(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記振動体の衝撃によって第1部材から第2部材に前記溶接部を介して伝搬した衝撃波の振動強度と、前記溶接部の検査パラメータの値との相関関係を記憶した記憶部をさらに備え、
前記演算部は、前記記憶部に記憶されている相関関係と、第1センサによって測定された振動強度とを用いて前記溶接部の検査パラメータを演算することを特徴とする請求項1又は2に記載の溶接部検査装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の検査装置において、センサは、自在継手を介して、センサを第2の板材に押圧するためのバネ部材と接続されていた。このため、センサで測定された振動強度を示す波形が乱れることがあった。
【0006】
また、円筒形の原油タンクの底板の直径は例えば100mにも及ぶ。そして、そのような底板は、膨大な数の板材を隙間なく地表に重ね、地表に面しない側から隅肉溶接することによって形成されている。このため、板材同士の溶接部の全長は膨大であり、検査個所の数も膨大となる。特許文献1の検査装置は膨大な数の検査個所を効率よく検査するには不向きであった。
【0007】
本発明は、上述した課題を鑑み、センサで測定される振動強度を示す波形の乱れが少なく、且つ、膨大な数の検査個所を効率良く検査することが可能な、溶接部検査装置及び溶接部自動検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様に従えば、第1部材と第2部材との溶接部を検査する溶接部検査装置であって、
第1部材に衝撃を加える振動体と、
前記振動体を第1部材に接するように支持するステージと、
前記振動体の衝撃によって第1部材から第2部材に前記溶接部を介して伝搬した衝撃波の振動強度を測定する第1センサと、
第1センサを保持し、且つ、第2部材に接するように前記ステージの下方に支持される第1ホルダと、
第1センサによって測定された振動強度を用いて前記溶接部の検査パラメータを演算する演算部とを備え、
第1センサは上面を
解放した状態で第1ホルダに支持されていることを特徴とする溶接部検査装置が提供される。
【0009】
第1の態様において、第1ホルダは、第1センサの底面を支持する第1プレートを有してもよく、第1プレートを介して第1センサの底面に固定された第1磁石をさらに備えてもよい。
【0010】
第1の態様の溶接部検査装置は、前記振動体の衝撃によって第1部材から第2部材に前記溶接部を介して伝搬した衝撃波の振動強度と、前記溶接部の検査パラメータの値との相関関係を記憶した記憶部をさらに備えてもよく、前記演算部は、前記記憶部に記憶されている相関関係と、第1センサによって測定された振動強度とを用いて前記溶接部の検査パラメータを演算してもよい。
【0011】
第1の態様において、第1部材と第2部材とは隅肉溶接されていてもよく、前記検査パラメータは前記溶接部ののど厚であってもよい。
【0012】
第1の態様の溶接部検査装置は、前記ステージを上下方向に移動させる上下移動機構をさらに備えてもよい。
【0013】
第1の態様の溶接部検査装置は、前記振動体の衝撃によって第1部材を伝搬した衝撃波の振動強度を測定する第2センサと、第2センサを保持し、且つ、第1部材に接するように前記ステージの下方に支持される第2ホルダとをさらに備えてもよく、第2センサは上面を
解放した状態で第2ホルダに支持されてもよい。この場合、第2ホルダは、第2センサの底面を支持する第2プレートを有してもよく、第1の態様の溶接部検査装置は、第2プレートを介して第2センサの底面に固定された第2磁石をさらに備えてもよい。
【0014】
本発明の第2の態様に従えば、第1部材と第2部材との溶接部を自動で検査する溶接部自動検査装置であって、
第1の態様の溶接部検査装置と、
前記溶接部検査装置を搭載し、第1部材及び第2部材上を走行可能な走行装置と、
前記走行装置に設けられ、前記溶接部検査装置のステージを、前記走行装置の進行方向と直交する幅方向に移動させる横方向移動機構と、
前記走行装置に設けられ、前記溶接部検査装置、前記横方向移動機構、及び前記走行装置を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記溶接部検査装置の演算部を備えることを特徴とする溶接部自動検査装置が提供される。
【0015】
第2の態様の溶接部自動検査装置は、目標位置情報を記憶した記憶部と、前記走行装置の位置を検出する位置センサとをさらに備えてもよく、 前記制御装置は、前記位置センサが検出した前記走行装置の位置と、前記記憶部に記憶されている目標位置情報とに基づいて、前記走行装置を目標位置まで移動させてもよい。
【0016】
第2の態様において、前記走行装置は、第1部材及び第2部材上を走行可能な車輪と、前記車輪に支持された筐体と、前記車輪を駆動させるバッテリーと、前記筐体に対して前記車輪の高さを独立して調節可能な、独立懸架式サスペンションとを備えてもよく、前記前記制御装置は、前記独立懸架式サスペンションを制御し、第1部材及び第2部材に対する前記筐体の水平性を維持してもよい。
【0017】
第2の態様の溶接部自動検査装置は、第1部材と第2部材との段差を検知して前記溶接部の位置を特定する段差検出センサをさらに備えてもよく、前記制御装置は、前記横方向移動機構を制御して、前記段差検出センサが特定した前記溶接部の位置が、前記振動体と第1センサとの間に位置付けられるように、前記ステージを前記幅方向に移動させてもよい。
【0018】
第2の態様において、第1部材、及び第2部材は、石油タンクの底板の一部を構成してもよい。
【0019】
第2の態様において、前記走行装置は、前照灯と障害物検出装置をさらに搭載してもよい。
【0020】
