特許第6599268号(P6599268)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6599268
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】トンネルの内面に溝を形成する方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/00 20060101AFI20191021BHJP
【FI】
   E21D11/00 Z
【請求項の数】2
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-48364(P2016-48364)
(22)【出願日】2016年3月11日
(65)【公開番号】特開2017-160744(P2017-160744A)
(43)【公開日】2017年9月14日
【審査請求日】2018年12月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(74)【代理人】
【識別番号】100080296
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】森 康雄
(72)【発明者】
【氏名】大本 晋士郎
【審査官】 石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−155090(JP,A)
【文献】 特開平06−081586(JP,A)
【文献】 特開昭61−172998(JP,A)
【文献】 特開2012−158875(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102012020303(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/00
E01C 23/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削装置と、トンネルの延長方向に沿ったトンネルの中心軸と直交するトンネル横断面上において両端がそれぞれトンネルの内面の異なる地点で交差する直線軸であるX軸に沿って切削装置の切削刃を移動させるX軸ガイド装置と、前記X軸と直交し、かつ、トンネルの内面と交差する直線軸であるY軸に沿って切削装置の切削刃を移動させるY軸ガイド装置と、を備えた溝形成装置を用い、
切削刃をX軸ガイド装置のX軸ガイド体及びY軸ガイド装置のY軸ガイド体でガイドしながらX軸及びY軸に沿って移動させることによって、トンネルの延長方向に沿ったトンネルの中心軸と直交するトンネル横断面上のトンネルの内面の弧面に沿った弧状に延長する溝を形成したことを特徴とするトンネルの内面に溝を形成する方法。
【請求項2】
X軸ガイド体の延長方向の両端をトンネル横断面上におけるトンネルの内面の異なる地点にそれぞれ接触させた状態で、切削刃をX軸ガイド体及びY軸ガイド体でガイドしながらX軸及びY軸に沿って移動させることによって、トンネルの延長方向に沿ったトンネルの中心軸と直交するトンネル横断面上のトンネルの内面の弧面に沿った弧状に延長する溝を形成したことを特徴とする請求項1に記載のトンネルの内面に溝を形成する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネルの内面に当該内面の周方向に延長する溝を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バックホーのアームの先端に切削刃としての回転刃を備えた機械を用いて、トンネルの内面に溝を形成する方法が知られている(例えば特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−322897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された方法では、バックホーのオペレータが、バックホーのブーム、アーム、回転刃の伸縮装置の夫々の動きを随時調節しながら、トンネルの内面に当該内面の周方向に延長する溝を形成するので、バックホーのブーム、アーム、回転刃の伸縮装置の夫々の動きを随時調節する操作が難しく、回転刃がトンネルの延長方向に沿った方向に振れやすいので、トンネルの延長方向に沿ったトンネルの中心軸と直交するトンネル横断面上のトンネルの内面に沿った弧状に延長する溝を正確に形成することが難しい。
