特許第6599710号(P6599710)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6599710
(24)【登録日】2019年10月11日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】カクテル抗体
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/531 20060101AFI20191021BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20191021BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20191021BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20191021BHJP
   C12Q 1/04 20060101ALI20191021BHJP
【FI】
   G01N33/531 A
   G01N33/53 D
   G01N33/53 A
   G01N33/574 D
   C07K16/28
   C12Q1/04
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-191587(P2015-191587)
(22)【出願日】2015年9月29日
(65)【公開番号】特開2017-67548(P2017-67548A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2018年7月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】803000056
【氏名又は名称】公益財団法人ヒューマンサイエンス振興財団
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 正規
(72)【発明者】
【氏名】坂倉 健司
【審査官】 草川 貴史
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/141285(WO,A1)
【文献】 板橋匠美,作製カクテル抗体による免疫二重染色プロトコル,医学検査,2014年12月31日,vol63, No1,59-63
【文献】 ニチレイバイオサイエンス,ER/PgR(MONO)ユニバーサルキット クラス3 免疫組織学検査用シリーズ,体外診断用医薬品説明書,2006年 4月30日,1-4
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48−33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物理的に同一である単一の病理検体材料切片を染色する、抗エストロゲン受容体抗体、抗プロゲステロン抗体及び抗カルポニン抗体を含有することを特徴とするカクテル抗体。
【請求項2】
物理的に同一である単一の病理検体材料切片を染色する、抗サイトケラチン5/6抗体もしくは抗サイトケラチン5抗体もしくは抗サイトケラチン14抗体もしくは抗サイトケラチン5/14抗体もしくは抗高分子量サイトケラチン抗体(34βE12抗体)及び抗カルポニン抗体を含有することを特徴とするカクテル抗体。
【請求項3】
前記抗サイトケラチン5/6抗体の濃度は0.9μg/L〜45mg/Lであり、前記抗カルポニン抗体の濃度は0.86μg/L〜86mg/Lであり、前記抗サイトケラチン14抗体の濃度は2.1μg/L〜42mg/Lであることを特徴とする請求項に記載のカクテル抗体。
【請求項4】
前記病理検体材料切片は、乳腺腫瘍性切片であることを特徴とする請求項1乃至の何れか1項に記載のカクテル抗体。
【請求項5】
前記病理検体材料切片は、乳腺非腫瘍性切片であることを特徴とする請求項1乃至の何れか1項に記載のカクテル抗体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病理診断において判定者によるばらつきや見逃しを防止するカクテル抗体に関する。
【背景技術】
【0002】
病理診断は、生体標本の形態観察のみならず、免疫組織化学染色法によっても行われる(特許文献1)。免疫組織化学染色法は、組織上の特定の抗原を、その抗原を特異的に認識する抗体によって検出する方法であり、特定の抗原を認識させる抗体を組織と反応させ、反応した抗体の有無から抗原の存在を判断する。免疫組織化学染色法には、抗原に対する特異的抗体である一次抗体に色素または酵素を直接結合させて可視化する直接法と、一次抗体に対する抗体である二次抗体を用いて可視化する間接法が含まれる。
