図9】実施例8で製造した、繊維状組織を示した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(原材料)
本発明で用いる主な原材料は、水、(i)タンパク質、(ii)キサンタンガム、(iii)ガラクトマンナン及び/又はグルコマンナン、並びに(iv)酸である。
【0018】
(水)
本発明において、「水」は、(i)タンパク質、(ii)キサンタンガム、(iii)ガラクトマンナン及び/又はグルコマンナン、並びに(iv)酸を含有し、pH5以下である混合物の溶媒として主に用いられる。
本発明で用いる「水」は、イオン交換水等の水を別添して用いても良く、飲食品等に本来含まれる水(例えば、物質や混合物中の構成成分として含まれている水)を用いてもよい。
【0019】
(タンパク質)
本発明で用いるタンパク質の種類は特に制限されず、飲食品に使用可能なタンパク質を使用できる。例えば、乳タンパク質、大豆タンパク質、小麦タンパク質、米タンパク質等を使用できる。好ましくは乳タンパク質である。乳タンパク質源としては、例えば、牛乳、濃縮乳、濃縮脱脂乳、全脂粉乳、脱脂粉乳、乳清タンパク質、カゼイン、発酵乳等が挙げられ、大豆タンパク質源としては、例えば豆乳等が挙げられる。
【0020】
(キサンタンガム)
本発明で用いるキサンタンガムは、キサントモナス・キャンペストリス(Xanthomonas campestris)が菌体外に産生する多糖類であり、D−マンノース、D−グルコース、D−グルクロン酸で構成されている。主鎖はβ−1,4結合しているD−グルコースからなり、この主鎖のアンヒドログルコースにD−マンノース、D−グルクロン酸、D−マンノースからなる側鎖が結合している。
【0021】
(ガラクトマンナン及び/又はグルコマンナン)
本発明で用いるガラクトマンナンは、β−D−マンノースの主鎖がβ−1,4結合、α−D−ガラクトースの側鎖がα−1,6結合した多糖類であり、好ましくは、ローカストビーンガム、グァーガム、タラガム等を例示できる。ローカストビーンガムは、マンノースとガラクトースの比率が約4:1であり、グァーガムは約2:1、タラガムは約3:1である。
本発明で用いるグルコマンナンは、食用コンニャクの主成分であり、D−グルコースとD−マンノースがほぼ2:3の割合でβ−1,4結合している多糖類である。
【0022】
(酸)
本発明で用いる酸の種類は特に制限されず、飲食品に利用可能な、各種の酸を使用できる。例えば、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、酒石酸、グルコン酸、酢酸、グルコノデルタラクトン、リン酸、フマル酸等が挙げられる。本発明では、酸として、上記酸を含む素材(例えば、果汁、ピューレ、酢、ヨーグルト等)を利用することも可能である。
【0023】
1.柔らかい食感を有する繊維状組織の製造方法
本発明は、水、(i)タンパク質、(ii)キサンタンガム、(iii)ガラクトマンナン及び/又はグルコマンナン、並びに(iv)酸を含有する、pH5以下の混合物を調製することを特徴とする、柔らかい食感を有する繊維状組織を製造する方法に関する。
(原材料の好ましい含量)
【0024】
前記混合物における水の含量は特に制限されないが、好ましい含量は50質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、更により好ましくは75質量%以上である。
【0025】
前記混合物における(i)タンパク質含量は、目的とする繊維状組織によって適宜調整することが可能であり、特に制限されない。繊維質の果肉を想起させるような食感を付与する観点からは、混合物におけるタンパク質含量が0.3〜5質量%であることが好ましく、0.35〜3.5質量%であることがより好ましく、0.5〜2.5質量%であることが更に好ましい。前記混合物におけるタンパク質含量が0.3質量%未満では、繊維状の模様は得られるものの、繊維状食感が感じられ難い場合があり、一方で、タンパク質含量が5質量%を超えると、得られる繊維状組織が硬くなり過ぎる場合や、繊維が多すぎて果肉をイメージできる飲食品とならない場合がある。
【0026】
本発明では、混合物に(ii)キサンタンガムを用いることで、細長い繊維状組織を調製することができる。前記混合物における(ii)キサンタンガム含量は特に制限されないが、好ましいキサンタンガム含量は0.01〜2質量%であり、より好ましくは0.02〜1質量%、更に好ましくは0.02〜0.8質量%、更により好ましくは0.03〜0.5質量%である。
【0027】
また、本発明では、前記キサンタンガムに加え、混合物に(iii)ガラクトマンナン及び/又はグルコマンナンを含有することを特徴とする。
本発明では、(iii)ガラクトマンナン及び/又はグルコマンナンを用いることで、柔らかく、ほぐれやすい繊維状組織を調製することができ、(iii)ガラクトマンナン及び/又はグルコマンナンを用いなかった場合は、得られる繊維状組織はギシギシとした硬い食感となり、本発明が目的とする、柔らかい食感を有する繊維状組織を調製することができない。
前記混合物における(iii)ガラクトマンナン及び/又はグルコマンナン含量は特に制限されないが、好ましい含量は0.005〜2質量%であり、より好ましくは0.005〜1質量%、更に好ましくは0.01〜0.8質量%、更により好ましくは0.02〜0.5質量%である。
