特許第6599701号(P6599701)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6599701
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】車両の潤滑装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/04 20100101AFI20191021BHJP
【FI】
   F16H57/04 K
   F16H57/04 P
【請求項の数】5
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-177785(P2015-177785)
(22)【出願日】2015年9月9日
(65)【公開番号】特開2017-53437(P2017-53437A)
(43)【公開日】2017年3月16日
【審査請求日】2018年6月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100116942
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 雅信
(74)【代理人】
【識別番号】100167704
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 裕人
(74)【代理人】
【識別番号】100114122
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 伸夫
(74)【代理人】
【識別番号】100086841
【弁理士】
【氏名又は名称】脇 篤夫
(72)【発明者】
【氏名】新沼 俊輝
【審査官】 高橋 祐介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−166628(JP,A)
【文献】 特開平08−021223(JP,A)
【文献】 特開2001−159470(JP,A)
【文献】 実開平02−030567(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周面と外周面の間で貫通され潤滑オイルを供給する供給孔を有する第1のシャフトと、
前記第1のシャフトに対して相対的に軸回り方向へ回転又は前記第1のシャフトと一体になって軸回り方向へ回転される第2のシャフトと、
前記第1のシャフトと前記第2のシャフトにともに摺動自在に支持されると共に前記第1のシャフトに対して軸回り方向において中立位置を基準として両方向へ回転されるオイル制御リングとを備え、
前記オイル制御リングには内周面と外周面の間で貫通された吐出孔が形成され、
前記供給孔と前記吐出孔は少なくとも一方が軸回り方向に離隔して複数形成され、
前記第1のシャフトと前記第2のシャフトが一体になって回転されるときに前記オイル制御リングが前記中立位置に保持されて前記供給孔が前記オイル制御リングによって閉塞され、
前記第2のシャフトが前記第1のシャフトに対して相対的に回転されるときに前記オイル制御リングが前記中立位置から回転されて前記供給孔の少なくとも一部が前記吐出孔の少なくとも一部に一致され
前記オイル制御リングが前記第2のシャフトの回転に伴って同じ方向へ回転される
車両の潤滑装置。
【請求項2】
前記オイル制御リングを前記中立位置に保持する保持バネが設けられ、
前記第2のシャフトが第1のシャフトに対して相対的に回転されるときに前記オイル制御リングが前記保持バネの付勢力に反して中立位置から回転される
請求項1に記載の車両の潤滑装置。
【請求項3】
前記第1のシャフトに、前記オイル制御リングが前記中立位置から回転されたときに前記オイル制御リングの回転を規制する規制部が設けられた
請求項1又は請求項2に記載の車両の潤滑装置。
【請求項4】
前記オイル制御リングの回転が前記規制部によって規制された状態において前記供給孔が前記吐出孔に一致される
請求項3に記載の車両の潤滑装置。
【請求項5】
前記供給孔と前記吐出孔の少なくとも一方が前記第1のシャフト又は前記オイル制御リングの軸回り方向に延びる長穴状に形成された
請求項1乃至請求項4の何れかに記載の車両の潤滑装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両における所定の各部に潤滑オイルを供給する車両の潤滑装置についての技術分野に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【特許文献1】特開2011−122711号公報
【特許文献2】特開2008−190565号公報
【背景技術】
【0003】
車両の動力伝達機構における各部に潤滑オイルを供給し、これらの各部を潤滑する潤滑装置がある。
【0004】
このような潤滑装置は、例えば、回転駆動されることによりオイルタンクから潤滑オイルを汲み上げて圧送するオイルポンプと、オイルポンプによって圧送された潤滑オイルの油路を有する中空シャフトとを備えたものがある。オイルポンプによってオイルタンクから汲み上げられた潤滑オイルは中空シャフトの油路を流動され、動力伝達機構における各部に供給される。
【0005】
潤滑が必要な動力伝達機構における各部としては、例えば、遊星歯車式や平行二軸式等の有段変速機、ベルト式等の無段変速機、傘歯車式の差動装置、前輪と後輪の駆動力の比を切り替える電子制御カップリング、動力の伝達を行うプロペラシャフト等の各部がある。
【0006】
また、オイルポンプによって汲み上げられた潤滑オイルは動力伝達機構以外の各部、例えば、モータージェネレーターのステーターコイル等にも供給されて冷却される。
【0007】
オイルポンプは、一般に、車速に応じて回転速度が変化され、車速が上昇するに従って回転速度が高くなってオイルポンプから供給される油量が多くなり、車速が低下するに従って回転速度が低くなってオイルポンプから供給される油量が少なくなる。
【0008】
上記のような潤滑装置にあっては、モータージェネレーターのステーターコイルに潤滑オイルが供給され、ステーターコイルから流れ落ちる潤滑オイルがキャッチタンクに貯留される構造にされたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