【0003】
乳腺腫瘍の生検材料における病理診断において、(i)腫瘍が浸潤性か、乳管内にとどまっているかの判定、(ii)腫瘍が良性であるか悪性であるかの判定が大変に重要である(特許文献2)。HE染色では、(i)腫瘍が乳管内に留まっている証拠となる、筋上皮細胞の認識が難しく、(ii)腫瘍が良性であるか悪性であるかの判定は熟練を要する。
【0004】
(i)に対し、腫瘍が浸潤性か、乳管内にとどまっているかの判定には、HE染色スライドの他に、サイトケラチン5/6(CK5/6)を含む、カルポニン、p63、アクチン等の筋上皮細胞マーカーで複数枚染色して、筋上皮細胞の存在の有無を確認している。乳腺腫瘍が良性であるか悪性であるかの判定は、HE染色にて、核異型、核腫大、核形不整の有無、核分裂像、クロマチンの増加の有無、正常構築からの乖離の程度等、形態学的に判断する以外に、CK5/6やサイトケラチン14(CK14)、高分子量ケラチン染色を行い、悪性腫瘍細胞が染色されず、通常型上皮過形成細胞が染色されることや、エストロゲン受容体(ER)染色やプロゲステロン受容体(PgR)染色を行い、悪性腫瘍細胞が多数染色され、通常型上皮過形成が散在性にしか染色されないこと等を指標に総合的に判定される。しかし、CK5/6免疫染色は筋上皮細胞の染色性の脱落がしばしば経験される。その為、浸潤・非浸潤癌の確認に、CK5/6以外の筋上皮マーカーを加えて染色することが多い。
【0005】
(ii)に対し、CK5/6やCK14、高分子量ケラチン染色は、悪性腫瘍細胞は染色されず、通常型上皮過形成細胞が染色されることから、両者の鑑別ができるため多用される。
【0006】
また、上記判定には、HE染色の他、CK5/6やCK14、 高分子量ケラチン染色と、カルポニンもしくはp63もしくはアクチン等のCK5/6とは別の筋上皮細胞マーカー染色の少なくとも2枚のスライドが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−130866号公報
【特許文献2】再表2012/141285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、時間的・経済的に有利であり、しかも、病理診断において判定者によるばらつきや見逃しを防止することができるカクテル抗体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明にかかるカクテル抗体は、物理的に同一の病理検体材料切片を染色する、抗エストロゲン受容体抗体(抗ER抗体)及び抗プロゲステロン抗体(抗PgR抗体)を含有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明にかかるカクテル抗体は、物理的に同一の病理検体材料切片を染色する、抗エストロゲン受容体抗体(抗ER抗体)、抗プロゲステロン抗体(抗PgR抗体)及び抗カルポニン抗体(抗calponin抗体)を含有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明にかかるカクテル抗体は、物理的に同一の病理検体材料切片を染色する、抗サイトケラチン5/6抗体(抗CK5/6抗体)もしくは抗サイトケラチン5抗体(抗CK5抗体)もしくは抗サイトケラチン14抗体(抗CK14抗体)もしくは抗サイトケラチン5/14抗体(抗CK5/14抗体)もしくは抗高分子量サイトケラチン抗体(34βE12抗体)及び抗カルポニン抗体を含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
従来では乳腺腫瘍の病理組織検体において、ホルモン療法の適否判定のために、抗ER抗体及び抗PgR抗体にてそれぞれ1枚ずつ免疫染色が行われ、ホルモン療法の適用はERもしくはPgRのどちらか一方が発現していればよいが、本発明では、抗ER抗体及び抗PgR抗体によるカクテル抗体により免疫染色を行うので、当染色法によりホルモン療法の適否判定が1枚で完了でき、時間的・経済的に有利である。また従来ホルモンレセプターの判定はERとPgRを別々に2枚の切片を使って施行してきたところ、それぞれには陽性陰性のカットオフ値があり、ER及びPgRともにカットオフ値以下の場合、ともに陰性の判定となるのでホルモン療法の適応がなくなるところ、本発明によれば1枚の切片に2種類の抗体で同時に染色しているので、別々に染色して判定するよりもERとPgRとが重ならない陽性細胞数分がより多くカウントされ、ホルモン療法の適応判断がより正確になり、適応症例が増加する。
