(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6599478
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】磁気トンネル接合
(51)【国際特許分類】
H01L 43/10 20060101AFI20191021BHJP
H01L 21/8239 20060101ALI20191021BHJP
H01L 27/105 20060101ALI20191021BHJP
H01L 43/08 20060101ALI20191021BHJP
【FI】
H01L43/10
H01L27/105 447
H01L43/08 Z
【請求項の数】13
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-557161(P2017-557161)
(86)(22)【出願日】2016年1月21日
(65)【公表番号】特表2018-515922(P2018-515922A)
(43)【公表日】2018年6月14日
(86)【国際出願番号】US2016014259
(87)【国際公開番号】WO2016178721
(87)【国際公開日】20161110
【審査請求日】2017年11月27日
(31)【優先権主張番号】14/704,023
(32)【優先日】2015年5月5日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】595168543
【氏名又は名称】マイクロン テクノロジー,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100106851
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 泰久
(72)【発明者】
【氏名】シディック,マンザール
【審査官】
上田 智志
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−060970(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/054062(WO,A1)
【文献】
特開2010−040928(JP,A)
【文献】
特開2016−046492(JP,A)
【文献】
特開2011−198809(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0102439(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/8239,27/105,29/82,43/08
H01F 10/12
G01R 33/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気記録材料を含む導電性の第1の磁性電極と、
前記第1の磁性電極から離隔されており、磁気参照材料を含む導電性の第2の磁性電極と、
前記第1の磁性電極と前記第2の磁性電極との間にある非磁性トンネル絶縁体材料と、
を備え、
前記第1の磁性電極の前記磁気記録材料が、CoおよびFeを含む第1の結晶磁性領域を含み、
前記第1の磁性電極が、アモルファスXNを含む第2のアモルファス領域を含み、Xが、W、Mo、Cr、V、Nb、Ta、AlおよびTiのうちの1つ以上であり、
前記アモルファスXNが、非化学量論的にNリッチである、磁気トンネル接合。
【請求項2】
前記第1の結晶磁性領域の前記CoおよびFeが、前記第2のアモルファス領域の前記アモルファスXNに直接触れている、請求項1に記載の磁気トンネル接合。
【請求項3】
前記第2のアモルファス領域が、前記アモルファスXNからなる、請求項1に記載の磁気トンネル接合。
【請求項4】
前記アモルファスXNを含む前記第2のアモルファス領域の最大の厚さが、50オングストローム以下である、請求項1に記載の磁気トンネル接合。
【請求項5】
Xが、W、Mo、Cr、V、Nb、Ta、Al、およびTiのうちの2つ以上を含む、請求項1に記載の磁気トンネル接合。
【請求項6】
磁気記録材料を含む導電性の第1の磁性電極と、
前記第1の磁性電極から離隔されており、磁気参照材料を含む導電性の第2の磁性電極と、