特許文献1に記載された潤滑装置にあっては、出力軸(中空シャフト)に潤滑オイルが流動される油路が形成され、キャッチタンクの内部の空間である貯留空間と出力軸の油路との間で連通孔等によって潤滑オイルが両方向に流動可能な状態にされている。
【0010】
オイルポンプから供給される油量が多くなって油路における油圧が高くなる高速走行時には、油路からキャッチタンクに連通孔等を介して潤滑オイルが流動されてキャッチタンクに貯留される油量が増加する。従って、中空シャフトの油路から潤滑が必要な各部への潤滑オイルの過剰な供給が抑制される。
【0011】
一方、オイルポンプから供給される油量が少なくなって油路における油圧が低くなる低速走行時には、キャッチタンクから油路に連通孔等を介して潤滑オイルが流動されて油路を流動される油量が増加する。従って、中空シャフトの油路から潤滑が必要な各部への潤滑オイルの供給量が増加する。
【0012】
このように特許文献1に記載された潤滑装置にあっては、必要に応じて潤滑オイルの供給量が増減され、特に、吐出油量が少なくなる低速走行時の潤滑性能が向上する。
【0013】
また、潤滑装置には潤滑穴が形成された入力軸(回転軸)と入力軸の外側に配置された略円筒状の油導入用のワッシャとを有し、入力軸とワッシャの間に周方向(軸周り方向)へ移動可能なスライド弁が設けられたものがある(例えば、特許文献2参照)。
【0014】
特許文献2に記載された潤滑装置にあっては、入力軸とワッシャの間に外部と潤滑穴に連通されたオイル供給空間が形成され、オイル供給空間がスライド弁によって仕切られて左右に位置する二つの空間(右空間と左空間)として形成されている。これらの二つの空間にはそれぞれボール弁(逆止弁)が配置されている。
【0015】
スライド弁によって潤滑穴が閉塞されている状態において入力軸が加速又は減速されて回転されると、入力軸とワッシャに回転差(差動)が生じ、左右の空間の大きさが変化し両者の間に圧力差が生じる。
【0016】
スライド弁は入力軸の回転に伴う慣性と左右の空間の圧力差とによって周方向における一方へ相対的に移動され、スライド弁による潤滑穴の閉塞が解除される。潤滑穴は左右の空間のうち圧力が高くされた空間に連通され、この圧力が高くされた空間に封入されていた潤滑オイルが潤滑穴から入力軸の内部空間(軸内油路)に供給される。このとき圧力が高くされた空間にはボール弁によって外部からの潤滑オイルの流入が防止される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
ところが、特許文献2に記載された潤滑装置にあっては、ボール弁によって外部からの潤滑オイルの流入が防止された状態において、圧力が高くされた空間から潤滑穴を介して軸内油路に潤滑オイルが供給されるため、潤滑穴が開放されても圧力が高くされた空間に封入されていた量の潤滑オイルのみしか軸内油路に供給されない。
【0018】
従って、必要な部位に十分な潤滑オイルを供給することができず、潤滑オイルによる十分な潤滑を行うことができないおそれがある。この場合に、必要な部位への潤滑オイルの供給量を増加させるためには、左右の各空間の容積を大きくする必要があるが、各空間の容積を大きくするとワッシャの外径が大きくなり、構造の大型化を来たしてしまう。
【0019】
一方、オイルポンプの駆動時には潤滑オイルが所定の各部に供給されるが、各部の駆動状態によっては潤滑が必要ない場合もあり、このような潤滑が必要ない場合におけるオイルポンプの駆動は不必要な駆動であり、オイルポンプに対する負荷も大きくなってしまう。
【0020】
そこで、本発明は、上記した問題点を克服し、構造の大型化を来すことなく必要に応じて潤滑オイルを供給しオイルポンプの負荷の軽減を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
第1に、本発明に係る車両の潤滑装置は、内周面と外周面の間で貫通され潤滑オイルを供給する供給孔を有する第1のシャフトと、前記第1のシャフトに対して相対的に軸回り方向へ回転又は前記第1のシャフトと一体になって軸回り方向へ回転される第2のシャフトと、前記第1のシャフトと前記第2のシャフトにともに摺動自在に支持されると共に前記第1のシャフトに対して軸回り方向において中立位置を基準として両方向へ回転されるオイル制御リングとを備え、前記オイル制御リングには内周面と外周面の間で貫通された吐出孔が形成され、前記供給孔と前記吐出孔は少なくとも一方が軸回り方向に離隔して複数形成され、前記第1のシャフトと前記第2のシャフトが一体になって回転されるときに前記オイル制御リングが前記中立位置に保持されて前記供給孔が前記オイル制御リングによって閉塞され、前記第2のシャフトが前記第1のシャフトに対して相対的に回転されるときに前記オイル制御リングが前記中立位置から回転されて前記供給孔の少なくとも一部が前記吐出孔の少なくとも一部に一致され、前記オイル制御リングが前記第2のシャフトの回転に伴って同じ方向へ回転されるものである。
【0022】
これにより、第1のシャフトと第2のシャフトが一体になって回転されるときに供給孔からの潤滑オイルの供給が停止され、第2のシャフトが第1のシャフトに対して相対的に回転されるときに潤滑オイルが供給孔を介して吐出孔から吐出される。また、第2のシャフトが第1のシャフトに対して相対的に回転されるときにオイル制御リングが第1のシャフトに対して回転される。
【0025】
第2に、上記した本発明に係る車両の潤滑装置においては、前記オイル制御リングを前記中立位置に保持する保持バネが設けられ、前記第2のシャフトが第1のシャフトに対して相対的に回転されるときに前記オイル制御リングが前記保持バネの付勢力に反して中立位置から回転されることが望ましい。
【0026】
これにより、第1のシャフトと第2のシャフトが一体になって回転されるときに保持バネによってオイル制御リングが中立位置に保持される。
【0027】
第3に、上記した本発明に係る車両の潤滑装置においては、前記第1のシャフトに、前記オイル制御リングが前記中立位置から回転されたときに前記オイル制御リングの回転を規制する規制部が設けられることが望ましい。
【0028】
これにより、第1のシャフトの一部によってオイル制御リングの第1のシャフトに対する回転が規制される。
【0029】
第4に、上記した本発明に係る車両の潤滑装置においては、前記オイル制御リングの回転が前記規制部によって規制された状態において前記供給孔が前記吐出孔に一致されることが望ましい。
【0030】