第2の態様の溶接部自動検査装置は、前記振動体の衝撃によって第1部材を伝搬した衝撃波の振動強度を測定する第2センサと、第2センサを保持し、且つ、第1部材に接するように前記ステージの下方に支持される第2ホルダとをさらに備えてもよく、第2センサは上面を
解放した状態で第2ホルダに支持されてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の第1及び第2の態様によれば、センサで測定される振動強度を示す波形の乱れが少なく、且つ、膨大な数の検査個所を効率良く検査することが可能な、溶接部検査装置及び溶接部自動検査装置を提供される。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、適宜図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。
【0024】
<実施形態1>
本発明の溶接部検査装置の具体例を説明する。
図1aに示されるように、溶接部検査装置100は、検査部150とそれを制御する制御部160とを備えている。
【0025】
検査部150は、板材50に衝撃を与えるための振動体10、板材50から板材52に溶接部54を介して伝搬した衝撃波の振動強度を測定する振動センサ12(第1センサの一例)、振動センサ12を保持するセンサホルダ13(第1ホルダの一例)、ステージ装置90、及びステージ装置90を上下移動するための電動スライダ40(上下移動機構の一例)を主に備える。
【0026】
図1aに示すように、ステージ装置90は、それぞれ2本の脚23及び24とその上部に取り付けられたステージ14とを有し、溶接部54により溶接された二つの板材50,52上に載置される。ステージ14は、
図1bに示すように、平面視で矩形状を有する。2本の脚23はステージ14の四隅のうち一組の隅部に固定されており、2本の脚24はそれぞれ、スライダ26を介して高さを調整可能に残りの一組の隅部に取り付けられている。2本の脚23の先端にはそれぞれ磁石部材323が設けられており、その磁力により、2本の脚23は板材50に固定される。同様に、2本の脚24の先端にはそれぞれ磁石部材324が設けられており、その磁力により、2本の脚24は板材52に固定される。スライダ26は、2本の脚24の高さを調節して、ステージ14が板材50及び52と平行になるようにすることができる。
【0027】
ステージ14のうち、2本の脚23が設けられている側の領域には、ステージ14を貫通する開口30が形成され、開口30にはガイド31が組み込まれる。一方、ステージ14のうち、2本の脚24が設けられている側の領域には、ステージ14を貫通する開口32が形成され、開口32にはガイド33が組み込まれる。そして、ガイド31,33にはそれぞれ、軸部材16,18が挿通される。ガイド31,33としては、例えばリニアガイドを用いることができる。これにより、軸部材16,18をスムーズに上下方向にスライドさせることができる。或いは、スライド軸受等をガイド31,33として用いてもよい。或いは、ガイド31,33を設けず、軸部材16が開口30の内側面をスライドし、軸部材18が開口32の内側面をスライドするように構成してもよい。
【0028】
軸部材16は、同一直線上に延在する上側の軸16aと下側の軸16bとを有する。軸16aはガイド31に挿通されている。軸16aの上端には、振動体10からの衝撃等によって軸部材16がガイド31から抜けることを防ぐため、抜け止め部材34が設けられている。軸16aと軸16bは、可動部材20により接続されている。可動部材20は、軸16aに対する軸16bの角度を微調整する。可動部材20としては、例えば軸継手を用いることができる。軸16bの下端には振動体10が接続されている。振動体10としては、例えばソレノイドを用いることができる。なお、軸部材16は、脚23,24がそれぞれ板材50,52に固定されたとき、少なくとも振動体10が板材50に接触する長さを有する。
【0029】
軸部材18は、同一直線上に延在する上側の軸18aと下側の軸18bとを有する。軸18aはガイド33に挿通されている。軸18aの上端には、振動体10からの衝撃等によって軸部材18がガイド33から抜けることを防ぐため、抜け止め部材36が設けられている。軸18aと軸18bは、可動部材22により接続されている。可動部材22は、軸18aに対する軸18bの角度を微調整する。可動部材22としては、例えば軸継手を用いることができる。軸18bの下端は、センサホルダ13に接続されている。なお、軸部材18は、脚23,24がそれぞれ板材50,52に固定されたとき、少なくともセンサホルダ13の下端に取り付けられた後述する磁石部材312が板材52に接触する長さを有する。
【0030】
図1cに示すように、センサホルダ13は、円筒状であり、軸18bの下端に接続される天板13aと、天板13aと対向する底板13b(第1プレートの一例)と、天板13aの周縁部と底板13bの周縁部とを接続する側壁13cとを備える。そして、天板13a、底板13b、及び側壁13cによって形成される空間内において、底板13bの上面に振動センサ12が載置される。側壁13cは、天板13aが振動センサ12の上面と接触しない高さを有する。つまり、センサホルダ13は、振動センサ12の上面を
解放した状態で、振動センサ12を支持する。
【0031】
振動センサ12は、振動体10からの衝撃を測定可能な周波数帯を有しており、例えば、10Hz〜15kHzの測定周波数を有する。また、振動センサ12は、1000mV程度の測定レンジを有するのが好ましい。
【0032】
