特許第6599475号(P6599475)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6599475ファスナーストリンガー及びその製造方法、並びにスライドファスナー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6599475
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】ファスナーストリンガー及びその製造方法、並びにスライドファスナー
(51)【国際特許分類】
   A44B 19/42 20060101AFI20191021BHJP
【FI】
   A44B19/42
【請求項の数】11
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-549925(P2017-549925)
(86)(22)【出願日】2015年11月11日
(86)【国際出願番号】JP2015081787
(87)【国際公開番号】WO2017081777
(87)【国際公開日】20170518
【審査請求日】2018年2月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006828
【氏名又は名称】YKK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】菊川 範夫
(72)【発明者】
【氏名】高本 彩
(72)【発明者】
【氏名】田中 昌子
【審査官】 五閑 統一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−024019(JP,A)
【文献】 特開平03−012103(JP,A)
【文献】 特開昭57−093003(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44B 19/06
A44B 19/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファスナーテープ(10)と、
前記ファスナーテープ(10)の側縁部に取り付けられる複数のファスナーエレメント(20)を備えるファスナーストリンガー(30)であって、
前記ファスナーエレメント(20)は、金属母材(21)と、前記金属母材(21)上に形成された単層又は複層の表面樹脂層(22)と、前記金属母材(21)と前記表面樹脂層(22)の間に設けられる複数の中間金属層(23)を備え、
前記複数の中間金属層(23)が、少なくとも、前記表面樹脂層(22)の少なくとも部分的な除去により露出する露出金属層(26)と、前記露出金属層(26)と前記金属母材(21)の間に形成されたSnNi層を含み、
前記表面樹脂層(22)と前記露出金属層(26)が同色系の材料から成る、ファスナーストリンガー。
【請求項2】
前記表面樹脂層(22)と前記露出金属層(26)が黒色系材料から成る、請求項1に記載のファスナーストリンガー。
【請求項3】
前記露出金属層(26)が、ニッケル亜鉛合金、錫ニッケル合金、錫コバルト合金、及びクロムから成る群から選択される一つ以上の材料を含む、請求項1又は2に記載のファスナーストリンガー。
【請求項4】
前記複数の中間金属層(23)が、前記金属母材(21)と前記SnNi層の間に設けられるNi層を更に含む、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のファスナーストリンガー。
【請求項5】
前記表面樹脂層(22)の厚みが10μm以上である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のファスナーストリンガー。
【請求項6】
前記露出金属層(26)がめっき層である、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のファスナーストリンガー。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の一対のファスナーストリンガー(30)と、
前記一対のファスナーストリンガー(30)を開閉するための少なくとも一つのスライダー(40)を備えるスライドファスナー。
【請求項8】
ファスナーテープ(10)、及び前記ファスナーテープ(10)の側縁部に取り付けられる複数のファスナーエレメント(20)を備えるファスナーストリンガーの製造方法であって、
前記ファスナーエレメント(20)の金属母材(21)上に複数の中間金属層(23)を形成する工程と、
前記複数の中間金属層(23)上に単層又は複層の表面樹脂層(22)を形成する工程を含み、
前記複数の中間金属層(23)が、少なくとも、前記表面樹脂層(22)の少なくとも部分的な除去時に露出する露出金属層(26)と、前記露出金属層(26)と前記金属母材(21)の間に形成されたSnNi層を含み、
