(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明の利点および特徴、そしてそれらを達成する方法は、添付の図と共に詳細に後述する実施例を参照すると明確になるであろう。しかし、本発明は、以下で開示する実施例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で実施可能である。本実施形態は、本発明の開示を完全にし、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供するものであり、本発明は、特許請求の範囲によって定義される。
【0040】
本発明の実施形態を説明するために図で開示された形状、大きさ、比率、角度、数などは例示的なものなので、本発明は、図に示された事項に限定されるものではない。明細書全体にわたって同一参照符号は同一の構成要素を指すことができる。また、本発明を説明するにおいて、関連する公知技術に対する詳細な説明が本発明の要旨を不必要に曖昧にすると判断される場合、その詳細な説明は省略する。
【0041】
本明細書で言及した「備える」、「有する」、「からなる」などが使用されている場合は、「〜だけ」が使用されていない限り、他の部分が追加され得る。構成要素を単数で表現する場合に特に明示的な記載事項がない限り、複数が含まれる場合を含む。
【0042】
構成要素を解釈するに当たり、別途の明示的な記載がなくても誤差の範囲を含むものと解釈する。
【0043】
位置関係の説明である場合には、例えば、「〜上に」、「〜の上部に」、「〜の下部に」、「〜の隣に」など2つの部分の位置関係が説明されている場合は、「すぐに」または「直接」が使用されていない以上、二つの部分の間に1つ以上の他の部分が位置することもできる。
【0044】
時間の関係に対する説明である場合には、例えば、「〜の後」、「〜に続いて」、「〜次に」、「〜前に」などで時間的前後関係が説明されている場合は、「すぐに」または「直接」が使用されていない以上、連続していない場合も含むことができる。
【0045】
第1、第2などが多様な構成要素を記述するために使用されるが、これらの構成要素はこれらの用語によって制限されない。これらの用語は、ただ一つの構成要素を他の構成要素と区別するために使用されるものである。したがって、以下に記載されている第1構成要素は、本発明の技術的思想内で第2構成要素であることもある。
【0046】
「第1水平軸方向」、「第2水平軸方向」および「垂直軸方向」は、互いの関係が垂直方向に成り立った幾何学的な関係だけで解釈されてはならず、本発明の構成は、機能的に作用することができる範囲内より広い方向性を有することを意味することができる。
【0047】
「少なくとも一つ」の用語は、一つ以上の関連項目から提示可能なすべての組み合わせを含むものと理解されなければならない。たとえば、「第1項目、第2項目及び第3項目のうち少なくとも一つ」の意味は、第1項目、第2項目または第3項目のそれぞれのみならず、第1項目、第2項目及び第3項目の中で2つ以上から提示することができるすべての項目の組み合わせを意味する。
【0048】
本発明のいくつかの実施形態のそれぞれの特徴が部分的または全体的に互いに結合または組み合わせ可能で、技術的に様々な連動と駆動が可能であり、各実施形態が互いに独立して実施可能であり、連関関係で一緒に実施することもできる。
【0049】
以下では、本発明の一実施形態に係る薄膜トランジスタ、その製造方法及び表示装置を添付の図を参照して詳細に説明する。各図の構成要素に参照符号を付加するにおいて、同一の構成要素に対しては、たとえ他の図上に表示されていても、可能な限り同一の符号を有することができる。
【0050】
図1は、本発明の一実施形態に係る薄膜トランジスタ100の概略的な断面図である。
【0051】
本発明の一実施形態に係る薄膜トランジスタ100は、基板101上に配置されたゲート電極110、ゲート電極110と絶縁されてゲート電極110の電極の少なくとも一部と重畳する酸化物半導体層120、ゲート電極110と酸化物半導体層120との間に配置されたゲート絶縁膜150、酸化物半導体層120と接続されたソース電極130およびソース電極130と離隔して酸化物半導体層120と接続されたドレイン電極140を含む。
【0052】
基板101に、ガラスまたはプラスチックを使用することができる。プラスチックとしてはフレキシブルな特性を有する透明なプラスチック、例えば、ポリイミドを使用することができる。
【0053】
ポリイミドが基板101に使用される場合には、基板101上で高温蒸着工程を行うことを考慮すると、高温に耐えることができる耐熱性ポリイミドを用いることができる。この場合には、薄膜トランジスタの形成のために、ポリイミド基板がガラスのような高耐久性材料からなるキャリア基板上に配置された状態で、蒸着、エッチングなどの工程が行われ得る。
【0054】
基板101上にバッファ層(buffer layer)を配置することができる(未図示)。バッファ層は、単一層でなすこともでき、互いに異なる材料からなる複数の層を積層してなすこともできる。基板101上に配置されたバッファ層を保護膜とする。バッファ層は省略することができる。
【0055】
ゲート電極110は、基板101上に配置される。ゲート電極110は、アルミニウム(Al)やアルミニウム合金のようなアルミニウム系列の金属、銀(Ag)や銀合金のような系列の金属、銅(Cu)や銅合金などの銅系列の金属、モリブデン(Mo)やモリブデン合金などのモリブデン系列の金属、クロム(Cr)、タンタル(Ta)、ネオジウム(Nd)およびチタン(Ti)のうち少なくとも一つを含み得る。ゲート電極110は、物理的性質が異なる少なくとも二つの導電膜を含む多重層膜構造を有し得る。
【0056】
ゲート電極110上にゲート絶縁膜150が配置される。ゲート絶縁膜150は、酸化物半導体層120とゲート電極110との間で絶縁膜の役割をする。
【0057】
ゲート絶縁膜150は、シリコン酸化物及びシリコン窒化物のうちの少なくとも一つを含むことができる。ゲート絶縁膜150は、酸化アルミニウム(Al
2O
3)を含み得る。
【0058】
ゲート絶縁膜150は、単一膜構造を有することもあり、多重層膜構造を有することもある。例えば、酸化アルミニウム層、シリコン酸化物層およびシリコン窒化物層が、それぞれ単独でゲート絶縁膜150を形成することができ、これらを積層してゲート絶縁膜150を形成することもできる。
【0059】
図1を参照すると、ゲート絶縁膜150は、二つの絶縁膜151、152を含んでいる。二つの絶縁膜151、152をそれぞれ第1ゲート絶縁膜151及び第2ゲート絶縁膜152とすることができる。しかし、本発明の一実施形態によるゲート絶縁膜150の構造が、これに限定されるものではなく、ゲート絶縁膜150は、単一膜からなることもあり、3層以上の膜からもなり得る。
【0060】
本発明の一実施形態によると、酸化物半導体層120は、ゲート絶縁膜152上に配置される。酸化物半導体層120はゲート電極110と絶縁され、ゲート電極110と少なくとも一部重畳する。
【0061】
酸化物半導体層120は、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)、スズ(Sn)および酸素(O)を含む。インジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)およびスズ(Sn)は5s軌道(5s−orbital)基盤の金属で、酸素と結合して半導体特性を有することができる。
【0062】
インジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)およびスズ(Sn)を含む、本発明の一実施形態に係る酸化物半導体層120をIGZTO半導体層とも呼ぶ。
【0063】
本発明の一実施形態によると、酸化物半導体層120において、インジウム(In)の含有量は、ガリウム(Ga)の含有量よりも多く、インジウム(In)の含有量と亜鉛(Zn)の含有量は、実質的に同一である。ここで、各成分の含有量は、原子数を基準に決定されるもので、原子%(at%)で表現することができる。以下同一である。