本発明は、切削刃がトンネルの延長方向に沿った方向に振れにくい構造の溝形成装置を用いることによって、トンネルの延長方向に沿ったトンネルの中心軸と直交するトンネル横断面上のトンネルの内面に沿った弧状に延長する溝を簡単かつ正確に形成できるようにしたトンネルの内面に溝を形成する方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るトンネルの内面に溝を形成する方法によれば、切削装置と、トンネルの延長方向に沿ったトンネルの中心軸と直交するトンネル横断面上において両端がそれぞれトンネルの内面の異なる地点で交差する直線軸であるX軸に沿って切削装置の切削刃を移動させるX軸ガイド装置と、前記X軸と直交し、かつ、トンネルの内面と交差する直線軸であるY軸に沿って切削装置の切削刃を移動させるY軸ガイド装置と、を備えた溝形成装置を用い、切削刃をX軸ガイド装置のX軸ガイド体及びY軸ガイド装置のY軸ガイド体でガイドしながらX軸及びY軸に沿って移動させることによって、トンネルの延長方向に沿ったトンネルの中心軸と直交するトンネル横断面上のトンネルの内面の弧面に沿った弧状に延長する溝を形成したので、X軸ガイド装置により切削刃がトンネルの延長方向に沿った方向に振れにくくなり、操作も簡単になるので、トンネルの延長方向に沿ったトンネルの中心軸と直交するトンネル横断面上のトンネルの内面の弧面に沿った弧状に延長する溝を簡単かつ正確に形成できるようになる。
また、X軸ガイド体の延長方向の両端をトンネル横断面上におけるトンネルの内面の異なる地点にそれぞれ接触させた状態で、切削刃をX軸ガイド体及びY軸ガイド体でガイドしながらX軸及びY軸に沿って移動させることによって、トンネルの延長方向に沿ったトンネルの中心軸と直交するトンネル横断面上のトンネルの内面の弧面に沿った弧状に延長する溝を形成したので、X軸ガイド体が安定し、トンネルの延長方向に沿ったトンネルの中心軸と直交するトンネル横断面上のトンネルの内面の弧面に沿った弧状に延長する溝をより正確に形成できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】トンネルの内面に溝を形成する方法を示す図。
図2】トンネルの内面に溝を形成する方法に使用する溝形成装置を示す図。
図3】補強構造をブロック材積みトンネルの中心軸と直交する断面で示す図。
図4】補強構造をブロック材積みトンネル覆工部の内側から見て示す斜視図。
図5】ブロック材積みトンネル覆工部の補強構造を示す分解斜視図。
図6】補強板位置決め部材の固定構造を示す断面図。
図7】補強板の固定方法の例を示す断面図。
図8】補強構造をブロック材積みトンネル覆工部の内側から見て示す正面図。
図9】補強板の固定方法の例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
実施形態に係るトンネルの内面に溝を形成する方法は、図1に示すように、切削装置110と、トンネル99の延長方向に沿ったトンネルの中心軸と直交するトンネル横断面上において両端がそれぞれトンネル99の弧状の内面3の異なる地点で交差する直線軸であるX軸に沿って切削装置110の切削刃としての回転刃111を移動させるX軸ガイド装置120と、前記X軸と直交し、かつ、トンネル99の内面3と交差する直線軸であるY軸に沿って回転刃111を移動させるY軸ガイド装置130と、を備えた溝形成装置100を用い、回転刃111をX軸ガイド装置120のX軸ガイド体123及びY軸ガイド装置130のY軸ガイド体でガイドしながらX軸及びY軸に沿って移動させることで、回転刃111がX軸ガイド体123によってトンネル99の延長方向に沿った方向に振れにくい状態として、トンネル99の延長方向に沿ったトンネル99の中心軸と直交するトンネル横断面上のトンネル99の内面3の弧面に沿った弧状に延長する溝4(図5参照)を形成するようにしたので、当該溝4を簡単かつ正確に形成できる。
尚、図1において、XはX軸、YはY軸を示す。
【0008】
図2に基づいて、溝形成装置100について詳説する。
溝形成装置100は、切削装置110と、切削装置110の回転刃111のX軸方向に沿った直線移動をガイドするX軸ガイド装置120と、切削装置110の回転刃111のY軸方向に沿った直線移動をガイドするY軸ガイド装置130と、固定部140と、支持装置150とを備えた構成である。
【0009】
切削装置110は、回転刃111と、回転刃111の回転中心軸112を回転中心として回転刃111を回転させるための回転駆動力を回転中心軸112に付与する図外の回転駆動源と、当該回転駆動源を制御する図外の制御装置とを備えた構成である。
回転刃111は、例えば、円板の外周面に鋸刃を備え、円板の中心を回転中心として回転するように設けられた丸鋸である。回転刃111としては、例えば、コンクリート、レンガ、石等を切断可能な材質のものを用いる。
回転駆動源は、例えば、モーターである。
【0010】
X軸ガイド装置120は、回転刃111のカバー113に取付けられた取付体121と、当該取付体121をX軸方向に沿って移動可能にガイドするX軸ガイド機構と、当該X軸ガイド機構の駆動部に駆動力を付与する図外の駆動源と、当該駆動源を制御する図外の制御装置とを備えた構成である。
X軸ガイド機構は、X軸ガイド体123と、取付体121をX軸ガイド体123上で移動させる移動力伝達機構124とを備えた構成である。
X軸ガイド体123は、後述するヘッドベース151に取付けられてX軸に沿った方向に延長する長尺部材により形成される。
