(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
一般的に、適切な物性を有する歯科用組成物であって、Bis−GMA又は他のビスフェノール系(メタ)アクリレートモノマー若しくは成分を用いる必要なく処方することができる歯科用組成物が必要とされている。
【0021】
具体的には、圧縮強度等の改善された物性を示す歯科用組成物であって、理想的には、ビスフェノール部分を含有する(メタ)アクリレート成分を含まない歯科用組成物を提供することが、本発明の1つの目的である。
【0022】
この目的に対処するために、本発明は、
−重合性モノマー(1)、
−反応開始剤成分、
−約20重量%超の量のフィラー成分(重量%は、組成物の全重量に対する)を含み、
前記重合性モノマー(1)が、
−正確に2つの(メタ)アクリレート反応性部分を有し、
−前記(メタ)アクリレート反応性部分間の結合として非対称骨格を有し、
−前記2つの(メタ)アクリレート反応性部分が、アルキルエステルとして非対称モノマー骨格に結合しており、
−前記非対称骨格が、典型的に、正確に1つのフェノール型の芳香族部分を含む、ことを特徴とし、
前記重合性モノマー(1)が、
−炭素、水素、及び酸素以外の原子、
−フェノール型の芳香族部分以外の芳香族部分、
−ビスフェノール部分、を含有しない、特許請求の範囲に記載の歯科用組成物を特徴とする。
【0023】
更に、本発明は、歯科用充填材、クラウン及びブリッジ材料(例えば、一時的及び長期的)、インレー、アンレー、ベニア、歯科矯正装置、又は歯科用ミルブランクを製造するために又はとして、本明細書に記載の組成物を使用する方法を特徴とする。
【0024】
また、本発明は、ラピッドプロトタイピング技術を適用することによって、歯科用クラウン、ブリッジ、アンレー、又はインレー等の歯科用修復材(restauration)を製造するための、本明細書に記載の歯科用組成物の使用に関する。
【0025】
異なる定義がない限り、本明細書では、以下の用語は所与の意味を有するものとする。
「歯科用組成物」又は「歯科使用のための組成物」又は「歯科分野で使用するための組成物」は、歯科分野で使用することができ、また使用される任意の組成物である。これに関して、該組成物は、患者の健康にとって有害であってはならず、したがって、組成物から出て移行し得る有害成分及び毒性成分を含まない。歯科用組成物の例としては、永続的及び一時的クラウン及びブリッジ材料、人工クラウン、前歯又は臼歯用充填材、歯科用ミルブランク、及び歯列矯正装置が挙げられる。
【0026】
歯科用組成物は、典型的に、固化性組成物である。口腔内で固化させるための歯科用組成物は、約30分間又は20分間又は10分間の時間枠内で、約15〜50℃又は約20〜40℃の温度範囲を含む周囲条件で固化し得る。患者に痛みを引き起こす可能性があり、患者の健康にとって有害になる可能性があるので、より高い温度は推奨されない。歯科用組成物は、典型的に、約0.1〜約100mL、又は約0.5〜約50mL、又は約1〜約30mLの範囲の体積に相当する少体積で施術者に提供される。したがって、有用な包装装置の保管体積は、典型的に、これらの範囲内である。
【0027】
「歯科用充填材」は、欠損歯質を修復する、特に、硬質歯系組織の窩洞を充填するように設計された固化性材料である。
【0028】
本発明の意味の範囲内の「クラウン及びブリッジ材料」は、歯科用クラウン及びブリッジを作製するのに使用される固化性材料である。これら材料は、典型的に、歯科技工士がクラウン又はブリッジ等の永続的補綴物を作製するのに必要な期間中に使用される。これら期間は、数日間(1〜約6日間)、数週間(1〜約4週間)又は数カ月間(1〜約6カ月間)続いてよい。長期的クラウン及びブリッジ材料は、典型的に、約6〜24ヵ月間の期間にわたって使用される。
【0029】
「歯科用ミリングブロック」又は「歯科用ミルブランク」とは、歯科用物品を機械加工することができる材料の固体ブロック(三次元物品)を意味する。歯科用ミリングブロックは、典型的に、幾何学的に画定された形状を有する。歯科用ミリングブロックは、二次元において約20mm〜約30mmのサイズを有してよく、例えば、この範囲の直径を有してよく、第三次元において特定の長さであってよい。単一のクラウンを作製するためのブロック又はブランクは、約15mm〜約30mmの長さを有してよく、ブリッジを作製するためのブロック又はブランクは、約40mm〜約80mmの長さを有してよい。単一のクラウンを作製するために用いられるとき、ブロック又はブランクの典型的なサイズは、直径約24mm及び長さ約19mmである。更に、ブリッジを作製するために用いられるとき、ブロック又はブランクの典型的なサイズは、直径約24mm及び長さ約58mmである。上記寸法に加えて、歯科用ミリングブロックは、立方体、円筒形、又は直方体の形状を有していてもよい。1つのブランクから1つ超のクラウン又はブリッジを製造しなければならない場合、より大きなミリングブロックが有益であり得る。このような場合には、円筒形又は直方体状のミルブランクの直径又は長さは、約80〜約200mmの範囲であってよく、厚さは約10〜約30mmの範囲である。
【0030】
「機械加工」とは、機械による材料のフライス加工、研削、切削、削り出し、又は成形を意味する。フライス加工は、通常、研削よりも速く、コスト効率がよい。
【0031】
「反応開始剤系」又は「反応開始剤」は、本明細書において「固化性成分を硬化させる」とも記載する、固化性成分の硬化プロセスを出発又は開始させることができる歯科用組成物の成分を含むものとする。
【0032】
「レジンマトリクス」は、固化性成分と、存在する場合、有機希釈剤とで構成される歯科用組成物の有機部分を意味するものとする。
【0033】
「固化性成分又は材料」(例えば、「重合性成分」又は「架橋性成分」)は、例えば、加熱による重合、化学的架橋、放射線誘発性重合、又はレドックス開始剤を用いることによる架橋によって、硬化又は固化させることができる任意の成分である。固化性成分は、例えば、重合性基を1つだけ、2つ、3つ、又はそれ以上含有してよい。重合性基の典型例としては、例えば、(メタ)アクリレート基中に存在するビニル基等の不飽和炭素基が挙げられる。
【0034】
「硬化性組成物」は、2つ以上の成分の混合物であって、例えば、加熱による化学的架橋、放射線誘発性重合、又はレドックス開始剤を用いることによる架橋によって、硬化又は固化させることができる混合物である。硬化性組成物は、有利なことに、固化性成分を含んでもよい。
【0035】
「モノマー」は、オリゴマー又はポリマーに重合し、それによって分子量を増大させることができる重合性基((メタ)アクリレート基を含む)を1つ以上有する、化学式によって特徴付けることができる任意の化学物質である。通常、モノマーの分子量は、与えられる化学式に基づいて単純に計算することができる。
【0036】
本明細書で使用するとき、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」及び/又は「メタクリル」を指す短縮語である。例えば、「(メタ)アクリルオキシ」基は、アクリルオキシ基(すなわち、CH
2=CH−C(O)−O−)及び/又はメタクリルオキシ基(すなわち、CH
2=C(CH
3)−C(O)−O−)を指す短縮語である。同様に、(メタ)アクリレートは、「アクリレート」及び/又は「メタクリレート」を指す短縮語である。
【0037】
「硬化」、「固化」、及び「凝結反応」は、互換的に使用され、個々の成分間の化学反応によって組成物の粘度及び硬度等の物性が経時的に変化(例えば、増大)する反応を指す。
【0038】
「酸性部分を有する重合性モノマー」は、エチレン性不飽和並びに酸官能基及び/又は酸前駆体官能基を有する、モノマー、オリゴマー、及びポリマーを含むことを意味する。酸性前駆体官能基としては、例えば、無水物、酸ハロゲン化物、及びピロリン酸塩が挙げられる。酸性基は、好ましくは、−COOH又は−CO−O−CO−等の1つ以上のカルボン酸残基、−O−P(O)(OH)OH等のリン酸残基、C−P(O)(OH)OH等のホスホン酸残基、−SO
3H等のスルホン酸残基、又は−SO
2H等のスルフィン酸残基を含む。
【0039】
「フェノール型」部分は、一般的に、芳香族残基に直接結合している少なくとも1つの酸素原子を有する芳香族部分、より正確には、構造要素[C6RxO](xは、1、2、3、4、5、又は6であり、Rは、H、アルキル(例えば、C1〜C8)、−O−、−CO−、又は−C(O)O−であり、C6は、芳香環を形成する]を含む部分として理解される。例えば、「C6H5O−」(フェノキシ)は、最も単純な「フェノール型」部分を表す。
【0040】
「粉末」とは、例えば、振盪するか又は傾けたときに自由に流動することができる多数の非常に微細な粒子で構成される乾燥したバルク固体を意味する。
【0041】
「粒子」とは、幾何学的に決定され得る形状を有する固体である物質を意味する。粒子は、典型的に、例えば、粒度又は粒径に関して分析され得る。粒子は、非晶質であっても結晶質であってもよい。
【0042】
「放射線硬化性」とは、成分(又は、場合によっては組成物)が、周囲条件下で、合理的な時間枠内(例えば、約15、10、又は5分間以内)に、放射線、好ましくは、可視光スペクトルの波長を有する電磁放射線を印加することによって硬化し得ることを意味するものとする。
【0043】
用語「可視光」は、約400〜約700ナノメートル(nm)の波長を有する光を指すために使用される。
【0044】
「硬質歯系組織」とは、象牙質及びエナメル質を意味する。
【0045】
「周囲条件」は、本発明の組成物が、保管及び取り扱い中に通常曝される条件を意味する。周囲条件は、例えば、圧力約900〜約1100mbar(約0.09〜約0.11MPa)、温度約−10〜約60℃、及び相対湿度約10〜約100%であり得る。研究室では、周囲条件は、約23℃、及び約1013mbar(約0.1013MPa)、及び相対湿度約50%に調整することができる。歯科及び歯列矯正分野では、周囲条件は、圧力約950〜約1050mbar(約0.095〜約0.105MPa)、温度約15〜約40℃、及び相対湿度約20〜約80%として合理的に理解される。
【0046】
組成物は、該組成物が本質的な特徴として特定の成分を含有しない場合、本発明の意味内で該成分を「本質的に又は実質的に含まない」。したがって、前記成分は、それ自体であっても又は他の成分若しくは他の成分の構成成分と組み合わせても、組成物に故意に添加されることはない。特定の成分を本質的に含まない組成物は、通常、その成分を組成物全体に対して約1重量%未満、又は約0.1重量%未満、又は約0.01重量%未満の量で含有する。理想的には、該組成物又は溶液は、該成分を全く含有しない。しかし、時には、不純物が原因で少量の該成分が存在するのを避けられないこともある。
【0047】
本明細書で使用するとき、「a」、「an」、「the」、「少なくとも1つの」、及び「1つ以上の」は、互換的に用いられる。用語「含む」又は「含有する」及びこれらの変形は、これら用語が明細書及び特許請求の範囲に記載された場合、限定的な意味を有するものではない。用語「含む」は、より限定的な表現である「から本質的になる」及び「からなる」も含む。
【0048】
また、本明細書において、端点による数値範囲の列挙には、その範囲内に包含される全ての数が含まれる(例えば、1〜5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5等を含む)。
【0049】
用語に「(s)」を付加することは、その用語が単数形及び複数形を含むはずであることを意味する。例えば、用語「添加剤(s)」は、1つの添加剤及びそれ以上の添加剤(例えば、2つ、3つ、4つ等)を意味する。
【0050】
特に指定しない限り、明細書及び特許請求の範囲で使用される成分の量、下記のような物性の測定値等を表す全ての数は、全ての場合に用語「約」によって修飾されることが理解されるべきである。
【0051】
発明の詳細な説明
本明細書に記載する組成物は、様々な特性に関して優れていることが見出されている。
本明細書に記載する非対称(すなわち、対称ではない)重合性モノマーを含む固化した歯科用組成物は、特に、圧縮強度に関して改善された物性を示す。
【0052】
更に、所望の歯科用組成物は、ビスフェノール部分を含有するモノマー又は成分を用いることなく処方することができる。
【0053】
本明細書に記載する非対称の重合性モノマーは、典型的に、室温では凝固しないので、十分な量(典型的に、歯科用充填材、若しくはクラウン及びブリッジ材料、又は歯科用ミルブランクを処方又は作製するために必要な量)のフィラーの組み込みを促進する。
【0054】
特定の実施形態では、歯科用組成物は、固化前に以下の特徴のうちの少なくとも1つ以上、時に全てを満たす:
−粘度:ペーストである、例えば、100 1/sの剪断速度で、23℃にて測定したとき、約0.5〜約200Pa・s又は約1〜約100Pa・sの粘度を有する、
−水と接触した場合のpH値:中性(例えば、約6〜約8)又は酸性(例えば、約2〜約5)、
−放射線又はレドックス硬化性、
−保存安定性、
−1又は2成分系として提供される。
【0055】
必要に応じて、また、より正確には、粘度は、以下の条件下で求めることができる:23℃;剪断速度:100 1/s;Physica MCR 301 Rheometer(Anton Paar GmbH,Graz,Austria)で、コーン/プレート形状のCP25−1を用いて測定。
【0056】
水に溶解又は分散している場合(例えば、水10mL中組成物1g)、組成物は、典型的に、約6〜約8の範囲、又は約7のpH値を示す。すなわち、組成物は、全体として、本質的に、水と接触したとき、中性のpHを有するか、又はわずかに酸性である。
【0057】
本発明は、例えば、約300秒未満、又は約180秒未満、又は約120秒未満等の許容できる時間枠内で、歯科医院において既に利用可能な可視光源設備を用いて十分な深度まで固化することができる組成物を提供する。
【0058】