前記表面樹脂層(22)と前記露出金属層(26)が同色系の材料から成る、ファスナーストリンガーの製造方法。
【請求項9】
前記表面樹脂層(22)と前記露出金属層(26)が黒色系材料から成る、請求項8に記載のファスナーストリンガーの製造方法。
【請求項10】
前記表面樹脂層(22)の厚みが10μm以上である、請求項8又は9に記載のファスナーストリンガーの製造方法。
【請求項11】
前記露出金属層(26)がめっき層である、請求項8乃至10のいずれか一項に記載のファスナーストリンガーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ファスナーストリンガー及びその製造方法、並びにスライドファスナーに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、めっき層が形成されたステンレス鋼板に有色の皮膜を形成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−144895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ファスナーエレメントの外観を有彩色又は無彩色を包含する所望の色にするため、ファスナーエレメントの金属母材を所望の色のめっき層で被覆すること、若しくはファスナーエレメントの金属母材の表面に金属酸化層を形成することが行われる。しかしながら、スライダー往復回数の増加に応じてめっき層又は金属酸化層が徐々に摩耗し、ファスナーエレメントの外観が変化し得る。スライダー往復回数が2、3千回を超える場合、めっき層又は金属酸化層が広範囲に除去されて金属母材が広範囲に露出してしまうことが予見される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の非限定の一態様に係るファスナーストリンガーは、ファスナーテープ(10)と、前記ファスナーテープ(10)の側縁部に取り付けられる複数のファスナーエレメント(20)を備えるファスナーストリンガー(30)であって、前記ファスナーエレメント(20)は、金属母材(21)と、前記金属母材(21)上に形成された単層又は複層の表面樹脂層(22)と、前記金属母材(21)と前記表面樹脂層(22)の間に設けられる1以上の中間金属層(23)を備え、前記1以上の中間金属層(23)が、前記表面樹脂層(22)の少なくとも部分的な除去により露出する露出金属層(26)を含み、前記表面樹脂層(22)と前記露出金属層(26)が同色系の材料から成る。
【0006】
幾つかの実施形態においては、前記表面樹脂層(22)と前記露出金属層(26)が黒色系材料から成る。
【0007】
幾つかの実施形態においては、前記露出金属層(26)がSnCo層であり、
前記1以上の中間金属層(23)が、前記金属母材(21)と前記SnCo層の間に設けられるSnNi層を含む。
【0008】
幾つかの実施形態においては、前記1以上の中間金属層(23)が、前記金属母材(21)と前記SnNi層の間に設けられるNi層を更に含む。
【0009】
幾つかの実施形態においては、前記表面樹脂層(22)の厚みが10μm以上である。
【0010】
本開示の更なる側面に係るスライドファスナーは、上記の一対のファスナーストリンガー(30)と、前記一対のファスナーストリンガー(30)を開閉するための少なくとも一つのスライダー(40)を備える。
【0011】
本開示のまた更なる側面に係るファスナーストリンガーの製造方法は、ファスナーテープ(10)、及び前記ファスナーテープ(10)の側縁部に取り付けられる複数のファスナーエレメント(20)を備えるファスナーストリンガーの製造方法であって、
前記ファスナーエレメント(20)の金属母材(21)上に1以上の中間金属層(23)を形成する工程と、
前記1以上の中間金属層(23)上に単層又は複層の表面樹脂層(22)を形成する工程を含み、
前記1以上の中間金属層(23)が、前記表面樹脂層(22)の少なくとも部分的な除去時に露出する露出金属層(26)を含み、
前記表面樹脂層(22)と前記露出金属層(26)が同色系の材料から成る。
【0012】
幾つかの実施形態においては、前記表面樹脂層(22)と前記露出金属層(26)が黒色系材料から成る。
【0013】
幾つかの実施形態においては、前記表面樹脂層(22)の厚みが10μm以上である。
【発明の効果】
【0014】
本開示の一態様によれば、2、3千回を超えるスライダー往復回数にも関わらず、ファスナーエレメントの外観の変化の程度を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本開示の実施形態例に係るスライドファスナーの概略的な正面模式図である。
図2】本開示の実施形態例に係るスライドファスナーに含まれるファスナーエレメントの概略的な斜視図である。
図3】本開示の実施形態例に係るスライドファスナーにおいてスライダーの後口を正面視した概略的な模式図であり、スライダーの引手が起立状態にある。