【0064】
インジウム(In)は、ガリウム(Ga)と比較して1.5〜5倍の含有量を有することができる。より詳細には、インジウム(In)は、ガリウム(Ga)対比2〜4倍の含有量を有することができる。
【0065】
原子数基準でインジウム(In)と亜鉛(Zn)は、実質的に同一の含有量を有する。ここで、「実質的に同一の含有量」は、誤差の範囲内で同じ量を意味する。例えば、インジウム(In)と亜鉛(Zn)は±10%の誤差範囲内で実質的に同一の含有量を有することができる。より詳細には、インジウム(In)は、亜鉛(Zn)と比較して0.9〜1.1倍の含有量を有することができる。
【0066】
本発明の一実施形態に係る酸化物半導体層120は、比較的少ない量のスズ(Sn)を含む。本発明の一実施形態によると、インジウム(In)に対するスズ(Sn)の含有量比(Sn/In)は、0.1〜0.25である。原子数基準で、インジウム(In)はスズ(Sn)の4倍〜10倍の含有量を有し得る。
【0067】
例えば、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)およびスズ(Sn)の全原子数対比、インジウム(In)は30〜50%、ガリウム(Ga)は10〜20%、亜鉛(Zn)は20〜50%、スズ(Sn)は3〜12.5%の含有量を有し得る。
【0068】
インジウム(In)に対するスズ(Sn)含有量比(Sn/In)が0.1未満の場合には、酸化物半導体層120の移動度(Mobility)、キャリア濃度、密度(packing density)およびNBTIS(Negative Bias Temperature Illuminance Stress)が減少することがあり、スピン密度(spin density)が増加して欠陥が増加し、閾値電圧の変化(ΔVth)およびPBTS(Positive Bias Temperature Stress)が増加し得る。
【0069】
ここで、NBTISは負極性(−)のバイアス電圧、一定温度および一定照度の光照射条件によるストレスを意味し、一般的に負(−)の値を有する。NBTISが小さくなる場合は、NBTISの負(−)の絶対値が大きくなる場合に該当する。NBTISが小さくなる場合(または、NBTIS絶対値が大きくなる場合)、温度および光に対する酸化物半導体層120または薄膜トランジスタ100のストレスが増加し、信頼性が低下し得る。
【0070】
PBTSは正極性(+)のバイアス電圧および一定温度が印加される条件でのストレスを意味し、一般的に正(+)の値を有する。PBTSが大きくなる場合、酸化物半導体層120または薄膜トランジスタ100のストレスが増加し、閾値電圧の変化(ΔVth)が大きくなり得る。
【0071】
一方、インジウム(In)に対するスズ(Sn)の含有量比(Sn/In)が0.25を超えても、酸化物半導体層120の移動度(Mobility)およびキャリア濃度(carrier concentration)は、それ以上増加せず飽和状態を維持して、スズ(Sn)の含有量の増加による効果が表れない。むしろ、インジウム(In)に対するスズ(Sn)の含有量比(Sn/In)が0.25を超える場合には、酸化物半導体層120の密度が減少し、スピン密度が増加し、欠陥が増加して、NBTISが減少(NBTISの絶対値の増加)およびPBTS増加により、酸化物半導体層120と薄膜トランジスタ100のストレスが増加し、閾値電圧の変化(ΔVth)が大きくなってs−ファクタ(s−factor)が増加する。
【0072】
s−ファクター(sub−threshold swing:s−factor)は、ゲート電圧に対するドレイン電流特性のグラフでは、スイッチング素子として動作する区間での傾きの逆数の値を示す。s−ファクターが増加すると、ゲート電圧に対するドレイン電流特性グラフの傾きが減少して、薄膜トランジスタ100のスイッチング特性が低下する。
【0073】
本発明の一実施形態に係る酸化物半導体層120は、インジウム(In)対比10〜25%のスズ(Sn)を含むことにより(0.1≦Sn/In≦0.25)、優れた移動度、閾値電圧(Vth)特性および信頼性を有することができる。さらに、このような酸化物半導体層120を含む、本発明の一実施形態に係る薄膜トランジスタ100は、優れた移動度と閾値電圧特性を有し、低いPBTSおよびNBTISサイズ(絶対値)を有し、優れた信頼性を有する。
【0074】
本発明の一実施形態によると、酸化物半導体層120は、20nm以上の厚さを有する。酸化物半導体層120の厚さが20nm未満の場合は閾値電圧(Vth)が増加し、PBTSが増加し、NBTISが減少し、s−ファクター(s−factor)が増加し、閾値電圧(Vth)のばらつきが増加する。閾値電圧(Vth)のばらつきは、閾値電圧(Vth)変化の程度を意味する。閾値電圧(Vth)のばらつきが大きいと閾値電圧(Vth)の均一度が低くなり、薄膜トランジスタの閾値電圧(Vth)が特定の値を有することができずに変化するため、薄膜トランジスタ100のスイッチング特性が低下し、信頼性が低下する。
【0075】
酸化物半導体層120の厚さは、50nm以下に調整することができる。より詳細には、酸化物半導体層120の厚さは、40nm以下、または30nm以下に調整することもできる。しかし、本発明の一実施形態に限定されるものではなく、酸化物半導体層120の厚さは、必要に応じて異なり得る。
【0076】
本発明の一実施形態によると、酸化物半導体層120は、C軸方向の結晶性を有している。より詳細には、本発明の一実施形態に係る酸化物半導体層120は、複数の結晶部(crystalline part)を有することができる。結晶部は結晶性を有する領域を意味する。C軸は、酸化物半導体層120の表面にほぼ垂直な方向(法線)を向く。
【0077】
酸化物半導体層120の結晶性は、酸化物半導体層120の成膜過程でなされる熱処理等によって形成することができる。このように、結晶性を有する酸化物半導体層120を含む薄膜トランジスタ100は、可視光線や紫外光の照射による特性の変動が小さい。結晶性を有する酸化物半導体層120は、未結晶の酸化物半導体層よりも低い欠陥密度(defect density)を有し、酸化物半導体層120で移動度の低下が抑制される。結晶性は透過型電子顕微鏡(TEM、Transmission Electron Microscope)によって観察することができる。
【0078】
本発明の一実施形態に係る酸化物半導体層120に対して、X線回折(XRD:X−Ray Diffraction)分析を実施する場合、回折角(2θ)32°付近でピークが現れる(
図19を参照)。回折角(2θ)32°でのピークは、C軸方向の結晶性に対応する。
【0079】
本発明の一実施形態によると、酸化物半導体層120は、18cm
2/V・s以上の移動度(Mobility)を有する。酸化物半導体層120が18cm
2/V・s以上の移動度を有する場合、薄膜トランジスタ100は、優れた電流特性を有することができる。本発明の一実施形態によると、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)およびスズ(Sn)の含有量を調節して、製造工程の条件を調節することにより、酸化物半導体層120が18cm
2/V・s以上の優れた移動度を有するようにすることができる。より詳細には、酸化物半導体層120は、20cm
2/V・s以上の移動度(Mobility)を有し得る。
【0080】
本発明の一実施形態に係る酸化物半導体層120が、優れた移動度を有するため、薄膜トランジスタ100が、優れた電流特性を有することができる。したがって、本発明の一実施形態に係る薄膜トランジスタ100は、大面積表示装置または高解像度の表示装置に適用され、表示装置が優れた表示特性を有するようにすることができる。
【0081】
また、酸化物半導体層120は、5x10
17個/cm
