【文献】
Journal of Agricultural and Food Chemistry,2009年,Vol.57,p.2493-2502
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
CAplus/REGISTRY/BIOSIS/MEDLINE/EMBASE/FSTA/AGRICOLA/BIOTECHNO/CABA/SCISEARCH/TOXCENER/WPIDS(STN)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の一実施形態について説明する。なお、本発明は本実施形態に限られるものではない。
【0014】
本実施形態に係る飲料(以下、「本飲料」という。)は、4−メチル−4−スルファニルペンタン−2−オン(4MSP)及び3−スルファニル−4−メチルペンタン−1−オール(3S4MP)を含有し、当該4MSPの含有量が5ppt以上、600ppt以下であり、当該4MSPの含有量に対する当該3S4MPの含有量の比(以下、「3S4MP/4MSP値」という。)が12.0以上、800.0以下である。なお、1pptは、1×10
−9g/Lに相当する。本飲料は、上記特定の量及び量比で4MSP及び3S4MPを含有することにより、熟した果実の豊潤な香りを有する。
【0015】
ここで、従来、4MSPは、セイヨウツゲの木(box tree)様の香りに寄与することが知られていた。また、3S4MPは、グレープフルーツ様の香りに寄与することが知られていた。しかしながら、上記「熟した果実の豊潤な香り」は、4MSP及び3S4MPがもたらすとして知られていた上記香りのいずれとも質的に異なる。これに対し、本発明の発明者らは、独自に鋭意検討を重ねた結果、飲料において4MSP及び3S4MPの含有量及び含有量比をそれぞれ特定の範囲に調整することで、意外にも、「熟した果実の豊潤な香り」を実現できるという新たな知見を得て、本発明を完成するに至った。
【0016】
本飲料において、3S4MPの含有量は、「熟した果実の豊潤な香り」を実現できる範囲であれば特に限られないが、例えば、3S4MPの含有量が700ppt以上であることが好ましい。この場合、顕著な「熟した果実の豊潤な香り」を有する本飲料を実現することができる。
【0017】
なお、本飲料における3S4MPの含有量の上限値は、「熟した果実の豊潤な香り」を実現できる範囲であれば特に限られないが、当該3S4MPの含有量は、例えば、75ppt以上、480000ppt以下であることとしてもよい。すなわち、後述する実施例における試験#1−4〜#1−8、#2−4〜#2−7、#3−3〜#3−9で得られた飲料は、「熟した果実の豊潤な香り」を有し、総合的にも好ましい香りを有する飲料であった。さらに、本飲料における3S4MPの含有量は、700ppt以上、480000ppt以下であることが好ましく、700ppt以上、10000ppt以下であることがより好ましい。
【0018】
本飲料において、4MSPの含有量は、5ppt以上、600ppt以下の範囲内であれば特に限られないが、例えば、10ppt以上、600ppt以下であることとしてもよい。すなわち、本飲料においては、例えば、4MSPの含有量が10ppt以上、600ppt以下であり、3S4MPの含有量が700ppt以上であることとしてもよい。この場合、特に顕著な「熟した果実の豊潤な香り」を有する本飲料を実現することができる。
【0019】
また、本飲料において、4MSPの含有量は、例えば、5ppt以上、500ppt以下であることとしてもよい。すなわち、本飲料においては、例えば、4MSPの含有量が5ppt以上、500ppt以下であり、3S4MPの含有量が700ppt以上であることとしてもよい。この場合、総合的に極めて好ましい香りを有する本飲料を実現することができる。
