特許第6599286号(P6599286)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6599286
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】基板作業装置
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/04 20060101AFI20191021BHJP
   H05K 13/08 20060101ALI20191021BHJP
   H05K 3/34 20060101ALI20191021BHJP
【FI】
   H05K13/04 P
   H05K13/08 Q
   H05K3/34 507L
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-120718(P2016-120718)
(22)【出願日】2016年6月17日
(65)【公開番号】特開2017-224781(P2017-224781A)
(43)【公開日】2017年12月21日
【審査請求日】2018年12月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】中村 亮介
【審査官】 土田 嘉一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−206906(JP,A)
【文献】 特開2005−243668(JP,A)
【文献】 特開2006−216852(JP,A)
【文献】 特開2012−059765(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00 − 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品が実装される基板に対して作業を行うとともに、前記基板に対して移動可能な作業部と、
前記作業部に設けられ、前記基板を撮像可能な撮像部と、
前記作業部の移動および前記撮像部による撮像を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記作業部の振動周期Tに対して、(n+1/2)×T(nは0以上の整数)の撮像周期で前記撮像部により前記基板を複数回撮像して、前記基板の位置を認識するように構成されている、基板作業装置。
【請求項2】
前記制御部は、(n+1/2)×Tの撮像周期で前記撮像部により前記基板を複数回撮像して、撮像した複数の画像における前記基板の位置座標値を平均して、前記基板の位置を認識するように構成されている、請求項1に記載の基板作業装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記撮像部の撮像可能時間間隔以上で、かつ、nが最小となる、(n+1/2)×Tの撮像周期で前記撮像部により前記基板を複数回撮像して、前記基板の位置を認識するように構成されている、請求項1または2に記載の基板作業装置。
【請求項4】
前記作業部の振動周期Tは、前記作業部が移動して停止したことによる固有振動の周期である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の基板作業装置。
【請求項5】
前記作業部は、水平方向において、第1方向と、前記第1方向に交差する第2方向とに移動可能に構成されるとともに、前記第1方向の移動による第1の振動周期と、前記第2方向の移動による第2の振動周期とを有し、
前記制御部は、前記第1方向および前記第2方向のうち撮像直前に前記作業部が移動した方向に対応する前記第1の振動周期または前記第2の振動周期を振動周期Tとして、(n+1/2)×Tの撮像周期で前記撮像部により前記基板を複数回撮像するように構成されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の基板作業装置。
【請求項6】
前記制御部は、(n+1/2)×Tの撮像周期で前記撮像部により前記基板を偶数回撮像して、前記基板の位置を認識するように構成されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の基板作業装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板作業装置に関し、特に、撮像部を備えた基板作業装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、撮像部を備えた基板作業装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、基板に部品を実装するとともに基板に対して移動可能な実装ヘッドと、実装ヘッドとともに移動され基板を撮像可能な撮像部と、実装ヘッドの移動および撮像部による撮像を制御する制御部とを備える実装装置(基板作業装置)が開示されている。