センサホルダ13の底板13bの下面には磁石部材312が設けられており、センサホルダ13は、磁石部材312の磁力により、板材52に固定される。なお、振動センサ12及び磁石部材312は、磁石部材312の下面側から挿通され磁石部材312及び底板13bを貫通する不図示のボルトによって、底板13bに対して固定されている。更に、板材52表面には凹凸があるため、磁石部材312の下面に樹脂シートや柔軟性のある金属(アルミニウム等)を設けて、接触面積を増やしてもよい。
【0033】
振動体10と振動センサ12との中心間距離は溶接部54の脚長よりも長ければよく、例えば、溶接部54の脚長が10mm程度の場合、60mm程度に設定すればよい。
【0034】
ステージ14の上方には、図示しない固定部材によって板材50,52からの高さ方向の位置が固定された電動スライダ40と、軸部材42とが設けられている。電動スライダ40は、上下方向に伸縮可能なスライダシャフト40aを備え、スライダシャフト40aと軸部材42は、可動部材44により接続されている。可動部材44は、スライダシャフト40aに対する軸部材42の角度を微調整する。可動部材44としては、例えば軸継手を用いることができる。軸部材42の下端は、ステージ14の上面に接続されている。
【0035】
振動体10と脚23の磁石部材323とが板材50に接触し、センサホルダ13の磁石部材312と脚24の磁石部材324とが板材52に接触している状態で、電動スライダ40がスライダシャフト40aを収縮させることにより、ステージ14が上方にスライドし、脚23の磁石部材323と脚24の磁石部材324とがそれぞれ、板材50,52から離れる。電動スライダ40がスライドシャフト40aをさらに収縮させてステージ14をさらに上方にスライドさせることにより、軸部材16及び18に設けられた抜け止め部材34,36の下端がそれぞれ、ガイド31,33の上端と接触する。この状態から電動スライダ40がスライドシャフト40aをさらに収縮させてステージ14をさらに上方にスライドさせることにより、振動体10が板材50から離れ、センサホルダ13の磁石部材312が板材52から離れる。
【0036】
一方、振動体10と脚23の磁石部材323とが板材50から離れており、センサホルダ13の磁石部材312と脚24の磁石部材324とが板材52から離れている状態で、電動スライダ40がスライダシャフト40aを伸長させることにより、ステージ14が下方にスライドし、振動体10及びセンサホルダ13の磁石部材312がそれぞれ、脚23,24よりも先に、板材50,52に接触する。電動スライダ40がスライダシャフト40aをさらに伸長させてステージ14をさらに下方にスライドさせることにより、脚23の磁石部材323が板材50に接触し、脚24の磁石部材324が板材52に接触する。なお、軸部材16,18はそれぞれ、上下方向にスライド可能にガイド31,33に挿通されている。このため、振動体10及びセンサホルダ13の磁石部材312がそれぞれ板材50,52に接触した状態で、ステージ14をさらに下方にスライドさせることができる。
【0037】
制御部160は、主に、制御計算機110、メモリ111、インターフェース(I/F)回路119、制御回路120、及び磁気ディスク等の記憶装置140を有している。制御計算機110、メモリ111、I/F回路119、制御回路120、及び記憶装置140(記憶部の一例)は、図示しないバスを介して互いに接続されている。
【0038】
制御計算機110内には、測定部70及びパラメータ演算部72が配置される。測定部70及びパラメータ演算部72は、ソフトウェアで構成されてもよく、電子回路等のハードウェアで構成されてもよい。或いは、これらの組み合わせであってもよい。制御計算機110に必要な入力データ或いは演算された結果は、その都度メモリ111に記憶される。また、測定部70及びパラメータ演算部72の少なくとも一つがソフトウェアで構成される場合は、CPU或いはGPUのような処理装置が配置される。
【0039】
図2に示すように、制御回路120は、計算器ユニット112、直流成分除去部114、アンプ116、及び駆動回路118を有している。計算器ユニット112は、取得部80、T
0演算部82、V
0演算部84、メモリ86、及び制御部88を含む。取得部80、T
0演算部82、V
0演算部84、及び制御部88は、ソフトウェアで構成されてもよく、電子回路等のハードウェアで構成されてもよい。或いは、これらの組み合わせであってもよい。計算器ユニット112に必要な入力データ或いは演算された結果はその都度メモリ86に記憶される。また、取得部80、T
0演算部82、V
0演算部84、及び制御部88の少なくとも一つがソフトウェアで構成される場合には、CPU或いはGPUのような処理装置が配置される。
【0040】
なお、溶接部検査装置100は、
図1a〜
図2に示した具体的な構成だけではなく、通常必要なその他の構成を備えていてもよい。
【0041】
図3に示すように、検査対象となる板材50(第1部材の一例)と板材52(第2部材の一例)は、地表で重ねて、例えば、板材52の端部と板材50の表面との間で隅肉溶接されている。板材50,52としては炭素鋼の板材を用いているが、これに限るものではなく、その他の溶接可能な金属材料であってもよい。また、板材50,52のサイズは、縦1.2m×横1m×厚さ9mmであるが、これに限るものではなく、縦横のサイズや厚さはその他のサイズであってもよい。
図3に示すように、隅肉溶接によって、板材52と板材50の結合部には、溶接部54が形成される。溶接部54ののど厚L
1を、溶接部54の検査パラメータとして測定する。のど厚L
1とは、板材50表面と板材52の端部側面との交点Oから板材50表面に対して45°の角度の溶接部54の隅肉表面までの長さを意味する。但し、のど厚の定義はこれに限るものではなく、例えば、溶接部54の脚長L
2の0.7倍の値(或いは、脚長L
2を√2で割った値)をのど厚としてもよい。また、検査パラメータとして、のど厚L
1の他に、例えば、溶接部54の脚長L
