(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電磁誘導の相互誘導作用に基づき、キッチンや食卓の給電テーブル側に配された送電側回路の送電コイルから、電気式調理容器側に配された受電側回路の受電コイルに、非接触で電力を供給する調理用の非接触給電装置であって、
該送電コイルは、径大なループ状に巻回されており、該受電コイルは、該送電コイルより径小なループ状に巻回されており、
該受電コイルは、給電に際し該送電コイルと上下の関係で対応位置し、該送電コイルの磁界位置内に置かれ、
該送電コイルは、偶数の複数の単位コイルの平面的集合体よりなり、多極構造をなしており、各該単位コイルは、直に並んで隣接配置された相互間で、電流の向きそして磁界の向きが逆となる設定よりなり、
もって該送電コイルは、各該単位コイル毎に磁界が広く形成され、該受電コイルが、各該単位コイルの磁力の強いコイル線近くに多く位置するようになり、まず、給電効率低下箇所の発生抑制機能を発揮すると共に、
該送電コイルは径大であり、径小の該受電コイルとの大きな寸法差により、多量の磁界が外部拡散し易いが、偶数の各該単位コイルについて、隣接相互間で磁界の向きが逆となる設定に基づき、隣接磁界間の重なり部分の打ち消し合いにより、磁界外部拡散の低減機能を発揮し、
更に、該送電コイルの磁界の向きが逆で隣接配置された各該単位コイル間に、該受電コイルが跨って位置すると、電磁結合が困難化する虞が発生する場合があるが、
該受電コイルは、Xコイル,Yコイル,Zコイルの3方向コイルの立体的集合体よりなり、該Xコイルは、該電気式調理容器の左右側面に配設され、該Yコイルは、該電気式調理容器の前後側面に配設され、Zコイルは、該電気式調理容器の底面に配設されており、
もって上記場合でも、Xコイル,Yコイル,Zコイルの内、少なくとも一つが該送電コイルの単位コイルとの電磁結合機能を発揮すること、を特徴とする非接触給電装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来の非接触給電装置5については、次の問題が課題として指摘されていた。
従来の調理用の非接触給電装置5は、電気式調理容器3毎の個別方式よりなっていた。ミキサー,湯わかしポット,電気保温ポット,etc.等、各種の電気式調理容器3毎に、送電コイル2を備えた給電台1が用いられていた。
すなわち各電気式調理容器3では、それぞれの用途に応じた負荷が使用されており、それぞれの負荷に対応した受電コイル4が用いられている。もって、受電コイル4の大きさ,径,種類等も様々であり、受電コイル4と上下で対をなす対称構造の送電コイル2も、同様に様々となる。送電コイル2の給電台1も、様々となる。
従って、キッチンや食卓のテーブルA上にて、必要とされる電気式調理容器3そして受電コイル4の種類に応じ、それぞれに見合った送電コイル2を、個別専用的に使用することを要していた。そのような送電コイル2を備えた給電台1が、テーブルA上に置かれていた。
そこで、従来の調理用の非接触給電装置5については、送電コイル2や給電台1に関し、次の問題が指摘されていた。
・電気式調理容器3の種類,大きさに応じて使い分けられており、不便であり手間がかかり煩わしい。
・種類が多く、キッチンや食卓の邪魔になることもあり、この面からも不便である。
・電気式調理容器3の種類,大きさに応じ、個別専用的に使用されるので、その分、製作コストが嵩む。
【0006】
《本発明について》
本発明の非接触給電装置は、このような実情に鑑み、上記従来技術の課題を解決すべくなされたものである。
そして本発明は、第1に、大小各種の電気式調理容器を、給電テーブルのどこに置いても給電可能であり、第2に、便利でありコスト面にも優れると共に、第3に、給電効率低下箇所の発生が抑制され、磁界の外部拡散も低減され、第4に、給電ヌルポイント等の発生が防止される、非接触給電装置を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
