特許第6599559号(P6599559)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6599559可変入力電圧及び可変ダイオードストリング電圧を用いるレーザダイオードドライバ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6599559
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】可変入力電圧及び可変ダイオードストリング電圧を用いるレーザダイオードドライバ
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/042 20060101AFI20191021BHJP
   H02M 3/28 20060101ALI20191021BHJP
   H02M 3/155 20060101ALI20191021BHJP
   H01S 3/0941 20060101ALI20191021BHJP
【FI】
   H01S5/042 630
   H02M3/28 QZAB
   H02M3/155 R
   H01S3/0941
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-529150(P2018-529150)
(86)(22)【出願日】2016年10月4日
(65)【公表番号】特表2018-538695(P2018-538695A)
(43)【公表日】2018年12月27日
(86)【国際出願番号】US2016055248
(87)【国際公開番号】WO2017099872
(87)【国際公開日】20170615
【審査請求日】2018年6月5日
(31)【優先権主張番号】14/960,515
(32)【優先日】2015年12月7日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503455363
【氏名又は名称】レイセオン カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】スティフラー,ローバート エフ.
(72)【発明者】
【氏名】オルティス,ジョー エー.
(72)【発明者】
【氏名】トッド,フィリップ シー.
(72)【発明者】
【氏名】レイザー,ジェームズ
【審査官】 村井 友和
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0268026(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0291512(US,A1)
【文献】 特開2000−116120(JP,A)
【文献】 特開2008−011697(JP,A)
【文献】 特開2014−217257(JP,A)
【文献】 特開2011−044678(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 3/00−5/50
H01L 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続的なドライバ信号を生成するように互いに並列に接続された、複数のカスケード接続されたダイオードドライバと、
前記複数のダイオードドライバと信号通信するポンプ源であり、前記連続的なドライバ信号に応答して放射エネルギーを生成するように構成されたポンプ源と、
前記ポンプ源から下流に配置されたレーザ素子であり、前記放射エネルギーによる刺激に応答してレーザビームを生成するように構成されたレーザ素子と、
前記複数のダイオードドライバと信号通信する電子的なコントローラであり、前記複数のダイオードドライバを固定周波数で動作させる少なくとも1つのドライバ信号を出力するように構成されたコントローラと
を有し、
前記少なくとも1つのドライバ信号は、前記複数のダイオードドライバのうちの第1のカスケードダイオードドライバを、前記複数のダイオードドライバのうちの第2のカスケードダイオードドライバに対して90度の位相ずれで動作させ、
各ダイオードドライバが、
入力電源と信号通信して、入力電圧を、調整された出力信号へと変換するバックレギュレータ回路と、
前記バックレギュレータ回路及び前記コントローラと信号通信して前記固定周波数で動作する絶縁直列共振DC−DCコンバータであり、共振周波数又はその近傍で動作する共振タンク回路を含む絶縁直列共振DC−DCコンバータと
を有し、
前記バックレギュレータ回路は、
前記入力電源と信号通信する複数のスイッチを含むスイッチングユニットであり、第1の電圧を有する前記入力電圧を、各絶縁直列共振DC−DCコンバータに供給される前記調整された出力信号へと変換するように構成されたスイッチングユニットと、