この特許文献1の実装装置では、制御部は、一定周期またはランダム周期で基板のアライメントマークを撮像部により複数回撮像し、撮像された複数の画像内でのアライメントマークの位置の平均値を求めて、基板の位置を認識するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−206906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の実装装置(基板作業装置)では、一定周期またはランダム周期で基板のアライメントマークを撮像部により複数回撮像して、アライメントマークの位置の平均値を求めて、基板の位置を認識している。このため、一定周期で複数回撮像した場合、撮像部の振動周期と、撮像の周期とが等しくなる場合には、複数の画像内でアライメントマークの位置が同じ方向にずれて撮像されることになる。この場合、基板の位置を精度よく認識することが困難であるという問題点がある。また、ランダム周期で複数回撮像した場合、平均値が安定するまでに撮像回数を多くする必要があり、基板を認識するまでの時間が長くなるという問題点がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、基板を認識するまでの時間が長くなるのを抑制しつつ、基板の位置を精度よく認識することが可能な基板作業装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の一の局面による基板作業装置は、部品が実装される基板に対して作業を行うとともに、基板に対して移動可能な作業部と、作業部に設けられ、基板を撮像可能な撮像部と、作業部の移動および撮像部による撮像を制御する制御部とを備え、制御部は、作業部の振動周期Tに対して、(n+1/2)×T(nは0以上の整数)の撮像周期で撮像部により基板を複数回撮像して、基板の位置を認識するように構成されている。
【0008】
この発明の第1の局面による基板作業装置では、上記のように、作業部の振動周期Tに対して、(n+1/2)×T(nは0以上の整数)の撮像周期で撮像部により基板を複数回撮像して、基板の位置を認識する制御部を設ける。これにより、正弦波状に振動する振動周期Tの1/2または1/2+自然数の撮像周期で撮像が行われるので、撮像された画像内において基板の位置が反対方向に略同じ距離だけずれた状態の複数の画像を取得することができる。その結果、複数の画像内の基板の位置座標値を平均すれば、基板の位置を精度よく認識することができる。また、撮像された画像内において基板の位置が反対方向に略同じ距離だけずれるので、最少2回の撮像により画像内の基板の位置座標値の平均が安定する。これにより、撮像回数が過度に増えるのを抑制することができるので、基板を認識するまでの時間が長くなるのを抑制することができる。また、振動が収束するまで撮像を待機する必要がないので、これによっても、基板を認識するまでの時間が長くなるのを抑制することができる。
【0009】
上記一の局面による基板作業装置において、好ましくは、制御部は、(n+1/2)×Tの撮像周期で撮像部により基板を複数回撮像して、撮像した複数の画像における基板の位置座標値を平均して、基板の位置を認識するように構成されている。このように構成すれば、基板を撮像した複数の画像に基づいて、容易に基板の位置を精度よく認識することができる。
【0010】
上記一の局面による基板作業装置において、好ましくは、制御部は、撮像部の撮像可能時間間隔以上で、かつ、nが最小となる、(n+1/2)×Tの撮像周期で撮像部により基板を複数回撮像して、基板の位置を認識するように構成されている。このように構成すれば、撮像可能で、かつ、撮像された画像内において基板の位置が反対方向に略同じ距離だけずれる最短の撮像周期により、基板を複数回撮像することができるので、撮像時間が長くなるのを容易に抑制することができる。
【0011】
上記一の局面による基板作業装置において、好ましくは、作業部の振動周期Tは、作業部が移動して停止したことによる固有振動の周期である。このように構成すれば、撮像部を撮像位置に移動させるために、作業部が移動し停止されたことによる固有振動の周期に合わせて、撮像部により基板を複数回撮像することができるので、画像内において基板の位置が反対方向に略同じ距離だけずれた状態の複数の画像を容易に撮像することができる。
【0012】