《各請求項について》
このような課題を解決する本発明の技術的手段は、特許請求の範囲の請求項1に記載したように、次のとおりである。
この非接触給電装置は、電磁誘導の相互誘導作用に基づき、キッチンや食卓の給電テーブル側に配された送電側回路の送電コイルから、電気式調理容器側に配された受電側回路の受電コイルに、非接触で電力を供給する調理用の非接触給電装置に関する。
そして該送電コイルは、径大なループ状に巻回されている。該受電コイルは、該送電コイルより径小なループ状に巻回されている。
該受電コイルは、給電に際し該送電コイルと上下の関係で対応位置し、該送電コイルの磁界位置内に置かれる。
該送電コイルは、偶数の複数の単位コイルの平面的集合体よりなり、多極構造をなしている。そして各該単位コイルは、直に並んで隣接配置された相互間で、電流の向きそして磁界の向きが逆となる設定よりなる。
【0008】
もって該送電コイルは、各該単位コイル毎に磁界が広く形成され、該受電コイルが、各該単位コイルの磁力の強いコイル線近くに多く位置するようになり、まず、給電効率低下箇所の発生抑制機能を発揮する。
これと共に、該送電コイルは径大であり、径小の該受電コイルとの大きな寸法差により、多量の磁界が外部拡散し易いが、偶数の各該単位コイルについて、隣接相互間で磁界の向きが逆となる設定に基づき、隣接磁界間の重なり部分の打ち消し合いにより、磁界外部拡散の低減機能を発揮する。
【0009】
更に、該送電コイルの磁界の向きが逆で隣接配置された各該単位コイル間に、該受電コイルが跨って位置すると、電磁結合が困難化する虞が発生する場合がある。
これに対し該受電コイルは、Xコイル,Yコイル,Zコイルの3方向コイルの立体的集合体よりなる。該Xコイルは、該電気式調理容器の左右側面に配設され、該Yコイルは、該電気式調理容器の前後側面に配設され、Zコイルは、該電気式調理容器の底面に配設されている。
もって上記場合でも、Xコイル,Yコイル,Zコイルの内、少なくとも一つが該送電コイルの単位コイルとの電磁結合機能を発揮する。
【0010】
《作用等について》
本発明は、このような手段よりなるので、次のようになる。
(1)給電に際し、電気式調理容器が給電テーブル上に置かれる。
(2)もって、電気式調理容器側の径小な受電コイルが、給電テーブル側の径大な送電コイルに対し、上下の関係で対応位置して磁界位置内に置かれる。
(3)このようにして、送電コイルと受電コイルが電磁結合され、給電テーブル側から電気式調理容器側に、電磁誘導の相互誘導作用に基づき磁界共振結合方式にて、電力が供給される。
(4)そこで、この調理用の非接触給電装置によると、次の第1〜第4のようになる。
第1に、送電コイルと受電コイルに、異径コイルを採用してなるので、電気式調理容器そして受電コイルは、その種類,大きさにかかわらず、給電テーブルそして送電コイル上のどこに置いても、給電可能となる。
第2に、もって使用が容易であり、構成も簡単である。
第3に、更に送電コイルを偶数の多極構造とし、各単位コイルの隣接相互間で磁界の向きを逆としたので、次のようになる。
(イ)給電効率低下箇所の発生が抑制されて、全体的,平均的に高い結合係数が得られ、結合係数に差が生じる事態は解消される。
(ロ)近隣周辺へと外部放射された電磁界は、重なり合い打ち消し合って弱められ、電磁波の外部拡散が低減される。
第4に、送電コイルを、多極構造とすると共に、更に受電コイルを、X,Y,Zコイルの立体的3方向コイルとしたので、電気式調理容器そして受電コイルが送電コイルの各単位コイル間に跨って位置した場合でも、いずれかのコイルが、送電コイルの単位コイルと電磁結合するようになる。もって結合係数の低下、特に給電ヌルポイント発生が回避される。
(5)そこで、本発明は次の効果を発揮する。
【発明の効果】
【0011】
《第1の効果》
第1に、大小各種の電気式調理容器を、給電テーブルのどこに置いても、給電可能である。
