(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6599295
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】斜角反射体を備えた発光素子およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 33/50 20100101AFI20191021BHJP
H01L 33/60 20100101ALI20191021BHJP
【FI】
H01L33/50
H01L33/60
【請求項の数】18
【外国語出願】
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2016-197250(P2016-197250)
(22)【出願日】2016年10月5日
(65)【公開番号】特開2017-108111(P2017-108111A)
(43)【公開日】2017年6月15日
【審査請求日】2017年2月2日
(31)【優先権主張番号】104132711
(32)【優先日】2015年10月5日
(33)【優先権主張国】TW
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516299316
【氏名又は名称】マブン オプトロニックス カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】MAVEN OPTRONICS CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100109634
【弁理士】
【氏名又は名称】舛谷 威志
(72)【発明者】
【氏名】チェ− チェン
(72)【発明者】
【氏名】ツォン−シ ワン
【審査官】
小濱 健太
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−077679(JP,A)
【文献】
国際公開第2014/091914(WO,A1)
【文献】
国際公開第2015/025247(WO,A1)
【文献】
国際公開第2013/137356(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00−33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面、該上面に対向する下面、縁面および一組の電極を含み、前記縁面は前記上面と前記下面の間に伸び、前記一組の電極が該下面上に配設されている発光ダイオード(LED)半導体ダイと、
該LED半導体ダイ上に配設され、上面、該上面に対向する下面、および該上面と該下面の間に伸びる縁面を含み、前記上面が前記下面より大きくて前記縁面が斜角縁面をなし、該下面が前記LED半導体ダイの上面に隣接し、蛍光体層と、該蛍光体層の上に配設された透明層とを含むフォトルミネセンス構造体と、
前記LED半導体ダイの前記縁面および前記フォトルミネセンス構造体の前記斜角縁面を覆う反射体とを含み、
前記反射体の下面の内縁は、前記LED半導体ダイの前記下面の縁に接合されており、該反射体の上面の外縁の高さは前記フォトルミネセンス構造体の上面より低く、該蛍光体層の上面より高く、前記フォトルミネセンス構造体の前記斜角縁面は一部が前記反射体から露出している発光素子。
【請求項2】
前記フォトルミネセンス構造体の前記下面の大きさは、前記LED半導体ダイの前記上面の大きさに等しいか、あるいは前記LED半導体ダイの前記上面の大きさより大きい請求項1に記載の発光素子。
【請求項3】
前記反射体は、透明樹脂材料および該透明樹脂材料中に分散された反射粒子を含む請求項1に記載の発光素子。
【請求項4】
前記透明樹脂材料は、ポリフタルアミド、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、エポキシ成形材料またはシリコーン樹脂のうちの少なくとも1つを含み、前記反射粒子はTiO2、BN、SiO2またはAl2O3のうちの少なくとも1つを含む請求項3に記載の発光素子。
【請求項5】
前記反射体は、前記LED半導体ダイの前記縁面に隣接する内側縁面および前記フォトルミネセンス構造体の前記斜角縁面に隣接する内側斜角縁面を有する請求項1に記載の発光素子。
【請求項6】
前記透明層の屈折率は前記蛍光体層の屈折率より低い請求項1に記載の発光素子。
【請求項7】
前記フォトルミネセンス構造体は、さらに、前記蛍光体層に配設されたマイクロレンズアレイ層を含む請求項1に記載の発光素子。
【請求項8】
前記フォトルミネセンス構造体は、さらに、前記蛍光体層の下に配設されたもう一つの透明層を含む請求項1に記載の発光素子。
【請求項9】
前記反射体の下面は凹状空間を画成する請求項1に記載の発光素子。
【請求項10】
前記フォトルミネセンス構造体の前記下面は、該フォトルミネセンス構造体の該下面に垂直な方向から見て、前記LED半導体ダイの前記上面全体を覆う請求項1に記載の発光素子。
【請求項11】
前記反射体の幅は2.0mm以下であり、該反射体の長さは3.0mm以下である請求項1に記載の発光素子。
【請求項12】
下面、該下面より大きい上面、及び、該上面と該下面との間に伸びる斜角縁面を含むフォトルミネセンス構造体を形成し、該フォトルミネセンス構造体がさらに蛍光体層と、該蛍光体層の上に配設された透明層とを含み、
該フォトルミネセンス構造体をLED半導体ダイに取り付けて電子発光構造体を形成し、
反射体の分配樹脂材料の総量を減らした分配処理によって、該LED半導体ダイの縁面及び該フォトルミネセンス構造体の該斜角縁面を被覆する反射体を形成し、該LED半導体ダイの一組の電極が剥離層中に埋め込まれ、該反射体は逆角錐台形状の内側縁面を含み、前記反射体の上面、下面、及び該下面の内縁は、前記LED半導体ダイの下面の縁に接合されており、該反射体の上面の外縁の高さが該フォトルミネセンス構造体の上面より低く、該蛍光体層の上面より高く、前記フォトルミネセンス構造体の前記斜角縁面は一部が前記反射体から露出しており、
該反射体の形成後、該剥離層を除去することを含む発光素子の製造方法。
【請求項13】
前記電子発光構造体の形成は、
前記フォトルミネセンス構造体を前記LED半導体ダイの上面に取り付けて、該フォトルミネセンス構造体の前記下面によって該LED半導体ダイの該上面を完全に覆うことを含む請求項12に記載の発光素子の製造方法。
【請求項14】
前記フォトルミネセンス構造体の形成は、
打抜き、成形、ソーイング、精密機械加工またはマイクロ機械加工により前記斜角縁面を形成することを含む請求項13に記載の発光素子の製造方法。
【請求項15】
前記フォトルミネセンス構造体の形成はさらに、
フォトルミネセンスシートに打ち抜きくことで、該フォトルミネセンスシートを斜角縁面を備えた複数のフォトルミネセンス構造体に分離することを含み、該複数のフォトルミネセンス構造体が前記フォトルミネセンス構造体を構成する請求項13に記載の発光素子の製造方法。
【請求項16】
前記フォトルミネセンス構造体の前記LED半導体ダイへの取付けは、該フォトルミネセンス構造体を該LED半導体ダイに接着することを含む請求項12ないし15のいずれかに記載の発光素子の製造方法。
【請求項17】
上面、該上面に対向する下面、縁面および一組の電極を含み、前記縁面は前記上面と前記下面の間に伸び、前記一組の電極が該下面上に配設されているLED半導体ダイと、
該LED半導体ダイの上に配設され、上面、該上面に対向する下面、および該上面と該下面の間に伸びる縁面を含み、前記上面の大きさが前記下面の大きさに等しいかもしくは大きく、該下面が前記LED半導体ダイの前記上面に隣接し、底部が蛍光体層を含み該蛍光体層の上に配設された透明層を含む透明構造体と、
