特許第6599255号(P6599255)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6599255弾性伸縮部材用ウレタンフォームの製造方法
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  • 特許6599255-弾性伸縮部材用ウレタンフォームの製造方法 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6599255
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】弾性伸縮部材用ウレタンフォームの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/00 20060101AFI20191021BHJP
   C08G 18/18 20060101ALI20191021BHJP
   C08G 18/38 20060101ALI20191021BHJP
   C08G 18/42 20060101ALI20191021BHJP
   C08G 18/76 20060101ALI20191021BHJP
   C08G 18/75 20060101ALI20191021BHJP
   A61F 13/49 20060101ALI20191021BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20191021BHJP
【FI】
   C08G18/00 L
   C08G18/18
   C08G18/38 078
   C08G18/42
   C08G18/76
   C08G18/75
   A61F13/49 319
   C08G101:00
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-15272(P2016-15272)
(22)【出願日】2016年1月29日
(65)【公開番号】特開2017-132936(P2017-132936A)
(43)【公開日】2017年8月3日
【審査請求日】2018年10月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100098752
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 吏規夫
(72)【発明者】
【氏名】小出 昌仁
(72)【発明者】
【氏名】堀尾 文徳
(72)【発明者】
【氏名】尾本 充
【審査官】 三原 健治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−179755(JP,A)
【文献】 特開2006−233021(JP,A)
【文献】 特開2004−211032(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G
A61F
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオールとイソシアネートを、発泡剤、触媒、酸化防止剤の存在で反応させる弾性伸縮部材用ウレタンフォームの製造方法において、
前記ポリオールとしてポリエステルポリオールのみを用い、
前記イソシアネートは芳香族イソシアネートと脂環族イソシアネートを含み、芳香族イソシアネート:脂環族イソシアネートの重量割合は、99〜80:1〜20であり、
前記触媒として反応型アミン触媒のみを用い、
前記酸化防止剤としてヒンダードフェノール系及び/又は反応型亜リン酸エステル系酸化防止剤を用いることを特徴とする弾性伸縮部材用ウレタンフォームの製造方法。
【請求項2】
前記弾性伸縮部材用ウレタンフォームは紙おむつに用いられることを特徴とする請求項1に記載の弾性伸縮部材用ウレタンフォームの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性伸縮部材用ウレタンフォームの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図1に示す紙おむつ10は、レッグ用開口部の周縁部11及びウエスト用開口部の周縁部15に弾性伸縮部材12、16が設けられて伸縮用ギャザー(ひだ)が形成されている。前記弾性伸縮部材として、ウレタンフォームを厚み2mm程度のテープ状にしたものがある。
ウレタンフォームは、ポリオールとイソシアネートを、発泡剤、触媒、酸化防止剤の存在下で反応させることにより製造される。また、弾性伸縮部材用ウレタンフォームは、破断時の伸び及び引張強度を良好とするため、ポリオールとしてポリエステルポリオールを用いたエステル系ウレタンフォームが使用されている。
【0003】
また、紙おむつは、衛生的な印象を与えるために白色が好まれるが、ウレタンフォームは、光や酸化窒素ガス等で変色し易いため、変色がわかり難いように予めピンクや青色に着色して使用されてきた。しかし、従来のウレタンフォームはピンクや青色に着色されていても、保管状態によっては、変色が目立つ場合があった。