本発明の調理用の非接触給電装置において、電気式調理容器は、その種類,大きさにかかわらず、給電テーブル上のどこに置いても給電可能となる。受電コイルは、その種類,大きさにかかわらず、送電コイル上のどこに置いても給電可能である。
前述した従来例の非接触給電装置のように、電気式調理容器の種類,大きさに応じ、個別専用的に送電コイルそして給電台を、各種使用することを要しない。一つの送電コイル,給電テーブルで、各種の受電コイル,各種の電気式調理容器に対応可能である。
【0012】
《第2の効果》
第2に、便利であると共に、コスト面にも優れている。
本発明の調理用の非接触給電装置は、上述したように、一つの送電コイル,給電テーブルで、各種の受電コイル,各種の電気式調理容器に対応可能である。
前述した従来例のように、給電台そして送電コイルを、電気式調理容器そして受電コイルの種類,大きさに応じて、個別専用的に使用することを要しない。もって容易に使用でき、便利であり煩わしさが解消される。又、従来例のように、送電コイルや給電台の種類が多く、キッチンや食卓の邪魔になる事態も、解消される。
更に、電気式調理容器の種類,大きさに応じ、送電コイルや給電台を個別専用的に使用することを要しない。一つの送電コイルや給電テーブルを使用すれば良く、構成が簡単化され、その分、製作コストが軽減される。
【0013】
《第3の効果》
第3に、給電効率低下箇所の発生が抑制され、磁界の外部拡散も低減される。
本発明の調理用の非接触給電装置において、送電コイルを多極構造とし、各単位コイルの隣接相互間で磁界の向きを逆としたので、次の(イ),(ロ)のようになる。
(イ)給電効率低下箇所の発生が抑制される。送電コイルが多極化されていない場合のように、受電コイルが送電コイルのコイル線近くに位置するか否かで、結合係数に差が生じる事態は解消される。全体的,平均的に高い結合係数が得られ、給電効率に優れるようになる。
(ロ)磁界の外部拡散が低減される。送電コイルの偶数の各単位コイルから向きが逆となって形成され、近隣周辺へと外部放射された電磁界は、重なり合い打ち消し合って弱められる。このような送電コイルによる磁場封じ込めにより、外部拡散される電磁波が大幅低減される。
送電コイルが多極化されていない場合のように、径小の受電コイルとの間の寸法差に基づき、多量の電磁波が外部拡散される事態は解消され、近隣周辺に電磁波障害を引き起こす危険は、防止される。
【0014】
《第4の効果》
第4に、給電ヌルポイント等の発生が防止される。
すなわち、本発明の調理用の非接触給電装置において、送電コイルを多極構造とすると共に、受電コイルを、X,Y,Zの3方向コイルにて立体的に構成したので、次のようになる。
立体的でない平面的な受電コイルの場合は、多極構造の送電コイルの誘起磁界の向きが逆の隣接単位コイル間に跨って位置すると、結合係数が低下する。特に、結合係数がゼロとなり、給電不能となる給電ヌルポイント発生の虞がある。
これに対し、3方向コイルとしたので、電気式調理容器そして受電コイルの置かれる位置,方向にかかわらず、最低でも1つが送電コイルと電磁結合され、結合係数の低下は回避される。結合係数がゼロとなり、給電不能となる給電ヌルポイントの発生は、回避される。
このように、この種従来技術に存した課題がすべて解決される等、本発明の発揮する効果は、顕著にして大なるものがある。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について、詳細に説明する。
《非接触給電装置6について》
まず、本発明の前提となる非接触給電装置6について、
図1の(3)図,(4)図,
図2の(1)図,(2)図等を参照して、一般的に説明しておく。
この調理用の非接触給電装置6は、電磁誘導の相互誘導作用に基づき、キッチンや食卓のテーブルA側に配された送電側回路7の送電コイル8から、電気式調理容器9側に配された受電側回路10の受電コイル11に、電気的に非接触で電力を供給する。
【0017】