移動力伝達機構124は、例えば、X軸ガイド体123にX軸に沿った方向に延長するように設けられたラック125と、当該ラック125に噛み合って当該ラック125上をX軸に沿った方向に往復移動可能なように取付体121に設けられたピニオン126とを備えた構成である。
尚、取付体121は、X軸ガイド体123に設けられた図外のガイドレールと当該ガイドレールに支持されて移動可能なように取付体121に設けられた図外のスライダーとによって、X軸ガイド体123上をX軸に沿った方向に往復移動可能なようにX軸ガイド体123に支持されている。
即ち、取付体121には回転刃111のカバー113が取付けられ、カバー113には回転刃111、回転中心軸112、図外の回転駆動源がY軸ガイド装置130によってY軸に沿った方向に移動可能なように取付けられているので、X軸ガイド機構の駆動部を駆動することで、回転刃111がX軸に沿って移動可能な構成とされている。
X軸ガイド装置120の駆動源は、例えば、上述した駆動部としてのピニオン126に回転力を付与するモーターである。
【0011】
Y軸ガイド装置130は、切削装置110の回転刃111、回転中心軸112、回転駆動源をY軸上でガイドするY軸ガイド機構と、当該Y軸ガイド機構の駆動部に駆動力を付与する図外の駆動源と、当該駆動源を制御する図外の制御装置とを備えた構成である。
Y軸ガイド機構は、Y軸ガイド体と、切削装置110の回転刃111、回転中心軸112、回転駆動源をY軸ガイド体上で移動させる移動力伝達機構131とを備える。
Y軸ガイド体は、例えば、Y軸に沿った方向に延長するように回転刃111のカバー113の前面136又は後面に形成されたY軸溝132と、当該Y軸溝132を貫通するように配置された回転刃111の回転中心軸112及び当該回転中心軸112を回転可能に支持する軸受装置133をY軸溝132のY軸方向に沿って移動可能に支持する図外の支持部材とを備えた構成である。
移動力伝達機構131は、例えば、回転刃111の回転中心軸112を回転可能に支持する軸受装置133をY軸溝132のY軸に沿った方向に移動させることにより、回転中心軸112及び当該回転中心軸112に連結された回転刃111、並びに回転駆動源をY軸溝132のY軸に沿った方向に移動させる滑車装置、又は、ピストンシリンダー装置、又は、コンベヤ装置等により構成される。
Y軸ガイド装置130の駆動源は、例えば、上述した滑車装置のロープの巻取装置を駆動させるモーター、上述したピストンシリンダー装置のシリンダーへのオイル、エア等の動作流体の給排を行う動作流体給排装置、コンベヤ装置の駆動プーリー等の駆動部に回転力を付与するモーター等である。
【0012】
尚、回転刃111のカバー113は、例えば、X軸ガイド体123の後方(図2の紙面の後方)に配置される。
当該回転刃111のカバー113は、例えば、前面136及び当該前面136と対向する後面が正四角形又は正四角形に近い四角形状に形成され、前面136及び後面の互いに向かい合う左辺同士、下辺同士、右辺同士が、それぞれ側板で連結されて構成された上部開口115の四角形筺体により構成される。
回転刃111のカバー113は、例えば、図2の紙面と直交する方向の幅寸法(前面131と後面と対向間寸法)が前面136の各辺の長さ寸法よりも短い寸法に形成された前後幅薄の四角形立法体形状の中空体の上部が開口された構成であり、Y軸ガイド機構の駆動部を駆動することで回転刃111が当該上部開口115を介してカバー113の内側及び外側に移動可能に構成されている。
【0013】
固定部140は、例えば、固定ベース板141と、固定ベース板141より立ち上がるように設けられた支柱142とを備える。
【0014】
支持装置150は、固定部140に取付けられてX軸ガイド装置120のX軸ガイド体123をY軸に沿った方向に移動可能に支持するとともに、X軸ガイド体123を揺動可能に支持する装置である。
支持装置150は、X軸ガイド体123が取付けられたヘッドベース151と、X軸ガイド体123が取付けられたヘッドベース151をY軸に沿った方向に移動させるヘッドベース移動装置155と、ヘッドベース支持装置156とを備える。
ヘッドベース支持装置156は、ヘッドベース側揺動支持装置157と、取付部材側揺動支持装置158とを備える。
尚、ヘッドベース151は、例えば、X軸ガイド体123のX軸延長方向両端間の中央側に設けられたX軸に沿った方向に延長する部材により形成され、X軸ガイド体123は、例えば、ヘッドベース151の後面(図2の紙面の後方に位置する面)に取付けられている。
【0015】
ヘッドベース移動装置155は、例えば、ロッドレスシリンダー161と、ロッドレスシリンダー161の側面より突出するように設けられた往復移動体162に取付けられて往復移動可能となった支持ロッド163と、ロッドレスシリンダー161を固定部140の支柱142に取付けるための取付部材164と、ロッドレスシリンダー161を駆動させる図外の駆動源と、当該駆動源を制御する図外の制御装置とを備え、支持ロッド163の上端(一端)が上部ヒンジ機構170を介してヘッドベース151に取付けられるとともに、取付部材164の下端(一端)が下部ヒンジ機構171を介して固定部140の支柱142に取付けられている。