【0013】
また本発明では抗ER抗体と抗PgR抗体と抗calponin抗体のカクテル抗体により免疫染色を行うので、ホルモン療法の適否判定、腫瘍が浸潤性か、乳管内にとどまっているかの判定、腫瘍が良性であるか悪性であるかの判定を1枚で同時に完了できる。1枚で同時に完了するため、時間的・経済的に有利である。
【0014】
また本発明では抗CK5/6抗体もしくは抗CK5抗体もしくは抗CK14抗体もしくは抗CK5/14抗体もしくは抗高分子量サイトケラチン抗体(34βE12抗体)とカルポニン抗体によるカクテル抗体により免疫染色を行うので、両者の欠点が相補われ、更に腫瘍が浸潤性か、乳管内にとどまっているか、腫瘍が良性であるか悪性であるかの判定を1枚で同時に完了できる。1枚で同時に完了するため、時間的・経済的に有利である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】非浸潤性乳管癌(Ductal carcinoma in situ:DCIS)及び非浸潤性小葉癌(Lobular carcinoma in situ:LCIS)症例におけるHE染色である。
図2】乳腺DCIS及びLCIS症例におけるヘマトキシリン染色+(CK5/6 1x)である。
図3】乳腺DCIS及びLCIS症例におけるヘマトキシリン染色+(calponin 1x)である。
図4】乳腺DCIS及びLCIS症例におけるヘマトキシリン染色+(CK5/6 1x)+(calponin 1x)である。
図5】乳腺DCIS及びLCIS症例におけるヘマトキシリン染色+(CK5/6 1/2x)+(calponin 1/2x)である。
図6】乳腺DCIS及びLCIS症例におけるヘマトキシリン染色+(CK5/6 1/4x)+(calponin 1/4x)である。
図7】乳腺DCIS及びLCIS症例におけるヘマトキシリン染色+(CK5/6 1/8x)+(calponin 1/8x)である。
図8】乳腺DCIS及びLCIS症例におけるヘマトキシリン染色+(ER 1x)である。
図9】乳腺DCIS及びLCIS症例におけるヘマトキシリン染色+(PgR 1x)である。
図10】乳腺DCIS及びLCIS症例におけるヘマトキシリン染色+(ER 1x)+(PgR 1x)である。
図11】乳腺DCIS及びLCIS症例におけるヘマトキシリン染色+(ER 1/2x)+(PgR 1/2x)である。
図12】乳腺DCIS及びLCIS症例におけるヘマトキシリン染色+(ER 1/4x)+(PgR 1/4x)である。
図13】乳腺DCIS及びLCIS症例におけるヘマトキシリン染色+(ER 1/8x)+(PgR 1/8x)である。
図14】乳腺DCIS及びLCIS症例におけるヘマトキシリン染色+(ER 1/16x)+(PgR 1/16x)である。
図15】乳腺DCIS及びLCIS症例におけるヘマトキシリン染色+(ER 1x)+(PgR 1x)+(calponin 1x)である。
図16】乳腺DCIS及びLCIS症例におけるヘマトキシリン染色+(ER 1x)+(PgR 1x)+(calponin 1/2x)である。
図17】乳腺DCIS及びLCIS症例におけるヘマトキシリン染色+(ER 1x)+(PgR 1x)+(calponin 1/4x)である。
図18】乳腺DCIS及びLCIS症例におけるヘマトキシリン染色+(CK14 1/2x)+(calponin 1/2x)である。
図19】乳腺DCIS及びLCIS症例におけるヘマトキシリン染色+(CK14 1/4x)+(calponin 1/4x)である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態について具体的に説明するが、当該実施形態は本発明の原理の理解を容易にするためのものであり、本発明の範囲は、下記の実施形態に限られるものではなく、当業者が以下の実施形態の構成を適宜置換した他の実施形態も、本発明の範囲に含まれる。
【0017】
本実施形態にかかるカクテル抗体は、物理的に同一の病理検体材料切片を染色する、抗エストロゲン受容体抗体及び抗プロゲステロン抗体を含有する(ER+PgR)。ここでカクテル抗体とは、2種類以上の抗体を混合している製品をいう。
【0018】
乳がんのタイプを判定する要素として、(i)がん細胞が女性ホルモン受容体(エストロゲン受容体(ER)もしくはプロゲステロン受容体(PR))に反応して増殖するかどうか、(ii)がん細胞がHER2タンパクに反応して増殖するかどうか、(iii)がん細胞の増殖活性の程度が高いか低いか、が含まれる。(i)において、エストロゲン受容体(ER)とプロゲステロン受容体(PR)の両方ともあるいはどちらかが陽性の場合、ホルモン療法の効果が期待できるところ、本発明によればERとPgRとが重ならない陽性細胞数分がより多くカウントされ、このホルモン療法の適否がより正確に判定され、適応症例が増加する。