これらについて、更に詳述する。まず、1次側の送電側回路7は、キッチンや食卓のテーブルA側の給電テーブル12に配設される。給電テーブル12は、テーブルAに一体的に組み込まれている場合もあるが、別体として置かれている場合もある。2次側の受電側回路10は、電気式調理容器9側に配設される。
電気式調理容器9としては、例えばミキサー,湯わかしポット,コーヒーメーカ,蒸し器,パン焼き器,電気保温ポット,電気保温カップ,電気保温鍋,電気保温皿,電気保温丼,etc.その他各種のものが可能である。飲食物を加熱,料理,調製,保温,保冷等する各種の調理器具が対象となる。
電気式調理容器9は、使用に際し、給電テーブル12上に置かれる。もって、電気式調理容器9側の受電側回路10の受電コイル11が、給電テーブル12側の送電側回路7の送電コイル8上に、対応位置せしめられる。
受電コイル11と送電コイル8とは、電気式調理容器9底部や給電テーブル12頂部を形成する樹脂材等を介し、ワイヤレスつまり電気的に非接触で、対応位置する。磁化されず磁界の影響を受けない非磁性,非導電性,高電気抵抗材である樹脂材等を介し、対応位置する。
【0018】
1次側の送電側回路7において、送電コイル8は高周波電源13に接続されている。高周波電源13は、高周波への周波数等変換用インバータ等よりなり、例えば数kHz〜数10kHz〜数100kHz程度の高周波交流を、送電コイル8に向けて通電する。
2次側の受電側回路10において、受電コイル11は、負荷14に接続されている。受電コイル11からの出力は、図示例では、コンバータ15にて交流が直流に変換された後、負荷14に供給される。勿論、負荷14が、図示例のようなモーター等の直流抵抗ではなく、例えばヒーター等の交流抵抗の場合は、そのまま供給される。
送電側回路7には、並列共振用の並列コンデンサ16が設けられ、受電側回路10にも、並列共振用の並列コンデンサ17が設けられている。送電コイル8と並列コンデンサ16、受電コイル11と並列コンデンサ17は、それぞれ共振回路を形成しており、共振により電力供給量の増大が図られている。
なお、更に直列共振用の直列コンデンサを用いることも考えられるが、共振回路としては、並列共振用の並列コンデンサ16,17のみの使用、又は、直列共振用の直列コンデンサのみの使用も可能である。
そして、両並列共振回路の共振周波数が等しく設定されると共に、送電側回路7の高周波電源13の電源周波数も、共振周波数と等しく揃えられている。
【0019】
電磁誘導の相互誘導作用については、次のとおり。給電に際しては、送電コイル8と受電コイル11とが、非接触ギャップを存しつつ対応位置せしめられる。そして送電コイル8での磁束形成により、受電コイル11に誘導起電力を生成させ、もって送電コイル8から受電コイル11に電力を供給することは、公知公用である。
すなわち送電コイル8に、高周波電源13からの給電交流を、共振電流,励磁電流として印加,通電することにより、自己誘導起電力が発生して磁界が送電コイル8の周囲に生じ、磁束φがコイル面に対して直角方向に形成される。そして形成された磁束φが、受電コイル11を貫き鎖交することにより、誘導起電力が生成され磁界が誘起される。
このように誘起される磁界を利用して、数kW以上〜数10kW〜数100kW程度の電力供給が可能となっている。送電コイル8側の磁束φの磁気回路と、受電コイル11側の磁束φの磁気回路は、相互間にも磁束φの磁気回路つまり磁路φが形成されて、電磁結合される。
この非接触給電装置6では、このような電磁誘導の相互誘導作用に基づき、非接触給電が行われるが、磁界共振結合方式(磁界共鳴方式)が併用されている。すなわち、前述したように共振周波数,電源周波数を揃えることにより、送電コイル8と受電コイル11間について、磁界共振(磁界共鳴)現象が生じ、もって、更なる非接触ギャップ拡大が可能となっている。
非接触給電装置6について、一般的説明は以上のとおり。
【0020】
《第1例(前提例)について》
以下、本発明の調理用の非接触給電装置6について、説明する。まず、本発明について、