3以上のキャリア濃度を有する。より詳細には、酸化物半導体層120は、5x10
17個/cm
3〜1x10
19個/cm
3のキャリア濃度を有することができる。インジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)およびスズ(Sn)の含有量、蒸着温度および熱処理温度を調節することにより、キャリア濃度を調節し得る。
【0082】
本発明の一実施形態に係る酸化物半導体層120は、6.5g/cm
3以上の密度(packing density)を有する。詳細には、本発明の一実施形態に係る酸化物半導体層120は、6.5〜7.0g/cm
3の密度を有することができる。より詳細には、酸化物半導体層120は、6.5〜6.8g/cm
3の範囲の密度を有し得る。
【0083】
酸化物半導体材料として一般的に使用されているIGZO系酸化物半導体は、約6.3g/cm
3程度の密度を有する。一方、本発明の一実施形態に係る酸化物半導体層120は、6.5g/cm
3以上の密度を有することができる。それによって、本発明の一実施形態に係る酸化物半導体層120が結晶性を有することができ、酸化物半導体層120を含む薄膜トランジスタ100が可視光線や紫外光の照射に対する耐性を有することができる。その結果、可視光線や紫外光照射による薄膜トランジスタ100の特性の変動が減少して信頼性が向上する。
【0084】
本発明の一実施形態に係る酸化物半導体層120は、2.0x10
17spins/cm
3以下のスピン密度(spin density)を有する。スピン密度は、酸化物半導体層120の欠陥密度(defect density)を判断する尺度になり得る。ここで、欠陥密度は、酸化物半導体層120の原子の欠陥程度を意味する。より詳細には、欠陥密度は、酸素(O)原子の欠陥程度に対応することができる。酸化物半導体層120のスピン密度が2.0x10
17spins/cm
3以下である場合には、酸素の欠陥、例えば、酸素不足(O−vacancy)が防止されて、酸化物半導体層120が導体化されることが防止される。
【0085】
より詳細には、本発明の一実施形態に係る酸化物半導体層120は、1.5x10
17spins/cm
3以上のスピン密度(spin density)を有することができる。つまり、酸化物半導体層120は、1.5x10
17〜2.0x10
17spins/cm
3のスピン密度(spin density)を有することができる。
【0086】
以上の特性を有する本発明の一実施形態に係る酸化物半導体層120は、4μm以下のチャネル長を有するショートチャンネル(short channel)を形成することができる。ここで、チャネル長は、ソース電極130およびとドレイン電極140との間の距離として定義することができる。したがって、本発明の一実施形態に係る酸化物半導体層120が使用される場合、薄膜トランジスタ100の面積を減少することができ、超高密度または超高解像度の表示装置を製造することができる。
【0087】
ソース電極130は、酸化物半導体層120と接続して配置され、ドレイン電極140は、ソース電極130と離隔して酸化物半導体層120と接続される。
図1を参照すると、ソース電極130およびドレイン電極140は、ゲート絶縁膜150上に配置され、それぞれ酸化物半導体層120と、少なくとも一部重畳する。
【0088】
ソース電極130およびドレイン電極140は、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、金(Au)、チタニウム(Ti)、ニッケル(Ni)、ネオジウム(Nd)、銅(Cu)、及びこれらの合金のうち少なくとも一つを含むことができる。ソース電極130およびドレイン電極140は、それぞれ金属または金属の合金で作られた単一層からなることもあり、2層以上の多重層からなることもあり得る。
【0089】
図1に示すように、ゲート電極110が酸化物半導体層120の下に配置された構造をボトムゲート(bottom gate)構造とも呼ぶ。ここで、酸化物半導体層120、ゲート電極110、ソース電極130およびドレイン電極140が薄膜トランジスタ100を形成する。
【0090】
図2aは、本発明の他の一実施形態に係る薄膜トランジスタ200の断面図である。以下、重複を避けるために、既に説明した構成要素の説明は省略する。
【0091】
本発明の他の一実施形態による酸化物半導体層120は、複層の積層構造を有する。
図2aを参照すると、酸化物半導体層120は、順次に積層された第1層121および第2層122を有する。第2層122の酸素(O)含有量は、第1層121の酸素(O)含有量よりも多い。例えば、第2層122は、第1層121に比べて1.2〜2.5倍の酸素含有量を有することができる。したがって、第2層122の酸素損失が発生しても、第2層122は、半導体特性を発現するのに十分な程度の酸素含有量を維持することができる。
【0092】
図2aを参照すると、第2層122のうちの少なくとも一部の上部は、ソース電極130およびドレイン電極140から露出し、追加で形成される絶縁層などと接触することができる。ここで、第2層122で酸素損失が発生し得る。しかし、第2層122の酸素(O)含有量が第1層121の酸素(O)含有量よりも多いので、第2層122の酸素損失が発生しても、第2層122は、優れた半導体特性を維持することができる。
【0093】
本発明の他の一実施形態によると、チャネル領域は、酸化物半導体層120の第2層122に形成することができる。チャネル領域は、酸化物半導体層120の第1層121に形成することもできる。
【0094】
第2層122の厚さに特別な制限があるわけではない。製造工程の特性およびチャネル領域の安定性を考慮して、第2層122は、酸化物半導体層120の厚さの5〜20%の厚さを有することができる。しかし、本発明の他の一実施形態がそれに限定されるものではなく、第2層122の厚さは、酸化物半導体層120の厚さの5%未満であったり、酸化物半導体層120の厚さの20%を超過することもある。
【0095】
図2bは、本発明の他の一実施形態に係る薄膜トランジスタ201の断面図である。
図2bを参照すると、第2層122のうち、ソース電極130およびドレイン電極140と重畳しない領域の厚さは、ソース電極130およびドレイン電極140のうちの少なくとも一つと重畳する領域の厚さよりも厚い。第2層122は、プラズマ処理などによる酸素注入によって作ることもできるが、ここで、ソース電極130およびとドレイン電極140が遮断膜(shielding layer)の役割をする。その結果、第2層122のうち、ソース電極130またはドレイン電極140と重畳する領域は、そうではない領域よりも薄い厚さを有するように形成することができる。
【0096】
図3は、本発明のまた他の一実施形態に係る薄膜トランジスタ300の断面図である。
【0097】
図3に示す薄膜トランジスタ300は、基板101上に配置されたバッファ層160、バッファ層160上に配置された酸化物半導体層120、酸化物半導体層120と絶縁されて酸化物半導体層120と少なくとも一部重畳するゲート電極110、ゲート電極110と酸化物半導体層120との間に配置されたゲート絶縁膜150、ゲート電極110上に配置された層間絶縁膜170、酸化物半導体層120と接続されたソース電極130およびソース電極130と離隔して酸化物半導体層120と接続されたドレイン電極140を含む。
【0098】
バッファ層160は、シリコン酸化物及びシリコン窒化物のうち少なくとも一つを含むことができる。バッファ層160は、優れた絶縁性、優れた水分および酸素遮断特性および平坦化特性を有し、酸化物半導体層120を保護する。
【0099】
バッファ層160は、単一膜からなることもあり、2つ以上の膜が積層した積層構造を有することもあり得る。基板101とバッファ層160との間、またはバッファ層160には、光遮断層(未図示)を配置することもできる。光遮断層は、光から酸化物半導体層120を保護する。
【0100】