なお、十分な柔らかさと、しっかりとした繊維状食感を感じる繊維状組織を提供できる観点からは、(ii)キサンタンガム1質量部に対する、(iii)ガラクトマンナン及び/又はグルコマンナンの含量が0.1〜100質量部であることが好ましく、0.2〜10質量部であることがより好ましく、0.5〜4質量部であることが更に好ましい。
【0028】
前記混合物における(iv)酸の含量は、混合物のpHが5以下になる量であれば特に制限されない。混合物のpHが5を上回ると、繊維状組織が形成されない、又は繊維状組織が形成されるものの極微量であり、繊維状食感を感じられない等の不都合が生じる。混合物の好ましいpHは4.5以下である。pHの下限は特に制限されないが、例えばpH2.5が挙げられる。
【0029】
本発明では、前記混合物に、本発明の効果を損なわない範囲で各種多糖類、甘味料、乳化剤、香料、果汁、ビタミン類、機能性素材、保存料、色素等を適宜含有させることが可能であるが、前記混合物中に、ジェランガムを含有しない、又はジェランガムを含有する場合は、混合物における含量が0.03質量%未満であることが好ましく、0.02質量%以下であることがより好ましい。前記混合物に含まれるジェランガム含量が0.03質量%以上になると、組織が塊状に形成され、本発明が目的とする細長い繊維状組織を調製することができない場合や、調製された繊維状組織の食感が硬いものとなってしまう場合があるためである。
【0030】
(製造方法)
本発明は、水、(i)タンパク質、(ii)キサンタンガム、(iii)ガラクトマンナン及び/又はグルコマンナン、並びに(iv)酸を含有する、pH5以下の混合物を調製することを特徴とする、柔らかい食感を有する繊維状組織を製造する方法に関する。
より詳細には、本発明は、前記混合物を調製することで、水、(i)タンパク質、(ii)キサンタンガム、並びに(iii)ガラクトマンナン及び/又はグルコマンナンをpH5以下で接触させ、これにより、柔らかい食感を有する繊維状組織を製造する技術に関する。
従って、前記混合物の調製手段(混合手段)は、少なくとも水と成分(i)〜(iii)がpH5以下で接触できる条件であれば、特に制限されない。例えば、撹拌機を用いた混合や、ノズル充填による混合など、各種方法を用いることができる。
【0031】
なお、本発明によれば、多糖類として(ii)キサンタンガムと、(iii)ガラクトマンナン及び/又はグルコマンナンを併用することで、混合時における製造効率を格段に向上することができる。
例えば、(iii)ガラクトマンナン及び/又はグルコマンナンを併用せずに、水、(i)タンパク質、(ii)キサンタンガム及び(iv)酸を撹拌してpH5以下の混合物を調製する場合には、撹拌機に繊維状組織が多量に絡みつき、収率や作業効率の低下を招くという問題や、繊維状組織が絡まりあって大きな塊状組織を形成し、細長い繊維状組織を得ることができないという問題を有していた。かかるところ、本発明では、(ii)キサンタンガムに加え、(iii)ガラクトマンナン及び/又はグルコマンナンを併用することで、繊維状組織が柔らかくなり、撹拌機に繊維状組織が多量に絡みつく等の問題を生じることなく、果肉繊維を想起させるような、繊維状組織を簡便に製造することができる。
また、本発明では、混合手段としてノズル充填を用いることで、撹拌機への繊維状組織の絡みつきをなくし、製造効率を向上することができる。ノズル充填による混合方法は特に制限されず、常法に従って実施できる。例えば、容器又はタンク内に、各々の成分や成分の混合物をノズル充填することで、実施できる。
【0032】
本発明の製造方法では、前記混合物の調製方法は特に制限されない。
例えば、本発明の製造方法は、以下の態様を有することができる。
【0033】
(製造方法A)
水、(i)タンパク質、(ii)キサンタンガム、(iii)ガラクトマンナン及び/又はグルコマンナン、並びに(iv)酸を含有する、pH5以下の混合物を調製することを特徴とする、柔らかい食感を有する繊維状組織を製造する方法であり、前記混合物を、
少なくとも成分(i)タンパク質を含む組成物A1と、
少なくとも成分(iv)酸を含む組成物A2とを混合して調製する、
繊維状組織を製造する方法。
【0034】
本製造方法では、成分(i)タンパク質、及び成分(iv)酸を含有する組成物を各々調製後、両組成物A1及びA2を混合し、pH5以下の混合物を調製することを特徴とする。
本製造方法では、組成物A1に少なくとも(i)タンパク質が、組成物A2に少なくとも(iv)酸が含まれていれば良く、(ii)キサンタンガム、並びに(iii)ガラクトマンナン及び/又はグルコマンナンは、組成物A1、A2のいずれに含まれていてもよい。
【0035】
本発明の製造方法Aに従うと、例えば、以下の製造方法(製造方法A−1〜A−4)が挙げられる;
(製造方法A−1)
水、(i)タンパク質、(ii)キサンタンガム、(iii)ガラクトマンナン及び/又はグルコマンナン、並びに(iv)酸を含有する、pH5以下の混合物を調製することを特徴とする、柔らかい食感を有する繊維状組織を製造する方法であり、前記混合物を、
成分(i)タンパク質、(ii)キサンタンガム、並びに(iii)ガラクトマンナン及び/又はローカストビーンガムを含む組成物A1と、
成分(iv)酸を含む組成物A2とを混合して調製する、
繊維状組織を製造する方法。
本製造方法において、最も好ましくは、以下の態様が挙げられる;
(i)タンパク質、(ii)キサンタンガム、並びに(iii)ガラクトマンナン及び/又はグルコマンナンを含有する水溶液と、