前記第1の磁性電極と前記第2の磁性電極との間にある非磁性トンネル絶縁体材料と、
を備え、
前記第1の磁性電極の前記磁気記録材料が、Co、FeおよびBを含む第1の結晶磁性領域を含み、
前記第1の磁性電極が、アモルファスXNを含む第2のアモルファス領域を含み、Xが、W、Mo、Cr、V、Nb、Ta、AlおよびTiのうちの1つ以上であり、
前記磁気記録材料の前記Co、FeおよびBが、前記第2のアモルファス領域の前記アモルファスXNに直接触れており、
前記アモルファスXNが、非化学量論的にNリッチである、磁気トンネル接合。
【請求項7】
前記非磁性トンネル絶縁体がMgOを含み、前記第1の結晶磁性領域の前記Co、FeおよびBが、前記非磁性トンネル絶縁体材料のMgOに直接触れている、請求項6に記載の磁気トンネル接合。
【請求項8】
磁気記録材料を含む導電性の第1の磁性電極と、
前記第1の磁性電極から離隔されており、磁気参照材料を含む導電性の第2の磁性電極と、
前記第1の磁性電極と前記第2の磁性電極との間にある非磁性トンネル絶縁体材料と、
を備え、
前記第1の磁性電極の前記磁気記録材料が、CoおよびFeを含む第1の結晶磁性領域を含み、
前記第1の磁性電極が、アモルファスXNを含む第2のアモルファス領域を含み、Xが、W、Mo、Cr、V、Nb、Ta、AlおよびTiのうちの1つ以上であり、
前記第1の磁性電極が、前記非磁性トンネル絶縁体材料から離隔された非磁性のMgO含有領域を含む、磁気トンネル接合。
【請求項9】
前記MgO含有領域のMgOが、前記第2のアモルファス領域の前記アモルファスXNに直接触れている、請求項8に記載の磁気トンネル接合。
【請求項10】
前記第1の磁性電極が、CoおよびFeを含む第3の結晶領域を含む、請求項8に記載の磁気トンネル接合。
【請求項11】
前記第3の結晶領域がBを含む、請求項10に記載の磁気トンネル接合。
【請求項12】
前記第3の結晶領域がBを含まない、請求項10に記載の磁気トンネル接合。
【請求項13】
前記第3の結晶領域の前記CoおよびFeが、前記MgO含有領域のMgOに直接触れている、請求項10に記載の磁気トンネル接合。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書中に開示する実施形態は、磁気トンネル接合、磁気トンネル接合の磁性電極を形成する方法、および、磁気トンネル接合を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気トンネル接合は、薄い非磁性トンネル絶縁体材料(例、誘電材料)で分離された2つの導電性の磁性電極を有する、集積回路コンポーネントである。その絶縁体材料は、適切な条件下で、電子が一方の磁性電極からその絶縁体材料を通過して他方の磁性電極にトンネリング移動することが可能なほどに、十分に薄い。これら磁性電極のうちの少なくとも1つは、通常動作のライト(write)または消去の電流/電圧にて、その全体的な磁化方向を2つの状態の間で切り替えることが可能であり、一般には「フリー(free)」電極または「記録(recording)」電極と呼ばれる。他方の磁性電極は、一般に、「参照(reference)」電極、「固定(fixed)」電極、または「ピンド(pinned)」電極と呼ばれ、その全体的な磁化方向は、通常動作のライトまたは消去の電流/電圧が印加されても切り替わらないだろう。参照電極および記録電極は、それぞれ、導電性ノードに電気的に結合される。参照電極、絶縁体材料、および記録電極を通じたそれら2つのノード間の電気抵抗は、参照電極の磁化方向に対する、記録電極の磁化方向に依存する。よって、磁気トンネル接合は、少なくとも2つの状態のうちの1つにプログラムすることが可能であり、それらの状態は、磁気トンネル接合を通る電流フローを測定することにより検知することが可能である。磁気トンネル接合は、2つの電流導通状態間で「プログラム」することが可能なので、メモリ集積回路で使用するために提案されてきた。さらに、磁気トンネル接合は、メモリとは別に論理回路もしくは他の回路で使用されること、または、メモリに加えて論理回路もしくは他の回路で使用されることもある。
【0003】
