特許第6599652号(P6599652)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6599652
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】電動歯ブラシ
(51)【国際特許分類】
   A61C 17/22 20060101AFI20191021BHJP
【FI】
   A61C17/22 B
   A61C17/22 C
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-119559(P2015-119559)
(22)【出願日】2015年6月12日
(65)【公開番号】特開2017-554(P2017-554A)
(43)【公開日】2017年1月5日
【審査請求日】2018年4月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】503246015
【氏名又は名称】オムロンヘルスケア株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】590002611
【氏名又は名称】コルゲート・パーモリブ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】COLGATE−PALMOLIVE COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(72)【発明者】
【氏名】吉田 秀輝
(72)【発明者】
【氏名】片野 衛
(72)【発明者】
【氏名】北村 雅史
【審査官】 片岡 弘之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−217598(JP,A)
【文献】 特表2008−532619(JP,A)
【文献】 特開2013−042906(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0178252(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 17/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のブラシ、発光素子、及び受光素子が設けられた振動部と、
前記振動部を振動させる駆動を行う駆動部と、を備え、
前記受光素子は、前記駆動部によって振動される前記振動部の振動数とは異なる共振振動数を持つ防振部材に固定されており、
前記振動部は、前記複数のブラシが形成されたブラシユニットと、前記ブラシユニットの中空部と嵌合する嵌合部とを有し、
前記発光素子と前記受光素子は前記嵌合部の前記中空部に挿入される部分に設けられ、
前記ブラシユニットが前記嵌合部と嵌合した状態で、前記ブラシユニットを前記複数のブラシの押し当て方向からみた平面視において、前記発光素子と前記受光素子は、前記複数のブラシが形成される領域を挟んで配置されており、
前記ブラシユニットは、前記嵌合した状態で、前記発光素子から発せられる光を前記ブラシユニットの外部に透過させるための第一の透光性部材と、前記ブラシユニットの外部から前記受光素子に光を入射させるための第二の透光性部材と、を備える
電動歯ブラシ。
【請求項2】
請求項1記載の電動歯ブラシであって、
前記発光素子は、前記駆動部によって振動される前記振動部の振動数とは異なる共振振動数を持つ防振部材に固定されている電動歯ブラシ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電動歯ブラシであって、
前記ブラシユニットにおいて前記複数のブラシが形成される領域の外縁形状は2つの凹部を有しており、
前記平面視において前記2つの凹部の一方の凹部と重なる位置に前記発光素子が設けられ、
前記平面視において前記2つの凹部の他方の凹部と重なる位置に前記受光素子が設けられている電動歯ブラシ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動歯ブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
高速に振動するブラシを歯面にあてることによって歯磨き(歯垢除去)を行うタイプの電動歯ブラシが知られている。このような電動歯ブラシでは、歯の表面に付着した歯垢、歯石、齲蝕等を検知するための手段をブラシユニットに設けたものが提案されている。
【0003】
