特許第6599488号(P6599488)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6599488
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】果物輸送用容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 85/34 20060101AFI20191021BHJP
【FI】
   B65D85/34 160
   B65D85/34 150
   B65D85/34 140
   B65D85/34 110
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-11138(P2018-11138)
(22)【出願日】2018年1月26日
(65)【公開番号】特開2019-127302(P2019-127302A)
(43)【公開日】2019年8月1日
【審査請求日】2018年10月19日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】304021831
【氏名又は名称】国立大学法人千葉大学
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 誠
(72)【発明者】
【氏名】石井 菜月
(72)【発明者】
【氏名】高橋 香輝
(72)【発明者】
【氏名】萩原 志周
(72)【発明者】
【氏名】橋本 慶吾
(72)【発明者】
【氏名】久保田 百合
【審査官】 植前 津子
(56)【参考文献】
【文献】 実公昭14−002493(JP,Y1)
【文献】 登録実用新案第3154229(JP,U)
【文献】 特開2004−065055(JP,A)
【文献】 実開昭60−008285(JP,U)
【文献】 実開昭52−049080(JP,U)
【文献】 実開平05−042173(JP,U)
【文献】 特開2004−244024(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 85/30−85/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心部から放射状に突起のある中空容器と、前記中空容器の内部かつ前記突起の上に張ったネットとを備え、前記突起の高さが前記中空容器の中心部から周囲に向かうに従って徐々に低くなり、前記ネット上に配置された果物が前記中空容器に接触しないように配置されていることを特徴とする果物輸送用容器。
【請求項2】
中空容器の下半分である容器本体と、前記容器本体の内部に張ったネットと、前記容器本体の内部に張ったネットの下に配置した線状部材又は突起と、前記中空容器の上半分である蓋に張られたネット又はフィルムと、を備え、前記容器本体の内部に張ったネット上に配置された果物が前記中空容器に接触しないように前記容器本体の内部に張ったネットと前記蓋に張られたネット又はフィルムの間に挟み込めることを特徴とする果物輸送用容器。
【請求項3】
前記果物が苺であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の果物輸送容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、果物輸送用容器に関するものであり、特に苺等の腐食しやすく、傷つきやすい果物を輸送するための容器に適したものである。
【背景技術】
【0002】
我が国の苺は、大粒で甘みが強く、海外でも高く評価されている。しかし、特に苺を長距離に渡り輸送する場合、苺が傷んでしまうと商品価値が著しく低下してしまうという課題がある。
【0003】
非特許文献1には、「ゆりかーご」という苺用容器が記載されている。「ゆりかーご」は、柔らかいフィルム素材の窪みに苺を入れ、宙づり構造で、振動を緩和し、擦れ傷の防止を図ったものである。
【0004】
非特許文献2には、「フルテクター」というイチゴ品質保持容器が記載されている。「フルテクター」は、ポリエステルで作った緩衝材に窪みを作り、苺を置き、上部から伸縮性フィルムで挟み込むことで、上下方向の振動だけでなく、横方向の振動に対しても苺が動かないようにすることで品質の保持を図っている。
【0005】
非特許文献3には、「フレシェル」というイチゴ用容器が記載されている。「フレシェル」は、最も硬い部分の果底部と茎で苺を保持し、柔らかい部分には一切接触することがなく、接触による果肉の劣化を図っている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】http://www.osk.co.jp/product/release.html
【0007】
【非特許文献2】http://www.tokan.co.jp/ntp/product/ichigo.html
【0008】
【非特許文献3】http://special.nikkeibp.co.jp/NBO/businessfarm/agribusiness/04/
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
非特許文献1に記載の容器は、輸送中の揺れで苺が、フィルムに窪みを作るために必要な突起部分に接触し、傷む。また、柔らかいフィルム素材の通気性が悪く、フィルムの底に水分が溜まり、苺の腐食を促進してしまうという課題がある。
【0010】