スピン・トランスファ・トルク(STT)効果をもたらすために、記録電極の全体的な磁化方向を、電流で誘起される外部磁界により、または、スピン偏極電流を使用することにより、切り替えることができる。電荷キャリア(電子など)は、そのキャリアに固有の少量の角運動量である、「スピン」として知られる特性を有する。電流は、一般には偏極されていない(「スピン・アップ」電子を約50%、「スピン・ダウン」電子を約50%有する)。スピン偏極電流は、どちらかのスピンの電子が他方よりも著しく多くなっている電流である。ある種の磁性材料(偏極子材料と呼ばれる場合もある)に電流を通すことにより、スピン偏極電流を生成することが可能である。スピン偏極電流が磁性材料内に向かっている場合、スピン角運動量がその材料に伝わって、それにより、その磁化の向きに影響を及ぼす可能性がある。これを利用して、振動を励起することが可能であり、または、スピン偏極電流が十分に大きければ、磁性材料の配向/磁区方向(orientaion/domain direction)を反転すること(すなわち、切り替えること)さえ可能である。
【0004】
CoとFeの合金または他の混合物は、偏極子材料として、および/または、磁気トンネル接合内の記録電極の磁気記録材料の少なくとも一部分として、使用するのに提案される一般的な材料の1つである。より具体的な例は、Co
xFe
yB
zであり、ここで、xおよびyがそれぞれ10〜80であり、zが0〜50であるが、これは、CoFeまたはCoFeBと略されることもある。MgOは、非磁性トンネル絶縁体に理想的な材料である。こうした材料はそれぞれ、体心立方(bcc)001格子を有する結晶質であることが理想的である。こうした材料は、任意の適当な技術、たとえば物理気相成長で堆積されることもある。bcc001格子をこうした材料中に最終的に作るのに利用可能な技術の1つは、まず、CoFeをアモルファスになるように形成し、その上にMgO含有トンネル絶縁体材料を堆積することを含む。堆積中および/または堆積後、MgOトンネル絶縁体、CoFe、およびトンネル絶縁体は、それぞれ一様なbcc001格子構造を実現することが理想的である。
【0005】
初めのCoFeのアモルファス堆積を確実にするためには、またはそれをもたらすためには、CoFeの一部分として、一般にホウ素が堆積される。MgOの堆積中または堆積後に、最低でも約250℃の温度で基板にアニーリングを行うことにより、CoFeの結晶化を起こすことも可能である。これにより、形成中のCoFe母材からのB原子の拡散が誘起されて、bcc001CoFeへの結晶化が可能になるだろう。Bcc001MgOは、CoFeの結晶化中にテンプレートとして機能する。しかし、完成した磁気トンネル接合構造物内のB、特に、CoFe/MgO界面にあるBまたはMgO格子の内側にあるBは、望ましくないことに、磁気トンネル接合のトンネリング磁気抵抗効果(TMR)を低減する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本発明の一実施形態による磁気トンネル接合を備える基板断片の図式的断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態による磁気トンネル接合を備える基板断片の図式的断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態による磁気トンネル接合を備える基板断片の図式的断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態による磁気トンネル接合を備える基板断片の図式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の実施形態は、磁気トンネル接合を包含する。例示的実施形態を、まず、
図1を参照して、基板断片10に関連して説明するが、この断片は、半導体基板を含むこともある。本文書の文脈では、「半導体基板(semiconductor substrate)」または「半導電性基板(semiconductive substrate)」といった用語は、半導電性材料を含んだ任意の構造体を意味するように定義され、この半導電性材料には、(単体の、または上に載った他の材料を含んだアセンブリ内のいずれかの)半導電性ウエハなどのバルク半導電性材料、および、(単体の、または他の材料を含んだアセンブリ内のいずれかの)半導電性材料層が含まれるが、これらに限定されない。「基板(substrate)」という用語は、任意の支持構造を指し、これには、上記の半導電性基板が含まれるが、これに限定されない。基板断片10は、様々な材料が縦方向スタックとしてその上に形成された様を示す、基部または基板11を備える。
