【実施例】
【0024】
原子の結晶構造置換
上記のように、小型化アンテナシステムにおいて使用されるCo
2Zなどの誘電材料の共鳴周波数を増加させることが有利となり得る。特に、500MHz、700MHz、900MHz、または1GHzを超える周波数における動作は、最小限の/許容できる信号損失を有するとともに、該材料を用いてより多くの信号が使用可能となるため、より広い信号の使用可能範囲が得られる。これは特に、商業的にも軍事的にも使用される高マイクロ波周波数用途に有用となり得る。以下に開示される材料の実施形態は、少なくとも一部はCo
2Z結晶格子構造内の特定の原子の置換により、このように高い動作周波数を達成可能である。さらに、開示されるCo
2Z材料の実施形態は、かなり低い損失を有し得る。
【0025】
上記のように、Co
2Z材料は、Ba
3Me
2Fe
24O
42の一般式を有し得る。いくつかの実施形態では、六方晶フェライト材料の結晶構造においてCo
2Z材料のバリウム(Ba)または鉄(Fe)原子が他の原子に置換えられ得る(たとえば置換され得る)。有利には、Baおよび/またはFe原子の置換えは、Co
2Z材料の共鳴周波数全体を増加させることができ、材料がより高い周波数動作において使用可能となる。
【0026】
いくつかの実施形態では、Ba
2+原子の少なくとも一部がストロンチウム(Sr
2+)原子によって置換えられ得る。さらに、いくつかの実施形態では、Fe
3+原子がアルミニウム(Al
3+)原子に置換され得る。これらの種類の原子(たとえばBaおよびFe)の1つまたは両方が新しい原子(SrおよびAl)に置換され得て、この結果、Co
2Z材料の共鳴周波数が増加する。原子の置換は、初めの調合時に、所望の化学性質を有する所望の構造を形成するために、適量の各元素の酸化物を選択することによって生じ得る。
【0027】
このような原子の置換による共鳴周波数の増加は、数多くの理由から生じ得る。たとえば、置換は、材料の透磁率の全体的な減少を引起し得て、これに伴って共鳴周波数が増加する。さらに、置換により、より高い共鳴周波数のためにより優先的に配向された、改善された結晶構造が形成され得る。さらに、置換により、材料の強磁性共鳴が増加され得て、これにより、より高い共鳴周波数で材料が使用可能となる。しかし、他の理由によっても共鳴周波数の増加が得られると理解され得る。
【0028】
したがって、置換によりより高い共鳴周波数を有するCo
2Z材料は、Ba
3−xSr
xCo
2Fe
24−yAl
yO
41の化学式を有し得る。いくつかの実施形態では、0<x<1.5、0<y<0.9である。したがって、いくつかの実施形態では、Ba、Fe、またはこれらの両方が、結晶構造から置換され得る。
【0029】
図2A〜
図2Bは、上記に開示されたBaおよびFe原子をStまたはAl原子に置換える置換技術を用いたインピーダンススペクトルを示す。典型的には、インピーダンススペクトルは、インピーダンス分光法または電気化学インピーダンス分光法としても知られる誘電分光法を用いて行なわれる。インピーダンススペクトルは、媒体のさまざまな誘電特性をさまざまな周波数について示し得る。
【0030】
図2A〜
図2Bにおいて、インピーダンススペクトルは、ある周波数範囲にわたる透磁率(μ′)および損失率(μ″)の両方を示す。無線周波数用途は、該周波数範囲にわたって最小の動きを有することが有利となり得るが、これは、それらの特定の周波数において最小損失が存在することを示す。損失率が増加(たとえば、急上昇)し始めると、材料は、それらの周波数における使用中により多くの損失を被る可能性がある。このため、ある時点で、材料が高損失により使用不可となり得る。
【0031】
損失率を最小化するとともに、損失率の急上昇を、高周波数範囲に向かうにつれてできる限り調整することが有利となり得る。上記のように、損失率が急上昇すると、材料はその周波数範囲において有用性が低くなる。高周波数側での損失率の急上昇を操作することによって、300MHz〜300GHzのマイクロ波範囲などのより高い周波数において最小化された損失で材料が使用可能となる。
【0032】