【0020】
さらに、本飲料において、4MSPの含有量は、例えば、10ppt以上、500ppt以下であることとしてもよい。すなわち、本飲料においては、例えば、4MSPの含有量が10ppt以上、500ppt以下であり、3S4MPの含有量が700ppt以上であることとしてもよい。この場合、特に顕著な「熟した果実の豊潤な香り」を有し、且つ総合的に極めて好ましい香りを有する本飲料を実現することができる。
【0021】
本飲料において、3S4MP/4MSP値は、12.0以上、800.0以下の範囲内であれば特に限られないが、例えば、12.0以上、400.0以下であることとしてもよい。すなわち、本飲料においては、例えば、3S4MP/4MSP値が12.0以上、400.0以下であり、3S4MPの含有量が700ppt以上であることとしてもよい。この場合、特に顕著な「熟した果実の豊潤な香り」を有する本飲料を実現することができる。
【0022】
さらに、本飲料において、3S4MP/4MSP値が12.0以上、400.0以下であり、4MSPの含有量が5ppt以上、500ppt以下であり、3S4MPの含有量が700ppt以上であることとしてもよい。この場合、特に顕著な「熟した果実の豊潤な香り」を有する本飲料を実現することができる。
【0023】
また、本飲料において、3S4MP/4MSP値が12.0以上、400.0以下であり、4MSPの含有量が10ppt以上、500ppt以下であり、3S4MPの含有量が700ppt以上であることとしてもよい。この場合、特に顕著な「熟した果実の豊潤な香り」を有し、且つ総合的に極めて好ましい香りを有する本飲料をより効果的に実現することができる。
【0024】
なお、飲料における4MSP及び3S4MPの含有量は、次のようにして定量することができる。すなわち、まず飲料に含有される4MSP及び3S4MPを、富永らの方法(Tominaga,T et al.:J. Agric. Food Chem. 46, 1044−1048(1998))に従い、4MSP又は3S4MPとp−ヒドロキシ水銀安息香酸(p−HMB)との可逆的結合により特異的に抽出する。具体的に、2.5nmolの4−メトキシ−2−メチルブタン−1−チオールを内部標準として含む500mLの飲料に、100mLのジクロロメタンを添加し、1Lのフラスコ中、マグネチックスターラーで10分撹拌し抽出する。当該抽出操作は2回繰り返す。
【0025】
2回分の有機相を合わせ、エマルジョンを壊すために4000g、15分遠心し、分液漏斗で分離する。得られた有機相は20mLのp−HMB溶液(0.2M Trizma base(2−アミノ−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール)中で1mM)を2回加え、1回あたり10分抽出した。2回分の水相を合わせ、強塩基性アニオン交換カラム(1.5×3cm、Dowexl−1×2−100)に供する。その後、カラムを50mLの酢酸ナトリウム緩衝液(0.1M、pH7)で洗浄する。4MSP又は3S4MPは、カラムに吸着された当該4MSP又は3S4MPとp−HMBとの複合体から、10MのNaOHでpH7に調製した60mLのシステイン溶液(10g/L)を通すことで溶出させる。4MSP又は3S4MPを含む溶出液を100mLのフラスコに集め、0.5mLの酢酸エチルを加える。溶出液は4mLと3mLのジクロロメタンで2回、各々10分マグネチックスターラーで撹拌しつつ抽出する。2回分の有機相を合わせ、無水硫酸ナトリウムで脱水し、10mLの目盛つき試験管中、窒素通気下で約200μLまで濃縮する。濃宿液は1mLのバイアルに移し、更に25μLまで濃縮する。
【0026】