2等を用いてもよい。
図3の例では、溶接部54の脚長L
2(底辺長さ)が高さ(板材52の厚さ)よりも長くなるように溶接しているが、これに限るものではない。溶接強度が十分であれば、溶接部54の断面が、設計上、直角二等辺三角形の形状であってもよい。
【0042】
検査パラメータを測定するにあたり、検査対象となる板材50,52の上に溶接部検査装置100の検査部150を配置する。まず、板材50,52を隅肉溶接した溶接部54を挟んで、板材50の表面に振動体10を配置し、板材52の表面に振動センサ12を配置する。次に、振動体10と振動センサ12の位置に合わせて、板材50の表面に2本の脚23を載せ、板材50に重ねられたことで高さが高くなった板材52の表面に2本の脚24を載せる。そして、スライダ26により2本の脚24の高さを調整することで、テーブル14をできるだけ水平に配置する。振動体10と振動センサ12は、溶接部54の溶接線に対して、直交する方向に配置する。溶接部54の溶接線に対して、振動体10と振動センサ12を略線対称の位置に配置するのがより好ましい。実施形態1では、軸16a,16bは可動部材20によって繋がれている。このため、軸16aが挿通されているステージ14が水平状態からずれても、軸16aに対する軸16bの角度を微調整することにより、板材50との接触面積が広くなるように振動体10を設置できる。言い換えれば、振動体10を水平に設置できる。よって、加える衝撃値のムラ(誤差)を抑制できる。同様に、軸18a,18bは可動部材22によって繋がれている。このため、軸18aが挿通されているテーブル14が水平状態からずれても、軸18aに対する軸18bの角度を微調整することにより、板材52との接触面積が広くなるように振動センサ12を設置できる。よって、検出する振動強度の検出誤差を低減できる。
【0043】
振動体10及び電動スライダ40を駆動するための電源ケーブルと振動センサ12の測定用ケーブルは、例えばテーブル14に設けた図示しないコネクターから制御部160へと接続してもよい。これにより、ケーブルを外せば、検査部150と制御部160とを別々に持ち運ぶことができる。
【0044】
なお、
図1aの例では、上側の板材52に振動センサ12を配置し、下側の板材50に振動体10を配置したが、これに限るものではなく、上側の板材52に振動体10を配置し、下側の板材50に振動センサ12を配置してもよい。
【0045】
次に、溶接部検査装置100による検査方法について
図4のフローチャートを参照しつつ説明する。
図4に示すように、溶接部検査装置100は、コマンド送信工程(S102)、衝撃印加工程(S104)、振動強度測定工程(S106)、直流成分除去工程(S108)、衝撃波プロファイル取得工程(S110)、ピーク時間演算工程(S112)、ピーク電圧演算工程(S114)、及び、パラメータ演算工程(S116)という一連の工程を実行する。
【0046】
コマンド送信工程(S102)において、測定部70は、制御回路120に対して、測定開始コマンドを送信する。制御回路120内では、計算器ユニット112が測定開始コマンドを入力する。そして、計算器ユニット112内の制御部88は、駆動回路118に対して、衝撃印加を指示する信号を出力する。
【0047】
衝撃印加工程(S104)において、駆動回路118は、振動体10を駆動して、板材50に衝撃を加える。駆動回路118は、測定開始の時刻0〜T1は0Vとし、その後の時刻T1〜T2の間に振動体10を駆動させるための電圧を振動体10に印加する。衝撃は、1回加えればよい。鉄板の音速を5950m/sとすると、例えば15kHzの波長が約40cmとなり、板材50,52の厚さや溶接部53断面の外径寸法に対して十分長くなる。これにより溶接部全体を伝搬してきた波を検知できる。よって、1回の衝撃波で十分溶接部全体を伝搬してきた波を検知できる。但し、これに限るものではなく、複数回の衝撃を加えてもよい。複数回の衝撃を加える場合には、1つ前の衝撃波が減衰した後に加えるのが好ましい。また、振動体10による衝撃荷重は、振動センサ12によって数100mV程度の振動強度が得られる程度が好ましい。但し、これに限るものではなく、振動センサ12の性能に応じて適宜設定してもよい。
【0048】
振動強度測定工程(S106)において、振動センサ12は、板材50への衝撃によって板材50から溶接部54を介して板材52に伝搬した衝撃波の振動強度を検出(測定)する。振動センサ12は、上述した時刻T1〜T2の間の衝撃波の振動強度を検出する。これにより、時間のずれによる測定ミスを防止できる。振動センサ12の検出結果は、アンプ116に出力され、増幅される。
【0049】
直流成分除去工程(S108)において、直流成分除去部114は、アンプ116の出力から直流成分を除去する。
【0050】
図5は、実施形態1における直流成分が含まれる衝撃波プロファイルの一例を示す図である。
図5では、縦軸に振動強度、横軸に時間を示す。測定された衝撃波の振動強度には、バイアス成分(直流成分)が含まれている場合があり、
図5の例では、衝撃波プロファイル全体が、100mV程度シフトしている。そこで、直流成分除去部114は、かかる直流成分を除去して、測定開始前の振動強度の値が振れていない状態を0に調整する。また、直流成分が含まれていない場合には、直流成分除去工程(S108)を省略してもよい。
【0051】
衝撃波プロファイル取得工程(S110)において、取得部80は、直流成分除去部114から衝撃波プロファイルを取得する。
【0052】
図6は、直流成分が除去された衝撃波プロファイルの一例を示す図である。
図6において、縦軸に振動強度、横軸に時間が示される。また、
図6の例では、時刻T1を時間0として、時間軸を調整している。
【0053】
ピーク時間演算工程(S112)において、T