一般的に、特定の使用周波数において材料の損失率が増加することは不利となり得るが、材料の用途によっては、一般的な損失許容度が存在し得る。したがって、図中に示される急上昇がある場合でも、損失許容度はまだ許容され得ることもある。たとえば、損失許容度は、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、または1.0未満であり得るが、特定の損失許容度は限定されない。したがって、損失が急上昇し始めた後であっても、材料はまだ有用であり得る。
【0033】
図2Aは、x=1.5、y=0.9のときの、上記材料のある実施形態のインピーダンススペクトルを示す。示されるように、この材料は、低い周波数で比較的低い損失率を維持することができる。さらに、損失率の急上昇の主な湾曲は、優に500MHz後までは生じない。材料が組込まれた装置の損失許容度によっては、この材料の実施形態は、約700MHz、約900MHz、約1GHz、または約700MHz、約900MHz、もしくは約1GHzを超える周波数範囲内で使用可能である。このため、開示される材料の実施形態は、より高い周波数範囲で使用可能であり、改善された無線周波数の使用が得られる。
【0034】
図2Bは、x=1.5、y=0.3のときの、上記材料のある実施形態のインピーダンススペクトルを示す。
図2Aと同様に、示されるように、この材料は、低周波数において比較的低い損失率を維持することができる。さらに、損失率の急上昇の主な湾曲は、優に500MHz後までは生じない。材料が組込まれた装置の損失許容度によっては、この材料の実施形態は、約700MHz、約900MHz、約1GHz、または約700MHz、約900MHz、もしくは約1GHzを超える周波数範囲内で使用可能である。このため、開示される材料の実施形態は、より高い周波数範囲で使用可能であり、改善された無線周波数の使用が得られる。
【0035】
図2Aと
図2Bとを比較して、損失率の曲線は、概ね同様の経路をたどっている。しかし、
図2Bの材料の実施形態は、より低い周波数範囲内でわずかにより低い全体的な損失率を有する。さらに、
図2B中の損失率の増加は、
図2Aに示されるよりも低い周波数で生じている。とはいえ、どちらの材料も高周波数動作のために非常に有利であり得る。
【0036】
BaのSrによる置換が有利となり得る一方で、いくつかの実施形態では、バリウムサイトの置換として、代わりにカリウムが使用可能であり、これにより、Co
2+を三価イオンに置換することが可能となる。いくつかの実施形態では、たとえば0〜0.5重量%の範囲の炭酸カリウムを置換に使用し得る。これにより、z相を形成可能であり得る組成物の数が大幅に倍増し得る。
【0037】
たとえば、
図3A〜
図3Bは、z相が組成物Ba
2.5K
0.5Co
(II)1.5Co
(III)0.5Fe
24O
41によって安定化され得ることを示す。
図3A〜
図3Bは、強度対X線回折を用いたデータを示しており、該データは、その後特定の材料の結晶構造を示し得る。その後、データ点がパターンの指標と対比され得て、ある構造内の原子の空間配置が開示される。したがって、特定の元素は存在しないかもしれないが、ホットスポット(たとえばピークが増加する地点)のパターンから、結晶構造が示され得る。
【0038】
図3A〜
図3BのX線回折パターンによって示されるように、開示される材料の実施形態は、安定化されたz相ヘキサフェライト構造を形成し得る。上記の
図3A〜
図3Bのデータ点を以下の表に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
いくつかの実施形態では、カリウムの量は、式:Ba
3−xK
xCo
2−xM
(III)xFe
24O
41に従って三価イオンの量と同量にされ得る。いくつかの実施形態では、M
(III)は、たとえば任意の三価イオンであり得る。これには、Sc、Mn、In、Cr、Ga、Co、Ni、Fe、Yb、またはランタニドイオンのいずれかが含まれ得て、0<x≦0.5である。いくつかの実施形態では、z型ヘキサフェライトは、上記の式を用いて合成され得る。たとえば、向上したz型六方晶フェライトは、M
(III)がSc、Co、Mn、Cr、In、およびYbであり、x=0.5であるときに合成され得る。
【0041】