【0004】
また、エステル系ウレタンフォームは、発泡を良好にするために触媒に3級アミンが用いられていることから、発泡後にアミン特有の臭いがしたり、紙おむつの保管中に紙おむつに設けられている尿検知サインを変色させたりする問題がある。尿検知サインはpH等で変色する指示薬等で構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−75394号公報
【特許文献2】特開平10−36543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであって、破断時の伸び、引張強度、酸化窒素ガスに対する耐変色性が良好であり、においが無く、かつ紙おむつの尿検知サインを変色させない弾性伸縮部材用ウレタンフォームの製造を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、ポリオールとイソシアネートを、発泡剤、触媒、酸化防止剤の存在で反応させる弾性伸縮部材用ウレタンフォームの製造方法において、前記ポリオールとしてポリエステルポリオールのみを用い、前記イソシアネートは芳香族イソシアネートと脂環族イソシアネートを含み、芳香族イソシアネート:脂環族イソシアネートの重量割合は、99〜80:1〜20であり、前記触媒として反応型アミン触媒のみを用い、前記酸化防止剤としてヒンダードフェノール系及び/又は反応型亜リン酸エステル系酸化防止剤を用いることを特徴とする。なお、前記「及び/又は」は「及び」あるいは「又は」の意味である。
【0009】
請求項の発明は、請求項において、前記弾性伸縮部材用ウレタンフォームは紙おむつに用いられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、ポリオールとしてポリエステルポリオールのみを用いるため、ウレタンフォームの破断時の伸び及び引張強度を良好にすることができ、弾性伸縮部材用に適したウレタンフォームが得られる。
また、本発明では、イソシアネートに芳香族イソシアネートを含むため、反応性に優れ、発泡状体が良好になり、発泡状体の不良によってウレタンフォームの破断時の伸び及び引張強度が損なわれるのを防ぐことができる。
【0011】
また、本発明では、触媒として反応型アミン触媒のみを用い、非反応型アミン触媒を用いないため、ウレタンフォームの発泡時にイソシアネートと反応型アミン触媒が反応する。このため、発泡後のウレタンフォームにアミン触媒がフリー状態で残存しなくなることにより、アミンによるにおいを無くし、かつ紙おむつの検知サインがウレタンフォームに残存するフリーのアミン触媒によって誤って変色するのを防ぐことができる。さらに本発明では、触媒として反応型アミン触媒のみを用い、ウレタンフォームの黄変を生じ易い金属触媒も使用しないため、これによってもウレタンフォームの耐黄変性を向上さることができる。
【0012】
また、本発明では、酸化防止剤としてヒンダードフェノール系と反応型亜リン酸エステル系酸化防止剤の少なくとも一方を用いるため、酸化窒素ガスによる変色を抑制することができる。
さらに、本発明において、イソシアネートを芳香族イソシアネートと脂環族イソシアネートの併用とすれば、ウレタンフォームの耐黄変性を一層向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】紙おむつの展開状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について説明する。本発明は、図1に示した紙おむつ10の弾性伸縮部材12、16に好適なウレタンフォームの製造方法であり、ポリオールとイソシアネートを、発泡剤、触媒、酸化防止剤の存在下で反応させることにより弾性伸縮部材用ウレタンフォームを製造する。
【0015】
本発明において使用されるポリオールは、ポリエステルポリオールのみが用いられる。ポリエステルポリオールとしては、ウレタンフォーム用のポリエステルポリオールを用いることができ、例えば、マロン酸、コハク酸、アジピン酸等の脂肪族カルボン酸やフタル酸等の芳香族カルボン酸と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等の脂肪族グリコール等から重縮合して得られたポリエステルポリオールを挙げることができる。また、本発明において使用されるポリエステルポリオールは、分子量(数平均分子量)が2000〜5000のポリエステルポリオールが、発泡安定性や物性バランスのため、より好ましい。
【0016】