特定の実施形態では、歯科用組成物は、(固化後に)以下の特性のうちの少なくとも1つ以上、時に全てを満たす:
−3mm×3mm×5mmの寸法を有する試料を用いて、ISO 4049に従って求めた歯科用製剤の圧縮強度(CS 1):少なくとも約430MPa又は少なくとも約445又は少なくとも約460MPa、
−直径4mm及び高さ8mmの円筒形試料を用いて、DIN 53454(ISO 9917 2001)に従って求めた歯科用製剤の圧縮強度(CS 2):少なくとも約280MPa又は少なくとも約300又は少なくとも約320MPa。
【0059】
重合性モノマー(1)は、歯科用接着剤組成物に含有される固化性レジンマトリクスの1成分である。
【0060】
重合性モノマー(1)は、以下の通り説明することができ:
−正確に2つの(メタ)アクリレート反応性部分を有する、
−該(メタ)アクリレート反応性部分間の結合として非対称骨格を有する、
−該2つの(メタ)アクリレート反応性部分が、アルキルエステルとして非対称モノマー骨格に結合している、
−該非対称骨格が、正確に1つのフェノール型の芳香族部分を含む、
−好ましくは、反応性基間の結合の一部ではないが、反応性基間のこの結合に結合している非対称モノマー骨格内に1つ以下の更なる芳香族部分を含有する、
−好ましくは、アルキルエステルとして該非対称モノマー骨格に常に結合している、正確に2つの(メタ)アクリレート反応性基を有する、
上記重合性モノマー(1)は、
−炭素、水素、及び酸素以外の原子、
−フェノール型の芳香族部分以外の芳香族部分、
−ビスフェノール部分、
−任意で、エーテル及びエステル以外の酸素系結合を、含有しない。
【0061】
1つの実施形態によれば、重合性モノマー(1)は、以下の特徴によって特徴付けることもできる:
−約300〜約600の分子量を有し、
−室温(例えば、23℃)で凝固しない、すなわち、液体である。
【0062】
重合性モノマー(1)は、以下の式(I)によって特徴付けられる:
【0063】
【化1】
(式中、
B−O−A−[−O−B’−]
aは、反応性基間の結合としての非対称モノマー骨格を表し、
a=0又は1であり、
Aは、以下の部分から選択され:
【0064】
【化2】
Aは、常に、アリール−アルキルエーテルとしてB及び/又はB’に結合し、
Bは、以下の部分から選択され:
*−(CH
2)
b−
*、
*−(CH
2−CH
2−O−CH
2−CH
2)−
*、
*−(CH
2−CH
2−O−CH
2−CH
2−CH
2)−
*、
*−(CH
2−CH
2−CH
2−O−CH
2−CH
2−CH
2)−
*、
【0065】
【化3】
Bは、常に、アルキルエステルとして上記(メタ)アクリレート反応性部分に結合し、
b=2〜6であり、
B’は、
*−(CH2)
b’−
*、
*−(CH
2−CH
2−O−CH
2−CH
2)−
*、
【0066】
【化4】
から選択され、
B’は、常に、アルキルエステルとして上記(メタ)アクリレート反応性部分に結合し、
b’=2〜6であり、
R=H、メチルであり、
Xは、H、メチル、エチル、ヘキシル、tert−ブチルから選択され、
「
*」は、その部分がモノマーの別の部分に結合する、該モノマーの部分の部位を表す)。
【0067】
更なる実施形態によれば、重合性モノマー(1)は、式(Ia)又は式(Ib)によって特徴付けることができる:
【0068】
【化5】
(式中、
B−O−A−O−B’は、反応性部分間の結合としての非対称モノマー骨格であり、
Aは、以下の部分から選択され:
【0069】
【化6】
Aは、常に、アリール−アルキルエーテルとしてB及びB’に結合し、
Bは、以下の部分から選択され:
*−(CH
2)
b−
*、
*−(CH
2−CH
2−O−CH
2−CH
2)−
*、
*−(CH
2−CH
2−O−CH
2−CH
2−CH
2)−
*、
*−(CH
2−CH
2−CH
2−O−CH
2−CH
2−CH
2)−
*、
【0070】
【化7】
Bは、常に、アルキルエステルとして上記(メタ)アクリレート反応性部分に結合し、
b=2〜6であり、
B’は、以下の部分から選択され:
*−(CH
2)
b−
*、
*−(CH
2−CH
2−O−CH
2−CH
2)−
*、
*−(CH
2−CH
2−O−CH
2−CH
2−CH
2)−
*、
*−(CH
2−CH
2−CH
2−O−CH
2−CH
2−CH
2)−
*、
【0071】
【化8】
B’は、常に、アルキルエステルとして上記(メタ)アクリレート反応性部分に結合し、
b’=2〜6であり、
R=H、メチルであり、
X=H、メチル、エチル、ヘキシル、tert−ブチルである)、
又は
【0072】
【化9】
(式中、
B−O−Aは、反応性部分間の結合としての非対称モノマー骨格であり、
Aは、以下の部分から選択され:
【0073】
【化10】
Aは、常に、アリール−アルキルエーテルとしてBに結合し、また、常に、アルキルエステルとして上記(メタ)アクリレート反応性部分に結合し、
Bは、以下から選択され:
*−(CH
2)
b−
*、
*−(CH
2−CH
2−O−CH
2−CH
2)−
*、
【0074】
【化11】
Bは、常に、アルキルエステルとして上記(メタ)アクリレート反応性部分に結合し、
b=2〜6であり、
R=H、メチルであり、
「
*」は、その部分がモノマーの別の部分に結合する、該モノマーの部分の部位を表す)。
【0075】
重合性モノマー(1)の具体例としては、以下が挙げられる。
【0080】
上記式の全てにおいて、Rは、独立して、H及びCH3から選択してよく、これは、各成分において、Rがメチル若しくは水素のいずれであってもよいか、又は一方のRがメチルであり、他方のRが水素であることを意味する。
【0081】
本明細書に記載する重合性モノマー(1)は、例えば、以下の実施例の項に記載の通り合成することができる。
【0082】
そのようにすると、当業者は、重合性モノマー(1)に応じて、合成中に、単一の非対称化合物が得られるだけでなく、異なる非対称成分を含有する混合物又は主な非対称化合物に加えて微量の対称成分を含有する混合物も得られることを理解する。
【0083】
非対称的に置換された芳香族部分に基づく非対称骨格を含有する重合性モノマー(1)では、合成によって、単一の非対称化合物、又は100モル%の非対称成分を含有する組成物が得られる。
【0084】
更に精製しない限り、対称的に置換された芳香族部分に基づく非対称骨格を含有する重合性モノマー(1)の合成によって、通常、統計の結果、微量成分としての約25モル%の各対称化合物に加えて、主成分としての約50モル%の非対称化合物を含有する組成物が得られる。
【0085】
必要に応じて、2つ、3つ、又はそれ以上の重合性モノマー(1)の混合物を用いてもよい。
【0086】
重合性モノマー(1)は、典型的に、以下の量含有される:
−下限:少なくとも約1重量%、又は少なくとも約5重量%、又は少なくとも約10重量%、
−上限:約75重量%以下、又は約70重量%以下、又は約65重量%以下、
−範囲:約1〜約75重量%、又は約5〜約70重量%、又は約10〜約65重量%、
重量%は、組成物全体の量に対する。
【0087】
酸性基を有しない重合性モノマーに加えて、組成物は、レジンマトリクスの一部として酸性部分(2)を有する重合性モノマーを含んでもよい。
【0088】
したがって、本明細書に記載する組成物は、更に、酸性部分を有する重合性モノマー(2)を含んでもよい。
【0089】
存在する場合、重合性モノマー(2)の性質及び構造は、所望の結果を得ることができる限り、特に限定されない。
【0090】
重合性モノマー(3)の存在は、所望の酸性を有する組成物を提供することができるので、有益であり得る。
【0091】
酸部分を有する重合性成分(A1)は、典型的に、以下の式によって表すことができる:
A
n−B−C
m
(式中、Aは、(メタ)アクリル部分等のエチレン性不飽和基であり、
Bは、(i)任意で他の官能基(例えば、ハロゲン化物(Cl、Br、Iを含む)、OH、又はこれらの混合物)で置換されている直鎖又は分枝状C1〜C12アルキル、(ii)任意で他の官能基(例えば、ハロゲン化物、OH、又はこれらの混合物)で置換されているC6〜C12アリール、(iii)1つ以上のエーテル、チオエーテル、エステル、チオエステル、チオカルボニル、アミド、ウレタン、カルボニル、及び/又はスルホニル結合によって互いに結合している4〜20個の炭素原子を有する有機基、等のスペーサー基であり、
Cは、酸性基であり、
m、nは、独立して、1、2、3、4、5、又は6から選択され、
上記酸性基は、−COOH若しくは−CO−O−CO−等の1つ以上のカルボン酸残基、−O−P(O)(OH)OH等のリン酸残基、C−P(O)(OH)(OH)等のホスホン酸残基、−SO
3H等のスルホン酸残基、又は−SO
2H等のスルフィン酸残基を含む)。
【0092】
酸性部分を有する重合性成分の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:グリセロールホスフェートモノ(メタ)アクリレート、グリセロールホスフェートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(例えば、HEMA)ホスフェート、ビス((メタ)アクリルオキシエチル)ホスフェート、(メタ)アクリルオキシプロピルホスフェート、ビス((メタ)アクリルオキシプロピル)ホスフェート、ビス((メタ)アクリルオキシ)プロピルオキシホスフェート、(メタ)アクリルオキシヘキシルホスフェート、ビス((メタ)アクリルオキシヘキシル)ホスフェート、(メタ)アクリルオキシオクチルホスフェート、ビス((メタ)アクリルオキシオクチル)ホスフェート、(メタ)アクリルオキシデシルホスフェート、ビス((メタ)アクリルオキシデシル)ホスフェート、カプロラクトンメタクリレートホスフェート、クエン酸ジ−又はトリ−メタクリレート、ポリ(メタ)アクリル化オリゴマレイン酸、ポリ(メタ)アクリル化ポリマレイン酸、ポリ(メタ)アクリル化ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル化ポリカルボキシル−ポリホスホン酸、ポリ(メタ)アクリル化ポリクロロホスホン酸、ポリ(メタ)アクリル化ポリスルホネート、ポリ(メタ)アクリル化ポリホウ酸等。酸ハロゲン化物又は無水物等、例えば、水と容易に反応して、上記具体例を形成することができる酸部分を有するこれら固化性成分の誘導体も企図される。
【0093】
(メタ)アクリル酸、芳香族(メタ)アクリル化酸(例えば、メタクリル化トリメリット酸)等の不飽和カルボン酸のモノマー、オリゴマー、及びポリマー、並びにこれらの無水物を使用することもできる。
【0094】
これら化合物の一部は、例えば、イソシアナトアルキル(メタ)アクリレートとカルボン酸との間の反応生成物として得ることができる。酸官能性成分及びエチレン性不飽和成分の両方を有するこの種の追加の化合物は、米国特許第4,872,936号(Engelbrecht)及び同第5,130,347号(Mitra)に記載されている。エチレン性不飽和部分及び酸部分の両方を含有する多種多様なこのような化合物を使用することもできる。必要に応じて、このような化合物の混合物を使用することができる。
【0095】
(メタ)アクリレート官能化ポリアルケン酸の使用は、これら成分が、硬質歯系組織に対する接着力、均質な層の形成、粘度、又は耐湿性等の特性を改善するのに有用であることが見出されているので、好ましい場合が多い。
【0096】
1つの実施態様によれば、組成物は、(メタ)アクリレート官能化ポリアルケン酸、例えば、AA:ITA:IEM(ペンダントメタクリレートを有するアクリル酸:イタコン酸のコポリマー)を含有する。
【0097】
これら成分は、例えば、AA:ITAコポリマーと2−イソシアナトエチルメタクリレートとを反応させて、コポリマーの酸基の少なくとも一部をペンダントメタクリレート基に変換することによって作製することができる。これら成分を作製するプロセスは、例えば、米国特許第5,130,347号(Mitra))の実施例11に記載されており;また、米国特許第4,259,075号(Yamauchiら)、米国特許第4,499,251号(Omuraら)、米国特許第4,537,940号(Omuraら)、米国特許第4,539,382号(Omuraら)、米国特許第5,530,038号(Yamamotoら)、米国特許第6,458,868号(Okadaら)、並びに欧州特許第0 712 622 A1号(Tokuyama Corp.)及び欧州特許第1 051 961 A1号(Kuraray Co.,Ltd.)に列挙されているものである。
【0098】
必要に応じて、2つ、3つ、又はそれ以上の重合性モノマー(2)の混合物を用いてもよい。
【0099】
酸性部分を有する重合性モノマー(2)は、以下の量で存在し得る:
−下限:少なくとも約0重量%、又は少なくとも約0.1重量%、又は少なくとも約1重量%、
−上限:約60重量%以下、又は約50重量%以下、又は約40重量%以下、
−範囲:約0〜約60重量%、又は約0.1〜約50重量%、又は約1〜約40重量%、
重量%は、組成物全体の量に対する。
【0100】
本明細書に記載する組成物は、任意で、重合性モノマー(1)とは異なる酸性部分を有しない重合性モノマー(3)、具体的には、ウレタン部分を含む重合性モノマーを含んでもよい。
【0101】
存在する場合、重合性モノマー(3)は、固化性レジンマトリクスの更なる成分を形成する。
【0102】
重合性モノマー(3)の性質及び構造は、所望の結果を得ることができる限り、特に限定されない。
【0103】
この成分は、典型的に、エチレン性不飽和モノマー、モノマー、オリゴマー、又はポリマーを含むフリーラジカル重合性材料である。
【0104】
好適な重合性成分は、以下の式によって特徴付けることができる:
A
n−B−A
m
(式中、Aは、(メタ)アクリル部分等のエチレン性不飽和基であり、