上記一の局面による基板作業装置において、好ましくは、作業部は、水平方向において、第1方向と、第1方向に交差する第2方向とに移動可能に構成されるとともに、第1方向の移動による第1の振動周期と、第2方向の移動による第2の振動周期とを有し、制御部は、第1方向および第2方向のうち撮像直前に作業部が移動した方向に対応する第1の振動周期または第2の振動周期を振動周期Tとして、(n+1/2)×Tの撮像周期で撮像部により基板を複数回撮像するように構成されている。このように構成すれば、第1方向の移動による第1の振動周期と、第2方向の移動による第2の振動周期とが異なる場合でも、撮像直前に移動した方向に対応する振動周期に合わせて、撮像部により基板を複数回撮像することができるので、第1方向の移動に起因して振動した場合および第2方向の移動に起因して振動した場合のいずれの場合でも、基板の位置を精度よく認識することができる。
【0013】
上記一の局面による基板作業装置において、好ましくは、制御部は、(n+1/2)×Tの撮像周期で撮像部により基板を偶数回撮像して、基板の位置を認識するように構成されている。このように構成すれば、画像内において基板の位置が一方方向にずれた状態の画像と、一方方向と反対の他方方向にずれた状態の画像とが同じ数になるので、複数の画像の基板の位置座標値を単純に平均することにより、容易に基板の位置を精度よく認識することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、上記のように、基板を認識するまでの時間が長くなるのを抑制しつつ、基板の位置を精度よく認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態による部品実装装置の概略を示した平面図である。
図2】本発明の一実施形態による部品実装装置の概略を示した正面図である。
図3】本発明の一実施形態による部品実装装置の制御的な構成を示したブロック図である。
図4】本発明の一実施形態による部品実装装置の第1の振動周期および第2の振動周期を説明するための図である。
図5】本発明の一実施形態による部品実装装置の基板の位置座標値を説明するための図である。
図6】本発明の一実施形態による部品実装装置の振動周期と撮像可能時間間隔との関係を説明するための図である。
図7】本発明の一実施形態による部品実装装置のCPUによる基板位置認識処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
(部品実装装置の構成)
図1図6を参照して、本発明の一実施形態による部品実装装置100の構成について説明する。
【0018】
図1に示すように、部品実装装置100は、コンベア2により基板PをX方向に搬送し、実装作業位置において基板Pに部品32を実装する部品実装装置である。なお、部品実装装置100は、特許請求の範囲の「基板作業装置」の一例である。
【0019】
図1および図2に示すように、部品実装装置100は、基台1と、2組(2レーン)のコンベア2と、部品供給部3と、4つのヘッドユニット4と、4つの支持部5と、2つのレール部6と、4つの部品認識カメラ7とを備えている。また、図3に示すように、部品実装装置100は、制御的な構成として、CPU(中央演算処理装置)81と、メモリ82と、画像処理装置83と、モータ制御装置84とを備えている。なお、ヘッドユニット4は、特許請求の範囲の「作業部」の一例であり、CPU81は、特許請求の範囲の「制御部」の一例である。
【0020】
コンベア2は、基台1上に設置され、基板PをX方向に搬送するように構成されている。また、2組のコンベア2は、Y方向に沿って並んで配置されている。つまり、コンベア2は、Y1方向およびY2方向に1対ずつ設けられている。また、コンベア2は、搬送中の基板Pを実装作業位置で停止させた状態で保持するように構成されている。また、コンベア2は、基板Pの寸法に合わせてY方向の間隔を調整可能に構成されている。また、コンベア2は、基板Pの搬送方向(X方向)において、分割されている。つまり、コンベア2は、上流側(X1方向側)に配置された搬入コンベアと、下流側(X2方向側)に配置された搬出コンベアと、搬入コンベアおよび搬出コンベアの間に配置された2つの搬送コンベアとに分割されている。コンベア2は、搬入コンベア、搬送コンベア、搬出コンベアの順で、基板Pを受け渡して搬送するように構成されている。
【0021】
部品供給部3は、コンベア2の外側(Y1側およびY2側)に配置されている。また、部品供給部3には、複数のテープフィーダ31が配置されている。テープフィーダ31は、複数の部品32を所定の間隔を隔てて保持したテープが巻き付けられたリール(図示せず)を保持している。テープフィーダ31は、リールを回転させて部品32を保持するテープを送出することにより、テープフィーダ31の先端から部品32を供給するように構成されている。ここで、部品32は、IC、トランジスタ、コンデンサおよび抵抗などの電子部品を含む。
【0022】