そして、ヘッドベース151がヘッドベース側揺動支持装置157により上部ヒンジ機構170を回転中心として揺動可能に構成され、かつ、ロッドレスシリンダー161が取付部材側揺動支持装置158により下部ヒンジ機構171を回転中心として揺動可能に構成されている。
上部ヒンジ機構170は、ヘッドベース151におけるX軸延長方向両端間の中央部に設けられ、下部ヒンジ機構171は固定部140の支柱142の上端に設けられている。
ロッドレスシリンダー161の駆動源は、ロッドレスシリンダー161へのオイル、エア等の動作流体の給排を行う動作流体給排装置である。
ロッドレスシリンダー161を駆動させて往復移動体162に取付けられた支持ロッド163をY軸に沿った方向に往復移動させることで、ヘッドベース151、X軸ガイド体123、回転刃111をY軸に沿った方向に往復移動させることができる。
【0016】
ヘッドベース側揺動支持装置157は、例えば、シリンダーの一端が支持ロッドにヒンジを介して取付けられ、ピストンロッドの一端がヘッドベース151におけるX軸延長方向一端側にヒンジを介して取付けられた一端側アブソーバ165と、シリンダーの一端が支持ロッドにヒンジを介して取付けられ、ピストンロッドの一端がヘッドベース151におけるX軸延長方向他端側にヒンジを介して取付けられた他端側アブソーバ166とから成る一対のアブソーバが、図2の紙面と直交する方向に間隔を隔てて2組設けられた構成、即ち、4つのアブソーバ(ダンパー)により構成される。
当該ヘッドベース側揺動支持装置157を備えているので、ヘッドベース移動装置155を駆動してヘッドベース151及びX軸ガイド体123をトンネル99の内面3に近付けるように移動させた場合、X軸ガイド体123の延長方向の一方の端が他方の端よりも先に内面3に接触した際の反力によってX軸ガイド体123がヘッドベース側揺動支持装置157の緩衝機能により上部ヒンジ機構170を回転中心として徐々に揺動してX軸ガイド体123の延長方向の他方の端が内面3に接触するので、X軸ガイド体123が内面に接触する際の内面3への衝撃を少なくでき、内面3の損傷を防止できる。
尚、ヘッドベース側揺動支持装置157のアブソーバの減衰力は、X軸ガイド体123に外力が加わっていない状態、及び、X軸ガイド体123に小さい外力しか加わっていない状態では、X軸ガイド体123を揺動させず、かつ、X軸ガイド体123の延長方向の一方の端が他方の端よりも先に内面3に接触した際の反力を受けた場合にX軸ガイド体123を徐々に揺動させることが可能なように、高めに設定してある。
【0017】
取付部材側揺動支持装置158は、例えば、駆動機構としてのピストンシリンダー装置群と、当該ピストンシリンダー装置群の駆動源と、当該駆動源を制御する図外の制御装置とを備えた構成である。
ピストンシリンダー装置群は、例えば、シリンダー167aが固定部140の固定ベース板141におけるX軸延長方向一端側にヒンジを介して取付けられ、ロッド167bが取付部材164にヒンジを介して取付けられた一端側ピストンシリンダー装置167と、シリンダー168aが固定部140の固定ベース板141におけるX軸延長方向他端側にヒンジを介して取付けられ、ロッド168bが取付部材164にヒンジを介して取付けられた他端側ピストンシリンダー装置168とから成る一対のピストンシリンダー装置が、図の紙面と直交する方向に間隔を隔てて2組設けられた構成、即ち、4つのピストンシリンダー装置により構成される。
ロッドレスシリンダー161の駆動源は、ピストンシリンダー装置群へのオイル、エア等の動作流体の給排を行う動作流体給排装置である。
各ピストンシリンダー装置のピストンを伸縮動作させることによって、図1に示すように、取付部材164が下部ヒンジ機構171を回転中心として揺動し、これにより、取付部材164に取付けられたロッドレスシリンダー161、支持ロッド163、ヘッドベース151、X軸ガイド体123、回転刃111が、下部ヒンジ機構171を回転中心として揺動可能となる。言い換えれば、取付部材側揺動支持装置158を備えたことによって、取付部材164が下部ヒンジ機構171を回転中心として首振り運動可能なように構成され、回転刃111も下部ヒンジ機構171を回転中心として首振り運動可能なように構成される。
【0018】
次に溝形成装置100を用いてトンネル99の内面3に溝4を形成する方法の手順について説明する。
まず、固定部140の固定ベース板141を、例えば、反力受け部145としてのトラックの荷台等に固定する。そして、例えば、図1(a)に示すように、内面3に溝4を形成する予定のトンネル99内に溝形成装置100を搬入して、トラックを固定した後、X軸ガイド体123を想像線で示す如く当該X軸ガイド体123が内面3に近づくように支持ロッド163を上方に移動させて、X軸ガイド体123の延長方向の両端を、トンネル99の延長方向に沿ったトンネル99の中心軸と直交するトンネル横断面上における内面3の異なる2地点にそれぞれ接触させる。