図4】本開示の実施形態例に係るファスナーエレメントの積層構造を示す概略模式図である。
図5】本開示の実施形態例に係るファスナーエレメントの積層構造を示す概略模式図である。
図6】本開示の実施形態例に係るスライドファスナーの噛合エレメントの部分拡大模式図である。
図7】本開示の実施形態例に係るスライドファスナーの製造方法を示す概略的なフローチャートである。
図8】本開示の実施形態例に係るスライドファスナーの製造方法を示す概略的なフローチャートである。
図9】本開示の別の実施形態例に係るスライドファスナーの概略的な正面模式図である。
図10】本開示の別の実施形態例に係るスライドファスナーにおける左右のエレメントの係合態様を示す概略的な模式図である。
図11】比較例に係る摺動試験後のスライドファスナーのファスナーエレメントを写す写真である。
図12】実施例に係る摺動試験後のスライドファスナーのファスナーエレメントを写す写真である。
図13】比較例に係る摺動試験後のスライドファスナーのファスナーエレメントを写す写真である。
図14】実施例に係る摺動試験後のスライドファスナーのファスナーエレメントを写す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図1乃至図14を参照しつつ、本発明の非限定の例示の実施形態について説明する。開示の1以上の実施形態及び実施形態に包含される各特徴は、個々に独立したものではない。当業者は、過剰説明を要せず、各実施形態及び/又は各特徴を組み合わせることができる。また、この組み合わせによる相乗効果も理解可能である。実施形態間の重複説明は、原則的に省略する。参照図面は、発明の記述を主たる目的とするものであり、作図の便宜のために簡略化されている場合がある。
【0017】
図1に示すスライドファスナー100は、左右一対のファスナーストリンガー30と、左右一対のファスナーストリンガー30を開閉するためのスライダー40を有する。スライダー40の前進により左右のファスナーストリンガー30が開けられ、スライダー40の後進により左右のファスナーストリンガー30が閉じられる。前後方向は、スライダー40の動く方向に一致する。左右方向は、ファスナーストリンガー30の横並びの方向に一致する。左右方向は、前後方向に直交する。上下方向は、前後方向及び左右方向に直交する。
【0018】
各ファスナーストリンガー30は、ファスナーテープ10及びファスナーテープ10の側縁部に設けられた複数のファスナーエレメント20を有する。左右一方のファスナーストリンガー30のファスナーテープ10は、左右他方のファスナーストリンガー30のファスナーテープ10に対向する側縁部を有する。この側縁部に複数のファスナーエレメント20が取り付けられる。
【0019】
幾つかの場合、ファスナーエレメント20は、ファスナーエレメント20の厚みに対応する厚みを有する金属平板をファスナーエレメント20に対応する外形のパンチ具で打ち抜く工程を介して製造される。幾つかの場合、ファスナーエレメント20は、ファスナーエレメント20に対応する端面形状を有する長尺なエレメント母材をファスナーエレメント20の厚みに対応する長さで切断具により切断することにより製造される。金属板の打ち抜き又はエレメント母材の切断により得られる個々のファスナーエレメントは、その後、必要に応じてプレス加工が施される。その後、ファスナーエレメント20は、少なくともめっき工程及び塗装工程を経て、ファスナーテープ10の側縁部に対して加締め機により取り付けられる。この取り付けに際してファスナーエレメント20は塑性変形する。別の場合、ファスナーエレメント20がファスナーテープ10に対して任意の方法で取り付けられ、その後、ファスナーエレメント20がめっき及び塗装される。
【0020】
ファスナーテープ10は、例えば、織物又は編物であり、可撓性がある布材である。ファスナーエレメント20は、図2に模式的に示すように、ファスナーテープ10の側縁部又はそこに設けられた芯紐を挟み込む一対の脚部211、212と、一対の脚部211、212に連結した噛合頭部213を有する。上述の加締め機は、一対の脚部211、212の間隔を狭めるように作動し、これによりファスナーテープの側縁部に対してファスナーエレメント20が取り付けられる。噛合頭部213は、一対の脚部211、212よりもファスナーテープ外方に設けられる。ファスナーテープ外方は、ファスナーテープが存在する平面においてファスナーテープ上の点又は位置からファスナーテープ外の点又は位置に向かう方向である。ファスナーテープ内方は、ファスナーテープ外方の反対に向かう方向である。
【0021】