Bは、(i)任意で他の官能基(例えば、ハロゲン化物(Cl、Br、Iを含む)、OH、又はこれらの混合物)で置換されている直鎖又は分枝状C1〜C12アルキル、(ii)任意で他の官能基(例えば、ハロゲン化物、OH、又はこれらの混合物)で置換されているC6〜C12アリール、又は(iii)1つ以上のエーテル、チオエーテル、エステル、チオエステル、チオカルボニル、アミド、ウレタン、カルボニル、及び/又はスルホニル結合によって互いに結合している4〜20個の炭素原子を有する有機基、から選択され、
m、nは、独立して、0、1、2、3、4、5、又は6から選択されるが、ただし、n+mは、0超である、すなわち、少なくとも1つのA基が存在する)。
【0105】
このような重合性材料としては、モノ−、ジ−、又はポリ−アクリレート及びメタクリレート、例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)と2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)との反応生成物であるUDMA(異性体の混合物、例えば、Rohm Plex 6661−0)と呼ばれるジウレタンジメタリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−プロパンジオールジアクリレート、1,3−プロパンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,2,4−ブタントリオールトリ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、ビス[1−(2−(メタ)アクリルオキシ)]−p−エトキシフェニルジメチルメタン、及びトリスヒドロキシエチル−イソシアヌレートトリメタクリレート;分子量200〜500のポリエチレングリコールのビス−アクリレート及びビス−メタクリレート、アクリル化モノマー(例えば、米国特許第4,652,274号を参照)及びアクリル化オリゴマー(例えば、米国特許第4,642,126号を参照)の共重合性混合物;並びにスチレン、コハク酸ジビニル、アジピン酸ジビニル、及びフタル酸ジビニル等のビニル化合物;ウレタン、尿素、又はアミド基を含む多官能性(メタ)アクリレートが挙げられる。必要に応じて、これらフリーラジカル重合性材料の2つ以上の混合物を使用してよい。
【0106】
これらエチレン性不飽和モノマーは、単独で又は他のエチレン性不飽和モノマーと組み合わせて歯科用組成物で使用することができる。
【0107】
ヒドロキシル部分を含むモノマーを添加してもよい。好適な化合物としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(HEMA)、2−又は3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、ジアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、例えば、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、並びに更には1,2−又は1,3−及び2,3−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル−1,3−ジ(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル−1,2−ジ(メタ)アクリレート、N−(メタ)アクリロイル−1,2−ジヒドロキシプロピルアミン、N−(メタ)アクリロイル−1,3−ジヒドロキシプロピルアミン、フェノール及びグリシジル(メタ)アクリレートの付加物、例えば、1−フェノキシ2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1−ナフトキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられ、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、及び2,3−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0108】
必要に応じて、これら成分のうちの1つ以上の混合物を用いてもよい。
【0109】
また、ウレタン部分を有する好適な重合性モノマーとしては、以下の構造を有するものが挙げられる:A−(−S1−U−S2−MA)n(式中、
Aは、少なくとも1つの単位を含む結合元素であり、
S1は、互いに結合している少なくとも4つの単位を含むスペーサー基であり、
S2は、互いに結合している少なくとも4つの単位を含むスペーサー基であり、
A、S1、及びS2の単位は、独立して、CH
3−、−CH
2−、−O−、−S−、−NR
1−、−CO−、−CR
1=、
【0110】
【化16】
−N=、−CR
1R
2−から選択され、
R
1及びR
2は、独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アリールアルキル、アリール又は置換アリールから選択され、これら単位は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、エステル基、ウレタン基、又はアミド基等の直鎖状、分枝状、又は環状構造を形成することができ、
Uは、スペーサー基S1とS2とを結合するウレタン基、尿素基、又はアミド基であり、
MAは、アクリレート基又はメタクリレート基であり、
nは、3〜6である)。
【0111】
ウレタン部分を有する重合性モノマーはの具体例としては、以下が挙げられる。
【0113】
更なる例は、米国特許第8,329,776 B2号(Hechtら)に記載されている。この参照文献の内容は、参照により本明細書に援用される。
【0114】
これら成分に加えて又はこれら成分の他に、添加し得る他の固化性成分としては、ポリエステルウレタン(メタ)アクリレート、ポリエーテルウレタン(メタ)アクリレート、ポリカーボネートウレタン(メタ)アクリレート、及びポリ(メタ)アクリレートウレタン(メタ)アクリレート等のオリゴマー又はポリマー化合物が挙げられる。これら化合物の分子量は、典型的に、20,000g/モル未満、特に15,000g/モル未満、特に10,000g/モル未満である。
【0115】
これら成分の添加を用いて、レオロジー特性を調整することができる。
【0116】
必要に応じて、2つ、3つ、又はそれ以上の重合性モノマー(3)の混合物を用いてもよい。
【0117】
重合性モノマー(2)は、以下の量で存在し得る:
−下限:少なくとも約0重量%、又は少なくとも約1重量%、又は少なくとも約5重量%、
−上限:約70重量%以下、又は約60重量%以下、又は約50重量%以下、
−範囲:約0〜約70重量%、又は約1〜約60重量%、又は約5〜約50重量%、
重量%は、組成物全体の量に対する。
【0118】
本明細書に記載する組成物は、反応開始剤も含む。1つ超の反応開始剤成分が必要な場合、反応開始剤は反応開始剤系とも称される。
【0119】
反応開始剤の性質は、所望の結果を得ることができる限り、特に限定されない。
【0120】
反応開始剤系は、放射線(すなわち、放射線硬化)、熱(すなわち、熱硬化)、レドックス反応(すなわち、レドックス硬化)、又はこれらの組み合わせを介して重合を開始させることができる系を含んでよい。
【0121】
フリーラジカル活性官能基を含有するレジンマトリクスの固化性成分の重合を開始させることができる反応開始剤の部類としては、任意で光増感剤又は促進剤と組み合わせられる、フリーラジカル生成光開始剤が挙げられる。
【0122】
このような反応開始剤は、典型的に、約200〜約700nmの波長を有する光エネルギーに曝露された際、付加重合のためのフリーラジカルを生成することができるものであり得る。
【0123】
アルファ切断を受け得る反応開始剤成分が、時に好ましい。
【0124】
反応開始剤又は反応開始剤系の一部としてのアシルホスフィンオキシドの使用は、特に有用であることが見出されている。
【0125】
好適なアシルホスフィンオキシドは、以下の式によって特徴付けることができる:
(R
9)
2−P(=O)−C(=O)−R
10
(式中、各R
9は、個々に、アルキル、シクロアルキル、アリール、及びアラルキル等のヒドロカルビル基であり得、そのいずれかがハロ−、アルキル−、若しくはアルコキシ基で置換されていてもよいか、又は2つのR
9基が結合してリン原子と共に環を形成することができ、R
10は、ヒドロカルビル基、S−、O−、若しくはN−含有5若しくは6員複素環基、又は−Z−C(=O)−P(=O)−(R
9)
2基(式中、Zは、2〜6個の炭素原子を有するアルキレン又はフェニレン等の二価のヒドロカルビル基を表す)である)。
【0126】
好適な系は、例えば、米国特許第4,737,593号にも記載されており、その内容は参照により本明細書に援用される。
【0127】
本発明において有用な好ましいアシルホスフィンオキシドは、R
9及びR
10基が、フェニル、又は低級アルキル−若しくは低級アルコキシ−置換フェニルであるものである。「低級アルキル」及び「低級アルコキシ」とは、1〜4個の炭素原子を有するかかる基を意味する。最も好ましくは、アシルホスフィンオキシドは、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(Lucirin(商標)TPO、BASF)である。
【0128】
好適なビスアシルホスフィンオキシドは、以下の式によって記載することもできる:
【0129】
【化18】
(式中、nは、1又は2であり、R
4、R
5、R
6、及びR
7は、H、C1〜4アルキル、C1〜4アルコキシル、F、Cl、又はBrであり;R
2及びR
3は、同じであるか又は異なり、シクロヘキシル、シクロペンチル、フェニル、ナフチル、若しくはビフェニリルラジカル、F、Cl、Br、I、C1〜4アルキル及び/若しくはC1〜4アルコキシルによって置換されているシクロペンチル、シクロヘキシル、フェニル、ナフチル、若しくはビフェニリルラジカル、又はS若しくはN−含有5員若しくは6員複素環を意味するか;あるいは、R
2及びR
3は、結合して、4〜10個の炭素原子を含有し、任意で1〜6個のC1〜4アルキルラジカルによって置換されている環を形成する)。
【0130】
より具体的な例としては、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキシド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−エトキシフェニルホスフィンオキシド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−ビフェニリルホスフィンオキシド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−プロピルフェニルホスフィンオキシド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−2−ナフチルホスフィンオキシド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−1−ナフチルホスフィンオキシド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−クロロフェニルホスフィンオキシド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−2,4−ジメトキシフェニルホスフィンオキシド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)デシルホスフィンオキシド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−オクチルフェニルホスフィンオキシド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキシド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキシド、ビス−(2,6−ジクロロ−3,4,5−トリメトキシベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキシド、ビス−(2,6−ジクロロ−3,4,5−トリメトキシベンゾイル)−4−エトキシフェニルホスフィンオキシド、ビス−(2−メチル−1−ナフトイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキシド、ビス−(2−メチル−1−ナフトイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス−(2−メチル−1−ナフトイル)−4−ビフェニリルホスフィンオキシド、ビス−(2−メチル−1−ナフトイル)−4−エトキシフェニルホスフィンオキシド、ビス−(2−メチル−1−ナフトイル)−2−ナフチルホスフィンオキシド、ビス−(2−メチル−1−ナフトイル)−4−プロピルフェニルホスフィンオキシド、ビス−(2−メチル−1−ナフトイル)−2,5−ジメチルホスフィンオキシド、ビス−(2−メトキシ−1−ナフトイル)−4−エトキシフェニルホスフィンオキシド、ビス−(2−メトキシ−1−ナフトイル)−4−ビフェニリルホスフィンオキシド、ビス−(2−メトキシ−1−ナフトイル)−2−ナフチルホスフィンオキシド、及びビス−(2−クロロ−1−ナフトイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキシドが挙げられる。
【0131】
アシルホスフィンオキシドビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(IRGACURE(商標)819、Ciba Specialty Chemicals(Tarrytown,NY))が時に好ましい。
【0132】
三級アミン還元剤を、アシルホスフィンオキシドと組み合わせて使用してもよい。本発明において有用な例示的な三級アミンとしては、エチル4−(N,N−ジメチルアミノ)ベンゾエート(EDMAB)及びN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)が挙げられる。