非特許文献2の容器は、苺の動きを止め、苺の傷みを抑えることができるが、パッケージ自体のコストが高くなるという課題がある。また、容器内に無駄なスペースが多く、輸送する際にコストがかかるという課題がある。
【0011】
非特許文献3の容器は、高級苺を一つずつ包装する容器であるため、複数の苺を輸送する場合、大きなコストがかかるという課題がある。
【0012】
そこで、本発明は上記課題に鑑み、果物の輸送の際の傷みを抑え、製造コストを抑えた果物輸送用容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一つの観点によれば、上記課題を解決するために、果物輸送用容器を、中空容器と、前記中空容器の内部に張ったネットと、前記ネットの下に配置した線状部材とを備えるものとした。果物の種類としては、特に腐食しやすく傷みやすい苺が適している。また、前記線状部材を、前記中空容器の中央から放射状に配置すると高級感が演出できて、好ましい。
【0014】
また、本発明の他の観点によれば、果物輸送容器を、中空容器と、前記中空容器の内部に張ったネットと、前記ネット上に配置された果物が前記中空容器に接触しない位置に保持する保持部材とを備えるものとした。
【0015】
また、本発明の他の観点によれば、果物輸送用容器を、中空容器と、前記中空容器の内部に張ったネットと、前記ネット上に配置された果物が前記中空容器に接触しない位置に保持する保持部材とを備えるものとした。
【0016】
また、本発明の他の観点によれば、果物輸送用容器を、中心部から放射状に突起のある中空容器と、前記中空容器の内部に張ったネットとを備えるものとした。
【0017】
また、本発明の他の観点によれば、果物輸送用容器を、中心部から放射状に突起のある中空容器と、前記中空容器の内部に張ったネットとを備え、前記突起が、前記ネット上に配置された果物が前記中空容器に接触しないように配置されたものとした。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、果物の傷みを抑え、製造コストを抑えた果物用容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施例1の概略を示す図である。
図2】本発明の実施例1の試作品の一部の写真を示す図である。
図3】本発明の実施例2の概略を示す図である。
図4】本発明の実施例3の試作品の写真を示す図である。
図5】本発明の実施例4の試作品の写真を示す図である。
図6】本発明の実施例5の試作品の写真(その1)を示す図である。
図7】本発明の実施例5の試作品の写真(その2)を示す図である。
図8】本発明の実施例5の試作品の写真(その3)を示す図である。
図9】本発明の実施例5の試作品の写真(その4)を示す図である。
図10】本発明の実施例5の試作品の概略(その1)を示す図である。
図11】本発明の実施例5の試作品の概略(その2)を示す図である。
図12】本発明の実施例5の試作品の概略(その3)を示す図である。
図13】本発明の実施例6の試作品の写真(その1)を示す図である。
図14】本発明の実施例6の試作品の写真(その2)を示す図である。
図15】本発明の実施例6の試作品の写真(その3)を示す図である。
図16】本発明の実施例6の写真(その4)を示す図である。
図17】本発明の実施例6の概略(その1)を示す図である。
図18】本発明の実施例6の概略(その2)を示す図である。
図19】本発明の実施例6の概略(その3)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明の実施形態は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0021】
本発明の実施例1は、図1に示すように、中空のプラスチック容器1の下半分に一定の張力をかけた線状部材2を張り、その上に柔らかいネット(網)3を張る。苺(図示せず。)は、線状部材と線状部材の間に配置する。プラスチック容器1の上半分には、下部と同じく柔らかいネット4を張り、苺を上下から柔らかいネット素材で挟む構成となっている。本実施例は柔らかいストッキングタイプのネット素材を苺の容器に利用し、また衝突による傷みの原因となっていた苺を仕切るためのプラスチックの突起部分を失くすことにより、硬いプラスチック部分にぶつかって傷んでしまうという課題を解決した。本実施例では、平行四辺形に紐(線状部材)を張り、苺を交互に配置できる。仮に線状部材がなかったとすると、ネット素材の中央部に苺を配置した場合、苺の重さでネット素材が変形し、苺が硬い容器に接触し、接触部から苺の腐食が進んでしまうおそれがある。そこで、本実施例では、苺を宙に浮かせたまま保持するために、中空容器に線状部材を張っている。
【0022】
線状部材2は、例えば紐、糸、ピアノ線、金属ワイヤー等で構成することが可能であるが、線状であり、容器中心部に配置した苺が、容器に直接接触しないように宙に浮いた状態で保持できるものであれば、これらの素材に限らない。
【0023】
容器1の材料は、現在の苺輸送用容器で多く使用されているプラスチックでも良いし、段ボール紙でも、発砲スチロールでもかまわない。
【0024】
図2は、本実施例の試作品の一部(下の部分)の写真を示す図である。21は、本物の苺ではなく、粘土にアルミホイルを巻いて作成した苺を模擬したもの(模擬苺)であり、苺と同様の形状、大きさ、重さとなるように作成されている。図2の線状部材2は、紐で構成されている。
【0025】