図1に示す材料から横に離れた材料、
図1に示す材料よりも高さ方向で内側にある材料、または、
図1に示す材料よりも高さ方向で外側にある材料があってもよい。たとえば、部分的にまたは完全に作製された他の集積回路コンポーネントが、断片10の近く、またはその中の、どこかに設けられてもよい。基板11は、伝導性(すなわち、本明細書中では導電性)材料、半導電性材料、または、絶縁性/絶縁体(すなわち、本明細書中では電気的に絶縁性/絶縁体の)材料のうちの、任意の1つまたは複数の材料を含むこともある。これに関わらず、本明細書に記載する材料、領域、および構造体のうちのいずれのものも、均質または不均質とすることができ、これに関わらず、そうしたものが上に載っている任意の材料の上において、連続的であってもよく、または不連続であってもよい。さらに、特に別段の指示のない限り、各材料は任意の適当な技術または任意の未開発の技術を使用して形成することができ、原子層堆積、化学蒸着、物理蒸着、エピタキシャル成長、拡散ドーピング、イオン注入がそうした技術の例である。
【0008】
磁気トンネル接合15が、基板11の上にあり、磁気記録材料を含む導電性の第1の磁性(すなわち、本明細書中ではフェリ磁性または強磁性)電極25と、第1の電極25から離隔されており磁気参照材料を含む導電性の第2の磁性電極27とを備える。第1の電極と第2の電極との間に、非磁性トンネル絶縁体材料22(例、MgOを含む、実質的にMgOからなる、または、MgOのみからなる)がある。電極25および27はそれぞれ、非磁性絶縁体の材料もしくは領域、半導電性の材料もしくは領域、および/または、導電性の材料もしくは領域を含有することもある。しかし、電極25および27を個別に考えると、たとえ本質的には局所的に非磁性であり、かつ/または非導電性である1つまたは複数の領域を当該電極がその内部に有することがあるとしても、電極25および27は、全体的かつ集合的には、磁性および導電性を呈するものとして特徴付けられる。さらに、本明細書中で「磁性」と言った場合、記載されている磁性材料または磁性領域が初めに形成されたときには磁性を有する必要はないが、その記載されている磁性材料または磁性領域のいくらかの部分が、磁気トンネル接合の完成した回路構造体内で機能的に「磁性を有する」ことが必要とされる。
【0009】
コンポーネント25および27それぞれの例示的な最大厚さは、約20オングストローム〜約150オングストロームであり、コンポーネント22については、約5オングストローム〜約25オングストロームである。本文書では、「厚さ」と単独で(先行する方向形容詞なしで)言った場合、それは、所与の材料または領域を、直接隣接する組成が異なる材料に最も近い、または直接隣接する領域に最も近い面から垂直に切った場合の平均直線距離として定義される。さらに、本明細書に記載する様々な材料および領域の厚さは、実質的に一定であっても、一定でなくてもよい。厚さが一定でない場合、特に指示のない限り、厚さとは平均の厚さを指す。本明細書で使われるように、「異なる組成(different composition)」と言った場合には、たとえば記載される2つの材料または領域が均質でないならば、これらの材料または領域のうち互いに直接触れうる部分同士が、化学的および/または物理的に異なることのみが必要である。上記の材料または領域の2つが互いに直接触れない場合、「異なる組成(different composition)」と言えば、上記材料または領域の2つが均質でないならば、記載されたこれら2つの材料または領域のうち最も互いに接近している部分同士が、化学的および/または物理的に異なることのみが必要である。本文書では、記載する材料、領域または構造体同士の、互いに対する少なくとも何らかの物理的接触が存在する場合に、材料、領域または構造体が、他の物に「直接触れている(directly against)」と言う。これに対して、その前に「直接(directly)」とは言っていない場合の「覆って/上に(over)」、「上に(on)」、および「触れて(against)」は、「直接触れている(directly against)」を包含し、かつ、介在する(1つもしくは複数の)材料、領域、または構造体により、上記の材料、領域、または構造体同士が互いに物理的に接触しない構成をも包含する。