酸化物半導体層120は、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)、スズ(Sn)および酸素(O)を含み、インジウム(In)の含有量はガリウム(Ga)の含有量よりも多く、インジウム(In)の含有量と亜鉛(Zn)の含有量は実質的に同一であり、インジウム(In)に対するスズ(Sn)の含有量比(Sn/In)は0.1〜0.25である。
【0101】
酸化物半導体層120上にゲート絶縁膜150が配置され、ゲート絶縁膜150上にゲート電極110が配置される。ゲート電極110は、ゲート絶縁膜150によって酸化物半導体層120と絶縁される。
図3に、単一層からなるゲート絶縁膜150が示されている。
【0102】
層間絶縁膜170は、ゲート電極110上に配置される。層間絶縁膜170は、絶縁材料からなる。詳細には、層間絶縁膜170は、有機物からなることもあり、無機物からなることもあり、有機物層と無機物層の積層体からなることもある。
【0103】
層間絶縁膜170上にソース電極130およびドレイン電極140が配置される。ソース電極130とドレイン電極140は、互いに離隔してそれぞれ酸化物半導体層120と接続する。
図3を参照すると、層間絶縁膜170に形成されたコンタクトホールを通じてソース電極130とドレイン電極140がそれぞれ酸化物半導体層120と接続する。
【0104】
図3に示すように、ゲート電極110が酸化物半導体層120上に配置された構造をトップゲート(top gate)構造とも呼ぶ。酸化物半導体層120、ゲート電極110、ソース電極130およびドレイン電極140は、薄膜トランジスタ300を形成する。
【0105】
図4は、本発明のまた他の一実施形態に係る薄膜トランジスタ400の断面図である。
図4に示す薄膜トランジスタ400は、
図3に示す薄膜トランジスタ300と比較して、複層の積層構造からなる酸化物半導体層120を有する。
【0106】
図4を参照すると、酸化物半導体層120は、順次に積層された第1層121および第2層122を含む。ここで、第2層122の酸素(O)含有量は、第1層121の酸素(O)含有量よりも多い。第2層122の上部には層間絶縁膜170と接触する。第2層122は、比較的多い量の酸素(O)を含んでいるため、層間絶縁膜170との接触によって、第2層122で酸素損失が発生しても、第2層122は優れた半導体特性を維持することができる。
【0107】
図5は、本発明のまた他の一実施形態に係る薄膜トランジスタ500の断面図である。
【0108】
図5に示す薄膜トランジスタ500は、
図1に示す薄膜トランジスタ100と比較して、酸化物半導体層120上に配置されたエッチストッパー180をさらに含む。エッチストッパー180は絶縁物質、例えば、シリコン酸化物で作ることができる。エッチストッパー180は、酸化物半導体層120のチャネル領域を保護することができる。このように、本発明の一実施形態に係る酸化物半導体層120は、エッチストッパー構造の薄膜トランジスタ500に適用することができる。
【0109】
図6は、本発明のまた他の一実施形態に係る薄膜トランジスタ600の断面図である。
【0110】
図6に示す薄膜トランジスタ600は、
図2aに示す薄膜トランジスタ200と比較して、酸化物半導体層120上に配置されたエッチストッパー180をさらに含む。より詳細にはエッチストッパー180は、酸化物半導体層120の第2層122上に配置される。エッチストッパー180は絶縁物質、例えば、シリコン酸化物で作ることができ、酸化物半導体層120のチャネル領域を保護することができる。
【0111】
以下、
図7a〜7fを参照して、薄膜トランジスタ201の製造方法を説明する。
【0112】
図7a〜7fは、本発明の一実施形態に係る薄膜トランジスタ201の製造工程図である。
【0113】
図7aを参照すると、基板101上にゲート電極110が形成される。
【0114】
図に示していないが、ゲート電極110の形成前に、基板101上にバッファ層(未図示)を形成することができ、ゲート電極110は、バッファ層上に形成することができる。
【0115】
基板101としてガラスを使用することができ、曲げたり、たわみ得る透明なプラスチックを使用することもある。基板101に使用されるプラスチックの例としては、ポリイミドがある。プラスチックが基板101に使用される場合には、基板101が高耐久性材料からなるキャリア基板上に配置された状態で、製造工程を行うことができる。
【0116】
ゲート電極110は、アルミニウム(Al)やアルミニウム合金などのアルミニウム系列の金属、銀(Ag)や銀合金などの銀系列の金属、銅(Cu)や銅合金などの銅系列の金属、モリブデン(Mo)やモリブデン合金などのモリブデン系列の金属、クロム(Cr)、タンタル(Ta)、ネオジウム(Nd)およびチタン(Ti)のうち少なくとも一つを含むことができる。
【0117】
図7bを参照すると、ゲート電極110上にゲート絶縁膜150が形成される。
【0118】
図7bに示されたゲート絶縁膜150は、二つの絶縁膜151、152を含む。二つの絶縁膜151、152をそれぞれ第1ゲート絶縁膜151及び第2ゲート絶縁膜152とすることができる。しかし、ゲート絶縁膜150の構造が、これに限定されるものではなく、ゲート絶縁膜150は、単一膜からなることもあり、3層以上の膜からなることもあり得る。
【0119】
ゲート絶縁膜150は、シリコン酸化物、シリコン窒化物、および酸化アルミニウム(Al
2O
3)のうち少なくとも一つを含むことができる。例えば、シリコン酸化物、シリコン窒化物、および酸化アルミニウム(Al
2O
3)のうち少なくとも一つによって、第1ゲート絶縁膜151が形成され、その上にシリコン酸化物、シリコン窒化物、および酸化アルミニウム(Al
2O
3)のうちの少なくとも一つによって第2ゲート絶縁膜152が形成され得る。
【0120】
図7cを参照すると、ゲート絶縁膜150上に酸化物半導体層120が形成される。酸化物半導体層120は、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)、スズ(Sn)および酸素(O)を含む。
【0121】
酸化物半導体層120は、蒸着によって形成することができる。蒸着のためにインジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)およびスズ(Sn)を含む蒸着源を用いることができる。例えば、インジウム酸化物、ガリウム酸化物、亜鉛酸化物及びスズ酸化物を蒸着に使用することができる。または、インジウム−亜鉛酸化物、インジウム−スズ酸化物、インジウム−ガリウム酸化物、ガリウム−亜鉛酸化物などを蒸着に使用し得る。
【0122】
蒸着源の組成を調整することにより、インジウム(In)の含有量がガリウム(Ga)の含有量よりも多く、インジウム(In)の含有量と亜鉛(Zn)の含有量は実質的に同一であり、インジウム(In)に対するスズ(Sn)の含有量比(Sn/In)が0.1〜0.25である酸化物半導体層120を作成することができる。
【0123】
蒸着は、150℃以上の温度で行われる。より詳細には、蒸着は150〜250℃の温度で行うことができる。本発明の一実施形態によると、150℃以上の高温で行う高温蒸着によって酸化物半導体層120が形成されるので、酸化物半導体層120は、6.5g/cm
3以上の密度(packing density)を有することができ、C軸方向の結晶性を有することができ、2.0x10
17spins/cm
3以下のスピン密度(spin density)を有し、低い欠陥密度(defect density)を有することができる。
【0124】
蒸着が150℃未満の温度で行われる場合には、酸化物半導体層120が6.5g/cm
3未満の密度(packing density)を有するか、C軸方向の結晶性を有し得ないか、2.0x10
17spins/cm
3を超えるスピン密度(spin density)を有して高い欠陥密度(defect density)を有し得る。それによって、酸化物半導体層120のPBTS特性およびNBTIS特性が低下し得る。