開示される置換された誘電材料の実施形態は、他の誘電材料よりも数多くの利点を有し得る。たとえば、本発明のプロセスは、材料において原子を優先的に配向させ得ることにより、誘電性材料の全体的な透磁率を増加し、増強し得る。開示される材料の実施形態の別の有利な特性は、Baおよび/またはFe置換が、上述のアルカリドーピング/添加とともに行なわれ得ることである。しかし、いくつかの実施形態では、Baを二価イオンに置換し、Feを三価イオンに置換することによって、高共鳴周波数を維持しつつ、アルカリ添加が回避され得る。このため、材料の実施形態は、約700MHz、約900MHz、約1GHzまたは約700MHz、約900MHz、もしくは約1GHzを超える周波数範囲内で使用可能である。
【0042】
z型六方晶フェライト材料の製造方法
図4は、いくつかの実施形態に係るCo
2Z材料を形成する方法100を示す。
図4に示されるように、適量の前駆材料、すなわち、磁気材料を形成可能なバリウム、コバルト、鉄、1つ以上のアルカリ金属、および酸素を与え得る反応物質がステップ102でともに混合される。いくつかの実施形態では、酸素の少なくとも一部が、バリウム(Ba)、コバルト(Co)、鉄(Fe)、または1つ以上のアルカリ金属の酸素含有化合物の形態で提供されてもよい。たとえば、これらの元素は、炭酸塩もしくは酸化物の形態で、または当該技術分野で知られている他の酸素含有前駆体の形態で提供されてもよい。いくつかの実施形態では、1つ以上の前駆材料は、非酸素含有化合物または純粋な元素の形態で提供されてもよい。いくつかの実施形態では、酸素は、たとえばH
2O
2などの別個の化合物から、またはガス状酸素または空気から供給されてもよい。たとえば、いくつかの実施形態では、BaCO
3、Co
3O
4、およびFe
2O
3前駆体は、約0.06重量%〜約3.6重量%のK
2CO
3とともに、Co
2Zの形成に適切な比(たとえば、約22重量%BaCO
3、約6重量%Co
3O
4、および約72重量%Fe
2O
3)で混合される。これらの前駆化合物は、たとえばコーレスミキサ、ボールミル、または振動ミルを用いて水またはアルコール中で混合または配合されてもよい。これらの前駆体は、乾式で配合されてもよい。
【0043】
配合された混合物は、その後、必要に応じてステップ104で乾燥されてもよい。混合物は、たとえばパン乾燥(pan drying)またはスプレー乾燥を含む、数多くの態様のいずれかで乾燥されてもよい。その後、乾燥された混合物は、ステップ106において仮焼を促進させる温度および時間で加熱され得る。たとえば、ステップ106の加熱で使用される加熱システムの温度は、約1100℃〜1300℃または約1100℃〜1250℃の浸漬温度を達成するために、1時間あたり約20℃〜1時間あたり約200℃の速度で上昇してもよく、該浸漬温度は、約2時間〜約12時間維持され得る。加熱システムは、たとえば、オーブンまたは窯であり得る。混合物は、水分の損失、ならびに/または1つ以上の成分の還元または酸化、ならびに/または存在し得る炭酸塩および/もしくは有機化合物の分解を生じ得る。混合物の少なくとも一部は、ヘキサフェライト固溶体を形成し得る。
【0044】
温度上昇率、浸漬温度、および混合物が加熱される時間は、特定の用途の要件に依存して選択され得る。たとえば、加熱後の材料において小さな結晶粒が望まれる場合、より大きな結晶粒が望まれる用途に対して、より高い温度上昇率、および/またはより低い浸漬温度、および/またはより短い加熱時間が選択され得る。さらに、さまざまな量および/または形態の前駆材料が使用されると、加熱後の混合物に所望の特徴を付与するために、温度上昇率および浸漬温度および/または時間などのパラメータについてさまざまな要件が生じ得る。
【0045】
加熱後、混合物はヘキサフェライト固溶体の凝集粒子を形成し得るが、該混合物は、室温、またはさらなる処理を容易にし得る任意の他の温度に冷却され得る。加熱システムの冷却速度は、たとえば1時間あたり80℃であり得る。ステップ108では、凝集粒子が粉砕され得る。粉砕は、水、アルコール、ボールミル、振動ミル、または他のミリング装置で行なわれ得る。いくつかの実施形態では、粉砕は、得られた粉末材料の中央粒径が約1〜約4ミクロンとなるまで継続されるが、一部の用途では、たとえば直径約1〜約10ミクロンの他の粒径も許容され得る。いくつかの実施形態では、粒子を直径0.2〜0.9ミクロンの微粒子径まで粉砕するために、高エネルギーミリングが使用される。