(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたような従来の車両は、リーン装置やジャイロ装置によって車体を旋回内側に傾斜させることで、旋回時の安定性向上を意図したものであって、車両の前後方向に作用する力(加速力や制動力などの慣性力)に関しては考慮されていない。このため従来の車両においては、作用する様々な慣性力や、その慣性力と旋回時に作用する遠心力とを合わせた合力などに対し、必ずしも十分な安定性を得ることができず、さらなる安定性の向上を図った車両が要求されている。
【0005】
本発明の目的は、様々な走行状態に対して安定性の向上を図ることができる車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車両は、少なくとも2以上の複数の車輪と、対象物を搭載する搭載部と、を備えた車両であって、当該車両および前記対象物に作用する力のベクトル方向と路面とが交差する点である合成圧力中心を算出する算出手段と、当該車両の姿勢および運動状態の少なくとも一方を変更する
複数の車両状態変更手段と、前記複数の車輪が路面と接する複数の接地点間に前記合成圧力中心が位置するように前記車両状態変更手段を制御する制御手段と、を備え
、前記車両状態変更手段は、前記複数の車輪の間隔を変更する車輪間隔変更手段を備え、前記制御手段は、前記車輪間隔変更手段にて前記複数の車輪の間隔を狭くするように変更することによって、前記合成圧力中心が前記複数の接地点間から外れる方向に向かう非安定制御を実施するとともに、前記車輪間隔変更手段とは異なる他の車両状態変更手段に対し、前記合成圧力中心が前記複数の接地点間に向かう安定制御を実施することで、前記複数の接地点間に前記合成圧力中心を位置させることを特徴とする。
【0007】
このような本発明によれば、算出手段によって合成圧力中心を算出し、この合成圧力中心が複数の車輪が路面と接する複数の接地点間に位置するように制御手段が車両状態変更手段を制御し、車両状態変更手段が車両の姿勢や運動状態を変更することで、車両の安定性を向上させることができる。ここで、車両状態変更手段が変更する運動状態としては、進行方向の走行状態や制動状態(速度や加速度)、旋回状態(横力や遠心力)、鉛直方向の荷重状態(重力)などが例示できる。また、合成圧力中心としては、車両単体の重量や重心位置、運動状態によるものだけではなく、車両に搭載される対象物(人や荷物)の重量や重心位置によるものも合成されて算出される。
【0008】
従って、合成圧力中心が複数の車輪が路面と接する複数の接地点間に位置するように制御することで、前後方向に作用する慣性力に対しても安定性を維持することができる。具体的には、例えば、前後に2つの車輪を有した車両においては、前後輪間に合成圧力中心が位置するように制御し、前2輪および後1輪の3つの車輪を有した車両においては、3輪間に合成圧力中心が位置するように制御することで、前後方向に作用する慣性力に対しても安定性を維持することができる。また、対象物の影響が大きい小型の車両において、合成圧力中心を精度よく算出することができ、安定性の向上を図ることができる。
また、車両状態変更手段が車輪間隔変更手段を備え、この車輪間隔変更手段によって複数の車輪の間隔を変更することで、合成圧力中心の位置に応じた走行形態を選択することができる。すなわち、前後方向の慣性力が大きく作用する急加速時や急停車時に前後の車輪間隔を大きくしたり、遠心力が大きく作用する急旋回時に左右の車輪間隔を大きくしたりすることで、安定性を維持しながら走行性能を高めることができる。一方、慣性力や遠心力がさほど大きくない走行状態においては、前後または左右の車輪間隔を小さくすることで旋回性能を高め、小回りが利く走行形態を選択することができる。
そして、複数の車両状態変更手段のうち、少なくとも一つを用いて非安定制御を実施し、他の車両状態変更手段を用いて安定制御を実施し、これらの非安定制御および安定制御の両方を同時に実施した結果として、複数の接地点間に合成圧力中心を位置させることで、車両の安定性を維持しつつ、車両の安定性に反する他の走行状態や走行形態を同時に実現することができる。
【0009】
本発明の車両は、少なくとも2以上の複数の車輪と、対象物を搭載する搭載部と、を備えた車両であって、当該車両および前記対象物に作用する力のベクトル方向と路面とが交差する点である合成圧力中心を算出する算出手段と、当該車両の姿勢および運動状態の少なくとも一方を変更する複数の車両状態変更手段と、前記複数の車輪が路面と接する複数の接地点間に前記合成圧力中心が位置するように前記車両状態変更手段を制御する制御手段と、を備え、前記車両状態変更手段は、前記搭載部の位置の状態を変更する搭載部状態変更手段を備え、前記制御手段は、前搭載部状態変更手段にて前記搭載部の高さ位置を高くするように前記搭載部の位置の状態を変更することによって、前記合成圧力中心が前記複数の接地点間から外れる方向に向かう非安定制御を実施するとともに、前記搭載部状態変更手段とは異なる他の車両状態変更手段に対し、前記合成圧力中心が前記複数の接地点間に向かう安定制御を実施することで、前記複数の接地点間に前記合成圧力中心を位置させることを特徴とする。