前記LED半導体ダイの前記縁面および前記透明構造体の前記縁面を覆う反射体とを含み、該反射体の高さが該LED半導体ダイの長さの0.1倍以上で、該LED半導体ダイの前記長さの5倍以下であり、
前記反射体の下面の内縁は、前記LED半導体ダイの前記下面の縁に接合されており、該反射体の上面の外縁の高さは該透明構造体の上面より低く、該蛍光体層の上面より高く、前記フォトルミネセンス構造体の前記斜角縁面は一部が前記反射体から露出している発光素子。
【請求項18】
前記透明構造体は樹脂材料を含む請求項17に記載の発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子およびその製造方法に関するものであり、とくに作動状態において電磁放射を発する発光ダイオード(LED)半導体ダイを含むチップスケールパッケージ型発光素子に関する。
【0002】
ここ数十年、LEDは、信号灯、バックライト装置、一般照明、携帯端末用部材、自動車用照明などを含む応用分野において広く使用されている。通常、LED半導体ダイは、パッケージ構造体内に配設し、さらに/または発光路に沿ってフォトルミネセンス材料で覆って発光素子を形成している。
【0003】
発光素子の高い光取出し効率、および応用分野で求められる所望の視野角は、いずれもパッケージ構造体の幾何学的設計を適切に行うことによって実現できる。例えば、従来のプラスチック・リード付きチップキャリア(PLCC)型のLEDパッケージは、白色LEDを形成するうえで経済的なパッケージ構造体として広く用いられている。PLCC型パッケージ構造体の場合、反射カップ面の形状を適切に設計することで、光取出し効率ならびに所望の視野角を効果的に最適化できる。しかし、PLCC型LED固有の限界がある。例えば、1)発光角度の異なる様々な光路はその長さが大きくばらつくため、色の空間的均一性が低く、その結果、イエローリングまたはブルーリングが生じてしまう。2)PLCC型蛍光体変換型発光素子は、パッケージ内に接合されているLED半導体ダイよりも発光面積がはるかに大きく、発光面積が大きいとLEDの光源としてのエタンデュが大きくなってしまい、補助光学レンズの設計が複雑になる。3)LED半導体ダイとリードフレームの間の熱抵抗が比較的高いため、PLCC型LEDパッケージの熱放散性が低い。
【0004】
近年、フリップチップLED半導体ダイを用いて形状因子のはるかに小さい蛍光体変換型LEDを製造するという別の取り組み、いわゆるチップスケールパッケージング(CSP)によって、PLCC型LEDによく見られるこれらの問題に効果的に対処することができる。CSP型LEDは、チップスケールの発光面積が小さいため、ほぼ理想的な点光源が得られ、フリップチップ設計ゆえに放熱経路が良好であるという利点があるが、これのみに限らない。また、製造工程が簡素化することで、CSP型LEDの製造にかかる製造費用がPLCC型LEDより安くなる。
【0005】
しかし、CSP型LEDではパッケージサイズの小型化が恒常的に進んでいるため、従来のPLCC型LEDパッケージによく見られた優れた光学特性の一部がCSP型LEDでは失われてしまう。例えばCSP型LEDでは、フォトルミネセンス構造体の4つの縁面は、それぞれ反射体で囲まれているが、既存の製造工程に制限があるので、発光(上)面に垂直な垂直平面となってしまう。垂直平面型反射体の設計には、次のような不利な点がある。すなわち、垂直方向に平坦な側反射体に向かってフォトルミネセンス構造体内を進む光は、大半がこれによって反射されてフォトルミネセンス構造体内にトラップされてしまい、さらに悪いことには、フォトルミネセンス構造体の上面で起きる全反射によってLED半導体ダイに向かって反射されて、半導体ダイに吸収されてしまうことがある。この種のパッケージ構造体では、波長変換後の光がフォトルミネセンス構造体から多く漏れ出ることができないため、パッケージの光取出し効率が低下し、発光素子のパッケージ構造体内における光エネルギー損失量が大きくなってしまう。そのうえ、CSP型LEDの視野角を変えるための適切な解決法がいまだに提供されていない。
【0006】
そのため、改良されたCSP型LEDを設計して、光取出し効率をさら高め、色の空間的均一性を向上させ、放射面積をほぼ理想的な点光源にまで絞り、熱抵抗を少なくし、視野角を制御可能にする必要がある。
【0007】
本発明のいくつかの実施形態は、光取出し効率を向上させ、色の空間的均一性を改善してカラーリングが起こらないようにし、発光面積を小さくし、熱抵抗を低くして熱放散を良好にし、視野角をいろいろな用途に合わせることができるようにした発光素子およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明の他のいくつかの実施形態は、光取出し効率を向上させ、色の空間的均一性を改善してカラーリングが起こらないようにし、発光面積を小さくし、熱抵抗を低くして熱放散を良好にし、視野角をいろいろな用途に合わせることができるようにした形状因子の小さいCSP型発光素子およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
これらの目的を達成するために、いくつかの実施形態に基づいてLED半導体ダイ、フォトルミネセンス構造体および反射体を備えた発光素子を開示する。LED半導体ダイは、上面、上面に平行で対向する下面、縁面および一組の電極を備えている。縁面は上面と下面の間に伸び、一組の電極は下面に配設されている。フォトルミネセンス構造体はLED半導体ダイの上に配設されるものであり、上面、上面に平行で対向する下面、および上面と下面の間に伸びる縁面を備えている。フォトルミネセンス構造体の上面の大きさは、フォトルミネセンス構造体の下面の大きさより大きい。これにより、フォトルミネセンス構造体の大きい上面と小さい下面との間に斜角縁面が形成される。さらに、フォトルミネセンス構造体の下面は、LED半導体ダイの上面と隣接している。反射性材料がLED半導体ダイの垂直縁面およびフォトルミネセンス構造体の斜角縁面を囲繞するように配されて、斜角縁反射体を形成している。
【0010】
上述の目的を達成するために、本発明に係るいくつかの実施形態による発光素子の製造方法を開示する。本方法は、逆角錐様形状のフォトルミネセンス構造体を形成し、フォトルミネセンス構造体をLED半導体ダイの上に取り付けて電子発光構造体を形成し、電子発光構造体を囲繞するように反射性材料を配して斜角縁反射体を形成することを含む。
【0011】
また、上述の目的を達成するために、本発明に係るいくつかの実施形態によるフォトルミネセンス構造体を開示する。本フォトルミネセンス構造体は、第1の主面(例えば上面)、第1の主面に対向する第2の主面(例えば下面)、第1の主面と第2の主面の間に伸びる縁面、およびフォトルミネセンス構造体内に配された蛍光体粒子を備え、第1の主面の表面積は第2の主面の表面積より大きくてフォトルミネセンス構造体の縁面が斜角縁面をなし、第1の主面の第1の寸法(例えば幅)は2.0mm以下であり、第1の主面の第1の寸法に直交する第2の寸法(例えば長さ)は3.0mm以下である。
【0012】
したがって、本発明に係るいくつかの実施形態による改良されたLED素子は、少なくとも次の利点をもたらす。すなわち、1.電子発光構造体を囲繞する斜角縁形状の反射体によって、電子発光構造体内で放射される光の取出しが良好になり、光学効率および/または色の空間的均一性が向上し、2.フォトルミネセンス構造体をLED半導体ダイより少し大きくなるように製造して、全体的にコンパクトな発光素子を形成でき、3.斜角縁面を有するフォトルミネセンス構造体を大量生産工程で製造することで製造費用を低減でき、4.斜角縁面の傾斜角を適切な製造工程でさらに調整できることにより、CSP型LEDの視野角を制御可能としている。
