【実施例】
【0014】
図1に示すように、実施例に係る搬送補助装置10は、装置本体12と、装置本体12に一端が回動可能に支持された第1アーム14と、第1アーム14の他端に支持された中継部16に一端が支持された第2アーム18と、第2アーム18の他端に支持されたアタッチメント(保持手段)20とを備えている。なお、搬送補助装置10には、装置本体12と中継部16とに間に、補助アーム15が第1アーム14と平行に設けられている。装置本体12には、エアシリンダからなるバランサ22が設けられており、バランサ22のピストンロッドに繋がる連係部24が第1アーム14の一端に連結されて、一端を支点として他端が昇降する第1アーム14の動作とバランサ22におけるピストンロッドの昇降とが連動するようになっている。アタッチメント20は、搬送するワーク(搬送物)Wを保持可能に構成されて、
図2に示すように、ワークWを搬送する際に作業者に用いられる操作ハンドル26が、アタッチメント20の横側に延出するように設けられている。
【0015】
搬送補助装置10は、操作ハンドル26に設けられたブレーキレバー28(
図2参照)をOFF操作して固定手段30(
図1参照)を解除することで、装置本体12において第1アーム14およびバランサ22が配置された上部が、下部に対して回転可能となり、第1アーム14を旋回させることができる。また、固定手段30を解除することで、中継部16に対して第2アーム18が回転可能となると共に、第2アーム18に対してアタッチメント20が回転可能となり、アタッチメント20に保持したワークWを上下だけでなく水平方向へも移動させることができ、ワークWの三次元的な搬送が可能となっている。
【0016】
搬送補助装置10は、操作ハンドル26に設けられた上昇スイッチ32(
図3参照)を操作すると、バランサ22がピストンロッドを下降させるように作動して、第1アーム14が上昇動作を行うので、第2アーム18およびアタッチメント20が上昇して、アタッチメント20に保持されたワークWを持ち上げる。また、搬送補助装置10は、操作ハンドル26に設けられた下降スイッチ34(
図3参照)を操作すると、バランサ22がピストンロッドを上昇させるように作動して、第1アーム14が下降動作を行うので、第2アーム18およびアタッチメント20が下降して、アタッチメント20に保持されたワークWを下げる。
【0017】
搬送補助装置10は、操作ハンドル26に設けられたバランススイッチ36(
図3参照)を操作すると、図示しない感知手段によりワークWの重量を感知して、バランサ22がワークWの重量を打ち消すように作動するバランス状態となる。搬送補助装置10は、バランス状態において、バランサ22でワークWの重量を支持したもとで、ワークWの上昇および下降、または固定手段30を解除することで水平方向へ移動が可能となっている。また、搬送補助装置10は、上昇スイッチ32や下降スイッチ34が操作されていない、またはバランス状態にない場合に、アタッチメント20の上下位置をその場で維持するようにバランサ22が作動するロック状態となり、例えばワークWを持ち上げた際にその位置を保つことができる。このように、搬送補助装置10は、第1アーム14および第2アーム18を介してアタッチメント20をバランサ22で支持して、アタッチメント20で保持したワークWをバランサ22によって上昇または下降したり、ロック状態でその場で維持したり、バランス状態で作業者の負荷を軽減したもとでワークWの搬送を許容するようになっている。
【0018】
図3に示すように、搬送補助装置10は、コンプレッサ等のエア供給源38から供給されるエアにより、バランサ22を機能させる空圧回路(回路)40を備えている。空圧回路40には、エア供給源38とバランサ22との間に、パイロット圧の入力に応じてバランサ22に付与するエア圧を調節するパイロットレギュレータ(調節手段)42が設けられている。また、空圧回路40には、パイロットレギュレータ42の下流側に位置して、バランサ22へのエア管路を開閉する第1パイロット弁44が設けられている。パイロットレギュレータ42には、空圧回路40に設けられた第2パイロット弁46、または電空レギュレータ(補正手段)48から第3パイロット弁50を介してパイロット圧が入力され、このパイロット圧に基づいてエア供給源38からのエア圧(流体圧)を調節している。すなわち、パイロットレギュレータ42は、バランサ22に付与するエア圧を調節して、アタッチメント20で保持したワークWの重量を打ち消すようにバランサ22で支持するバランス状態を制御している。電空レギュレータ48は、詳細は後述するが、パイロットレギュレータ42によるエア圧の調節を補正するように機能する。なお、第3パイロット弁50には、セレクトスイッチ52が接続されており、このセレクトスイッチ52の切り替え操作により、第3パイロット弁50を切り替え可能となっている。第1パイロット弁44は、バランススイッチ36のON操作により開放して、バランサ22に対してパイロットレギュレータ42で調圧されたエア供給を許容して、これによりバランサ22がバランス状態で作動する。
【0019】