これにより、オイル制御リングの回転が停止された状態において吐出孔からの潤滑オイルの吐出が行われる。
【0031】
第5に、上記した本発明に係る車両の潤滑装置においては、前記供給孔と前記吐出孔の少なくとも一方が前記第1のシャフト又は前記オイル制御リングの軸回り方向に延びる長穴状に形成されることが望ましい。
【0032】
これにより、オイル制御リングが中立位置から回転されたときに回転角度に拘わらず供給孔の一部を吐出孔の一部に一致させることが可能になる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、第1のシャフトと第2のシャフトが一体になって回転されるときに供給孔からの潤滑オイルの供給が停止され、第2のシャフトが第1のシャフトに対して相対的に回転されるときに潤滑オイルが供給孔を介して吐出孔から吐出されるため、構造の大型化を来すことなく必要に応じて潤滑オイルを供給しオイルポンプの負荷の軽減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1図2乃至図10と共に本発明車両の潤滑装置の実施の形態を示すものであり、本図は、車両における動力伝達機構等の概略構成を示す図である。
図2】電子制御カップリングとその周辺構造を示す断面図である。
図3】電子制御カップリングの片側半分を示す拡大断面図である。
図4】潤滑オイルの吐出が行われる構造を示す分解斜視図である。
図5】潤滑オイルの吐出が行われる構造を示す斜視図である。
図6】潤滑オイルの吐出が行われる構造を示す断面図である。
図7】潤滑オイルが吐出されていない状態を示す拡大断面図である。
図8】潤滑オイルが吐出されている状態を示す拡大断面図である。
図9】吐出孔が長穴状に形成された例において、潤滑オイルが吐出されていない状態を示す拡大断面図である。
図10】吐出孔が長穴状に形成された例において、潤滑オイルが吐出されている状態を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下に、本発明車両の潤滑装置を実施するための形態について添付図面を参照して説明する。
【0036】
<動力伝達機構等の概略構成>
先ず、潤滑装置を有する車両に設けられた動力伝達機構等の概略構成を説明する(図1参照)。
【0037】
車両100は、例えば、4輪駆動(4WD)タイプであり、前端側にエンジン(内燃機関)101を有し、エンジン101には図示しないトルクコンバーターや摩擦クラッチ等によってトランスミッション102が接続されている。尚、車両100がEV(Electric Vehicle:電気自動車)やHEV(Hybrid Electric Vehicle:ハイブリッド電気自動車)やPHEV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle:プラグインハイブリッド電気自動車)等である場合には、エンジン101に代えて、又は、エンジン101とともにモーターが設けられている。
【0038】
トランスミッション102はマニュアルトランスミッション、オートマチックトランスミッション又はセミオートマチックトランスミッションの何れであってもよく、内部に図示しない遊星歯車機構や電子制御カップリング103が設けられている。尚、トランスミッション102の内部機構として無段変速機(Continuously Variable Transmission:CVT)が用いられていてもよい。
【0039】
トランスミッション102にはフロントデファレンシャル104が接続されている。フロントデファレンシャル104には左右の前輪駆動軸105、105が連結され、前輪駆動軸105、105にはそれぞれ前輪106、106が連結されている。従って、エンジン101の駆動力はフロントデファレンシャル104及び前輪駆動軸105、105を介して前輪106、106に伝達される。
【0040】
車両100のコーナーリング時にはフロントデファレンシャル104によって前輪106、106の左右の回転数の差が吸収され、エンジン101から前輪106、106に同じトルクが伝達される。
【0041】
トランスミッション102の後端部にはプロペラシャフト157が連結されている。エンジン101からトランスミッション102に伝達される駆動力はトランスミッション102からプロペラシャフト107に伝達されてプロペラシャフト107が回転される。
【0042】
プロペラシャフト107は前後に延びる状態で配置され、プロペラシャフト107の後端部にはリアデファレンシャル108が接続されている。リアデファレンシャル108には左右の後輪駆動軸109、109が連結され、後輪駆動軸109、109にはそれぞれ後輪110、110が連結されている。従って、プロペラシャフト107に伝達されたエンジン101の駆動力はリアデファレンシャル108及び後輪駆動軸109、109を介して後輪110、110に伝達される。
【0043】
車両100のコーナーリング時にはリアデファレンシャル108によって後輪110、110の左右の回転数の差が吸収され、エンジン101から後輪110、110に同じトルクが伝達される。
【0044】
トランスミッション102の内部又は下方には、潤滑が必要な各部に供給される潤滑オイルを貯留する図示しないオイルタンクとオイルタンクから潤滑オイルを汲み上げて圧送する図示しないオイルポンプとが配置されている。オイルポンプから汲み上げられた潤滑オイルは、所定の油路を通り一部が後述する第1のシャフトから挿入シャフトに圧送されて潤滑が必要な各部に供給される。従って、オイルポンプ、第1のシャフト及び挿入シャフトは潤滑が必要な各部に潤滑オイルを供給する潤滑装置の構成要素とされる。
【0045】
オイルポンプは、例えば、車速に応じて回転速度が変化され、車速が上昇するに従って回転速度が高くなってオイルポンプから供給される潤滑オイルの量が多くなり、車速が低下するに従って回転速度が低くなってオイルポンプから供給される潤滑オイルの量が少なくなる。
【0046】
<潤滑装置及び電子制御カップリング等の構成>
次に、各部に潤滑オイルを供給する潤滑装置及び潤滑装置によって潤滑オイルが供給される電子制御カップリング等の構成について説明する(図2乃至図5参照)。
【0047】
潤滑装置1の構成要素である第1のシャフトと挿入シャフトはトランスミッション102の内部に設けられている。
【0048】
