(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6599144
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】推進管
(51)【国際特許分類】
F16L 1/028 20060101AFI20191021BHJP
F16L 1/036 20060101ALI20191021BHJP
F16L 21/00 20060101ALI20191021BHJP
E21D 9/06 20060101ALI20191021BHJP
F16L 9/14 20060101ALI20191021BHJP
【FI】
F16L1/028 E
F16L1/036
F16L21/00 C
E21D9/06 311A
F16L9/14
【請求項の数】5
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-132513(P2015-132513)
(22)【出願日】2015年7月1日
(65)【公開番号】特開2017-15174(P2017-15174A)
(43)【公開日】2017年1月19日
【審査請求日】2018年6月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100112575
【弁理士】
【氏名又は名称】田川 孝由
(74)【代理人】
【識別番号】100167380
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 隆
(72)【発明者】
【氏名】森田 裕也
【審査官】
柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】
欧州特許出願公開第00611875(EP,A1)
【文献】
特開2000−192779(JP,A)
【文献】
米国特許第04808032(US,A)
【文献】
特開平10−148290(JP,A)
【文献】
特開2003−176687(JP,A)
【文献】
実開平01−093286(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 1/028
E21D 9/06
F16L 1/036
F16L 9/14
F16L 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内外径が一定な円筒状直部(1)と、その直部(1)の一端に設けられて内外径が前記直部(1)より大きい受口(2)と、同他端に設けられて前記直部(1)と内径が等しく前記受口(2)に嵌り得る外径の挿し口(3)とからなり、前記直部(1)の外周面から前記受口(2)の外周面の長さ方向途中に至るコンクリート層(4)を設けるとともに、その受口(2)の外周面に前記途中から受口(2)の先端に向かい途中で途切れる樹脂層(10)を設けて、前記直部(1)から受口(2)途中に至るコンクリート層(4)、前記樹脂層(10)及びその樹脂層(10)が途切れて先端までの受口先端部の各外周面の外径を一様とし、前記挿し口(3)を受口(2)に差し込んで接続しつつ前記コンクリート層(4)、樹脂層(10)及び受口(2)の先端部の各外周面を地盤に接触させて地中を推進させる、地盤地下に埋設する推進管。
【請求項2】
上記樹脂層を樹脂筒(10)の嵌め込みによって形成したことを特徴とする請求項1に記載の推進管。
【請求項3】
上記樹脂筒(10)をその周方向で分割し、その分割片を受口の外周面に宛がい固定したことを特徴とする請求項2に記載の推進管。
【請求項4】
上記樹脂筒(10)の内面と受口(2)の外面の間に接着材を介在したことを特徴とする請求項2又は3に記載の推進管。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一つに記載の推進管の製造方法であって、上記直部(1)と、その直部(1)の一端に設けられて内外径が前記直部(1)より大きい受口(2)と、同他端に設けられて前記直部(1)と内径が等しく前記受口(2)に嵌り得る外径の挿し口(3)と有するダクタイル鋳鉄管を製造した後、そのダクタイル鋳鉄管の受口(2)に上記樹脂層(10)を形成し、その後、直部(1)に上記コンクリート層(4)を形成することを特徴とする推進管の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、上水道、ガス、下水道、農業水道、工業水道等に用いる流体輸送用配管を地下に埋設するための非開削推進工法に使用する推進管に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の推進工法に使用するダクタイル鋳鉄製推進管として、