ファスナーエレメント20の噛合頭部213は、前方に突出する第1突起214と、第1突起214の反対側において後方に突出する第2突起215を有する。ファスナーエレメント20の噛合頭部213は、更に、ファスナーテープ10の側縁部と第1突起214の間で凹設された第1凹部216と、ファスナーテープ10の側縁部と第2突起の間で凹設された第2凹部217を有する。左右一方側のファスナーストリンガー30における前後に隣接するファスナーエレメント20の間に左右他方側のファスナーストリンガー30のファスナーエレメント20が挿入される。その前後に隣接するファスナーエレメント20の間に挿入されたファスナーエレメント20の第1突起214が、その前方に隣接するファスナーエレメント20の第2凹部217に嵌合し、またそのファスナーエレメント20の第2突起215が、後方に隣接するファスナーエレメント20の第1凹部216に嵌合する。
【0022】
各ファスナーストリンガー30は、ファスナーエレメント20の配列から成るエレメント列の前方に隣接して設けられた前止め50と、エレメント列の後方に隣接して設けられた後止め60を有する。前止め50は、左右のファスナーストリンガー30について別々に設けられる。後止め60は、左右のファスナーストリンガー30について共通に設けられる。幾つかの場合、図示例とは異なる止具が採用される。
【0023】
スライダー40は、図3に模式的に示すように、上翼板41、上翼板41に対向配置された下翼板42、上翼板41と下翼板42を連結する連結柱43、上翼板41の上面に設けられた引手取付柱44、及び引手取付柱44に取り付けられた引手45を有する。フランジ部46、47が上翼板41と下翼板42の左右側縁に沿って形成されている。上翼板41のフランジ部46は下翼板42に向けて突出している。また、下翼板42のフランジ部47は上翼板41に向けて突出している。スライダー40は、連結柱43の左右に2つの前口48を有する。スライダー40は、2つの前口48の反対側に1つの後口49を有する。2つの前口48と一つの後口49の間にY字状のエレメント通路が設けられる。エレメント通路は、上翼板41と下翼板42の間に設けられ、それらにより上下から画定される。エレメント通路は、上翼板41のフランジ部46と下翼板42のフランジ部47により左右外側からも画定される。
【0024】
ファスナーエレメント20がスライダー40の前口48と後口49の間を移動する時、ファスナーエレメント20の上面が上翼板41に接触し、ファスナーエレメント20の下面が下翼板42に接触し、ファスナーエレメント20の噛合頭部213が連結柱43に接触し、ファスナーエレメント20の脚部211、212が上翼板41のフランジ部46及び下翼板42のフランジ部47に接触する。ファスナーエレメント20が、上翼板41、下翼板42、連結柱43、又はフランジ部46、47に接触しながら移動すると、ファスナーエレメント20の表面が摩耗してしまう。ファスナーエレメント20の表面の摩耗の程度は、スライダー40の往復回数に比例するものと考えられる。
【0025】
図4及び図5に示すように、ファスナーエレメント20は、金属から成る金属母材21を含む。金属母材21は、加工性の観点から相対的に軟らかい金属を含む。幾つかの場合、金属母材21は、単金属から成る。一例の単金属は、例えば、鉄(Fe)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)を含む。幾つかの場合、金属母材21は、複数の金属を含む合金から成る。一例の合金は、例えば、銅亜鉛合金(CuZn)、銅亜鉛ニッケル合金(CuZnNi)、丹銅、黄銅、銅亜鉛マンガン合金(CuZnMn)が用いられ得る。
【0026】
図4及び図5に示すように、ファスナーエレメント20は、金属母材21上に形成された単層又は複層の表面樹脂層22と、金属母材21と表面樹脂層22の間に設けられる1以上の中間金属層23を有する。1以上の中間金属層23は、表面樹脂層22の少なくとも部分的な除去により露出する露出金属層26を含む。なお、中間金属層23が単層の場合、中間金属層23は露出金属層26に一致する。
【0027】
冒頭で述べたように、スライダー往復回数が2、3千回を超える場合、ファスナーエレメント20の金属母材21上に形成されためっき層又は金属酸化層が広範囲に除去されて、金属母材が広範囲で露出してしまうことが予見される。この問題を解決するため、ファスナーエレメント20の金属母材21を非常に硬い表面金属層で被覆することが考えられる。しかしながら、非常に硬い表面金属層を採用するとしても、スライダー往復回数が2、3千回を超える場合、更には5000回に至る場合には摩耗の顕在化を回避し難いおそれがある。
【0028】