図3に示すように、空圧回路40には、上昇スイッチ32のON操作により開放するように切り替えられる上昇パイロット弁56が設けられ、上昇パイロット弁56を開放することで、バランサ22に対してバランサ22のエア圧を増すようにエアが供給される。また、空圧回路40には、下降スイッチ34のON操作により開放するように切り替えられる下降パイロット弁58が設けられ、下降パイロット弁58を開放することで、バランサ22のエア圧を低下するように、バランサ22からサイレンサ60を介してエアが抜ける。
【0020】
図3に示すように、空圧回路40には、バランサ22によりアタッチメント20を支持する力を検知する圧力センサ(第1検知手段)62が設けられている。
図3において、圧力センサ62は、パイロットレギュレータ42の下流側に位置して、第1パイロット弁44とバランサ22との間に配置され、パイロットレギュレータ42で調節されたエア圧、すなわち現状のバランサ22のシリンダ内の圧力を読み取るように構成される。また、圧力センサ62は、電力線を介してマイコン等の制御手段64と電気的に接続されており、検知したバランサ22の圧力が制御手段64に入力されるようになっている。なお、
図3〜
図5において、二点鎖線は、電力線を示し、実線および破線は、エア管路を示している。
図3〜図5では、圧力センサ(第1検知手段)62は、パイロットレギュレータ42の下流側に位置して、第1パイロット弁44とバランサ22との間に配置したが、実施例では、圧力センサ62を、例えば、パイロットレギュレータ(調節手段)42と電空レギュレータ(補正手段)48との間や、パイロットレギュレータ(調節手段)42と第2パイロット弁46との間など、空圧回路40におけるパイロットレギュレータ42へパイロット圧を供給する管路に配置している。この場合は、圧力センサ62を、電空レギュレータ48からの制御エアまたは第2パイロット弁46からの制御エアを切り替える第3パイロット弁50とパイロットレギュレータ(調節手段)42との間に配置するのが望ましい。実施例のように、圧力センサ(第1検知手段)62を電空レギュレータ48からの制御エア管路に配置することで、電空レギュレータ48およびパイロットレギュレータ(調節手段)42の制御の観点から有利である。
【0021】
アタッチメント20には、アタッチメント20が移動する際の力を検知する力覚センサ(第2検知手段)66(
図2および
図3参照)が設けられている。
図2に示すように、実施例の力覚センサ66は、アタッチメント20の操作ハンドル26に設けられ、操作ハンドル26を移動したときに生じる力およびトルク(モーメント)の大きさと方向を測定するようになっている。また、力覚センサ66は、電力線を介して制御手段64と電気的に接続されており、検知した結果が制御手段64に入力されるようになっている。力覚センサ66は、アタッチメント20の上昇および下降方向の一軸の力を検知するよう構成されており、アタッチメント20を移動させた際にアタッチメント20の水平方向の力を検知しない。
【0022】
制御手段64は、電力線を介して電空レギュレータ48と電気的に接続されており、圧力センサ62および力覚センサ66からの入力を受けて、電空レギュレータ48によるパイロットレギュレータ42の補正を制御する。制御手段64は、圧力センサ62から入力されるバランサ22がアタッチメント20に与える支持力と、力覚センサ66から入力されるワークWの移動時にかかる力との差を、電空レギュレータ48により補正するように制御している。なお、制御手段64は、バランス状態においてのみ、電空レギュレータ48による補正を実行させる。
【0023】
〔実施例の作用〕
次に、実施例に係る搬送補助装置10の作用について説明する。
図4(a)に示すように、作業者が上昇スイッチ32を操作すると上昇パイロット弁56が開放し、バランサ22にパイロットレギュレータ42を介することなくエアが供給されてバランサ22におけるシリンダ内の圧力が上昇することで、アタッチメント20が上昇してワークWが持ち上げられる。上昇状態において、第1パイロット弁44、第2パイロット弁46および下降パイロット弁58は閉じている。実施例では、上昇スイッチ32を操作しているときだけに上昇パイロット弁56が開放するようになっており、上昇スイッチ32の操作をやめると上昇パイロット弁56が閉じて、上昇していたアタッチメント20がその場で停止するロック状態となる。
【0024】
図4(b)に示すように、作業者が下降スイッチ34を操作すると下降パイロット弁58が開放し、バランサ22からエアが抜けてシリンダ内の圧力が下がることで、アタッチメント20が下降してワークWが下がる。下降状態において、第1パイロット弁44、第2パイロット弁46および上昇パイロット弁56は閉じている。実施例では、下降スイッチ34を操作しているときだけに下降パイロット弁58が開放するようになっており、下降スイッチ34の操作をやめると下降パイロット弁58が閉じて、下降していたアタッチメント20がその場で停止するロック状態となる。
【0025】
ロック状態では、図示しないエア制御回路により第2パイロット弁46が開放されて、感知手段で感知したワークWの重量に応じたパイロット圧が、第3パイロット弁50を介してパイロットレギュレータ42に入力される。なお、ロック状態において、第1パイロット弁44は閉じている。
【0026】