ヘッドユニット4は、部品32が実装される基板Pに対して作業を行うように構成されている。また、ヘッドユニット4は、基板Pに対して移動可能に構成されている。具体的には、ヘッドユニット4は、コンベア2および部品供給部3の上方位置に配置されている。また、ヘッドユニット4は、4つ設けられている。つまり、ヘッドユニット4は、1レーンのコンベア2について、X1方向側と、X2方向側との2つ設けられている。また、4つのヘッドユニット4は、それぞれ同様の構成を有している。また、4つのヘッドユニット4は、独立して駆動可能に構成されている。つまり、4つのヘッドユニット4は、互いに干渉しなければ、独立してX方向およびY方向に移動することが可能である。各々のヘッドユニット4は、図2に示すように、ノズル41が下端(Z1方向端)に取り付けられた複数(5つ)の実装ヘッド42と、X方向の両端に設けられた2つの基板認識カメラ43とを含んでいる。また、ヘッドユニット4は、図3に示すように、複数の実装ヘッド42を各々上下方向に移動させるZ軸モータ44と、実装ヘッド42を上下方向の軸線を中心に各々回動させるR軸モータ45とを含んでいる。なお、基板認識カメラ43は、特許請求の範囲の「撮像部」の一例である。
【0023】
実装ヘッド42は、昇降可能(Z方向に移動可能)に構成され、負圧発生機(図示せず)によりノズル41の先端部に発生された負圧によって、テープフィーダ31から供給される部品32を吸着して保持し、基板Pにおける実装位置に部品32を装着(実装)する作業を行うように構成されている。
【0024】
基板認識カメラ43は、ヘッドユニット4とともにXY方向に移動可能に構成されている。また、基板認識カメラ43は、基板Pの位置を認識するために、基板PのフィデューシャルマークMを撮像するように構成されている。そして、フィデューシャルマークMの位置を撮像して認識することにより、基板Pの位置(XY平面内における位置)および姿勢(回転姿勢)をCPU81により認識することが可能である。また、基板Pにおける部品32の実装位置を正確に取得することが可能である。また、基板認識カメラ43の近傍には、照明が設けられている。照明は、基板認識カメラ43の撮像時に可視光を基板Pに照射するように構成されている。これにより、基板認識カメラ43により基板P(フィデューシャルマークM)を鮮明に撮像することが可能である。
【0025】
支持部5は、ヘッドユニット4毎に設けられている。つまり、支持部5は、X方向に2列、Y方向に2列の計4つ設けられている。支持部5は、モータ51を含んでいる。支持部5は、モータ51を駆動させることにより、支持部5に沿ってヘッドユニット4をX方向に移動させるように構成されている。支持部5は、X方向における片方の端部がレール部6により支持されている。つまり、支持部5は、レール部6により片持ち状態で支持されている。
【0026】
レール部6は、基台1上に固定されている。レール部6は、基台1のX1側の端部近傍およびX2側の端部近傍に設けられている。レール部6には、4つのモータ61が設けられている。具体的には、モータ61は、4つの支持部5のそれぞれに対応するように、4つ設けられている。レール部6は、モータ61を駆動させることにより、支持部5をレール部6に沿ってX方向と直交するY方向に移動させるように構成されている。ヘッドユニット4が支持部5に沿ってX方向に移動可能であるとともに、支持部5がレール部6に沿ってY方向に移動可能であることによって、ヘッドユニット4はXY方向に移動可能である。なお、X方向およびY方向は、それぞれ、特許請求の範囲の「第1方向」および「第2方向」の一例である。
【0027】
部品認識カメラ7は、基台1の上面上に固定されている。部品認識カメラ7は、部品32を撮像可能に構成されている。また、部品認識カメラ7は、4つのヘッドユニットに対応して4つ設けられている。具体的には、部品認識カメラ7は、コンベア2の外側(Y1側およびY2側)に2つずつ配置されている。また、部品認識カメラ7は、X方向に所定の間隔を隔てて配置されている。部品認識カメラ7は、部品32の実装に先立って部品32の吸着状態(吸着姿勢)を認識するために、実装ヘッド42のノズル41に吸着された部品32を下側(Z2側)から撮像するように構成されている。これにより、実装ヘッド42のノズル41に吸着された部品32の吸着状態をCPU81により取得することが可能である。また、部品認識カメラ7の近傍には、照明が設けられている。照明は、部品認識カメラ7の撮像時に可視光をノズル41に吸着された部品32に照射するように構成されている。これにより、部品認識カメラ7によりノズル41に吸着された部品32を鮮明に撮像することが可能である。
【0028】
CPU81は、コンベア2による基板Pの搬送動作、ヘッドユニット4の移動および実装動作、基板認識カメラ43や部品認識カメラ7による撮像動作などの部品実装装置100の全体の動作を制御するように構成されている。
【0029】
メモリ82は、基板Pの情報、部品32の情報、実装動作を行うプログラムなどが格納されている。また、メモリ82は、CPU81の動作の際に情報が記憶されるように構成されている。また、メモリ82は、基板認識カメラ43や部品認識カメラ7により撮像された画像が記憶されるように構成されている。