この粒子径は、たとえば沈降法粒度分布測定装置(sedigraph)またはレーザ散乱技術を用いて測定され得る。目標中央粒径は、後のステップにおいて焼結を容易にするために、粒子の十分な表面面積を与えるように選択され得る。より小さい中央直径を有する粒子は、より大きい粒子よりも反応性が高く、より容易に焼結され得る。いくつかの実施形態では、ステップ102ではなくこの時点で、またはステップ102に加えてこの時点で、1つ以上のアルカリ金属またはアルカリ金属前駆体または他のドーパント材料を添加してもよい。いくつかの実施形態では、アルカリ金属が使用されない。
【0046】
粉末材料は、必要に応じてステップ110で乾燥されてもよく、乾燥された粉末は、ステップ112において、たとえば1軸プレスまたはアイソスタチックプレスを用いて所望の形状にプレス成形され得る。材料をプレス成形するのに使用される圧力は、たとえば80,000N/m
2以下であってもよく、典型的には約20,000N/m
2〜約60,000N/m
2の範囲内である。より高いプレス圧力では、より低いプレス圧力よりも、さらなる加熱後により緻密な材料が得られ得る。
【0047】
ステップ114では、プレス成形された粉末材料が焼結されて、ドープドヘキサフェライトの固体塊が形成され得る。ドープドヘキサフェライトの固体塊は、ドープドヘキサフェライトから形成されるよう望まれる部品の形状を有する金型で焼結され得る。ドープドヘキサフェライトの焼結は、限定されないが、結晶粒度、不純物の濃度、圧縮率、引っ張り強度、多孔性、および場合によっては透磁率など、1つ以上の所望の特徴を与えるのに十分な、好適なまたは所望の温度および時間で行なわれ得る。好ましくは、焼結条件は、他の望ましくない特性に影響を与えずに、または他の望ましくない特性に少なくとも許容可能な変化しか与えずに、1つ以上の所望の材料特徴を促進する。たとえば、焼結条件は、鉄還元がほぼないまたは最小限の鉄還元で、ドープドヘキサフェライト焼結体の形成を促進し得る。一実施形態では、焼結ステップ114で使用される温度は、好ましくは1100℃〜1250℃である。いくつかの実施形態に従うと、焼結ステップ114で使用される加熱システムにおける温度は、約1150℃〜1450℃または約1100℃〜1150℃または約1100℃〜1250℃の浸漬温度を得るために、約20℃/時〜約200℃/時の速度で上昇されてもよく、該浸漬温度は、約2時間〜約12時間の間維持され得る。加熱システムは、たとえばオーブンまたは窯であってもよい。より低い上昇率、および/またはより高い浸漬温度、および/またはより長い焼結時間である場合、より速い温度上昇率、および/またはより低い浸漬温度、および/またはより短い加熱時間を用いて得られ得るよりも緻密な焼結材料が得られ得る。材料に所望の透磁率、飽和磁化、および/または磁気歪係数を付与するために、たとえば、焼結プロセスに調整を行なうことによって最終焼結材料の密度を増加させることが行なわれ得る。本開示に係る方法のいくつかの実施形態に従うと、ヘキサフェライト焼結体の密度範囲は、約4.75g/cm
3〜約5.36g/cm
3であり得る。ドープドヘキサフェライトの所望の透磁率は、所望の粒径を有する結晶粒を生成するために材料の熱処理を調整することによって達成され得る。プレスされ、さらに焼結されたヘキサフェライトは、ステップ116において破砕され、最終ヘキサフェライト生成物が形成されてもよい。
【0048】
上記の方法の実施形態によって生成される材料の結晶粒径は、処理条件に依存して、直径約5μm〜1mmの間で変わり得るが、本開示に係る方法のいくつかの局面においては、より大きい結晶粒径も可能である。いくつかの局面では、材料の各結晶は、単一の磁気ドメインを含んでいてもよい。ドープドCo
2ZおよびアンドープドCo
2Zはともに、z型フェライト結晶構造を有するフェロクスプラナ(ferroxplana)と呼ばれる板状ヘキサフェライト群のメンバーであってもよい。
【0049】
図5は、材料の磁気歪を減少させ、共鳴周波数を改善するために適合された別の実施形態に係るテクスチャリングされた(textured)Co
2Zを形成する方法200を示す。方法200は、微粒子六方晶フェライト粉末が形成されるステップ202から始まる。ある実現例では、微粒子六方晶フェライト粉末は、本明細書に記載されるものなどの置換バリウムコバルトフェライトz相(Co