トランスミッション102はハウジング2の内部に所要の各部が配置されて構成されている(図2参照)。ハウジング2は何れも前後に開口されたカップリングケース3とリアケース4を有し、カップリングケース3とリアケース4が前後で結合されている(図2及び図3参照)。
【0049】
カップリングケース3には第1のシャフト5が貫通された状態で配置されている。カップリングケース3の内部の空間における第1のシャフト5の外周側の部分は第1のオイル供給空間3aとして形成されている。
【0050】
第1のシャフト5は前後に延びる筒状に形成され前端部が出力軸6の後端部に連結されている。出力軸6にはエンジン101の駆動力が伝達され、出力軸6はエンジン101の駆動力が伝達されることによりカップリングケース3に対して第1のベアリング7を介して回転される。第1のシャフト5は出力軸6と一体になって回転される。
【0051】
第1のシャフト5の内部空間8は、前側の部分が潤滑オイルを流動させるオイル流動部8aとして形成され、オイル流動部8aの後側の部分が被挿入部8bとして形成されている。オイル流動部8aにはオイルポンプから汲み上げられて圧送される潤滑オイルが出力軸6の内部を通って流動される。
【0052】
第1のシャフト5には他の部分より径が大きく形成されたリング作用部9が設けられている。リング作用部9は略円筒状の基部10と基部10からそれぞれ後方に突出された突片部11、11と有し(図4乃至図6参照)、突片部11、11が周方向(軸周り方向)における180°反対側に位置されている。突片部11は基部10と同じ曲率の円弧状に形成されている。リング作用部9には突片部11、11の内周側の部分からそれぞれ周方向に突出された規制部12、12、・・・が設けられている。
【0053】
規制部12、12、・・・は突片部11、11と同じ曲率の円弧状に形成され、厚みが突片部11、11より薄くされている。
【0054】
規制部12、12、・・・の外周面側にはそれぞれ突片部11、11の周方向における外側に切欠状の空間が形成され、これらの空間がバネ収容空間9a、9a、・・・とされている。
【0055】
第1のシャフト5には、リング作用部9の前側に被挿入部8bに連通された流出孔13、13、・・・が前後方向及び周方向に離隔して形成され、リング作用部9の後側に被挿入部8bに連通された供給孔14、14が周方向に離隔して形成されている。流出孔13と供給孔14は何れも第1のシャフト5の内周面5aと外周面5bの間で貫通されている。
【0056】
供給孔14、14はそれぞれ突片部11、11間の周方向における中央部に形成され、180°反対側に位置されている。
【0057】
第1のシャフト5の被挿入部8bには挿入シャフト15の後端部を除く部分が挿入されている(図2及び図3参照)。挿入シャフト15は前後に延びる円筒部16と円筒部16の後側の開口を閉塞する閉塞部17と円筒部16の後端寄りの位置から外方に突出されたフランジ状の環状突部18とが一体に形成されて成る。挿入シャフト15の内部の空間は流動路19として形成されている。
【0058】
挿入シャフト15は円筒部16の後端部と環状突部18が第1のシャフト5の内周面5aにそれぞれ摺動可能とされ、第1のシャフト5に前後方向へ移動不能な状態で回転自在に支持されている。
【0059】
挿入シャフト15のうち、被挿入部8bに挿入された部分は挿入部20として設けられ、挿入部20より後側の部分が第1のシャフト5から後方に突出された突出部21として設けられている。
【0060】
挿入シャフト15の円筒部16には、環状突部18より前側に第1の流出路22、17、・・・が前後方向及び周方向に離隔して形成され、環状突部18より後側に第2の流出路23、23、・・・が前後方向及び周方向に離隔して形成されている。
【0061】
挿入シャフト15の後端部には環状の受け部材24が取り付けられている。
【0062】
リアケース4には第2のシャフト25が貫通された状態で配置されている。第2のシャフト25は前後に延びる形状に形成され、前方に開口された配置空間26を有している。配置空間26は、前端部が大径部26aとして形成され、大径部26aの直ぐ後側に連続する部分が大径部26aより径の小さい中間径部26bとして形成され、中間径部26bより後側の部分が中間径部26bより径の小さい小径部26cとして形成されている。
【0063】
第2のシャフト25には送油路27、27、・・・が周方向に離隔して形成されている。第2のシャフト25の前端部は接面部25aとして設けられている。
【0064】
配置空間26には第1のシャフト5の後端部と挿入シャフト15の突出部21とが挿入されている。第1のシャフト5の後端部は配置空間26の中間径部26bに挿入され、挿入シャフト15の突出部21は配置空間26の小径部26cに挿入される。第2のシャフト25の小径部26cの内径は突出部21の外径より大きくされている。従って、第2のシャフト25の小径部26cの内部には突出部21の外周側に一定の大きさの空間(隙間)が形成されている。
【0065】
配置空間26に第1のシャフト5の後端部と挿入シャフト15の突出部21とが挿入された状態において第1のベアリング28、28が配置される。一方の第1のベアリング28は第1のシャフト5の後端部における外面と第2のシャフト25の内面との間に配置され、他方のベアリングは受け部材24の後面と第2のシャフト25の内面との間に配置される。配置空間26に第1のベアリング28、28が配置されることにより配置空間26が封止される。
【0066】
第2のシャフト25は第2のベアリング29を介してリアケース4に対して回転される。第2のシャフト25は後端部がプロペラシャフト107の前端部に連結され、プロペラシャフト107の前端部がブッシュ111を介してリアケース4に支持されている。従って、第2のシャフト25とプロペラシャフト107はリアケース4に対して一体になって回転されると共に第1のシャフト5に対して相対的に回転される。
【0067】
リアケース4の内部には第2のシャフト25の外周側に第2のオイル供給空間4aが形成され、第2のオイル供給空間4aは第2のシャフト25の配置空間26に送油路27、27、・・・を介して連通されている。
【0068】
プロペラシャフト107とリアケース4の後端部との間にはシール体30が配置され、シール体30とプロペラシャフト107の前端部はリアケース4の後端部における外周面に取り付けられたカバー31によって外側から覆われている。