【0010】
このような本発明によれば、車両状態変更手段が搭載部状態変更手段を備え、この搭載部状態変更手段が搭載部の位置を変更することで、搭載部に搭載した対象物の重量を利用して合成圧力中心の位置を制御することができ、車両の安定性をさらに高めることができる。また、搭載部の位置を変更することで、対象物に対して慣性力や遠心力が作用しにくい位置に搭載部を移動させて、対象物の安定性を向上させることができる。また、対象物が人(ドライバー)の場合に搭載部の位置を高くすれば、視野を拡げて運転しやすくすることができる。
そして、複数の車両状態変更手段のうち、少なくとも一つを用いて非安定制御を実施し、他の車両状態変更手段を用いて安定制御を実施し、これらの非安定制御および安定制御の両方を同時に実施した結果として、複数の接地点間に合成圧力中心を位置させることで、車両の安定性を維持しつつ、車両の安定性に反する他の走行状態や走行形態を同時に実現することができる。
【0011】
本発明では、前記
搭載部状態変更手段は、前記搭載部
の姿勢
の状態を変更す
ることが好ましい。
【0012】
このような構成によれば、車両状態変更手段が搭載部状態変更手段を備え、この搭載部状態変更手段が搭載部
の姿勢を変更することで、搭載部に搭載した対象物の重量を利用して合成圧力中心の位置を制御することができ、車両の安定性をさらに高めることができる。また、搭載部
の姿勢を変更することで、対象物に対して慣性力や遠心力が作用しにくい位置に搭載部を移動させて、対象物の安定性を向上させることができる
。
【0013】
この際、本発明では、前記制御手段は、当該車両の旋回走行時において、前記搭載部状態変更手段に対し、旋回軌跡の回転中心に向かって前記搭載部を近づける制御を実施するとともに、前記搭載部状態変更手段以外の前記車両状態変更手段に対し、前記合成圧力中心が前記複数の接地点間に向かう安定制御を実施することで、前記複数の接地点間に前記合成圧力中心を位置させることが好ましい。
【0014】
このような構成によれば、車両の旋回走行時において、搭載部状態変更手段が旋回軌跡の回転中心に向かって搭載部を近づけることで、搭載部に搭載した対象物に作用する遠心力を小さくすることができ、対象物の安定性を向上させることができる。ここで、対象物が人(ドライバー)の場合には、作用する遠心力が小さくなることで、乗り心地が良くなり旋回時の快適性を向上させることができる。このように搭載部の位置を変更すると同時に、搭載部状態変更手段以外の車両状態変更手段を用いて安定制御を実施することで、複数の接地点間に合成圧力中心を位置させて車両の安定性を維持することができる。
【0017】
本発明では、前記算出手段は、当該車両の重量および重心位置と、前記対象物の重量および重心位置とを合成し、この合成の重量および重心位置に基づいて前記合成圧力中心を算出することを特徴とすることが好ましい。
【0018】
このような構成によれば、算出手段が合成の重量および重心位置を算出し、この合成の重量および重心位置に基づいて合成圧力中心を算出することで、合成圧力中心の算出精度を高めることができる。すなわち、車両の重量や重心位置は既知の値であり、対象物は都度変化する可能性があることから、センサー等を用いて車両とは別に対象物の重量や重心位置を検出し、この検出値に基づいて合成圧力中心を算出すれば、対象物が変化したとしても正確に合成圧力中心を算出することができ、これにより合成圧力中心の算出精度を高めることができる。
【0019】
本発明では、前記算出手段は、前記複数の車輪の接地圧に基づいて前記合成圧力中心を算出することが好ましい。
【0020】
このような構成によれば、複数の車輪の接地圧に基づいて合成圧力中心を算出することで、車両と対象物とを合わせた重量や重心位置、車両の運動状態に応じた合成圧力中心を簡単に算出することができる。すなわち、車輪の接地圧を検出するセンサー等を用いることで、車両と対象物とを合わせた全体に作用する力が算出でき、この力に基づくことで、少ないパラメータから合成圧力中心を算出することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態に係る車両の側面図であり、
図2は、車両の正面図である。
本実施形態の車両1は、