【0133】
400nm超1200nm以下の波長で照射されたとき、フリーラジカル反応を開始させることができる市販のホスフィンオキシド光開始剤としては、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド及び2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンの25:75混合物(重量基準)(IRGACURE(商標)1700、Ciba Specialty Chemicals)、2−ベンジル−2−(N,N−ジメチルアミノ)−1−(4−モルホリノフェニル)−1−ブタノン(IRGACURE(商標)369、Ciba Specialty Chemicals)、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)フェニル)チタン(IRGACURE(商標)784 DC、Ciba Specialty Chemicals)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド及び2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンの1:1混合物(重量基準)(DAROCUR(商標)4265、Ciba Specialty Chemicals)、並びにエチル−2,4,6−トリメチルベンジルフェニルホスフィネート(LUCIRIN(商標)LR8893X、BASF Corp.(Charlotte,NC))が挙げられる。
【0134】
多様な可視又は近赤外光開始剤系を、フリーラジカル重合性材料の光重合のために使用してもよい。
【0135】
例えば、アミン及びα−ジケトンの2成分系を介して重合を開始させる系から選択される光開始剤系を用いてよい。このような系は、例えば、米国特許第4,071,424号及び国際公開第2009151957号に記載されており、これらは、参照により本明細書に援用される。
【0136】
あるいは、レジンは、3成分又は3元光開始剤系と組み合わせてもよい。好適な系は、例えば、米国特許第5,545,676号及び国際公開第2009151957号に記載されており、これらは、参照により本明細書に援用される。
【0137】
3元光開始剤系において、第1の成分は、ヨードニウム塩、すなわち、ジアリールヨードニウム塩である。ヨードニウム塩は、増感剤及び供与体の存在下でモノマーに溶解するとき、好ましくはモノマーに可溶性であり、かつ貯蔵安定性である(すなわち、自然発生的に重合を促進しない)。したがって、特定のヨードニウム塩の選択は、選択される具体的なモノマー、ポリマー又はオリゴマー、増感剤及び供与体にある程度依存し得る。好適なヨードニウム塩は、米国特許第3,729,313号、同第3,741,769号、同第3,808,006号、同第4,250,053号、及び同第4,394,403号に記載されており、これらのヨードニウム塩に関する開示は、参照により本明細書に援用される。ヨードニウム塩は、単塩(例えば、Cl
−、Br
−、I
−、又はC
4H
5SO
3−等のアニオンを含有する)であってもよく、又は金属錯塩(例えば、SbF
5OH
−又はAsF
6−を含有する)であってもよい。必要に応じて、ヨードニウム塩の混合物を用いてもよい。好ましいヨードニウム塩としては、ジフェニルヨードニウム塩、例えば、ジフェニルヨードニウムクロリド、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、及びジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレートが挙げられる。
【0138】
3元光開始剤系の第2の成分は、増感剤である。増感剤は、望ましくは、モノマーに可溶性であり、400ナノメートル超1200ナノメートル以下、より好ましくは400ナノメートル超700ナノメートル以下、最も好ましくは400ナノメートル超約600ナノメートル以下の波長範囲内のどこかで光を吸収することができる。また、増感剤は、参照により本明細書に援用される、米国特許第3,729,313号に記載されている試験手順を用いて、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジンの増感が可能であり得る。好ましくは、この試験に合格することに加えて、増感剤は、貯蔵安定性もある程度考慮して選択される。したがって、特定の増感剤の選択は、選択される具体的なモノマー、オリゴマー又はポリマー、ヨードニウム塩及び供与体にある程度依存し得る。
【0139】
好適な増感剤としては、以下の範疇の化合物:ケトン、クマリン染料(例えば、ケトクマリン)、キサンテン染料、アクリジン染料、チアゾール染料、チアジン染料、オキサジン染料、アジン染料、アミノケトン染料、ポルフィリン、芳香族多環式炭化水素、p−置換アミノスチリルケトン化合物、アミノトリアリルメタン、メロシアニン、スクアリリウム染料、及びピリジニウム染料を挙げることができる。ケトン(例えば、モノケトン又はアルファ−ジケトン)、ケトクマリン、アミノアリールケトン、及びp−置換アミノスチリルケトン化合物が、好ましい増感剤である。高い感度を必要とする用途については、ジュロリジニル部分を含有する増感剤を用いることが好ましい。深い硬化(例えば、高度充填コンポジットの硬化)が必要な用途については、光重合に望ましい照射波長で、約1000未満、より好ましくは約100未満の減衰係数を有する増感剤を用いることが好ましい。あるいは、照射時の励起波長において光吸収の低減を示す染料を使用してもよい。
【0140】
例えば、ケトン増感剤の好ましい部類は以下の式を有する:ACO(X)
bB(式中、Xは、CO又はCR
5R
6(式中、R
5及びR
6は同じであっても異なっていてもよく、水素、アルキル、アルカリル、又はアラルキルであってよい)であり、bは0又は1であり、AとBは、同じであっても異なっていてもよい、置換(1つ以上の非干渉置換基を有する)又は非置換のアリール基、アルキル基、アルカリル基、又はアラルキル基であるか、あるいはA及びBが一緒になって、置換又は非置換の脂環式、芳香族、複素環式、又は縮合芳香族環であってよい環状構造を形成してもよい)。
【0141】
上記式の好適なケトンとしては、2,2−、4,4−又は2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、ジ−2−ピリジルケトン、ジ−2−フラニルケトン、ジ−2−チオフェニルケトン、ベンゾイン、フルオレノン、カルコン、ミヒラーケトン、2−フルオロ−9−フルオレノン、2−クロロチオキサントン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、1−又は2−アセトナフトン、9−アセチルアントラセン、2−、3−又は9−アセチルフェナアントレン、4−アセチルビフェニル、プロピオフェノン、n−ブチロフェノン、バレロフェノン、2−、3−又は4−アセチルピリジン、3−アセチルクマリン等のモノケトン(b=0)が挙げられる。好適なジケトンとしては、アントラキノン、フェナントレンキノン、o−、m−及びp−ジアセチルベンゼン、1,3−、1,4−、1,5−、1,6−、1,7−及び1,8−ジアセチルナフタレン、1,5−、1,8−及び9,10−ジアセチルアントラセン等のアラルキルジケトンが挙げられる。好適なアルファ−ジケトン(b=1及びX=CO)としては、2,3−ブタンジオン、2,3−ペンタンジオン、2,3−ヘキサンジオン、3,4−ヘキサンジオン、2,3−ヘプタンジオン、3,4−ヘプタンジオン、2,3−オクタンジオン、4,5−オクタンジオン、ベンジル、2,2’−3 3’−及び4,4’−ジヒドロキシルベンジル、フリル、ジ−3,3’−インドリルエタンジオン、2,3−ボルナンジオン(カンファーキノン)、ビアセチル、1,2−シクロヘキサンジオン、1,2−ナフタキノン、アセナフタキノン等が挙げられる。
【0142】
3元反応開始剤系の第3の成分は、供与体である。好ましい供与体としては、例えば、アミン(アミノアルデヒド及びアミノシランを含む)、アミド(ホスホラミドを含む)、エーテル(チオエーテルを含む)、尿素(チオ尿素を含む)、フェロセン、スルフィン酸及びその塩、フェロシアニドの塩、アスコルビン酸及びその塩、ジチオカルバミン酸及びその塩、キサントゲン酸塩、エチレンジアミン四酢酸の塩、並びにテトラフェニルボロン酸の塩が挙げられる。供与体は、非置換であってもよく、1つ以上の非干渉置換基により置換されていてもよい。特に好ましい供与体は、窒素、酸素、リン、又は硫黄原子等の電子供与体原子と、電子供与体原子に対してα位にある炭素原子又はシリコン原子に結合している引き抜き可能な水素原子とを含有する。多種多様な供与体が、米国特許第5,545,676号に開示されており、これは、参照により本明細書に援用される。
【0143】
本明細書に記載されている歯科用組成物において代わりに使用できる別のフリーラジカル反応開始剤系は、ホウ酸アニオン及び補完的なカチオン性染料を含むイオン性染料対イオン錯体反応開始剤の部類である。
【0144】
ホウ酸塩光開始剤は、例えば、米国特許第4,772,530号、同第4,954,414号、同第4,874,450号、同第5,055,372号、及び同第5,057,393号に記載されており、これらの開示は参照により本明細書に援用される。
【0145】
これら光開始剤において有用なホウ酸アニオンは、一般的に、式R
1R
2R
3R
4B−(式中、R
1、R
2、R
3、及びR
4は、独立して、アルキル、アリール、アルカリル、アリル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、脂環式及び飽和又は不飽和の複素環式基であり得る)である。好ましくは、R
2、R
3、及びR
4は、アリール基、より好ましくはフェニル基であり、R
1は、アルキル基、より好ましくは二級アルキル基である。
【0146】
カチオン対イオンは、カチオン性染料、四級アンモニウム基、遷移金属配位錯体等であり得る。対イオンとして有用なカチオン性染料は、カチオン性のメチン、ポリメチン、トリアリールメチン、インドリン、チアジン、キサンテン、オキサジン、又はアクリジン染料であってよい。より具体的には、染料は、カチオン性のシアニン、カルボシアニン、ヘミシアニン、ローダミン、及びアゾメチン染料であってもよい。有用なカチオン性染料の具体例としては、メチレンブルー、サフラニンO、及びマラカイトグリーンが挙げられる。対イオンとして有用な四級アンモニウム基は、トリメチルセチルアンモニウム、セチルピリジニウム、及びテトラメチルアンモニウムであってよい。他の有機親和性カチオンとしては、ピリジニウム、ホスホニウム、及びスルホニウムを挙げることができる。
【0147】
使用することができる感光性遷移金属配位錯体としては、ピリジン、2,2’−ビピリジン、4,4’−ジメチル−2,2’−ビピリジン、1,10−フェナントロリン、3,4,7,8−テトラメチルフェナントロリン、2,4,6−トリ(2−ピリジル−s−トリアジン)及び関連する配位子等の配位子を有するコバルト、ルテニウム、オスミウム、亜鉛、鉄、及びイリジウムの錯体が挙げられる。
【0148】
フリーラジカル活性官能基の重合を開始することができる反応開始剤の更に別の代替的部類としては、従来の化学的反応開始剤系、例えば、過酸化物とアミン等の活性化剤との組み合わせが挙げられる。熱レドックス反応に依存するこれら反応開始剤は、多くの場合、「自己硬化触媒」と称される。これらは、典型的に、反応物質を互いに離して保管し、その後、使用直前に合わせる2成分系として供給される。
【0149】
具体的には、ラウロイルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、及びp−クロロベンゾイルペルオキシド、並びにp−メチルベンゾイルペルオキシド等の化合物は、有機ペルオキシド化合物であると考えてよい。
【0150】
活性剤として好適なのは、例えば、米国特許第3,541,068号から公知のN,N−ビス−(ヒドロキシアルキル)−3,5−キシリジン、並びにN,N−ビス−(ヒドロキシアルキル)−3,5−ジ−t−ブチルアニリン、特に、N,N−ビス−([ベータ]−オキシブチル)−3,5−ジ−t−ブチルアニリン、並びにN,N−ビス−(ヒドロキシアルキル)−3,4,5−トリメチルアニリン等の三級芳香族アミンである。
【0151】
米国特許出願第2003/008967号、独国特許第14 95 520号に記載されているようなバルビツール酸及びバルビツール酸誘導体、並びに米国特許第4,544,742号(欧州特許第0 059 451号に対応)に記載されているマロニルスルファミドも非常に好適な活性剤である。好ましいマロニルスルファミドは、2,6−ジメチル−4−イソブチルマロニルスルファミド、2,6−ジイソブチル−4−プロピルマロニルスルファミド、2,6−ジブチル4−プロピルマロニルスルファミド、2,6−ジメチル4−エチルマロニルスルファミド、及び2,6−ジオクチル4−イソブチルマロニルスルファミドである。
【0152】
更なる促進のために、この場合の重合は、好ましくは、重金属化合物及び無機ハロゲン又は擬ハロゲンの存在下で行われる。重金属は、可溶性有機化合物の形態で好適に使用される。同様に、ハロゲン化物及び擬ハロゲン化物イオンは、可溶性塩の形態で好適に使用され、例として、可溶性アミン塩酸塩に加えて四級塩化アンモニウム化合物を挙げることができる。好適な促進剤は、具体的には、鉄又は銅族の金属であり、好ましくは銅及び鉄錯体、特に銅錯体である。重金属は、好ましくは、可溶性有機化合物の形態で用いられる。例えば、カルボン酸鉄、カルボン酸銅、プロセトナート鉄、プロセトナート銅、ナフテン酸銅、酢酸銅、及びナフテン酸鉄が好適である。
【0153】
更なる代替例では、フリーラジカル活性基の固化又は重合を開始させるために熱を使用してもよい。本明細書に記載する歯科用材料に好適な熱源の例としては、誘導、対流、及び放射が挙げられる。熱源は、少なくとも40℃〜15℃の温度を発生させることができなければならない。この手順は、口腔環境外で生じる材料の重合を開始させるために、時に好ましい。