【0030】
ここで、本実施形態では、CPU81は、ヘッドユニット4の正弦波状の振動の振動周期Tに対して、(n+1/2)×T(nは0以上の整数)の撮像周期で基板認識カメラ43により基板Pを複数回撮像して、基板Pの位置を認識するように構成されている。なお、ヘッドユニット4の振動とは、ヘッドユニット4が移動して停止したことによる固有振動である。つまり、ヘッドユニット4の振動周期Tは、ヘッドユニット4が移動して停止したことによる正弦波状の固有振動の周期である。また、ヘッドユニット4の振動周期Tは、たとえば、事前にヘッドユニット4に3軸センサを取り付け、ヘッドユニット4を移動させて測定される。この場合、図4に示すように、ヘッドユニット4をX方向に移動させた場合の第1の振動周期T1と、ヘッドユニット4をY方向に移動させた場合の第2の振動周期T2とが、それぞれ、測定される。つまり、ヘッドユニット4は、移動方向(X方向およびY方向)に起因して互いに異なる固有振動の振動周期を有している。図4に示す例では、第1の振動周期T1が第2の振動周期T2より長い例を示している。なお、第1の振動周期T1が第2の振動周期T2より短くてもよい。また、基台1や、レール部6をハンマにより打つことにより、ヘッドユニット4の固有振動の振動周期を測定してもよい。なお、X方向は、特許請求の範囲の「第1方向」の一例であり、Y方向は、特許請求の範囲の「第2方向」の一例である。
【0031】
また、CPU81は、(n+1/2)×Tの撮像周期で基板認識カメラ43により基板Pを複数回撮像して、撮像した複数の画像における基板Pの位置座標値を平均して、基板Pの位置を認識するように構成されている。具体的には、図5に示すように、CPU81は、基板PのフィデューシャルマークMの画像中の位置座標値を取得し、複数の画像中のフィデューシャルマークMの位置座標値を平均して、フィデューシャルマークMの平均の位置座標値を算出する。そして、CPU81は、平均の位置座標値の位置にフィデューシャルマークMが位置しているとして、基板Pの位置および姿勢を認識する。図5に示す例では、1回目の撮像において、フィデューシャルマークMが座標(x1,y1)の位置に認識される。また、2回目の撮像において、フィデューシャルマークMが座標(x2,y2)の位置に認識される。そして、座標(x1,y1)と、座標(x2,y2)とが平均されて、座標(xa,ya)の位置にフィデューシャルマークMが位置していると認識される。ただし、xa=(x1+x2)/2であり、ya=(y1+y2)/2である。
【0032】
また、CPU81は、基板認識カメラ43の撮像可能時間間隔Tc以上で、かつ、nが最小となる、(n+1/2)×Tの撮像周期で基板認識カメラ43により基板Pを複数回撮像して、基板Pの位置を認識するように構成されている。具体的には、CPU81は、図6に示すように、(n−1/2)×T<Tc≦(n+1/2)×Tを満たす、(n+1/2)×Tの撮像周期で基板認識カメラ43により基板Pを複数回撮像するように構成されている。たとえば、撮像可能時間間隔Tcが振動周期Tの1/2より大きく、振動周期Tの3/2以下の場合、CPU81は、3/2×Tの撮像周期で基板認識カメラ43により基板Pを複数回撮像するように構成されている。なお、撮像可能時間間隔Tcは、基板認識カメラ43が、連続して撮像することが可能な時間間隔である。具体的には、撮像可能時間間隔Tcは、基板認識カメラ43のシャッタースピード、フレームレート、画像処理時間などに基づいて決定される。
【0033】
また、CPU81は、X方向およびY方向のうち撮像直前にヘッドユニット4が移動した方向に対応する第1の振動周期T1または第2の振動周期T2(図4参照)を振動周期Tとして、(n+1/2)×Tの撮像周期で基板認識カメラ43により基板Pを複数回撮像するように構成されている。つまり、撮像直前にヘッドユニット4がX方向に移動して停止した場合、CPU81は、X方向の移動に対応した第1の振動周期T1を振動周期Tとして、(n+1/2)×Tの撮像周期で基板認識カメラ43により基板Pを複数回撮像するように構成されている。また、撮像直前にヘッドユニット4がY方向に移動して停止した場合、CPU81は、Y方向の移動に対応した第2の振動周期T2を振動周期Tとして、(n+1/2)×Tの撮像周期で基板認識カメラ43により基板Pを複数回撮像するように構成されている。
【0034】
また、CPU81は、(n+1/2)×Tの撮像周期で基板認識カメラ43により基板Pを偶数回撮像して、基板Pの位置を認識するように構成されている。好ましくは、CPU81は、(n+1/2)×Tの撮像周期で基板認識カメラ43により基板Pを2回撮像するように構成されている。
【0035】
(基板位置認識処理)