この状態で、回転刃111を回転させながら、Y軸ガイド装置130を駆動させて、回転刃111を内面3に近づくようにY軸に沿って移動させるとともに、X軸ガイド装置120を駆動させて、回転刃111をX軸に沿って移動させて内面3を切削することで、トンネル99の延長方向に沿ったトンネル99の中心軸と直交するトンネル横断面上のトンネル99の内面3の弧面に沿った弧状に延長する溝4をX軸ガイド体123の延長方向の両端間の内面3に形成していく。
尚、回転刃111を駆動させながら、Y軸ガイド装置130を駆動させて、Y軸に沿った方向への移動量を調整して、トンネル99の内面3を形成する覆工部に対する回転刃111の刃の食い込み量を調整することによって、底面が、内面3の周方向に沿った弧面と平行な弧面に形成された溝深さの均等な溝4を形成できる。
X軸ガイド体123の延長方向の両端間の内面3に溝4を形成した後、X軸ガイド体123が内面3から離れるように支持ロッド163を移動させる。その後、取付部材側揺動支持装置158を駆動させて、例えば、図1(b)に示すように、X軸ガイド体123が左上側の内面3に近づくように支持ロッド163を移動させて、X軸ガイド体123の延長方向の両端を上述したトンネル横断面上における内面3の異なる2地点にそれぞれ接触させる。そして、上述と同様に、上述したトンネル横断面上のトンネル99の内面3の弧面に沿った弧状に延長する溝4をX軸ガイド体123の延長方向の両端間の内面3に形成していく。その後、X軸ガイド体123が内面3から離れるように支持ロッド163を移動させてから、取付部材側揺動支持装置158を駆動させて、例えば、図1(c)に示すように、X軸ガイド体123が右上側の内面3に近づくように支持ロッド163を移動させて、X軸ガイド体123の延長方向の両端を上述したトンネル横断面上における内面3の異なる2地点にそれぞれ接触させた後、上述と同様に、トンネル横断面上のトンネル99の内面3の弧面に沿った弧状に延長する溝4をX軸ガイド体123の延長方向の両端間の内面3に形成していく。
このように、X軸ガイド体123を内面3の周方向に沿った方向に移動させて当該X軸ガイド体123を上述したトンネル横断面上のトンネル99の内面3の異なる位置に接触させ、当該X軸ガイド体123の延長方向の両端間の内面3に上述したトンネル横断面上のトンネル99の内面3の弧面に沿った弧状に延長する溝4を形成していく作業を繰り返すことにより、トンネル99の内面3の上半面に上述したトンネル横断面上のトンネル99の内面3の弧面に沿った弧状に延長する溝4を簡単かつ正確に形成できる。
【0019】
即ち、溝形成装置100を用いて溝を形成した場合、切削装置110の回転刃111がX軸ガイド体123に沿って移動可能なようにX軸ガイド体123に取付けられているので、回転刃111をX軸ガイド体123に沿って正確に移動させることができ、回転刃111がトンネル99の延長方向に沿った方向に振れることを防止できるので、X軸ガイド体123の延長方向の両端間において上述したトンネル横断面上のトンネル99の内面3の弧面に沿った弧状に延長する溝4を正確に形成できる。
また、切削作業においては、X軸ガイド装置120を操作することなく、Y軸ガイド装置130を駆動して回転刃111のY軸に沿った方向への移動量を調整するだけでよいので、溝4を簡単な操作で形成できる。
また、X軸ガイド体123の延長方向の両端を上述したトンネル横断面上における内面3の異なる2地点にそれぞれ接触させた後に、切削作業を行うので、X軸ガイド体123が安定し、上述したトンネル横断面上のトンネル99の内面3の弧面に沿った弧状に延長する溝4をより正確に形成できる。
【0020】
使用例1
次に、図3乃至図8を参照し、上述した本発明によるトンネル99の内面3に溝4を形成する方法によって、トンネル99の内面3としてのブロック材積みトンネル覆工部1の内面3に溝4を形成して当該ブロック材積みトンネル覆工部1を補強する方法及び構造について説明する。
図3に示すように、ブロック材積みトンネル覆工部1は、トンネルの内面(地山掘削面)にレンガ2、コンクリートブロック、石等のブロック材2Aを積み重ねて形成されたトンネル覆工部である。
ブロック材積みトンネル覆工部1(以下、単に「覆工部1」という)の補強方法は、溝形成ステップと、補強板位置決め部材固定ステップと、補強板固定ステップとを備える。
溝形成ステップでは、覆工部1の内面3の上部側(上半面側)に、トンネル99の中心軸(トンネル99の延長方向)と直交するトンネル横断面上の内面3の弧面に沿った弧状に延長する溝4を、トンネル延長方向に沿って所定間隔隔てて複数形成する。
補強板位置決め部材固定ステップでは、溝形成ステップで形成された各溝4に内面3の周方向に沿って延長する補強板位置決め部材5を覆工部1に固定する。
補強板固定ステップでは、トンネル延長方向に沿って所定間隔隔てて固定された互いに隣り合う各補強板位置決め部材5;5の間の内面3を覆うように補強板6を設置して、覆工部1の内面3の上部側全体を覆うように補強板6を覆工部1に固定する。
【0021】