【0013】
本発明の他の態様および実施形態についても検討する。上述の概要ならびに後述する発明の詳細な説明は、本願開示をいずれかの特定の実施形態に限定することを意図するものでなく、様々な実施形態の一部を説明するにすぎない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態による発光素子の断面を示す概略図である。
【
図2】本発明の別の実施形態による発光素子の断面を示す概略図である。
【
図3】本発明の別の実施形態による発光素子の断面を示す概略図である。
【
図4】本発明の別の実施形態による発光素子の断面を示す概略図である。
【
図5】本発明の別の実施形態による発光素子の断面を示す概略図である。
【
図6】本発明の別の実施形態による発光素子の断面を示す概略図である。
【
図7】本発明の別の実施形態による発光素子の断面を示す概略図である。
【
図8】本発明の別の実施形態による発光素子の断面を示す概略図である。
【
図9】本発明の別の実施形態による発光素子の断面を示す概略図である。
【
図10】本発明の別の実施形態による発光素子の断面を示す概略図である。
【
図11D】本発明のいくつかの実施形態によるフォトルミネセンスシートを形成する方法を示す概略図である。
【
図12C】本発明のいくつかの実施形態による別のフォトルミネセンスシートを形成する方法を示す概略図である。
【
図13B】様々な実施形態によるLEDパッケージ構造体内の光路を示す概略図である(フォトルミネセンス構造体のハッチング部は図示せず)。
【
図15】本発明のいくつかの実施形態による別のフォトルミネセンスシートを形成する方法を示す概略図である。
【
図16F】本発明のいくつかの実施形態によるフォトルミネセンス構造体を製造する打ち抜き方法を示す概略図である。
【
図17】本発明のいくつかの実施形態によるフォトルミネセンス構造体を製造するダイスカット方法を示す概略図である。
【
図18B】本発明のいくつかの実施形態において電子発光構造体を形成して発光素子を製造する工程を示す概略図である。
【
図19】本発明のいくつかの実施形態において反射構造体を形成して発光素子を製造する製造工程を示す概略図である。
【
図20】本発明のいくつかの実施形態において剥離層を除去して発光素子を製造する製造工程を示す概略図である。
【
図21】本発明のいくつかの実施形態において反射構造体をダイスカットして発光素子を製造する製造工程を示す概略図である。
【
図22E】本発明の別の実施形態による発光素子の断面を示す概略図であり、
図22Dおよび
図22Eはさらに発光素子内の光路も示し、
図22Cはフォトルミネセンス材をランダムに分散させた発光素子内部の光路を示す。
【0015】
[定義]
本発明のいくつかの実施形態に関連して述べる技術態様の一部に以下の定義を適用する。また、本開示においてこれらの定義をさらに発展させることも可能であろう。
【0016】
本明細書中、単数扱いの用語は、文脈上とくに指示しない限り複数の対象を含むものとする。したがって、例えば、用語「層」を単数として用いても、とくに明示しない限り複数の層を含むことがある。
【0017】
本明細書中、用語「一組」は1つ以上の構成要素の集まりを指す。したがって、例えば、一組の層は単一の層または複数の層を含むことがある。また、一組のうちの複数の構成要素とは、その一組のうちの複数の部材を指すことがある。一組のうちの複数の構成要素は同じものでもよく、あるいは互いに異なるものでもよい。一部の例では、一組のうちの複数の構成要素は1つ以上の共通する特性を有していてもよい。
【0018】
本明細書中、用語「隣接する」とは、近くにあるか、または隣り合うことを意味する。隣接する構成要素は、互いに離れていてもよく、あるいは互いに実際に、すなわち直接に接触していてもよい。いくつかの例では、隣接する構成要素を相互に連結させてもよく、あるいは互いに一体に形成してもよい。いくつかの実施形態の記載では、他の構成要素「に」または他の構成要素の「上に」設けられた構成要素とは、前者の要素の上に後者の要素が(例えば、直接的な物理的接触によって)直接設けられる場合と、前者の要素と後者の要素の間に1つ以上の介在要素が配設される場合を含んでもよい。いくつかの実施形態の記載では、他の構成要素の「下に」設けられた構成要素とは、前者の要素の直下に後者の要素が(例えば、直接的な物理的接触によって)設けられる場合と、前者の要素と後者の要素の間に1つ以上の介在要素が配設される場合を含んでもよい。
【0019】
本明細書中、用語「接続する」、「接続された」および「接続」は作動上の連結または関連を意味する。接続された構成要素は相互に直接連結させてもよく、または他の一組の構成要素などによって相互に間接的に連結させてもよい。
【0020】
本明細書中、用語「約」、「実質的に」および「実質的な」は、考慮に入れるべき度合いまたは範囲を表す。事象または状況に関連付けて用いられる場合には、当該事象または状況が間違いなく発生する場合の他に、当該事象または状況がほぼ発生する、例えば本明細書で述べる製造作業の典型的な許容範囲を生ずるような近接さの場合を含んでもよい。例えば、数値に関連して用いられる場合、±10%以下の数値の変動範囲を含んでいてもよく、例えば、±5%以下、±4%以下、±3%以下、±2%以下、±1%以下、±0.5%以下、±0.1%以下または±0.05%以下の変動範囲を含む。
【0021】
本明細書中、フォトルミネセンスに関連し、用語「効率」または「量子効率」とは、入力光子数に対する出力光子数の比を指す。
【0022】
本明細書中、用語「大きさ」は特徴的寸法を指す。対象物(例えば粒子)が球状の場合、対象物の大きさとは対象物の直径を意味するものでよい。対象物が球状ではない場合、対象物の大きさは対象物の様々な直交寸法の平均値を指すものでよい。したがって、例えば、楕円体の対象物の大きさは、対象物の長軸と短軸の平均値を指すものでよい。一組の対象物が特定の大きさを有すると言う場合、対象物はその特定の大きさの周囲にいくつかの大きさが分布するものと考えられる。このように本明細書では、一組の対象物の大きさは、例えば大きさの平均値、中間値またはピーク値などの大きさ分布の一般的な大きさを指すものでよい。
【0023】
図1に示すように、本発明により開示される発光素子の第1の実施形態を概略的に例示する。発光素子1Aは、LED半導体ダイ10、フォトルミネセンス構造体20および反射体30を備えている。
【0024】
LED半導体ダイ10は、上面11、下面12、縁面13および一組の電極14を有するフリップチップ半導体ダイである。上面11および下面12は平行に形成され、互いに向かい合っている。縁面13は上面11と下面12の間に形成され、上面11の外縁を下面12の外縁に接続している。一組の電極14、すなわち複数の電極が下面12上に配設されている。一組の電極14を通して電気エネルギーがLED半導体ダイ10に加わることにより、電界発光が生じる。光子は、通常、LED半導体ダイ10の上面11および縁面13から放射される。
【0025】
図1に示す上面21、下面22および縁面23を有するフォトルミネセンス構造体20を使用して、LED半導体ダイ10が発する実質的に単色波長の光を波長の長い低エネルギーの光に変換する。フォトルミネセンス構造体20の上面21および下面22は、互いに向かい合った状態で平行に形成されている。縁面23は上面21と下面22の間に形成されて、上面21の外縁を下面22の外縁に接続している。上面21および下面22は、実質的に水平で互いに平行である。
【0026】