次に、図7を参照して、部品実装装置100のCPU81による基板位置認識処理についてフローチャートに基づいて説明する。なお、図7の例では、基板認識カメラ43により、基板Pが(n+1/2)×Tの撮像周期で2回撮像される例について説明する。
【0036】
図7のステップS1において、ヘッドユニット4が移動される。ステップS2において、ヘッドユニット4が停止される。具体的には、基板認識カメラ43が、基板PのフィデューシャルマークMを撮像可能な位置となるように、ヘッドユニット4がX方向およびY方向において移動されて、停止される。
【0037】
ステップS3において、基板認識カメラ43により、基板PのフィデューシャルマークMの1回目の撮像が行われる。ステップS4において、(n+1/2)×T経過するまで待機する。ステップS5において、基板認識カメラ43により、基板PのフィデューシャルマークMの2回目の撮像が行われる。
【0038】
ステップS6において、撮像した2枚の画像の画像処理が行われる。具体的には、撮像した画像中のフィデューシャルマークMの位置座標値が算出される。ステップS7において、基板PのフィデューシャルマークMの位置座標値の平均値が算出される。その後、ステップS1〜S7の処理が、認識するフィデューシャルマークMの数分だけ繰り返される。たとえば、フィデューシャルマークMが2つある場合、ステップS1〜S7の処理が2回繰り返される。ステップS8において、基板Pの位置および姿勢が取得される。その後、基板位置認識処理が終了される。
【0039】
(本実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0040】
本実施形態では、上記のように、ヘッドユニット4の振動周期Tに対して、(n+1/2)×T(nは0以上の整数)の撮像周期で基板認識カメラ43により基板Pを複数回撮像して、基板Pの位置を認識するCPU81を設ける。これにより、正弦波状に振動する振動周期Tの1/2または1/2+自然数の撮像周期で撮像が行われるので、撮像された画像内において基板Pの位置が反対方向に略同じ距離だけずれた状態の複数の画像を取得することができる。その結果、複数の画像内の基板Pの位置座標値を平均すれば、基板Pの位置を精度よく認識することができる。また、図6に示すように、撮像された画像内において基板Pの位置が反対方向に略同じ距離だけずれる(d1≒d2)ので、最少2回の撮像により画像内の基板Pの位置座標値の平均が安定する。これにより、撮像回数が過度に増えるのを抑制することができるので、基板Pを認識するまでの時間が長くなるのを抑制することができる。また、振動が収束するまで撮像を待機する必要がないので、これによっても、基板Pを認識するまでの時間が長くなるのを抑制することができる。
【0041】
また、本実施形態では、CPU81を、(n+1/2)×Tの撮像周期で基板認識カメラ43により基板Pを複数回撮像して、撮像した複数の画像における基板Pの位置座標値を平均して、基板Pの位置を認識するように構成する。これにより、基板Pを撮像した複数の画像に基づいて、容易に基板Pの位置を精度よく認識することができる。
【0042】
また、本実施形態では、CPU81を、基板認識カメラ43の撮像可能時間間隔以上で、かつ、nが最小となる、(n+1/2)×Tの撮像周期で基板認識カメラ43により基板Pを複数回撮像して、基板Pの位置を認識するように構成する。これにより、撮像可能で、かつ、撮像された画像内において基板Pの位置が反対方向に略同じ距離だけずれる最短の撮像周期により、基板Pを複数回撮像することができるので、撮像時間が長くなるのを容易に抑制することができる。
【0043】
また、本実施形態では、ヘッドユニット4の振動周期Tは、ヘッドユニット4が移動して停止したことによる固有振動の周期である。これにより、基板認識カメラ43を撮像位置に移動させるために、ヘッドユニット4が移動し停止されたことによる固有振動の周期に合わせて、基板認識カメラ43により基板Pを複数回撮像することができるので、画像内において基板Pの位置が反対方向に略同じ距離だけずれた状態の複数の画像を容易に撮像することができる。
【0044】
また、本実施形態では、CPU81を、X方向およびY方向のうち撮像直前にヘッドユニット4が移動した方向に対応する第1の振動周期T1または第2の振動周期T2を振動周期Tとして、(n+1/2)×Tの撮像周期で基板認識カメラ43により基板Pを複数回撮像するように構成する。これにより、X方向の移動による第1の振動周期T1と、Y方向の移動による第2の振動周期T2とが異なる場合でも、撮像直前に移動した方向に対応する振動周期に合わせて、基板認識カメラ43により基板Pを複数回撮像することができるので、X方向の移動に起因して振動した場合およびY方向の移動に起因して振動した場合のいずれの場合でも、基板Pの位置を精度よく認識することができる。
【0045】