【0019】
例えば、ERとPgRのそれぞれの陽性陰性のカットオフ値が10%未満を陰性と判定する場合、仮にER:8% 陰性、PgR:8% 陰性の判定がなされる場合、従来ではともに陰性の判定となり、ホルモン療法の適応がなくなる。しかしながら、本発明によれば、1枚の切片に2種類の抗体で同時に染色しているので、ERとPgRとが重ならない陽性細胞があり、例えば15%と判定されればホルモンレセプターは陽性と判定され、ホルモン療法の適応となる。更には、この組み合わせのカクテル抗体は1枚で同時に完了するため、時間的・経済的に有利である。
【0020】
次に本実施形態にかかるカクテル抗体は、物理的に同一の病理検体材料切片を染色する、抗エストロゲン受容体抗体、抗プロゲステロン抗体及び抗カルポニン抗体を含有する(ER+PgR+calponin)。
【0021】
カルポニン染色は、筋上皮のラベリング率高く、癌が浸潤性か乳管内にとどまっているかの判定が容易となり、また、ER及びPgR染色は、悪性腫瘍細胞が染色されるが通常型上皮過形成細胞は散在性にしか染色されず、腫瘍が良性であるか悪性であるかの鑑別がより容易となる。更には、この組み合わせのカクテル抗体は1枚で同時に完了するため、時間的・経済的に有利である。
【0022】
次に本実施形態にかかるカクテル抗体は、物理的に同一の病理検体材料切片を染色する、抗サイトケラチン5/6抗体(抗CK5/6抗体)もしくは抗サイトケラチン5抗体(抗CK5抗体)もしくは抗サイトケラチン14抗体(抗CK14抗体)もしくは抗サイトケラチン5/14抗体(抗CK5/14抗体)もしくは抗高分子量サイトケラチン抗体(34βE12抗体)及び抗カルポニン抗体を含有する。
【0023】
サイトケラチン5は重層上皮、移行上皮、混合腺、中皮細胞に発現する分子量58kDの塩基性サイトケラチンで、サイトケラチン6は増殖期の扁平上皮細胞に発現する分子量56kDの塩基性サイトケラチンである。CK5/6染色は、悪性腫瘍細胞が染色されず通常型上皮過形成細胞は染色され、腫瘍が良性であるか悪性であるかの鑑別が可能である。抗CK5抗体、抗CK14抗体、抗CK5/14抗体、34βE12抗体(サイトケラチンナンバー1・5・10・14を認識)も抗CK5/6抗体と同じ染色態度を示すことが知られており、悪性腫瘍細胞が染色されず通常型上皮過形成細胞は染色され、腫瘍が良性であるか悪性であるかの鑑別が可能である。また、カルポニン染色は、上述したように、筋上皮のラベリング率高く、癌が浸潤性か乳管内にとどまっているかの判定が容易となる。更には、この組み合わせのカクテル抗体は1枚で同時に完了するため、時間的・経済的に有利である。
【0024】
抗サイトケラチン5/6抗体の濃度は特に限定されるものではないが例えば0.9μg/L〜45mg/Lであり、抗カルポニン抗体の濃度は特に限定されるものではないが例えば0.86μg/L〜86mg/Lであり、抗サイトケラチン14抗体の濃度は特に限定されるものではないが例えば2.1μg/L〜42mg/Lである。
【0025】
なお、乳腺腫瘍においては、ER, PgR, HER2, CK5/6, MIB1を染色し、ホルモンレセプターの発現の有無、HER2蛋白の過剰発現の有無(HER2遺伝子の増幅の有無)、luminal A、luminal B, HER2 overexpressing type, triple negative (basal-like carcinoma)のプロファイリングが決定される。上述した本実施形態にかかるカクテル抗体によれば、より正確な判定を(ER+PgR+calponin), HER2, MIB1の3枚で済ますことが可能である。トリプルネガティブであった場合は、basal-like carcinomaか否かの確認に、(CK5/6+calponin)を追加すればよい。もしくは(ER+PgR), HER2, (CK5/6+calponin), MIB1の4枚で済ますことができる。トリプルネガティブであった場合において、basal-like carcinomaか否かの判定も追加免疫染色なく、判定が完了する。乳腺腫瘍の生検材料においては、HE標本の他に(CK5/6+calponin)もしくは(ER+PgR+calponin)のカクテル抗体による免疫染色をルーチンで使用することで、腫瘍が浸潤性か、乳管内にとどまっているか、腫瘍が良性であるか悪性であるかの判定が1枚の追加染色で可能となる。
【実施例】