上面21の表面積の大きさは下面22の表面積の大きさより大きいことから、逆角錐台形状の構造体を形成している。例えば、上面21の表面積の大きさは下面22の表面積の大きさの約1.1倍以上でよく、例えば約1.2倍以上、約1.3倍以上、約1.4倍以上または約1.5倍以上でよい。上面21の表面積の大きさが下面22の表面積の大きさより大きいため、縁面23は、上面21の縁と下面22の縁とを接続する斜角縁面を呈している。例えば、縁面23と水平面(下面22と平行な面)との間の傾斜角は約90度未満でよく、例えば約88度以下、約85度以下または約80度以下でよい。
【0027】
フォトルミネセンス構造体20はさらに、蛍光体層201および少なくとも1つの透明層202を含み、透明層202は蛍光体層201の上に周囲環境の方向に形成、積層される。さらに、蛍光体層201は、1種類または数種類の蛍光体が透明材内部に混入された粒子の形態で含んでいる。LED半導体ダイ10から発せられる光が蛍光体層201を透過する際、光の一部が波長変換されて透明層202を透過し続けて後、発光素子1A内から周囲環境に漏れ出る。
【0028】
透明層202は、斜角縁反射体30と一体となって動くことにより、主光学レンズとして機能して、発光素子1Aの発光パターンを形成する。また、透明層202は、蛍光体層201を周囲環境から保護する障壁層の役割も果たす。
【0029】
フォトルミネセンス構造体20はLED半導体ダイ10の上に配設されているため、フォトルミネセンス構造体20の下面22はLED半導体ダイ10の上面11に隣接している。フォトルミネセンス構造体20の下面22は、例えばシリコーン樹脂(
図1には図示せず)などの接着樹脂材を用いて、隙間のない状態でLED半導体ダイ10の上面11に接着するのが望ましく、これにより、フォトルミネセンス構造体20とLED半導体ダイ10の間の光取出しが良好になる。また、フォトルミネセンス構造体20の下面22の大きさをLED半導体ダイ10の上面11の大きさに等しくするか、あるいは少し大きくすることで、上から見たときに、フォトルミネセンス構造体20がLED半導体ダイ10を実質的に完全に覆うことになる。例えば、フォトルミネセンス構造体20の下面22の表面積の大きさは、LED半導体ダイ10の上面11の表面積よりも約1倍以上大きくてもよく、例えば、約1.01倍以上または約1.05倍以上でよい。この構成では、光がフォトルミネセンス構造体20を介さずに直接、LED半導体ダイ10から漏れ出るのを防止できる。
【0030】
図1では、LED半導体ダイ10の垂直縁面13およびフォトルミネセンス構造体20の斜角縁面23の両方を囲繞するように反射性樹脂材料が配設されて、反射体30を形成している。本実施形態では、斜角縁面23は反射体30によって実質的に完全に覆われている。LED半導体ダイ10からLED半導体ダイ10の縁面13に向かって発光する光は反射体30によって実質的に反射されて戻るため、光がLED半導体ダイ10の上面11から漏れ出てフォトルミネセンス構造体20を透過することになる。また、発光された光、およびフォトルミネセンス構造体20の斜角縁面23に向かう波長変換された光のどちらも、実質的に反射されて戻り、方向転換し、最終的に上面21を通って発光素子1Aから漏れ出ることになる。
【0031】
反射体30とLED半導体ダイ10の縁面13との間には、実質的に隙間がないことが望ましい。隙間があると反射光が光学空洞にトラップされてしまい、パッケージの光取出し効率が低下してしまう。同様に、反射体30とフォトルミネセンス構造体20の斜角縁面23との間にも実質的に隙間がないことが望ましい。言い換えると、反射体30の下部内側縁面31はLED半導体ダイ10の縁面13に直に接触し、反射体30の上部内側斜角縁面32はフォトルミネセンス構造体20の斜角縁面23に直に接触する。フォトルミネセンス構造体20の外側斜角縁面23は逆角錐様形状であり、内側斜角縁面32も逆角錐様形状であるため、このような内側斜角縁面を有する反射体30が形成される。例えば、内側斜角縁面32と水平面(反射体30の上縁面33に平行な面)との間の傾斜角度は約90度より小さくてよく、例えば約88度以下、約85度以下、または約80度以下でよい。また、反射体30の上縁面33は、フォトルミネセンス構造体20の上面21と実質的に同じ高さに形成される。すなわち、上縁面33は、実質的に上面21と同一平面上に設けられている。また、反射体30は、下部内側縁面31および上部内側斜角縁面32の他に、外側垂直縁面35も含む。
【0032】
一実施形態において、反射体30は透明で可鍛性を有する樹脂材料を用いて製造され、散乱(反射)粒子が分散されている。一実施形態では、ポリフタルアミド(PPA)、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PCT)またはエポキシ成形材料(EMC)などの可鍛性樹脂材料を用いて反射体30の斜角縁形状を形成している。別の例の透明可鍛性樹脂材料は、屈折率(RI)の高いシリコーン樹脂(RIは約1.45〜約1.55であることが望ましい)、あるいは屈折率の低いシリコーン樹脂(RIは約1.35〜約1.45であることが望ましい)でよい。例として挙げる透明可鍛性樹脂材料内に分散される散乱(反射)粒子には、TiO
2、BN、SiO
2、Al
2O
3、あるいはこれら粒子の組合せが含まれるか。その他、酸化物、窒化物およびセラミックの粒子を用いることも可能である。散乱(反射)粒子の粒子サイズは、可視光スペクトルの波長の約半分、例えば約150nmから約450nmの間であることが望ましい。なお、反射体30は、電子カプセル封入材またはパッケージ材などで形成することも可能であることが理解されよう。
【0033】
傾斜反射体1Aを備えた発光素子の実施形態は、少なくとも以下の技術上の利点を提示する。
【0034】
図13Aに示すように、LED半導体ダイ10から直接放射されるか、もしくは蛍光体層201で変換される光ビームLは、斜角縁反射体30が適切な形状に設計されることによって、フォトルミネセンス構造体20から周囲環境へより効果的に方向転換できる。言い換えると、斜角縁面23に隣接する内側斜角縁面32は、フォトルミネセンス構造体20の上面21から周囲環境に漏れ出る光ビームLの方向を転換させて、光ビームLが反射されてフォトルミネセンス構造体20またはLED半導体ダイ10に戻る可能性を減少させることにより、発光素子1Aからの光取出しを促進する。したがって、本実施形態による斜角縁反射体30を備えた発光素子1Aは、LED半導体ダイ10から直接発せられる光またはフォトルミネセンス構造体20で変換される光のどちらも良好に取り出され、光エネルギー損失が減少する。これにより、発光素子1Aの光取出し効率が概ね約5%〜約20%向上し、斜角縁反射体を内蔵していない従来のLED半導体ダイ素子よりも全体光学効率が良くなる。これに対し、
図13Bに示すように、斜角縁面を備えていないフォトルミネセンス構造体20に隣接する反射体30では、上面21で生ずる全反射の影響により、光Lが反射されてフォトルミネセンス構造体20自体またはLED半導体ダイ10に戻りやすい。このように、斜角縁反射体を備えていない発光素子に比べ、発光素子1Aは、フォトルミネセンス構造体20の斜角縁面23に隣接して斜角縁状の反射体30を組み込むことにより、光取出し効率が向上するという利点を呈する。
【0035】
蛍光体層201は、光取出し効率の向上という利点を有するほかに、実質的に均一の薄膜構造であることが望ましく、このような構造をとることで、色の空間的均一性が良好になり、その結果、投射時にイエローリングが発生するのを防止できる。また、斜角縁面23に隣接する斜角縁反射体30の傾斜形状を調整することにより、発光素子1Aの視野角が多様になる。これにより、斜角縁面23の傾斜角を設計する際に発光素子1Aの視野角を様々な用途にそれぞれ適するように制御可能となる。