特許文献1には、光センサと光源をブラシユニットに設け、光源から発した光の反射光を光センサで検出して、齲蝕等を検知してユーザに知らせる電動歯ブラシが記載されている。
【0004】
特許文献2、3には、ブラシユニットにおいて多数のブラシで囲まれる領域内に光出射用と受光用の孔部を設け、この孔部に光を導入する光源と、この孔部に入射した光を検出する光センサを本体部に設けた電動歯ブラシが記載されている。
【0005】
特許文献4には、ブラシユニットにおいて多数のブラシで囲まれる領域内、又は、ブラシユニットにおいて多数のブラシが形成される面とは裏側に、光源と撮像素子を設けた電動歯ブラシが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2008−532619号公報
【特許文献2】特表2002−515276号公報
【特許文献3】特表2013−531534号公報
【特許文献4】特開2013−042906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
例えば、歯磨きをしながら、磨いている部位の歯垢をリアルタイムに検知するためには、ブラシユニットの口内に挿入される部分に受光部と光出射部を設ける必要がある。しかしながら、歯磨きが行われている間、ブラシユニットは振動している。このため、この振動の影響により、光出射部から出射された光を受光部にて精度よく受光できなくなり、歯垢検出精度が低下する可能性がある。特許文献1〜4は、このような課題を考慮していない。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、歯磨きしている部位の歯垢等を歯磨き中にリアルタイムに精度よく検知することのできる電動歯ブラシを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の電動歯ブラシは、複数のブラシ、発光素子、及び受光素子が設けられた振動部と、前記振動部を振動させる駆動を行う駆動部と、を備え、前記受光素子は、前記駆動部によって振動される前記振動部の振動数とは異なる共振振動数を持つ防振部材に固定されているものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、歯磨きしている部位の歯垢等を歯磨き中にリアルタイムに精度よく検知することのできる電動歯ブラシを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態を説明するための電動歯ブラシをブラシ押し当て方向からみた概略構成を示す平面図である。
図2図1に示す電動歯ブラシのA−A線の断面模式図である。
図3図1に示す電動歯ブラシの把持部10の内部構成を示すブロック図である。
図4図1に示すA−A線の断面模式図の第一の変形例を示す図である。
図5図1に示すA−A線の断面模式図の第二の変形例を示す図である。
図6図1に示す平面図の変形例を示す図である。
図7図1に示すA−A線断面の第三の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態を説明するための電動歯ブラシをブラシ押し当て方向からみた概略構成を示す平面図である。
【0014】
この電動歯ブラシは、内部にバッテリや電気制御系を含む把持部10、及び、把持部10に固定された嵌合部としてのステム11を有する本体部と、ステム11に対して着脱可能なブラシユニット20と、を備える。
【0015】
ブラシユニット20は、複数のブラシ22と、光出射部23と、受光部24と、を備える。複数のブラシ22、光出射部23、及び受光部24は、ブラシユニット20の先端部の同一面に形成されている。各ブラシ22は、多数の毛を束ねたものである。
【0016】
なお、図1は、ブラシユニット20がステム11に装着された状態で、ブラシユニット20を複数のブラシ22の押し当て方向(ブラシ22の伸びる方向)から見た平面図である。
【0017】
図1に示すように、複数のブラシ22は“H”状に配置されている。複数のブラシ22が形成された領域の外縁21は、矩形の両短辺に凹部21aと凹部21bを設けた形状となっている。
【0018】
光出射部23は、ブラシユニット20の筐体に設けられた孔部に、後述するステム11に設けられた発光素子から発せられた光を透過する第一の透光性部材を嵌め込んで形成された透明窓である。発光素子から発せられた光は、この透明窓からブラシユニット20外部に出射される。光出射部23は、凹部21aに形成されている。
【0019】