前記スイッチングユニットのスイッチング損失を低減させるように、前記スイッチングユニットからのエネルギーを吸収するように構成されたエネルギーリサイクルユニットと
を有し、
前記エネルギーリサイクルユニットは更に、
スイッチ作動イベントに応答して、前記スイッチングユニットを流れる電流の上昇を制御するように、前記スイッチングユニットに印加される全電圧を吸収するように構成されたターンオンスナバ回路と、
スイッチ作動解除イベントに応答して、前記スイッチングユニット及び前記ターンオンスナバ回路から電流を受け取るように構成されたターンオフスナバ回路と
を有する、
高出力レーザシステム。
【請求項2】
前記コントローラは、前記スイッチングユニット内の前記スイッチを固定周波数で交番的に作動させるレギュレータスイッチ制御信号を生成する、請求項に記載の高出力レーザシステム。
【請求項3】
前記絶縁直列共振DC−DCコンバータは、
前記バックレギュレータ回路に接続され、前記調整された出力信号に基づいて、前記入力電圧と振幅において略等しい電圧の矩形波を生成するスイッチングユニットと、
前記矩形波を、整流された矩形波へと変換する整流回路と
を有し、
前記共振タンク回路は、前記共振タンク回路によって規定される前記共振周波数で該スイッチングユニットを動作させるように、該スイッチングユニットと該整流回路との間に接続される、
請求項に記載の高出力レーザシステム。
【請求項4】
前記共振タンク回路は、共振インダクタと直列に接続されて前記共振周波数を規定する共振キャパシタを含むLC共振タンク回路である、請求項に記載の高出力レーザシステム。
【請求項5】
前記絶縁直列共振DC−DCコンバータ内の前記スイッチングユニットは、フルブリッジスイッチングユニットを画成するように接続された複数の半導体スイッチを含む、請求項に記載の高出力レーザシステム。
【請求項6】
前記整流回路は、全波整流器を形成するように接続された複数のダイオードを含む、請求項に記載の高出力レーザシステム。
【請求項7】
高出力レーザシステムを制御する方法であって、
互いに並列に接続された、複数のカスケード接続されたダイオードドライバにより、連続的なドライバ信号を生成することと、
コントローラにより、前記複数のダイオードドライバを固定周波数で動作させることと
を有し、
前記複数のダイオードドライバのうちの第1のカスケードダイオードドライバが、前記複数のダイオードドライバのうちの第2のカスケードダイオードドライバに対して90度の位相ずれで作動され、
各ダイオードドライバが、
入力電源と信号通信して、入力電圧を、調整された出力信号へと変換するバックレギュレータ回路と、
前記バックレギュレータ回路及び前記コントローラと信号通信して前記固定周波数で動作する絶縁共振DC−DCコンバータであり、当該絶縁共振DC−DCコンバータを共振周波数で動作させる共振タンク回路を含む絶縁共振DC−DCコンバータと
を有し、
当該方法は更に、
スイッチングユニットにより、第1の電圧を有する前記入力電圧を、各絶縁共振DC−DCコンバータに供給される前記調整された出力信号へと変換することと、
前記スイッチングユニットのスイッチング損失を低減させるように、前記スイッチングユニットからのエネルギーを吸収することと、
を更に有し、
前記エネルギーを吸収することは更に、
スイッチ作動イベントに応答して、ターンオンスナバ回路により、電流の上昇を制御するように、前記スイッチングユニットに印加される全電圧を吸収することと、
スイッチ作動解除イベントに応答して、ターンオフスナバ回路により、前記スイッチングユニット及び前記ターンオンスナバ回路に蓄えられたエネルギーを受け取ることと
を有する、
方法。
【請求項8】
前記スイッチングユニット内のスイッチを固定周波数で交番的に作動させること、を更に有する請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記調整された出力信号に基づいて、前記入力電圧と振幅において略等しい電圧を有する矩形波を生成することと、
前記矩形波を、整流された矩形波へと変換することと、
前記絶縁共振DC−DCコンバータ内のスイッチングユニットを前記共振周波数で動作させることと、
を更に有する請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して高出力(ハイパワー)レーザシステムに関し、より具体的には、高出力レーザシステムに含まれるダイオードドライバに関する。
【背景技術】
【0002】