【0036】
さらに、蛍光体層201より低いRIの透明層202を組み込むことにより、光取出し効率を高めることもできる。言い換えると、透明層202のRIは、蛍光体層201および外気のRIの間で選択でき、これにより、光が外気中に漏れ出ないうちに蛍光体層201および透明層202を透過する際の全反射による光学的損失をさらに減少させることができる。
【0037】
透明層202の別の実施形態では、透明層は、外方に向かってRIが層ごとに徐々に低下するようなRIが各層間で勾配をなす多層透明層(
図1には図示せず)であり、ことにより光取出し効率がさらに向上する。
【0038】
さらに、フォトルミネセンス構造体20の大きさはLED半導体ダイ10の大きさよりわずかに大きいことが望ましく、これにより、実質的にどんな光も、フォトルミネセンス構造体20を通らないでLED半導体ダイ10から外気に直接漏れてしまうようなことはない。また、フォトルミネセンス構造体20の大きさは、LED半導体ダイ10とほぼ同程度のコンパクトさにしておく。反射体30をコンパクトな設計にするとともに、発光素子1Aの大きさも小さくなるように形成する。したがって、発光素子1Aはチップスケールパッケージ型LED(CSP型LED)に分類される。フォトルミネセンス構造体20を実際上可能な程度に薄くコンパクトに実装することで、光が発光素子1A内から周囲環境に漏れ出る光路をより短くできるため、光取出し効率も向上する。具体例では、反射体30の長さによって画成される発光素子1Aの長さは約3.0mm以下であり、反射体30の幅によって画成される発光素子1Aの幅は約2.0mm以下である。具体例では、フォトルミネセンス構造体20の長さ(例えば、上面21における長さ)は、約3.0mm以下であり、フォトルミネセンス構造体20の幅(例えば、上面21における幅)は、約2.0mm以下である。CSPの大きさは、一般的にLED半導体ダイ10の大きさよりも約20%大きい。
【0039】
上記各段落では、発光素子1Aに関連する実施形態について詳述した。本発明に係る斜角縁反射体を備えた発光素子の他の実施形態については、以下に詳細に述べる。以下の発光素子の実施形態で見出される特徴および利点に関する詳細は、発光素子1Aに関する詳細と同様であるため、簡略化のために説明を省略することが理解されよう。
【0040】
図2は、本発明に係る別の実施形態による発光素子1Bの断面を示す概略図である。発光素子1Bと発光素子1Aの主な違いは、透明スペーサ層202がフォトルミネセンス構造体20の一部として蛍光体層201の下に形成されていることである。すなわち、透明層202は、蛍光体層201とLED半導体ダイ10の上面11との間に配設されているため、蛍光体層201はLED半導体ダイ10に直に接触しない。本実施形態の利点の1つは、蛍光体層201の動作温度が低くなることである。これは、LED半導体ダイ10で発生して蛍光体層201に伝達される熱が透明スペーサ層202で低下するためである。そのため、より低い温度で動作する蛍光体層201によって、変換効率が向上する。さらに、屈折率を整合させるために、蛍光体層201のRIを透明層202のRIよりも低くなるように選択して、光取出し効率をさらに向上させてもよい。
【0041】
図3は、本発明に係る別の実施形態による発光素子1Cの断面を示す概略図である。発光素子1Cと他の実施形態との主な違いは、フォトルミネセンス構造体20にはさらに、蛍光体層201の上に形成されたマイクロレンズアレイ層203が含まれていることである。透明層202はマイクロレンズアレイ層203の一部とみなすことができ、どちらの層も1回の製造工程で同時に形成できる。高さについては、断面図によると、マイクロレンズアレイ層203は反射体30の上面33より高くてもよく、これにより、フォトルミネセンス構造体20の上面21の少なくとも一部が反射体30の上面33より少し高くなる。発光素子1Cの光取出し効率は、マイクロレンズアレイ層203を備えることによりさらに向上する。
【0042】
図4は、本発明に係る別の実施形態による発光素子1Dの断面を示す概略図である。発光素子1Dは、少なくとも、フォトルミネセンス構造体20が複数の透明層202を含み、蛍光体層201は複数の透明層202間に配設されて、層間に挟まれている点が他の実施形態と異なる。本実施形態では、透明層202は、例えば動作時にLED半導体ダイ10から発生する熱の影響を軽減するなどの別の利点の他に、蛍光体層201に一定の保護をもたらす。また、蛍光体層201のRIは下部透明層202のRIより低くてもよいが、上部透明層202のRIより高くして、光取出し効率を向上させる。
【0043】
図5は、本発明に係る別の実施形態による発光素子1Eの断面を示す概略図である。発光素子1Eと他の実施形態との主な違いは、発光素子1Eのフォトルミネセンス構造体20が単層のフォトルミネセンス構造体として形成されていることにあり、本構造体には透明スペーサ層を有さない蛍光体層201が含まれる。蛍光体層201の状況は、単一のフォトルミネセンス材または単一の蛍光体層に限定されるものではなく、複数の均一に混合されたフォトルミネセンス材または複数の多層フォトルミネセンス材でもよいということが理解されよう。したがって、蛍光体層201中に複数のフォトルミネセンス材を用いて、LED半導体ダイ10から放射される光の一部を光スペクトルの異なる波長に変換することも可能である。本実施形態は、例えば相関色温度(CCT)の低い温白色LEDなど、一部の白色LEDに適用するのが望ましい。
【0044】
図6は、本発明に係る別の実施形態による発光素子1Fの断面を示す図である。発光素子1Fと他の実施形態との主な違いは、発光素子1Fがさらに基板40を含み、LED半導体ダイ10の電極14のファンアウト構造を形成している点にある。LED半導体ダイ10および反射体30はどちらも基板40上に配設され、さらにLED半導体ダイ10の一組の電極14が基板40に電気的に接続されている。基板40は一般的に、一組のビアホール形状導体を介して給電可能な電気絶縁体として形成され、LED半導体ダイ10の電極14と基板40下の電極パッドとを接続するように配置されている。したがって、電極パッドの大きな集合が基板40の下に形成される。例示の基板は、セラミック基板、プリント回路基板(PCB)、リードフレームなどである。電気エネルギーが電極パッドの下から基板40を通して供給されて、発光素子1Fが駆動される。
図6に示すように、反射体30は、基板40とLED半導体ダイ10の下面12の間の隙間を埋めるように形成してもよい。本実施形態の利点の1つは、基板40がLED半導体ダイ10に対する環境障壁保護体をなしていることである。別の利点は、発光素子1Fの長尺状のファンアウト電極パッドにより、後に行われる表面実装技術(SMT)処理が促進されることである。
【0045】
図7は、本発明に係る別の実施形態による発光素子1Gの断面を示す概略図である。発光素子1Gと他の実施形態との主な違いは、断面図における反射体30の上縁面33の高さがフォトルミネセンス構造体20の上面21よりは低いものの、フォトルミネセンス構造体20の上面21より高いことである。言い換えると、フォトルミネセンス構造体20の斜角縁面23は反射体30で部分的に覆われ、一部が反射体30から露出している。本実施形態の主な利点は、成形または配剤のいずれかによる反射体30の製造工程中、反射性樹脂材料がフォトルミネセンス構造体20の上面21に溢れ出るのを防ぎ、これにより製造歩留りが向上することである。
【0046】