次に、この濃縮物サンプルを、GC−MSにて分析する。このGC−MS分析は、マススペクトロメーター検出器(MS5973、Agilent社製)を備えた6890Nガスクロマトグラフィー(Agilent社製)を用いて行う。1回の分析には3μLの濃縮サンプルをスプリットレスインジェクター(注入口温度230℃、パージタイム1分、パージフロー50mL/分)でオーブン温度45℃にてBP20キャピラリーカラム(50m×0.32mmφ×0.25μm、SGE社製)に注入する。全ての分析で、温度プログラムは以下の通りとする。すなわち、45℃で10分保持した後、3℃/分で230℃まで昇温し、230℃で20分保持する。キャリヤーガスは、カラムヘッドの圧力22psiの水素ガスであり、その流速は1mL/分である。SIM(Selected Ion Monitoring)モードで3S4MPについてはm/z値134、4MSPについてはm/z値132で検出を行い、内部標準物質についてはm/z値134で検出する。検量線は、3S4MP及び4MSPの標準物質を終濃度で0ppt〜400ppt含有するビールを上述の試料と同様に処理し、DTNB法(Ellman,G.L.:Arch.Biochem.Biophys.82,70−77,1959)で測定することにより作成したものを用いる。サンプル中の3S4MP及び4MSPの濃度は、内部標準法で定量し、上記検量線を用いて算出する。
【0027】
本飲料は、アルコール飲料であってもよいが、ノンアルコール飲料であることが好ましい。ノンアルコール飲料は、エタノールの含有量が1体積%未満の飲料である。ノンアルコール飲料のエタノール含有量は、1体積%未満であれば特に限られないが、例えば、0.5体積%未満であってもよく、0.05体積%未満であってもよく、0.005体積%未満であってもよい。なお、アルコール飲料は、エタノールの含有量が1体積%以上(アルコール分1度以上)の飲料である。アルコール飲料のエタノール含有量は、1体積%以上であれば特に限られないが、例えば、1〜20体積%であってもよい。
【0028】
本飲料は、発泡性飲料であってもよいし、非発泡性飲料であってもよい。発泡性飲料は、泡立ち特性及び泡持ち特性を含む泡特性を有する飲料である。すなわち、発泡性飲料は、例えば、炭酸ガスを含有する飲料であって、グラス等の容器に注いだ際に液面上部に泡の層が形成される泡立ち特性と、その形成された泡が一定時間以上保たれる泡持ち特性とを有する飲料である。非発泡性飲料は、上述のような泡特性を有しない飲料である。
【0029】
本飲料がノンアルコール飲料である場合、本飲料は、発泡性ノンアルコール飲料であってもよいし、非発泡性ノンアルコール飲料であってもよい。本飲料がアルコール飲料である場合、本飲料は、発泡性アルコール飲料であってもよいし、非発泡性アルコール飲料であってもよい。
【0030】
本飲料は、麦芽(発芽させた麦)を含む原料を使用して製造される麦芽飲料であってもよいが、麦芽を使用することなく製造される非麦芽飲料であることが好ましい。非麦芽飲料は、麦芽由来成分を含まない飲料である。
【0031】
また、本飲料は、麦芽及び発芽させていない麦(以下、単に「麦」という。)を使用することなく製造される飲料であることとしてもよい。この場合、本飲料は、麦芽由来成分及び麦由来成分を含まない飲料である。
【0032】
なお、麦は、例えば、大麦、小麦、燕麦及びライ麦からなる群より選択される1つ以上である。また、麦芽は、例えば、大麦麦芽、小麦麦芽、燕麦麦芽及びライ麦麦芽からなる群より選択される1つ以上である。
【0033】
本飲料は、ホップを含む原料を使用して製造される飲料であってもよい。この場合、本飲料は、ホップ由来成分を含む。すなわち、本飲料は、例えば、ホップ由来苦味成分(例えば、イソα酸)を含むこととしてもよく、ホップ由来精油成分(例えば、ミルセン、フムレン、リナロール及びゲラニオールからなる群より選択される1種以上)を含むこととしてもよく、当該ホップ由来の苦味成分及び精油成分を含むこととしてもよい。
【0034】