【0026】
各種条件にて染色を施行した。手順は下記に示す手順であった。
1.脱パラフィン
(i)薄切切片スライドを乾燥させる。
(ii)70℃孵卵器にてパラフィン融解(10分以上)
(iii)Tissue Tek Prisma(サクラファインテック社製)使用
-1. 乾燥::1分×1
-2. キシレン:5分×1
キシレン:3分×3
-3. 100%アルコール(ドライゾール):3分×1
100%アルコール(ドライゾール):2分×2
-4. 水洗(水道水):1分×1
-5. 終了(蒸留水中)
2.HE染色
(GMヘマトキシリン:武藤化学、ピュアエオジン:武藤化学、エオジン希釈液:95%アルコール)
Tissue Tek Prisma(サクラファインテック社製)使用
-1. 水洗(水道水):30秒
-2. GMヘマトキシリン液:1分
-3. 水洗(水道水):30秒
-4. 温水:1分
-5. 水洗(水道水):3分
-6. 100%アルコール::15秒×2
-7. エオジン液(8倍希釈):30秒
-8. 100%アルコール::15秒×2
100%アルコール::30秒×1
100%アルコール::1分30秒×1
100%アルコール::2分×1
-9. キシレン::2分×2
キシレン::3分×1
3.IHC
(ロッシュ社製・自動免疫染色装置Ventana BenchMark XT)使用
-1. スライド(EZPrep)75℃:4分
-2. リンス(EZPrep)×2
-3. スライド(EZPrep)76℃:4分
-4. リンス(EZPrep)×1
-5. スライド常温に戻す
-6. conditioning(Cell Conditioner Medium):8分
-7. スライド(Cell Conditioner Medium)95℃:8分
-8. conditioning(Cell Conditioner Medium):30分
-9. スライド(Cell Conditioner Medium中)100℃:4分
-10. conditioning(Cell Conditioner Medium中):60分
-11 スライド常温に戻す
-12. リンス(Reaction Buffer)×2
-13. スライド(Reaction Buffer)37℃:4分
-14. リンス(Reaction Buffer)×1
-15. スライド(I-VIEW INHIBITOR)(37℃):4分
-13. リンス(Reaction Buffer)×1
-14. スライド(Reaction Buffer)37℃:4分
-15. リンス(Reaction Buffer)×1
-16. スライド(一次抗体)37℃:32分
-17. リンス(Reaction Buffer)×1
-18 スライド(Reaction Buffer)37℃:4分
-19. リンス(Reaction Buffer)×1
-20. スライド(I-VIEW BIOTIN Ig)(37℃):8分
-21. リンス(Reaction Buffer)×1
-22. スライド(I-VIEW SA-HRP)(37℃):8分
-23. リンス(Reaction Buffer)×2
-24. スライド(I-VIEW DAB and I-VIEW H2O2)(37℃):8分
-25. リンス(Reaction Buffer)×1
-26. スライド(I-VIEW COPPER)(37℃):4分
-27. リンス(Reaction Buffer)×1
-28. スライド(HEMATOXYLIN II)(37℃):16分
-29. リンス(Reaction Buffer)×2
-30. スライド(BLUING REAGENT)(37℃):4分
-31. リンス(Reaction Buffer)×2
1倍の一次抗体濃度は下記であった。
【0027】
CK5/6抗体(DAKO社製・clone:D5/16 B4)マウスモノクローナル:900μg/L
calponin抗体(DAKO社製・clone:CALP)マウスモノクローナル:860μg/L
抗Estrogen receptorα抗体(Spring Bioscience社製・clone:SP1)ラビットモノクローナル: 200倍希釈
抗Progesteron抗体(Spring Bioscience社製・clone:SP2)ラビットモノクローナル: 400倍希釈
CK14抗体(Novocastra社製・clone:NCL-L-LL002)マウスモノクローナル:2.1mg/L