図1、2に示すように、左右一対(2個)の前輪2と、1個の後輪3と、を有した三輪自動車であって、これらの前輪2および後輪3の上方には、対象物を搭載するための搭載部4が設けられている。なお、以下では、車両1の前後方向をX方向またはX軸とし、左右方向をY方向またはY軸とし、上下方向をZ方向またはZ軸として説明することがある。この際、車両1の前方を+X方向とし、車両1の上方を+Z方向とする。また、
図2では、図面を簡略化するために後輪3の図示を省略している。以降の車両の正面図においても同様である。
【0023】
車両1は、図示しないシャーシやボディと、推進機能としてのエンジンまたはモータと、制動機能としてのブレーキ装置と、旋回機能としてのステアリング装置と、をさらに備え、その他、燃料タンクやバッテリー、各種補器類などが設けられている。また、車両1には、当該車両1の各部の動作を制御するとともに、各種の演算処理を実施する制御装置(制御手段であるコンピュータ)が搭載されている。推進機能は、例えば一対の前輪2を回転駆動することで車両1を前進または後進させる。制動機能は、前輪2および後輪3に回転抵抗を付与することで車両1を減速、停止させる。旋回機能は、例えば一対の前輪2を左右に回動させることで車両1の進行方向を転換させる。このような推進機能、制動機能、旋回機能は、搭載部4に搭乗した搭乗者(対象物)の操作によって動作するものでもよいし、制御装置の制御によって動作するものでもよい。
【0024】
搭載部4は、一対の前輪2に対して一対の前フレーム5によって連結されるとともに、後輪3に対して後フレーム6によって連結されている。搭載部4、前フレーム5、および後フレーム6は、連結部7を介して互いに連結されている。この連結部7は、前フレーム5および後フレーム6をX軸、Y軸回りに互いに回転可能に連結している。さらに、連結部7は、搭載部4をX軸、Y軸回りに互いに回転可能に連結している。
前フレーム5および前輪2は、前輪軸部8を介して互いに連結されている。前輪軸部8は、前輪2を回転自在に支持するとともに、前フレーム5および前輪2をX軸回りに互いに回転可能に連結している。後フレーム6および後輪3は、後輪軸部9を介して互いに連結されている。後輪軸部9は、後輪3を回転自在に支持している。
【0025】
前フレーム5は、前輪軸部8に接続されるシリンダー51と、連結部7に接続されるピストン軸52と、を有して構成され、シリンダー51に対してピストン軸52が進退移動することで、伸縮可能に構成されている。制御装置は、図示しない油圧ポンプ等によってピストン軸52を進退駆動することで、前フレーム5を伸縮させる。
連結部7は、搭載部4、前フレーム5、および後フレーム6をそれぞれ回動させる図示しないモータを有して構成されている。制御装置は、このモータを駆動することで、搭載部4、前フレーム5、および後フレーム6を回動させる。
【0026】
このような車両1は、例えば、
図3に示すように、前フレーム5を伸張させるとともに、連結部7をY軸回りに駆動して前フレーム5と後フレーム6とを近づけることで、搭載部4の高さ位置を高くするとともに、前輪2と後輪3とを接近させるように変形することができる。また、
図4に示すように、前フレーム5を収縮させるとともに、連結部7をY軸回りに駆動して前フレーム5と後フレーム6とを遠ざけることで、搭載部4の高さ位置を低くするとともに、前輪2と後輪3とを離隔させるように変形することもできる。
【0027】
また、例えば、連結部7を駆動して前フレーム5および後フレーム6をY軸回りに開閉させることで、前輪2と後輪3とを近接離隔させるように変形することもできる。
なお、前フレーム5の伸縮と前フレーム5および後フレーム6の開閉とを組み合わせることで、搭載部4の高さ位置を変更することなく、前輪2と後輪3とを近接離隔させるように変形することもできる。
【0028】
また、車両1は、
図5に示すように、連結部7を駆動して搭載部4をY軸回りに回動させて傾斜させるように変形することができる。具体的には、搭載部4を前輪2側に向かうにしたがって下降するように傾斜させることができる(
図5矢印参照)。また、
図5の状態とは逆に、搭載部4を前輪2側に向かうにしたがって上昇するように傾斜させることもできる。
なお、車両1は、連結部7を駆動して搭載部4をX軸回りに回動させて傾斜させるように変形することができる(図示略)。
【0029】
また、車両1は、
図6に示すように、一対の前フレーム5の一方を伸張させるとともに他方を収縮させることで、搭載部4をY方向に移動させるように変形することができる。なお、車両1は、このように変形する場合において、連結部7を駆動して搭載部4をX軸回りに回動させて傾斜させないように変形することができる。
【0030】