図8は、本発明に係る別の実施形態による発光素子1Hの断面を示す概略図である。発光素子1Hと他の実施形態との主な違いは、反射体30の上面33が平面ではなく、全体としてフォトルミネセンス構造体20の上面21の外縁端から広がる凹状面を呈している点である。フォトルミネセンス構造体を囲繞する反射体30を製造する配剤方法によれば、反射性樹脂材料が硬化すると、表面張力および材料収縮の相互作用により全体として凹状の上面を呈する。
【0047】
図9は、本発明に係る別の実施形態による発光素子1Iの断面を示す概略図である。発光素子1Iと他の実施形態との違いは、少なくとも、フォトルミネセンス構造体20の上面21の外縁端が反射体30の外縁端にぴったりと接触している点である。そのため、本実施形態では反射体30の寸法をさらに小さくでき、発光素子1Iをよりコンパクトにすることができる。
【0048】
図10は、本発明に係る別の実施形態による発光素子1Jの断面を示す概略図である。発光素子1Jと他の実施形態との主な違いは、反射体30の下面34が反射体30の内側縁面31の下縁から上に向かって湾曲している点にあり、これにより、凹状空間が発光素子1Jの下に形成される。具体的には、反射体30は、流動性樹脂材料を、例えば約150℃の高い硬化温度で固化して得られたシリコーン樹脂材料を用いて製造する。液相から固相への硬化工程によって、樹脂材料の化学重合反応による反射体30の体積収縮が誘発される。また、反射体30が高い硬化温度から常温まで冷却されるとき、反射体30の体積の熱収縮が凹状構造部の形成を助長する。LED半導体ダイ10の縁面13と整合する反射体30の隣接縁面31によって反射体30の変形が抑制されるという境界条件下では、反射体30の体積の化学収縮および物理的収縮の両方によって、反射体30の下面34が上に向かって湾曲し、凹状空間が形成される。
【0049】
反射体30の下面34から凹状空間を形成する利点は、その後に行われる表面実装技術(SMT)による接合工程時に発光素子1Jを基板に接合する際、はんだ付けの質が向上することである。SMT工程の例として次の工程が含まれる。すなわち、1.適量のはんだ付けペーストを基板のボンディング電極パッドに配し、2.発光素子1Jを基板上に配列装着し、3.はんだ付けペーストを高温炉でリフローさせて、はんだを溶解、リフローし、発光素子1Jと基板を接合させる。発光素子1Jおよび基板(
図10には図示せず)がリフロー炉で熱処理を受けると、反射体30の垂直方向における熱膨張は、概してLED半導体ダイ10の熱膨張よりもかなり大きくなるが、その理由は、通常、一般に有機材料から形成される反射体30のほうが、一般に無機材料から形成されるLED半導体ダイ10よりも、熱膨張率(CTE)がはるかに大きいためである。そのため、反射体30の下面34は垂直方向のほうが大きく膨張してLED半導体ダイ10を持ち上げ、これによりLED半導体ダイ10と基板の間に空隙が生じ、SMT工程時にLED半導体ダイ10の一組の電極14と基板との接合が不十分になる。しかし、本実施形態によれば、発光素子1Jの反射体30の下面34の下の凹状空間によって高温でのリフロー工程時に生じる反射体30の熱膨張が補償されることで、隙間をなくすことができる。
【0050】
凹状空間の高さは、
図10では符号Xで表され、一般的に材料特性、フォトルミネセンス構造体20および反射体30の幾何学的寸法、および硬化工程パラメータなどによって決まる。凹部高Xは、これらの制御要素を適切に選択して設定できる。凹部高Xは少なくとも約3μmであることが望ましく、この高さであればSMT工程時の反射体30の熱膨張を補償するのに十分な空間を得ることができる。
【0051】
上述の発光素子1A〜1Jの実施形態のそれぞれの間で、技術的態様および利点を応用したり、組み合わせたりしてもよく、これら態様および利点は特定の実施形態に限定されるものではないことが理解されよう。例えば、発光素子1Cのマイクロレンズアレイ層203の実施形態、発光素子1Fの基板40の実施形態、および発光素子1Jの下面34の下に設けられた凹状空間の実施形態などを組み合わせてもよく、あるいは他の実施形態に組み込んでもよい。さらに、特定の所望の光学特性に応じて、複数の蛍光体層201および/または複数の透明層202を採り入れて発光素子1A〜1Jのフォトルミネセンス構造体20を形成してもよい。なお、積層順序の変更、および/またはTiO
2などの光学的散乱粒子をさらに含有させるなど、別の様々な実施形態も採り入れてフォトルミネセンス構造体20を形成可能であることも理解されよう。
【0052】
また、本発明に係る発光素子1A〜1Jの実施形態を単色光のチップスケールパッケージ型発光素子1Kに適用することも可能であり、LED半導体ダイ10は動作時に実質的に単色の光スペクトルを放射する。
図22Aに示すように、図の簡略化のために、上述の発光素子におけるフォトルミネセンス構造体20に代わって、蛍光体または他のフォトルミネセンス材の混入されていない透明材料を使用して形成された透明構造体20’を用いることで、発光素子1Kを具体化する。したがって、LED半導体ダイ10が放射する光の単色波長は、光が動作時に透明構造体20’を透過しても変換またはストークシフトされない。本実施形態を活用して、例えば赤色、緑色、青色、赤外線または紫外線LEDなどの単色光のチップスケールパッケージ型LEDを実現することも可能である。他の発光素子1A〜1Jの実施形態と同様に、単色光のCSP型LEDも、エタンデュが小さく、発光面積が小さいために補助光学レンズの設計が容易であり、熱抵抗が少なく、視野角が制御可能なため特定の用途に適応できるといった利点がある。
【0053】
さらに、スポットライトや車両信号灯などの一部の用途においては、高い指向性と小さいエタンデュが指定される。
図22Bに示すように、フォトルミネセンス構造体20’に垂直縁面23’を組み込むことにより、発光素子1Kの発散角をより小さくでき、さらに反射体30の高さHを増大させることで発散角をさらに小さくできる。高さHはLED半導体ダイ10の長さWの約0.1倍以上、ならびにLED半導体ダイ10の長さWの約5倍以下であることが望ましく、つまりは、反射体30のアスペクト比は約0.1≦H/W≦約5である。垂直縁面23’を備えた透明構造体20’では光取出し効率が犠牲になる可能性があるが、特定用途における所望の方向への単位面積当たりの光束、すなわち照度が増大する。また、外部環境に対して屈折率を整合させるためには、透明構造体20'は低RI透明材料で形成することが望ましい。
【0054】
さらに、高アスペクト比の反射体を有する蛍光体変換白色CSP発光素子も、高照度を規定するある種の用途には望ましい。
図22Dは、高アスペクト比の反射体30を有する白色CSP発光素子1Kの別の実施形態を示す。本実施形態は、透明構造体20の底部に蛍光体層201’がLED半導体ダイ10に隣接した状態でコンパクトに形成されている点が
図22Bに示す単色CSP発光素子の実施形態と大きく異なる。他には、
図22Cに示すように、フォトルミネセンス材を透明構造体20’中に不規則に分散すると、フォトルミネセンス材の粒子によって光Lの一部が吸収され再発光し、あるいはいろいろな方向に散乱する。この再散乱効果は、高アスペクト比の反射体30を使用して光の高い指向性を実現する妨げとなる。よって、透明構造体20'における望ましからざる光の散乱を防止するために、透明構造体20'の底部に蛍光体層201’をLED半導体ダイ10に隣接させて配設する。
図22Dに示すように、光散乱粒子が不規則に分散されていない透明構造体20'では、入射角の大きい光Lが高アスペクト比の反射体30内で反射戻りするため、トラップされた光が急速に減衰してしまう。これに対して、
図22Eに示すように、入射角の小さい光Lは高アスペクト比の反射体30による反射戻りが起こらないため、光は透明構造体20'から外部環境へ漏れ出てしまう。言い換えると、発光素子1Kの高アスペクト比の反射体30は、実質的に、入射角の大きい光Lを排除し、入射角が小さい光Lを通すことができる。