本飲料は、例えば、麦芽を使用することなくホップを使用して製造される飲料であってもよい。この場合、本飲料は、麦芽由来成分を含まず、ホップ由来成分を含む飲料である。また、本飲料が麦芽及び麦を使用することなくホップを使用して製造される飲料である場合、本飲料は、麦芽由来成分及び麦由来成分を含まず、ホップ由来成分を含む飲料である。
【0035】
本飲料は、例えば、アルコール発酵を行うことなく製造される非発酵飲料であることとしてもよい。非発酵飲料は、酵母由来成分(例えば、アルコール発酵において酵母により生成されるエステル香気成分)を含まない飲料である。
【0036】
本飲料は、非発酵ノンアルコール飲料であることとしてもよい。本飲料は、麦芽由来成分を含まない非発酵ノンアルコール飲料であることとしてもよい。本飲料は、麦芽由来成分及び麦由来成分を含まない非発酵ノンアルコール飲料であることとしてもよい。本飲料は、ホップ由来成分を含む非発酵ノンアルコール飲料であることとしてもよい。本飲料は、麦芽由来成分を含まず、ホップ由来成分を含む非発酵ノンアルコール飲料であることとしてもよい。本飲料は、麦芽由来成分及び麦由来成分を含まず、ホップ由来成分を含む非発酵ノンアルコール飲料であることとしてもよい。
【0037】
本実施形態に係る飲料の製造方法(以下、「本製法」という。)は、4MSP及び3S4MPを含有する原料を使用して、上述した本飲料を製造する方法である。4MSP及び3S4MPを含有する原料は、4MSP及び3S4MPを含有し、飲料の製造に使用できる原料であれば特に限られない。
【0038】
4MSP及び3S4MPを含有する原料は、例えば、4MSP及び3S4MPを含有する植物原料及び/又は4MSP及び3S4MPを含有する添加用組成物であることとしてもよい。なお、4MSP及び3S4MPを含有する原料として使用される、4MSP及び3S4MPを含有する添加用組成物は、後述する、本実施形態に係る添加用組成物(以下、「本組成物」という。)である。
【0039】
4MSP及び3S4MPを含有する植物原料は、4MSP及び3S4MPを含有し、飲料の製造に使用できる植物又は植物由来原料であれば特に限られないが、例えば、4MSP及び3S4MPを含有するホップであることが好ましい。
【0040】
ホップとしては、生ホップ、凍結ホップ、プレスホップ、ホップパウダー、ホップペレット、ホップエキス、イソ化ホップ、ローホップ、テトラホップ及びヘキサホップからなる群より選択される1種以上が好ましく使用される。凍結ホップは、生ホップを凍結させて得られ、又は生ホップを凍結させた後、乾燥させて得られる。プレスホップは、乾燥させたホップの球果を圧縮して得られる。ホップパウダーは、乾燥させたホップの球果を粉砕して得られる。ホップペレットは、ホップパウダーをペレット状に圧縮成形して得られる。ホップエキスは、ホップを抽出して得られる。より具体的に、ホップエキスは、例えば、ホップをエタノール又は炭酸ガスで抽出して得られる。
【0041】
4MSP及び3S4MPを含有するホップとしては、4MSP及び3S4MPを含有する1品種のホップのみを用いる態様としてもよいし、4MSP及び3S4MPの含有量(例えば、ホップ乾燥重量1kgあたりに含有される4MSP及び3S4MPの量(g))が異なる2品種以上のホップを使用することとしてもよい。2品種以上のホップを使用する態様は、特に限られず、2品種以上のホップを同時に又は順次添加する態様のみならず、例えば、第一の品種を使用して製造された飲料と、第二の品種を使用して製造された飲料とを混合する態様も含む。
【0042】
本製法は、4MSP及び3S4MPを含有するホップと、ホップ以外の植物原料とを使用して、本飲料を製造する方法であることとしてもよい。この場合、本飲料は、ホップ由来の4MSP及び3S4MPと、ホップ以外の植物原料由来成分を含有する。なお、ホップ以外の植物原料は、4MSP及び/又は3S4MPを含有してもよい。