伝統的な高出力ソリッドステートレーザは典型的に、マスタ発振器(マスタオシレータ)/電力増幅器(パワーアンプ)(MOPA)構成にて、単一及び複数の並列レーザ増幅器ビームラインを使用する。MOPA構成は、複数の大きくて比較的低利得のレーザ増幅器を含む。各レーザ電力増幅器が、例えばレーザ結晶素子などの主レーザ媒質を光励起する単一又は複数のレーザダイオードストリング(レーザポンプアレイとしても知られる)に、調整(レギュレート)された電流を供給するダイオードドライバを含む。
【0003】
従来のダイオードドライバ回路は、複数の利得段の各々がダイオードストリングの長さの違い、すなわち、異なる数のレーザダイオードが直列に接続されること、を必要とすることを所与として、各利得段に対して固有に設計されている。例えば、平面(プレーナ)導波路(PWG)レーザシステムは典型的に、MOPAアーキテクチャにおいて1つの高利得増幅器を必要とするのみである。しかしながら、陸域、海域、空域、及び宇宙領域にまたがる用途は、広範囲の入力ライン電圧を有し、その上、広範囲の出力パワーをも要求する。
【0004】
さらに、高出力レーザシステムで使用されるレーザダイオード(すなわち、ポンプアレイ)は典型的に、互いに直列に配線され、システムコスト全体のかなりの部分を表す。その結果、システムが例えば回路短絡などの故障状態に陥る場合に、多数のレーザダイオードが破壊されてしまい得る。
【発明の概要】
【0005】
一実施形態によれば、高出力レーザシステムは、複数のカスケード接続されたダイオードドライバと、ポンプ源と、レーザ素子とを含む。ダイオードドライバは、連続的なドライバ信号を生成するように構成される。ポンプ源は、上記連続的なドライバ信号に応答して放射エネルギーを生成するように構成される。レーザ素子は、ポンプ源から下流に配置され、上記放射エネルギーによる刺激に応答してレーザビームを生成するように構成される。高出力レーザシステムは更に、上記複数のダイオードドライバを固定周波数で動作させる少なくとも1つのドライバ信号を出力するように構成された電子的なコントローラを含む。上記少なくとも1つのドライバ信号は、上記複数のダイオードドライバのうちの第1のカスケードダイオードドライバを、上記複数のダイオードドライバのうちの第2のカスケードダイオードドライバに対して90度の位相ずれで動作させる。
【0006】
他の一実施形態によれば、高出力レーザシステムを制御する方法は、互いに並列に接続された、複数のカスケード接続されたダイオードドライバにより、連続的なドライバ信号を生成することと、上記複数のダイオードドライバを固定周波数で動作させることとを有する。当該方法は更に、上記複数のダイオードドライバのうちの第1のカスケードダイオードドライバを、上記複数のダイオードドライバのうちの第2のカスケードダイオードドライバに対して90度の位相ずれで動作させることを含む。
【0007】
更なる特徴が、本発明の技術を通じて実現される。本発明の他の実施形態及び特徴が、ここに詳細に記載され、特許請求される発明の一部と見なされる。これらの特徴を持つ本発明のより十分な理解のため、明細書及び図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
より完全なる本開示の理解のため、ここで、同様の要素を似通った参照符号が表す添付図面及び詳細な説明とともに、以下の簡単な説明を参照する。
図1】非限定的な一実施形態に従った高出力レーザシステムのブロック図である。
図2図1の高出力レーザシステム用にダイオードドライバによって生成される電流信号の波形を例示するグラフである。
図3】非限定的な一実施形態に従った高出力レーザシステム用のダイオードドライバに含まれるバックレギュレータ回路の概略図である。
図4】非限定的な一実施形態に従った高出力レーザシステム用のダイオードドライバに含まれる直列共振DC−DCコンバータの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の様々な実施形態は、広いストリング電圧範囲にわたってレーザダイオードアレイを駆動する可変入力電圧を有するダイオードドライバを含む高出力レーザシステムを提供する。少なくとも1つの非限定的な実施形態によれば、高出力レーザシステムは、複数のカスケード接続された電力変換器を含む。各電力変換器は、独立した直列共振(series resonant;SR)DC−DCコンバータを駆動するバック(buck)レギュレータ回路を含む。このバックレギュレータは、大部分の制御を提供し、出力の電流及び電圧をフィルタリングするLC出力フィルタ回路を含む。少なくとも1つの実施形態によれば、このバックレギュレータ回路は、伝統的なバックレギュレータ回路によって経験されるスイッチング損失を排除するターンオンスナバ回路及びターンオフスナバ回路を含む。さらに、互いに対して90°の位相ずれで動作する複数のバックレギュレータ回路を使用することは、フィルタインダクタのサイズが最小化されるという特徴を提供する。何故なら、LCフィルタにおけるリップル電流が互いに打ち消し合う傾向があり、それにより、同量のリップル除去に関してLCフィルタをより小さくすることが可能になるからである。