0演算部82は、測定開始(T1)時刻から測定された振動強度のピーク(最大値)A時刻までの時間T
0を演算する。或いは、ある基準時刻からの時間を演算してもよい。ここでは、サンプリング周期で得られた、振動強度(電圧)の時系列データから、最大電圧の時刻(或いは測定開始(T1)時刻からの時間)を計算すればよい。
【0054】
ピーク電圧演算工程(S114)において、V
0演算部84は、時間T
0に対応する、測定された振動強度のピーク電圧V
0(最大電圧)を演算する。演算されたピーク電圧V
0は、制御計算機110に出力される。
【0055】
パラメータ値演算工程(S116)において、パラメータ演算部72は、記憶装置140に格納された相関データ(例えば近似式、或いは近似式の係数)を読み出し、測定された振動強度を相関データ(例えば近似式)に代入して、溶接部53ののど厚(検査パラメータの一例)を演算する。そして、演算結果は、I/F回路119を介して、図示しない表示装置(例えばモニタ)へ出力される。出力されたのど厚を用いて、溶接部53の使用可否(安全性)を判定すればよい。
【0056】
なお、上記の検査に先立ち、検査対象と同じ材料、同じ板厚、同じ板幅等で溶接部の検査パラメータ(例えば、のど厚)が異なる、
図7(a)〜7(c)に示すような試験片を複数用意し、ピーク電圧V
0と検査パラメータとの相関データを取得しておく必要がある。
図7(a)は、板材51aと板材53aとを隅肉溶接した溶接部55aが直角三角形である(のど厚が設計のど厚と等しい)試験片の例を示している。
図7(b)は、板材51bと板材53bとを隅肉溶接した溶接部55bの隅肉表面が凹んでいる(のど厚が設計のど厚よりも小さい)試験片の例を示している。
図7(c)は、板材51cと板材53cとを隅肉溶接した溶接部55cの隅肉表面が凸に膨らんでいる(のど厚が設計のど厚よりも大きい)試験片の例を示している。
図7(a)〜7(c)に示すような、のど厚の値が異なる複数の試験片を用意して、同様の衝撃を各試験片に加え、それぞれピーク電圧V
0を測定しておく。また、設置場所(固定方法)等の条件も検査対象に合わせておく。各試験片ののど厚の値は、断面から実測すればよい。
【0057】
図8は、実施形態1におけるピーク電圧とのど厚との相関データの一例を示すグラフである。
図8において、縦軸は振動強度、横軸はのど厚を示している。のど厚の値が異なる複数の試験片から得られたピーク電圧V
0をプロットして、測定点を近似して近似式を演算する。
図8の例では、例えば、1次比例の近似式(y=ax+b)を得る。そして、かかる近似式のデータをピーク電圧V
0と検査パラメータとの相関データとして、記憶装置140に格納しておく。
【0058】
図9は、実施形態1におけるピーク電圧の演算方法の一例を説明するための概念図である。例えば、振動センサ12によるサンプリング周期が実際のピーク電圧の時刻に一致せず、ピーク電圧を検出していない場合もあり得る。この場合、ピーク時間演算工程(S112)において、T
0演算部82は、測定開始(T1)から、例えば、検出されたデータのピーク付近と想定される複数の時間T
n−1,T
n,T
n+1を演算する。時間T
n−1,T
n,T
n+1は、サンプリング周期と同期している。そして、これらの複数の時間T
n−1,T
n,T
n+1での振動強度をプロットして、多項式により近似する。そして、ピーク電圧演算工程(S114)として、V
0演算部84は、近似された曲線から振動強度のピーク電圧V
0(最大電圧)を演算する。これにより、実際のピーク電圧により近い電圧T
0を演算できる。
【0059】
ここで、上述した例では、ピーク電圧V
0を用いているが、これに限るものではない。例えば、
図6に示す振動強度の最大値Aと最小値Bの差分値(差分電圧)を用いてもよい。この場合、上述した複数の試験片を用いて予め実験し、相関データとして、振動強度の最大値と最小値の差分電圧とのど厚との相関データを取得しておくことは言うまでもない。そして、V
0演算部84は、ピーク電圧V
0を演算するだけでなく、最小電圧を演算し、さらに、これらの差分電圧を演算すればよい。または、時間積分を演算し、その値をピーク電圧V
0の代わりに使用してもよい。
【0060】
板材同士を地表で重ね、地表に面しない側から隅肉溶接した溶接部の検査を行う場合、超音波による検査では、溶接部の下に埋もれている、上側の板材の側面と下側の板材の表面とによって形成される角部に超音波を照射する必要があるが、そのような角部の位置を探り当てるのが困難である。また、板材は地表に敷かれているため、X線による検査も適さない。この点、上記実施形態1によれば、地表に面しない側から簡易な作業で検査を行うことができる。
【0061】
また、上述した従来技術のように、センサの上面が
解放されていない場合、換言すれば、センサの上面が拘束されている場合、
図10(a)に示すように、センサで測定された振動強度を示す波形が乱れることがあった。この点、上記実施形態1によれば、振動センサ12は、上面が
解放された状態で、換言すれば、上面が拘束されていない状態でセンサホルダ13に支持されている。このため、
図10(b)に示すように、振動強度を示す波形の乱れを抑えることができる。
【0062】
以上、本発明の溶接部検査装置を実施形態1により説明した。しかし、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、検査パラメータとして、上述したように溶接部の脚長を用いてもよい。この場合、溶接部の脚長が異なる複数の試験片を用いて予め実験し、相関データとして、振動強度のピーク電圧(最大値)と溶接部の脚長との相関データを取得しておくことは言うまでもない。或いは、振動強度の最大値と最小値の差分電圧と溶接部の脚長との相関データを取得しておけばよい。