以上のように、前フレーム5および連結部7を駆動することによって、前輪2および後輪3の間隔が変更可能に構成されており、これらの前フレーム5および連結部7によって車輪間隔変更手段が構成されている。また、前フレーム5および連結部7を駆動することによって、搭載部4の位置や姿勢が変更可能に構成されており、これらの前フレーム5および連結部7によって搭載部状態変更手段が構成されている。また、これらの車輪間隔変更手段および搭載部状態変更手段によって、車両1の姿勢が変更され、推進機能、制動機能、および旋回機能によって、車両1の運動状態が変更されることから、車輪間隔変更手段、搭載部状態変更手段、推進機能、制動機能、および旋回機能によって、本発明の車両状態変更手段が構成されている。
【0031】
なお、本実施形態では、車輪間隔変更手段は、前輪2および後輪3の間隔を変更可能としているが、一対の前輪2の間隔を変更可能としてもよい。
また、本実施形態では、搭載部状態変更手段は、一対の前フレーム5の一方を伸張させるとともに他方を収縮させることで、搭載部4をY方向に移動させているが、搭載部4を連結部7に対してY方向にスライド可能とすることで、搭載部4をY方向に移動させてもよい。
【0032】
また、車両1には、
図7〜9に示すように、各部に各種のセンサー10が設けられている。さらに、車両1には、
図7〜9に示すセンサー10の他に、速度計(X方向)や加速時計(X,Y,Z方向)、斜度計(X,Y方向)などが設けられている。
図7に示すセンサー10は、例えば6軸力センサーであり、連結部7に設けられている。このセンサー10は、搭載部4に搭載された対象物の質量、対象物の重心位置、対象物による鉛直方向の力(慣性力や重力)、対象物による水平方向の力(慣性力)などを検出する。
【0033】
図8に示すセンサー10は、例えば1軸力センサーであり、前輪2および後輪3に設けられている。これらのセンサー10は、前輪2および後輪3の各々に作用する路面からの反力(鉛直力)を検出する。
図9に示すセンサー10は、例えば歪ゲージなどの1軸力センサーであり、搭載部4の前後2箇所に設けられている。これらのセンサー10は、対象物から搭載部4に作用する力(鉛直力)を検出する。
以上のような各部のセンサー10によって検知した検知結果は、電気信号として制御装置に出力され、制御装置によって解析、演算処理が実行される。
【0034】
次に、車両1における合成圧力中心ZMPを算出する方法について説明する。この合成圧力中心ZMPとは、
図10に示すように、車両1および対象物を合わせた重心Gに作用する力(合力F)のベクトル方向と路面とが交差する点、すなわち合力Fによるモーメントが発生しない点(Zero Moment Point)であり、制御装置(算出手段)による演算によって算出される。なお、
図10では、車両1の前後方向(X方向)に直交するY−Z平面の力を考慮する。ここで、重心Gの位置は、
図10に示すように、座標(y,z)で表され、姿勢に応じた車両1の重心と、搭載部4に搭載された対象物の質量および重心と、を合成したものとして算出される。重心Gに作用する力としては、遠心力f1、水平慣性力fy、鉛直慣性力fz、重力f2を考慮するものとし、それぞれ次の式(1)〜(4)で表される。
【0039】
以上の各式(1)〜(4)において、mは、車両1および対象物の合計質量であり、rは、旋回中の車両1の回転半径rであり、この回転半径rは、回転中心Cから重心Gまでの距離(c−y)で置換される。また、遠心力f1は、X方向の速度の2乗に比例し、水平慣性力fyは、Y方向の加速度に比例し、鉛直慣性力fzは、Z方向の加速度に比例し、重力f2は、重力加速度gに比例する。そして、合力Fは、Y方向の水平力であるFy(=f1+fy)と、Z方向の鉛直力であるFz(=fz+f2)と、の合力である。以上の各力に基づいて、合成圧力中心ZMPは、次式(5)によって算出され、車両1の安定条件としては、合成圧力中心ZMPが車輪幅wの範囲内に入っていることとして、次式(5)のように定義される。ここで、車輪幅wとしては、左右の前輪2の各々と路面との接地点P1,P1間の距離である。
【0041】
なお、車両1が旋回中でない場合には、合成圧力中心ZMP、および車両1の安定条件は、次式(6)のように定義される。
【0043】
以上のように車両1の重心Gに作用する力は、
図7または
図9に示す各センサー10、および加速時計や速度計によって検出された検出値に基づいて算出され、これらの検出値を用いて式(1)〜(4)の演算を行うことで算出され、これに基づき式(5)または式(6)の演算を行うことで合成圧力中心ZMPが算出される。
したがって、本実施形態では、制御装置は、車両1の重量および重心位置と、対象物の重量および重心位置とを合成し、この合成の重量および重心位置に基づいて合成圧力中心ZMPを算出する。
【0044】
一方、
図11に示すように、