(iv)酸を混合し、前記水溶液のpHを5以下に調整することを特徴とする、柔らかい食感を有する繊維状組織の製造方法。
本製造方法では、前記(i)タンパク質、(ii)キサンタンガム、並びに(iii)ガラクトマンナン及び/又はグルコマンナンを含有する水溶液における成分(i)〜(iii)の含量が、上記「(原材料の好ましい含量)」に記載した含量になるように、水溶液を調製することが望ましい。
【0036】
(製造方法A−2)
水、(i)タンパク質、(ii)キサンタンガム、(iii)ガラクトマンナン及び/又はグルコマンナン、並びに(iv)酸を含有する、pH5以下の混合物を調製することを特徴とする、柔らかい食感を有する繊維状組織を製造する方法であり、前記混合物を、
成分(i)タンパク質を含む組成物A1と、
成分(ii)キサンタンガム、(iii)ガラクトマンナン及び/又はグルコマンナン、並びに(iv)酸を含む組成物A2とを混合して調製する、
繊維状組織を製造する方法。
本製造方法において、最も好ましくは、以下の態様が挙げられる;
(ii)キサンタンガム、(iii)ガラクトマンナン及び/又はグルコマンナン、並びに(iv)酸を含有し、pHが5以下である水溶液と、
(i)タンパク質を混合することを特徴とする、柔らかい食感を有する繊維状組織の製造方法。
本製造方法では、前記(ii)キサンタンガム、(iii)ガラクトマンナン及び/又はグルコマンナン、並びに(iv)酸を含有し、pHが5以下である水溶液における成分(ii)及び(iii)の含量が、上記「(原材料の好ましい含量)」に記載した含量になるように、水溶液を調製することが望ましい。
【0037】
(製造方法A−3)
水、(i)タンパク質、(ii)キサンタンガム、(iii)ガラクトマンナン及び/又はグルコマンナン、並びに(iv)酸を含有する、pH5以下の混合物を調製することを特徴とする、柔らかい食感を有する繊維状組織を製造する方法であり、前記混合物を、
成分(i)タンパク質、及び(ii)キサンタンガムを含む組成物A1と、
成分(iii)ガラクトマンナン及び/又はグルコマンナン、並びに(iv)酸を含む組成物A2とを混合して調製する、
繊維状組織を製造する方法。
【0038】
(製造方法A−4)
水、(i)タンパク質、(ii)キサンタンガム、(iii)ガラクトマンナン及び/又はグルコマンナン、並びに(iv)酸を含有する、pH5以下の混合物を調製することを特徴とする、柔らかい食感を有する繊維状組織を製造する方法であり、前記混合物を、
成分(i)タンパク質、並びに(iii)ガラクトマンナン及び/又はグルコマンナンを含む組成物A1と、
成分(ii)キサンタンガム及び(iv)酸を含む組成物A2とを混合して調製する、
繊維状組織を製造する方法。
【0039】
製造効率の観点からは、本発明の製造方法Aは更に、下記条件(イ)及び/又は(ロ)を満たすことが好ましい;
(イ)前記組成物A1が、さらに成分(ii)キサンタンガムを含む、
(ロ)前記組成物A1又はA2が、成分(ii)キサンタンガム、並びに(iii)ガラクトマンナン及び/又はグルコマンナンを含む。
前記条件(イ)は、組成物A1が、(i)タンパク質と(ii)キサンタンガムを少なくとも含有することを特徴とする。このように、条件(イ)を満たすことで、より具体的には、(i)タンパク質及び(ii)キサンタンガムを事前に混合させておくことで、事前混合しない場合に比べて、より長い繊維状組織を調製しやすくなる。
前記条件(ロ)は、組成物A1又はA2が(ii)キサンタンガムと共に、(iii)ガラクトマンナン及び/又はグルコマンナンを含有することを特徴とする。このように、条件(ロ)を満たすことで、より具体的には、(ii)キサンタンガムと、(iii)ガラクトマンナン及び/又はグルコマンナンを事前に混合させておくことにより、事前混合しない場合に比べて、より柔らかい食感を有する繊維状組織を調製しやすくなる。
【0040】
本発明の製造方法においては、水、(i)タンパク質、(ii)キサンタンガム、(iii)ガラクトマンナン及び/又はグルコマンナン、並びに(iv)酸を含有する、pH5以下の混合物を調製する段階で、水が含まれていれば良く、前記組成物A1、A2は必ずしも水を含むことを要しない。
繊維状食感を十分に感じる繊維状組織を調製する観点からは、少なくとも多糖類((ii)キサンタンガム、(iii)ガラクトマンナン及び/又はグルコマンナン)を含有する組成物が水を含むことが好ましく、より好ましくは前記組成物A1及びA2が共に水を含むことが望ましい。この場合、水を含む組成物中において、前記多糖類が溶解していれば、組成物調製時に加熱処理は不要であるが、必要に応じて加熱処理(例えば、80℃)を行っても良い。
【0041】
本発明の製造方法はまた、以下の態様を有することができる;
(製造方法B)
水、(i)タンパク質、(ii)キサンタンガム、(iii)ガラクトマンナン及び/又はグルコマンナン、並びに(iv)酸を含有する、pH5以下の混合物を調製することを特徴とする、柔らかい食感を有する繊維状組織を製造する方法であり、前記混合物を、
少なくとも成分(i)タンパク質及び(iv)酸を含む組成物B1と、
少なくとも成分(ii)キサンタンガムを含む組成物B2とを混合して調製する、
繊維状組織を製造する方法。
本製造方法では、成分(i)タンパク質及び(iv)酸を含有する組成物と、成分(ii)キサンタンガムを含有する組成物を各々調製後、両組成物B1及びB2を混合し、pH5以下の混合物を調製することを特徴とする。