【0063】
上記実施形態1では、可動部材20,22,44として軸継手を用いたが、これに限るのものではなく、例えば、自在継手を用いてもよい。また、実施形態1では、天板13a、底板13b、及び側壁13cから構成される円筒状のセンサホルダ13を用いたが、振動センサ12の上面を
解放した状態で振動センサ12を支持できるものであれば、センサホルダの形状は問わない。例えば、側壁13cの代わりに、天板13aの周縁部と底板13bの周縁部とを接続する複数本の支柱を設けてもよい。或いは、センサホルダが、底板13bと、振動センサ12の上面を
解放した状態で振動センサ12及び底板13bを覆うドーム状の蓋部材とによって構成されてもよい。また、実施形態1では、センサホルダ13の底板13bの下面に、センサホルダ13を板材52に固定するための磁石部材312が直接取り付けられていたが、振動センサ12による衝撃波の検知の妨げにならなければ、底板13bと磁石部材312との間に、磁石部材312を底板13bに接合するための他の部材が介在してもよい。或いは、センサホルダ13の底板13bと磁石部材312との間に、ガイド33の下面と可動部材22の上面との間にバネ部材を設け、バネ部材の弾性力によってセンサホルダ13を板材52側に押圧してもよい。この場合、センサホルダ13の下面に、磁石部材312の代りに、例えばビニールシート等の可撓性材料からなるシート部材を設けてもよい。シート部材を設けることにより、板材52の表面に凹凸がある場合でも、振動センサ12と板材52との間に隙間が残ることを防止できる。
【0064】
また、実施形態1では、板材50から板材52に伝搬した衝撃波の振動強度を測定する振動センサ12のみが設けられていたが、板材50を伝搬した衝撃波の振動強度を測定する振動センサ412(第2センサの一例)をさらに設けてもよい。
【0065】
具体的には、ステージ14のうち、2本の脚23が設けられている側の領域に、実施形態1の開口32及びガイド33と同様の開口及びガイドを設け、そのガイドに、実施形態1の軸部材18と同様の軸部材を挿通させる。さらに、軸部材の上端と下端にそれぞれ、実施形態1と同様の抜け止め部材とセンサホルダ(第2ホルダの一例)を設け、センサホルダの底板(第2プレートの一例)の下面に、実施形態1と同様の磁石部材(第2磁石部材の一例)を固定する。そして、実施形態1と同様に、振動センサ412の上面が
解放された状態で、センサホルダの底板の上面に振動センサ412を固定すればよい。
【0066】
この場合、例えば
図11に示すように、振動体10と振動センサ12とを結ぶ直線と直交する方向に延び、且つ、振動体10を通過する直線上に振動センサ412が配置されるように、検査部150を構成すればよい。但し、これに限るものではなく、振動体10と振動センサ12とを結ぶ直線と、振動体10と振動センサ412とを結ぶ直線とは直交していなくてもよい。また、振動体10と振動センサ412との中心間距離L
4は、振動体10と振動センサ12との中心間距離L
3と同等であるのが望ましく、例えば溶接部54の脚長が10mm程度の場合、60mm程度に設定すればよい。但し、これに限るものではなく、L
4はL
3と同等でなくてもよい。
【0067】
また、例えば
図12に示すように、板材50を伝搬し振動センサ412によって検出された衝撃波の振動強度を処理するため、制御回路120は、直流成分除去回路514及びアンプ516をさらに備えてもよく、計算器ユニット112は、取得部580、T´
0演算部582、V´
0演算部584をさらに備えてもよい。そして、計算器ユニット112は、振動センサ12によって検出された衝撃波の振動強度を表す信号強度と、振動センサ412によって検出された衝撃波の振動強度を表す信号強度との比である信号強度比r(V
0/V´
0)を演算する、信号強度比演算部586をさらに備えてもよい。
【0068】
この場合、検査に先立ち、溶接部ののど厚が異なる複数の試験片を用いて予め実験し、相関データとして、信号強度比rと溶接部ののど厚との相関データを取得しておけばよい。振動センサ12によって測定された信号強度と振動センサ412によって測定された信号強度との比である信号強度比rを用いることで、測定される信号強度の不安定性を解消できる。
【0069】
<実施形態2>
次に、実施形態1の溶接部検査装置100を利用した、実施形態2の溶接部自動検査装置600について説明する。溶接部自動検査装置600は、例えば、円筒形の原油タンク内で、原油タンクの底板の多数の溶接部を自動で検査するために使用される。
図13(a)、13(b)に示されるように、溶接部自動検査装置600は、実施形態1の検査部150とそれを搭載する走行装置700とを備えている。即ち、溶接部自動検査装置60は、走行装置700により原油タンク内で底板の溶接部の所定の被検査領域に移動して、検査部150により溶接部を検査するための装置である。
【0070】
走行装置700は、平面視で矩形状の筐体(シャーシ)720と、筐体720を下方から支持する4つの車輪740と、バッテリー760とを備え、バッテリー760により筐体720の長さ方向に、例えば時速4〜5km程度で走行可能に構成されている。原油タンクの底板は板材同士を重ね合わせて溶接することにより形成されているため、上に重なっている板材52の表面の地表からの高さは、下に重なっている板材50の表面の地表からの高さよりも高い。走行装置700が板材50,52の溶接部54を幅方向に跨ぐ場合、下に重なっている板材50の表面に幅方向の一方側の車輪740が配置され、上に重なっている板材52の表面に幅方向他方側の車輪740が配置される。このため、幅方向に関して車輪740の地表からの高さが異なり、筐体720の地表に対する傾きが生じる。そこで、4つの車輪740は、筐体720に対して独立して高さを調節できる独立懸架式サスペンション(不図示)を備える。これにより、地表や板材50,52の表面に対する筐体720の水平性が保持される。