【0125】
酸化物半導体層120は、20nm以上の厚さで形成される。酸化物半導体層120の厚さが20nm未満の場合には、閾値電圧(Vth)、PBTS、s−ファクター(s−factor)および閾値電圧(Vth)のばらつきが増加し得る。酸化物半導体層120は、20〜50nmの厚さで形成することができ、より詳細には20〜40nmの厚さ、または20〜30nmの厚さで形成することができる。
【0126】
図7dを参照すると、酸化物半導体層120上にソース電極130およびとドレイン電極140が形成される。ソース電極130およびとドレイン電極140は、互いに離隔してそれぞれ酸化物半導体層120と接続される。
【0127】
図7eを参照すると、酸化物半導体層120がプラズマ処理される。プラズマ処理は、N
2Oガスを利用して行うことができる。プラズマ処理工程で2.0〜2.5kW/m
2のエネルギーが印加され得る。より詳細には、2.0〜2.5kW/m
2のエネルギーがN
2Oガスに印加されて、酸化物半導体層120がプラズマ処理される。このように、プラズマ処理された酸化物半導体層120を有する薄膜トランジスタ201は、酸素欠乏などの悪条件下でも優れた駆動特性を有することができる。
【0128】
プラズマ処理エネルギーが2.0kW/m
2未満の場合。悪条件下での薄膜トランジスタの駆動特性が低下し得る。一方、2.5kW/m
2を超えるエネルギーでプラズマ処理される場合には、PBTSが上昇し、薄膜トランジスタの信頼性が低下し得る。
【0129】
図7fを参照すると、プラズマ処理によって酸化物半導体層120に第2層122が形成される。詳細には、プラズマ処理によって酸化物半導体層120の上部に酸素が注入されて、酸化物半導体層120の一部が、第2層122となる。ここで、プラズマ処理の影響を受けないか、または少なく受ける酸化物半導体層120の領域は、第1層121となる。第1層121は、プラズマ処理前の酸化物半導体層120と同一又は類似の組成を有する。
【0130】
第2層122は、第1層121よりも多くの量の酸素(O)を含む。例えば、第2層122は、第1層121に比べて1.2〜2.5倍の酸素含有量を有し得る。
【0131】
プラズマ処理によって形成された第2層122は、酸化物半導体層120全体の厚さの5〜20%の厚さを有し得る。
【0132】
図7fを参照すると、第2層122のうちソース電極130およびとドレイン電極140と重畳しない領域の厚さが、ソース電極130およびとドレイン電極140のうち少なくとも1つと重畳する領域の厚さよりも厚い。プラズマ処理による酸素注入により、第2層122は作成時に、ソース電極130およびとドレイン電極140は酸素注入を遮断する遮断膜(shielding layer)の役割をする。その結果、第2層122のうちソース電極130またはドレイン電極140と重畳する領域は、そうでない領域よりも薄い厚さを有するようになる。
【0133】
プラズマ処理工程は省略することもできる。プラズマ処理工程を省略する場合には、
図1に示すような薄膜トランジスタ100が作成され得る。
【0134】
次に、酸化物半導体層120に対して熱処理をなすことができる。酸化物半導体層120に対するプラズマ処理が行われない場合、酸化物半導体層120の形成に続いて熱処理工程を進行することができる。
【0135】
熱処理は、300℃以上の温度で行う。詳細には、熱処理は、300〜400℃の温度で行うことができる。より詳細には、熱処理は、350〜400℃の温度で行うことができる。
【0136】
300℃以上の温度で行われた熱処理によって酸化物半導体層120は、6.5g/cm
3以上の密度(packing density)、C軸方向の結晶性および2.0x10
17spins/cm
3以下のスピン密度(spin density)を有し、低い欠陥密度(defect density)を有し得る。
【0137】
熱処理温度が300℃未満の場合には、酸化物半導体層120が6.5g/cm
3未満の密度(packing density)を有するか、C軸方向の結晶性を有することができないか、2.0x10
17spins/cm
3を超えるスピン密度(spin density)を有し、高い欠陥密度(defect density)を有し得る。それによって、酸化物半導体層120のPBTS特性およびNBTIS特性が低下し得る。
【0138】
熱処理温度が400℃を超える場合には、熱によって酸化物半導体層120または薄膜トランジスタ201が損傷し得、熱処理に過度のコストがかかり得る。
【0139】
このような熱処理によって、
図2bに示した薄膜トランジスタ201が完成し得る。図に示していないが、酸化物半導体層120上にエッチストッパー180を形成することもできる(
図5および
図6を参照)。
【0140】
図7a〜7fには、基板101上にゲート電極110、ゲート絶縁膜150および、酸化物半導体層120が順に形成されるボトムゲート構造を有する薄膜トランジスタ201の製造工程を示しているが、薄膜トランジスタの製造方法がこれに限定されるのではない。
【0141】
基板101上に、酸化物半導体層120、ゲート絶縁膜150およびゲート電極110を順次に形成することもできる。この場合、
図3または
図4に示すようなトップゲート構造の薄膜トランジスタ300、400を製造することができる。
【0142】
図8は、本発明のまた他の一実施形態に係る表示装置700の概略的な断面図である。
【0143】
本発明のまた他の一実施形態に係る表示装置700は、基板101、薄膜トランジスタ100および薄膜トランジスタ100と接続された有機発光素子270を含む。
【0144】
図8には、
図1の薄膜トランジスタ100を含む表示装置700が示されているが、
図1の薄膜トランジスタ100の他に、
図2a、2b、3、4、5および6に開示された薄膜トランジスタ200、201、300、400、500、600が、
図8の表示装置700に適用され得る。
【0145】
図8を参照すると、本発明のまた他の一実施形態に係る表示装置700は、基板101、基板101上に配置された薄膜トランジスタ100、薄膜トランジスタ100と接続された第1電極271を含む。また、表示装置700は、第1電極271上に配置された有機層272および有機層272上に配置された第2電極273を含む。
【0146】
詳細には、基板101は、ガラスまたはプラスチックで作ることができる。基板101上にはバッファ層191を配置する。バッファ層191は省略することができる。
【0147】
薄膜トランジスタ100は、基板101上のバッファ層191上に配置される。薄膜トランジスタ100は、基板101上に配置されたゲート電極110、ゲート電極110と絶縁されてゲート電極110の電極の少なくとも一部と重畳する酸化物半導体層120、ゲート電極110と酸化物半導体層120との間に配置されたゲート絶縁膜150、酸化物半導体層120と接続されたソース電極130およびソース電極130と離隔して酸化物半導体層120と接続されたドレイン電極140を含む。
【0148】
平坦化膜190は、薄膜トランジスタ100上に配置されて基板101の上部を平坦化する。平坦化膜190は、感光性を有するアクリル樹脂のような有機絶縁材料からなり得るが、必ずしもそれに限定されるのではない。
【0149】
第1電極271は、平坦化膜190上に配置される。第1電極271は、平坦化膜190に備えられたコンタクトホールを通じて薄膜トランジスタ100のドレイン電極140と接続する。
【0150】
バンク層250は、第1電極271および平坦化膜190上に配置されて画素領域または発光領域を定義する。例えば、バンク層250が複数の画素間の境界領域にマトリックス構造で配置されることで、バンク層250によって画素領域が定義され得る。
【0151】
有機層272は、第1電極271上に配置される。有機層272は、バンク層250上にも配置することができる。つまり、有機層272は、画素別に分離されず、隣接する画素間に互いに接続し得る。