【0042】
本製造方法では、組成物B1に少なくとも(i)タンパク質及び(iv)酸を、組成物B2に少なくとも(ii)キサンタンガムが含まれていればよく、(iii)ガラクトマンナン及び/又はグルコマンナンは、組成物B1、B2のいずれに含まれていてもよい。
柔らかい食感を付与する観点からは、組成物B2において、(ii)キサンタンガムと、(iii)ガラクトマンナン及び/又はグルコマンナンを事前に混合させておくことが望ましい。
【0043】
前記製造方法Aと同様に、本発明の製造方法においては、pH5以下の混合物を調製する段階で水が含まれていれば良く、前記組成物B1、B2は必ずしも水を含むことを要しない。
繊維状食感を十分に感じる繊維状組織を調製する観点からは、少なくとも多糖類((ii)キサンタンガム、(iii)ガラクトマンナン及び/又はグルコマンナン)を含有する組成物が水を含むことが好ましく、より好ましくは前記組成物B1及びB2が共に水を含むことが望ましい。この場合、水を含む組成物中において、前記多糖類が溶解していれば、組成物調製時に加熱処理は不要であるが、必要に応じて加熱処理(例えば、80℃)を行っても良い。
【0044】
本製造方法において、少なくとも成分(i)タンパク質及び(iv)酸を含む組成物B1に水を含む場合は、組成物B1のpHが4.5以下であることが好ましい。少なくとも水、(i)タンパク質及び(iv)酸を含む組成物B1のpHが4.5を越えると、(i)タンパク質及び(iv)酸が凝集物を形成し、細長い繊維状組織が形成されない場合があるためである。前記組成物B1のより好ましいpHは4以下であり、更に好ましいpHは3.5以下、更により好ましいpHは3以下である。pHの下限は制限されないが、例えばpH2が挙げられる。
【0045】
本発明の製造方法Bに従うと、例えば、以下の製造方法(製造方法B−1〜B−2)が挙げられる;
(製造方法B−1)
水、(i)タンパク質、(ii)キサンタンガム、(iii)ガラクトマンナン及び/又はグルコマンナン、並びに(iv)酸を含有する、pH5以下の混合物を調製することを特徴とする、柔らかい食感を有する繊維状組織を製造する方法であり、前記混合物を、
成分(i)タンパク質及び(iv)酸を含む組成物B1と、
成分(ii)キサンタンガム、並びに(iii)ガラクトマンナン及び/又はグルコマンナンを含む組成物B2とを混合して調製する、
繊維状組織を製造する方法。
【0046】
(製造方法B−2)
水、(i)タンパク質、(ii)キサンタンガム、(iii)ガラクトマンナン及び/又はグルコマンナン、並びに(iv)酸を含有する、pH5以下の混合物を調製することを特徴とする、柔らかい食感を有する繊維状組織を製造する方法であり、前記混合物を、
成分(i)タンパク質、(iii)ガラクトマンナン及び/又はグルコマンナン、並びに(iv)酸を含む組成物B1と、
成分(ii)キサンタンガムを含む組成物B2とを混合して調製する、
繊維状組織を製造する方法。
【0047】
本発明の製造方法はまた、以下の態様を有することができる;
(製造方法C)
水、(i)タンパク質、(ii)キサンタンガム、(iii)ガラクトマンナン及び/又はグルコマンナン、並びに(iv)酸を含有する、pH5以下の混合物を調製することを特徴とする、柔らかい食感を有する繊維状組織を製造する方法であり、
水に、(i)タンパク質、(ii)キサンタンガム、(iii)ガラクトマンナン及び/又はグルコマンナン、並びに(iv)酸を添加する、繊維状組織を製造する方法。
【0048】
本製造方法は、いわゆる「オールミックス法」と呼ばれる方法に従って実施できる。
例えば、本製造方法は、水に、成分(i)タンパク質、(ii)キサンタンガム、(iii)ガラクトマンナン及び/又はグルコマンナン、並びに(iv)酸を同時添加し、混合することで実施できる。成分(i)〜(iv)は、水を含む状態で添加しても良く、また、水を含まない状態で添加しても良い。
本製造方法を実施するにあたり、添加順序は多少前後しても構わないが、少なくとも成分(iii)ガラクトマンナン及び/又はグルコマンナンは、繊維状組織が形成される前に添加しておく必要がある。成分(iii)ガラクトマンナン及び/又はグルコマンナンを併用せず、成分(i)タンパク質、(ii)キサンタンガム、並びに(iv)酸を併用して形成される繊維状組織は、ギシギシと硬く締まった組織となり、当該繊維状組織が形成された後に、成分(iii)ガラクトマンナン及び/又はグルコマンナンを添加しても、当該繊維状組織を柔らかくすることができないためである。
【0049】
2.繊維状組織
上記製造方法(例えば、製造方法A〜C)に従って得られる本発明の繊維状組織は、柔らかい食感を有し、果肉繊維を想起させるような細長い繊維状組織であることを特徴とする。
【0050】
本発明の繊維状組織の長さは特に制限されないが、果肉繊維を想起させるような食感を付与する観点からは、3mm以上の長径を有することが好ましく、より好ましい長径は5mm以上であり、更に好ましくは7mm以上、更により好ましくは10mm以上である。
果肉様食感を有する飲食品として、従来、LMペクチン、ジェランガム等と金属塩との反応性を利用した果肉様食感を有するゼリーが知られているが、従来技術によって得られる果肉様食感は、塊状組織に由来するものである。より具体的には、飲食品中にこの塊状組織が存在することで、飲食品の系が不均一となり、結果として、果肉様食感を付与した飲食品が提供される。しかし、従来技術によって得られる食感は、塊状の不均一な食感であり、本発明のように、果肉繊維を想起させるような柔らかい繊維状食感を付与することはできなかった。繊維状組織の長さの上限は特に制限されないが、例えば、7cmが挙げられ、好ましい上限は5cmである。