本発明において使用されるイソシアネートは、芳香族イソシアネートが必須であり、芳香族イソシアネートと共に脂肪族及び脂環族イソシアネートの少なくとも一方を含んでもよい。芳香族イソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメリックMDI(クルードMDI)、キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート等が挙げられる。なお、トリレンジイソシアネート(TDI)は、2,4’−トリレンジイソシアネート(2,4’−TDI)と2,6’−トリレンジイソシアネート(2,6’−TDI)の異性体があり、2,4’−TDI/2,6’−TDIの比が80/20からなるT−80や2,4’−TDI/2,6’−TDIの比が65/35からなるT−65もある。脂肪族イソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート等が挙げられる。脂環族イソシアネートとしては、シロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水添MDI等が挙げられる。
本発明では、芳香族イソシアネートと脂環族イソシアネートの併用は、耐変色性を一層良好にできるためにより好ましい。芳香族イソシアネートと脂環族イソシアネートを併用する場合、芳香族イソシアネート:脂環族イソシアネートの重量割合は、99〜80:1〜20が好ましい。
【0017】
イソシアネートインデックスは80〜120が好ましい。イソシアネートインデックスが80未満になると、良好なフォームができなくなる。一方、イソシアネートインデックスが120を超えると、フォームが硬くなりすぎたり、良好なフォームができなくなったりする。イソシアネートインデックスは、ポリイソシアネートにおけるイソシアネート基のモル数をポリオールの水酸基や発泡剤としての水などの活性水素基の合計モル数で割った値に100を掛けた値であり、[ポリイソシアネートのNCO当量/活性水素当量×100]で計算される。
【0018】
本発明において使用される発泡剤は、水、あるいはペンタンなどの炭化水素を、単独または組み合わせて使用できる。水の場合は、ポリオールとイソシアネートの反応時に炭酸ガスを発生し、その炭酸ガスによって発泡がなされる。発泡剤の量は適宜とされるが、水の場合、ポリオール100重量部に対して3〜5.5重量部程度が好ましい。
【0019】
本発明において使用される触媒は、反応型アミン触媒のみが用いられ、非反応型アミン触媒及び金属触媒は用いられない。反応型アミン触媒は、イソシアネートと反応する官能基を有するものであり、少なくとも一つのOH基を有するアミン系化合物が好ましい。少なくとも一つのOH基を有するアミン系化合物としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン(DMEA)、N,N,N’−トリメチルアミノエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルアミノエトキシエタノール、N,N−ジメチルアミノヘキサノール、N,N−ジメチルアミノエトキシヘキサノール等を挙げることができる。反応型アミン触媒は二種以上を用いてもよい。触媒の量は、ポリオール100重量部に対して0.1〜2重量部程度が好ましい。
【0020】
本発明において使用される酸化防止剤は、ヒンダードフェノール系と反応型亜リン酸エステル系酸化防止剤の少なくとも一方が用いられる。
本発明で使用されるヒンダードフェノール系の酸化防止剤としては、4−メチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール(BHT)、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名;イルガノックス245、BASFジャパン社製)、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名;イツガノックス259、BASFジャパン社製)、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名;イルガノックス1010、BASFジャパン社製)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(商品名;イルガノックス1076、BASFジャパン社製)、ベンゼンプロパン酸,3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ−,C7−C9 側鎖アルキルエステル(商品名;イルガノックス1135、BASFジャパン社製)、2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−o−クレゾール(商品名;イルガノックス1520L、BASFジャパン社製)、2,4−ビス[(ドデシルチオ)メチル]−6−メチルフェノール(商品名;イルガノックス1726、BASFジャパン社製)、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−[(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン(商品名;アデカスタブ AO 80、アデカ社製)などが挙げられる。それらの中でも、本発明ではオクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(商品名;イルガノックス1076、BASFジャパン社製)、ベンゼンプロパン酸,3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ−,C7−C9 側鎖アルキルエステル(商品名;イルガノックス1135、BASFジャパン社製)、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名;イルガノックス1010、BASFジャパン社製)がより好ましい。