【0069】
第1のシャフト5の後端部と第2のシャフト25の前端部にはオイル制御リング32が摺動自在に支持されている。オイル制御リング32は第1のシャフト5に対して前後方向へ移動不能とされ、第1のシャフト5及び第2のシャフト25に対して相対的に回転可能とされている。
【0070】
オイル制御リング32は円筒状のベース部33とベース部33からそれぞれ前方に突出された作用突部34、34とベース部33の後端部に連続された摺動部35とから成る(図4乃至図6参照)。作用突部34、34は周方向における180°反対側に位置され、ベース部33と同じ曲率の円弧状に形成されている。作用突部34の周方向における幅はリング作用部9における規制部12、12間の周方向における距離より小さくされている。
【0071】
作用突部34には内周面と外周面の間で貫通された吐出孔34a、34aが周方向に離隔して形成されている。吐出孔34aの径は、例えば、第1のシャフト5に形成された供給孔14の径と同じにされている。
【0072】
摺動部35はベース部33より一回り径が大きくされている。
【0073】
オイル制御リング32は作用突部34、34がそれぞれリング作用部9の突片部11、11間に位置され、ベース部33の内周面が第1のシャフト5の外周面に接した状態で第1のシャフト5に摺動自在に支持されると共に摺動部35の外周面が接面部25aの内周面に接した状態で第2のシャフト25に摺動自在に支持される。
【0074】
このときベース部33の内周面から第1のシャフト5の外周面に伝達されるトルクは、摺動部35の外周面から接面部25aの内周面に伝達されるトルクより小さくされている。このような伝達されるトルクの大きさの相違は、ベース部33の内周面と第1のシャフト5の外周面との間の摩擦力が摺動部35の外周面と接面部25aの内周面との間の摩擦力より小さくされることにより実現されていてもよく、また、ベース部33の内周面と第1のシャフト5の外周面との間の半径方向におけるガタが摺動部35の外周面と接面部25aの内周面との間の半径方向におけるガタより大きくされることにより実現されていてもよい。上記のようなトルクの大きさの相違により、オイル制御リング32は第2のシャフト25の回転に伴って同じ方向へ回転され、作用突部34、34がそれぞれ突片部11、11に接して回転が規制された状態において第1のシャフト5と一体になって回転されると共に第2のシャフト25に対して相対的に回転される。
【0075】
オイル制御リング32が第1のシャフト5に支持された状態においては、突片部11、11の周方向における各端面と作用突部34、34の周方向における各端面との間にそれぞれ保持バネ36、36、・・・が配置される。保持バネ36、36、・・・はオイル制御リング32を所定の位置に保持する保持手段として機能する。保持バネ36は、例えば、引張コイルバネ又は圧縮コイルバネであり、両端部がそれぞれ突片部11の端面と作用突部34の端面とに取り付けられる。従って、オイル制御リング32は第1のシャフト5と第2のシャフト25が回転されず外力が付与されていない状態において、作用突部34、34が保持バネ36、36によってそれぞれ突片部11、11間の中央部に位置されて第1のシャフト5に対する中立位置に保持される。
【0076】
尚、保持手段は引張コイルバネ又は圧縮コイルバネに限られることはなく、オイル制御リング32を中立位置に保持することが可能な機能を有していれば他の弾性体であってもよく、ゴムや捩じりコイルバネや板バネ等であってもよい。
【0077】
また、上記には、オイル制御リング32の作用突部34に二つの吐出孔34a、34aが周方向に隔離して形成され第1のシャフト5に一つの供給孔14が形成された例を示したが、吐出孔34aと供給孔14は少なくとも一方が周方向に隔離して複数形成されていればよい。例えば、一つの吐出孔34aと二つの供給孔14、14が形成されていてもよく、複数の吐出孔34a、34a、・・・と複数の供給孔14、14、・・・が形成されていてもよい。但し、何れの場合でも、オイル制御リング32が中立位置に保持されている状態において吐出孔34aと供給孔14が一致されず、オイル制御リング32の回転が規制された状態において少なくとも一つの吐出孔34aと少なくとも一つの供給孔14とが一致されることが必要である。
【0078】
さらに、第1のシャフト5に対するオイル制御リング32の摺動性を高めるために、第1のシャフト5とオイル制御リング32の間にカラーやベアリングを設けてもよい。
【0079】
カップリングケース3の内部には第1のシャフト5の外周側に電子制御カップリング103が配置されている(図2及び図3参照)。電子制御カップリング103はCPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等を有する図示しない電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)によって制御され、電子制御ユニットから送出される駆動信号に基づいて後述するコイルに電流が供給されることにより動作される。
【0080】
電子制御ユニットから電子制御カップリング103には、例えば、車速に応じた大きさの駆動信号が送出され、電子制御カップリング103は車速が上昇するに従って高い駆動状態にされる。
【0081】
電子制御カップリング103はコイル(電磁ソレノイド)37と制御カム38と制御クラッチ39とメインカム40とメインクラッチ41とアーマチュア42を有している。
【0082】
コイル37はカップリングケース3の第1のオイル供給空間3aにおける前端寄りの位置に配置され、コイルホルダー43によって保持されている。コイルホルダー43は磁性金属材料によって形成され、第1のオイル供給空間3aにおいて固定された状態で配置されている。コイル37には電子制御ユニットから送出される駆動信号に基づいて電流が供給される。
【0083】
コイル37は後方からコイルカバー44によって覆われている。コイルカバー44は外周側部材44aと内周側部材44bと圧入部材44cを有している。外周側部材44aと内周側部材44bは何れも磁性金属材料によって形成され、圧入部材44cは非磁性材料によって形成されている。内周側部材44bは外周側部材44aの内周側に位置され、外周側部材44aと内周側部材44bの間に圧入部材44cが圧入されている。
【0084】