また、繊維状の模様を外観に付与する技術は、模様を有する混合物(例えば、ゼリー溶液等)から、繊維状組織そのものを回収することができなかったが、本発明の繊維状組織は、このような従来技術とは異なり、繊維状組織のみを回収することが可能である。
【0051】
3.組成物
本発明はまた、製造現場にかかわらず、店舗や家庭等においても、柔らかい食感を有する繊維状組織を簡便に製造できる組成物にも関する。
例えば、本発明の組成物の態様として、以下の組成物が挙げられる;
(組成物1)
タンパク質含有飲食品と混合することで、繊維状組織を有する飲食品を調製するための組成物であり、
前記組成物が次の成分を含有することを特徴とする組成物;
(ii)キサンタンガム、
(iii)ガラクトマンナン及び/又はグルコマンナン、
(iv)前記タンパク質含有飲食品との混合物のpHが5以下となる量の酸。
(組成物2)
pHが5以下である飲食品と混合することで、繊維状組織を有する飲食品を調製するための組成物であり、
前記組成物が次の成分を含有することを特徴とする組成物;
(i)タンパク質、
(ii)キサンタンガム、
(iii)ガラクトマンナン及び/又はグルコマンナン。
【0052】
前記組成物を用いることで、タンパク質含有飲食品(例えば、牛乳等)や、pHが5以下である飲食品(例えば、果汁を含有する飲料等)と混合するという、極めて簡便な工程で、繊維状組織を有する飲食品を調製することができる。
前記組成物における成分(i)〜(iv)の含量は、前記組成物と飲食品との混合物における成分含量が、上記「1.柔らかい食感を有する繊維状組織の製造方法」での項目「(原材料の好ましい含量)」に記載された含量となるように、含有させることが望ましい。
また、本発明では特に制限されないが、前記組成物における成分(i)〜(iv)の含量として、下記含量を例示できる。
組成物2における好ましい(i)タンパク質含量は3〜70質量%であり、より好ましくは4〜60質量%、更に好ましくは6〜40質量%である。
組成物1又は2における好ましい(ii)キサンタンガム含量は0.01〜15質量%であり、より好ましくは0.02〜10質量%、更に好ましくは0.02〜5質量%である。
組成物1又は2における好ましい(iii)ガラクトマンナン及び/又はグルコマンナン含量は0.005〜20質量%であり、より好ましくは0.005〜15質量%、更に好ましくは0.01〜10質量%である。
組成物1における(iv)酸の含量は、組成物とタンパク質含有飲食品との混合物のpHが5以下となる量であり、より好ましくは混合物のpHが4.5以下となる量である。組成物における(iv)酸の量は、用いる酸の種類や、タンパク質含有飲食品との混合割合によって適宜調整できる。
一例として、液状の組成物1と牛乳を1:1で混合し、酸としてクエン酸を用いた場合は、組成物における酸の含量が0.5〜5質量%となるように調整することが望ましい。
【0053】
本発明の組成物1の混合対象である、タンパク質含有飲食品の種類は、特に制限されない。例えば、タンパク質含有飲食品として、乳タンパク質を含有する液状組成物(例えば、乳成分を含有する飲料等)、大豆タンパク質を含有する液状組成物(例えば、大豆成分を含有する飲料等)などが挙げられる。好ましくは、乳成分を含有する飲料であり、乳成分を含有する飲料として、好ましい飲料は牛乳である。
【0054】
本発明の組成物2の混合対象である、pHが5以下である飲食品の種類も、特に制限されない。例えば、pHが5以下である飲食品として、pHが5以下である液状組成物(例えば、飲料、スープ等)などが挙げられる。好ましくは、pHが5以下である飲料(例えば、酸、果汁等を含有する飲料)である。
【0055】
飲食品に対する、本発明の組成物の混合量は特に制限されないが、前記組成物と飲食品との混合物における、成分(i)〜(iv)の含量が、上記「1.柔らかい食感を有する繊維状組織の製造方法」での項目「(原材料の好ましい含量)」に記載された含量となるように、混合することが望ましい。
【0056】
本発明の組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、多糖類、甘味料、乳化剤、香料、果汁、ビタミン類、機能性素材、保存料、色素などを含有させることができる。例えば、本発明の組成物中に、多糖類として、寒天などを含有させることで、飲食品との混合により、繊維状組織を有するゲル状飲食品を提供できる。また、本発明の組成物中に、多糖類として、例えば、発酵セルロース、微結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース塩又は澱粉などを含有させることで、繊維状組織の分散性に優れる飲食品を提供できる。上記多糖類中、発酵セルロースについては、「4.繊維状組織を含有する飲食品」でより詳しく説明する。なお、本発明の組成物は、多糖類としてジェランガムを含有しないことが好ましく、多糖類としてジェランガムを用いる場合は、組成物と飲食品との混合物におけるジェランガム含量が0.03質量%未満、より好ましくは0.02質量%以下となるように、含量を調整することが好ましい。
【0057】
4.繊維状組織を含有する飲食品