本願発明者は、上述の検討に照らして、金属母材21を摩耗により除去されない層で被覆することは現実的ではないことを見出した。この知見を踏まえ、本願発明者は、摩耗により除去されることが明らかに予見される表面樹脂層22を採用すると共に、表面樹脂層22の摩耗時に露出する露出金属層26を採用し、表面樹脂層22と露出金属層26を同色系とすることが現実的な対処法であることを見出した。かかる構成によれば、摩耗の初期段階において表面樹脂層22の露出が継続し、ファスナーエレメント20の初期の色を維持することができる。また、表面樹脂層22の摩耗が進行して露出金属層26が露出するとしても、露出金属層26の色が表面樹脂層22の色と同系であるため、表面樹脂層22の部分的除去が目立ちにくい。更なる表面樹脂層22の摩耗の進行によっても露出金属層26の露出面積が増加するだけであり、従って、ファスナーエレメント20の外観の顕著な変化が回避又は抑制される。表面樹脂層22及び露出金属層26の摩耗は徐々に進行する。従って、ファスナーエレメント20の外観の変化も穏やかである。なお、表面樹脂層22及び露出金属層26の色は、無彩色、又は有彩色を含む。幾つかの場合、表面樹脂層22及び露出金属層26の色は、光沢を伴い、又は金属光沢を伴う。金属は、単金属又は合金を含む。
【0029】
表面樹脂層22の色は、この表面樹脂層22を形成する樹脂の色及び/又はこの表面樹脂層22に混合される添加剤の色により決定される。表面樹脂層22に混合される添加剤は、無機顔料、金属粉体、有機顔料、染料が例示される。露出金属層26の色は、この露出金属層26を形成する金属の色、つまり、その金属の分光反射率により決定される。なお、一例の露出金属層26は、単金属から成る。別例の露出金属層26は、複数の金属を含む合金から成る。
【0030】
本願で述べる「同色系」とは、原則として、正常な視力及び色覚を有するヒトが白色光による照明条件下において同一色又は類似色に見えることを意味する。同一色又は類似色は、色相、明度、及び彩度の少なくとも一つの観点から評価される。照明光源としては、白色LED又は蛍光灯が採用される。同一色は、ヒトにより知覚することができない色差を包含する。なお、ヒトの目が見分けることができない色の範囲が色識別域と呼ばれる。類似色は、基準色と比較してヒトの目が見分けることができるが類似する色を示す。
【0031】
対比される色が無彩色の場合、比較される色の明度の相違が考慮される。無彩色は、黒、白、又は黒と白の中間色の灰色を包含する。黒を明度0とし、白を明度10とし、黒と白の間の灰色を明度1〜9に分類することを想定する。この場合、明度1〜5に分類される灰色は、明度0の黒色に類似するものとする。幾つかの場合、明度1〜4に分類される灰色が、明度0の黒色に類似するものとされる。幾つかの場合、明度1〜3に分類される灰色が、明度0の黒色に類似するものとされる。
【0032】
対比される色が金属光沢を有する場合、比較される色の分光反射率(反射スペクトル)の類似度が考慮され得る。例えば、金属の金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)は、それぞれ識別可能な分光反射率(反射スペクトル)を有する。金は、500nm付近において反射率が大きく変化し、青色よりも黄色及び赤色を強く反射する。銀は、400nm〜700nmの青色〜赤色の可視光域の広い範囲で高い反射率を有する。銅は、600nm〜700nmの赤色を選択的に強く反射する。従って、金色は、黄色に近い色を呈する。銀は、白色に近い色を呈する。銅は、赤色に近い色を呈する。上述の説明から理解される分光反射率の反射率曲線の特徴の類似度が考慮される。曲線の類似度は、対比される曲線の乖離度に基づいて決定され得る。
【0033】
表面樹脂層22が金属光沢を有する場合、表面樹脂層22は、金属粉体が混入された樹脂から成る。表面樹脂層22の内部にも金属粉体が存在し、表面樹脂層22の摩耗が進行しても表面樹脂層22は金属光沢を維持することができる。
【0034】
図4を参照して説明される一例においては、表面樹脂層22及び露出金属層26が黒色系である。すなわち、表面樹脂層22と露出金属層26が黒色系材料から成る。表面樹脂層22の摩耗の進行により露出金属層26が露出するとしてもファスナーエレメント20の外観の変化が抑制される。なお、黒色系は、黒、黒に近い灰色を包含し、光沢が有っても無くても良い。
【0035】
特定の例においては、表面樹脂層22は、黒色顔料が混入された透明樹脂から成る。露出金属層26が黒色の金属層から成る。露出金属層26と金属母材21の間の中間金属層23は、Ni層24とSnNi層25を含む。金属母材21は、丹銅から成る。
【0036】
表面樹脂層22は、メラミン樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂などの合成樹脂を含むことができる。表面樹脂層22に混入される顔料は、例えば、カーボンブラック、黒色の天然鉱物を含む。表面樹脂層22は、本明細書に例示されていない成分を含むことができる。表面樹脂層22の厚みは、例えば、5〜20μmである。
【0037】
露出金属層26は、例えば、黒色のニッケル亜鉛(NiZn)合金、黒色の錫ニッケル(SnNi)合金、黒色の錫コバルト(SnCo)合金、又は黒色のクロムを含むことができる。露出金属層26の厚みは、例えば、0.05〜2μmである。
【0038】
Ni層24は、主にファスナーエレメント20の耐摩耗性を確保するために設けられる。Ni層の厚みは、例えば、0.5〜5μmである。SnNi層25は、Ni層の溶出を抑制するために形成される。SnNi層25の厚みは、例えば、0.1〜1μmである。