【0055】
いくつかの実施形態では、発光素子1Kの透明構造体20’の寸法は、LED半導体ダイ10の構造体に等しいか、もしくはわずかに大きく、反射体30を含む発光素子1K全体の寸法もLED半導体ダイ10のものよりわずかに大きい。そのため、高アスペクト比の反射体30を有する発光素子1Kによって、小型サイズのチップスケールパッケージに組み込まれた高い指向性を有する光源を実現できる。
【0056】
本発明に係る発光素子1A〜1Jの実施形態に関する製造方法について、以下に述べる。製造方法は概ね3つの主工程を含む。すなわち、1.斜角縁面を有する逆角錐形状のフォトルミネセンス構造体を形成し、2.フォトルミネセンス構造体をLED半導体ダイに取り付けて電子発光構造体を形成し、3.電子発光構造体を囲繞する反射材を配設して逆角錐形状のフォトルミネセンス構造体に隣接する内側斜角縁面を有する反射体を形成する。以下に各製造工程の技術態様をさらに述べる。
【0057】
最初に、フォトルミネセンス構造体20の形成方法について述べる。フォトルミネセンス構造体20の形成方法は、通常、直接法または間接法のいずれかに分類できる。一部の実施形態における間接法は一般に2段階法に基づくものであり、最初にフォトルミネセンスシートを形成し、次にシートを複数のフォトルミネセンス構造体に分離する。一部の実施形態における直接法とは異なり、単体の実質的に完全なフォトルミネセンス構造体が、分離法を用いずに直接形成される。
図11Aないし
図11Dは、フォトルミネセンスシートを形成する段階的な製造工程を示す。
【0058】
図11Aに示すように、まず、以降のフォトルミネセンスシートを形成する処理用に剥離層50を準備して。さらに、剥離層50をシリコーン基板やガラス基板などの支持基板(
図11Aには図示せず)に配設する。
【0059】
図11Bに示すように、2番目に、蛍光体層201を剥離層50上に形成する。蛍光体層201の形成方法には、吹き付け塗装、印刷、鋳造、または蛍光体および対応する結合樹脂材を剥離層50に貼り付ける他の技術などが含まれ、蛍光体層201は硬化処理によって固化させる。米国特許出願公開第US2010/0119839号公報および同第US2010/0123386号公報に開示されている蛍光体層を形成する具体例では、蛍光体層の厚さおよび均一性が正確に調整されている。これら出願の技術内容の全体を参照により本明細書に取り込む。
【0060】
図11Cに示すように、3番目に、引き続き透明層202を蛍光体層201の上に形成する。製造方法には、吹き付け塗布、印刷、鋳造、配剤または他の技術が含まれる。複数の透明層202が含まれる場合には、吹き付け塗布方法が望ましい。
【0061】
図11Dに示すように、4番目に、透明層202を形成後、剥離層50を除去して蛍光体層201および透明層202からなる単体のフォトルミネセンスシート200を形成する。発光素子1A(
図1)のフォトルミネセンス構造体20、ならびに発光素子1G、1Hおよび1J(
図7、
図8および
図10)のフォトルミネセンス構造体20は、フォトルミネセンスシート200を分離することで製造することができる。同様に、逆さまに配設されたフォトルミネセンスシート200を分離すると、発光素子1B(
図2)のフォトルミネセンス構造体20が得られる。
【0062】
蛍光体層201および透明層202の形成順序を変えることにより、フォトルミネセンスシート200の実施形態の変形態様を様々に実現できる。例えば、
図12Aないし
図12Cに示すように、透明層202、蛍光体層201および別の透明層202を順に剥離層50上に形成して、発光素子1D(
図4)のフォトルミネセンス構造体20に相当するフォトルミネセンスシート200を構成する。
図14に示すように、単一の蛍光体層201を剥離層50上に形成する。
図14に示すフォトルミネセンスシート200の実施形態を用いて、フォトルミネセンスシート蛍光体200を分離した後に、さらに発光素子1E、1Fおよび1I(
図5、
図6および
図9)のフォトルミネセンス構造体20を製造することも可能である。
【0063】
図15に示すように、蛍光体層201を形成後、続けてマイクロレンズアレイ層203を蛍光体層201上に形成してフォトルミネセンスシート200の別の実施形態を構成する。マイクロレンズアレイ層203は成形法によって製造することができる。成形製造法の具体例には、1.剥離層50上に形成された蛍光体層201を鋳型(図示せず)の底面内に配置し、2.マイクロレンズアレイ層203の製造に使用したシリコーンなどの樹脂材料を鋳型内に上部から注入し、3.樹脂材料を硬化させた後に、続けてマイクロレンズアレイ層203を形成する。蛍光体層201およびマイクロレンズアレイ層203で構成されるフォトルミネセンスシート200を分離して、発光素子1C(
図3)のフォトルミネセンス構造体に相当するフォトルミネセンス構造体20を製造することも可能である。
【0064】
フォトルミネセンスシート200を複数の単体フォトルミネセンス構造体20に分離することは、とくに本発明に係るいくつかの実施形態による逆角錐形状フォトルミネセンス構造体20を形成するように設計された製造法である。分離法の具体例として打抜き法があり、当該方法は、フォトルミネセンスシート200を分離または切り離して、所望の斜角縁面を有する複数のフォトルミネセンス構造体20を形成するものである。
【0065】
具体的には、
図16Aおよび
図16Bに示すように、フォトルミネセンスシート200を別の剥離層50’上に逆さまに配設し、打抜き工具60で打ち抜く。
図16Cに示すように、打抜き工具60は複数のアレイ状打抜き刃61を備えている。打ち抜き刃61は互に連結され、フォトルミネセンス構造体20の所望の機械的形状、例えば正方配列に応じて配列されている。したがって、
図16Dに示すように、打抜き工具60を使用した単一打抜き法によってフォトルミネセンスシート200を複数のフォトルミネセンス構造体20に分離することができる。打抜き後は、所望の斜角縁形状を備えたフォトルミネセンス構造体20の上面21は
図16Eに示すように下向きになる。同様に、マイクロレンズアレイ層を備えたフォトルミネセンス構造体20も、
図16Fに示すように同じ分離法を用いて製造することができる。
【0066】
このように、打抜き法によれば、フォトルミネセンスシート200を効果的に分離して所望の斜角縁形状を有する複数のフォトルミネセンス構造体20を形成する方法の実施形態が得られる。また、フォトルミネセンス構造体20の斜角縁面23の傾斜角は、例えば、刃角プロファイル、フォトルミネセンス構造体20の機械的寸法、フォトルミネセンスシート200の弾性材または塑性材の特性など、いくつかの設計要素に基づいてあらかじめ決定できる。これらの設計要素をあらかじめ設計して、所望の傾斜角の斜角縁面23を得ることが可能である。
【0067】
例えばダイシングソーまたはウォータージェットソーを使用するソーイング、精密機械加工、マイクロ機械加工などの他の分離法を利用してフォトルミネセンスシート200を複数のフォトルミネセンス構造体20に分離することも可能であることが理解されよう。
図17に示すように、デュアルアングルフライス70などのソーを使用して、フォトルミネセンスシート200を複数のフォトルミネセンス構造体20に切り分ける。同様に、フォトルミネセンス構造体20の下面22もデュアルアングルフライス70の刃71に向けて、対応する所望の斜角縁面23を形成する。フォトルミネセンス構造体20の斜角縁面23の所望の角度は、刃71の角度プロファイルを用いて機械加工し調整することができる。フォトルミネセンスシート200の分離方法の別の実施形態では、ハードマスク被着、パターン形成、エッチングなどによるマイクロ機械加工を用いて所望のフォトルミネセンス構造体20を形成できる。