図2に示す、内外径が一定な直部1の両端に受口2及び挿し口3を形成し、直部1の外周面から受口2の外周面に至るコンクリート層4、4aを設けて、その直部1と受口2のコンクリート層4、4aの外周面に凹凸を無くした(外径を一様とした)ものがある。この種の推進管は、通常、呼び径:250mm〜2600mm等である。
【0003】
この
図2に示す推進管A’は、NS形継手構造となっており、ゴム輪5及びロックリング6を内装した受口2に、フランジ7、推進力伝達材8を介在して挿し口3を差し込んで接続しつつ推進して地下に埋設する。
この継手構造においては、地震等が生じて受口2に対し挿し口3の抜き差し(伸縮)が生じると、挿し口3の先端が受口2の内周面の奥壁に当接してそれ以上の差し込みを阻止するとともに、挿し口3の先端外周の突起9がロックリング6に当接してそれ以上の抜き出しを阻止する(特許文献1、段落0015〜同0016、
図1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3756876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この種の推進管を、地表を掘削することなく、地中を貫通する非開削工法に使用する際、コンクリート層4、4aによって、直部1と受口2の外周面に凹凸を無くしているため、その推進時の推進管A’とその外側の地盤との摩擦を極力少なくしている。
しかし、その摩擦が少なくなっても、推進時に推進管の外周面(コンクリート層4、4aの外周面)に加わる力は大きく、特に、受口2の外周のコンクリート層4aは薄厚のため、衝撃等により剥離して破損する恐れが高い。破損して欠け落ちれば、凹凸が生じて推進作用に支障がでる。
このため、従来では、
図3に示すように、金網aを埋設したりして、コンクリート層4aの強度を高めている。このとき、直部1外周面のコンクリート層4にも金網a等を埋設する。
この金網aの埋設(介在)及びその埋設状態でのコンクリート層4aの打設は、作業が繁雑となり、コストアップにもなる。
【0006】
この発明は、以上の実状の下、受口外周のコンクリート層4aを他の部材によって機能を損なうことなく安価に代替することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するため、この発明は、受口のコンクリート層を樹脂層に代えることとしたのである。
樹脂層は、コンクリート層に比べれば、容易に摩擦や衝撃に強いものとすることができる上に、型枠内への樹脂装填等によって容易に設けることができるため、コンクリート層4aの形成に比べれば、その形成作業も容易で安価である。
【0008】
この発明の構成としては、内外径が一定な円筒状直部と、その直部の一端に設けられて内外径が直部より大きい受口と、同他端に設けられて直部と内径が等しく受口に嵌り得る外径の挿し口とからなり、直部の外周面から受口の外周面
の長さ方向途中に至るコンクリート層を設け
るとともに、その受口の外周面に前記途中から受口の先端に向かい途中で途切れる樹脂層を設けて、直部
から受口
途中に至るコンクリート層、
樹脂層及びその樹脂層が途切れて先端までの受口先端部の
各外周面の外径を一様とし
、挿し口を受口に差し込んで接続しつつ
コンクリート層、樹脂層及び受口の先端部の各外周面を地盤に接触させて地中を推進させる、地盤地下に埋設する推進管としたのである。
その樹脂層の材料としては、施工時(推進時)、摩擦や衝撃等によって損壊や崩壊しない強度を有するものであれば、何れでも良く、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル等の種々の樹脂が考えられ、それらの樹脂において繊維強化プラスチック(FRP)等とすることもできる。
【0009】
この構成において、上記樹脂層は、受口に被せた型枠内に樹脂を装填することによって形成しても良いが、樹脂筒の嵌め込みによって形成することができる。樹脂筒は、成型品として大量生産することができて、より安価なものとなる。
樹脂筒は、その周方向で分割し、その分割片を受口の外周面に宛がって固定することができる。その固定手段には、分割片同士の嵌り合いや、受口外周面との間への接着材の介在等が考えられる。接着材としては種々のものが考えられるが、例えば、コンクリートを挙げることができる。接着材は分割しない樹脂筒においても
その樹脂筒と受口との間に介在することができる。接着
材の介在は、樹脂筒と受口の隙間をなくすため、隙間の存在による樹脂筒の破損を防止する作用も発揮する。
【0010】