【0010】
電極25および27の縦方向位置を反対にすることもでき、かつ/または、縦方向スタック以外の向きを使用することもできる(例、横方向、斜め方向、および、縦方向と水平方向と斜め方向のうちの1つまたは複数の組合せなど)。本文書では、「縦方向」、「上」、「下」、「上端」、および「下端」は、垂直方向に対するものである。「水平方向」は、作製中に基板を加工する対象となる主要面に沿った概ねの方向を指し、その方向に概ね直交する方向が垂直方向である。さらに、本明細書中で使用する「垂直方向」および「水平方向」は、互いに対して概ね垂直の方向のことであり、3次元空間内での基板の向きとは無関係である。
【0011】
第1の電極25の磁気記録材料は、CoおよびFeを含む第1の結晶磁性領域20を含む。本文書で使用するように材料または領域を「結晶(質)」だと特徴づけることには、記載する材料または領域の体積の少なくとも90%が結晶質であることが必要である。一実施形態では、第1の結晶磁性領域20はBを含み(例、Co
45Fe
45B
10)、一代替実施形態では、Bを含まない。本文書では、「Bを含まない(devoid of B)」とは、Bの原子百分率が0以上、0.1以下であることを意味する。第1の結晶磁性領域20は、CoおよびFeを含むか、実質的にCoおよびFeからなるか、または、CoおよびFeのみからなる場合もある。第1の結晶磁性領域20は、Co、FeおよびBを含むか、実質的にCo、FeおよびBからなるか、または、Co、FeおよびBのみからなる場合もある。領域20は、形成当初に15原子パーセント以上のBを含む場合には、アモルファスである場合もある。後続の専用のアニールにより、または、後続の処理中に、それにつきものの高温に晒されることにより、領域20からBを取り除いて、濃度を0〜約10原子パーセントにすることもでき、これにより、領域20が結晶質になる。一実施形態では、非磁性トンネル絶縁体材料22がMgOを含み、第1の結晶磁性領域20のCoおよびFeが、非磁性トンネル絶縁体材料22のMgOに直接触れている。Bが第1の結晶磁性領域の一部分であり、非磁性トンネル絶縁体材料22がMgOを含む一実施形態では、第1の結晶磁性領域20のCo、FeおよびBが、非磁性トンネル絶縁体材料22のMgOに直接触れている。領域20の厚さの一例は、約7オングストローム〜約20オングストロームである。
【0012】
第1の電極25は、アモルファスXNを含む第2のアモルファス領域18を含み、ただし、Xは、W、Mo、Cr、V、Nb、Ta、Al、およびTiのうちの1つまたは複数である。Nはもちろん窒素であり、XNは、化学量論性を示すことを必ずしも意図してはいない。本文書で使用するように材料または領域を「アモルファス」と特徴づけることには、記載する材料または領域の体積の少なくとも90%がアモルファスであることが必要である。領域18は、アモルファスXNを含むか、実質的にアモルファスXNからなるか、または、アモルファスXNのみからなる場合もある。一実施形態では、第2のアモルファス領域18のアモルファスXNが、第1の結晶磁性領域20のCoおよびFeに直接触れている。第1の結晶磁性領域20がBを含む一実施形態では、第2のアモルファス領域18のアモルファスXNが、第1の結晶磁性領域20のCo、Fe、およびBに直接触れている。一実施形態では、Xは、W、Mo、Cr、V、Nb、Ta、AlおよびTiのうちの2つ以上を含む(すなわち、2つまたは3つ以上)。一実施形態では、アモルファスXNは化学量論的である。一実施形態では、アモルファスXNは、非化学量論的にN
リッチである(これにより、たとえば、化学量論的XNの導電率よりも導電率が低減される)。一実施形態では、アモルファスXNを含む第2のアモルファス領域18の最大厚さが、約10オングストローム以下である。
【0013】