【0043】
ホップ以外の植物原料は、飲料の製造に使用できる植物又は植物由来原料であれば特に限られないが、例えば、穀類(例えば、麦類、米類及びトウモロコシからなる群より選択される1種以上)、豆類及びイモ類からなる群より選択される1種以上であることとしてもよい。これら穀類、豆類及びイモ類は、発芽させたものであってもよく、発芽させていないものであってもよい。具体的に、本製法は、例えば、4MSP及び3S4MPを含有するホップと、麦芽及び/又は麦とを使用して、本飲料を製造する方法であることとしてもよい。
【0044】
本製法は、麦芽及び麦を使用することなく、4MSP及び3S4MPを含有するホップを使用して、本飲料を製造する方法であることとしてもよい。この場合、本飲料は、麦芽由来成分及び麦由来成分を含有せず、4MSP及び3S4MPに加え、ホップ由来成分を含有する。
【0045】
本組成物は、上述のとおり、4MSP及び3S4MPを含有し、上述した本飲料を製造するために使用される組成物である。すなわち、本組成物は、4MSP及び3S4MPを含有し、上述した本製法において添加される組成物である。
【0046】
本製法において本組成物を添加するタイミングは特に限られず、任意の1以上のタイミングとすることができる。例えば、本製法においてアルコール発酵を行う場合には、当該アルコール発酵前、当該アルコール発酵中及び当該アルコール発酵後からなる群より選択される1つ以上のタイミングで本組成物を添加する。また、アルコール発酵前、アルコール発酵中及びアルコール発酵後のそれぞれについて、1以上のタイミングで本組成物を添加する。
【0047】
本組成物の使用は、4MSP及び3S4MPの両方を含有する単一の組成物の使用に限られず、4MSPを含有する組成物と3S4MPを含有する組成物とを組み合わせて使用すること(併用すること)であってもよい。
【0048】
本組成物の形態は、4MSP及び3S4MPを含有し、飲料の製造における添加に適したものであれば特に限られず、液状であってもよいし、固形であってもよい。すなわち、本組成物は、例えば、液体(例えば、溶液)、ペースト、粉末又は錠剤である。
【0049】
本組成物に含有される4MSP及び3S4MPは、植物原料由来のものであってもよいし、人工的に合成されたものであってもよい。植物原料由来の4MSP及び3S4MPは、例えば、ホップ由来であることが好ましい。
【0050】
本組成物がホップ由来の4MSP及び3S4MPを含有する場合、本組成物は、当該4MSP及び3S4MP以外のホップ由来成分をさらに含有することとしてもよい。4MSP及び3S4MP以外のホップ由来成分は、例えば、ホップ由来の苦味成分(例えば、イソα酸)及び/又は精油成分(例えば、ミルセン、フムレン、リナロール及びゲラニオールからなる群より選択される1種以上)である。
【0051】
本製法においては、最終的に製造される本飲料の4MSP及び3S4MPの含有量及び含有量比が上述した範囲となるような条件で、4MSP及び3S4MPを含有する原料を使用して、本飲料を製造する。
【0052】
原料液は、上述した4MSP及び3S4MPを含有する原料を使用して製造されたものであれば特に限られないが、例えば、当該原料を使用し、アルコール発酵を行わずに製造された原料液(例えば、ビール等の飲料の製造における麦汁に相当する原料液、又は当該原料を使用して製造されたノンアルコール飲料に相当する原料液)、及び/又は、当該原料を使用し、アルコール発酵を行って製造された原料液(例えば、ビール等の製造におけるアルコール発酵後の発酵液に相当する原料液、及び/又は、ビール等の飲料に相当する原料液)である。
【0053】