図1は、非浸潤性乳管癌(Ductal carcinoma in situ:DCIS)及び非浸潤性小葉癌(Lobular carcinoma in situ:LCIS)症例におけるHE染色である。DCISは実線で示し、LCISは破線で示し、通常型上皮過形成(Usual ductal hyperplasia:UDH)は点線で示す。DCIS成分は乳頭腫と区別困難であった。筋上皮細胞の有無は不明であった。LCIS成分は筋上皮細胞の有無が不明であった。UDH成分は腫瘍上皮かの鑑別が困難であった。矢印に示すように血管成分の視認は可能であった。
【0028】
図2は、乳腺DCIS及びLCIS症例におけるヘマトキシリン染色+(CK5/6 1x)である。DCISは実線で示し、LCISは破線で示し、通常型上皮過形成(UDH)は点線で示す。DCIS成分はわずかに視認できた。筋上皮細胞の有無の判定は困難であった。LCIS成分はわずかに視認できた。筋上皮細胞の有無は判定が困難であった。UDH成分は確認できた。矢印に示されるように、血管成分の視認は困難であった。
【0029】
図3は、乳腺DCIS及びLCIS症例におけるヘマトキシリン染色+(calponin 1x)である。DCISは実線で示し、LCISは破線で示し、通常型上皮過形成(UDH)は点線で示す。DCIS成分は視認できた。筋上皮細胞の有無は判定が容易であった。LCIS成分は視認できる。筋上皮細胞の有無は判定が容易であった。UDH成分は視認できなかった。矢印に示されるように、血管成分の視認は可能だった。
【0030】
図4は、乳腺DCIS及びLCIS症例におけるヘマトキシリン染色+(CK5/6 1x)+(calponin 1x)である。DCISは実線で示し、LCISは破線で示し、通常型上皮過形成(UDH)は点線で示す。DCIS成分は視認できた。筋上皮細胞の有無は判定が容易であった。LCIS成分は視認できた。筋上皮細胞の有無は判定が容易であった。UDH成分は視認できた。矢印に示されるように、血管成分の視認は可能だった。
【0031】
図5は、乳腺DCIS及びLCIS症例におけるヘマトキシリン染色+(CK5/6 1/2x)+(calponin 1/2x)である。DCISは実線で示し、LCISは破線で示し、通常型上皮過形成(UDH)は点線で示す。DCIS成分は視認できた。筋上皮細胞の有無は判定が容易であった。LCIS成分は視認できた。筋上皮細胞の有無は判定が容易であった。UDH成分は視認できた。矢印に示されるように、血管成分の視認は可能であった。
【0032】
図6は、乳腺DCIS及びLCIS症例におけるヘマトキシリン染色+(CK5/6 1/4x)+(calponin 1/4x)である。DCISは実線で示し、LCISは破線で示し、通常型上皮過形成(UDH)は点線で示す。DCIS成分は視認できた。筋上皮細胞の有無は判定が容易であった。LCIS成分は視認できた。筋上皮細胞の有無は判定が容易であった。UDH成分は視認できた。矢印に示されるように、血管成分の視認は可能であった。
【0033】
図7は、乳腺DCIS及びLCIS症例におけるヘマトキシリンHE染色+(CK5/6 1/8x)+(calponin 1/8x)である。DCISは実線で示し、LCISは破線で示し、通常型上皮過形成(UDH)は点線で示す。DCIS成分は視認できた。筋上皮細胞の有無は判定が容易であった。LCIS成分は視認できた。筋上皮細胞の有無は判定が容易であった。UDH成分は視認できた。矢印に示されるように、血管成分の視認は可能であった。
【0034】
図8は、乳腺DCIS及びLCIS症例におけるヘマトキシリン染色+(ER 1x)である。DCISは実線で示し、LCISは破線で示し、通常型上皮過形成(UDH)は点線で示す。DCIS成分は視認できた。筋上皮細胞の有無は判定が困難であった。LCIS成分は視認できた。筋上皮細胞の有無は判定が困難であった。UDH成分は視認できた。矢印に示されるように、血管成分の視認は不可能だった。
【0035】
図9は、乳腺DCIS及びLCIS症例におけるヘマトキシリン染色+(PgR 1x)である。DCISは実線で示し、LCISは破線で示し、通常型上皮過形成(UDH)は点線で示す。DCIS成分は視認困難であった。筋上皮細胞の有無は判定困難であった。LCIS成分は視認困難であった。筋上皮細胞の有無は判定困難であった。UDH成分は視認できた。矢印に示されるように、血管成分は視認不可能だった。
【0036】
図10は、乳腺DCIS及びLCIS症例におけるヘマトキシリン染色+(ER 1x)+(PgR 1x)である。DCISは実線で示し、LCISは破線で示し、通常型上皮過形成(UDH)は点線で示す。DCIS成分は視認できた。筋上皮細胞の有無は判定困難であった。LCIS成分は視認できた。筋上皮細胞の有無は判定困難であった。UDH成分は視認できた。矢印に示されるように、血管成分は視認不可能であった。