一実施形態では、第1の電極25は、非磁性トンネル絶縁体材料22から(例えば領域18および20により)離隔された、非磁性のMgO含有領域16を含む。領域16は、MgOを含むか、実質的にMgOからなるか、または、MgOのみからなる場合もある。一実施形態では、MgO含有領域16のMgOが存在する場合、それは、第2のアモルファス領域18のアモルファスXNに直接触れている。MgO含有領域16が存在する場合、その最大厚さの一例は、約3オングストローム〜約10オングストロームである。
【0014】
一実施形態では、第1の電極25が、CoおよびFeを含む第3の結晶領域14を含む。一実施形態では、第3の結
晶領域14はBを含み(例、Co
45Fe
45B
10)、一代替実施形態では、Bを含まない。領域14が存在する場合その最大の厚さの一例は、約4オングストローム〜約10オングストロームである。領域14および16が存在する一実施形態では、領域16のMgOが、第3の結晶領域14のCoおよびFeに直接触れている。領域14および16が存在し、領域14がBを含む一実施形態では、領域16のMgOが、第3の結晶領域14のCo、FeおよびBに直接触れている。材料14を含めることの目的の1つは、堆積中にbcc001MgOを形成することを容易にすることである。材料16を含めることの目的の1つは、導電性の磁性電極の磁性材料内での垂直磁気異方性を促進することであるが、この垂直磁気異方性は、ある種の磁気トンネル接合の望ましい動作特性である。先に述べた領域20と同様に、領域14は、形成当初に15原子パーセント以上のBを含む場合には、アモルファスである場合もある。後続の専用のアニールにより、または、後続の処理中に、それにつきものの高温に晒されることにより、領域14からBを取り除いて、濃度を0〜約10原子パーセントにすることもでき、これにより、領域14が結晶質になる。
【0015】
一実施形態では、第1の電極25は、非磁性金属領域12を含む。例には、1つまたは複数の元素金属、および、2つ以上の元素金属の合金が含まれる。領域12の材料の具体例の1つは、元素タンタルである。金属領域12が存在する場合に、その最大の厚さの一例は、約5オングストローム〜約500オングストロームである。
【0016】
トンネル絶縁体材料22よりも外側に材料24が図示されており、これは、磁気トンネル接合15の第2の導電性磁性電極27を含む。1つの例にすぎないが、材料24は、トンネル絶縁体材料22に直接触れている13オングストロームのCo
40Fe
40B
20(堆積当初のモル量であり、必ずしも最終構造物内のものではない)と、Co
40Fe
40B
20に直接触れている3オングストロームのTaと、Taに直接触れている40オングストロームの、Pd/Ptを伴うCoの合金/マルチレイヤとを含み、こうした例での電極27は、磁気参照電極として機能する。こうした諸材料は、そのような例では、それら材料でできた磁気参照材料を集合的に構成する。
【0017】
次に、基板断片10aについての
図2を参照して、他の例示的実施形態の磁気トンネル接合15aを説明する。上記の実施形態のものと同様の番号を適宜使用しており、いくつかの構造上の差は、添え字「a」で示している。
図1の領域14および16(図示せず)を欠くように、磁気トンネル接合15aが図示されている。一実施形態では、第2のアモルファス領域18aのアモルファスXNが、非磁性金属領域12の金属に直接触れている。一実施形態では、アモルファスXNを含む第2のアモルファス領域18aの最大厚さが、約50オングストローム以下であり、こうした実施形態では、最小厚さが、約20オングストローム以上である。上で説明した他の任意の属性もしくは態様、および/または、
図1に示す任意の他の属性もしくは態様を、
図2の実施形態で使用することもできる。
【0018】
磁気トンネル接合内では、必要とされるライト電流が低いことが一般に所望される。磁気記録材料のダンピングを低減することで、必要とされるライト電流を下げることもできるが、これは、磁気記録材料からのスピンポンピングを軽減することで実現される場合もある。
図1および
図2の例示的実施形態について先で説明したように、磁気トンネル接合にXNを組み込むことで、スピンポンピングを軽減することができ、それにより必要とされるライト電流を下げることもできる。
【0019】
次に、基板断片10bについての