図8のセンサー10によって、前輪2および後輪3の各々に作用する路面からの反力(鉛直力)を検出すれば、その検出値に基づいて合成圧力中心ZMPは、次式(7)によって算出することができる。換言すれば、本実施形態では、制御装置は、複数の車輪2,3の接地圧に基づいて合成圧力中心ZMPを算出してもよい。式(7)において、frは、右の前輪2に作用する鉛直力であり、flは、左の前輪2に作用する鉛直力である。なお、式(7)では、説明を簡略にするために、後輪3に作用する鉛直力は無視するものとする。
【0046】
なお、式(5),(6),(7)では、Y−Z平面における合成圧力中心ZMPの算出方法と、その安定条件を定義したが、これと同様に、X−Z平面における合成圧力中心ZMPの算出方法と、その安定条件を定義することができる。すなわち、
図12に示すように、重心Gに作用するX方向の水平力Fxと、Z方向の鉛直力Fzと、の合力Fのベクトル方向と路面とが交差する点として合成圧力中心ZMPが算出され、前後方向の車両1の安定条件としては、合成圧力中心ZMPが前後の車輪幅wの範囲内に入っていることとして定義される。ここで、車輪幅wとしては、前輪2および後輪3と路面との接地点P1,P2間の距離である。
【0047】
また、車両1のX−Y平面における安定条件としては、
図13に示すように、左右方向の合成圧力中心ZMPと前後方向の合成圧力中心ZMPを組み合わせた合成圧力中心ZMPが前輪2および後輪3で囲まれる範囲A内に入っているものとして定義される。この範囲Aは、左右の前輪2の接地点P1と後輪3の接地点P2とを結んだ三角形で表される。このような範囲Aの内側に合成圧力中心ZMPが位置していれば、左右の前輪2および後輪3のいずれの車輪も浮き上がることがなく、車両1は安定して走行可能な状態であると判断される。すなわち、制御装置は、合成圧力中心ZMPを算出するとともに、算出した合成圧力中心ZMPが範囲Aの内側に位置するように、車両状態変更手段としての前フレーム5、連結部7、推進機能、制動機能、および旋回機能のうち適宜に選択した少なくとも1つを駆動する。
【0048】
以下、制御装置による車両状態変更手段の制御方法を例示する。
先ず、合成圧力中心ZMPが範囲Aの内側であり、範囲Aの中心(X軸およびY軸の原点)方向に向かうようにする車両1の安定制御について説明する。
【0049】
発進時や前進加速時の制御としては、推進機能を駆動して車速を増加させることとなるが、このような+X方向の加速度に対しては、車両1および対象物に−X方向の慣性力が作用することになる。その場合、重心Gに対して−X方向の水平力Fxが作用し、範囲Aの後方寄りに移動する合成圧力中心ZMPが算出される。このような合成圧力中心ZMPを算出したら、制御装置は、合成圧力中心ZMPが範囲Aから外れないように、重心Gの高さ位置を下げるか、範囲Aを広くするか、重心Gを前方に移動させるように車両状態変更手段を制御する。ここで、合成圧力中心ZMPは、重心Gの高さ位置を下げると移動しにくくなるので、その結果として範囲Aから外れにくくなる。
【0050】
具体的には、
図4に示すように前フレーム5を収縮させて重心Gを下げるか、前輪2と後輪3との間隔を拡げて範囲Aを広くするか、
図5に示すように搭載部4を前輪2側に向かうにしたがって下降するように傾斜させて対象物を前傾させることで対象物の重心を前方に移動させるか、さらには、これらの各動作を組み合わせるようにして各部を制御する。
なお、制御装置は、合成圧力中心ZMPが範囲Aから外れないように、推進機能、制動機能、および旋回機能を制御してもよい。
【0051】
減速時や停車時の制御としては、推進機能を抑制しつつ制動機能を駆動して車速を減少させることとなるが、このような−X方向の加速度に対しては、車両1および対象物に+X方向の慣性力が作用することになる。その場合、重心Gに対して+X方向の水平力Fxが作用し、範囲Aの前方寄りに移動する合成圧力中心ZMPが算出される。このような合成圧力中心ZMPを算出したら、制御装置は、合成圧力中心ZMPが範囲Aから外れないように、重心Gの高さ位置を下げるか、範囲Aを広くするか、重心Gを後方に移動させるように車両状態変更手段を制御する。
【0052】
具体的には、
図4に示すように前フレーム5を収縮させて重心Gを下げるか、前輪2と後輪3との間隔を拡げて範囲Aを広くするか、搭載部4を前輪2側に向かうにしたがって上昇するように傾斜させて対象物を後傾させることで対象物の重心を後方に移動させるか、さらには、これらの各動作を組み合わせるようにして各部を制御する。
なお、制御装置は、合成圧力中心ZMPが範囲Aから外れないように、推進機能、制動機能、および旋回機能を制御してもよい。
【0053】