【0010】
独立した直列共振DC−DCコンバータは、互いに並列に接続され、固定周波数で駆動される。しかしながら、独立した直列共振DC−DCコンバータは各々、互いに対して90°の位相ずれで動作する。従って、電力変換器出力キャパシタのサイズを最小化することができる。さらに、各電力変換器を、互いに対して個別に最適化することができる。斯くして、各DC−DCコンバータに含まれる絶縁(アイソレート)されたコンバータ出力キャパシタ及びコンバータ出力フィルタインダクタのサイズを最小化しながら、なおも、高出力レーザシステムの全体的な電力効率が最大化される。故に、少なくとも1つの実施形態に従った高出力レーザシステムは、例えばおよそ300ボルトDC(VDC)からおよそ1000VDCまでといった範囲に及ぶ広い入力電圧を受け取って、95%より高い電力効率で、40W/inより高い電力密度で、34キロワット(kW)より高い電力を連続的に出力することが可能なダイオードドライバを含む。さらに、少なくとも1つの非限定的な実施形態に従ったダイオードドライバは、なおも入力−出力アイソレーション及び3μF以下の出力キャパシタンスを提供しながら、200Aに至る連続的な電流を生成して、260VDCに至る異なるスタック電圧を駆動することができる。
【0011】
ここで図1を参照するに、非限定的な一実施形態に従った高出力レーザシステム100が示されている。高出力レーザシステム100は、複数のカスケード接続されたダイオードドライバ102a−102bと、ポンプ源104(すなわち、互いに直列に接続された複数のダイオード)と、レーザ素子106とを含んでいる。電源108が、可変入力電圧をダイオードドライバ102に提供する。入力電圧は、例えば、およそ300VDCからおよそ1000VDCまでの広い範囲にわたって変化し得る。各ダイオードドライバ102a−102bは、電子的なダイオードドライバコントローラ110と信号通信する。斯くして、ダイオードドライバコントローラ110は、個々のダイオードドライバ102a−102bを互いに独立に動作させることができる。このダイオードドライバは、二段(ツーステージ)ドライバとして構成されている。第1ステージは、同期バックレギュレータ回路105a−105bを含み、第2ステージは、絶縁直列共振DC−DCコンバータ107a−107bを含んでいる。同期バックレギュレータ回路105a−105bは、スイッチングが生じる前に電圧又は電流が基本的にゼロになるようにゼロ電流スイッチングを提供する。斯くして、電圧と電流との間の重なりが排除されて、スイッチング損失が低減される。直列共振DC−DCコンバータ107a−107bは、例えば、フルブリッジセンタータップ型整流器などの整流回路と、ターンオンスナバ回路及びターンオフスナバ回路(図1には示さず)の組み合わせとを含んでおり、更に詳細に後述するようにエネルギーをリサイクルする。
【0012】
非限定的な一実施形態によれば、ダイオードドライバコントローラ110は、第1及び第2のダイオードドライバ102a−102bを固定周波数で駆動するとともに、これらダイオードドライバ102a−102bを互いに位相をずらして動作させるように、1つ以上のドライバ制御信号112a−112bを生成するように構成される。例えば、各ダイオードドライバ102a−102bを通るエネルギーの流れは、例えば、およそ0ボルトからおよそ250ボルトまでの範囲の振幅を持つ整流された正弦波である。通常、これは、出力へのエネルギーの流れを平滑化するために大きい出力キャパシタを必要とする。従来のレーザダイオードドライバは典型的に、大きい出力キャパシタンスを使用しており、それ故に、ポンプ源104(例えば、レーザダイオードアレイ)における故障は、多量の蓄積エネルギーがレーザダイオードストリングにダンプされることをもたらさずに、カスケード故障をもたらすことになる。本開示の少なくとも1つの実施形態は、この問題を、第1のダイオードドライバ(例えば、102a)と並列に、且つ直交に、すなわち、90°の位相ずれで動作する第2の固定周波数ダイオードドライバ(例えば、102b)を設けることによって解決する。
【0013】