【0068】
上述の製造法は、フォトルミネセンスシート200を分離してフォトルミネセンス構造体20を形成する間接的方法を例示している。しかし、成形またはマイクロ機械加工での製造法によれば、分離法を用いずにフォトルミネセンス構造体20を単独で直接形成することも可能である。成形法を用いた直接法の具体例には以下の製造工程が含まれる。すなわち、まず、アレイ状に配列された複数の空隙を有する鋳型(図示せず)を設け、それぞれの空隙がフォトルミネセンス構造体20の形状を画成するようにし、次に、フォトルミネセンス構造体20の製造に使用される例えば蛍光体物質と混合されたシリコーン樹脂などのスラリー状材料を鋳型内の空隙アレイに注入し、第3にスラリー状材料を硬化させてフォトルミネセンス構造体20を形成する。マイクロ機械加工を用いた別の実施形態では、スラリー状材料の塗布、リソグラフィ、現像および/またはエッチングを含むプロセスを用いてフォトルミネセンス構造体20を直接形成できる。成形法およびマイクロ機械加工法のどちらの方法も、複数のフォトルミネセンス構造体20を同時に製造可能なバッチプロセスであり、これによって製造費用が削減されることが分かろう。
【0069】
また、シリコーン樹脂などの透明有機樹脂材料以外に、例えばガラスやセラミックなどの透明無機材料を使用してフォトルミネセンス構造体20を形成することも可能であることが分かろう。無機材料を使用してフォトルミネセンス構造体20を製造する間接法の具体例として、以下に詳述する焼結法がある。まず、高温焼結法によってフォトルミネセンス板を形成し、次にソーイングなどの方法によってフォトルミネセンス板を複数のフォトルミネセンス構造体20に分離する。また、無機材料からなるフォトルミネセンス構造体20を製造する直接法の具体例として、以下に、焼結法について詳述する。フォトルミネセンス材および透明材料の粒子を焼結鋳型に供給、配置し、高温で加熱して複数のフォトルミネセンス構造体20を直接形成する。これらのフォトルミネセンス構造体20の製造方法は、透明構造体20’の製造にも適用できることが分かろう。同様に、ガラス基板またはセラミック基板を、ソーイングなどの方法を用いて複数の透明構造体20'に分離することでも形成することができる。
【0070】
次に、上述した様々な方法を用いてフォトルミネセンス構造体20を形成した後にフォトルミネセンス構造体20をLED半導体ダイ10に結合する結合工程について開示する。
図18Aおよび
図18Bでは、LED半導体ダイ10およびフォトルミネセンス構造体20を備えた電子発光構造体を形成する工程を示す。最初に、複数のLED半導体ダイ10を一定のピッチでLED半導体ダイ10のアレイとして剥離層50’上に配列する。剥離層50'の具体例として、UV剥離型テープまたは熱剥離型テープがある。望ましくは、LED半導体ダイ10のアレイの各一組の電極14を配設して強く押圧し、テープを柔らかな剥離層50’中に埋め込む。これにより、その後の処理における電極14の汚染を軽減できることになる。
図6に示す実施形態による発光素子1Fの製造については、LED半導体ダイ10のアレイは、剥離層50’’でなく基板40上に配列する。
【0071】
図18Bに示すように、続いて、あらかじめ配設されたLED半導体ダイ10のアレイの上面11にフォトルミネセンス構造体20のアレイを取り付ける。取付け工程を正確に制御して位置合わせを行うことが望ましく、これにより、フォトルミネセンス構造体20の下面22でLED半導体ダイ10の上面11を実質的に十分に覆うことができる。フォトルミネセンス構造体20は、粘着性材料または粘着テープを使用してLED半導体ダイ10の上面11に結合してもよい。これにより、LED半導体ダイ10およびフォトルミネセンス構造体20を備えた電子発光構造体が形成される。
【0072】
さらに、接合工程の後に電子発光構造体を囲繞する反射体30を形成する製造工程について開示する。
図19に示すように、LED半導体ダイ10の縁面13およびフォトルミネセンス構造体20の斜角縁面23の両方を囲繞するように反射体30の樹脂材料を配置して、反射体30を形成する。配置方法の例として、成形または配剤がある。成形法の例として、最初に、剥離層50’’上にあらかじめ配列された電子発光構造体のアレイを鋳型(図示せず)内に配置し、次に、反射体30の製造に使用される樹脂材料を鋳型に注入して、LED半導体ダイ10の縁面13およびフォトルミネセンス構造体20の斜角縁面23の両方を囲繞し、第3に、樹脂材料を硬化させて反射体30を形成する。
【0073】
配剤プロセスを用いる反射体30の製造では、鋳型がなくてよい。配剤法の例として、まず、反射体30の製造に使用される樹脂材料を、例えばニードルシリンジを使用して配剤し、剥離層50’’にあらかじめ配列された電子発光構造体のアレイ間の隙間に樹脂材料を直接配剤する。次に、LED半導体ダイ10の縁面13およびフォトルミネセンス構造体20の斜角縁面23が実質的に十分に覆われるまで、配剤量を徐々に増やしてゆく。反射体の樹脂材料の量を正確に調整して、樹脂材料が溢れてフォトルミネセンス構造体20の上面21を汚染しないようにすることに留意されたい。最後に、樹脂材料を硬化させて反射体30が形成される。
【0074】
同様に、
図7および
図8に示す発光素子の実施形態では、反射体30の分配樹脂材料の総量を減らして、反射体30をさらに成形することで製造できる。
【0075】
最後に、反射体の形成工程後の分離工程について開示する。反射体30を形成したら、
図20に示すように、剥離層50’’を除去して、例えば発光素子1Aなどの発光素子アレイを得る。
図21に示すように、ダイスカット法を用いて反射体30を分離して複数の発光素子1Aを得る。
【0076】
いくつかの実施形態について簡略的に述べると、本発明の発光素子を製造する製造方法には4つの主工程が含まれる。第1に、複数のフォトルミネセンス構造体20を形成し、第2に、フォトルミネセンス構造体20をLED半導体ダイ10のアレイに配置、接合して電子発光構造体のアレイを形成し、第3に、電子発光構造体のアレイを囲繞する反射体30のアレイを形成し、第4に、反射体30のアレイをダイスカットして複数の個別発光素子を形成する。
【0077】
本発明の発光素子を製造する製造方法は、斜角縁反射体を備えた別の実施形態の発光素子を製造する場合に使用することも可能であることが分かろう。開示した製造方法では、形状因子の小さい発光素子を製造することが望ましく、とくに、CSP型LEDを製造することが望ましい。また、開示した製造方法は、バッチプロセスによってフォトルミネセンス構造体を製造する際に適用することもできる。開示した製造方法を用いて、鋳型を使用せずにLED半導体ダイを囲繞する反射体を形成することも可能であることが分かろう。
【0078】
本願開示について特定の実施形態を参照して述べてきたが、本願特許請求の範囲に規定する開示の意図および範囲を逸脱せずに様々な変更を行ってもよく、また同等の技術に置き換えることも可能であることは、当業者であれば理解の及ぶことであろう。また、様々な改良を行って、特定の状況、材料、物の構成、方法または工程を本発明の目的、意図および範囲に適応させてもよい。このような改良はいずれも、本願特許請求の範囲内で行うものとする。特に、本明細書で開示した方法は特定の順序で実行される特定の作業に関連して説明したが、これらの作業を組み合わせたり、細分化したり、あるいは順序を入れ替えたりして、本開示の教示を逸脱しない範囲で同様の方法を構成することも可能であることが理解されよう。したがって、特に明記しない限り、本開示がこのような作業の順番および組分けによって制約を受けることはない。