【0154】
本明細書に記載する歯科材料のために有用である、フリーラジカル活性官能基の重合を開始させることができる反応開始剤の更に別の代替的部類は、フリーラジカル生成熱反応開始剤を含むものである。例としては、過酸化物(例えば、過酸化ベンゾイル及び過酸化ラウリルなど)、及びアゾ系化合物(例えば、2,2−アゾビス−イソブチロニトリル(AIBN)など)が挙げられる。
【0155】
硬化した組成物の色が問題となる場合、不所望の変色を引き起こさない反応開始剤系を用いなければならない。以下の成分を含む反応開始剤系が特に有用であることが見出された:モノアシルホスフィンオキシド及び/又はビスアシルホスフィンオキシド。
【0156】
反応開始剤又は反応開始剤系は、典型的に、以下の量含有される:
−下限:少なくとも約0.1重量%、又は少なくとも約0.2重量%、又は少なくとも約0.3重量%、
−上限:約10重量%以下、又は約8重量%以下、又は約6重量%以下、
−範囲:約0.1〜約10重量%、又は約0.2〜約8重量%、又は約0.3〜約6重量%、
重量%は、組成物全体の量に対する。
【0157】
本明細書に記載する組成物は、フィラーも含む。
【0158】
フィラーの添加は、例えば、粘度等のレオロジー特性を調整するために有益であり得る。また、フィラーの含量は、典型的に、硬度又は曲げ強度等、固化後の組成物の物性に影響を与える。
【0159】
フィラーの化学的性質は、意図する目的が達成できる限り、特に限定されない。
【0160】
フィラーの粒度は、レジンマトリクスを形成する固化性成分との均質な混合物を得ることができるような寸法でなければならない。
【0161】
フィラーの粒度は、約0.001〜約10μmの範囲であってよい。
【0162】
フィラーは、典型的に、非酸反応性フィラーを含む。非酸反応性フィラーは、酸と酸/塩基反応をしないフィラーである。
【0163】
有用な非酸反応性フィラーとしては、ヒュームドシリカ、石英、粉末ガラス、CaF
2等の非水溶性フッ化物、ケイ酸等のシリカゲル、特に焼成ケイ酸及びその顆粒、クリストバライト、ケイ酸カルシウム、ケイ酸ジルコニウム、分子ふるいを含むゼオライト、硫酸バリウム、フッ化イットリウムが挙げられる。
【0164】
好適なヒュームドシリカとしては、例えば、商品名Aerosil(商標)シリーズOX−50、−130、−150、及び−200、Aerosil R8200(Degussa AG(Hanau,Germany)から入手可能)、CAB−O−SIL(商標)M5(Cabot Corp(Tuscola,Ill.)から入手可能)、並びにHDKタイプ、例えば、HDK−H 2000、HDK H15;HDK H18、HDK H20及びHDK H30(Wackerから入手可能)として販売されている製品が挙げられる。
【0165】
シリカ粒子の平均表面積は、好ましくは、約15m
2/g超、より好ましくは約30m
2/g超である。
【0166】
用いてもよいフィラーとしては、ナノサイズシリカ等のナノサイズフィラーが挙げることができる。
【0167】
好適なナノサイズ粒子は、典型的に、約5〜約80nmの範囲の平均粒度を有する。
【0168】
好ましいナノサイズシリカは、Nalco Chemical Co.(Naperville,Ill.)(製品名NALCO COLLOIDAL SILICASとして(例えば、好ましいシリカ粒子は、NALCO製品1040、1042、1050、1060、2327及び2329を用いて得ることができる)、Nissan Chemical America Company(Houston,Texas)(例えば、SNOWTEX−ZL、−OL、−O、−N、−C、−20L、40、及び50);Admatechs Co.,Ltd.(Japan)(例えば、SX009−MIE、SX009−MIF、SC1050−MJM、及びSC1050−MLV);Grace GmbH & Co.KG(Worms,Germany)(例えば、製品名LUDOX、例えば、P−W50、P−W30、P−X30、P−T40、及びP−T40ASとして入手可能なもの);Akzo Nobel Chemicals GmbH(Leverkusen,Germany)(例えば、製品名LEVASIL、例えば、50/50%、100/45%、200/30%、200A/30%、200/40%、200A/40%、300/30%、及び500/15%として入手可能なもの)、及びBayer MaterialScience AG(Leverkusen,Germany)(例えば、製品名DISPERCOLL S、例えば、5005、4510、4020、及び3030として入手可能なもの)から市販されている。
【0169】
歯科材料に入れる前にナノサイズシリカ粒子を表面処理することにより、レジン中により安定して分散させることができる。好ましくは、表面処理は、粒子が硬化性レジン中に十分に分散するようにナノサイズの粒子を安定化させ、その結果、実質的に均質な組成物が得られる。更に、安定化された粒子が硬化中に固化性レジンと共重合又は別の方法で反応できるように、シリカがその表面の少なくとも一部分にわたって表面処理剤で改質されることが好ましい。
【0170】
したがって、シリカ粒子に加えて他の好適な非酸反応性フィラーを、レジン相溶化表面処理剤で処理してよい。
【0171】
特に好ましい表面処理剤又は表面改質剤としては、レジンと重合することができるシラン処理剤が挙げられる。好ましいシラン処理剤としては、商品名「A−174」として市販されているガンマ−メタクリルオキシルプロピルトリメトキシシラン(Witco OSi Specialties(Danbury,Conn.)から商業的に入手可能)、及び商品名「G6720」として入手可能な製品であるガンマ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(United Chemical Technologies(Bristol,Pa.)から入手可能)が挙げられる。
【0172】
あるいは、剤の少なくとも1つが固化性レジンと共重合可能な官能基を有する表面改質剤の組み合わせが有用である場合がある。例えば、重合基は、エチレン不飽和であってもよく、又は開環重合を受ける環式官能基であってもよい。エチレン不飽和重合基は、例えば、アクリレート基若しくはメタクリレート基、又はビニル基であってよい。開環重合を受ける環式官能基は、一般的に、酸素、硫黄、又は窒素等のヘテロ原子を含有し、好ましくは、エポキシド等の酸素を含有する3員環である。一般的に固化性レジンとは反応しない他の表面改質剤を、分散性又はレオロジー特性を強化するために含んでもよい。この種のシランの例としては、例えば、アルキル若しくはアリールポリエーテル、アルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアリール、又はアミノアルキル官能性シランが挙げられる。
【0173】
無機材料に加えて、フィラーは、有機材料を原料としてもよい。好適な有機フィラー粒子の例としては、充填又は非充填粉砕ポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエポキシド等が挙げられる。
【0174】
必要に応じて、フィラー粒子の粒度の測定は、TEM(透過型電子顕微鏡)法を用いて行うことができ、それによって、集団を分析して平均粒径を得る。
【0175】
粒径測定の好ましい方法は、以下のように説明することができる。
厚さ約80nmのサンプルを、炭素安定化フォルムバール基材(SPI Supplies−Structure Probe,Inc.の一部門(West Chester,PA))を備える200メッシュの銅グリッド上に配置する。200KvでJEOL 200CX(JEOL,Ltd.(Akishima,Japan)及びJEOL USA,Inc.により販売)を使用して透過型電子顕微鏡写真(TEM)を撮影する。約50〜100個の粒子の集団サイズを測定することができ、平均直径を判定する。
【0176】
フィラーマトリックスに使用されるフィラーの量は、通常、組成物が使用されるはずの目的に依存する。
【0177】
フィラーは、典型的に、以下の量で用いられる:
−下限:少なくとも約20重量%、又は少なくとも約30重量%、又は少なくとも約40重量%、
−上限:約95重量%以下、又は約90重量%以下、又は約85重量%以下、
−範囲:約20〜約95重量%、又は約30〜約90重量%、又は約40〜約85重量%、
重量%は、組成物全体の量に対する。
【0178】
本明細書に記載する接着剤組成物は、添加剤も含み得る。
【0179】
上記成分に加えて、本明細書に記載する歯科用組成物は、更に、以下の添加剤のうちの1つ、2つ、又はそれ以上を含有してよい:
−x線可視粒子、
−顔料、
−光脱色性着色剤、
−フッ化物離型剤、
−安定剤、
−凝固遅延剤、
及びこれらの混合物。
【0180】
存在し得る好適なx線可視粒子としては、イットリウム、イッテルビウム、ストロンチウム、バリウム、ジルコニウム、ハフニウム、ニオビウム、タンタル、タングステン、ビスマス、モリブデン、スズ、亜鉛、ランタニド元素(すなわち、原子番号57以上71以下の範囲の元素)、セリウム、及びこれらの組み合わせの酸化物等の金属酸化物の粒子が挙げられる。最も好ましくは、原子番号が30超72未満である重金属の酸化物が、任意に、本発明の材料に含まれる。特に好ましい放射線不透過性金属酸化物としては、酸化ランタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、酸化イッテルビウム、酸化バリウム、酸化ストロンチウム、酸化セリウム、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0181】
用いることができる顔料の例としては、二酸化チタン又は硫化亜鉛(リトポン)、ベンガラ3395、Bayferrox 920 Z Yellow、Neazopon Blue 807(銅フタロシアニン系染料)又はHelio Fast Yellow ERが挙げられる。これら添加物は、歯科用組成物を個々に着色するために使用することができる。
【0182】
存在し得る光脱色性着色剤の例としては、ローズベンガル、メチレンバイオレット、メチレンブルー、フルオレセイン、エオシンイエロー、エオシンY、エチルエオシン、エオシンブルーイッシュ、エオシンB、エリトロシンB、エリトロシンイエローイッシュブレンド、トルイジンブルー、4’,5’−ジブロモフルオレセイン、及びこれらのブレンドが挙げられる。光脱色性着色剤の更なる例は、米国特許第6,444,725号に見出すことができる。本発明の組成物の色は、増感化合物によって更に付与され得る。
【0183】
存在し得るフッ化物離型剤の例としては、天然又は合成のフッ化物鉱物が挙げられる。これらフッ化物源は、任意で、表面処理剤で処理してもよい。
【0184】
添加し得る更なる添加剤としては、安定剤、特に、フリーラジカルスカベンジャー、例えば、置換及び/又は非置換ヒドロキシ芳香族(例えば、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ)、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソール(2,6−ジ−tert−ブチル−4−エトキシフェノール)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(ジメチルアミノ)メチルフェノール又は2,5−ジ−tert−ブチルヒドロキノン、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン(UV−9),2−(2’−ヒドロキシ−4’,6’−ジ−tert−ペンチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、フェノチアジン、及びHALS(ヒンダードアミン光安定剤)が挙げられる。
【0185】
添加し得る更なる添加物としては、凝固遅延剤(例えば、1,2−ジフェニルエチレン)、可塑剤(ポリエチレングリコール誘導体、ポリプロピレングリコール、低分子量ポリエステル、フタル酸ジブチル、ジオクチル、ジノニル、及びジフェニル、ジ(アジピン酸イソノニル)、リン酸トリクレシル、パラフィン油、三酢酸グリセロール、ビスフェノールAジアセテート、エトキシル化ビスフェノールAジアセテート、並びにシリコーン油を含む)、風味剤、抗菌剤、芳香剤、蛍光及び/又は乳白光を付与する剤、並びにフッ化物離型材が挙げられる。
【0186】
添加剤は必ずしも存在しなくてよい。添加剤は、以下の量で存在し得る:
−下限:少なくとも約0重量%、又は少なくとも約0.1重量%、又は少なくとも約1重量%、
−上限:約10重量%以下、又は約8重量%以下、又は約5重量%以下、
−範囲:約0〜約10重量%、又は約0.1〜約8重量%、又は約1〜約5重量%、
重量%は、組成物全体の量に対する。
【0187】
更なる実施形態によれば、本明細書に記載する歯科用組成物は、以下の通り記載される:
−重合性モノマー(1):約1〜約75重量%、又は約5〜約70重量%、又は約10〜約65重量%、
−重合性モノマー(2):約0〜約60重量%、又は約0.1〜約50重量%、又は約1〜約40重量%、
−重合性モノマー(3):0〜約70重量%、又は約1〜約60重量%、又は約5〜約50重量%、
−反応開始剤:約0.1〜約10重量%、又は約0.2〜約8重量%、又は約0.3〜約6重量%、
−フィラー:約20〜約95重量%、又は約30〜約90重量%、又は約40〜約85重量%、
−添加剤:0〜約10重量%、又は約0.1〜約8重量%、又は約1〜約5重量%、
重量%は、組成物全体の重量に対する。
【0188】
本明細書に記載する歯科用組成物は、以下の通り作製することができる:
−それぞれの成分を提供し、
−該成分を混合する。
【0189】
混合は、施術者に公知の任意の手段を用いることによって行うことができる。すなわち、接着剤組成物は、それぞれの成分を合わせ、それを混合することによって、簡便に1ポット合成で調製することができる。
【0190】