本発明はまた、上記「1.柔らかい食感を有する繊維状組織の製造方法」に従って得られる繊維状組織を含有する飲食品、及び上記「3.組成物」をタンパク質含有飲食品又はpHが5以下である飲食品と混合して得られる、繊維状組織を含有する飲食品にも関する。飲食品の種類は特に制限されず、本発明の技術は、例えば、飲料、ゼリー、プリン、冷菓、ソース類、ドレッシング等の各種飲食品に応用できる。
【0058】
本発明の繊維状組織を含有する飲食品は、繊維状組織に加え、更に、発酵セルロースを含有することが好ましい。発酵セルロースを用いることで、飲食品の調製中に繊維状組織を均一に分散させることができ、容器への均一充填ができる、撹拌機への繊維状組織の絡みつきを軽減できる等の利点を有する。また最終飲食品中での、繊維状組織の均一分散に優れ、特に、飲料等の液状飲食品における繊維状組織の沈降あるいは浮上による偏在を防止できる。これにより、長期保存後も、繊維状組織の分散性に優れる飲食品を提供できる。
【0059】
本発明で用いる発酵セルロースは、セルロース生産菌(例えば、アセトバクター属、シュードモナス属、アグロバクテリウム属等に属する細菌)が産生するセルロースである。発酵セルロースは、植物由来の一般的なセルロース繊維の繊維径に比べて非常に微細な繊維径を有する。一方でその繊維長は長く、純粋な結晶領域のみを取得して得られる結晶セルロースとは大きく異なる。なお、発酵セルロースは繊維(セルロース)であるが、その繊維径は非常に微細であるため、それ自体が繊維状食感を付与することはない。
【0060】
飲食品中での分散安定性などの観点から、一般に市場で流通している発酵セルロースは、他の高分子物質と複合化した発酵セルロース複合体であり、本発明では、発酵セルロースとして、当該発酵セルロース複合体を使用することが好ましい。発酵セルロース複合体は商業上入手可能であり、例えば、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製の「サンアーティスト[登録商標]PN(キサンタンガム、CMCナトリウム及び発酵セルロースの複合体製剤)」を例示できる。
飲食品における発酵セルロースの含量は、特に制限されないが、好ましい発酵セルロース含量は0.01〜0.5質量%であり、より好ましくは0.02〜0.4質量%、更に好ましくは0.03〜0.3質量%の範囲内である。
【実施例】
【0061】
以下に、実施例を用いて本発明を更に詳しく説明する。ただし、これらの例は本発明を制限するものではない。なお、実施例中の「部」「%」は、それぞれ「質量部」「質量%」であることを意味する。
【0062】
実験例1 繊維状組織の調製
表1及び表2の処方に従い、繊維状組織を調製した。
水に砂糖、脱脂粉乳、及び表2に示す多糖類を添加し、80℃で10分間加熱撹拌後、蒸発した水を補正して、水溶液を調製した。
前記水溶液を撹拌しながらクエン酸水溶液を添加し、pHを4.5未満に調整することで、繊維状組織を調製した。
得られた組織について、組織の形状及び食感を評価した。結果を表2に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
【表2】
【0065】
表2に示すように、キサンタンガム以外の多糖類を用いた場合は、塊状(図2)又は細かな塊状(図3)の組織となり、果肉繊維を想起させるような細長い繊維状組織(図1)を調製することはできなかった。キサンタンガムを用いた参考例1−1は、細長い繊維状組織を有するものの、非常に硬い食感であり、当該組織は硬く締まったギシギシとした組織であった。また、撹拌棒に繊維状組織が絡みつき、工業スケールでの製造では実用性に乏しいものであった。
【0066】
実験例2 繊維状組織の調製(2):製造方法A−1
表3及び表4の処方に従って、繊維状組織を調製した。
水に砂糖、脱脂粉乳、キサンタンガム及びローカストビーンガムを添加し、80℃で10分間加熱撹拌後、蒸発した水を補正して、水溶液を調製した。
前記水溶液を撹拌しながら、クエン酸水溶液を添加することで、繊維状組織を調製した。クエン酸水溶液混合後の溶液のpHは4.1〜4.2であった。
得られた組織について、組織の形状及び食感を評価した。結果を表4に示す。
【0067】
【表3】
【0068】
【表4】
【0069】
キサンタンガムのみを0.2質量%使用した参考例1−1は、細長い繊維状組織を有するものの、非常に硬い食感で、繊維が絡まり、硬い締まったギシギシとした組織であり、繊維状組織をほぐすことが困難であった(図1)。ローカストビーンガムを併用した実施例2−1は、参考例1−1に比べて繊維状組織が柔らかくなり、ギシギシとした食感は消え、明らかに繊維がほぐれていた(図4)。実施例2−2〜2−4は、ローカストビーンガム含量が増加するにつれ、より食感が柔らかくなり、マンゴー、桃、メロン等の果肉繊維を想起させるような細長い繊維状組織であった。
【0070】
更に、実施例2−3の処方(キサンタンガム含量0.2質量%、ローカストビーンガム含量0.3質量%)において、脱脂粉乳の添加量を6質量%(実施例2−5)、及び9質量%(実施例2−6)に変更する以外は実施例2−3と同様にして繊維状組織を調製したが、いずれも細長い繊維状組織であり、柔らかい食感を有する繊維状組織が得られた。なお、実施例2−3、2−5及び2−6はいずれも柔らかい食感を有していたが、タンパク質含量が増加するにつれ、ややしっかりとした食感へと変化した。
【0071】
実験例3 繊維状組織の調製(3):製造方法A−1