2Z)粉末である。Co
2Z粉末は、共沈殿など、当該技術分野で知られる化学プロセスを用いて合成され得る。Co
2Zは、ネッチ(Netzsch)社製ゼータミルなどを用いたゾル−ゲル、仮焼、および機械的粉砕を介しても合成され得る。いくつかの実施形態では、Co
2Z粉末は、約1ミクロン未満の粒径および約6m
2/gを超える表面積を有する。いくつかの実施形態では、Co
2Z粉末は、約1ミクロン未満の平均粒径および約6m
2/gを超える平均表面積を有する。いくつかの実施形態では、Co
2Z粉末は、300〜600nmの中央粒径および約15m
2/gを超える表面積を有する。用途に依存して、六方晶フェライト粉末は、Y、W、U、X、またはM相六方晶フェライト材料もさらに含み得ることが認識されるであろう。
【0050】
図5にさらに示されるように、方法200は、ステップ204をさらに含み、ステップ204においては、六方晶フェライト粉末が冷間静水圧成形、一軸加圧成形、押出成形などの既知のプロセスによって圧縮成形される。
図5にさらに示されるように、六方晶粉末は次に、ステップ206において、同じ材料の標準的な従来の焼結温度よりも低い、約1110℃〜1250℃の温度で焼成される。得られる材料は、好ましくは微粒子六方晶フェライト材料である。
【0051】
本開示のある局面は、より高い周波数でのCo
2Zの透磁率を増加させるための処理技術を提供する。いくつかの実施形態では、この処理技術は、改善された磁気特性を有するテクスチャリングされたCo
2Zを得るためのCo
2Zの磁気テクスチャリングの方法に係る。いくつかの実施形態では、Co
2Zを形成する際に使用される磁気テクスチャリングの方法は、反応焼結方法を使用することに係り、該方法は、静磁界下でM相(BaFe
12O
19 一軸磁化)を非磁性添加物により配向させるステップと、BaO源およびCoOと反応させて、z相(Ba
3Me
2Fe
24O
42)を形成するステップとを含む。いくつかの実施形態では、Co
2Zを形成する際に使用される磁気テクスチャリングの方法は、回転磁界方法を使用することに係り、この方法は、Co
2Z相(平面磁化)を回転磁界下で起きる磁気テクスチャリングにより配向させるステップを含む。発明者は、配向の度合い、ひいては透磁率ゲインが回転磁界下ではるかに優れていることを見出した。
【0052】
いくつかの実施形態では、Co
2Zを形成するための処理技術は、Feの還元を阻止するためにz相をFe欠乏とすることを含む。なぜなら、誘電損失および磁気損失は、高温でのFeの還元(Fe
3+→Fe
2+)によって増加され得るためである。該処理技術は、Feの還元を阻止し、Fe
2+→Fe
3を引起すために、酸素中での熱処理またはアニーリングのステップを含む。いくつかの実施形態では、該処理技術は、カリウムまたはアルカリ金属などの添加物によりCo
2Zをドーピングすることを含み、共鳴周波数を増加させ、ひいてはより高い周波数範囲でのQを増加させる。
【0053】
いくつかの実施形態では、Co
2Zを形成するための処理技術は、微粒子六方晶フェライト粒子を形成することを含む。該プロセスは、高エネルギーミリング(たとえば、ゼータミリング)を使用して粒径を減少させることに係る。以下の表は、一実施形態において、高エネルギーミリングを使用して、0.2〜0.9ミクロンの範囲内の粒径および8〜14m
2/gの表面積を有するCo
2Zが生成されることを示す。この実施形態では、焼成温度は、好ましくは1150〜1250℃である。
【0054】
【表2】
【0055】
図6〜
図8は、約2〜3ミクロンの中央粒径を有し、ゼータミルにより処理され、約1100℃および1140℃で焼成されたCo
2Z粉末を示すインピーダンスグラフを示す。
図6に示されるように、共鳴ピーク、または虚数透磁率曲線の最大値は、ゼータミリングおよび低温焼成温度を用いてより高い周波数にシフトする。理論により拘束されることを望まないが、好ましい処理技術によって形成される六方晶フェライト材料は、内部応力場を有さないまたはごく僅かしか有さないため、有利な磁気歪が得られると考えられる。本明細書に記載される方法に従って形成される六方晶フェライト材料は、高周波数アンテナ、インダクタ、および変換器などのさまざまなRF装置に組込まれ得る。