必要に応じて、作製プロセスは、組成物の不所望の重合を避けるためにセーブライト(save light)条件下で実施される。
【0191】
本明細書に記載する固化性歯科用組成物は、典型的に、使用するまで容器中で保管される。処方及び硬化状態に応じて、様々な容器を用いてよい。
【0192】
組成物は、1成分系の形態で又は2成分系として提供してよい。これは、典型的に、選択する反応開始剤系に依存する。組成物がレドックス硬化性又は硬化する場合、通常、2成分系として提供される。
【0193】
歯科用組成物が1成分系として提供される場合、コンピュール又はスクリューチューブ等のチャンバを1つだけ有する容器内に保管してよい。
【0194】
コンピュールは、典型的に、前端部及び後端部、並びにノズルを備える円筒形筐体を有する。筐体の後端部は、通常、可動ピストンで密閉されている。典型的に、歯科用組成物は、可動プランジャを有する塗布器(例えば、コーキングガンの形状を有する塗布装置)を使用して、コンピュール又は容器から分注される。好適なコンピュール又は容器の例は、米国特許第5,624,260号、欧州特許第1 340 472 A1号、米国特許出願公開第2007/0172789 A1号、米国特許第5,893,714号、及び同第5,865,803号に記載され、そのコンピュール又は容器の説明に関する内容は、参照により本明細書に援用される。
【0195】
保管に好適な2成分系としては、ツーバレルカートリッジが挙げられる。
【0196】
好適な2成分系は、例えば、米国特許出願公開第2007/0090079号又は米国特許第5,918,772号に記載されている。バイアル又は瓶の説明に関するこれら文献の内容は、参照により本明細書に援用される。使用することができるカートリッジは、SulzerMixpac AG(Switzerland)からも市販されている。
【0197】
ツーバレルカートリッジの各区画の体積は、典型的に、約0.1〜約100mL、又は約0.5〜約50mL、又は約1〜約30mLの範囲である。
【0198】
区画(I)の区画(II)に対する体積比は、典型的に、約1:1〜約10:1の範囲内である。
【0199】
区画内に収容されている組成物を混合するために用いることができる静的混合チップは、例えば、米国特許出願公開第2006/0187752号又は米国特許第5,944,419号に記載されている。これら特許の開示は、参照により本明細書に援用される。使用してもよい混合チップは、SulzerMixpac AG(Switzerland)から市販されている。
【0200】
歯科用組成物が歯科用ミルブランクの形態で提供される場合、典型的に、フレーム又はマンドレルを含む保持装置に固定される。
【0201】
また、本明細書に記載する発明は、キットオブパーツも対象とする。
【0202】
このようなキットは、典型的に、本明細書に記載する歯科用組成物、歯科用接着剤及び/又は歯科用セメント、任意でアプリケータ、及び任意で使用説明書を含む。
【0203】
使用説明書は、典型的に、施術者が硬質歯系組織の表面に接着剤組成物をどのようにして及びどのような条件下で適用すべきかというヒントを含む。
【0204】
歯科用組成物は、歯科用充填材、歯科用セメント、歯科用クラウン若しくはブリッジ材料、又は歯科用ミルブランクとして、あるいはこれらを作製するために用いることができる。
【0205】
歯科用組成物は、典型的に、患者の口腔内で使用され、天然歯に隣接して配置される。本明細書で使用するとき、成句「隣接して配置される」は、一時的又は永続的に天然歯と接触して(例えば、咬合又は近位側に)歯科用材料を配置することを指す。
【0206】
用語「コンポジット」は、歯科用材料の文脈において本明細書で使用するとき、充填歯科用材料を指す。用語「修復材」は、本明細書で使用するとき、歯に隣接して配置された後に重合する歯科用コンポジットを指す。用語「プロテーゼ」は、本明細書で使用するとき、歯に隣接して配置される前に、その最終用途(例えば、クラウン、ブリッジ、ベニア、インレー、アンレー等)に応じて成形及び重合されるコンポジットを指す。
【0207】
修復用コンポジットとして用いられる、本明細書に記載する組成物の典型的な塗布プロセスは、典型的に、所望の順序で以下の工程を含む:
・組成物を提供する工程、
・硬質歯系組織、特にその表面と接触して該組成物を配置する工程、
・例えば、重合プロセスを開始させるのに十分な期間(例えば、約5〜約20秒間)、組成物に放射線(例えば、可視光)を照射することによって該組成物を硬化させる工程。
【0208】
放射線を照射するための好適なツールとしては、歯科用硬化光が挙げられる。好適な歯科用硬化光は、例えば、米国特許出願公開第2005/0236586号に記載されている。この文献の内容は、参照により本明細書に援用される。好適な歯科用硬化光は、例えば、Elipar(商標)S10(3M ESPE)という商品名でも市販されている。
【0209】
また、本明細書に記載する歯科用組成物は、患者の口腔外で歯科用クラウン、ブリッジ、アンレー、又はインレーを作製するために用いることもできる。
【0210】
作製は、いわゆる建設的アプローチ(すなわち、ビルドアップアプローチ)によって、又はいわゆる破壊的アプローチ(すなわち、機械加工又はフライス加工アプローチ)によって行うことができる。
【0211】
ビルドアップアプローチは、ラピッドプロトタイピング技術を含む当業者に公知の任意の手段によって実施することができる。
【0212】
ラピッドプロトタイピング技術としては、インクジェット印刷、3d印刷、ロボキャスティング(robo-casting)、積層物体製造、立体リトグラフィ、光立体リトグラフィ、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0213】
好適なプロセスのための好適な例は、例えば、米国特許出願公開第2012/068388号(3M)に記載されている。この参照文献の内容は、参照により本明細書に援用される。
【0214】
また、機械加工アプローチは、歯科用ミルブランクから所望の歯科用修復材をフライス加工することを含む、当業者に公知の任意の手段によって実施することができる。
【0215】
必要に応じて、歯科用ミルブランクを保持装置に取り付けてもよい。好適な保持装置としては、フレーム及びスタブ、又はマンドレルが挙げられる。時に、保管又は機械加工するために歯科用ミルブランクをマガジンに入れる場合、それが望ましい場合がある。保持装置は、典型的に、例えば、機械加工又はフライス加工装置を用いることによって、歯科用物品の機械加工を容易にする。
【0216】
保持装置の例は、米国特許出願公開第2003/0132539号、米国特許第6,769,912号、及び欧州特許第0 455 854 B1号に示されている。保持装置(例えば、フレーム及びスタブ又は支持体)に関するこれら文献の内容は、参照により本明細書に援用され、本発明の記載の一部とみなされる。
【0217】
歯科用ミルブランクの保持装置への固定は、例えば、糊付けによって行ってよい。歯科用ミルブランクをフライス加工機で加工できるように固定しなければならない。
【0218】
糊付けに加えて、保持装置に取り付けるための他の手段としては、接着、ねじ止め、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0219】
したがって、本発明の更なる実施形態は、歯科用ミルブランクを作製する方法であって、
−本明細書に記載する歯科用組成物を提供する工程であって、該歯科用組成物が未硬化状態である、工程、
−該歯科用組成物を固化又は硬化させて、固化又は硬化した歯科用組成物を得る工程、
−任意で、該固化した歯科用組成物を保持装置に固定する工程、
を含み、該歯科用組成物が、歯科用ミルブランクの形状で提供される方法を目的とする。
【0220】
歯科用ミルブランクは、硬化性歯科用組成物を成形型に入れ、次いで、硬化工程を行うことによって作製することができる。
【0221】
歯科用ミルブランクを作製するための別の選択肢は、ビルドアップ又は層技術を適用することである。その場合、歯科用組成物は、典型的に、平坦な層の形態で提供され、該層を硬化させ、歯科用組成物の更なる硬化性層を前の層上に適用し、次いで、更なる硬化工程を行う。物体が所望の寸法を有するまで、これら工程を繰り返す。
【0222】
更に、本発明の更なる実施形態は、歯科用修復材を作製する方法であって、
−本明細書に記載する歯科用ミルブランクを提供する工程であって、該歯科用ミルブランクが、本明細書に記載する歯科用組成物を含み、該歯科用組成物が硬化状態である、工程、
−該歯科用ミルブランクを機械加工して歯科用修復材を得る工程であって、該歯科用修復材が、典型的に、歯科用クラウン、ブリッジ、アンレー、又はベニアの形状を有する工程、を含む方法を目的とする。
【0223】
特定の実施形態によれば、本明細書に記載する歯科用組成物は、以下を特徴とする:
−約1〜約75重量%の量の、重合性モノマー(1)に関して本明細書において上記した式によって表される重合性モノマー(1)、
−放射線硬化反応開始剤又はレドックス硬化反応開始剤から選択される反応開始剤、
−約20〜約95重量%のシリカ又はシリカ/ジルコニアフィラー。
【0224】
本発明の歯科用組成物で使用される全ての成分は、十分に生体適合性でなければならない、すなわち、組成物は、生体組織において毒性、有害、又は免疫反応を生じさせてはならない。
【0225】
1つの実施態様によれば、本明細書に記載する歯科用組成物は、以下の成分のいずれか又はそれ以上又は全てを含有しないか又は本質的に含まない。
約5又は10又は20重量%超の量の、水若しくはアルコール(例えば、エタノール)又はこれらの組み合わせから選択される溶媒(重量%は、組成物全体の重量に対する)。
【0226】
本明細書に引用する特許、特許文献、及び刊行物の完全な開示内容は、あたかもそれぞれが個々に援用されているかのように、全体が参照により援用される。本発明の範囲及び趣旨を逸脱することなく、本発明の様々な改変及び変更が当業者には明らかとなるであろう。上の明細書、実施例、及びデータは、本発明の組成物及び方法の製造及び使用についての説明を提供する。本発明は、本明細書に開示する実施形態に限定されない。当業者であれば、本発明の多くの代替的実施形態を、本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく行うことができることを理解するであろう。
【0227】
以下の実施例は例示のために記載するが、本発明の範囲を限定するものではない。特に指定しない限り、全ての部及び百分率は、重量基準である。
【実施例】
【0228】
特に指定しない限り、全ての部及び百分率は重量基準であり、全ての水は脱イオン水であり、全ての分子量は重量平均分子量である。更に、特に指定しない限り、全ての実施例は、周囲条件(23℃、1013mbar(0.1013MPa)下で実施した。更に、ほとんど全てのプロセス工程を乾燥空気の雰囲気下で実施する。
【0229】
圧縮強度1(CS 1)
必要に応じて、圧縮強度1の測定は、3mm×3mm×5mmの寸法を有する試料を用いて、ISO 4049に従って実施することができる。圧縮強度1は、典型的に、MPaで与えられる。
【0230】
圧縮強度2(CS 2)
必要に応じて、直径4mm及び高さ8mmの円筒形試料を用いて、DIN 53454(ISO 9917 2001)に従って実施することができる。圧縮強度2は、典型的に、MPaで与えられる。
【0231】
略記
用いた成分の名称及び/又は構造を表1に示す。
【0232】
【表1-1】
【0233】
【表1-2】
【0234】
【表1-3】
【0235】
【表1-4】
【0236】
【表1-5】
【0237】
【表1-6】
【0238】
【表1-7】
【0239】
【表1-8】
【0240】
【表1-9】
【0241】
【表1-10】
【0242】
一般手順A:ジヒドロキシベンゼン(例えば、レゾルシノール)若しくはヒドロキシアルキルフェノール(例えば、チロソール)ヒドロキシ安息香酸(例えば、mHB)のエーテル化を介する、又はヒドロキシ安息香酸(例えば、mHB)とハロゲン化アルコール(例えば、3−クロロ−1−プロパノール)との求核性エステル化を介する、ジオール前駆体(例えば、OR又はE2T)の合成
対応するジヒドロキシベンゼン又はヒドロキシアルキルフェノール及び対応するハロゲン化アルコールの水溶液に、アルカリ水酸化物(例えば、NaOH)又はアルカリ炭酸塩(例えば、Na2CO3)又はアンモニアの水溶液を還流させながら添加する。任意で、この合成は、保護ガス雰囲気(例えば、窒素)下で行ってもよい。
【0243】
あるいは、IPA又はtBuOHを溶媒として、固体アルカリ水酸化物(例えば、KOH)又はアルカリ炭酸塩(例えば、Na2CO3)を塩基として用いてもよい。
【0244】
また、後続反応パターンは、ジヒドロキシベンゼン又はジヒドロキシベンゼンモノエステル(例えば、RAc)について可能であり、この場合、第1の反応工程では、1当量の塩基及びハロゲン化アルコールの半分をジヒドロキシベンゼン又はジヒドロキシベンゼンモノエステルと反応させ、その後、第2の反応工程では、別の当量の塩基及びハロゲン化アルコールの残り半分を反応させる(ジヒドロキシベンゼンモノエステルを用いる場合、第1の反応工程後、エステル加水分解、例えば、塩基性エステル加水分解を第2の反応工程が生じ得る前に行わなければならない)。
【0245】
水を溶媒として用いる場合、還流させながら一晩撹拌した後、反応混合物を室温に冷却し、反応混合物を抽出する(例えば、MTBE又はEA又はMEK)。任意で、反応混合物をそのまま抽出してもよく、又は有機相を分離して、水相のみを抽出してもよく、その後、有機相を抽出物と合わせる。任意で、合わせた有機相を水性アルカリ(例えば、NaOH)溶液及び/又は水性酸(例えば、H2SO4)溶液及び/又は水で抽出してよい。
【0246】
IPA又はtBuOHを溶媒として用いる場合、まず反応混合物を濾過して沈殿を除去し、次いで、溶媒を真空中で除去し、次いで、上記の通り残渣を水で抽出する。
【0247】