受光部24は、ブラシユニット20の筐体に設けられた孔部に、光出射部23から出射されて口内の対象物で反射した光を透過する第二の透光性部材を嵌め込んで形成された透明窓である。この透明窓に入射した光は、後述するステム11に設けられた受光素子に入射するようになっている。受光部24は、凹部21bに形成されている。
【0020】
このように、光出射部23と受光部24は、ブラシ22が配置される領域の外縁21より外側に配置され、かつ、複数のブラシ22からなるブラシ群を挟んで配置されている。図1の例では、光出射部23と受光部24を結ぶ直線の伸びる方向は、ブラシユニット20の長手方向と一致している。
【0021】
図2は、図1に示す電動歯ブラシのA−A線の断面模式図である。
【0022】
ブラシユニット20は、中空部20aを有する先端部が閉じた筒状の筐体で構成されている。中空部20aにステム11が嵌合されることで、本体部とブラシユニット20とが固定される。
【0023】
ステム11は、先端(把持部10側とは反対側の端部)が閉じた筒状の筐体で構成されている。ステム11は、内部の先端に形成された軸受12と、軸受12に一端が挿入された偏心軸13と、錘14と、基板15に固定された防振部材25に固定された発光素子16及び受光素子17と、筐体に設けられた孔部23a,24aと、を備える。
【0024】
偏心軸13の他端は把持部10に内蔵されたモータMの回転軸に連結されている。モータMの回転軸が回転することで、偏心軸13が回転する。
【0025】
錘14は、軸受12の近傍において偏心軸13に固定されている。この錘14により、偏心軸13の重心は、その回転中心からずれている。なお、偏心軸13と軸受12の間には微小なクリアランスが設けられている。
【0026】
モータMの回転軸の回転に伴って偏心軸13も回転するが、偏心軸13は錘14によって重心がずれているために、回転中心の回りに旋回するような運動を行う。よって、偏心軸13全体がたわみ、ステム11とこれに装着されたブラシユニット20とを高速に振動させることとなる。ステム11とブラシユニット20は振動部を構成する。
【0027】
このように、偏心軸13の旋回運動によってブラシユニット20が振動される駆動原理の場合、ブラシユニット20はモータMの回転軸に垂直な面内(ブラシ22の押し当て方向に平行な面内)を2次元的に振動し得る。
【0028】
本実施形態の電動歯ブラシは、振動部(ステム11及びブラシユニット20)全体が共振点(共振振動数)を有しており、モータMの回転速度を制御することで、ステム11及びブラシユニット20をブラシ22の押し当て方向である第一の方向に振動させる動作と、ステム11及びブラシユニット20を、モータMの回転軸に垂直な面内におけるブラシ22の押し当て方向と交差する第二の方向に振動させる動作とを切り替えることが可能になっている。
【0029】
孔部23aは、光出射部23と対向する位置に形成されている。
【0030】
孔部24aは、受光部24と対向する位置に形成されている。
【0031】
発光素子16は、LED(Light Emitted Diode)やレーザダイオード等で構成されている。発光素子16の発光波長は検出対象とする口内の要素(歯垢、歯石、齲蝕等)に応じて最適なものを選択すればよい。発光素子16は、ステム11の内部において、孔部23aと対向する位置に設けられている。
【0032】
受光素子17は、光を電気信号に変換するフォトダイオード等の素子で構成されている。受光素子17は、ステム11の内部において、孔部24aと対向する位置に設けられている。
【0033】
基板15は、発光素子16と受光素子17に電気的に接続された配線が形成されるものであり、例えばフレキシブル基板が用いられる。基板15は把持部10内部にまで延びており、基板15に形成された配線は、把持部10に内蔵される後述する制御部と電気的に接続される。
【0034】
防振部材25は、モータMの回転によって駆動される振動部(ステム11及びブラシユニット20)の振動数(第一の方向に振動されるときの共振振動数及び第二の方向に振動されるときの共振振動数)とは異なる共振振動数を持つ材料により構成されている。防振部材25は、例えばウレタンにより構成されている。
【0035】
図2に示すように、光出射部23を構成する第一の透光性部材の断面形状は、ブラシ22の伸びる方向と直交する方向に並ぶ側壁が、ブラシ22の伸びる方向を基準としたときに、受光部24側とは反対側に傾斜している。
【0036】