【0152】
有機層272は、有機発光層を含む。有機層272は、一つの有機発光層を含むこともでき、上下に積層された2つの有機発光層またはそれ以上の有機発光層を含むこともできる。これらの有機層272では、赤色、緑色および青色のいずれかの色を有する光が放出され得、白色(White)光が放出されることもある。
【0153】
第2電極273は、有機層272上に配置される。
【0154】
第1電極271、有機層272及び第2電極273を積層して有機発光素子270をなすことができる。有機発光素子270は、表示装置700で光量調節層の役割をすることができる。
【0155】
図示されていないが、有機層272が白色(White)光を発光する場合には、個々の画素は、有機層272から放出される白色(White)光を波長ごとにフィルタリングするためのカラーフィルタを含むことができる。カラーフィルタは、光の移動経路上に形成される。有機層272から放出された光が下部の基板101の方向に進行するいわゆるボトムエミッション(Bottom Emission)方式である場合には、カラーフィルタが有機層272の下に配置され、有機層272から放出された光が上部の第2電極273の方向に進行するいわゆるトップエミッション(Top Emission)方式である場合には、カラーフィルタが有機層272の上に配置される。
【0156】
図9は、本発明のまた他の一実施形態に係る表示装置800の概略的な断面図である。
【0157】
図9を参照すると、本発明のまた他の一実施形態に係る表示装置800は、基板101、基板101上に配置された薄膜トランジスタ100、薄膜トランジスタ100と接続された第1電極381を含む。また、表示装置800は、第1電極381上の液晶層382および液晶層382上の第2電極383を含む。
【0158】
液晶層382は、光量調節層として作用する。このように、
図9に示された表示装置800は、液晶層382を含む液晶表示装置である。
【0159】
詳細には、
図9の表示装置800は、基板101、薄膜トランジスタ100、平坦化膜190、第1電極381、液晶層382、第2電極383、バリア層320、カラーフィルタ341、342、遮光部350および対向基板102を含む。
【0160】
基板101は、ガラスまたはプラスチックで作ることができる。
【0161】
薄膜トランジスタ100は、基板101上で配置される。
【0162】
図9を参照すると、基板101上にバッファ層191が配置され、バッファ層191上にゲート電極110が配置され、ゲート電極110上に第1ゲート絶縁膜151及び第2ゲート絶縁膜152からなるゲート絶縁膜150が配置され、ゲート絶縁膜150上に酸化物半導体層120が配置され、酸化物半導体層120上にソース電極130とドレイン電極140が配置され、ソース電極130とドレイン電極140上に平坦化膜190が配置される。
【0163】
ゲート電極110が酸化物半導体層120の下に配置されるボトムゲート(bottom gate)構造の薄膜トランジスタ100が
図9に示されているが、本発明のまた他の一実施形態が、これに限定されるわけではない。ゲート電極110が酸化物半導体層120上に配置されているトップゲート(top gate)構造の薄膜トランジスタが使用され得る。より詳細には、
図1に示された薄膜トランジスタ100の他に、
図2a、2b、3、4、5および6に開示され薄膜トランジスタ200、201、300、400、500、600を、
図9の表示装置800に適用することができる。
【0164】
平坦化膜190は、薄膜トランジスタ100上に配置されて基板101の上部を平坦化する。平坦化膜190は、感光性を有するアクリル樹脂のような有機絶縁材料からなり得るが、必ずしもそれに限定されるものではない。
【0165】
第1電極381は、平坦化膜190上に配置される。第1電極381は、平坦化膜190に備えられたコンタクトホール(CH)を通じて薄膜トランジスタ100のドレイン電極140と接続される。
【0166】
対向基板102は、基板101に対向して配置される。
【0167】
対向基板102上に遮光部350が配置される。遮光部350は、複数の開口部を有する。複数の開口部は、画素電極である第1電極381に対応して配置される。遮光部350は、開口部を除いた部分での光を遮断する。遮光部350は、必ずしも必要なわけではなく、省略することもできる。
【0168】
カラーフィルタ341、342は、対向基板102上に配置され、バックライト部(未図示)から入射した光の波長を選択的に遮断する。詳細には、カラーフィルタ341、342は、遮光部350によって定義される複数の開口部に配置され得る。
【0169】
それぞれのカラーフィルタ341、342は、赤色、緑色、青色のいずれか一つの色を表現することができる。それぞれのカラーフィルタ341、342は、赤色、緑色、青色以外の他の色を表現することもできる。
【0170】
カラーフィルタ341、342と遮光部350上にバリア層320を配置することができる。バリア層320は省略することができる。
【0171】
第2電極383は、バリア層320上に配置される。例えば、第2電極383は、対向基板102の全面に位置することができる。第2電極383は、ITOまたはIZOなどの透明な導電物質からなり得る。
【0172】
第1電極381と第2電極383は、対向して配置され、その間に液晶層382が配置される。第2電極383は、第1電極381とともに液晶層382に電界を印加する。
【0173】
基板101と対向基板102との間の向かい合った面を、それぞれ該当基板の上部面と定義し、その上部面の反対側に位置する面を、それぞれ該当基板の下部面と定義する場合、基板101の下部面と対向基板102の下部面にそれぞれ偏光板を配置することができる。
【0174】
以下、実施例、比較例及び試験例を参照して本発明をより詳細に説明する。
【0175】
[比較例1〜3]
図1に示した構造を有する比較例1〜3の薄膜トランジスタを製造した。
【0176】
詳細には、ガラスからなる基板101上にゲート電極110を形成し、その上に第1ゲート絶縁膜151及び第2ゲート絶縁膜152を形成し、表1の組成比にしたがって30nm厚の酸化物半導体層120を形成した。その後、ソース電極130とドレイン電極140を形成した。
【0177】
このように製造した比較例1〜3の薄膜トランジスタに対して閾値電圧(Vth)、移動度(Mobility)およびNBTISを測定した。
【0178】
閾値電圧(Vth)測定のために、−20V〜+20V範囲のゲート電圧(Vgs)を印加しながらドレイン電流(Ids)を測定した。ソース電極130とドレイン電極140との間には、10Vの電圧が印加された。
図10、11および12は、それぞれ比較例1、2および3の薄膜トランジスタの閾値電圧(Vth)の測定結果を示す。
【0179】
また、ホール測定方法(Hall measurement)にしたがって移動度(Mobility)を測定した。また、60℃の温度で比較例1、2、および3の薄膜トランジスタに4500nitの可視光(白色光)を照射しつつ、負(−)のバイアス電圧を印加してNBTISを測定した。その結果は、以下の表1のとおりである。
【0181】
図10、11、12で「Initial」は、初期の電流変化を示し、「Before Stress」は、温度および光が印加される前の電流変化を示し、「After Stress」は薄膜トランジスタに60℃の温度と4500nitの可視光(白色光)が印加された後の電流の変化を示す。
【0182】
図10、11、12、および表1を参照すると、比較例1の薄膜トランジスタは、NBTIS特性は良好であるが、移動度特性が良くなく、比較例2及び3の薄膜トランジスタは、NBTIS特性が良くなく信頼性が不足するということを確認することができる。
【0183】
[比較例4及び実施例1〜2]
酸化物半導体層120の厚さによる薄膜トランジスタの特性を確認するために、