また、坂道を走行する際の制御としては、上り坂では重力が−X方向に作用することから、発進時や前進加速時と同様に、範囲Aの後方寄りに移動する合成圧力中心ZMPが算出されるので、制御装置は、合成圧力中心ZMPが範囲Aから外れないように、重心Gの高さ位置を下げるか、範囲Aを広くするか、重心Gを前方に移動させるように車両状態変更手段を制御する。一方、下り坂では重力が+X方向に作用することから、減速時や停車時と同様に、範囲Aの前方寄りに移動する合成圧力中心ZMPが算出されるので、制御装置は、合成圧力中心ZMPが範囲Aから外れないように、重心Gの高さ位置を下げるか、範囲Aを広くするか、重心Gを後方に移動させるように車両状態変更手段を制御する。
【0054】
旋回時の制御としては、旋回機能を駆動して車両1の進行方向を変化させることとなるが、この際、車両1および対象物にY方向の遠心力が作用することになる。その場合、重心Gに対して旋回方向外側に水平力Fyが作用し、範囲Aの側方寄りに移動する合成圧力中心ZMPが算出される。このような合成圧力中心ZMPを算出したら、制御装置は、合成圧力中心ZMPが範囲Aから外れないように、重心Gの高さ位置を下げるか、重心Gを旋回方向内側に移動させるように車両状態変更手段を制御する。
【0055】
具体的には、
図4に示すように前フレーム5を収縮させて重心Gを下げるか、
図6に示すように内側の前フレーム5を収縮させて重心Gを内側に寄せるか、さらには、これらの各動作を組み合わせるようにして各部を制御する。
なお、制御装置は、合成圧力中心ZMPが範囲Aから外れないように、推進機能、制動機能、および旋回機能を制御してもよい。また、一対の前輪2の間隔を変更可能とするように車輪間隔変更手段を構成している場合には、制御装置は、一対の前輪2の間隔を拡げて範囲Aを広くすることで合成圧力中心ZMPが範囲Aから外れないようにしてもよい。
【0056】
また、路面の凹凸に前輪2の一方が乗り上げて車両1が前後方向や左右方向に傾いた場合の制御としては、車両1および対象物の慣性力が前方かつ一方側に作用するとともに、重力が後方かつ他方側に作用することから、これらの慣性力や重力の大きさに応じて水平力Fx,Fyの方向が変化する。この場合でも、制御装置は、旋回時と同様に、合成圧力中心ZMPが範囲Aから外れないように、重心Gの高さ位置を下げるか、重心Gを水平力Fx,Fyと逆方向に移動させるように車両状態変更手段を制御する。
【0057】
また、搭載部4上で対象物が移動した場合には、重心Gの位置が変化することから、合成圧力中心ZMPが範囲Aから外れる方向に移動することがあるが、この場合でも、制御装置は、合成圧力中心ZMPが範囲Aから外れないように、重心Gの高さ位置を下げるか、重心Gを位置の変化と逆方向に移動させるように車両状態変更手段を制御する。
【0058】
以上に例示した制御は、車両1の走行安定性を重視した安定制御であったが、車両1の制御方法としては、走行条件や、選択した走行モードに応じて以下のような制御方法を採用してもよい。
すなわち、安定制御では、前フレーム5、連結部7、推進機能、制動機能、および旋回機能などの複数の車両状態変更手段のうち一または複数を選択し、選択した車両状態変更手段に対し、制御装置は、合成圧力中心ZMPが範囲Aの中心(X軸およびY軸の原点)方向に向かうように制御するものである。しかし、複数の車両状態変更手段のうち少なくとも一つに対し、合成圧力中心ZMPが範囲Aから外れる方向に向かう非安定制御を実施し、他の車両状態変更手段に対し、合成圧力中心ZMPが範囲Aの内側に向かう安定制御を実施することで、その結果として合成圧力中心ZMPを範囲A内に位置させるようにしてもよい。そのような非安定制御と安定制御を同時に実施する制御方法について以下に説明する。
【0059】
走行条件として、狭い道や混雑した場所を走行する際に、小回りの利く走行モードを選択した場合、制御装置は、車輪間隔変更手段にて車両1を変形させることで、前輪2と後輪3とを接近させる。このように前輪2と後輪3とを接近させると、車輪の接地点P1,P2間の距離が小さくなることから範囲Aが狭くなり、合成圧力中心ZMPが範囲Aから外れやすくなる。すなわち、車両1の走行安定性が低下するような非安定制御となる。この場合、制御装置は、車輪間隔変更手段とは異なる他の車両状態変更手段に対し、合成圧力中心ZMPが範囲Aの内側に向かう安定制御を実施することで、その結果として合成圧力中心ZMPを範囲A内に位置させる。
【0060】
また、走行条件として、見通しの悪い道を走行する際に、視認性の良い走行モードを選択した場合、制御装置は、搭載部状態変更手段にて車両1を変形させることで、搭載部4の高さ位置を高くする。このように搭載部4の高さ位置を高くすると、合成圧力中心ZMPが移動しやすくなり、範囲Aから外れやすくなる。すなわち、車両1の走行安定性が低下するような非安定制御となる。この場合、制御装置は、搭載部状態変更手段とは異なる他の車両状態変更手段に対し、合成圧力中心ZMPが範囲Aの内側に向かう安定制御を実施することで、その結果として合成圧力中心ZMPを範囲A内に位置させる。
【0061】