ポンプ源104は、直流出力駆動信号114を受け取るように102a−102bと信号通信する。ポンプ源104は、例えば、所定の波長を持つ電磁放射線を放出するように構成された1つ以上のレーザダイオード(図示せず)を含む。この波長は、例えばおよそ900ナノメートル(nm)から1000nmまでの範囲とすることができる。非限定的な一実施形態によれば、ポンプ源104は、互いに直並列接続されてレーザダイオードアレイを形成する複数のレーザダイオードを含む。レーザダイオードアレイ104は、出力駆動信号114を受け取るとともに、レーザ素子106によって受け取られるレーザ光を生成する。レーザ素子106は、以下に限定されないが、ドープされたイットリウムアルミニウムガーネット(YAG)結晶レーザ素子を含む様々な種類の活性レージング媒質を含み得る。使用において、ポンプ源104は、レーザ素子106に向けられる放射エネルギー116を放つ。この電磁放射が、レーザ素子のコアを、より高い状態へとポンプして、高出力化されたレーザビーム118を出力するようにする。
【0014】
図2を参照するに、図1の高出力ダイオードドライバによって生成される電流信号の波形を、グラフが示している。各絶縁直列共振DC−DCコンバータ107a−107b整流回路404からの出力電流が示されている。例えば、第1のDC−DCコンバータ107aの出力が“出力電流A”として指定され、第2のDC−DCコンバータ107bの出力が“出力電流B”として指定される。上述のように、各DC−DCコンバータは整流器を含むことができ、従って、“出力電流A”及び“出力電流B”は、整流された電流として示される。特に、図2に示す例において、これらの電流は完全に整流されている。図2に示すように、第1及び第2のDC−DCコンバータ107a−107bは、直交(すなわち、90度の位相ずれで)動作する。第1及び第2のDC−DCコンバータ107a−107bは互いに対して直交して動作するので、一方の波形の谷200が他方の波形の山202と対になる。これは、出力キャパシタへの遥かに均一且つ連続的な電流の流れ(図2にて“結合出力電流”と指定)をもたらす。残存するリップル電流を除去するために、小さい値のキャパシタンスのみが必要とされ、それにより、蓄積エネルギーの値が、ポンプ源104(例えば、レーザダイオードアレイ)が吸収できるのに十分な低さの値に保たれる。斯くして、例えば回路短絡などの故障の場合に、ポンプ源104に含まれるレーザダイオードを保護することができる。
【0015】
次に図3を参照するに、非限定的な一実施形態に従った、高出力レーザシステム100に含まれるバックレギュレータ回路105が、更に詳細に示されている。バックレギュレータ回路105は、スイッチング回路300と、ターンオンスナバ回路302と、ターンオフスナバ回路304と、出力フィルタ回路306とを含んでいる。スイッチング回路300は、入力電源108と信号通信して入力電源電圧を受け取るとともに、コントローラ110と信号通信して1つ以上のスイッチ制御信号310a−310bを受信する。非限定的な一実施形態によれば、このスイッチングユニットは、第1の半導体スイッチ312a及び第2の半導体スイッチ312bを含んでいる。コントローラ110は、スイッチ312a−312bが、例えば固定周波数(例えば、およそ100kHz)で、交互にアクティブにされるように、スイッチ制御信号310a−310bを生成する。スイッチ312a−312bのデューティサイクル(又はデューティファクタ)は、第1のスイッチ(例えば、スイッチ312a)がアクティブにされる時間をスイッチングサイクルの周期で割った比として定義されることができる。デューティファクタに入力電圧308を乗じたものが、例えばLCフィルタとして構成されるものである出力フィルタ306から出力される電圧314に略等しい。従って、DC−DCコンバータ107は、更に詳細に後述するように、入力電圧308を降圧し、LCバックフィルタ306からそれぞれの直列DC−DCコンバータ107に、調整された出力信号314(例えば、調整された電圧又は電流)を出力する。
【0016】
ターンオンスナバ302とターンオフスナバ304との組み合わせは、バックレギュレータ回路内のエネルギーリサイクルユニットを提供する。ターンオンスナバ302は、第1のスナバインダクタ316と、第1のスナバキャパシタ318と、第1のスナバダイオード320とを含むLCDスナバとして構成されている。第1のスナバインダクタ316は、入力電圧308に接続された第1端と、第1のスイッチ312aのドレインに接続された第2端とを含んでいる。第1のスナバキャパシタ318は、入力電圧308と第1のスナバインダクタ316の第1端とに接続された第1端を含んでいる。第1のスナバキャパシタ318の第2端は、スナバダイオード320のカソードに接続されている。第1のスナバダイオード320のアノードは、第1のスナバインダクタ316の第2端と第1のスイッチ312aのドレインとに接続されている。
【0017】