図1,
図2に示した第1例(前提例)を参照して説明する。
この非接触給電装置6では、異径コイルが採用されており、送電コイル8は、径大なループ状に巻回されており、受電コイル11は、送電コイル8より径小なループ状に巻回されている。
そして受電コイル11は、給電に際し、送電コイル8と上下の関係で対応位置し、送電コイル8の磁界位置内に置かれる。
【0021】
これらについて、更に詳述する。送電コイル8や受電コイル11は、スパイラル円環状,方形環状,その他の環状,ループ状をなして巻回されている。
そして送電コイル8は、受電コイル11より大きな設定よりなる。すなわち送電コイル8の巻径は、受電コイル11の巻径の数倍程度、例えば5〜6倍程度よりなるが、2倍〜20倍程度とすることも考えられる。
受電コイル11の巻径は、対象となる電気式調理容器9の種類,大きさにより、大小様々であるが(
図1の(4)図を参照)、送電コイル8の巻径は、これらを余裕をもって複数載せることが可能なエリアをカバーしている。つまり送電コイル8の巻径は、受電コイル11の巻径より遥かに大きい設定よりなる。
なお、送電コイル8の巻回軸と受電コイル11の巻回軸とは、図示のように平行とするのが、給電上最も効率的である。
【0022】
前述したように、送電コイル8は、給電テーブル12の下側に組み込まれ,配設される。受電コイル11は、電気式調理容器9の下側,底部側に組み込まれ,配設されている。もって、上述した送電コイル8と受電コイル11との径関係に準じ、給電テーブル12は、電気式調理容器9より遥かに大きい設定よりなる。
そして給電に際し、電気式調理容器9が給電テーブル12上に置かれることにより、電気式調理容器9側の径小な受電コイル11が、給電テーブル12側の径大な送電コイル8に対し、上下の関係で接近した非接触ギャップ距離のもとで対応位置する。電気式調理容器9は、必要に応じ適宜選択され、単数又は複数が給電テーブル12上に置かれる。
非接触給電装置6では、このようにして、径小な受電コイル11が、径大な送電コイル8上、つまり送電コイル8の巻回エリア内上、送電コイル8の磁界位置内に置かれ、もって、両者が電磁結合されて給電が行われる。
【0023】
《第2例(送電コイル)について》
次に、
図3に示した第2例(送電コイル)について、説明する。
この非接触給電装置6は、送電コイル8に特徴が存する。すなわち送電コイル8は、多極構造よりなり、複数の単位コイル18の平面的集合体よりなる。各単位コイル18は、直に並んで隣接配置された相互間で、電流の向きそして磁界の向きが逆となる設定よりなる。
もって送電コイル8は、各単位コイル18毎に形成される磁界により、給電効率低下箇所の発生抑制機能を発揮する。又、隣接磁界間の重なり部分の打ち消し合いにより、磁界外部拡散の低減機能を発揮する。
【0024】
これらについて、更に詳述する。まず、前述した第1例(前提例)の非接触給電装置6については、次の(イ),(ロ)の点が指摘される(
図1を参照)。
(イ)受電コイル11が送電コイル8の中央a付近に位置する場合と、周辺b付近に位置する場合とでは、両者の電磁結合の結合係数が、数倍以上の差で大きく異なるようになる、という指摘があった。
例えば、送電コイル8と受電コイル11の径が6:1の場合、結合係数に5倍程度の差が生じていた。受電コイル11が中央a付近に位置する場合、つまり送電コイル8のコイル線19から離れて位置する場合は、コイル線19からの磁力が弱く、給電効率が悪かった。これに対し、周辺b付近つまり送電コイル8のコイル線19近くに位置する場合は、コイル線19からの磁力が強く、給電効率が良かった。
このように
図1の第1例(前提例)の非接触給電装置6にあっては、結合係数,給電効率が一様でなくムラが生じ易かった。
(ロ)第1例(前提例)の非接触給電装置6にあっては、多量の電磁波が外部拡散され易い、という指摘もあった。