また、旋回中において、乗り心地重視の走行モードを選択した場合、制御装置は、搭載部状態変更手段にて車両1を変形させることで、
図14に示すように、搭載部4が回転中心Cに近づくように移動させる。
図14において、車両1は図の上方に向かって左側に曲がる旋回軌跡Rに沿って旋回中であり、回転中心Cは車両1の左方にあり、車両1は旋回軌跡Rの接線方向である進行方向X'に向かって進んでいる。このとき、搭載部4の位置をX軸上の初期位置4aから回転中心C側の移動位置4bに移動させるように制御することで、対象物である搭乗者は、旋回軌跡Rよりも小さな旋回半径で旋回することになり、旋回により受ける遠心力が小さくなって乗り心地が良くなる。
一方、搭載部4の位置を大きく移動させると、対象物の重量によって重心Gの位置も大きく移動することから、合成圧力中心ZMPの変動量が大きくなり、合成圧力中心ZMPが範囲Aから外れやすくなる。すなわち、車両1の走行安定性が低下するような非安定制御となる。この場合、制御装置は、搭載部状態変更手段とは異なる他の車両状態変更手段に対し、合成圧力中心ZMPが範囲Aの内側に向かう安定制御を実施することで、その結果として合成圧力中心ZMPを範囲A内に位置させる。
【0062】
このような本実施形態によれば、以下の作用・効果を奏することができる。
(1)制御装置が合成圧力中心ZMPを算出するとともに、この合成圧力中心ZMPが範囲A内に位置するように車両状態変更手段を制御することで、車両の安定性を向上させることができる。
(2)合成圧力中心ZMPの算出にあたり、対象物の質量や重心を加味することで、合成圧力中心ZMPを精度よく算出することができ、車両1の安定性向上を図ることができる。
【0063】
(3)前フレーム5および連結部7を駆動して前輪2と後輪3とを近接離隔させるような車輪間隔変更手段を備えることで、合成圧力中心ZMPの位置に応じた走行形態を選択することができ、安定性を維持しながら走行性能を高めることができるとともに、旋回性能を高めて小回りが利く走行形態を選択することができる。
(4)前フレーム5および連結部7を駆動して搭載部4の状態を変更する搭載部状態変更手段を備えることで、搭載部4に搭載した対象物の重量を利用して合成圧力中心ZMPの位置を制御することができ、車両の安定性をさらに高めることができる。
【0064】
(5)搭載部状態変更手段にて搭載部4の位置や姿勢を変更することで、対象物に対して慣性力や遠心力が作用しにくい位置に搭載部4を移動させて、対象物の安定性や乗り心地を向上させることができる。また、搭載部状態変更手段にて搭載部4の高さを上げることで搭乗者の視野を拡げて運転しやすくすることができる。
(6)複数の車両状態変更手段のいずれかに対して非安定制御を実施した場合であっても、他の車両状態変更手段を用いて安定制御を実施し、これらの非安定制御および安定制御の両方を同時に実施した結果として、合成圧力中心ZMPを範囲A内に位置させることで、車両1の安定性を維持しつつ、車両1の安定性に反する他の走行状態や走行形態を同時に実現することができる。
【0065】
(7)以上のような非安定制御を実施することで、走行条件に応じて、小回りの利く走行モードを選択したり、視認性の良い走行モードを選択したり、乗り心地が良くなる走行モードを選択したり等、走行安定性に加えて利便性や快適性を高めることができる。
【0066】
〔第2実施形態〕
図15は、本発明の第2実施形態に係る車両の側面図である。
本実施形態の車両1Aは、第1実施形態と同様に、左右一対(2個)の前輪2と、1個の後輪3と、対象物を搭載するための搭載部4と、前フレーム5と、後フレーム6と、を備える。本実施形態では、
図15に示すように、後フレーム6が後輪軸部9に接続されるシリンダー61と、連結部7に接続されるピストン軸62と、を有し、シリンダー61に対してピストン軸62が進退移動することで、伸縮可能に構成されている点が第1実施形態と相違する。制御装置は、図示しない油圧ポンプ等によってピストン軸62を進退駆動することで、後フレーム6を伸縮させる。
【0067】
本実施形態の車両1Aは、例えば、
図16に示すように、前フレーム5および後フレーム6の両方を伸張させるとともに、連結部7をY軸回りに駆動して前フレーム5と後フレーム6とを遠ざけることで、搭載部4の高さ位置を維持したまま、前輪2と後輪3とを離隔させるように変形することができる。また、
図16の状態とは逆に、前フレーム5および後フレーム6の両方を収縮させるとともに、連結部7をY軸回りに駆動して前フレーム5と後フレーム6とを近づけることで、搭載部4の高さ位置を維持したまま、前輪2と後輪3とを接近させるように変形することもできる。
【0068】
また、車両1Aは、