ヒドロキシ安息香酸を構成要素として用いる場合、まず反応混合物を水性酸(例えば、H2SO4)で酸性化し、次いで、上記の通り水で抽出して、エーテル化生成物であるヒドロキシアルコキシ安息香酸及び/又は求核性エステル化生成物であるヒドロキシ安息香酸ヒドロキシアルキルエステルを単離する。
【0248】
任意で、合わせた有機相をシリカ若しくはアルミナで濾過し、及び/又はカテコールと共に撹拌して改善された脱色を達成する。無水Na2SO4で乾燥させ、濾過した後、溶媒を真空中で除去する。
【0249】
あるいは、Houben−Weyl,Methoden der Organischen Chemie,Band VI/3 Teil 3,Sauerstoffverbindungen 1,4.Auflage,1965,Georg Thieme Verlag,Stuttgart,p.55による、いわゆる炭酸塩法に従うアルキル化、又はHouben−Weyl,Methoden der Organischen Chemie,Band VI/3 Teil 3,Sauerstoffverbindungen 1,4.Auflage,1965,Georg Thieme Verlag,Stuttgart,p.59による、モノ若しくはジアシル化ジヒドロキシベンゼン(例えば、RAc又はRAc2)の脱アシル化アルキル化が可能である。
【0250】
一般手順B:既にアルコキシ化されているジヒドロキシベンゼン(例えば、エトキシ化レゾルシノール)とハロゲン化アルコール(例えば、3−クロロ−1−プロパノール)とのエーテル化を介するジオール前駆体(例えば、OER)の合成
保護ガス雰囲気(例えば、窒素)下で、対応する既にアルコキシ化されているジヒドロキシベンゼンと対応するハロゲン化アルコールとの混合物に、KOtBuの例えば、THF又はtBuOH溶液を高温(例えば、80℃)でゆっくり添加する。高温で一晩撹拌した後、反応混合物を室温に冷却し、沈殿を濾過によって分離し、真空中で濾液から溶媒を除去する。任意で、一般手順Aに記載の通りの水性後処理を介してこの残渣を更に精製してもよい。
【0251】
一般手順C:ヒドロキシアルキルフェノール(例えば、チロソール)と炭酸エチレンとのエーテル化を介するエトキシ化ジオール前駆体(例えば、ET)の合成
対応するヒドロキシアルキルフェノール及び炭酸エチレンのIPA又はtBuOH溶液に、固体アルカリ水酸化物(例えば、KOH)又はアルカリ炭酸塩(例えば、K2CO3)又はアルカリtert−ブトキシド(例えば、KOtBu)を添加し、反応混合物を一晩還流させながら撹拌する。任意で、この合成は、保護ガス雰囲気(例えば、窒素)下で行ってもよい。
【0252】
反応混合物を室温に冷却し、溶媒を真空中で除去し、次いで、残渣を水で抽出し、一般手順Aに記載の通り更に後処理する。任意で、単離された生成物を、溶媒として水を用いて結晶化によって更に精製してもよい。
【0253】
一般手順D:開環下におけるエポキシ(例えば、GP又はGMA)へのジヒドロキシベンゼン(例えば、4−tert−ブチルカテコール)又はヒドロキシアルキルフェノール(例えば、チロソール)又はヒドロキシ安息香酸(例えば、mHB)又は既にエーテル化されている及び/若しくは求核性エステル化されているヒドロキシ安息香酸(例えば、OmHB)の添加を介するジオール前駆体(例えば、PGT)の合成
溶媒型経路:対応するヒドロキシアルキルフェノール(例えば、チロソール)及びアルカリ水酸化物(例えば、NaOH)又はアルカリ炭酸塩(例えば、Na2CO3)又はアンモニアの水溶液に、還流させながらエポキシ(例えば、GP)を添加する。任意で、この合成は、保護ガス雰囲気(例えば、窒素)下で行ってもよい。任意で、この合成は、溶媒としてのIPA又はHOtBu、及び固体アルカリ水酸化物(例えば、KOH)又はアルカリ炭酸塩(例えば、K2CO3)又はアルカリtert−ブトキシド(例えば、KOtBu)を用いて行ってもよい。還流させながら一晩撹拌した後、反応混合物を室温に冷却し、反応混合物を抽出し、一般手順Aに記載の通り更に後処理する。
【0254】
無溶媒経路:対応するジヒドロキシベンゼン(例えば、4−tert−ブチルカテコール)及びエポキシ(例えば、GMA)の混合物に、撹拌下で触媒(例えば、PPh
3又はTEA)を添加し、反応混合物を高温に加温する。任意で、この合成は、保護ガス雰囲気(例えば、窒素)下で行ってもよい。高温で一晩撹拌した後、反応混合物を室温に冷却し、反応混合物を抽出し、一般手順Aに記載の通り更に後処理する。
【0255】
任意で、単離された生成物を、溶媒として水を用いて結晶化することによって、又は分画し、次いで、異なる極性の有機溶媒を用いて有機−有機抽出することによって、更に精製してよい。
【0256】
一般手順E:ジオール前駆体(例えば、OR)と不飽和酸(例えば、MA)との酸触媒(例えば、MSA)エステル化
例えば、シクロヘキサン又はヘキサン/トルエン混合物又はシクロヘキサン/トルエン混合物中の対応するジオール前駆体に、BHT、HQME、任意でメチレンブルー、及び/又はHQ、触媒(例えば、MSA)、及び不飽和酸(例えば、MA)を添加する。還流させながら、ディーンスターク装置を用いて水を除去する。反応の完了後、粗反応混合物を4N NaOH溶液又は2N NaOH溶液で少なくとも2回抽出し、次いで、水で少なくとも1回洗浄し、次いで、無水Na2SO4で乾燥させる。濾過後、任意で塩基性アルミナを通して濾液を濾過する。100ppm〜300ppmのBHT及び100ppm〜300ppmのHQMEを濾液に添加する。次いで、空気を粗サンプルに吹込みながら、真空中で溶媒を取り除く。
【0257】
EBP−MA(比較例1):
市販のモノマー。
【0258】
OBP−MA(比較例2):
独国特許第19 21 869号の実施例11に従って合成。
【0259】
ER−MA(比較例3):
一般手順Eに従って、118.6gのER、13.0gのMSA、及び150.3gのMAを反応させて、室温で容易に無色の固体に結晶化する黄色っぽい油状物として148.2gのER−MAを得た(m.p.>60℃)。
【0260】
EH−MA(比較例4):
一般手順Eに従って、118.6gのEH、13.0gのMSA、及び150.3gのMAを反応させて、合成直後に無色の固体として118.3gのEH−MAを得た(m.p.>80℃)。
【0261】
E4R−MA(比較例5):
一般手順Aに従って、51.0gのレゾルシノール、47.7gのNaOH、及び138.5gの2−(2−クロロエトキシ)−エタノールを200mLの水中で反応させて、104.1gのE4Rを得た。一般手順Eに従って、190.0gのE4R、12.3gのMSA、及び171.4gのMAを反応させて、238.9gのE4R−MAを得た。
【0262】
OR−MA(比較例6):
一般手順Aに従って、51.0gのレゾルシノール、48.2gのNaOH、及び105.1gの3−クロロ−1−プロパノールを200mLの水中で反応させて、102.7gのORを得た。一般手順Eに従って、180.0gのOR、13.1gのMSA、及び205.5gのMAを反応させて、室温で容易に無色の固体に結晶化する黄色っぽい油状物として288.3gのOR−MAを得た(m.p.>30℃)。
【0263】
EER−MA(本発明の実施例1):
一般手順Aの後続反応パターンに従って、まず、50.0gのレゾルシノール、27.5gのNaOH、及び55.4gの2−クロロ−1−エタノールを、40℃の反応温度で155mLの水中にて一晩反応させ、次いで、44.4mLの水に溶解している75.0gの2−(2−クロロエトキシ)−エタノール及び27.5gのNaOHを還流下で添加し、反応混合物を一晩還流させながら保持して、78.2gのEERを得た。一般手順Eに従って、74.0gのEER、5.20gのMSA、及び78.9gのMAを反応させて、105.5gのEER−MAを得た。
【0264】
OER−MA(本発明の実施例2):
一般手順Bに従って、60.0gのエトキシ化レゾルシノール(ER)、31.5gの3−クロロ−1−プロパノール、及び165.4gの1.7MのTHF中KOtBu溶液を反応させて、63.5gのOERを得た。一般手順Eに従って、85.0gのOER、5.80gのMSA、及び85.7gのMAを反応させて、117.6gのOER−MAを得た。
【0265】
OOR−MA(本発明の実施例3):
一般手順Bに従って、20.0gのOR、8.53gの3−クロロ−1−プロパノール、及び88.4mLの1MのHOtBu中KOtBu溶液を反応させて、20.3gのOORを得た。一般手順Eに従って、17.0gのOOR、1.10gのMSA、及び15.4gのMAを反応させて、23.2gのOOR−MAを得た。
【0266】
OE2R−MA(本発明の実施例4):
一般手順Aに従って、51.0gのレゾルシノール、47.7gのNaOH、69.2gの2−(2−クロロエトキシ)−エタノール、及び51.5gの3−クロロ−1−プロパノールを200mLの水中で反応させて、93.5gのOE2Rを得た。一般手順Eに従って、55.0gのOE2R、3.80gのMSA、及び55.4gのMAを反応させて、71.4gのOE2R−MAを得た。
【0267】
HOR−MA(本発明の実施例5):
一般手順Aに従って、51.0gのレゾルシノール、47.7gのNaOH、75.9gの6−クロロヘキサノール、及び51.5gの3−クロロ−1−プロパノールを200mLの水中で反応させて115.2gのHORを得た。一般手順Eに従って、70.0gのHOR、4.67gのMSA、及び67.4gのMAを反応させて、101.7gのHOR−MAを得た。
【0268】
HOR−A(本発明の実施例6):
一般手順Eに従って、43.7gのHOR、2.68gのMSA、及び35.2gのアクリル酸(AA)を反応させて、54.8gのHOR−Aを得た。
【0269】
POR−MA(本発明の実施例7):
一般手順Aに従って、51.0gのレゾルシノール、47.7gのNaOH、68.2gの5−クロロペンタノール、及び51.5gの3−クロロ−1−プロパノールを200mLの水中で反応させて、85.2gのPORを得た。一般手順Eに従って、81.9gのPOR、5.60gのMSA、及び83.2gのMAを反応させて、119.8gのPOR−MAを得た。
【0270】
OE2C−MA(本発明の実施例8):
一般手順Aに従って、50.0gのカテコール、49.0gのNaOH、75.0gの2−(2−クロロエトキシ)−エタノール、及び51.5gの3−クロロ−1−プロパノールを200mLの水中で反応させて、67.7gのOE2Cを得た。一般手順Eに従って、65.0gのOE2C、4.40gのMSA、及び65.5gのMAを反応させて、88.3gのOE2C−MAを得た。
【0271】
E4RE−MA(本発明の実施例9):
一般手順Aに従って、48.8gの1,3−ジヒドロキシ−4−エチルベンゼン、64.0のKOH、及び113.2gの2−(2−クロロエトキシ)−エタノールを280mLの水中で反応させて、58.7gのE4REを得た。一般手順Eに従って、57.6gのE4RE、3.57gのMSA、及び47.3gのMAを反応させて、71.4gのE4RE−MAを得た。
【0272】
E4RH−MA(本発明の実施例10):
一般手順Aに従って、68.6gの1,3−ジヒドロキシ−4−ヘキシルベンゼン、39.2のNaOH、及び113.2gの2−(2−クロロエトキシ)−エタノールを275mLの水中で反応させて110.0gのE4RHを得た。一般手順Eに従って、107.0gのE4RH、6.20gのMSA、及び74.6gのMAを反応させて、108.2gのE4RH−MAを得た。
【0273】
ORE−MA(本発明の実施例11):
一般手順Aに従って、49.6gの4−エチルレゾルシノール、37.7gのNaOH、及び81.4gの3−クロロ−1−プロパノールを200mLの水中で反応させて、76.2gのOREを得た。一般手順Eに従って、72.4gのORE、5.00gのMSA、及び73.5gのMAを反応させて、107.4gのORE−MAを得た。
【0274】
ORH−MA(本発明の実施例12):
一般手順Aに従って、32.9gの4−ヘキシルレゾルシノール、17.8gのNaOH、及び37.7gの3−クロロ−1−プロパノールを130mLの水中で反応させて、39.8gのORHを得た。一般手順Eに従って、39.8gのORH、1.13gのMSA、及び33.1gのMAを反応させて、54.8gのORH−MAを得た。
【0275】
EBC−MA(本発明の実施例13):
一般手順Cに従って、30.0gの4−tert−ブチルカテコール、3.54gのKOH、及び47.7gの炭酸エチレンを40gのIPA中で反応させて、46.5gのEBCを得た。一般手順Eに従って、46.0gのEBC、2.89gのMSA、及び38.9gのMAを反応させて、65.8gのEBC−MAを得た。
【0276】
EEBC−MA(本発明の実施例14):
一般手順Aの後続反応パターンに従って、まず、37.4gの4−tert−ブチルカテコール、13.5gのNaOH、及び27.1gの2−クロロ−1−エタノールを40 ℃の反応温度で128mLの水中にて一晩反応させ、次いで、22mLの水に溶解している36.4gの2−(2−クロロエトキシ)−エタノール及び13.5gのNaOHを還流下で添加し、反応混合物を一晩還流させながら保持して、59.4gのEEBCを得た。一般手順Eに従って、59.4gのEEBC、3.77gのMSA、及び51.4gのMAを反応させて、71.8gのEEBC−MAを得た。
【0277】
E4BC−MA(本発明の実施例15):
一般手順Aに従って、76.2gの4−tert−ブチルカテコール、47.7のNaOH、及び138.5gの2−(2−クロロエトキシ)−エタノールを300mLの水中で反応させて124.9gのE4BCを得た。一般手順Eに従って、58.7gのE4BC、3.50gのMSA、及び44.3gのMAを反応させて、45.7gのE4BC−MAを得た。
【0278】
OBC−MA(本発明の実施例16):
一般手順Aに従って、77.0gの4−tertブチルカテコール、48.2のNaOH、及び105.1gの3−クロロ−1−プロパノールを300mLの水中で反応させて119.1gのOBCを得た。一般手順Eに従って、60.0gのOBC、3.91gのMSA、及び54.9gのMAを反応させて、81.0gのOBC−MAを得た。