上記の各構成の推進管の製造方法としては、まず、上記内外径が一定な円筒状直部と、その直部の一端に設けられて内外径が直部より大きい受口と、同他端に設けられて直部と内径が等しく受口に嵌り得る外径の挿し口とを有するダクタイル鋳鉄管を遠心鋳造法等によって製造し、つぎに、そのダクタイル鋳鉄管の受口に上記樹脂層を形成し、その後、直部にコンクリート層を形成する構成等を採用することができる。
コンクリート層の形成よりも、樹脂層の形成の方がその範囲も狭いことから容易であり、このため、樹脂層を先に形成することは作業性の面から有利である。
【発明の効果】
【0011】
この発明は、以上のように、受口外周面のコンクリート層を樹脂層に代えたので、安価な推進管とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】この発明に係る推進管の一実施形態の要部断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
この実施形態の推進管Aも、
図2に示すNS形継手構造のものと同様に、内外径が一定な円筒状直部1と、その直部1の一端に設けられて内外径が直部1より大きい受口2と、同他端に設けられて直部1と内径が等しく受口2に嵌り得る外径の挿し口3とからなるダクタイル鋳鉄管である。
このダクタイル鋳鉄管は、従来と同様に、遠心鋳造法等によって製造する。
【0014】
この発明の特徴は、
図1に示すように、直部1の外周面から受口2の外周面の
長さ方向途中までコンクリート層4を設けているが、その先の受口2の外周面
の前記途中から受口2の先端に向かい途中で途切れる樹脂筒10が嵌められている点である。この樹脂層(樹脂筒)10は、コンクリート層4を形成する前に形成する。すなわち、樹脂層10を形成後、従来と同様に、その樹脂層10を有するダクタイル鋳鉄管を型枠内に装填し、その型枠内にコンクリートを打設して直部1から受口2の一部の外周面にコンクリート層4を形成する。
【0015】
上記樹脂筒10の外径は、
図1の鎖線で示すように、直部1のコンクリート層4とほぼ同一の径とすることが好ましいが、推進に支障が無い限りにおいて、図示実線で示すように小径としたり、逆に、大径としたりすることができる。また、樹脂筒10の前記受口2の外周面の途中の始点(
図1において右端)は、直部1のコンクリート層4の厚みが薄くなって剥離等の支障がでない点を考慮して、図に示す、直部1から受口2に至る円弧状傾斜面を超えた位置等を実験などによって適宜に選択する。
【0016】
また、樹脂筒10は、全周に亘って切れ目のない筒状のものとしたり、周方向に分割したりしたものとすることができる。その分割数は任意である。
分割した場合、その各分割片は、筒状に突き合わせた際、その突き合わせ面に相互に嵌り合う凹凸の嵌合部を設けることができる。
【0017】
樹脂筒10の受口2の外周面への取付けは、切れ目のない筒状の場合は、挿し口3側から樹脂筒10を差し入れて受口2の外周面に嵌める。このとき、樹脂筒10の内径を受口2の外周面の外径より少し小さくして圧入することもできる。
分割片の場合は、各分割片を受口2の外周面に宛がって設けることとなる。
いずれの場合も、樹脂筒10の内面と受口2の外周面との間にはコンクリート等の接着材を介在して樹脂筒10の受口2への固着力を増すことが好ましい。
【0018】
この実施形態の推進管Aも、従来と同様に、ゴム輪5及びロックリング6を内装した受口2に、フランジ7、推進力伝達材8を介在して挿し口3を差し込んで接続しつつ推進して地下に埋設する。
この推進時、直部1の外周面と受口2の外周面(
直部1から受口2途中に至るコンクリート層4、樹脂層10及びその樹脂層10が途切れて先端までの受口2先端部の各外周面)がほぼ面一(外径が一様)となっているため、この推進管Aの外周面は全長に亘って凹凸は少なく、円滑な推進が行われる。
地震等が生じれば、同様に、挿し口3の先端が受口2の内周面の奥壁に当接してそれ以上の差し込みを阻止するとともに、挿し口3の先端外周の突起9がロックリング6に当接してそれ以上の抜き出しを阻止する。
【0019】
上記実施形態の推進管Aは、NS形継手構造のものであったが、JDPA G 1029で規定する、呼び径250mm〜2600mmの推進工法用ダクタイル鋳鉄管であって、その継手構造がT形、U形、UF形、US形であるものは勿論、推進管として使用し得る継手構造のものであれば、例えば、そのT形、U形、UF形、US形以外のPII形、S形等の各種の継手構造の推進管においても、この発明を採用し得ることは勿論である。
このように、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0020】
A、A’ 推進管
1 推進管の直部
2 同受口
3 同挿し口
4 直部外周面のコンクリート層
4a 受口外周面のコンクリート層
5 ゴム輪
6 ロックリング
7 フランジ
8 推進力伝達材
9 突起
10 樹脂筒(樹脂層)