ターンオフスナバ304は、スイッチングレギュレータ回路300及びターンオンスナバ302の双方と信号通信し、また、第1のスイッチ312aがオフに切り換えられるときの第1のスイッチ312aと第2のスイッチ312bとの間の電圧変化のレートを制御するための電圧レギュレータキャパシタとダイオードとの組み合わせを含んでいる。より具体的には、ターンオフスナバ304は、第2のスナバキャパシタ322、第2のスナバダイオード324、第2のスナバインダクタ326、第3のスナバキャパシタ328、第3のスナバダイオード330、及び第4のスナバダイオード332を含んでいる。第2のスナバキャパシタ322は、第1のスナバインダクタ316の第2端と、第1のスナバダイオード320のアノードと、第1のスイッチ312aのドレインとに接続された第1端を含んでいる。第2のスナバキャパシタ322の第2端は、第2のスナバダイオード324のアノードと、第2のスナバインダクタ326の第1端とに接続されている。
【0018】
第2のスナバダイオード324のカソードは、第3のスナバキャパシタ328の第1端と、第1のスイッチ312aのソース及び第2のスイッチ312bのドレインによって共有される共有ノードとに接続されている。第3のスナバダイオード330のアノードは、第3のスナバキャパシタ328の第2端と、第4のスナバダイオード332のカソードとに接続され、第3のスナバダイオード330のカソードは、第2のスナバインダクタ326の第2端に接続されている。
【0019】
動作において、第1のスナバインダクタ316は、スイッチ作動イベントに応答して(例えば、スイッチ312aがオンに切り換えられるとき)、さもなければ第1のスイッチ312aにかかって存在することになる全電圧(例えば、2000ボルト)を吸収し、電流の上昇を制御する。電流が出力における電流と同じレベルに達すると、第1のスナバインダクタ316にかかる電圧は基本的にゼロになる。
【0020】
スイッチングが第1のスイッチ312aから第2のスイッチ312bへと交番するとき(例えば、第1のスイッチ312aがターンオフされるときのスイッチ作動解除イベント)、第1のスナバインダクタ316に蓄えられた電流及び第1のスイッチ312aに残っている電流が、ターンオフスナバ304へと迂回される。斯くして、電圧が変化している間、無視できる電流のみをスイッチ内に生成するように、電流を第2及び第3のスナバキャパシタ322/328(第2及び第3のスナバキャパシタ322/328がそれらの蓄積エネルギーの充電及び放電を交互に行う)へと迂回させて転送し、それにより、エネルギーをリサイクルすることによって、スイッチ損失が実質的に低減される。
【0021】
図4を参照するに、高出力レーザシステム100に含まれる直列共振DC−DCコンバータ107が例示されている。非限定的な一実施形態によれば、直列共振DC−DCコンバータ107が、固定周波数直列共振アイソレーション段として構成される。各直列共振DC−DCコンバータ107は、スイッチングユニット400と、直列共振回路402と、整流回路404と、出力フィルタ406とを含む。スイッチングユニット400は、フルブリッジとして構成された複数のスイッチを含んでおり、該複数のスイッチは、共振周波数を達成するように、直列共振回路402の共振周波数(例えば、50kHz)に略等しい固定周波数で動作される。フルブリッジスイッチングユニット400は、第1ハーフスイッチ408a−408bを含む第1の半分部分と、第2ハーフスイッチ408c−408dを含む第2の半分部分とを有している。スイッチ408a−408dは各々、コントローラ110(図4には示さず)によって生成される例えば矩形波などの駆動信号に従って駆動される。非限定的な一実施形態によれば、コントローラ110は、1つの第1ハーフスイッチ408a及び1つの第2ハーフスイッチ408dを駆動する第1の駆動信号410aと、残りの第1ハーフスイッチ408b及び残りの第2ハーフスイッチ408cを駆動する第2の駆動信号410bとを生成する。しかしながら、第1の駆動信号410aは、第2の駆動信号410bに対して位相が180度ずれている。従って、スイッチ408a及び408dがオンに切り換えられるときには、スイッチ408b及び408cがオフに切り換えられ、その逆もまた然りである。フルブリッジスイッチ構成が記載されているが、理解されるべきことには、そのスイッチングユニットが固定周波数で動作される限り、他のスイッチングトポロジが実装されてもよい。
【0022】
整流回路404は、直列共振回路402を介してスイッチングユニット400に接続されている。非限定的な一実施形態によれば、整流回路404は、全波中心タップ型整流器として構成される。しかしながら、理解されるべきことには、例えば、フルブリッジ整流器を含め、他のタイプの全波整流器トポロジが実装されてもよい。また、本発明の範囲を逸脱することなく、様々な異なる巻線トポロジが実装され得る。