表5及び表6の処方に従って、繊維状組織を調製した。
水に砂糖、脱脂粉乳、キサンタンガム及びローカストビーンガムを添加し、80℃で10分間加熱撹拌後、蒸発した水を補正して、水溶液を調製した。
前記水溶液を撹拌しながら、クエン酸水溶液を添加することで、繊維維状組織を調製した。クエン酸水溶液混合後の溶液のpHは4.1〜4.2であった。
得られた組織について、組織の形状及び食感を評価した。結果を表6に示す。
【0072】
【表5】

【0073】
【表6】
【0074】
キサンタンガムのみを0.05質量%使用した比較例3−1は、細長い繊維状組織を有するものの、非常に硬い食感で、繊維が絡まり、硬く締まったギシギシとした組織であり、繊維状組織をほぐすことが非常に困難であった(図5)。ローカストビーンガムを併用した実施例3−1は、比較例3−1に比べて繊維状組織が柔らかくなり、ギシギシとした食感は消え、明らかに繊維状組織がほぐれていた(図6)。
キサンタンガム添加量を増加させた実施例3−2の繊維状組織は、実施例3−1に比べて繊維の長さが長くなり、実施例3−1と同程度の柔らかさを有する繊維状組織であった(図7)。また、実施例3−2の繊維状組織(図7)は、水中で撹拌することで容易にほぐれる柔らかい繊維状組織であった。
実施例3−3〜3−6は、キサンタンガム含量が増加するにつれ、より食感が柔らかくなり、マンゴー、桃、メロン等の果肉繊維を想起させるような繊維状組織であった。
【0075】
実験例4 繊維状組織の調製(4):製造方法A−1
表7及び表8の処方に従って、繊維状組織を調製した。
水に砂糖、脱脂粉乳、キサンタンガム及びグァーガムを添加し、80℃で10分間加熱撹拌後、蒸発した水を補正して、水溶液を調製した。
前記水溶液を撹拌しながら、クエン酸水溶液を添加することで、繊維維状組織を調製した。クエン酸水溶液混合後の溶液のpHは4.1〜4.3であった。
得られた組織について、組織の形状及び食感を評価した。結果を表8に示す。
【0076】
【表7】
【0077】
【表8】
【0078】
キサンタンガムに加えて、ローカストビーンガムの代わりにグァーガムを併用することで、細長い繊維状であり、柔らかい食感を有する繊維状組織を調製できることが確認された(実施例4−1〜4−6)。繊維状組織は、グァーガムの添加量が増加するに従って、より柔らかくなる傾向が見られた。
【0079】
実験例5 繊維状組織及び繊維状組織を含有する飲食品の調製(5):製造方法A−1
表9の処方に従って、繊維状組織を含有する飲食品(ドリンクゼリー)を調製した。
水に砂糖、脱脂粉乳、多糖類(キサンタンガム、ローカストビーンガム、及び寒天)、並びにクエン酸三ナトリウムを添加し、80℃で10分間加熱撹拌後、蒸発した水を補正して、水溶液を調製した。
前記水溶液を撹拌しながら、クエン酸水溶液、果汁、ピューレ、香料、及び色素を添加し、繊維状組織を調製した。
(繊維状組織を含有する飲食品の調製)
前記で調製した繊維状組織を含有する溶液と、別途、用意しておいた発酵セルロース複合体を含有する水溶液を混合し、蒸発した水を補正して容器に充填した。次いで、冷却固化することで、ドリンクゼリーを調製した。なお、寒天はドリンクゼリーのゼリー基材として用いた。
【0080】
【表9】
【0081】
注1)水に、発酵セルロース複合体製剤(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製の「サンアーティスト[登録商標]PN」、発酵セルロース18.3質量%、キサンタンガム12.1質量%及びカルボキシメチルセルロース6.2質量%を含有する製剤)を2質量%溶解させ、2000rpmで撹拌し、発酵セルロース濃度が0.37質量%である水溶液を調製した。
【0082】
実施例5−1及び5−2のドリンクゼリーは、マンゴー又は桃特有の果肉繊維を想起させる、柔らかく細長い繊維状組織(10mm以上)を含有するドリンクゼリーであり、果肉繊維のような食感を強く感じるドリンクゼリーであった。また、実施例5−1及び5−2のドリンクゼリーは、製造時における繊維状組織の分散安定性に優れ、ゼリー中に繊維状組織が均一に分散したまま固化された、品質の高いドリンクゼリーであった。
【0083】
実施例6 繊維状組織及び繊維状組織を含有する飲食品の調製(6):製造方法A−1
表10及び11の処方に従って、繊維状組織を含有する飲食品(飲料)を調製した。
水に脱脂粉乳と多糖類(キサンタンガム及びグァーガム)を添加し、80℃で10分間加熱撹拌後、蒸発した水を補正して、水溶液を調製した。
前記水溶液に、50%クエン酸水溶液を添加し、5分間撹拌して、繊維状組織を調製した。
(繊維状組織を含有する飲食品(飲料)の調製)
前記で調製した繊維状組織を含有する溶液と、安定剤溶液、砂糖、白桃果汁、色素及び甘味料を混合し、溶液のpHが3.4となるまで、50%クエン酸水溶液を添加した。次いで、93℃まで加熱し、香料を添加後、容器にホットパック充填し、飲料を調製した。
【0084】
【表10】
【0085】
【表11】
【0086】
注2)安定剤溶液は、水49.7質量部に、発酵セルロース複合体製剤0.25質量部及びグァーガム0.05質量部を添加し、10分間撹拌後、ホモミキサーにて10000rpmで10分間撹拌して、調製した。発酵セルロース複合体製剤は、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製の「サンアーティスト[登録商標]PN」を用いた。