【0071】
また、走行装置700には、横方向移動機構800、位置検出センサ820、段差検出センサ840、障害物検出センサ860、水平センサ870、前照灯880、及び制御装置900等が搭載されている。溶接部自動検査装置600は、例えば原油タンクに設けられた直径500mm程度のマンホールを通過できる程度のサイズを有する。
【0072】
横方向移動機構800は、筐体720の幅方向、即ち、進行方向に直交する横方向に沿って、検査部150を移動させるための機構である。横方向移動機構800は、例えば、筐体720の幅方向に延在するシャフト802と、検査部150の電動スライダ40に接続され、且つ、シャフト802に沿って移動可能に構成されたスライダ部材804と、スライダ部材804をシャフト802に沿って移動させる図示しない駆動機構とを備える。そして、シャフト802の両端は、筐体720の両側壁に同じ高さ位置に支持される。但し、横方向移動機構800の構成はこれに限られず、例えば、筐体720の一方の側壁に設けられ、筐体720の幅方向に伸縮可能に構成された電動スライダであってもよい。この場合、電動スライダのスライダシャフトの先端に、検査部150の電動スライダを接続すればよい。
【0073】
位置検出センサ820は、走行装置700の、石油タンクの円形の底面(二次元)における位置を検出する。段差検出センサ840は、板材50,52が重ね合わされ隅肉溶接されることによって形成された溶接部54を検出する。段差検出センサ84としては、例えば、筐体720の幅方向にレーザ光を走査させて板材50,52までの距離を測定するレーザ距離計を用いることができる。障害物検出センサ860は、走行装置700の進行方向に存在する障害物を検出する。石油タンクの底板には通常、石油タンクの屋根を支持するための支柱が多数設けられており、底板を検査する際は、底板の上で作業員が作業している場合も考えられる。このような、走行装置700の進行方向に存在する支柱や作業員を回避するために、障害物検出センサ860が搭載されている。水平センサ870は、走行装置700(シャフト802)の水平性を検知するためのセンサである。また、通常、石油タンク内は暗いため、走行装置700の筐体720には、進行方向を照らす前照灯880が設けられている。
【0074】
制御装置900は、検査部150、横方向移動機構800、及び走行装置700を制御するための装置である。
図14に示すように、制御装置900は、検査装置制御部920、横方向移動機構制御部940、走行装置制御部960、及び記憶部980を備える。検査装置制御部920、横方向移動機構制御部940、及び走行装置制御部960は、ソフトウェアで構成されてもよく、電子回路等のハードウェアで構成されてもよい。或いは、これらの組み合わせであってもよい。
【0075】
検査装置制御部920は、実施形態1の制御部160に相当し、実施形態1と同様に、検査部150、具体的には、振動体10、振動センサ12、及び電動スライダ40をそれぞれ制御する。
【0076】
横方向移動機構制御部940は、段差検出センサ840からの入力に基づいて、横方向移動機構800を制御する。走行装置制御部960は、記憶部980に予め記憶されている底板上の目標位置に関する情報と、位置検出センサ820が検出した走行装置700の底板上の位置と、障害物検出センサ860から入力される情報に基づいて、走行装置700を制御する。また、水平センサ870からの入力に基づいて、走行装置700に取り付けられたシャフト802が水平になるように、車輪740の独立懸架サスペンションを制御する。記憶部980には、前述の底板上の目標位置(検査対象位置)に関する情報の他、検査対象位置毎の検査結果(パラメータの演算結果)が記憶される。底板上の目標位置は、直径100mの底板を約10cm間隔で検査する場合、およそ50000箇所に及ぶ。
【0077】
なお、溶接部自動検査装置600は、
図13及び14に示した具体的な構成だけではなく、通常必要なその他の構成を備えていてもよい。
【0078】
次に、溶接部自動検査装置600を用いた溶接部自動検査方法を、
図15のフローチャートを参照しつつ説明する。
【0079】
起点設定工程(S500)では、例えば石油タンクの底板上の起点に関する情報を、記憶部980に設定する。ここで、起点とは、走行装置700が走行を開始する位置であり、例えば、走行装置700のバッテリー760の充電器が設置されている位置を、起点とすることができる。
【0080】
目標位置移動工程(S502)において、走行装置制御部960は、記憶部980から取得した目標位置情報と、位置検出センサ820が検出した走行装置700の位置情報とに基づいて、走行装置700を目標位置まで走行させる。なお、走行装置700の走行中に障害物検出センサ860が障害物を検出した場合、走行装置制御部960は、走行装置700の走行を停止させるか、障害物を回避するように走行装置700を走行させる。目標位置に到達したならば、水平センサ870により走行装置700に取り付けられたシャフト802が水平になるように、車輪740の独立懸架サスペンションを制御する。
【0081】
検査装置設置工程(S504)において、横方向移動機構制御部940は、段差検出センサ84から入力された溶接部54の位置情報に基づいて横方向移動機構800の駆動機構を制御し、横方向移動機構800のスライダ部材804を筐体720の幅方向に沿って溶接部54の上方まで移動させる。これにより、横方向移動機構800に接続された検査部150を、溶接部54の上方の適切な位置に位置付ける。具体的には、検査部150の振動体10と振動センサ12とがそれぞれ、溶接部54を跨いで板材50,52と対向する位置に、検査部150を位置付ける。次に、検査装置制御部920は、電動スライダ40を制御してステージ14を下降させることにより、振動体10及び振動センサ12をそれぞれ、板材50,52の表面に設置する。その後、検査装置制御部920は、電動スライダ40を制御してステージ14をさらに下降させることにより、ステージ14の脚23,24をそれぞれ、板材50,52の表面に設置する。