すなわち、送電コイル8と受電コイル11に大きな径差,寸法差があるので、給電に際し、送電コイル8にて形成される電磁界により、電磁波が強い強度で外部拡散されてしまう虞があった。送電コイル8にて形成される電磁界について、受電コイル11と電磁結合されることなく、多量に外部放射されてしまう虞があった。
【0025】
これに対し、
図3に示した第2例(送電コイル)の非接触給電装置6にあっては、まず送電コイル8を、磁極が偶数の多極構造とする。
すなわち送電コイル8を、ループ状に巻回された偶数の単位コイル18の集合体とする。
図3の(1)図,(2)図の例は、円を放射状に均等区画した、8個の単位コイル18の集合体とする。
図3の(3)図の例は、均等区画された8個の正方形の単位コイル18の集合体とする。
そして、このような各単位コイル18について、直に並んで隣接配置された相互間で、それぞれのコイル線19の電流の向きが、逆に設定されている。
【0026】
《第2例(送電コイル)の送電コイル8の機能》
図3の第2例(送電コイル)の非接触給電装置6の送電コイル8は、各単位コイル18の多極構造を採用したことにより、次の(イ),(ロ)の機能を発揮する。
(イ)上述した多極構造により、給電効率低下箇所の発生抑制機能が発揮される。
前述した第1例(前提例)のように、送電コイル8が多極化されていないので、受電コイル11の位置により結合係数に差が生じる事態は、解消される。
送電コイル8が各単位コイル18に多極化されている分だけ、つまり発生磁力が各単位コイル18の分だけ、より広く設定される。もって、受電コイル11が、単位コイル18のコイル線19近くに、より多く位置するようになるので、全体的,平均的にムラなく一様に結合係数が高くなり、給電効率に優れるようになる。
【0027】
(ロ)上述した多極構造により、磁界外部拡散の低減機能が発揮される。
前述した第1例(前提例)のように、給電に際し、送電コイル8にて形成される電磁界にて、電磁波が多量に強力に外部拡散される虞は低減される。
すなわち、送電コイル8の各単位コイル18は、直に並んで隣接配置された相互間で、電流の向きが逆となっている。
もって、隣り合って隣接配置された単位コイル18相互間で、磁極のN極とS極が逆となり、それぞれ形成される高周波電磁界(交流変動電磁界)の向きも逆となる。
図3の(1)図の例では、破線表示が電流の流れ方向を示し、プラス方向の高周波電磁界が右回り、マイナス方向の高周波電磁界が左回りとなっている。
そこで、近接周辺へと外部放射された高周波電磁界は、近隣周辺においては、重なりあい打ち消し合って相殺され、密度が大幅低下し弱められる。もって、近隣周辺への拡散される電磁波強度が、大幅に低減されるようになる。
第2例(送電コイル)については、以上のとおり。
【0028】
《第3例(受電コイル)について》
次に、
図4,
図5に示した第3例(受電コイル)の非接触給電装置6について、説明する。
この非接触給電装置6は、受電コイル11に特徴が存する。まず前提として、送電コイル8は、前述した第2例(送電コイル)の多極構造のものが使用される。
これと共に受電コイル11が、Xコイル20,Yコイル21,Zコイル23の3方向コイルの立体的集合体よりなる。
そしてXコイル20は、電気式調理容器9の左右側面に配設される。Yコイル21は、電気式調理容器9の前後側面24に配設される。Zコイル22は、電気式調理容器9の底面25に配設される。
【0029】
これらについて、更に詳述する。まず、前述した第2例(送電コイル)の非接触給電装置9については、次の点が指摘される。
電気式調理容器式9そして受電コイル11を置く位置によっては、給電ヌルポイント(null point)が、発生する虞がある(
図3の(2)図を参照)。
すなわち給電に際し、受電コイル11が、送電コイル8の単位コイル18の内側cに位置すると、高い結合係数が得られる。これに対し受電コイル11が、境界dに位置すると結合係数が低下し、結合係数がゼロとなり給電不能となる、給電ヌルポイント発生の虞がある。