即ち、覆工部1の補強構造は、図4図5に示すように、覆工部1の上部の内面3において当該内面3の周方向に沿って形成されかつトンネル延長方向に沿って所定間隔隔てて形成された複数の溝4と、複数の溝4にそれぞれ設けられて後述する固定手段10(図6参照)及び溝4内に充填された固定用の充填材7(図7参照)によって覆工部1に固定された補強板位置決め部材5と、トンネル延長方向に沿って所定間隔を隔てて互いに隣り合った各溝4;4にそれぞれ設けられた補強板位置決め部材5と補強板位置決め部材5との間における内面3を覆うように設置されて板の両方の端部69;69(内面3を覆うように設置された場合のトンネル延長方向の両方の端部)が補強板位置決め部材5と溝4内に充填されて固化した充填材7との間に位置された補強板6(図5図7参照)と、補強板6の端部69と補強板位置決め部材5とを連結した後述する連結具80又は連結用の充填材8(図7参照)等の連結手段とを備える。
当該覆工部1の補強構造によれば、トンネル延長方向に沿って所定間隔隔てて覆工部1に固定された互いに隣り合う各補強板位置決め部材5;5の間の内面3を覆うように補強板6が覆工部1に固定されるので、互いに隣り合うレンガ2とレンガ2との間の目地に充填された目地材が剥離して脱落する、所謂、目地やせ現象が生じた場合の、レンガ2の落下を防止できる。
【0022】
溝4は、本発明によるトンネル99の内面3に溝4を形成する方法によって形成され、例えば、溝幅(トンネル延長方向に沿った方向の長さ)が200mm、溝深さが覆工部1の複数レンガ層のレンガ一層分の長さに形成され、トンネル延長方向に沿って所定間隔隔てて設けられる溝4と溝4との間隔は1000mmに形成される。溝4は、例えば、レンガ2を切断する上述した回転刃111を用いて、内面3側の一層分のレンガ2をトンネル延長方向に沿った溝幅分だけ内面3の周方向に沿って延長する半円弧状に除去して形成される。溝4の底面42は、例えば覆工部1の上部の内面3の周方向に沿った湾曲面と平行な湾曲面に形成される。
【0023】
補強板位置決め部材5としては、例えば、H形鋼50を用いる。即ち、例えば折り曲げ加工機(ヴェンディング・マシーン)を用いてH形鋼のフランジ51;52の面がH形鋼の延長方向に沿って湾曲するように形成されたH形鋼50を用いる。例えばフランジ51;52の面が覆工部1の上部の内面3の周方向に沿った湾曲面に合致する湾曲面に形成されたH形鋼50を用いる。
【0024】
補強板6としては、例えば、セメントを主成分として平板に形成された一方のセメント板の板面とセメントを主成分として平板に形成された他方のセメント板の板面とを接着剤で貼り合わせて形成されたセメント合板の板面に圧力を加えてセメント合板の板面が曲面に形成された構成の曲面セメント合板60を用いる。
そして、当該曲面セメント合板60の径の大きい方の曲面側を覆工部1の内面3側に向け、当該曲面セメント合板60の径の小さい方の曲面側をトンネル空洞部11(図3参照)側に向けるようにして、内面3を覆うように当該曲面セメント合板60を覆工部1に固定する。
【0025】
補強板位置決め部材固定ステップは、補強板位置決め部材両端部固定ステップと補強板位置決め部材全体固定ステップとを備える。
補強板位置決め部材両端部固定ステップでは、図6に示すように、各溝4における内面3の周方向の両端部に、補強板位置決め部材5を覆工部1に固定するための固定手段10を用いる。
当該固定手段10は、例えば、溝4における内面3の周方向の端部に位置される補強板位置決め部材5としてのH形鋼50の長手方向の一端部に溶接等で固定された部材側連結部12と、覆工部1に固定されて部材側連結部12と連結される溝側連結部13とを備える。
【0026】
溝側連結部13は、溝4における内面3の周方向の端部において、溝4の終端面41と向かい合う第1面板部15と溝4の底面42と向かい合う第2面板部16とを有したアングル状連結板17と、第2面板部16を覆工部1に固定する固定用アンカー18と、第1面板部15に形成されたねじ孔19に締結されて当該第1面板部15に設けられたボルト20と、部材側連結部12に形成されたボルト通孔21に通されたボルト20に締結されて部材側連結部12と第1面板部15とを連結するナット22とを備える。
【0027】
補強板位置決め部材固定ステップでは、まず、溝4における内面3の周方向の両端側にアングル状連結板17を設け、当該アングル状連結板17の第1面板部15の面を溝4の終端面41に設置し、第2面板部16の面と溝4の底面42とが接触するように固定用アンカー18を第2面板部16に形成された貫通孔23を介して覆工部1に打ち込んでアングル状連結板17を溝4における内面3の周方向の両端側に固定する。そして、溝4における内面3の周方向の両端側に位置される補強板位置決め部材5の一端部に固定された部材側連結部12のボルト通孔21にアングル状連結板17の第1面板部15より突出するボルト20を通して当該ボルト20にナット22を締結することにより、各溝4における内面3の周方向の各端部側に位置させる各補強板位置決め部材5:5の一端側が、各溝4における内面3の周方向の各端部側に固定されることになる。そして、図3に示すように、溝4における内面3の周方向の中央側に位置させる1つ又は複数の補強板位置決め部材5を、各溝4における内面3の周方向の各端部側に位置させる各補強板位置決め部材5;5の他端側に連結部材25を介して連結することにより、各溝4における内面3の周方向に沿って複数の補強板位置決め部材5が設置される。