また、本実施形態では、CPU81を、(n+1/2)×Tの撮像周期で基板認識カメラ43により基板Pを偶数回撮像して、基板Pの位置を認識するように構成する。これにより、画像内において基板Pの位置が一方方向にずれた状態の画像と、一方方向と反対の他方方向にずれた状態の画像とが同じ数になるので、複数の画像の基板Pの位置座標値を単純に平均することにより、容易に基板Pの位置を精度よく認識することができる。
【0046】
(変形例)
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0047】
たとえば、上記実施形態では、本発明を基板作業装置としての部品実装装置に適用する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明を部品実装装置以外に適用してもよい。たとえば、本発明を部品が実装された基板を検査する検査装置に適用してもよい。また、本発明を部品が実装される基板に半田などを印刷する印刷装置に適用してもよい。また、本発明を部品が実装される基板に接着剤や半田などを塗布する塗布装置に適用してもよい。
【0048】
また、上記実施形態では、ヘッドユニット(作業部)が4つ設けられている構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、作業部は、1つ以上3つ以下、または、4つ以上設けられていてもよい。
【0049】
また、上記実施形態では、ヘッドユニット(作業部)が片持ち状の支持部により支持されている構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、作業部は、両持ち状の支持部により支持されていてもよい。
【0050】
また、上記実施形態では、部品実装装置(基板作業装置)にコンベアが並列に2レーン設けられている構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、基板作業装置にコンベアが1レーン設けられていてもよいし、3レーン以上設けられていてもよい。
【0051】
また、上記実施形態では、撮像した複数の画像における基板の位置座標値を平均して、基板の位置を認識する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、撮像した複数の画像における基板の位置座標値を平均以外の方法により計算して、基板の位置を認識してもよい。たとえば、振動の減衰を加味して、複数の画像における基板の位置座標値を重付けをして計算して、基板の位置を認識してもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、基板のフィデューシャルマークを撮像して、基板の位置を認識する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、基板のフィデューシャルマーク以外の特徴点を撮像して、基板の位置を認識してもよい。
【0053】
また、上記実施形態では、(n+1/2)×Tの撮像周期で基板認識カメラ(撮像部)により基板を偶数回撮像する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、(n+1/2)×Tの撮像周期で撮像部により基板を3以上の奇数回撮像してもよい。この場合、奇数番目の撮像に基づく基板の位置座標値を平均し、偶数番目の撮像に基づく基板の位置座標値を平均し、奇数番目の平均および偶数番目の平均を平均して、基板の位置を認識してもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、CPU(制御部)が部品実装装置(基板作業装置)に内蔵されている構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部が基板作業装置の外に設けられていてもよい。たとえば、制御部としてのコンピュータが基板作業装置に接続されていてもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、説明の便宜上、CPU(制御部)の処理を処理フローに沿って順番に処理を行うフロー駆動型のフローを用いて説明したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部の処理を、イベント単位で処理を実行するイベント駆動型(イベントドリブン型)の処理により行ってもよい。この場合、完全なイベント駆動型で行ってもよいし、イベント駆動およびフロー駆動を組み合わせて行ってもよい。
【符号の説明】
【0056】
4 ヘッドユニット(作業部)
32 部品
43 基板認識カメラ(撮像部)
81 CPU(制御部)
100 部品実装装置(基板作業装置)
P 基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7