すなわち受電コイル11が、送電コイル8の隣接する単位コイル18間に跨って位置すると、隣接単位コイル18でそれぞれ誘起形成される磁界の向きが逆のため、両者の電磁結合に支障が生じるようになる。
特に図示したように、隣接する両単位コイル18の境界d上に、受電コイル11の中央が跨って位置すると、受電コイル11にとって磁界の向きが半々ずつ逆となり、磁界が打ち消し合ってゼロとなる。もって、送電コイル8つまり単位コイル18と、受電コイル11との間の電磁結合が不成立となり、結合係数がゼロとなってしまう。
【0030】
そこで、
図4に示した第3例(受電コイル)の非接触給電装置6にあっては、受電コイル11として、三方向コイルを立体的に採用してなる。
これまでの受電コイル11は、平面的に巻回された単一コイルよりなっていたのに対し、この第3例(受電コイル)では、Xコイル20,Yコイル21,Zコイル22の三方向コイルを、立体的に組み合わせて採用してなる。
【0031】
すなわちXコイル20は、電気式調理容器9の左右側面23の片面(図示例)又は両面に、配設される。Yコイル21は、電気式調理容器9の前後側面24の片面(図示例)又は両面に、配設される。Zコイル22は、電気式調理容器9の底面25に、配設される。なお、X,Yコイル20,21を両面配設すると、給電効率が一段と向上する。図中26は頂面である。
代表例としては、3次元の直交座標系として、電気式調理容器9の縦面の前後側面24と、横面の左右側面23とが直交し、前後側面24および左右側面23と、奥行面の底面25とが直交する。Xコイル20がX軸コイルとなり、Yコイル21がY軸コイルとなり、Zコイル22がZ軸コイルとなる。
又、電気式調理容器9について上記各面が形成されている場合は、X,Y,Zコイル20,21,22は、形成されているそれぞれの面に配設される。これに対し、電気式調理容器9について上記各面のすべて又は一部が形成されていない場合は、電気式調理容器9に不足面が付設されると共に、付設された面に、X,Y,Zコイル20,21,22のすべて又は一部が配設される。
【0032】
《第3例(受電コイル)の受電コイル11の機能》
図4の第3例(受電コイル)の非接触給電装置6の受電コイル11は、このようなX,Y,Zコイル20,21,22を採用したことにより、次の機能を発揮する。
電気式調理容器9が、給電テーブル12上に置かれる位置,方向にかかわらず、つまり受電コイル11が、送電コイル8の単位コイル18上に置かれる位置,方向にかかわらず、給電に際し結合係数の低下は、回避される。電磁結合の困難化、そして結合係数がゼロとなる給電ヌルポイントの発生は、回避される。
すなわち、置かれ位置,方向にかかわらず、受電コイル11のX,Y,Zコイル20,21,22の内、少なくとも一つのコイルが、送電コイル8の単位コイル18と、電磁結合されるようになる。
特に、Zコイル22が、送電コイル8の隣接単位コイル18間の境界dに跨って位置し、Zコイル22について、電磁結合が困難化した場合でも(
図3の(2)図を参照)、X,Yコイル20,21について電磁結合が成立可能となる。
【0033】
例えば、
図4の(5)図に示したように、送電コイル8の単位コイル18について、放射方向に向けられた各コイル線19
1,19
2,19
3については、次のとおり。
まず各コイル線19
1,19
2,19
3共に、Zコイル22の中央下を通過しているので、Zコイル22との電磁結合はない。
これに対し、受電コイル11のXコイル20,Yコイル21の一方又は両方については、電磁結合が発生する。すなわち、コイル線19
1については、Xコイル20のみが電磁結合し、コイル線19
2については、Yコイル21のみが電磁結合し、コイル線19
3については、Xコイル20およびYコイル21が電磁結合する。
なお
図5は、
図3例の受電側回路10の回路図である。
図5の(1)図は、負荷14が交流抵抗の例であり、X,Y,Zコイル20,21,22から各負荷14に、給電が直接行われる。