【0037】
図11は、乳腺DCIS及びLCIS症例におけるヘマトキシリン染色+(ER 1/2x)+(PgR 1/2x)である。DCISは実線で示し、LCISは破線で示し、通常型上皮過形成(UDH)は点線で示す。DCIS成分は視認できた。筋上皮細胞の有無は判定困難であった。LCIS成分は視認できた。筋上皮細胞の有無は判定困難であった。UDH成分は視認できた。矢印に示されるように、血管成分は視認不可能であった。
【0038】
図12は、乳腺DCIS及びLCIS症例におけるヘマトキシリン染色+(ER 1/4x)+(PgR 1/4x)である。DCISは実線で示し、LCISは破線で示し、通常型上皮過形成(UDH)は点線で示す。DCIS成分は視認できた。筋上皮細胞の有無は判定困難であった。LCIS成分は視認できた。筋上皮細胞の有無は判定困難であった。UDH成分は視認できた。矢印に示されるように、血管成分は視認不可能であった。
【0039】
図13は、乳腺DCIS及びLCIS症例におけるヘマトキシリン染色+(ER 1/8x)+(PgR 1/8x)である。DCISは実線で示し、LCISは破線で示し、通常型上皮過形成(UDH)は点線で示す。DCIS成分は視認困難であった。筋上皮細胞の有無は判定困難であった。LCIS成分は視認困難であった。筋上皮細胞の有無は判定困難であった。UDH成分は視認できた。矢印に示されるように、血管成分は視認不可能であった。
【0040】
図14は、乳腺DCIS及びLCIS症例におけるヘマトキシリン染色+(ER 1/16x)+(PgR 1/16x)である。DCISは実線で示し、LCISは破線で示し、通常型上皮過形成(UDH)は点線で示す。DCIS成分は視認困難であった。筋上皮細胞の有無は判定困難であった。LCIS成分は視認困難であった。筋上皮細胞の有無は判定困難であった。UDH成分は視認不可能であった。矢印に示されるように、血管成分は視認不可能であった。
【0041】
図15は、乳腺DCIS及びLCIS症例におけるヘマトキシリン染色+(ER 1x)+(PgR 1x)+(calponin 1x)である。DCISは実線で示し、LCISは破線で示し、通常型上皮過形成(UDH)は点線で示す。DCIS成分は視認できた。筋上皮細胞の有無は判定容易であった。LCIS成分は視認できた。筋上皮細胞の有無は判定容易であった。UDH成分は視認困難であった。矢印に示されるように、血管成分は視認可能であった。
【0042】
図16は、乳腺DCIS及びLCIS症例におけるヘマトキシリン染色+(ER 1x)+(PgR 1x)+(calponin 1/2x)である。DCISは実線で示し、LCISは破線で示し、通常型上皮過形成(UDH)は点線で示す。DCIS成分は視認できた。筋上皮細胞の有無は判定容易であった。LCIS成分は視認できた。筋上皮細胞の有無は判定容易であった。UDH成分は視認できた。矢印に示されるように、血管成分の視認は可能であった。
【0043】
図17は、乳腺DCIS及びLCIS症例におけるヘマトキシリン染色+(ER 1x)+(PgR 1x)+(calponin 1/4x)である。DCISは実線で示し、LCISは破線で示し、通常型上皮過形成(UDH)は点線で示す。DCIS成分は視認できた。筋上皮細胞の有無は判定容易であった。LCIS成分は視認できた。筋上皮細胞の有無は判定容易であった。UDH成分は視認できた。矢印に示されるように、血管成分を視認可能であった。
【0044】
図18は、乳腺DCIS及びLCIS症例におけるヘマトキシリン染色+(CK14 1/2x)+(calponin 1/2x)である。DCISは実線で示し、LCISは破線で示し、通常型上皮過形成(UDH)は点線で示す。DCIS成分は視認できた。筋上皮細胞の有無は判定が容易であった。LCIS成分は視認できた。筋上皮細胞の有無は判定が容易であった。UDH成分は視認できた。矢印に示されるように、血管成分の視認は可能であった。
【0045】
図19は、乳腺DCIS及びLCIS症例におけるヘマトキシリン染色+(CK14 1/4x)+(calponin 1/4x)である。DCISは実線で示し、LCISは破線で示し、通常型上皮過形成(UDH)は点線で示す。DCIS成分は視認できた。筋上皮細胞の有無は判定が容易であった。LCIS成分は視認できた。筋上皮細胞の有無は判定が容易であった。UDH成分は視認できた。矢印に示されるように、血管成分の視認は可能であった。
【産業上の利用可能性】
【0046】
病理診断に利用できる。
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