連結部材25は、例えば、隣り合う各補強板位置決め部材5;5の端部のフランジ51;52及びウェブ54に跨るように設けられる添設板26とこの添設板26を各補強板位置決め部材5;5の端部のフランジ及びウェブに固定するボルト及びナットのような固定手段27とにより構成される。
尚、1つ1つの溝4毎に、それぞれ、溝4における内面3の周方向の両端に跨る長さの半円弧状の1本のH形鋼50を補強板位置決め部材5として設置して覆工部1に固定してもよい。この場合、連結部材25は不要となる。
【0028】
そして、図7(a)に示すように、補強板位置決め部材5が覆工部1に固定された状態の溝4内に固定用の充填材7としての例えばモルタル7Aを吹き付ける。そして、吹き付けたモルタル7Aの表面71と内面3とで同一平面を形成し、吹き付けたモルタル7Aの固化を待つ。
さらに、溝4の溝底42とH形鋼50の他方のフランジ52との間には充填材79としてのモルタル等の裏込材を注入して、当該充填材79の固化を待つ。この充填材79は、覆工部1の山側から図外の注入路を形成し、当該注入路を介して注入する。
以上により、補強板位置決め部材5が充填材7;79により覆工部1に固定された構造となる。このように溝4が形成されている部分の覆工部1に固定された補強板位置決め部材5としてのH形鋼50のトンネル空洞部11側に位置される一方のフランジ51の裏面72と固化したモルタル7Aの表面71との間の距離は、補強板6の端部69が入り込めるように補強板6のボード厚さ寸法と同程度の寸法に形成される。
【0029】
補強板固定ステップでは、トンネル延長方向に沿って所定間隔隔てて設置された2つの補強板位置決め部材5;5の間の内面3を複数の補強板6で覆うように設置していって、覆工部1の上部側の内面3における各補強板位置決め部材5;5の間の内面3全体を複数の補強板6で覆うように当該複数の補強板6が覆工部1に固定される。この場合、図4図8に示すように、トンネル延長方向に沿って互いに隣り合うように設けられた各補強板位置決め部材5;5の間の内面3において、トンネルの周方向に隣り合う各補強板6のトンネル周方向の端面67;67同士が付き合わされて複数の補強板6が内面3の周方向に沿って並ぶように設置される。
つまり、トンネル延長方向に沿って所定間隔隔てて設置された2つの補強板位置決め部材5;5の間に設けられる補強板6におけるトンネル延長方向の両方の端部69;69を、補強板位置決め部材5の一方のフランジ51の裏面72と固化したモルタル7Aの表面71との間に挿入する。この際、補強板6としての曲面セメント合板60の一方の端部69を一方の補強板位置決め部材5のフランジ51の裏面72と固化したモルタル7Aの表面71との間に挿入して曲面セメント合板60の一方の端部69の縁を一方の補強板位置決め部材5のウェブ54に突き当てるとともに曲面セメント合板60の他方の端部69側の板面(曲面)を内面3に押し当てた状態で当該曲面セメント合板60を他方の補強板位置決め部材5側に移動させて当該他方の補強板位置決め部材5の一方のフランジ51の裏面72と固化したモルタル7Aの表面71との間に挿入する。このようにして、曲面セメント合板60の一方の端部69側が一方の補強板位置決め部材5の一方のフランジ51の裏面72と固化したモルタル7Aの表面71との間に位置されるとともに曲面セメント合板60の他方の端部69側が他方の補強板位置決め部材5の一方のフランジ51の裏面72と固化したモルタル7Aの表面71との間に位置される。即ち、補強板6の板の両方の端部69;69は、補強板位置決め部材5としてのH形鋼50の一方のフランジ51の裏面72である湾曲面と固化した充填材であるモルタル7Aとの間に位置される。
【0030】
次に連結具80を用いて補強板6の端部69と補強板位置決め部材5とを連結する。連結具80は、例えば、図7(a)に示すように、補強板6のボード面の4隅部分に形成された貫通孔であるねじ孔81と、補強板位置決め部材5の一方のフランジ51の表面と接触する第1板部82と補強板6の表面63に接触する第2板部83とを備えて当該第2板部83には当該第2板部83を貫通するねじ孔84が形成された補強板押さえ板85と、ボルト86とを備える。そして、第1板部82の面と一方のフランジ51の表面87とを接触させ、かつ、第2板部83の面と補強板6の表面としてのボード面63とを接触させた状態でボルト86をねじ孔84;81に挿入し、ボルト86の先端を固化したモルタル7Aの表面71と接触させて、第1板部82と補強板6とで一方のフランジ51を挟み付けるようにすることで、補強板6の端部69とフランジ51とが連結される。この場合、補強板6のトンネル延長方向の両方の端部69;69が補強板位置決め部材5の一方のフランジ51;51の裏側に隠れるので、補強板6のトンネル延長方向の両方の端部69;69がフランジ51の端部縁である1本の湾曲線状に見えるようになる。