【0021】
本発明で使用される反応型亜リン酸エステル系酸化防止剤は、イソシアネートと反応する活性基を有する亜リン酸エステル系酸化防止剤であり、トリス(ジプロピレングリコール)ホスファイト、ポリ(ジプロピレングリコール)フェニルホスファイト(商品名:ウエストンDHOP、アディバント社製)
が挙げられる。
【0022】
酸化防止剤の量は、ポリオール100重量部に対して0.2〜3重量部程度が好ましい。酸化防止剤の量が少なすぎると耐黄変性の効果が少なくなり、多すぎると発泡不良を生じやすくなる。
【0023】
その他、整泡剤、紫外線吸収剤、光安定剤などの添加剤を配合することができる。
整泡剤を添加することにより、発泡状態を良好にすることができる。整泡剤としては、ウレタンフォームに用いられるものであればよく、シリコーン系整泡剤、含フッ素化合物系整泡剤、界面活性剤等を挙げることができる。
【0024】
紫外線吸収剤を添加することにより、光に対する黄変をより効果的に抑えることができる。紫外線吸収剤としては、例えばベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ベンゾエート系、シアノアクリレート系の紫外線吸収剤を用いることができる。
ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤としては、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−p−クレゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−(1,1,3,3−テトラエチルブチル)フェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス(6−(2Hベンゾトリアゾール−2−イル)−4−1,1,3,3−(テトラメチルブチル)フェノール)、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル]−4−メチル−6−(t−ブチル)フェノール等を挙げることができる。
ベンゾフェノン系の紫外線吸収剤としては、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシベンゼンスルホニックアシッド2−ヒドロキシ−4−n−オクチルオキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン等を挙げることができる。
ベンゾエート系の紫外線吸収剤としては、2,4−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等を挙げることができる。
シアノアクリレート系の紫外線吸収剤としては、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート等を挙げることができる。
【0025】
光安定剤は、例えば、ヒンダ−ドピペリジン骨格を持つヒンダードアミン系である、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート、ポリ((6−((1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ)−s−テトラジン−2,4−ジジル)(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ)ヘキサメチレン(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ)))、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート等を挙げることができる。
【0026】
ウレタンフォームの製造は、ワンショット法あるいはプレポリマー法の何れでもよい。ワンショット法は、ポリオールとイソシアネートを発泡剤、触媒及び酸化防止剤等の存在下、直接反応させる方法である。一方、プレポリマー法は、ポリオールとイソシアネートを事前に反応させて末端にイソシアネート基を有するプレポリマーを得、このプレポリマーに発泡剤、触媒及び酸化防止剤等の存在下、ポリオールを反応させる方法である。また、ウレタンフォームは、スラブウレタンフォームが好ましい。スラブウレタンフォームは、混合攪拌された原料(反応混合原料)をベルトコンベア上に吐出し、該ベルトコンベアが移動する間に、原料が常温、大気圧下で自然発泡し、硬化することで連続的に製造される。その後、乾燥炉内で硬化(キュア)した後、弾性伸縮部材に適した寸法に裁断される。