【0039】
表面樹脂層22が塗装工程により形成される。露出金属層26がめっき工程により形成される。Ni層24及びSnNi層25もめっき工程により形成される。めっき工程は、電気めっき等が例示できる。各工程の諸条件は、当業者により適切に設定される。なお、SnNi層25を厚くすることによりNi層24を省略可能である。
【0040】
幾つかの特定の実施形態においては、表面樹脂層22は、中間金属層23の合計厚よりも大きい。幾つかの場合、表面樹脂層22は、10μm以上、15μm以上、20μm以上の厚みを有する。幾つかの場合、表面樹脂層22は、1μm以下、5μm以下、10μm以下の厚みを有する。表面樹脂層22の厚みが大きい場合、ファスナーエレメント20がスライダー40内を移動する時、ファスナーエレメント20がスライダー40に接触し易くなるおそれがある。しかしながら、表面樹脂層22の厚みが大きくなればその摩耗に要するスライダー往復回数も増加することも見込まれる。
【0041】
図4を参照して説明される別例においては、表面樹脂層22及び露出金属層26が金色系である。この場合においても表面樹脂層22の摩耗の進行により露出金属層26が露出するとしてもファスナーエレメント20の外観の変化が抑制される。
【0042】
特定の例においては、表面樹脂層22は、金色の金属粉が混入された透明樹脂から成る。露出金属層26が金(Au)、又は金色の銅錫(CuSn)合金、又は金色の銅亜鉛(CuZn)合金から成る。露出金属層26と金属母材21の間には、Ni層24とSnNi層25が形成される。金属母材21は、鉄、亜鉛又は洋伯から成る。表面樹脂層22に混入される金色の金属粉は、例えば、金(Au)、又は金色の銅錫(CuSn)合金、又は金色の銅亜鉛(CuZn)合金の粉体である。なお、SnNi層25を厚くすることによりNi層24を省略可能である。
【0043】
図4を参照して説明される更なる別例においては、表面樹脂層22及び露出金属層26が銅色系であり、つまり、赤みを帯びた光沢色である。この場合においても表面樹脂層22の摩耗の進行により露出金属層26が露出するとしてもファスナーエレメント20の外観の変化が抑制される。
【0044】
特定の例においては、表面樹脂層22は、銅色の金属粉が混入された透明樹脂から成る。露出金属層26が青化銅、又は硫酸銅、又はピロリン酸銅から成る。露出金属層26と金属母材21の間には、Ni層24とSnNi層25が形成される。金属母材21は、丹銅、洋伯、鉄、又は亜鉛から成る。表面樹脂層22に混入される銅色の金属粉は、例えば、青化銅、又は硫酸銅、又はピロリン酸銅の粉体である。なお、SnNi層25を厚くすることによりNi層24を省略可能である。
【0045】
図5を参照して説明される一例においては、表面樹脂層22及び露出金属層26が黒色系である。表面樹脂層22の摩耗の進行により露出金属層26が露出するとしてもファスナーエレメント20の外観の変化が抑制される。
【0046】
特定の例においては、表面樹脂層22は、黒色顔料が混入された透明樹脂から成る。露出金属層26が黒色の金属層から成る。端的には、露出金属層26が黒色のSnCo層から成る。露出金属層26と金属母材21の間には、SnNi層27が形成される。金属母材21が丹銅から成る。
【0047】
図5を参照して説明される別例においては、表面樹脂層22及び露出金属層26が銀色系であり、白色を帯びた光沢色である。表面樹脂層22の摩耗の進行により露出金属層26が露出するとしてもファスナーエレメント20の外観の変化が抑制される。
【0048】
特定の例においては、表面樹脂層22は、銀色の金属粉が混入された透明樹脂から成る。露出金属層26が銀色の金属層から成る。端的には、露出金属層26が銀色のSnNi層から成る。露出金属層26と金属母材21の間には、Ni層27が形成される。金属母材21が丹銅から成る。
【0049】
図6に示すようにファスナーエレメント20は、ファスナーテープ10の一面側の第1面28と、噛合頭部の先端に向かって延びる第2面29を有する。第1面28は、スライダー40の上翼板41に対面し、下翼板42に対向する上翼板41の対向内面に概ね平行に配向された平坦面である。第1面28は、ファスナーエレメント20がスライダー40の前口48と後口49の間を移動する時に上翼板41に接触するファスナーエレメント20の上面である。第2面29は、噛合頭部の先端に向かって下り傾斜する傾斜面又は湾曲面である。換言すれば、第2面29は、第1面28から離間するに応じて上翼板41の対向内面から離れる方向に傾斜又は湾曲する。
【0050】
上述の幾つかの場合、5000回のスライダー往復試験後、第1面28の面積に占める残存する表面樹脂層22の面積は、90%〜99%、又は80%〜90%、又は70%〜80%である。5000回のスライダー往復試験後、第1面28の面積に占める露出した露出金属層26の面積は、1%〜10%、又は10%〜20%、又は20%〜30%である。5000回のスライダー往復試験後、露出金属層26の下層の中間金属層23が露出する場合がある。しかしながら、第1面28の面積に占めるこの露出した中間金属層23の面積は、1%〜3%、又は3%〜7%、又は7%〜10%である。