【0087】
調製された飲料は、桃特有の果肉繊維を想起させる、柔らかく細長い繊維状組織(3mm以上)を有するネクター様飲料であった。また、調製された飲料は、長期保存後も、繊維状組織の分散安定性に優れたネクター様飲料であった。
【0088】
実施例7 繊維状組織及び繊維状組織を含有する飲食品の調製(7):製造方法A−1
表12の処方に従って、繊維状組織を含有する飲食品(ゼリー)を調製した。
水に砂糖、脱脂粉乳、多糖類(キサンタンガム及びグルコマンナン)並びにクエン酸三ナトリウムを添加し、80℃で10分間加熱撹拌後、蒸発した水を補正して、水溶液を調製した。
前記水溶液を撹拌しながら、クエン酸水溶液、香料及び色素を添加し、繊維状組織を調製した。
(繊維状組織を含有する飲食品の調製)
前記で調製した繊維状組織を含有する溶液と、別途、用意しておいた発酵セルロース複合体を含有する水溶液を混合し、容器に充填した。85℃で30分間殺菌を行った後、冷却固化することで、ゼリーを調製した。
【0089】
【表12】
【0090】
注3)水に、発酵セルロース複合体製剤(「サンアーティスト[登録商標]PN」)を2質量%溶解させ、2000rpmで撹拌し、発酵セルロース濃度が0.37質量%である水溶液を調製した。
【0091】
調製されたゼリーは、マンゴー特有の果肉繊維を想起させるような、柔らかく細長い繊維状組織(5mm以上)を含有するゼリーであり、果肉繊維のような食感を強く感じるゼリーであった。
【0092】
実施例8 繊維状組織及び繊維状組織を含有する飲食品の調製(8):製造方法A−2
表13の処方に従って、繊維状組織を含有する飲食品(ゼリー)を調製した。
水に砂糖、多糖類(キサンタンガム、ローカストビーンガム及び寒天)、クエン酸三ナトリウムを添加し、80℃で10分間加熱撹拌した。次いで、50%クエン酸水溶液、マンゴーピューレ、色素及び香料を添加し、蒸発した水を補正して、水溶液を調製した。水溶液のpHは3.0であった。
前記水溶液を撹拌しながら、牛乳を添加して、繊維状組織を調製した(図9)。なお、上記で調製した水溶液と牛乳を混合した後のpHは3.5であった。次いで、当該水溶液を冷却固化することで、ゼリーを調製した。表13の処方中、寒天はゼリー基材として用いた。
【0093】
【表13】
【0094】
調製されたゼリーは、細長く、非常に柔らかい食感を有する繊維状組織(3mm以上)を含有するゼリーであり、マンゴー特有の繊維質の果肉を想起させる食感を有していた。
【0095】
実施例9 繊維状組織及び繊維状組織を含有する飲食品の調製(9):製造方法A−3、A−4、B−1及びC
表14の処方に従って、繊維状組織を調製した。
(実施例9−1:製造方法A−3)
水に砂糖、脱脂粉乳及びキサンタンガムを添加し、80℃で10分間加熱撹拌後、蒸発した水を補正し、水溶液を調製した。
別途、水にローカストビーンガムを添加し、80℃で10分間加熱撹拌後、蒸発した水を補正した。次いで、クエン酸水溶液を添加し、pHを3.5に調整した水溶液を調製した。
各々調製した水溶液を混合し、繊維状組織を調製した。混合後の水溶液のpHは4.1であった。
(実施例9−2:製造方法A−4)
水に砂糖、脱脂粉乳及びローカストビーンガムを添加し、80℃で10分間加熱撹拌後、蒸発した水を補正し、水溶液を調製した。
別途、水にキサンタンガムを添加し、80℃で10分間加熱撹拌後、蒸発した水を補正した。次いで、クエン酸水溶液を添加し、pHを3.5に調整した水溶液を調製した。
各々調製した水溶液を混合し、繊維状組織を調製した。混合後の水溶液のpHは4.1であった。
(実施例9−3:製造方法B−1)
水に、砂糖及び脱脂粉乳を添加し、クエン酸水溶液を添加し、pHを3.5に調整した水溶液を調製した。
別途、水にキサンタンガム及びローカストビーンガムを添加し、80℃で10分間加熱撹拌後、蒸発した水を補正し、水溶液を調製した。
各々調製した水溶液を混合し、繊維状組織を調製した。混合後の水溶液のpHは3.5であった。
(実施例9−4:製造方法C)
水に、砂糖、脱脂粉乳、キサンタンガム、ローカストビーンガム、及びクエン酸を添加し、繊維状組織を調製した。混合後の水溶液のpHは4.1であった。
【0096】
【表14】
【0097】
実施例9−1〜9−4に示すいずれの製造方法においても、柔らかい食感を有する繊維状組織を調製することができた。繊維状組織の長さは、実施例9−1、9−2及び9−4が5mm以上、実施例9−3が3mm以上であった。
【0098】
実施例10 組成物、及び組成物を用いた繊維状組織を有する飲食品の調製
表15の処方に従って、タンパク質含有飲食品と混合することで、繊維状組織を有する飲食品を調製するための、組成物を製造した。
(組成物の製造)
水に、多糖類(キサンタンガム、ローカストビーンガム及び寒天)を添加し、80℃で10分間加熱撹拌した。次いで、クエン酸(無水)を添加し、pH2.9の組成物を製造した。
(繊維状組織を有する飲食品の製造)
前記組成物70gと、牛乳30gを撹拌しながら混合後、冷却固化し、繊維状組織を有する飲食品(ゼリー)を調製した。混合後、冷却固化前のゼリー溶液のpHは4.3であった。
【0099】
【表15】
【0100】
調製されたゼリーは、柔らかく細長い繊維状組織(3mm以上)を含有するゼリーであり、メロン様の繊維質の果肉を想起させる食感を有していた。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9