【0027】
本発明で製造された弾性伸縮部材用ウレタンフォームは、破断時の伸び(JIS K6400−5)が140%以上、かつ、引張強度(JIS K6400−5)が130kPa以上であり、おむつの弾性伸縮部材として好適である。
【実施例】
【0028】
以下の原料を用いて表1及び表2に示す配合原料をミキサーで撹拌し、ワンショット法により実施例と比較例のウレタンフォームを製造した。配合原料の液温は23℃である。
【0029】
・ポリエステルポリオール−1;品名:エディフォームE−541、花王社製、ポリ(ジエチレングリコールアジピン酸エステル、水酸基価:61mgKOH/g、数平均分子量:2500
・ポリエステルポリオール−2;品名:クラポールF3010、クラレ社製、ポリ[(3−メチル−1,5−ペンタンジオール;トリメチロールプロパン)−alt−(アジピン酸)]、水酸基価:56mgKOH/g、数平均分子量:3000
・ポリエーテルポリオール;品名:サンニックスGP−3050、三洋化成社製、水酸基価:56mgKOH/g、平均官能基数3、数平均分子量3000
【0030】
・整泡剤−1;品名:テゴスターブB 8325、エボニック・ジャパン社製、ポリエーテル変性ポリシロキサン
・整泡剤−2;品名:テゴスターブBF 2370、エボニック・ジャパン社製、ポリエーテル変性ポリシロキサン
【0031】
・反応型アミン触媒−1;品名:DABCO NE300、エアープロダクツジャパン社製、N−[2−[2−(ジメチルアミノ)エトキシ]エチル]−N−メチル−1,3−プロパンジアミン
・反応型アミン触媒−2:品名:カオーライザーNo.25、花王社製、6−ジメチルアミノ-1−ヘキサノール
・非反応型アミン触媒−1;品名:DABCO 33−LV、エアープロダクツジャパン社製、1,4ジアザビシクロ(2,2,2)オクタン33%のジプロピレングリコール溶液
・非反応型アミン触媒−2;品名:カオーライザーナンバー22、花王社製、N−エチルモルホリン
・スズ触媒;品名:MRH−110、城北化学工業社製、オクチル酸第一錫
【0032】
・紫外線吸収剤;チヌビン571、BASFジャパン社製、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールと1−ドデセンとの反応生成物
・ヒンダードフェノール系酸化防止剤;品名:イルガノックス1135、BASFジャパン社製、ベンゼンプロパン酸,3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ−,C7−C9 側鎖アルキルエステル
・反応型亜リン酸エステル系酸化防止剤;品名:NIAX COLOR STABILIZER CS−22LF、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、トリス(ジプロピレングリコール)ホスファイト
・非反応型亜リン酸系酸化防止剤;品名:JP−308E、城北化学社製、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト
【0033】
・脂環族イソシアネート;品名:ベスタナートIPDI、エボニック・ジャパン社製、イソホロンジイソシアネート
・芳香族イソシアネート−1;品名:コロネートT−80、東ソー(株)社製、2,4−TDI/2,6−TDI=80/20
・芳香族イソシアネート−2;品名:コロネートT−65、東ソー(株)社製、2,4−TDI/2,6−TDI=65/35
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
【0036】
実施例、参考例及び比較例のウレタンフォームに対して、密度(kg/m)、硬さ(k/Pa)、引張強度(kPa)、破断伸び(%)、黄変性、NOx変色、紫外線変色、におい、尿サインの変色について測定・評価した。
密度はJIS K7222、硬さはJIS K6400−2D法、引張強度はJIS K6400 5、破断伸びはJIS K6400−5に基づいて測定した。
黄変性は、初期試料の黄色度YIをカラーメーター(SM−4、スガ試験機(株)製)にて測定した。
NOx変色は、試験片を内部撹拌装置付き10Lデシケーターにセットし、99.9%の二酸化窒素をシリンジで約2ml採取してデシケーターに注入し、200rpmで連続攪拌する。デシケーター内の二酸化窒素濃度は約200ppmになる。この状態で2時間放置した後に試験片を取り出し、黄色度YIを測定した。YI値(NOx暴露後の値)とYI初期値との差によって得られるΔYI値が小さい程変色が少ないことを示す。ΔYI値が、表1及び表2の下欄に示す何れの範囲に入るかによってNOx変色性を「◎〜××」で評価した。