図3を参照して、他の例示的実施形態の磁気トンネル接合15bを説明する。上記の実施形態のものと同様の番号を適宜使用しており、いくつかの構造上の差は、添え字「b」または異なる数字で示している。第1の電極25bの磁気記録材料は、第1の結晶磁性領域21(Coおよび/またはFeを必ずしも含まない)を含む。一実施形態では、第1の結晶磁性領域21が、CoおよびFeを含む。一実施形態では、第1の結晶磁性領域21はBを含み(例、Co
45Fe
45B
10)、一代替実施形態では、Bを含まない。第1の結晶磁性領域21は、CoおよびFeを含むか、実質的にCoおよびFeからなるか、または、CoおよびFeのみからなる場合もある。第1の結晶磁性領域21は、Co、FeおよびBを含むか、実質的にCo、FeおよびBからなるか、または、Co、FeおよびBのみからなる場合もある。非磁性トンネル絶縁体材料22がMgOを含む一実施形態では、第1の結晶磁性領域21内にCoおよびFeが存在する場合、それらは、非磁性トンネル絶縁体材料22のMgOに直接触れている。Bが第1の結晶磁性領域21の一部分である一実施形態では、アモルファス
のCo、FeおよびBが第1の結晶磁性領域
21内に存在する場合、それらは、非磁性トンネル絶縁体材料22のMgOに直接触れている。領域21の厚さの一例は、約7オングストローム〜約20オングストロームである。
【0020】
第1の電極25bは、Co、FeおよびN(例、Co
xFe
yN
z、ただし、xおよびyはそれぞれ10〜80であり、zは0.1〜50)を含む第2の領域19を含む。領域19は、Co、FeおよびNを含むか、実質的にCo、FeおよびNからなるか、または、Co、FeおよびNのみからなる場合もある。第1の結晶磁性領域21がCoおよびFeを含む一実施形態では、そのCoおよびFeが、第2の領域19のCo、FeおよびNに直接触れている。一実施形態では、第2の領域19はアモルファスである。一実施形態では、第2の領域20は結晶質である。最終的にアモルファス状態か結晶質状態かに関係なく、形成当初の第2の領域19はアモルファスであることが理想的である。第1の結晶磁性領域21がBを含む一実施形態では、その領域のCo、FeおよびBが、第2の領域19のCo、FeおよびNに直接触れている。一実施形態では、Co、FeおよびNを含む第2の領域19の最大厚さは、約2オングストローム〜約15オングストロームである。
【0021】
一実施形態では、第1の電極25bは、非磁性トンネル絶縁体材料22から(例えば領域19および21により)離隔された、非磁性のMgO含有領域16を含む。領域16は、MgOを含むか、実質的にMgOからなるか、または、MgOのみからなる場合もある。MgO含有領域16が存在する場合、その最大厚さの一例は、約3オングストローム〜約10オングストロームである。
【0022】
一実施形態では、第1の電極25bが、CoおよびFeを含む第3の結晶領域14を含む。一実施形態では、第3の結晶領域14はBを含み(例、Co
45Fe
45B
10)、一代替実施形態では、Bを含まない。領域14が存在する場合、その最大の厚さの一例は、約4オングストローム〜約10オングストロームである。領域14および16が存在する一実施形態では、領域16のMgOが、第3の結晶領域14のCoおよびFeに直接触れている。領域14および16が存在し、かつ領域14がBを含む一実施形態では、領域16のMgOが、第3の結晶領域14のCo、FeおよびBに直接触れている。一実施形態では、非磁性のMgO含有領域16と、Co、FeおよびNを含む第2の領域との間にアモルファス金属領域17が存在する。領域17のアモルファス金属の例には、Ta、W、CoFeW、およびZNのうちの1つまたは複数が含まれる(ただし、Zは、W、Mo、Cr、V、Nb、Ta、Al、およびTiのうちの1つまたは複数である)。領域17の厚さの一例は、約1オングストローム〜約20オングストロームである。アモルファス金属領域17を含めることの目的の1つは、第2の領域19の堆積中にその領域のアモルファス成長を容易にすることである。一実施形態では、MgO含有領域16のMgOは、第2の領域19のCo、FeおよびNに直接触れていない。先に述べたように、材料14を含めることの目的の1つは、堆積中にbcc001MgOを形成することを容易にすることである。材料16を含めることの目的の1つは、導電性の磁性電極の磁性材料内での垂直磁気異方性を促進することである。一実施形態では、第1の電極25bが、非磁性の金属領域12を含む。