このような第一の透光性部材の形状により、発光素子16からブラシ22の伸びる方向に発せられた光は、ステム11の孔部23aを通過した後、光出射部23の形状に沿ってその進行方向が受光部24側に変化する。
【0037】
このような構成により、光出射部23は、ブラシ22の押し当て方向よりも、ブラシ22の押し当て方向と交差し、かつ、図1の平面視において光出射部23から受光部24に向かう方向に多くの光を出射する。
【0038】
また、図2に示すように、受光部24を構成する第二の透光性部材の断面形状は、ブラシ22の伸びる方向と直交する方向に並ぶ側壁が、ブラシ22の伸びる方向を基準としたときに、光出射部23側とは反対側に傾斜している。
【0039】
このような第二の透光性部材の形状により、受光部24は、ブラシ22の押し当て方向から入射してくる光よりも、光出射部23から出射された光を例えば歯Dで正反射させたときの該光の反射方向から入射してくる光を多く受光する。
【0040】
光出射部23は、ここから出射された光がブラシ22によってケラレないように、側壁の傾斜角度やブラシ22からの距離を決めておくのがよい。
【0041】
受光部24は、光出射部23から出射され正反射した光がブラシ22によってケラレないように、側壁の傾斜角度やブラシ22からの距離を決めておくのがよい。
【0042】
図3は、図1に示す電動歯ブラシの把持部10の内部構成を示すブロック図である。
【0043】
把持部10は、モータMと、報知部60と、制御部50と、を備える。
【0044】
制御部50は、ステム11及びこれに固定されたブラシユニット20からなる振動部をブラシ22の押し当て方向である第一の方向に振動させる第一の駆動と、振動部をブラシ22のモータMの回転軸に垂直な面内におけるブラシ22の押し当て方向と交差する第二の方向に振動させる第二の駆動とを選択的に行う駆動部として機能する。制御部50は、第一の駆動と第二の駆動の切り替えを、モータMの回転軸の回転速度を変更することにより行う。
【0045】
制御部50は、例えば、第一の駆動と第二の駆動を交互に行う。このように、ブラシユニット20の振動方向を自動的に切り替えることで、ブラシ22の毛先が施療部に対して様々な角度から当たるため、単一方向の刷掃に比べてより優れた歯垢除去効果を得ることができる。
【0046】
なお、制御部50によるステム11の駆動方法は特に限定されない。例えば、第一の駆動のみを行ったり、第二の駆動のみを行ったりしてもよい。
【0047】
制御部50は、基板15を介して発光素子16を駆動し、発光素子16から光を発光させる制御を行う。
【0048】
制御部50は、受光素子17から出力される信号を用いた処理を行う。
【0049】
この処理は、歯に付着している歯垢の量を受光素子17の出力信号値から演算により求める処理、歯石の有無を受光素子17の出力信号値から判定する処理、及び、齲蝕の有無を受光素子17の出力信号値から判定する処理等を含む。以下では、制御部50が歯垢の量を演算する処理を行うものとして説明する。
【0050】
報知部60は、スピーカーやLED等のデバイスを用いて、電動歯ブラシの使用者に報知を行う。報知部60は、制御部50からの指令にしたがって、音を鳴らしたり、LEDを光らせたりして、使用者に報知を行う。
【0051】
報知する内容は、制御部50で演算された歯垢の量としている。例えば、報知部60は、歯垢の量が非常に少ない状態であればLEDを緑色に光らせ、歯垢の量が多い状態であればLEDを赤色に光らせる等して歯垢の量を報知し、効果的な歯磨きを支援する。
【0052】
以上のように構成された電動歯ブラシの動作を説明する。
【0053】
電動歯ブラシの電源がオンされてブラッシング開始操作がなされると、制御部50は、第一の駆動と第二の駆動を交互に行う。これにより、歯に押し当てられたブラシユニット20は、第一の方向への振動と第二の方向への振動とを交互に繰り返し、歯に付着した歯垢がブラシ22により除去される。
【0054】
制御部50は、第一の駆動と第二の駆動を交互に行う間、発光素子16を発光させる。発光素子16から発せられた光は孔部23aを通過した後、光出射部23から斜め方向に出射される。
【0055】
光出射部23から出射された光は、複数のブラシ22が押し当てられている歯Dに入射し、歯Dの表面で正反射する。正反射した光は、受光部24に入射し、孔部24aを通過して受光素子17にて受光される。
【0056】
受光素子17は、受光した光を電気信号に変換して制御部50に出力する。制御部50は、受光素子17から出力された電気信号を用いた演算により、歯Dのブラッシング部分における歯垢の量を求める。そして、制御部50は、求めた歯垢の量にしたがって、報知部60から報知を行う。