紫外線変色は、試験片をフェードメーター(紫外線フェードメーターU48、スガ試験機(株)製、ブラックパネル温度63℃)にセットし、5時間照射後取り出し、黄色度YIを測定した。YI値(紫外線暴露後の値)とYI初期値との差によって得られるΔYI値が小さい程変色が少ないことを示す。ΔYI値が、表1の下欄に示す何れの範囲に入るかによって紫外線変色性を「◎〜××」で評価した。
においは、試験片をプラスチックバッグに入れ、1時間放置後、直接においを嗅ぐことにより判定した。
尿サインの変色は、紙オムツから切り取った尿検知サイン部(おしっこサイン部)を、ウレタンフォームの試験片で上下を覆い、さらにスライドグラスで挟み込んだ状態として40℃の炉内で1日放置した。取り出し後、尿検知サイン部が初期の黄色から青色へどの程度変化しているかを目視で判断した。
【0037】
実施例1〜7は、イソシアネートとして脂環族イソシアネートと芳香族イソシアネートを併用した例であり、破断伸び、引張強度、酸化窒素ガス(NOx)に対する耐変色性、紫外線に対する耐変色性の評価が何れも良好であり、においもなく、かつ紙おむつの尿検知サインを変色させないものであり、総合評価が〇以上であった。
参考例8は、イソシアネートとして芳香族イソシアネートを単独使用した例であり、酸化窒素ガス(NOx)に対する耐変色性は十分であるが、実施例1〜7と比べて若干劣っていた。
【0038】
比較例1はポリオールとしてポリエーテルポリオール単独使用、触媒として反応型アミン触媒とスズ触媒の併用、酸化防止剤としてヒンダードフェノール系酸化防止剤と反応型亜リン酸エステル系酸化防止剤の併用、イソシアネートとして脂環族イソシアネートと芳香族イソシアネートの併用の例であり、引張強度及び破断伸びが劣り、かつ酸化窒素ガス(NOx)に対する耐変色性が大きく劣っていた。
【0039】
比較例2〜比較例4は、比較例1におけるポリオールをポリエステルポリオールとポリエーテルポリオールの併用とした例であり、引張強度、破断伸び、酸化窒素ガス(NOx)について、比較例1と比べて僅かながら改善が見られるが、依然として実施例1〜8と比べると大きく劣っていた。
【0040】
比較例5はポリオールとしてポリエステルポリオール単独使用、触媒として反応型アミン触媒単独使用、酸化防止剤としてヒンダードフェノール系酸化防止剤と非反応型亜リン酸系酸化防止剤の併用、イソシアネートとして芳香族イソシアネートの単独使用の例であり、発泡時にフォームが崩壊し、良好なウレタンフォームが得られなかった。
【0041】
比較例6は、ポリオールとしてポリエステルポリオール単独使用、触媒として非反応型アミン触媒単独使用、酸化防止剤不使用、イソシアネートとして芳香族イソシアネート単独使用の例であり、酸化窒素ガス(NOx)に対する耐変色性及び紫外線に対する耐変色性が何れも劣っており、しかもにおいがあり、尿サインの変色もあった。
【0042】
比較例7は、比較例6において触媒を反応型アミン触媒単独使用とした例であり、においと尿サインの変色については改善されたものの、酸化窒素ガス(NOx)に対する耐変色性及び紫外線に対する耐変色性については比較例6よりも劣っていた。
【0043】
比較例8は、比較例6において紫外線吸収剤の使用、酸化防止剤としてヒンダードフェノール系酸化防止剤の単独使用の例であり、比較例6と比べて紫外線に対する耐変色性については改善されているものの、酸化窒素ガス(NOx)に対する耐変色性が依然として劣っており、しかもにおいがあり、尿サインの変色もあった。
【0044】
比較例9は、比較例8において、触媒を非反応型アミン触媒に代えて反応型アミン触媒とした例であり、比較例8と比べて、におい及び尿サインの変色については改善されたものの、酸化窒素ガス(NOx)に対する耐変色性の評価については「××」から[×]とわずかに改善された程度であり、依然として酸化窒素ガス(NOx)に対する耐変色性が劣っていた。
【0045】
比較例10は、比較例9において、触媒を非反応型アミン触媒とスズ触媒の併用とし、酸化防止剤をヒンダードフェノール系酸化防止剤と反応型亜リン酸エステル系酸化防止剤の併用とし、イソシアネートを脂環族イソシアネートと芳香族イソシアネートの併用とした例である。比較例10は、比較例9と比べると、酸化窒素ガス(NOx)に対する耐変色性が改善された反面、におい及び尿サインの変色が劣っていた。
【0046】
比較例11は、比較例9において、酸化防止剤をヒンダードフェノール系酸化防止剤と反応型亜リン酸エステル系酸化防止剤の併用とした例であり、比較例9と同様に酸化窒素ガス(NOx)に対する耐変色性が劣っていた。
【0047】
このように、本発明によれば、破断時の伸び、引張強度、酸化窒素ガスに対する耐変色性が良好であり、においが無く、かつ紙おむつの尿検知サインを変色させない弾性伸縮部材用ウレタンフォームの製造することができる。
【符号の説明】
【0048】
10 紙おむつ
11 レッグ用開口部の周縁部
12 弾性伸縮部材
15 ウエスト用開口部の周縁部
16 弾性伸縮部材
図1