図17に示すように、前フレーム5を収縮させつつ後フレーム6を伸張させることで、前輪2と後輪3との距離を維持しつつ、搭載部4の高さ位置を下げるとともに前方に移動させるように変形することができる。また、
図17の状態とは逆に、前フレーム5を伸張させつつ後フレーム6を収縮させることで、前輪2と後輪3との距離を維持しつつ、搭載部4の高さ位置を上げるとともに後方に移動させるように変形することができる。
【0069】
また、車両1Aは、
図18に示すように、前フレーム5および後フレーム6の両方を伸張させるとともに、連結部7をY軸回りに駆動して前フレーム5と後フレーム6とを近づけることで、前輪2と後輪3との間隔を維持したまま、搭載部4の高さ位置を上げるように変形することができる。また、
図18の状態とは逆に、前フレーム5および後フレーム6の両方を収縮させるとともに、連結部7をY軸回りに駆動して前フレーム5と後フレーム6とを遠ざけることで、前輪2と後輪3との間隔を維持したまま、搭載部4の高さ位置を下げるように変形することもできる。
【0070】
以上のように、前フレーム5、後フレーム6、および連結部7を駆動することによって、前輪2および後輪3の間隔が変更可能に構成されており、これらの前フレーム5、後フレーム6、および連結部7によって車輪間隔変更手段が構成されている。また、前フレーム5、後フレーム6、および連結部7を駆動することによって、搭載部4の位置や姿勢が変更可能に構成されており、これらの前フレーム5、後フレーム6、および連結部7によって搭載部状態変更手段が構成されている。また、これらの車輪間隔変更手段および搭載部状態変更手段によって、車両1Aの姿勢が変更され、推進機能、制動機能、および旋回機能によって、車両1Aの運動状態が変更されることから、車輪間隔変更手段、搭載部状態変更手段、推進機能、制動機能、および旋回機能によって、本発明の車両状態変更手段が構成されている。
【0071】
従って、本実施形態によれば、前記第1実施形態における前記(1)〜(7)と同様の作用効果を奏することができるとともに、以下の作用・効果を奏することができる。
(8)前フレーム5および後フレーム6の両方が伸縮可能に構成されているので、前輪2と後輪3との間隔を大きく変更することができるとともに、搭載部4の高さ位置を大きく変更することができる。従って、車両1Aをよりダイナミックに変形させることができるので、より厳しい走行状態に対しても走行安定性を高めることができる。
【0072】
〔実施形態の変形〕
なお、本発明は、前記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記実施形態では、車両1,1Aが三輪車であったが、本発明の車両は三輪車に限らず、四輪以上の車輪を有したものでもよいし、二輪車であってもよい。車両が二輪車である場合には、合成圧力中心ZMPとしては、前後方向の接地点間に位置するように制御され、左右方向に関しては、搭乗者がバランスを取るものとされていてもよい。あるいは、車両が二輪車であっても、その前後輪の車輪幅と前後輪の間隔の範囲内に合成圧力中心ZMPが位置するように制御すれば、左右方向の安定性を得ることができる。
【0073】
前記実施形態では、車両がエンジンやモータ等の推進機能を有した自動車を例示したが、推進機能としてはエンジンやモータに限らず、任意のものが利用可能である。また、本発明の車両は、推進機能を有さず、搭乗者の運動によって走行するもの、例えば、自転車や三輪車、車いす等の乗り物であってもよい。さらに、本発明の車両は、推進機能を有さず、外部からの力によって移動するもの、例えば、荷物用台車や可動ラック、トレーラー用荷車、走行遊具等であってもよい。
【0074】
また、前記実施形態では、前フレーム5、後フレーム6、および連結部7によって車輪間隔変更手段および搭載部状態変更手段が構成されていたが、車輪間隔変更手段および搭載部状態変更手段は、それぞれ別々の駆動手段を有して構成されていてもよい。例えば、前記実施形態では、伸縮可能に構成された前フレーム5や後フレーム6によって車輪間隔変更手段および搭載部状態変更手段が構成されていたが、車輪間隔変更手段としては、前記実施形態のものに限らず、シャーシに対して車輪を前後左右に移動可能に支持する支持部と、この支持部に支持された車輪を移動させる駆動部と、を有したものであってもよい。
【0075】
また、前記実施形態では、前フレーム5、後フレーム6、および連結部7によって搭載部状態変更手段が構成されていたが、搭載部状態変更手段としては、前記実施形態のものに限らず、シャーシに対して搭載部を前後左右および上下に移動可能に支持する支持部と、この支持部に支持された搭載部を移動させる駆動部と、を有したものであってもよい。このように搭載部を任意の方向に移動または回動させるように搭載部状態変更手段が構成されていれば、対象物の重心位置を適宜に変更させることができ、走行安定性を高めることができる。