また、例えば、まず原料(例えば、ホップ及び/又は本組成物)における4MSP及び3S4MPの含有量に基づき、最終的に製造される飲料の4MSP及び3S4MPの含有量及び含有量比が上述した範囲となる使用条件(例えば、当該原料の添加量及び添加タイミング(ホップの場合は、さらに煮沸時間)からなる群より選択される1つ以上の条件)を決定し、その後、当該条件にて当該原料を使用して、本飲料を製造する。
【0054】
より具体的に、例えば、2品種以上のホップを使用する場合、当該2品種以上のホップそれぞれの4MSP及び3S4MPの含有量を測定し、次いで、当該測定結果に基づいて、最終的に製造される飲料の4MSP及び3S4MPの含有量及び含有量比が上述した範囲となる使用条件(例えば、各品種の添加量、添加タイミング及び煮沸時間からなる群より選択される1つ以上の条件)を決定し、その後、当該条件にて当該2品種以上のホップを使用して、本飲料を製造する。
【0055】
また、例えば、ホップとして、1品種のみを使用する場合、当該1品種のホップの4MSP及び3S4MPの含有量を測定し、次いで、当該測定結果に基づいて、最終的に製造される飲料の4MSP及び3S4MPの含有量及び含有量比が上述した範囲となる使用条件(例えば、添加量、添加タイミング及び煮沸時間からなる群より選択される1つ以上の条件)を決定し、その後、当該条件にて当該1品種のホップを使用して、本飲料を製造する。
【0056】
上述のとおり、本実施形態においては、飲料の4MSP及び3S4MPの含有量及び含有量比を特定の範囲に調整することにより、当該飲料の香りを効果的に向上させる。そこで、本実施形態は、飲料における4MSPの含有量及び3S4MPの含有量を、当該4MSPの含有量が5ppt以上、600ppt以下となり、3S4MP/4MSP値が12.0以上、800.0以下となるように調整することにより、当該飲料の香りを向上させる方法を含む。この方法においては、上述のように本製法で採用され得る条件によって、飲料における4MSP及び3S4MPの含有量及び3S4MP/4MSP値を上記特定の範囲に調整する。
【0057】
次に、本実施形態に係る具体的な実施例について説明する。
【実施例】
【0058】
4MSPを含有する組成物として、市販の4MSP含有試薬(4−メルカプト−4−メチルペンタン−2−オン、Combi−Blocks社製)を使用した。また、3S4MPを含有する組成物として、人工的に合成された3S4MPを含有する試薬を使用した。なお、3S4MPは、特開2008−214261号公報の段落0048及び段落0049に記載の方法により合成した。
【0059】
そして、蒸留水に、最終的な4MSPの含有量と3S4MPの含有量との組み合わせが
図1に示す26種類のいずれかとなる量で、上記4MSP含有試薬及び3S4MP含有試薬を添加することにより、
図1に示す26種類の飲料を製造した。これらの飲料はいずれも、麦芽由来成分及び麦由来成分を含まないノンアルコール飲料であった。また、これらの飲料は、ホップ由来苦味成分及びホップ由来精油成分を含まないノンアルコール飲料でもあった。
【0060】
次いで、上述のようにして得られた26種類の飲料のそれぞれについて、熟練した4人のパネラーによる官能検査を行った。官能検査においては、各パネラーが、各飲料に対し、「熟した果実の豊潤な香り」、「腐敗的な臭い」及び「総合的な香り」のそれぞれについて、1点、2点、3点、4点、5点、6点又は7点のうちいずれかの点数を付与した。そして、各飲料について、4人のパネラーから付与された点数の合計をパネラーの人数で除して得られる算術平均値を、官能検査で得られた点数とした。
【0061】
なお、「熟した果実の豊潤な香り」については、点数が高いほど好ましく、「腐敗的な臭い」については、点数が低いほど好ましく、「総合的な香り」については、点数が高いほど好ましい。「総合的な香り」は、「熟した果実の豊潤な香り」及び「腐敗的な臭い」の評価結果に基づき、総合的な評価として点数を付与した。
【0062】