【0023】
コンポーネント25/25a、27、および22について上で説明した他の任意の属性もしくは態様、ならびに/または、コンポーネント25/25a、27、および22について
図1および
図2に示す任意の他の属性もしくは態様を、
図3の実施形態で使用することもできる。
【0024】
次に、基板断片10cについての
図4を参照して、他の例示的実施形態の磁気トンネル接合15cを説明する。上記の実施形態のものと同様番号を適宜使用しており、いくつかの構造上の差は、添え字「c」で示している。
図3の領域14および16(図示せず)を欠くように、磁気トンネル接合15cの第1の電極25cが図示されている。上で説明した他の任意の属性もしくは態様、および/または、
図3に示す任意の他の属性もしくは態様を、
図4の実施形態で使用することもできる。
【0025】
磁気トンネル接合内の必要とされるライト電流密度は次のように表すことも可能である。
【数1】
ただし、M
sは飽和磁化、tは厚さ、H
kは磁気記録材料の垂直磁気異方性である。
図3および
図4の例示的実施形態について先に説明したように、Co、Fe、およびNを含む領域を磁気トンネル接合内で使用することで、高速切替え、良好な記憶保持、および低い切替え電流を実現する際に、低いM
stと高いH
kとの間の良好なバランスを可能にすることもできる。
【0026】
結論
いくつかの実施形態では、磁気トンネル接合が、磁気記録材料を含む導電性の第1の磁性電極を含む。導電性の第2の磁性電極が、第1の電極から離隔されており、磁気参照材料を含む。第1の電極と第2の電極との間に、非磁性トンネル絶縁体材料が存在する。第1の電極の磁気記録材料が、CoおよびFeを含む第1の結晶磁性領域を含む。第1の電極が、アモルファスXNを含む第2のアモルファス領域を含み、ただし、Xは、W、Mo、Cr、V、Nb、Ta、AlおよびTiのうちの1つまたは複数である。
【0027】
いくつかの実施形態では、磁気トンネル接合が、磁気記録材料を含む導電性の第1の磁性電極を含む。導電性の第2の磁性電極が、第1の電極から離隔されており、磁気参照材料を含む。第1の電極と第2の電極との間に、非磁性トンネル絶縁体材料が存在する。第1の電極の磁気記録材料が、Co、FeおよびBを含む第1の結晶磁性領域を含む。第1の電極が、アモルファスXNを含む第2のアモルファス領域を含み、ただし、Xは、W、Mo、Cr、V、Nb、Ta、AlおよびTiのうちの1つまたは複数である。磁気記録材料のCo、Fe、およびBが、第2のアモルファス領域のアモルファスXNに直接触れている。
【0028】
いくつかの実施形態では、磁気トンネル接合が、磁気記録材料を含む導電性の第1の磁性電極を含む。導電性の第2の磁性電極が、第1の電極から離隔されており、磁気参照材料を含む。第1の電極と第2の電極との間に、非磁性トンネル絶縁体材料が存在する。第1の電極の磁気記録材料が、第1の結晶磁性領域を含む。第1の電極が、Co、FeおよびNを含む第2の領域を含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、磁気トンネル接合が、磁気記録材料を含む導電性の第1の磁性電極を含む。導電性の第2の磁性電極が、第1の電極から離隔されており、磁気参照材料を含む。第1の電極と第2の電極との間に、非磁性トンネル絶縁体材料が存在する。第1の電極の磁気記録材料が、Co、FeおよびBを含む第1の結晶磁性領域を含む。第1の電極が、Co、FeおよびNを含む第2の領域を含む。磁気記録材料のCo、Fe、およびBが、第2の領域のCo、Fe、およびNに直接触れている。
【0030】
法令に従って、本明細書中に開示する主題を、構造的特徴および方法的特徴についてある程度具体的な言葉で説明してきた。しかし、本明細書中で開示する手段は例示的実施形態を含むので、特許請求の範囲が、図示および説明を行った具体的な特徴には限定されないことが理解されるはずである。したがって、請求項には、文字通り言い表した全ての範囲が与えられるべきであり、また、請求項は、均等論にしたがって適宜解釈されるべきである。