図1に示された構造を有する薄膜トランジスタを製造した(比較例4、実施例1および2)。比較例1の薄膜トランジスタと同じ方法で薄膜トランジスタを製造するが、ただし酸化物半導体層120の組成は異なるようにした。以下、他の説明がない限り、薄膜トランジスタは、
図1の構造を有し、比較例1の薄膜トランジスタと同じ方法で製造することができる。
【0184】
詳細には、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)およびスズ(Sn)が4:1:4:1の比(原子数比率)で混合されてなる酸化物半導体層120を有する比較例4および実施例1〜2の薄膜トランジスタを製造した。ここで、比較例4、実施例1及び実施例2で酸化物半導体層120の厚さは、それぞれ10nm、20nm、および30nmになるようにした。
【0185】
閾値電圧(Vth)測定のために、−20V〜+20V範囲のゲート電圧(Vgs)印加しつつ、比較例4および実施例1〜2による薄膜トランジスタのドレイン電流(Ids)を測定した。ソース電極130およびとドレイン電極140との間には、10Vの電圧を印加した。閾値電圧(Vth)は、9回測定した。
図13、14および15は、比較例4および実施例1、2の薄膜トランジスタの閾値電圧(Vth)の測定結果を示す。
【0186】
閾値電圧(Vth)のばらつきを測定するために、ゲート電圧(Vgs)を測定した。このとき測定されたゲート電圧(Vgs)の最大値と最小値の差を「閾値電圧(Vth)のばらつき」と定義した。また、60℃の温度ストレス下で比較例4および実施例1〜2の薄膜トランジスタに正(+)のバイアス電圧を印加しながらPBTS測定した。その結果は、表2のとおりである。
【0188】
図13、14、15、および表2を参照すると、比較例4の薄膜トランジスタは、閾値電圧(Vth)のばらつきが大きいため、閾値電圧(Vth)の均一度が低く、駆動特性が良くなく、PBTSが大きいため、信頼性が良くない。
【0189】
一方、実施例1及び2による薄膜トランジスタは、閾値電圧(Vth)のばらつきが小さく、優れた駆動特性を有し、PBTSが小さく、優れた信頼性を有する。
【0190】
[蒸着温度および熱処理温度評価]
蒸着温度および熱処理温度による酸化物半導体層120の特性を確認するためには、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)およびスズ(Sn)が4:1:4:1の比(原子数比率)で混合して行い、30nmの厚さを有する酸化物半導体層120試料を製造した。ここで、酸化物半導体層120を形成するための蒸着温度と蒸着した後の熱処理温度を表3のように調整して、酸化物半導体層120の試料であるS11、S12、S13、S14、S15、およびS16を製造した。
【0192】
酸化物半導体層120の試料であるS11、S12、S13、S14およびS15に対してスピン密度(spin density)を測定し、S11、S12、S13、S14、S15およびS16に対して密度(packing density、または体積密度)を測定した。
図16は、酸化物半導体層120試料に対するスピン密度の測定結果を示し、
図17は、酸化物半導体層120試料に対する密度(packing density)の測定結果を示す。
図16及び
図17の「蒸着(℃)」は、蒸着温度を示し、「後熱処理(℃)」は、蒸着後の熱処理温度を示す。
【0193】
図16を参照すると、常温(30℃±20℃)での蒸着によって形成されて300℃以上の温度、より詳細には、350℃の温度で熱処理された酸化物半導体層120の試料S11は、2.0x10
17spins/cm
3を超えるスピン密度を有する。スピン密度は、酸化物半導体層120の欠陥密度(defect density)を判断する尺度になり得る。欠陥密度は、酸化物半導体層120の原子の欠陥の程度を示すもので、例えば、酸素(O)原子の欠陥程度に対応することができる。2.0x10
17spins/cm
3を超えるスピン密度を有するS11の場合、酸素の欠陥に起因する導体化が誘発され得る。
【0194】
図17を参照すると、150℃未満の温度で蒸着してなる酸化物半導体層120の試料S11、S12およびS13は、6.5g/cm
3未満の密度を有する。酸化物半導体層120が6.5g/cm
3未満の密度を有する場合には、原子欠陥が誘発され得、それによって酸化物半導体層120のチャネル領域で導体化が進み得る。
【0195】
一方、150℃以上の温度で蒸着して形成され、400℃で熱処理された酸化物半導体層120の試料S14、S15およびS16は、2.0x10
17spins/cm
3以下のスピン密度および6.5g/cm
3以上の密度(packing density)を有することを確認することができる。
【0196】
図18a〜18eは、それぞれ酸化物半導体層120の試料に対する透過型電子顕微鏡(TEM、Transmission Electron Microscope)写真である。より詳細には、
図18a、18b、18c、18dおよび18eは、それぞれ酸化物半導体層120の試料S12、S13、S14、S15およびS16の透過型電子顕微鏡(TEM、Transmission Electron Microscope)写真である。透過型電子顕微鏡(TEM)写真によって試料の結晶性を確認することができる。
【0197】
図18dおよび18eを参照すると、試料S15およびS16は、C軸方向の結晶性を有することを確認することができる。また、
図18cを参照すると、試料S14でC軸方向に沿って結晶性が生じ始めていることを確認することができる。つまり、150℃以上の温度で蒸着して形成され、400℃で熱処理された酸化物半導体層120は、C軸方向の結晶性を有するとすることができる。一方、試料S12およびS13は、C軸方向の結晶性を有し得ないことを確認することができる。
【0198】
詳細には、本発明の一実施形態に係る酸化物半導体層120の試料であるS14、S15、S16は、C軸方向の結晶性を有する。ここで、C軸は酸化物半導体層120の表面にほぼ垂直な方向(法線)を向く。結晶性を有する酸化物半導体層120は、未結晶酸化物半導体層に比べて低い欠陥密度(defect density)を有し、酸化物半導体層120での移動度も低下が抑制される。
【0199】
図19は、酸化物半導体層120に対するX線回折(XRD)分析結果である。
【0200】
より詳細には、
図19は、酸化物半導体層120の試料S15のX線回折(XRD:X−Ray Diffraction)分析結果である。
図19を参照すると、回折角(2θ)32°付近でピークが現れる。回折角(2θ)32°付近でのピークは、C軸結晶性に対応する。このような結晶性を有する酸化物半導体層120を含む薄膜トランジスタ100は、可視光線や紫外光の照射による駆動特性の変動が防止または抑制される。
【0201】
図20および21は、それぞれ、酸化物半導体層の試料を用いて製造された薄膜トランジスタの閾値電圧(Vth)測定結果である。詳細には、
図20は、酸化物半導体層120の試料S12を用いて製造された薄膜トランジスタの閾値電圧(Vth)のグラフであり、
図21は、酸化物半導体層120の試料S15を用いて製造された薄膜トランジスタの閾値電圧(Vth)のグラフである。
【0202】
酸化物半導体層120の試料S12およびS15を用いて、それぞれ比較例1に開示された方法で、
図1の構造を有する薄膜トランジスタを製造した後、閾値電圧(Vth)の測定のために、−20V〜+20V範囲のゲート電圧(Vgs)印加しながらドレイン電流(Ids)を測定した。ここで、ソース電極130とドレイン電極140との間の電圧を10Vに維持した。閾値電圧(Vth)は、9回測定した。
【0203】
図20を参照すると、酸化物半導体層120の試料S12を用いて製造された薄膜トランジスタは、閾値電圧(Vth)のばらつきが大きいため、素子として使用することは難しい。一方、
図21を参照すると、酸化物半導体層120の試料S15を用いて製造された薄膜トランジスタは、良好なトランジスタ特性を有することを確認することができる。