【0057】
図1〜3に示した電動歯ブラシによれば、光出射部23からは、ブラシ22の伸びる方向に対して交差し、かつ、図1の平面視における光出射部23から受光部24に向かう方向に発光素子16からの光の大部分が出射される。したがって、ブラシ22が形成される領域と対向する部分(歯磨き中に複数のブラシ22が接触する歯D)の表面の歯垢を精度よく検出可能となる。
【0058】
また、この電動歯ブラシによれば、受光部24が、ブラシ22の伸びる方向に対して交差し、かつ、図1の平面視における光出射部23から受光部24に向かう方向からくる光を多く受光できるようになっている。このため、歯Dで正反射した発光素子16からの光の大部分を受光素子17に導くことができ、受光素子17から出力される信号量を増やして、歯垢の検出感度を上げることができる。
【0059】
このように、電動歯ブラシの使用者は、ブラシ22によって磨いている歯の歯垢量を報知部60から報知される内容によって正確かつリアルタイムに知ることができる。このため、効果的な歯磨きを行うことが可能となる。
【0060】
また、光出射部23から斜めに光が出射されることで、光出射部23と受光部24の距離を大きくしても、磨いている部位の歯垢の検出精度を確保することができる。光出射部23と受光部24の距離が近いと、ブラシ22の密度が疎となる領域が大きくなる。しかし、図1の構成によれば、光出射部23と受光部24を離して配置することができるため、ブラシ22の密度が疎となる領域を分散させることができる。この結果、ブラシ22による歯垢除去能力が低下するのを防ぐことができる。
【0061】
また、ブラシユニット20では、光出射部23と受光部24の距離を大きくとることができる。このため、光出射部23と受光部24を、ブラシ22が形成される領域において可能な限り端に配置することができる。この結果、ブラシ22の数を増やすことができ、歯垢除去性能を高めることができる。
【0062】
また、ブラシユニット20では、光出射部23と受光部24の各々が、図1の平面視において上下左右の4方向のうちの3方向をブラシ22が形成された領域で囲まれる位置に配置されている。
【0063】
このため、光出射部23と受光部24の各々を凹部の外側に配置する場合と比較すると、ブラシユニット20を小型化することができる。また、図1の配置により、光出射部23と受光部24の距離を小さくすることができ、歯垢等の検出精度を向上させることができる。
【0064】
また、ブラシユニット20は、ブラシ22と第一の透光性部材と第二の透光性部材を筐体に設けただけの構成である。このため、製造コストを下げることができる。ブラシユニット20は消耗品であるため、製造コストを下げられるメリットは大きい。
【0065】
図1の電動歯ブラシは、光出射部23と受光部24が制御部50の駆動によって高速に振動する。このため、この振動が歯垢の検出精度を低下させる可能性がある。
【0066】
また、ブラシユニット20は、光出射部23と受光部24が複数のブラシ22が形成される領域を挟んで配置されていることで、光出射部23と受光部24との距離が大きくなる構成である。
【0067】
このため、光出射部23から出射された光が受光部24に到達するまでにはタイムラグが生じやすくなり、振動による歯垢の検出精度低下が発生しやすくなる。
【0068】
図1の電動歯ブラシでは、防振部材25上に発光素子16及び受光素子17が固定されているため、振動部が振動しているときでも、発光素子16及び受光素子17の振動を減らすことができる。このため、電動歯ブラシの耐久性向上や、歯垢の検出精度の向上が期待できる。
【0069】
なお、図2では、発光素子16と受光素子17を防振部材25上に固定しているが、受光素子17だけを防振部材25上に固定してもよい。振動の影響が大きいのは受光素子17の方であるため、少なくとも受光素子17を防振部材25上に固定しておけばよい。
【0070】
図1〜3では、偏心軸13と錘14により、振動部を第一の方向と第二の方向に振動させることを可能しているが、振動部の構成はこれに限らず、第一の方向と第二の方向にステム11及びブラシユニット20を一体的に振動させることのできる構造であればよい。例えば、音波振動により第一の方向と第二の方向に振動部を振動させるものであってもよい。
【0071】
図4は、図1に示すA−A線の断面模式図の第一の変形例を示す図である。図4において図2と同一構成には同一符号を付して説明を省略する。
【0072】