【0056】
図6〜
図8は、Co
2Z粉末の、無次元複素比透磁率μ′の実数成分(ここでは単に透磁率と呼ぶ)対周波数の変化を示す。Co
2Zは、[より低い周波数で]比較的一定の透磁率を発現することがわかる。より高い周波数では、この材料は、周波数が増加し続けるにつれて、透磁率の上昇を発現し、ピークを生じ、その後、透磁率に見られるように急激な減少が生じる。透磁率のピークをここでは「共鳴周波数」と呼ぶ。
【0057】
図6は、2〜3ミクロンの中央粒径を有するCo
2Z粉末の透磁率を示す。
図7および
図8は、さらにゼータミリングされた後、それぞれ1140℃および1100℃で焼成された同じCo
2Z粉末の透磁率を示す。
図6を
図7および
図8と比較すると、Co
2Z粉末をゼータミリングし、焼成することで、該材料の共鳴周波数が増加することが証明される。さらに、
図7および
図8を比較すると、焼成温度を1140℃から1100℃に下げることによって、該材料の共鳴周波数のさらなる増加が得られることがわかる。このような共鳴周波数の増加は、ゼータミリングされ、低温焼成されたCo
2ZからなるRF装置部品が、ゼータミリングされず、高温焼成されたCo
2Zからなる同様の装置または装置部品よりも高い周波数範囲または広い周波数範囲内で透磁率を保持し、動作可能であり得ることを示している。
【0058】
図6〜
図8はさらに、高周波数における材料のエネルギー損失に相当する複素比透磁率μ″の虚数成分に対するゼータミリングおよび低温焼成の影響を示す。
図6〜
図8において、虚数透磁率曲線の最大値、すなわち「共鳴ピーク」は、Co
2Z材料がゼータミリングされ、低温焼成された粉末により処理されると、より高い周波数にシフトすることが認められ得る。
【0059】
上記の方法は、本明細書に開示される置換六方晶フェライト材料の実施形態と併用され得る。
【0060】
無線周波数装置
上に開示された誘電材料の実施形態、および製造方法は、さまざまな無線周波数装置の製造に使用可能である。これらの装置には、限定されないが、フィルタ、アイソレータ、サーキュレータ、共振器、携帯電話部品、ラップトップ部品、個人用携帯情報端末部品、タブレット部品、または基地局部品が含まれる。さらに、開示された誘電材料は、Bluetooth(登録商標)信号などの携帯または無線周波数信号に関連する部品において使用可能である。いくつかの実施形態では、開示された誘電材料は、高周波数アンテナなどのアンテナに使用可能である。開示された誘電材料の実施形態が組込まれる装置のタイプは、限定されないが、以下にいくつかの例を示す。
【0061】
図9は、本明細書に記載されるある実施形態に従って形成される、向上した共鳴周波数Co
2Z材料の実施形態が組込まれたサーキュレータ300の一例を概略的に示す。
図9に示されるように、サーキュレータ300は、1対の円筒形マグネット806、808間に配設された1対のフェライトディスク802、804を有し得る。フェライトディスク802、804は、本開示のある実施形態に係る共鳴周波数向上Co
2Z材料からなり得る。マグネット806、808は、概ね軸方向の界磁線を該フェライトディスクに発生するように配列され得る。いくつかの実施形態では、フェライトディスクは、11Oe以下の磁気共鳴線幅を有する。
【0062】
図10は、トランシーバ402と、合成器404と、RXフィルタ406と、TXフィルタ408と、磁気アイソレータ410と、アンテナ412とを含む電気通信基地局システム400を示す。磁気アイソレータ410は、単一チャネルPAおよびコネクタ付、一体型トリプレートまたはマイクロストリップドロップイン(single channel PA and connectorized, integrated triplate or microstrip drop-in)に組込まれ得る。いくつかの実施形態では、磁気アイソレータ410は、本開示に記載されるある実施形態に従って作成されるCo
2Z材料を含む。さらに、上記のCo
2Z材料の実施形態は、フィルタ406/408またはアンテナ412などの他の部品に組込まれ得る。
【0063】