【0279】
OE2BC−MA(本発明の実施例17):
一般手順Aに従って、69.6gの4−tertブチルカテコール、45.3gのNaOH、67.8gの2−(2−クロロエトキシ)−エタノール、及び47.1gの3−クロロ−1−プロパノールを275mLの水中で反応させて、113.2gのOE2BCを得た。一般手順Eに従って、56.7gのOE2BC、3.50gのMSA、及び46.9gのMAを反応させて、67.3gのOE2BC−MAを得た。
【0280】
BC−GMA(本発明の実施例18):
一般手順D(無溶媒経路)に従って、50.0gの4−tert−ブチルカテコール、0.68gのTEA、及び85.5gのGMAを80℃の温度で反応させて、114.6gのBC−GMAを得た。
【0281】
PGT−AM(本発明の実施例19):
一般手順D(溶媒型経路)に従って、100.0gのチロソール、5.73gのNaOH、及び108.0gのGPを200mLの水中で反応させて、203.4gの粗PGTを得た。水から再結晶化させた後、188.9gの精製PGTを回収した。一般手順Eに従って、218.5gの精製PGT及び12.5gのMSAを、まず68.5gのMAと反応させ、次いで、82.0gのAAと反応させて295.2gのPGT−AMを得た。
【0282】
ET−MA(本発明の実施例20):
一般手順Cに従って、100.0gのチロソール、7.02gのKOH、及び82.0gの炭酸エチレンを100gのIPA中で反応させて112.5gの粗ETを得た。水から再結晶化させた後、74.5gの精製ETを回収した。一般手順Eに従って、20.0gの精製ET、1.48gのMSA、及び23.6gのMAを反応させて、33.2gのET−MAを得た。
【0283】
E2T−MA(本発明の実施例21):
一般手順Aに従って、50.0gのチロソール、44.9のNaOH、及び136.6gの2−(2−クロロエトキシ)−エタノールを200mLの水中で反応させて、88.1gのE2Tを得た。一般手順Eに従って、60.0gのE2T、2.80gのMSA、及び22.8gのMAを反応させて、85.2gのE2T−MAを得た。
【0284】
OT−MA(本発明の実施例22):
一般手順Aに従って、40.0gのチロソール、19.7のKOH、及び34.9gの3−クロロ−1−プロパノールを40gのIPA中で反応させて、49.7gのOTを得た。一般手順Eに従って、49.70gのOT、3.54gのMSA、及び54.4gのMAを反応させて、79.7gのOT−MAを得た。
【0285】
MGT−MA(本発明の実施例23):
一般手順D(溶媒型経路)に従って、51.0gのチロソール、10.9mLの1MのHOtBu中KOtBu溶液、及び46.8gのGMAを反応させて、37.2gの粗MGTを得た。分画し、次いで、トルエン/ヘキサン混合物、並びに純シクロヘキサン及び純ヘキサンを用いて有機−有機抽出して、不所望の非常に非極性の及び不所望の非常に極性の副生成物を除去した後、9.50gの精製MGT−MAを回収した。
【0286】
光硬化1成分組成物の合成
合成した化合物の一部を(歯科用)組成物の作製に用いた。
【0287】
作製し、その機械的特性に関連して試験した組成物を下の表2に示す。表2において、成分の値は、対応する歯科用製剤における個々の成分の重量%を表す。
【0288】
一般手順I:
磁気攪拌しながら光排除下で、50℃以下の温度(使用するモノマーの固有粘度に依存する)で反応開始剤系成分をモノマー中に溶解させた。
【0289】
一般手順II:
一般的手順Iに従って、反応開始剤系成分をモノマー中に溶解させた。光排除下でツーアームニーダーを使用して、反応開始剤系及びモノマーの混合物とフィラーとを部分的に混合した。歯科用組成物における所望の取り扱い特性に応じて、フィラーの量を手動により決定した。次に、歯科用組成物を800mWハロゲン硬化ライト(3M ESPE Elipar(商標)Trilight)を使用して光硬化し、上に列挙した対応する測定に従って試験した。それぞれの値を表2に示す。
【0290】
歯科用組成物A及びBは、成分CE1又はCE2のいずれかを含有するが、本発明に係る化合物(A)は含有しない。下の表2では、化合物(A)は、成分IE1、IE4、及びIE20によって表される。したがって、歯科用組成物A及びBは、比較例とみなすことができ、一方、歯科用組成物C〜Eは、本発明の実施例とみなすことができる。
【0291】
【表2】
【0292】
分かる通り、本発明に係る化合物(A)を含有する組成物は、本発明に係る化合物(A)を含有しない組成物に比べて、圧縮強度(CS 1)に関して優れている。
【0293】
化学硬化2成分組成物の合成
合成した化合物の一部を(歯科用)組成物の作製に用いた。
【0294】
作製し、その機械的特性に関して試験した組成物を下の表3、4、5、及び6に示す。
【0295】
表3及び4では、成分の値は、対応する歯科用製剤における個々の成分の重量%を表す。表5及び6では、成分ベース1〜CATの値は、対応する歯科用製剤における個々の成分の相対%を表す。
【0296】
一般手順III:
光の排除下で、表3及び4に列挙する成分をスリーアーム研究室用ニーダーで混合した。残留凝集体を、セラミック製の3ロールミルで均質化した。
【0297】
一般手順IV:
一般手順IIIに従って作製した表3及び4に列挙するペーストを、10:1SulzerMixpac(商標)カートリッジのそれぞれの区画に充填した。次いで、材料を、静的ミキサ(SulzerMixpac Company)を備えるGarant(商標)II 10:1カートリッジを用いてそれぞれの金属成形型に適用した。プラスチック箔(Hostaphan(商標)RN75)とプレキシガラスプレートとの間で、加圧下にて、23℃で1時間硬化させた。次いで、圧力、プレキシガラスプレート、及び箔を除去し、成形型内の試料を、脱塩水下で36℃にて23時間後硬化させた。測定直前に成形型を取り外した。硬化した試料を、上記対応する測定に従って試験した。それぞれの値を表5及び6に示す。
【0298】
歯科用組成物−ベース1、2、及び3は、成分CE1、CE2、又はCE5のいずれかを含有するが、本発明に係る化合物(A)は含有しない。下の表3及び4では、化合物(A)は、成分IE1、IE2、IE4、IE16、IE19、及びIE20によって表される。したがって、歯科用組成物−ベース1、2、及び3は、比較例に属するとみなすことができ、一方、歯科用組成物−ベース4〜9は、本発明の実施例に属するとみなすことができる。
【0299】
【表3】
【0300】
【表4】
【0301】
歯科用組成物F、G、及びHは、ベース1、2、又は3及びCATを含有し、当該技術分野の状況による成分を両方含有する組成物である。歯科用組成物I〜Mは、本発明に係る化合物(A)を含有するベース成分及び当該技術分野の状況による成分を含有するCAT成分を含有する。したがって、歯科用組成物I〜Mは、本発明の実施例とみなすことができる。
【0302】
【表5】
【0303】
【表6】
【0304】
分かる通り、本発明に係る化合物(A)を含有する組成物は、本発明に係る化合物(A)を含有しない組成物に比べて、圧縮強度(CS 2)に関して特に優れている。
本発明の実施態様の一部を以下の項目[1]−[15]に記載する。
[項目1]
歯科用組成物であって、
−重合性モノマー(1)、
−反応開始剤成分、
−約20重量%超の量のフィラー成分(重量%は、前記組成物の全重量に対する)を含み、
前記重合性モノマー(1)が、式(I):
【化1】
(式中、
B−O−A−[−O−B’−]aは、反応性(メタ)アクリレート部分間の結合としての非対称モノマー骨格を表し、
a=0又は1であり、
Aは、以下から選択され:
【化2】
Aは、常に、アリール−アルキルエーテルとしてB及び/又はB’に結合し、
Bは、以下から選択され:
*−(CH2)b−*、*−(CH2−CH2−O−CH2−CH2)−*、*−(CH2−CH2−O−CH2−CH2−CH2)−*、*−(CH2−CH2−CH2−O−CH2−CH2−CH2)−*、
【化3】
Bは、常に、アルキルエステルとして前記(メタ)アクリレート反応性部分に結合し、
b=2〜6であり、
B’は、*−(CH2)b’−*、*−(CH2−CH2−O−CH2−CH2)−*、
【化4】
から選択され、
B’は、常に、アルキルエステルとして前記(メタ)アクリレート反応性部分に結合し、
b’=2〜6であり、
R=H、メチルであり、
Xは、H、メチル、エチル、ヘキシル、tert−ブチルから選択され、
「*」は、その部分がモノマーの別の部分に結合する、モノマーの部分の部位を表す)を特徴とする、歯科用組成物。
[項目2]
前記重合性モノマー(1)が、式(Ia)又は式(Ib)のいずれか:
【化5】
(式中、
B−O−A−O−B’は、反応性(メタ)アクリレート部分間の結合としての非対称モノマー骨格であり、
Aは、以下から選択され:
【化6】
Aは、常に、アリール−アルキルエーテルとしてB及びB’に結合し、
Bは、以下から選択され:
*−(CH2)b−*、*−(CH2−CH2−O−CH2−CH2)−*、*−(CH2−CH2−O−CH2−CH2−CH2)−*、*−(CH2−CH2−CH2−O−CH2−CH2−CH2)−*、
【化7】
Bは、常に、アルキルエステルとして前記(メタ)アクリレート反応性部分に結合し、
b=2〜6であり、
B’は、*−(CH2)b’−*、*−(CH2−CH2−O−CH2−CH2)−*、
【化8】
から選択され、
B’は、常に、アルキルエステルとして前記(メタ)アクリレート反応性部分に結合し、
b’=2〜6であり、
R=H、メチルであり、
X=H、メチル、エチル、ヘキシル、tert−ブチルである)、
又は
【化9】
(式中、
B−O−Aは、反応性(メタ)アクリレート部分間の結合としての非対称モノマー骨格であり、
Aは、以下から選択され:
【化10】
Aは、常に、アリール−アルキルエーテルとしてBに結合し、また、常に、アルキルエステルとして前記(メタ)アクリレート反応性部分に結合し、
Bは、以下から選択され:
*−(CH2)b−*、*−(CH2−CH2−O−CH2−CH2)−*、
【化11】
Bは、常に、アルキルエステルとして前記(メタ)アクリレート反応性部分に結合し、
b=2〜6であり、
R=H、メチルであり、
「*」は、その部分がモノマーの別の部分に結合する、前記モノマーの部分の部位を表す)を特徴とする、項目1に記載の歯科用組成物。
[項目3]
以下の特徴のうちの少なくとも1つ又は全てを特徴とする、項目1又は2に記載の歯科用組成物:
−前記重合性モノマー(1)が、約300〜約600の分子量を有し、
−前記重合性モノマー(1)が、23℃で凝固しない。
[項目4]
前記重合性モノマー(1)が、以下のモノマーのうちの1つ及びこれらの混合物から選択される、項目1〜3のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
【化12】
[項目5]
前記重合性モノマー(1)が、以下のモノマーのうちの1つ及びこれらの混合物から選択される、項目1〜4のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
(Rは、常に独立して、H及びCH3から選択される。)
[項目6]
前記反応開始剤が、放射線硬化反応開始剤、レドックス硬化反応開始剤、熱硬化反応開始剤、及びこれらの混合物から選択される、項目1〜5のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
[項目7]
以下の量のそれぞれの成分を含む、項目1〜6のいずれか一項に記載の歯科用組成物:
−重合性モノマー(1):約1〜約75重量%、
−反応開始剤:約0.1〜約10重量%、
−フィラー:約20〜約90重量%。
[項目8]
ウレタン部分を含む重合性モノマー(2)を更に含む、項目1〜7のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
[項目9]
約10重量%を超える量の溶媒を含まない、項目1〜8のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
[項目10]
前記接着剤組成物が、硬化前に以下の特徴のうちの少なくとも1つ又は全てを特徴とする、項目1〜9のいずれか一項に記載の歯科用組成物:
−粘度:100 1/sの剪断速度で23℃にて測定したとき、約0.5〜約200Pa・s、
−水と接触した場合のpH値:約1〜約9、
−放射線又はレドックス硬化性、
−保存安定性。
[項目11]
前記接着剤組成物が、硬化後に以下の特徴を特徴とする、項目1〜10のいずれか一項に記載の歯科用組成物:
−3mm×3mm×5mmの寸法を有する試料を用いて、ISO 4049に従って求めた圧縮強度:少なくとも約430MPa、
−直径4mm及び高さ8mmの円筒形試料を用いて、DIN 53454に従って求めた歯科用製剤の圧縮強度:少なくとも約280MPa。
[項目12]
以下を特徴とする、項目1〜11のいずれか一項に記載の歯科用組成物:
−約1〜約75重量%の量の、項目2〜5のいずれか一項に記載の式によって表される重合性モノマー(1)、
−放射線硬化性反応開始剤又はレドックス硬化性反応開始剤から選択される反応開始剤、
−約20〜約90重量%の量の、シリカ又はシリカ/ジルコニアフィラー及びこれらの混合物から選択されるフィラー。
[項目13]
1又は2成分系として提供される、項目1〜12のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
[項目14]
歯科用充填材、クラウン及びブリッジ材料、インレー、アンレー、ベニア、又は歯科用ミルブランクとしての又はこれらを作製するための、項目1〜13のいずれか一項に記載の歯科用組成物の使用。
[項目15]
ラピッドプロトタイピング技術を適用することによって、歯科用クラウン、ブリッジ、アンレー、又はインレー等の歯科用修復材を作製するための、項目1〜13のいずれか一項に記載の歯科用組成物の使用。