図5(a)に示すように、作業者がバランススイッチ36を操作すると第1パイロット弁44が開放し、入力されたパイロット圧に基づいてパイロットレギュレータ42で制御されたエア圧がバランサ22に与えられる。ここで、バランス状態では、パイロットレギュレータ42に、ロック状態において第2パイロット弁46を介して入力されたパイロット圧が維持されている。バランス状態では、作業者が操作ハンドル26を持ってワークWを上昇させると、バランサ22がワークWの重量を打ち消すように支持力をアタッチメント20に与えるので、ワークWを軽い力で上昇させることができる。また、バランス状態では、作業員が操作ハンドル26を持ってワークWを下降させると、アタッチメント20に与える支持力を弱めるので、バランサ22が抵抗にならずにワークWを軽い力で下げることができる。なお、バランス状態では、第2パイロット弁46、上昇パイロット弁56および下降パイロット弁58は閉じている。
【0027】
図3の圧力センサ62の配置では、バランス状態
において、圧力センサ62によってバランサ22のシリンダ内の圧力が検知されて制御手段64に入力されると共に、力覚センサ66によってワークWの搬送時にかかった力が検知されて制御手段64に入力される。
図5(b)に示すように、制御手段64は、圧力センサ62の検知結果と力覚センサ66の検知結果との差に応じて、パイロットレギュレータ42で制御しているバランサ22へ付与するエア圧を補正するように、電空レギュレータ48の圧力を制御する。具体的には、制御手段64は、バランサ22による支持力が足りていない場合は、電空レギュレータ48からパイロットレギュレータ42に入力するパイロット圧を高くするように電空レギュレータ48を制御する。これにより、パイロットレギュレータ42が、バランサ22に供給するエア圧が高くなるように補正され、バランサ22によるアタッチメント20の支持力が増すので、ワークWの搬送時に作業者にかかる負担が解消する。制御手段64は、バランサ22による支持力が過剰である場合は、電空レギュレータ48からパイロットレギュレータ42に入力するパイロット圧を低くするように電空レギュレータ48を制御する。これにより、パイロットレギュレータ42が、バランサ22に供給するエア圧が低くなるように補正され、バランサ22によるアタッチメント20の支持力が減るので、作業者がワークWをより精度よく搬送できる。
【0028】
前述した搬送補助装置10によれば、バランス状態において、圧力センサ62および力覚センサ66からの入力を受けた制御手段64により制御された電空レギュレータ48によって、パイロットレギュレータ42からバランサ22に付与するエア圧を補正することができる。バランサ22のピストンロッドや第1アーム14などの摺動抵抗等の機械的要因により、ワークWを支持するために要する実際の力が、当初入力されたパイロット圧に基づいて制御されたパイロットレギュレータ42からのエア圧と異なることがある。このような場合であっても、搬送補助装置10は、制御手段64に制御された電空レギュレータ48が実際に要する力に対応したパイロット圧をパイロットレギュレータ42に入力し、これによりパイロットレギュレータ42からのエア圧が実際に要する力に対応するものとなる。従って、搬送補助装置10は、アタッチメント20の移動時にかかる実際の力に応じてバランサ22がアタッチメント20を支持するので、ワークWの搬送時の搬送負荷をより適切に低減することができる。ここで、圧力センサ62、力覚センサ66、電空レギュレータ48および制御手段64は、電気的に接続されているので、エアによる回路と比べて応答速度を速くすることができ、作業者がワークWを搬送する際に少ないタイムラグでワークWの重量や抵抗を勘案した実際の力に応じた搬送サポートを行うことができる。
【0029】
搬送補助装置10は、空圧回路40の圧力を検知する圧力センサ62を用いることで、
検知対象(バランサ22のシリンダ内部(前提例)、空圧回路40におけるパイロットレギュレータ42へパイロット圧を供給する管路(実施例))の圧力をより適切に判別することができ、パイロットレギュレータ42により調節されるバランサ22の支持力の制御により適切に反映することができる。また、力覚センサ66によってアタッチメント20の上昇および下降方向の力を検知することで、バランサ22によるアタッチメント20の支持力を、作業者が感じている実際により合わせて調節することができる。
【0030】
(変更例)
前述した構成に限定されず、例えば以下のようにも変更することができる。
(1)実施例では、バランサでアームを支持する構成を挙げたが、これに限定されず、ワイヤーをバランサで支持して、ワイヤーに吊った保持手段で搬送物を保持する構成であってもよい。
(2)実施例の回路を構成するスイッチや弁類および回路構成は、実施例に限定されず、例えば、スイッチや弁類を電気制御にするなど、本発明を達成し得る種々の構成を採用できる。
(3)第2検知手段としては、力が加わると、それを電気信号に変換し得るセンサ(スイッチ)を用いることができ、力覚センサ以外に、ロードセル、ベクトルセンサ、フォースセンサなどを採用可能である
。
(4)第1検知手段は、
前提例のように1つに限らず、
実施例および
前提例で記載した場所などに、複数設けてもよい。
なお、第1検知手段をバランサの近くに配置することで、バランサの圧力を精度よく検知し得る点で有利である。