図5の(2)図は、負荷14が直流抵抗の例であり、X,Y,Zコイル20,21,22から、ダイオードの整流コンバータ15を介して、給電される。
第3例(受電コイル)については、以上のとおり。
【0034】
《作用等》
本発明の調理用の非接触給電装置6は、以上説明したように構成されている。そこで以下のようになる。
(1)給電に際しては、単数又は複数の電気式調理容器9が、給電テーブル12上に載せられる(
図1の(4)図を参照)。
【0035】
(2)もって、電気式調理容器9側の受電側回路10の径小な受電コイル11が、給電テーブル12側の送電側回路7のより径大な送電コイル8に対し、上下の関係で対応位置し、送電コイル8の磁界位置内の内側に置かれる(
図1の各図を参照)。
【0036】
(3)この調理用の非接触給電装置6では、このようにして、送電コイル8と受電コイル11とが、電磁結合され、送電側回路7から受電側回路10に、高周波電力が供給される。
すなわち、給電テーブル12側から電気式調理容器9側に、電磁誘導の相互誘導作用に基づき磁界共振結合方式にて、電気的に非接触で非接触ギャップ距離を存しつつ、高周波電力が授受される(
図1,
図2の各図を参照)。
【0037】
(4)さてそこで、この調理用の非接触給電装置6によると、次の第1,第2,第3,第4のようになる。
第1に、この非接触給電装置6では、送電コイル8と受電コイル11について、異径コイルを採用してなる。受電コイル11は、その種類,大きさにかかわらず、より径大な送電コイル8上のどこに置いても、給電可能である(
図1を参照)。
つまり電気式調理容器9は、その種類,大きさにかかわらず、給電テーブル12上のどこに置いても、給電可能となる。
【0038】
第2に、この非接触給電装置6は、異径コイルを基本とした構成よりなり、一つの送電コイル8,給電テーブル12で、各種の受電コイル11,電気式調理容器9に、対応可能である。もって、使用が容易で便利であり、邪魔にもならず、構成も簡単化される。
【0039】
第3に、この非接触給電装置6において、更に、前述した第2例(送電コイル)(
図3を参照)のように、送電コイル8を、偶数の複数の単位コイル18よりなる多極構造とすると共に、各単位コイル18について、隣接相互間で電流,磁界の向きを逆としたので、次の(イ),(ロ)のようになる。
(イ)送電コイル8が、各単位コイル18に多極化されているので、その分だけ、発生磁力がより広いエリアでより広く設定され、受電コイル4が、コイル線19近くにより多く位置するようになる。もって、全体的,平均的に高い結合係数が得られ、給電効率に優れるようになる。このように、この送電コイル8は、給電効率低下箇所の発生抑制機能を発揮する。
(ロ)送電コイル8の各単位コイル18は、それぞれ形成される電磁界の向きが逆となっている。そこで、近隣周辺へと外部放射された電磁界は、重なり合い打ち消し合って弱められる。
もって外部拡散される電磁波が、大幅低減される。このようにこの送電コイル8は、磁界外部拡散の低減機能,磁場封じ込め機能を発揮する。
【0040】
第4に、非接触給電装置6において、送電コイル8の上述した多極構造に加え、更に、前述した第3例(受電コイル)(
図4を参照)のように、受電コイル11を、X,Y,Zコイル20,21,22の立体的3方向コイルの組み合わせとして構成したので、次のようになる。
電気式調理容器9そして受電コイル11の置かれる位置,方向にかかわらず、X,Y,Zコイル20,21,22の内、一つ以上が、送電コイル8の単位コイル18と電磁結合されるようになる。
多極構造の送電コイル8について、誘起磁界の向きが逆の隣接単位コイル18間に跨って位置した場合でも、受電コイル11のX,Y,Zコイル20,21,22の内、少なくとも一つが、送電コイル8の単位コイル18と電磁結合する。
もって給電に際し、送電コイル8と受電コイル11間の結合係数が低下する事態は、回避される。特に、結合係数がゼロとなり給電不能となる、給電ヌルポイントの発生は、回避される。
作用等については、以上のとおり。