本実施例の特徴を整理すると、本実施例では、輸送時の揺れによって容器の上面と下面に苺が衝突し、苺が傷むのを防ぐために、苺を固定する際の素材として柔らかく通気性のあるストッキング素材で上下から苺を挟み込んでいる。また、紐の張力を利用し、苺を個別に配置できるような仕切りを作っている。ハンモックのような構造の苺輸送容器である。
【0026】
従来技術に対する本発明の効果について以下説明する。
【0027】
本発明によれば、非特許文献1の容器の課題である、突起部分をなくすことができ、苺が接触する部分をなくすことができる。さらにネット素材を利用することで、通気性を高め、苺の腐食の進行を防ぐ効果がある。
【0028】
非特許文献2の容器の課題であるコスト面については、非特許文献2の容器では、容器のサイズに対して苺の収容量が少なく、スペース削減が出来ないためコストが掛かってしまっていたが、この「ストッキング素材を用いた苺の輸送用容器」はプラスチックの突起の仕切りを使わずスペースを削減することでより低コストでの製造が可能となる。
【0029】
非特許文献3の容器の課題である、輸送する個数に関しても、本発明の苺輸送容器は、ネットのサイズや紐の張力を調整することで、様々なサイズのパッケージに応用可能であることから、複数個輸送するパッケージとして有効であるといえる。
【実施例2】
【0030】
図3は、本発明の実施例2の概略を示す図であり、図3の左の図は容器を開けた状態、図3の右の図は容器を閉じた状態を示している。実施例1と同じ部分は、説明を省略する。31は、苺である。実施例1では、線状部材を平行四辺形状に張っているが、本実施例では、中空容器の中央から放射状に線状部材2を張っている。放射状に線状部材2を張ると、ケーキのデコレーションのように高級感を演出することができる。
【実施例3】
【0031】
図4は、本発明の実施例3の試作品の写真を示す図である。実施例1と同じ部分は、説明を省略する。本実施例が実施例1と異なる点は、実施例1では線状部材2を紐を張って構成しているが、本実施例では、線状部材2を、六角形の辺状に、プラスチックのシート状あるいはフィルム状に形成し、苺を配置すべき場所に穴を開けている点である。本実施例の構成でも、苺を硬い容器に接触させず、宙に浮いた状態で保持し、傷みを抑えることができる。
【実施例4】
【0032】
図5は、実施例4の試作品の写真を示す図である。実施例1と同じ部分は説明を省略する。図5が実施例1と異なる点は、実施例1は、線状部材2を中空容器状に配置しているが、本実施例には線状部材2を配置せず、線状部材2の代わりに中空容器1の内部の所定の位置に、突起状の保持部材51を配置し、保持部材51の間に苺を配置することにより、苺が容器に接触しないで宙に浮いた状態で保持している点である。本実施例のように、線状部材2を張らなくても、保持部材51を中空容器の内部の適切な位置に配置することによって、苺の傷みを抑えることができる。
【実施例5】
【0033】
図6から図9は、実施例5(サンプル1)の試作品の写真を示す図であり、図10から図12は、実施例5の概略を示す図である。実施例2と同様に、中心部から放射状に仕切り71を備えた容器だが、突起部分72が下面一体のプラスチック容器ではなく、厚手の紙を使用することでより軟質な仕切り71を作っている。具体的には画用紙等に切り込みを入れ内側に折り込むことで苺73を配置する空間を作っている。突起部分71の上に、柔らかいネット3を張っている。
【実施例6】
【0034】
本発明の実施例6(サンプル2)は、図13から図19に示すように、中空のプラスチック容器1の下半分に中心部74から放射状に突起72を備え、その上に柔らかいネット(網)3を張る。苺73は、突起と突起の間に配置する。プラスチック容器1の上面においては、軟質のフィルムや緩衝材等によって固定し、苺の位置がずれてしまうのを防ぐ。本実施例は柔らかいストッキングタイプのネット素材3を苺の容器に利用し、また苺を円形に配置し、各苺をヘタに近い位置で均等に固定することで、苺の最も傷みやすい先端部が容器の突起部分に衝突してしまうという課題を解決した。また苺を円形に配置することでケーキのデコレーションのように高級感を演出することができる。本実施例では、突起部72が容器1と一体になって形成されているところが特徴の一つである。
【0035】
仮に中心部から放射状に突起した部分がなかったとすると、ネット素材の中央部に苺を配置した場合、苺の重さでネット素材が変形し、苺が中心に沈み込み、接触部から苺の腐食が進んでしまうおそれがある。そこで、本実施例では、苺を宙に浮かせたまま保持するために、中空容器1に放射状の突起72を備えている。
【0036】
本実施例では、苺を個別に配置できるような仕切りを作ることで、苺同士がぶつかって腐食するのを防いでいる。また、本実施例では、上面容器をなくし、苺を収容するため、スペースを削減することができた。
【0037】
実施例1から実施例6の試作品を比較したところ、実施例6の試作品が最も苺同士の接触を防止する効果が高く、苺の腐食、傷みを防止することができた。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、果物輸送容器として産業上利用可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 中空容器
2 線状部材
3、4 ネット(網)
21 模擬苺
31 苺
51 保持部材
71 仕切り
72 突起部
73 苺
74 容器中心部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
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図19