【0023】
整流回路404は、直列共振回路402の出力に接続された一次巻線と、出力フィルタ406に接続された中心タップ付きの一対の二次巻線とを有する変圧器412を含んでいる。直列共振回路402は、LC共振器402として、すなわち、共振インダクタ403と直列に接続された共振キャパシタ401を含む共振タンク回路402として構成されている。共振キャパシタ401及び共振インダクタ403の値は、スイッチ408a−408dのスイッチング周波数をスイッチング周波数に一致させるように選定される。
【0024】
出力フィルタ406は、変圧器フィルタ406の入力における電圧を略一定の値に維持する出力キャパシタ(図示せず)を含むLCフィルタとして構成される。結果として、整流回路404に含まれる変圧器412は矩形波を実現する。変圧器412を通る電流は、近似的に、直列共振回路402によって生成される正弦波である。斯くして、インダクタ414を通った出力電圧及び電流が、レーザダイオードアレイを駆動するようにポンプ源104に提供されて、高出力レーザビーム118を生成するようにレーザ素子106を誘起する。
【0025】
動作において、スイッチ408a−408dは、振幅が入力電圧に等しい矩形波電圧を作り出す。スイッチングユニット400によって生成された矩形波が、直列共振回路402に入力され、最終的に変圧器412の一次巻線に印加される。スイッチ408a−408dは対(ペア)で動作される。例えば、スイッチ408a及び408dは同時に導通するが、スイッチ408b及び408c(これらも同時に導通する)とは180度位相を互い違いにする。スイッチ408a−408dを通る電流波形は半波正弦波である。従って、各ペアのスイッチ(すなわち、408a/408d、及び408b/408c)は、スイッチング周波数が直列共振回路の共振周波数に等しいので、ゼロ電流でターンオン又はターンオフする。この動作モードは、スイッチング損失が実質的に排除されていて導通損失のみが存在するので、スイッチに最低レベルの損失のみをもたらす。
【0026】
直列共振回路402を通るエネルギーの流れは正弦波であり、故に、一定ではない。結果として、従来のダイオードドライバは典型的に、出力へのエネルギーの流れを平滑化するために大きい出力キャパシタを必要とする。しかしながら、本開示の少なくとも1つの実施形態は、複数のカスケード接続されたダイオードドライバを含む高出力レーザシステム100を提供する。斯くして、第1の固定周波数直列共振コンバータが、第2の固定周波数直列共振コンバータと、並列に、且つ直交に、すなわち90°の位相ずれで動作する。従って、残存するリップル電流を除去するために、小さい値のキャパシタンスのみが必要とされ、それにより、故障の場合の損傷なく、蓄積エネルギーの値がポンプ源104(例えば、レーザダイオードアレイ)によって吸収されるのに十分な低さの値に保たれる。
【0027】
以下の請求項中の全てのミーンズ・プラス・ファンクション要素又はステップ・プラス・ファンクション要素の対応する構造、材料、動作、及び均等物は、具体的にクレーム記載される他のクレーム要素と組み合わさってその機能を実行する如何なる構造、材料、又は動作をも含むことが意図される。本発明の記述は、例示及び説明の目的で提示されており、網羅的であること又は開示された形態での発明に限定されることは意図されていない。本発明の範囲及び精神から逸脱することなく、数多くの変更及び変形が当業者に明らかになる。実施形態は、本発明の原理及び実際の適用を最もよく説明するために、及び当業者が、企図される特定の用途に適した様々な変更とともに様々な実施形態に関して本発明を理解することを可能にするために、選択されて記述されている。
【0028】
本発明の好適実施形態について記述したが、理解されるように、当業者は、現時及び将来の双方において、以下に続く請求項の範囲に入る様々な改善及び改良を為し得る。これらの請求項は、最初に記載された発明に対する適正な保護を維持するように解釈されるべきである。
【0029】
ここに記載された回路及び方法の動作を実行するために、様々なハードウェアコントローラが実装され得る。ハードウェアコントローラは、特定用途向け集積回路(ASIC)、電子回路、マイクロプロセッサ、1つ以上のソフトウェア若しくはファームウェアプログラムを実行するコンピュータプロセッサ(共有、専用、若しくはグループ)及びメモリ、組み合わせ論理回路、様々な入力及び出力を含むマイクロコントローラ、及び/又は、記載された機能を提供するその他の好適コンポーネントを含むことができる。1つ以上のコントローラはまた、コンポーネント又はシステムを制御する1つ以上の信号を生成するために、様々なアルゴリズム、変換、及び/又は論理プロセスを実行するように構成される。
図1
図2
図3
図4