【0051】
上述の幾つかの実施形態においては、図7又は図8のフローチャートに即して、ファスナーエレメントが製造され、またファスナーテープの側縁部に対して取り付けられる。図7に示す場合、ステップS10にてファスナーエレメントがまず形成される。ステップ10は、例えば、上述の打ち抜き又は切断工程を伴う。ステップS10は、幾つかの場合、ファスナーエレメントの厚みに対応する厚みを有する金属平板をファスナーエレメントに対応する外形のパンチ具で打ち抜く工程を含む。ステップS10は、幾つかの場合、ファスナーエレメントに対応する端面形状を有する長尺なエレメント母材をファスナーエレメントの厚みに対応する長さで切断具により切断する工程を含む。ステップS10は、金属板の打ち抜き又はエレメント母材の切断により得られる個々のファスナーエレメントをプレス加工する工程を追加的に含むことができる。
【0052】
次に、ステップS20において、ファスナーエレメントがめっきされる。打ち抜き又は切断工程により得られた未めっき及び未塗装の金属母材21から成るファスナーエレメントは、めっき工程を通して1以上の中間金属層23及び露出金属層26により順に被覆される。図4及び図5に示すように複数の金属層が形成される場合、複数の金属層の形成のため複数のめっき工程が行われる。従って、幾つかの場合、ファスナーエレメントが複数のめっき槽に浸漬され、複数のめっき槽の間で搬送される。図4に示す形態の一例においては、Niめっき工程によりNi層24が形成され、SnNiめっき工程によりSnNi層25が形成され、黒色NiZn合金めっきにより黒色NiZn合金から成る露出金属層26が形成される。金属母材21上にNi層24、SnNi層25、及び黒色NiZn合金層が順に積層される。なお、めっき工程は、電気めっきや無電解めっきを含むことができる。めっき槽に蓄積されるめっき液の組成は、ファスナーエレメントに形成される所望のめっき層の組成に応じて適切に設定される。
【0053】
次に、ステップS30において、めっき工程後のファスナーエレメントが塗装される。めっき工程後のファスナーエレメントは、塗装工程を通して単層又は複層の表面樹脂層22により被覆される。ファスナーエレメントを塗装液に浸漬すること、若しくはファスナーエレメントに塗装液を噴射することによりファスナーエレメントを塗装することができる。上述の図4に示す形態の一例においては、上述の黒色NiZn合金層上に黒色の表面樹脂層22が積層される。塗装液の組成は、ファスナーエレメントに形成される所望の表面樹脂層の組成に応じて適切に設定される。
【0054】
次に、ステップS40において、ファスナーエレメントがファスナーテープの側縁部に対して取り付けられる。具体的には、加締め機によりファスナーエレメントの一対の脚部の間隔が狭められ、ファスナーエレメントの一対の脚部によりファスナーテープの側縁部が挟み込まれる。幾つかの場合、ステップS10〜S40の他、洗浄、加熱、又は乾燥工程が付加的に行われる。
【0055】
図8に示す場合、めっき工程及び塗装工程の前にファスナーエレメントがファスナーテープの側縁部に対して取り付けられる。このような方法においてもファスナーストリンガー30を好適に製造することができる。ファスナーストリンガー30からスライドファスナー100を製造する方法は、当該分野において広く知られており、説明は省略する。
【0056】
幾つかの実施形態においては、図9及び図10に示すスライドファスナー100が提供される。図9に示すスライドファスナー100においては、図1に示すスライドファスナー100のファスナーエレメント20とは異形状のファスナーエレメント20が採用される。このような場合においても上述と同様の効果を得ることができる。なお、図9に示す後止めは、開離嵌挿具とも呼ばれ、左右のファスナーストリンガー30の乖離を許容する構造を有する。
【0057】
図10に示すようにファスナーエレメント20の頭部213には前方に突出する一つの係合突起218と、前方に凹んだ係合凹部219が設けられ、係合突起218と係合凹部219が前後方向において反対側に設けられる。図10に示すように図示された3つのファスナーエレメント20について、中央のファスナーエレメント20の係合突起218が一つ前方のファスナーエレメント20の係合凹部219に嵌合する。図10においては、一つ前方のファスナーエレメント20の係合凹部219を明示するために一つ前方のファスナーエレメント20が部分的に断面にて示される。なお、図9に示すファスナーストリンガー30も、図7又は図8の製造方法に即して製造することができる。
【0058】
実施例