図4に示す断面構成は、光出射部23と受光部24の間にある複数のブラシ22からなるブラシ群の形状が異なる点を除いては、図2に示したものと同じである。
【0073】
図4の断面において光出射部23と受光部24の間に形成されたブラシ群は、光出射部23側の端部において受光部24から離れるほどブラシ22の長さが短くなっており、かつ、受光部24側の端部において光出射部23から離れるほどブラシ22の長さが短くなっている。
【0074】
具体的には、図4に示された8つのブラシ22において、各々の頂面と、各々の底面と、最も右のブラシ22の右側面と、最も左のブラシ22の左側面と、を結ぶ形状は、長方形の2つの角を削った形状となっている。
【0075】
図5は、図1に示すA−A線の断面模式図の第二の変形例を示す図である。図5において図2と同一構成には同一符号を付して説明を省略する。
【0076】
図5に示す断面構成は、光出射部23と受光部24の間にある複数のブラシ22からなるブラシ群の形状が異なる点を除いては、図2に示したものと同じである。
【0077】
図5の断面において光出射部23と受光部24の間に形成されたブラシ群は、光出射部23側の端部において受光部24から離れるほどブラシ22の長さが短くなっており、かつ、受光部24側の端部において光出射部23から離れるほどブラシ22の長さが短くなっている。
【0078】
具体的には、図5に示された8つのブラシ22において、中央の4つのブラシ22の高さが最大となっており、この4つのブラシ22から光出射部23に向かうにしたがってブラシ22の高さが低くなっている。また、この4つのブラシ22から受光部24に向かうにしたがってブラシ22の高さが低くなっている。
【0079】
図4に示すブラシ群の構成は、図5に示す8つのブラシ22のうちの、左2つのブラシ22の頂面を、光出射部23から出射される光の出射方向に沿って傾斜させ、右2つのブラシ22の頂面を、光出射部23から出射されて正反射された光の進行方向に沿って傾斜させた構成ということもできる。
【0080】
光出射部23と受光部24の間にあるブラシ群を、図4,5に例示した構成にすることで、光出射部23から出射されて歯に向かう光がブラシ22によってケラレにくくなる。また、光出射部23から出射されて歯で反射した光が受光部24に到達するまでに、ブラシ22によってケラレにくくなる。したがって、歯垢の検出精度を向上させることができる。
【0081】
図6は、図1に示す平面図の変形例を示す図である。図6において図1と同一構成には同一符号を付して説明を省略する。図6に示した変形例は、光出射部23と受光部24の配置場所を変更した点を除いては図1と同じ構成である。
【0082】
図6では、矩形の外縁21の2つの長辺の各々に凹部を設け、この凹部に光出射部23と受光部24を設けている。このような構成であっても、図1の電動歯ブラシと同じ効果を得ることができる。
【0083】
なお、ブラシ22を歯に押し当てて歯磨きを行っているときには、ブラシ22が、ブラシユニット20の短手方向に向かって倒れこむことがある。
【0084】
図6に示した構成によれば、光出射部23と受光部24の各々に対しては、一方向からしかブラシ22が倒れこんでこない。このため、ブラシ22の倒れこみによる歯垢の検出精度低下を防ぐことができる。
【0085】
ここまでは、ステム11に発光素子16と受光素子17を設ける構成を説明した。しかし、ブラシユニット20のブラシ22が形成される面に、発光素子16と受光素子17を設ける構成としてもよい。
【0086】
図7は、図1に示すA−A線断面の第三の変形例を示す図である。図7において図2と同一構成には同一符号を付して説明を省略する。この変形例は、ステム11内部に設けていた発光素子16と受光素子17を、ブラシユニット20のブラシ22が形成された面に設けた構成である。
【0087】
平面視において、発光素子16の配置位置は、図1の光出射部23の配置位置と同じである。また、受光素子17の配置位置は、図1の受光部24の配置位置と同じである。
【0088】
図7に示すように、発光素子16は、ブラシ22が形成された面上に形成された防振部材25a上に固定されている。発光素子16は、ブラシ22が形成された面に対して発光面が受光素子17側に向くように傾けて配置されている。
【0089】
受光素子17は、ブラシ22が形成された面上に形成された防振部材25b上に固定されている。受光素子17は、ブラシ22が形成された面に対して受光面が発光素子16側に向くように傾けて配置されている。
【0090】
防振部材25aと防振部材25bの機能は、防振部材25と同じである。