上記の説明から、六方晶フェライト材料についての発明品およびアプローチが開示されることが認識されるであろう。いくつかの部品、技術および局面をある程度の具体性をもって説明したが、本開示の精神および範囲から逸脱することなく、本明細書において上に記載した特定の設計、構成および方法論には多くの変更がなされ得ることが明らかである。
【0064】
別個の実現例の文脈で本開示に記載された特定の特徴は、1つの実現例において組合せにより実現されることもできる。反対に、1つの実現例の文脈で説明されたさまざまな特徴は、複数の実現例において別個にまたは任意の好適な下位組合せにより実現されることもできる。さらに、特徴が特定の組合せにより作用するとして上に説明されていても、クレームされる組合せからの1つ以上の特徴は、場合によっては該組合せから排除されることができ、該組合せは、任意の下位組合せまたは任意の下位組合せのバリエーションとしてクレームされてもよい。
【0065】
さらに、方法は、特定の順序で図面に図示されるまたは明細書に記載され得るが、これらの方法は、示された特定の順にまたは順次行なわれる必要はなく、所望の結果を得るためにすべての方法が行なわれる必要はない。図示されていないまたは記載されていない他の説明が、例示的な方法およびプロセスに組込まれ得る。たとえば、1つ以上の追加の方法が、記載される方法の任意の方法の前、後、同時、またはこれらの間で行なわれ得る。さらに、これらの方法は、他の実現例では構成し直されたり、順序付けし直されてもよい。さらに、上記の実現例におけるさまざまなシステム部品の分離は、すべての実現例においてこのような分離が必要であるとして理解されるべきではなく、記載される部品およびシステムは、一般的には、単一の製品とともに一体化されたり、複数の製品にパッケージ化され得ることが理解されるべきである。さらに、他の実現例が本開示の範囲内である。
【0066】
「できる」、「し得る」、または「してもよい」などの条件的表現は、特に指定がない限り、または使用される文脈内でそれ以外に理解されない限り、一般的には、ある特徴、構成要素、および/またはステップを含むまたは含まないある実施形態を説明することを意図するものである。したがって、このような条件的表現は、一般的には、特徴、構成要素、および/またはステップは、何らかの形で1つ以上の実施形態に必要であることを暗示することを意図するものである。
【0067】
「X、Y、およびZの少なくとも1つ」という文言などの接続的表現は、特に指定がない限り、項目、用語などがX、Y、またはZのいずれかであり得ることを一般的に説明するとして、使用される文脈内で理解される。そのため、このような接続的表現は、一般的に、Xの少なくとも1つ、Yの少なくとも1つ、およびZの少なくとも1つの存在を必要とすることを暗示することを意図するものではない。
【0068】
本明細書で使用される「およそ」、「約」、「一般的に」、および「実質的には」などの程度の表現は、望ましい機能を実施するまたは望ましい結果を達成する記載値、量、または特徴に近い値、量、または特徴を表す。たとえば、「およそ」、「約」、「一般的に」、および「実質的には」は、記載量の10%以下、5%以下、1%以下、0.1%以下、0.01%以下の範囲内の量を指し得る。
【0069】
いくつかの実施形態を添付の図面とともに説明してきた。図は縮尺どおりに描かれるが、このような縮尺は限定的であるべきではない。なぜなら、示されるもの以外の寸法および割合が想定され、開示される発明の範囲内であるためである。距離、角度などは例示に過ぎず、図示される装置の実際の寸法およびレイアウトに対する正確な関係を必ずしも持つものではない。部品は、追加、排除、および/または配置し直され得る。さらに、さまざまな実施形態に関する任意の特定の構成要素、局面、方法、特性、特徴、性質、属性、要素などの本発明の開示は、本明細書に記載されるすべての他の実施形態において使用され得る。さらに、本明細書に記載されるすべての方法は、記載されるステップを実施するのに好適な任意の装置を用いて実施され得ることが認められるであろう。
【0070】
数多くの実施形態およびそれらのバリエーションを詳細に説明してきたが、他の改良およびその使用方法が当業者には明らかとなるであろう。したがって、さまざまな用途、改良、材料、および置換が、本明細書の独自のかつ発明的な開示または請求項の範囲から逸脱することなく、均等物からなり得ることが理解されるべきである。