コイルホルダー43と外周側部材44aと内周側部材44bが磁性金属材料によって形成されているため、電子制御ユニットから送出される駆動信号に基づいてコイル37に電流が供給されると、コイル37の周囲に磁界が発生する。
【0085】
コイルカバー44は内周部が第1のシャフト5に相対回転自在に嵌合されており、第1のシャフト5に対して回転されると共に第3のベアリング45を介してコイルホルダー43に対して回転される。
【0086】
コイルカバー44の外周側部材44aには環状ベース46が結合されている。環状ベース46には外周面と内周面の間で貫通された送出路46a、46a、・・・が前後方向及び周方向に離隔して形成されている。環状ベース46は外周側部材44aの外周部における後端部に結合され、コイルカバー44と一体になって回転される。
【0087】
制御カム38はコイルカバー44における内周側部材44bの後側に位置され、第1のシャフト5に対して回転可能とされている。制御カム38の後面には後方に開口された凹部38aが形成されている。制御カム38の凹部38aには周方向へ行くに従って深さが変化する傾斜面が形成されている。
【0088】
制御クラッチ39は外周側摩擦板39aと内周側摩擦板39b、39bが前後方向において交互に配置されて成る。外周側摩擦板39aは外周部が環状ベース46の内周部における前端部に支持され、環状ベース46と一体になって回転されると共に環状ベース46に対して前後方向へ移動可能にされている。内周側摩擦板39b、39bは内周部が制御カム38の外周部に支持され、制御カム38と一体になって回転されると共に制御カム38に対して前後方向へ移動可能にされている。
【0089】
制御クラッチ39は外周側摩擦板39aと内周側摩擦板39b、39bが互いに接近し係合又はスリップされることにより動力を制御カム38からコイルカバー44を介して環状ベース46に伝達する機能を有している。制御クラッチ39においては、外周側摩擦板39aと内周側摩擦板39b、39bとの間の摩擦力の大きさに応じて制御カム38から環状ベース46に伝達される動力の大きさが変化される。
【0090】
メインカム40は制御カム38の後側において制御カム38に対向して位置され、第1のシャフト5に対して回転可能とされている。メインカム40の前面には前方に開口された凹部40aが形成されている。メインカム40の凹部40aには周方向へ行くに従って深さが変化する傾斜面が形成されている。
【0091】
制御カム38とメインカム40の間には周方向に離隔して複数のボール47、47、・・・が配置されている。ボール47、47、・・・は制御カム38の凹部38aとメインカム40の凹部40aとに挿入されて保持されている。
【0092】
メインカム40の後側には伝達ベース48が配置され、伝達ベース48は環状ベース46の内周側に位置されている。伝達ベース48は第1のシャフト5に結合されており、第1のシャフト5と一体になって回転される。伝達ベース48は一部がメインカム40に結合されており、第1のシャフト5及びメインカム40と一体になって回転される。伝達ベース48には外周面と内周面の間で貫通された導出路48a、48aが周方向に離隔して形成されている。導出路48a、48a前後方向における位置がそれぞれ第1のシャフト5に形成された供給孔14、14及びオイル制御リング32の吐出孔34a、34a、・・・と一致されている。
【0093】
メインクラッチ41は外周側係合板41a、41a、・・・と内周側係合板41b、41b、・・・が前後方向において交互に配置されて成る。外周側係合板41a、41a、・・・は外周部が環状ベース46の内周部における後半部に支持され、環状ベース46と一体になって回転されると共に環状ベース46に対して前後方向へ移動可能にされている。内周側係合板41b、41b、・・・は内周部が伝達ベース48の外周部に支持され、伝達ベース48と一体になって回転されると共に伝達ベース48に対して前後方向へ移動可能にされている。
【0094】
メインクラッチ41は外周側係合板41a、41a、・・・と内周側係合板41b、41b、・・・が互いに接近し係合又はスリップされることにより動力を環状ベース46から後述する連結部材に伝達する機能を有している。メインクラッチ41においては、外周側係合板41a、41a、・・・と内周側係合板41b、41b、・・・との間の摩擦力の大きさに応じて環状ベース46から連結部材に伝達される動力の大きさが変化される。
【0095】
メインクラッチ41の後側には連結部材49が配置されている。連結部材49は内周部が第2のシャフト25の前端部に結合され、第2のシャフト25と一体になって回転される。連結部材49は環状ベース46に対して回転可能にされている。
【0096】
メインクラッチ41において外周側係合板41a、41a、・・・と内周側係合板41b、41b、・・・が後方へ移動されて係合され又はスリップされると、環状ベース46に伝達されている動力がメインクラッチ41によって連結部材49に伝達されて第2のシャフト25が連結部材49と一体になって回転される。
【0097】
アーマチュア42は制御カム38の外周側において制御クラッチ39とメインカム40の間に配置されている。アーマチュア42は鉄等の強磁性材料によって形成され、コイル37への通電状態に応じて磁界に発生する推進力によって前後方向へ移動される。
【0098】
<電子制御カップリングにおける動作>
以下に、電子制御カップリング103の動作について説明する。
【0099】
電子制御カップリング103において、出力軸6の回転時にコイル37に対して電子制御ユニットから電流が供給されると、コイル37の周囲に磁界が発生してアーマチュア42が制御クラッチ39側へ引き寄せられて前方へ移動される。このとき出力軸6の回転に伴って、第1のシャフト5と伝達ベース48とメインカム40と制御クラッチ39の内周側摩擦板39b、39bとが一体になってカップリングケース3に対して回転されている。
【0100】
アーマチュア42が制御クラッチ39側へ移動されると、アーマチュア42に押圧されて外周側摩擦板39aと内周側摩擦板39b、39bが前方へ移動されて互いに接近し係合又はスリップされる。外周側摩擦板39aと内周側摩擦板39b、39bが係合又はスリップされると、制御カム38からコイルカバー44を介しての環状ベース46への動力の伝達が可能な状態になる。
【0101】