【0091】
このような構成により、発光素子16は、ブラシ22の押し当て方向よりも、ブラシ22の押し当て方向と交差し、かつ、図1の平面視において受光素子17に向かう方向に多くの光を出射する構成となっている。
【0092】
また、受光素子17は、ブラシ22の押し当て方向から入射してくる光よりも、発光素子16から出射された光を正反射させたときの該光の反射方向から入射してくる光を多く受光する構成となっている。
【0093】
図7の変形例では、発光素子16が図1の光出射部23と同じ機能を果たし、受光素子17が図1の受光部24と同じ機能を果たす。したがって、この構成であっても、ブラシ22と対向する口内部位の歯垢等を精度よく検出することができる。
【0094】
図7の変形例では、防振部材25aを省略し、ブラシ22が形成される面に発光素子16を直接形成してもよい。少なくとも受光素子17を防振部材25b上に固定することで、歯垢を精度よく検出することができる。
【0095】
図2,4,5では、ステム11内部に発光素子16と受光素子17を設けているが、これに限らない。例えば、ステム11の外周において光出射部23と対向する位置に防振部材25及び発光素子16を設け、受光部24と対向する位置に防振部材25及び受光素子17を設けてもよい。この場合は孔部23a,24aは不要となる。
【0096】
また、ステム11の外周に発光素子16と受光素子17を設ける場合に、防振部材25の材料として、ステム11と中空部20aの間に水が浸入するのを防ぐことのできる機能を持つ材料を採用するとよい。
【0097】
ブラシユニット20に設けられる光出射部23及び受光部24の配置は、図1〜7に示したものに限らず、ブラシユニット20のうち口内に挿入され得る部分に歯垢等が検出可能な形で光出射部23及び受光部24が配置されていればよい。
【0098】
また、光出射部23は発光素子16からの光をブラシ22の押し当て方向に出射させる構成としてもよい。同様に、受光部24は、ブラシ22の押し当て方向から入射する光を最も多く受光する構成としてもよい。
【0099】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0100】
以上説明してきたように、本明細書には以下の事項が開示されている。
【0101】
開示された電動歯ブラシは、複数のブラシ、発光素子、及び受光素子が設けられた振動部と、前記振動部を振動させる駆動を行う駆動部と、を備え、前記受光素子は、前記駆動部によって振動される前記振動部の振動数とは異なる共振振動数を持つ防振部材に固定されているものである。
【0102】
開示された電動歯ブラシは、前記発光素子は、前記駆動部によって振動される前記振動部の振動数とは異なる共振振動数を持つ防振部材に固定されているものである。
【0103】
開示された電動歯ブラシは、前記振動部は、前記複数のブラシが形成されたブラシユニットと、前記ブラシユニットの中空部と嵌合する嵌合部とを有し、前記発光素子と前記受光素子は前記嵌合部の前記中空部に挿入される部分に設けられ、前記ブラシユニットが前記嵌合部と嵌合した状態で、前記ブラシユニットを前記複数のブラシの押し当て方向からみた平面視において、前記発光素子と前記受光素子は、前記複数のブラシが形成される領域を挟んで配置されており、前記ブラシユニットは、前記嵌合した状態で、前記発光素子から発せられる光を前記ブラシユニットの外部に透過させるための第一の透光性部材と、前記ブラシユニットの外部から前記受光素子に光を入射させるための第二の透光性部材と、を備えるものである。
【0104】
開示された電動歯ブラシは、前記ブラシユニットにおいて前記複数のブラシが形成される領域の外縁形状は2つの凹部を有しており、前記平面視において前記2つの凹部の一方の凹部と重なる位置に前記発光素子が設けられ、前記平面視において前記2つの凹部の他方の凹部と重なる位置に前記受光素子が設けられているものである。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明は、特に家庭用の電動歯ブラシに適用して利便性が高く、有効である。
【符号の説明】
【0106】
10 把持部
11 ステム
13 偏心軸
14 錘
16 発光素子
17 受光素子
20 ブラシユニット
21a,21b 凹部
22 ブラシ
23 光出射部
23a,24a 孔部
24 受光部
25 防振部材
50 制御部
60 報知部
M モータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7