【0082】
溶接部検査工程(S506)において、検査装置制御部920は、実施形態1における溶接部検査工程を実行する。具体的には、
図4に示すコマンド送信工程(S102)からパラメータ演算工程(S116)までの一連の工程を実施する。そしてパラメータ演算工程(S116)が終了すると、検査装置制御部920は、パラメータの演算結果を目標位置(検査対象位置)情報とともに記憶部980に保存する。
【0083】
検査装置退避工程(S508)において、検査装置制御部920は、電動スライダ40を制御してステージ14を上昇させることにより、ステージ14の脚23,24をそれぞれ、板材50,52の表面から引き離す。その後、検査装置制御部920は、電動スライダ40を制御してステージ14をさらに上昇させることにより、振動体10及び振動センサ12をそれぞれ、板材50,52の表面から引き離す。次に、横方向移動機構制御部940は、横方向移動機構800の駆動機構を制御し、横方向移動機構800のスライダ部材804を筐体720の幅方向に沿って移動させる。これにより、検査部150を、筐体720内の、走行装置700の走行の妨げにならない位置に退避させる。
【0084】
次に、制御装置900は、走行装置700のバッテリー760の残量を検出し、充電が必要か否かを判断する(S510)。充電が必要と判断した場合(S510:Yes)、走行装置制御部960は、走行装置700を制御して、S500で設定された起点まで走行装置700を走行させ、起点に設置された充電器にてバッテリー760の充電を行う(S516)。一方、充電が不要と判断した場合(S510:No)、制御装置900は、内蔵されている図示しないタイマを参照し、走行装置700の走行時間が所定時間を経過したか否かを判断する(S512)。所定時間を経過したと判断した場合(S512:Yes)、走行装置制御部960は、走行装置700を制御して、S500で設定された起点まで走行装置700を走行させ、起点にてバッテリー760を交換する(S516)。一方、所定時間を経過していないと判断した場合(S512:No)、制御装置900は、記憶部980を参照し、全ての目標位置についてパラメータの演算結果が保存されているかを確認することにより、全ての目標位置に関する検査が終了したか否か判断する(S514)。全ての目標位置に関する検査が終了したと判断した場合(S514:Yes)、制御装置900は、例えば、検査装置制御部920のI/F回路119を介して、図示しない表示装置(例えばモニタ)に、目標位置毎の検査結果をマップ表示する。
【0085】
S516においてバッテリー760の充電又は交換が完了した場合、或いは、全ての目標位置に関する検査が終了していないと制御装置900が判断した場合(S514:No)、フローは目標位置移動工程(S502)に復帰する。目標位置移動工程(S502)おいて、走行装置制御部960は、新たな目標位置情報を取得し、新たな目標位置に対してそれ以降の工程が順次実行される。
【0086】
以上説明した実施形態2によれば、例えば石油タンクの底板上で、実施形態1の溶接部検査装置を搭載した走行装置700を自動で走行させつつ、膨大な数の検査個所を効率良く検査することができる。
【0087】
以上、本発明の実施形態2について説明した。しかし、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。石油タンクの底板の上には、底板を形成する板材からの錆や、タンクの屋根から落ちてきた錆などが存在し、検査結果に影響を与える場合も考えられる。そこで、走行装置700に、底板の上に存在する錆や塵等を除去するためのエアブローをさらに設けてもよい。
【0088】
実施形態2では、検査装置退避工程(S508)において、検査部150を板材50,52から引き離した後、横方向移動機構800を駆動することにより、検査部150を走行装置700の走行の妨げにならない位置まで移動させた。但し、これに限られず、検査部150を板材50,52から引き離した後、走行装置700の走行の妨げにならなければ、検査部150を幅方向に移動させなくてもよい。
【0089】
実施形態2では、制御装置900が所定時間経過したと判断した場合(S512:Yes)、走行装置制御部960は、走行装置700を制御して、S500で設定された起点まで走行装置700を走行させ、起点にてバッテリー760を交換した(S516)。但し、これに限られず、制御装置900が所定時間経過したと判断した場合(S512:Yes)、バッテリー760の交換が必要な旨を、例えばI/F回路119を介して図示しない表示装置に表示することにより作業員に報知し、起点まで戻ることなく、その場でバッテリー760の交換を行ってもよい。
【0090】
実施形態2では、目標位置移動工程(S502)において、記憶部980から取得した目標位置情報と、位置検出センサ820が検出した走行装置700の位置情報とに基づいて、走行装置700を目標位置まで走行させた。但し、これに限られず、板材同士を隅肉溶接することによって形成された溶接部の連続である溶接線を、例えば、段差検出センサ840によって検出し、段差検出センサ840が検出した溶接線に沿って走行装置700を走行させてもよい。
【0091】
実施形態2の溶接部自動検査装置600は、実施形態1の溶接部検査装置100を搭載していたが、これに限るものではなく、前述した実施形態1の変形例の溶接部検査装置が搭載されていてもよい。