このときメインカム40が回転されており、メインカム40からボール47、47,・・・を介して制御カム38及びコイルカバー44を経て環状ベース46に動力が伝達されて外周側係合板41a、41a、・・・の回転が開始されるが、制御カム38とメインカム40の間で回転差が生じる。従って、凹部38aと凹部40aに保持されているボール47、47、・・・が凹部38aと凹部40aの各傾斜面上を転動されボール47、47、・・・メインカム40が後方へ押圧されて移動される。メインカム40が後方へ移動されると、メインカム40によってメインクラッチ41の外周側係合板41a、41a、・・・と内周側係合板41b、41b・・・が後方へ移動されて互いに接近し係合又はスリップされる。外周側係合板41a、41a、・・・と内周側係合板41b、41b、・・・が係合又はスリップされると、環状ベース46に伝達されている動力がメインクラッチ41から連結部材49に伝達される。
【0102】
尚、このとき伝達ベース48と内周側係合板41b、41b、・・・は外周側係合板41a、41a、・・・と内周側係合板41b、41b、・・・の係合状態に応じた速度で第1のシャフト5に対して回転される。
【0103】
連結部材49に動力が伝達されると、連結部材49から第2のシャフト25に動力が伝達され、連結部材49の回転に伴って第2のシャフト25とプロペラシャフト107が一体になってリアケース4に対して回転され、コイル37に供給された電流量に応じた比率の出力軸6からの動力がプロペラシャフト107を介して後輪110に伝達される。従って、前輪106と後輪110にエンジン101からの動力が配分され車両100の4輪駆動での走行が行われる。
【0104】
一方、コイル37に電流が供給されない状態においては、電子制御カップリング103によって出力軸6の動力が第2のシャフト25には伝達されないため、前輪106による車両100の2輪駆動での走行が行われる。
【0105】
<潤滑装置の動作>
次に、潤滑装置1の動作について説明する(図7及び図8参照)。
【0106】
車輌100の走行時にはオイルポンプから潤滑オイルが供給され、供給された潤滑オイルが第1のシャフト5のオイル流動部8aから挿入シャフト15の流動路19へ向けて流動される。
【0107】
このとき流動路19に流入された潤滑オイルは、第1のシャフト5に対するオイル制御リング32の回転位置に拘わらず、第1の流出路22、22、・・・から第1のシャフト5の流出孔13、13、・・・に流入され、流出孔13、13、・・・から制御クラッチ39やボール47、47、・・・等の各部に供給され、これらの各部に対する潤滑が行われる。同時に、流動路19に流入された潤滑オイルは、第1のシャフト5に対するオイル制御リング32の回転位置に拘わらず、第2の流出路23、23、・・・から第2のシャフト25の送油路27、27、・・・に流入され、送油路27、27、・・・からリアケース4の第2のオイル供給空間4aに流出され、プロペラシャフト107の前端部に支持されたブッシュ111に供給され、ブッシュ111に対する潤滑が行われる。
【0108】
上記した車両の走行時において、メインクラッチ41の外周側係合板41a、41a、・・・と内周側係合板41b、41b、・・・が係合されているときには、第1のシャフト5と第2のシャフト25が一体になって回転され、オイル制御リング32が保持バネ36、36、・・・によって中立位置に保持された状態で第1のシャフト5及び第2のシャフト25と一体になって回転されている(図7参照)。第1のシャフト5と第2のシャフト25が一体になって回転されるときには、外周側係合板41a、41a、・・・と内周側係合板41b、41b、・・・が係合されているため、メインクラッチ41に対する潤滑は不要な状態である。
【0109】
このときオイル制御リング32の作用突部34、34に形成されている吐出孔34a、34a、・・・は第1のシャフト5の供給孔14、14に一致されておらず、作用突部34、34によって供給孔14、14が閉塞されている。
【0110】
従って、流動路19に流入された潤滑オイル50は作用突部34、34によって供給孔14、14からの流出が規制され、潤滑オイル50の外周側係合板41a、41a、・・・と内周側係合板41b、41b、・・・への供給が行われず、メインクラッチ41に対する潤滑が行われない。
【0111】
一方、車両の走行時において、メインクラッチ41の外周側係合板41a、41a、・・・と内周側係合板41b、41b、・・・が係合されず又はスリップされているときには、回転されている第1のシャフト5に対して第2のシャフト25が相対的に回転され、オイル制御リング32が第2のシャフト25の回転に伴って作用突部34、34がそれぞれ突片部11、11に接する位置まで保持バネ36、36、・・・の付勢力に反して回転される(図8参照)。オイル制御リング32は突片部11、11によって第1のシャフト5に対する回転が規制されているため、第1のシャフト5がさらに回転されると、回転が規制された状態で第1のシャフト5と一体になって回転される。
【0112】
このとき各一方の保持バネ36、36が伸張されると共に各他方の保持バネ36、36が圧縮され、圧縮された保持バネ36、36がそれぞれバネ収容空間9a、9aに収容される。このように圧縮された保持バネ36、36がそれぞれ収容空間9a、9aに収容されるため、保持バネ36、36の存在がオイル制御リング32の回転に支障を来すことがなく、作用突部34、34がそれぞれ突片部11、11に確実に接触され、オイル制御リング32の回転を安定した状態で規制することができる。
【0113】
回転されている第1のシャフト5に対して第2のシャフト25が相対的に回転される状況は、例えば、雪道等においてスリップして前輪106、106と後輪110、110の間で回転差(差動)が生じたり、車両が左右に旋回されているときに前輪106、106と後輪110、110の間で回転差が生じたりする状況である。
【0114】
このときオイル制御リング32の作用突部34、34に形成されている各一方の吐出孔34a、34aがそれぞれ第1のシャフト5の供給孔14、14に一致され、作用突部34、34による供給孔14、14の閉塞状態が解除される。
【0115】
従って、流動路19に流入された潤滑オイル50が供給孔14、14を介して伝達ベース48の導出路48a、48aからの外周側係合板41a、41a、・・・と内周側係合板41b、41b、・・・に供給され、メインクラッチ41に対する潤滑が行われる。
【0116】