以上により、図7(a)に示すように、覆工部1の補強構造が完成する。
【0031】
使用例1による覆工部1の補強構造によれば、覆工部1の内面3に補強材6が設けられたので、目地やせ現象が生じた場合の、レンガ2の落下を防止できる。
また、使用例1によれば、固定手段10、固定用の充填材7、連結具80によって、補強板6を覆工部1に確実に固定できるとともに、補強板6のトンネル延長方向の両方の端部69;69がフランジ51の端部縁である1本の湾曲線状に見えるようになるので内面3の周方向に隣り合う補強板6の端面同士を1つの線上に簡単に一致させることができるので、美観上に優れた補強構造を提供できる。
【0032】
使用例2
図7(b)に示すように、連結手段として充填材8を用いた構成としてもよい。この場合、H形鋼50のトンネル空洞部11側に位置される一方のフランジ51には、フランジ51を貫通する貫通孔による注入口53が形成される。
例えば、図7(a)に示すように、連結具80により、補強板6をフランジ51に連結した状態で、図7(b)に示すように、注入口53より補強板位置決め部材5の一方のフランジ51の裏面72と吹き付けたモルタル7Aの表面71との間に充填材8としてのモルタル8Aを注入して当該モルタル8Aが固化することにより、補強板6の端部69が補強板位置決め部材5の一方のフランジ51の裏面72と固化したモルタル7Aの表面71とに固定状態に強固に連結され、補強板6が内面3を覆うように覆工部1に強固に固定されることになる。即ち、補強板6の板の両方の端部69;69は、補強板位置決め部材5としてのH形鋼50の一方のフランジ51の裏面72である湾曲面と固化した充填材であるモルタル7Aとの間に位置される。
モルタル8Aが固化して補強板6が内面3を覆うように覆工部1に固定された後は、ボルト86を外して補強板押さえ板85を外す。
以上により、図7(b)に示すように、覆工部1の補強構造が完成する。
【0033】
使用例2によれば、連結手段としての充填材8によって、補強板6を覆工部1に対してより強固に固定できるとともに、補強板6のトンネル延長方向の両方の端部69;69がフランジ51の端部縁である1本の湾曲線状に見えるようになるので内面3の周方向に隣り合う補強板6の端面同士を1つの線上に簡単に一致させることができ、さらに、補強板6の表面に点在して露出する物も無くなるので、より美観上に優れた補強構造を提供できる。
【0034】
使用例3
使用例1;2では、補強板位置決め部材5としてH形鋼50を用いた例を示したが、補強板位置決め部材5として、使用例1;2でのH形鋼50の他方のフランジ52を除去した図11に示すような断面T字形のT形鋼50Aを用いてもよい。即ち、一方のフランジ51の面が覆工部1の上部の内面3の周方向に沿った湾曲面に合致する湾曲面に形成されたT形鋼50Aを補強板位置決め部材5として用いる。
使用例3の場合、補強板位置決め部材5としてのT形鋼50Aのウェブ54Aを溝4に挿入した後、溝内にモルタル7A等の充填材7を充填することによりT形鋼50Aを覆工部1に固定する。即ち、補強板6の板の両方の端部69;69が、補強板位置決め部材5としてのT形鋼50Aの一方のフランジ51の裏面72である湾曲面と固化した充填材であるモルタル7Aとの間に位置される。そして、実施形態1のように連結具80を用いて補強板6が覆工部1に固定されたり(図9(a)参照)、使用例2のように充填材8を用いて補強板6が覆工部1に固定される(図9(b)参照)。
使用例3によれば、覆工部1の山側から図外の注入路を介して充填材79としてのモルタル等の裏込材を注入する作業をなくすことができる。また、溝4の溝幅を小さくできるので、溝4を形成するための作業手間、作業効率を向上できる。
【0035】
尚、上述した充填材7;8;79としては、上述したモルタル、又は、コンクリート等のセメント系組成物を用いればよい。
【0036】
また、補強板位置決め部材5としてH形鋼50やT形鋼50A等の形鋼を用いた例を示したが、形鋼以外のものを用いても良い。
【0037】
上記では、X軸ガイド体123の延長方向の両端を上述したトンネル横断面上における内面3の異なる2地点にそれぞれ接触させる方法を示したが、X軸ガイド体123の延長方向の両端を内面3に接触させずに、切削作業を行うようにしてもよい。この場合でも、回転刃111をX軸ガイド体123に沿って正確に移動させることができ、回転刃111がトンネル99の延長方向に沿った方向に振れることを防止できるので、トンネル横断面上のトンネル99の内面3の弧面に沿った弧状に延長する溝4を正確に形成できる。
【符号の説明】
【0038】
3 トンネルの内面、99 トンネル、100 溝形成装置、110 切削装置、
111 回転刃(切削刃)、120 X軸ガイド装置、123 X軸ガイド体、
130 Y軸ガイド装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9