【0204】
[スズ(Sn)の含有量による酸化物半導体層の特性評価]
スズ(Sn)の含有量による酸化物半導体層120の特性を確認するために、4:1:4の比(原子数比率)のインジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)を含み、インジウム(In)に対するスズ(Sn)の割合(Sn/In)が表4のような酸化物半導体層120および薄膜トランジスタを製造した(S21、S22、S23、S24、およびS25)。表4でインジウム(In)に対するスズ(Sn)の割合(Sn/In)を%で表示した。%で示された割合は、次の式1で求めることができる。
[数1]
Sn/In比率(%)=[(Snの原子数)/(Inの原子数)]x100
【0206】
図22は、酸化物半導体層120の試料に対する移動度およびキャリア濃度の測定結果である。詳細には、酸化物半導体層120の試料S21、S22、S23、S24およびS25に対して移動度(Hall Mobility)およびキャリア濃度(Carrier Concentration)を測定し、その結果を
図22に示した。
【0207】
図22を参照すると、インジウム(In)に対するスズ(Sn)の割合(Sn/In)が10%未満の場合、酸化物半導体層120の移動度が18cm
2/V・s未満であり、キャリア濃度が5x10
17個/cm
3未満である。また、インジウム(In)に対するスズ(Sn)の割合(Sn/In)が25%を超えても移動度、キャリア濃度がそれ以上増加しないことを確認することができる。
【0208】
図23は、酸化物半導体層120の試料に対する密度(packing density)およびスピン密度(spin density)の測定結果である。詳細には、酸化物半導体層120の試料S21、S22、S23、S24およびS25に対して密度とスピン密度を測定し、その結果を
図23に示した。
【0209】
図23を参照すると、インジウム(In)に対するスズ(Sn)の割合(Sn/In)が10〜25%である酸化物半導体層120の試料(S22、S23)の場合には、密度が6.5g/cm
3以上である。インジウム(In)に対するスズ(Sn)の割合(Sn/In)が10%未満に減少する場合(S21)、酸化物半導体層120の密度(packing density)は減少し、スピン密度は増加する。また、インジウム(In)に対するスズ(Sn)の割合(Sn/In)が25%を超えて増加する場合(S24、S25)にも、酸化物半導体層120の密度(packing density)は減少して、スピン密度は増加することを確認することができる。
【0210】
図24は、薄膜トランジスタの移動度(Mobility)および閾値電圧(Vth)の測定結果である。詳細には、
図24は、表4の組成によって製造された酸化物半導体層120試料をそれぞれ含む薄膜トランジスタの移動度(Mobility)および閾値電圧(Vth)の測定結果である。
【0211】
図24を参照すると、インジウム(In)に対するスズ(Sn)の割合(Sn/In)が10%未満の場合、酸化物半導体層120の移動度が18cm
2/V・s未満に低下し、閾値電圧(Vth)が上昇する。また、インジウム(In)に対するスズ(Sn)の割合(Sn/In)が25%を超えても移動度は増加せず、一方、閾値電圧(Vth)が負(−)の値に減少する。
【0212】
図25は、薄膜トランジスタのPBTSおよびNBTIS測定結果である。
【0213】
図25を参照すると、インジウム(In)に対するスズ(Sn)の割合(Sn/In)が10%未満の酸化物半導体層を含む薄膜トランジスタのPBTSが増加し、NBTISの絶対値も増加する。また、インジウム(In)に対するスズ(Sn)の割合(Sn/In)が25%を超える酸化物半導体層を含む場合には、薄膜トランジスタのPBTSが増加し、NBTISの絶対値もまた増加する。S24に対応するインジウム(In)に対するスズ(Sn)の割合(Sn/In)が56.8%である酸化物半導体層を含む場合には、薄膜トランジスタのNBTISが異常逆行する挙動を示し、NBTISの測定が不可能だった(X領域)。
【0214】
図26、27、28、29および30は、それぞれ、表4の組成によって製造された酸化物半導体層120を含む薄膜トランジスタの閾値電圧(Vth)の測定結果を示す。
【0215】
一方、表4の組成によって製造された酸化物半導体層120を含む薄膜トランジスタの閾値電圧(Vth)、移動度、s−ファクター、PBTSおよびNBTIS測定結果は、表5のとおりである。
【0217】
s−ファクター(s−factor)は、ゲート電圧に対するドレイン電流特性のグラフでスイッチング素子として動作する区間での傾きの逆数値を示す。
図26、27、28、29および30を用いて測定されたS−ファクターは、表5に開示された通りである。表5を参照すると、インジウム(In)に対するスズ(Sn)の割合(Sn/In)が25%を超えている場合には、s−ファクターが増加して薄膜トランジスタのスイッチング特性が低下するということを確認することができる。
【0218】
プラズマ処理による酸化物半導体層120の安定性の向上を試験するために、表4のS23組成による酸化物半導体層120を有する薄膜トランジスタを3つ製造した後(S31、S32、S33)、N
2Oガスを用いて、酸化物半導体層120をプラズマ処理した。プラズマ処理の強度は、以下の表6のとおりである。また、悪条件下での薄膜トランジッタの駆動特性を確認するためには、プラズマ処理された酸化物半導体層120上に過度の酸素欠乏を有するシリコン酸化物(SiO2−xHx、xは0.5以上)からなる絶縁層を形成した。
【0219】
その後、薄膜トランジスタS31、S32およびS33に対する閾値電圧(Vth)のばらつき、移動度、s−ファクター、PBTSおよびNBTISを測定し、その結果は、表6のとおりである。
【0221】
図31、32および33は、それぞれ薄膜トランジスタS31、S32、およびS33の閾値電圧(Vth)の測定結果を示す。
【0222】
酸化物半導体層120上に過度な酸素欠乏を有するシリコン酸化物が形成された悪条件試験の結果、酸化物半導体層120に2.0kW/m
2未満のエネルギーでN
2Oプラズマ処理をする場合には、薄膜トランジスタの閾値電圧ばらつきが大きくなり、s−ファクターが増加し、薄膜トランジスタの挙動が不安定で、移動度、PBTSおよびNBTISの測定が不可能であることを確認することができる。
【0223】
一方で、酸化物半導体層120に2.0kW/m
2以上のエネルギーでN
2Oプラズマ処理をする場合には、過度な酸素欠乏を有する悪条件のシリコン酸化物が酸化物半導体層120上に形成されても、薄膜トランジスタの駆動特性が良好に維持されることを確認することができる。一般的に、N
2Oプラズマ処理時に薄膜トランジスタのs−ファクターが低下することが知られている。しかし、本発明の一実施形態に係る薄膜トランジスタの場合N
2Oプラズマ処理時の薄膜トランジスタのs−ファクターが良好なレベルに維持されることを確認することができる。
【0224】
ただし、2.5kW/m
2を超えるエネルギーでN
2Oプラズマ処理される場合には、PBTSが上昇し、薄膜トランジスタの信頼性が低下する。
【0225】
したがって、プラズマ処理エネルギーは2.0〜2.5kW/m
2の範囲で調整することができる。
【0226】
以上で説明した本発明は、前述した実施形態及び添付の図によって限定されるものではなく、本発明の技術的事項を逸脱しない範囲内で、複数の置換、変形及び変更が可能であることが、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者にとって明らかであろう。したがって、本発明の範囲は、後述する特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味、範囲およびその等価概念から導出されるすべての変更または変形された形態が本発明の範囲に含まれるものと解釈されなければならない。