前輪106、106と後輪110、110の間で回転差の発生が解消されると、再び、メインクラッチ41の外周側係合板41a、41a、・・・と内周側係合板41b、41b、・・・が係合され、第1のシャフト5と第2のシャフト25が一体になって回転され、オイル制御リング32が保持バネ36、36、・・・によって中立位置に保持される(図7参照)。
【0117】
上記のように、第1のシャフト5と第2のシャフト25が一体になって回転されるときには、外周側係合板41a、41a、・・・と内周側係合板41b、41b、・・・が係合されているため、メインクラッチ41に対する潤滑は不要な状態である。一方、第1のシャフト5に対して第2のシャフト25が相対的に回転され両者の間に差回転が生じているときには、メインクラッチ41に対する潤滑が必要な状態である。
【0118】
このような状況において、メインクラッチ41に対する潤滑が不要な状態においてもメインクラッチ41に対して潤滑オイル50が供給されてしまうと、必要とされない潤滑オイル50の供給動作が行われることになりオイルポンプの負荷が高くなってしまうと共に潤滑オイル50による外周側係合板41a、41a、・・・と内周側係合板41b、41b、・・・の回転に対する抵抗負荷が生じて第1のシャフト5と第2のシャフト25の回転ロスが発生してしまう。
【0119】
<その他>
上記には、オイル制御リング32の吐出孔34aと第1のシャフト5の供給孔14とが円形状に形成された例を示したが、吐出孔34aと供給孔14は少なくとも一方が周方向に延びる長穴状に形成されていてもよい。
【0120】
例えば、図9に示すように、供給孔14が円形状に形成され吐出孔34a、34aが周方向に延びる長穴状に形成されていてもよい。
【0121】
このように吐出孔34a、34aが周方向に延びる長穴状に形成されることにより、第1のシャフト5と第2のシャフト25に回転差が生じたときに、オイル制御リング32が中立位置から回転された後の回転が規制される前の状態から吐出孔34aの一部と供給孔14が一致される。
【0122】
従って、オイル制御リング32が中立位置から回転されたときに回転角度に拘わらず供給孔14の一部を吐出孔34aの一部に一致させることが可能になり、第2のシャフト25が第1のシャフト5に対して相対的に回転されたときに潤滑オイル50を吐出孔34aからオイル制御リング32の回転の開始直後に迅速かつ確実に吐出させることができる。
【0123】
尚、逆に、吐出孔34aが円形状に形成され供給孔14が周方向に延びる長穴状に形成されていてもよく、吐出孔34aと供給孔14の双方が周方向に延びる長穴状に形成されていてもよい。但し、何れの場合においてもオイル制御リング32が中立位置に保持されているときに吐出孔34aと供給孔14が一致されないことが必要である。
【0124】
<まとめ>
以上に記載した通り、潤滑装置1にあっては、第1のシャフト5と第2のシャフト25が一体になって回転されるときにオイル制御リング32が中立位置に保持されて供給孔14、14がオイル制御リング32によって閉塞され、第2のシャフト25が第1のシャフト5に対して相対的に回転されるときにオイル制御リング32が中立位置から回転されて供給孔14が吐出孔34a、34aに一致される。
【0125】
従って、第1のシャフト5と第2のシャフト25が一体になって回転されるときに供給孔14、14からの潤滑オイル50の供給が停止され、第2のシャフト25が第1のシャフト5に対して相対的に回転されるときに潤滑オイル50が供給孔14、14を介して吐出孔34a、34aからメインクラッチ41に向けて吐出されるため、構造の大型化を来すことなく必要に応じて潤滑オイル50を供給しオイルポンプの負荷の軽減を図ることができる。
【0126】
また、第1のシャフト5と第2のシャフト25が一体になって回転されるときに潤滑オイル50がメインクラッチ41に供給されないため、潤滑オイル50による外周側係合板41a、41a、・・・と内周側係合板41b、41b、・・・の回転に対する抵抗負荷が生じ難く、第1のシャフト5と第2のシャフト25の回転ロスの軽減を図ることができる。
【0127】
さらに、オイル制御リング32が第2のシャフト25の回転に伴って回転されるため、第1のシャフト5と第2のシャフト25が一体になって回転されるときにオイル制御リング32が第1のシャフト5と一体になって回転される。
【0128】
従って、第2のシャフト25が第1のシャフト5に対して相対的に回転されるときにオイル制御リング32が第1のシャフト5に対して回転されるため、オイル制御リング32を第2のシャフト25の回転状態に応じて適正かつ確実に回転させることができる。
【0129】
さらにまた、オイル制御リング32を中立位置に保持する保持バネ36、36、・・・が設けられ、第2のシャフト25が第1のシャフト5に対して相対的に回転されるときにオイル制御リング32が保持バネ36、36、・・・の付勢力に反して中立位置から回転される。
【0130】
従って、第1のシャフト5と第2のシャフト25が一体になって回転されるときに保持バネ36、36、・・・によってオイル制御リング32が中立位置に保持されるため、簡素な構造によって必要な状態においてオイル制御リング32を確実に中立位置に保持することができる。
【0131】
また、第1のシャフト5に、オイル制御リング32が中立位置から回転されたときにオイル制御リング32の回転を規制する規制部12、12が設けられている。
【0132】
従って、第1のシャフト5の一部によってオイル制御リング32の第1のシャフト5に対する回転が規制され、部品点数の増大を来すことなくオイル制御リング32を必要な位置で停止させることができる。
【0133】
加えて、オイル制御リング32の回転が規制部12、12によって規制された状態において供給孔14、14が吐出孔34a、34aに一致されるため、オイル制御リング32の回転が停止された状態において吐出孔34a、34aからの潤滑オイル50の吐出が行われ、潤滑オイル50の吐出を安定した状態で行うことができる。
【符号の説明】
【0134】
1…潤滑装置、5…第1のシャフト、5a…内周面、5b…外周面、12…規制部、14…供給孔、25…第2のシャフト、32…オイル制御リング、34a…吐出孔、36…保持バネ、50…潤滑オイル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10