図1には、各飲料について、3S4MPの含有量(ppt)、4MSPの含有量(ppt)及び3S4MP/4MSP値(−)を示し、官能検査の結果として、「熟した果実の豊潤な香り」、「腐敗的な臭い」及び「総合的な香り」のそれぞれについて、点数及び評価を示す。
【0063】
図1の「分類評価」は、各項目について、点数が1.5以下の場合には「バツ印」、点数が1.6以上、2.5以下の場合には「三角印」、点数が2.6以上、3.5以下の場合には「丸印」、及び点数が3.6以上の場合には「二重丸印」として評価結果を示したものである。
【0064】
図1に示すように、4MSPの含有量が5ppt以上、600ppt以下であり、3S4MP/4MSP値が12.5以上、800.0以下であった試験#1−4〜#1−8、#2−4〜#2−7、#3−3〜#3−9(3S4MPの含有量は、75ppt以上、10000ppt以下)においては、「熟した果実の豊潤な香り」が2.8点以上、「腐敗的」は1.5点以下、「総合評価」は2.8以上であった。すなわち、試験#1−4〜#1−8、#2−4〜#2−7、#3−3〜#3−9で得られた飲料は、「熟した果実の豊潤な香り」を有し、総合的にも好ましい香りを有する飲料であった。
【0065】
また、4MSPの含有量が5ppt以上、600ppt以下であり、3S4MPの含有量が750ppt以上であり、3S4MP/4MSP値が12.5以上、800.0以下であった試験#1−4〜#1−8、#2−4〜#2−7、#3−5〜#3−9(3S4MPの含有量は、750ppt以上、10000ppt以下)においては、「熟した果実の豊潤な香り」が3.5点以上、「腐敗的」は1.5点以下、「総合評価」は3.3以上であった。すなわち、これらの試験で得られた飲料は、顕著な「熟した果実の豊潤な香り」を有し、総合的にもより好ましい香りを有する飲料であった。
【0066】
また、4MSPの含有量が15ppt以上、600ppt以下であり、3S4MPの含有量が750ppt以上であり、3S4MP/4MSP値が12.5以上、266.7以下であった試験#1−5〜#1−8、#2−4〜#2−7、#3−5〜#3−9(3S4MPの含有量は、750ppt以上、10000ppt以下)においては、「熟した果実の豊潤な香り」が4.3点以上、「腐敗的」は1.5点以下、「総合評価」は3.3以上であった。すなわち、試験#1−5〜#1−8、#2−4〜#2−7、#3−5〜#3−9で得られた飲料は、特に顕著な「熟した果実の豊潤な香り」を有し、総合的にもより好ましい香りを有する飲料であった。
【0067】
また、4MSPの含有量が5ppt以上、400ppt以下であり、3S4MPの含有量が750ppt以上であり、3S4MP/4MSP値が12.5以上、800.0以下であった試験#1−4〜#1−8、#2−4〜#2−7、#3−5〜#3−8(3S4MPの含有量は、750ppt以上、10000ppt以下)においては、「熟した果実の豊潤な香り」が3.5点以上、「腐敗的」は1.0点以下、「総合評価」は3.8以上であった。すなわち、試験#1−4〜#1−8、#2−4〜#2−7、#3−5〜#3−8で得られた飲料は、顕著な「熟した果実の豊潤な香り」を有し、総合的に極めて好ましい香りを有する飲料であった。
【0068】
また、4MSPの含有量が15ppt以上、400ppt以下であり、3S4MPの含有量が750ppt以上であり、3S4MP/4MSP値が12.5以上、266.7以下であった試験#1−5〜#1−8、#2−4〜#2−7、#3−5〜#3−8(3S4MPの含有量は、750ppt以上、10000ppt以下)においては、「熟した果実の豊潤な香り」が4.3点以上、「腐敗的」は1.0点以下、「総合評価」は3.8以上であった。すなわち、試験#1−5〜#1−8、#2−4〜#2−7、#3−5〜#3−8で得られた飲料は、特に顕著な「熟した果実の豊潤な香り」を有し、総合的にも極めて好ましい香りを有する飲料であった。