図11及び図12は、図1に示したスライドファスナー100と同一の構成を有する。図11は、比較例に係るファスナーエレメント20を有するスライドファスナー100の5000回のスライダー往復試験後の状態を示す写真である。比較例に係るファスナーエレメント20は、丹銅の金属母材21と、金属母材21上に直接的に形成された黒色の表面樹脂層22を有する。表面樹脂層22は、カーボンブラックが混入された透明樹脂である。表面樹脂層22の樹脂材料は、アクリル樹脂であり、厚みは、10μmである。
【0059】
図12は、実施例に係るファスナーエレメント20を有するスライドファスナー100の5000回のスライダー往復試験後の状態を示す写真である。実施例に係るファスナーエレメント20は、丹銅の金属母材21と、Ni層24と、SnNi層25と、黒色SnCo層26と、表面樹脂層22を有する。Ni層24の厚みは2μm、SnNi層25の厚みは0.5μm、黒色SnCo層26の厚みは0.1μm、表面樹脂層22の厚みは10μmである。表面樹脂層22は、カーボンブラックが混入された透明樹脂である。表面樹脂層22の樹脂材料は、アクリル樹脂である。
【0060】
図11及び図12の対比から理解されるように図11の比較例の場合、残存している表面樹脂層の範囲が狭く、黒色と銀白色のコントラストが目立つ。他方、図12の実施例の場合、図11の比較例よりも残存する表面樹脂層22の範囲が広く、また露出金属層26も同色系であるため、黒色と銀白色のコントラストが抑制されている。
【0061】
図11の比較例においては、5000回のスライダー往復試験後、第1面28の面積に占める残存する表面樹脂層22の面積は、85%〜99%である。
【0062】
図12の実施例においては、5000回のスライダー往復試験後、第1面28の面積に占める残存する表面樹脂層22の面積は、85%〜99%である。5000回のスライダー往復試験後、第1面28の面積に占める露出した露出金属層26の面積は、1%〜15%である。5000回のスライダー往復試験後、露出金属層26の下層の中間金属層23が露出する。第1面28の面積に占めるこの露出した中間金属層23の面積は、0.5%〜5%である。
【0063】
図13及び図14は、図9に示したスライドファスナー100と同一の構成を有する。図13は、比較例に係るファスナーエレメント20を有するスライドファスナー100の5000回のスライダー往復試験後の状態を示す写真である。比較例に係るファスナーエレメント20は、丹銅の金属母材21と、金属母材21上に直接的に形成された黒色の表面樹脂層22を有する。表面樹脂層22は、カーボンブラックが混入された透明樹脂である。表面樹脂層22の樹脂材料は、アクリル樹脂であり、厚みは、10μmである。
【0064】
図14は、実施例に係るファスナーエレメント20を有するスライドファスナー100の5000回のスライダー往復試験後の状態を示す写真である。実施例に係るファスナーエレメント20は、丹銅の金属母材21と、Ni層24と、SnNi層25と、黒色SnCo層26と、表面樹脂層22を有する。Ni層24の厚みは2μm、SnNi層25の厚みは0.5μm、黒色SnCo層26の厚みは0.1μm、表面樹脂層22の厚みは10μmである。表面樹脂層22は、カーボンブラックが混入された透明樹脂である。表面樹脂層22の樹脂材料は、アクリル樹脂である。
【0065】
図13及び図14の対比から理解されるように図13の比較例の場合、ファスナーエレメント20の脚部212のファスナーテープ外方領域において丹銅が現れている。丹銅と黒色の表面樹脂層22の間の色の違いが顕著に表れており、ファスナーエレメント20の外観の変化がユーザーにとって顕著である。図14の実施例の場合、このようなファスナーエレメント20の外観の色の変化がユーザーにとって顕著ではない。
【0066】
図13の比較例においては、5000回のスライダー往復試験後、第1面28の面積に占める残存する表面樹脂層22の面積は、85%〜99%である。
【0067】
図14の実施例においては、5000回のスライダー往復試験後、第1面28の面積に占める残存する表面樹脂層22の面積は、85%〜99%である。5000回のスライダー往復試験後、第1面28の面積に占める露出した露出金属層26の面積は、1%〜15%である。5000回のスライダー往復試験後、露出金属層26の下層の中間金属層23が露出する。第1面28の面積に占めるこの露出した中間金属層23の面積は、0.5%〜5%である。
【0068】
上述の教示を踏まえると、当業者をすれば、各実施形態に対して様々な変更を加えることができる。請求の範囲に盛り込まれた符号は、参考のためであり、請求の範囲を限定解釈する目的で参照されるべきものではない。ファスナーエレメントの具体的な形状は、本願に開示のものに限定されるべきではない。
【符号の説明】
【0069】
10 ファスナーテープ
20 ファスナーエレメント
21 金属母材
22 表面樹脂層
23 中間金属層
26 露出金属層
30 ファスナーストリンガー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14